コーナヘッド型サーマルヘッド及びその製造方法
【目的】 コーナヘッドの利点を損なうことなく、共通電極の抵抗値の低減を安価に実現し、ヒータ数の多い大型のコーナヘッド型サーマルヘッドを提供する。
【構成】 ヒータ領域13から絶縁基板10のヒータ領域13に近接した端縁側の側面17にかけて傾斜面18が設けられており、傾斜面18上に抵抗膜層12及び共通電極15が設けられている。そして傾斜面18には、抵抗膜層12の下に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれている。これにより、ヒータ領域13への電力の供給を、共通電極15と補強導体20とを協働させて行うことができる。
【構成】 ヒータ領域13から絶縁基板10のヒータ領域13に近接した端縁側の側面17にかけて傾斜面18が設けられており、傾斜面18上に抵抗膜層12及び共通電極15が設けられている。そして傾斜面18には、抵抗膜層12の下に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれている。これにより、ヒータ領域13への電力の供給を、共通電極15と補強導体20とを協働させて行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はサーマルヘッド、特に印字効率を向上させたコーナヘッド型サーマルヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】サーマルヘッドにおいては、ラフ紙に対応した印字を行うため及び印字効率の向上のために、ヒータ領域においてリボン、被印字紙及びプラテンへの圧力集中が必要である。
【0003】このため、従来よりサーマルヘッドの端縁の近傍にヒータ領域が設けられたコーナヘッド型サーマルヘッドを、プラテンに対して傾斜するように取り付け、リボン及び被印字紙に対する圧力をヒータ領域及びその近傍に集中させることが行われている。
【0004】このようなサーマルヘッドの従来例が図16R>6及び図17に示される。
【0005】図16には従来のサーマルヘッドの一例の断面図が示されており、絶縁基板10の上にグレーズ層11が形成され、グレーズ層11の上に抵抗膜層12が形成されている。この例のグレーズ層11は部分グレーズタイプであり、断面形状が山状になっている。この山の頂部には印字動作のときに所定の部分が発熱するヒータ領域13が形成されており、ヒータ領域13から絶縁基板10のヒータ領域13に近接した端縁側の側面17にかけては傾斜面18が設けられている。傾斜面18の上には共通電極15が設けられ、ヒータ領域13を挟んで共通電極15に対向する、抵抗膜層12上の領域には、共通電極15と協働してヒータ領域13の所定の部分に電流を供給する個別電極14が形成されている。
【0006】また図17には、従来のサーマルヘッドの他の例が示されており、上述の図16と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0007】図17(a)にはこの例の断面図が示されており、個別電極14及び共通電極15をヒータ領域13に対して同じ側に設け、ヒータ領域13を挟んで個別電極14及び共通電極15に対向する折り返し共通電極30が設けられている。
【0008】これらの配置は図17(b)に平面図として示される。図17(b)において、電源電圧は各共通電極15に供給され、ヒータ領域13及び折り返し共通電極30を介して個別電極14に電流が流れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記図16に示された従来例においては、傾斜面18の幅Lは200μm程度である。従ってこの部分に形成される共通電極15の幅は200μm以下に制限され、また共通電極15の厚さを厚くするとリボンの引っ掛かり等の不都合が起こるので厚さも制限される。このため従来のコーナヘッド型サーマルヘッドにおいては、ヒータ領域13を長くして、ヒータ数を多くすると、共通電極15の有する抵抗値が大きくなり、電源電圧が供給される部分から遠く離れた部分の電圧降下が大きくなって、印字品質が悪化するという問題があった。
【0010】また図17に示される従来例においては、各共通電極15に電源を接続するので電圧降下を低減でき、上述の問題に対応できる。
【0011】しかし、図17に示される例では、ヒータ領域13の実質的密度が図16に示される例の倍になり、微細パターンが要求される場合に対応できないという問題があった。
【0012】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、コーナヘッドの利点を損なうことなく、共通電極の抵抗値の低減を安価に実現し、ヒータ数の多い大型のコーナヘッド型サーマルヘッドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、絶縁基板上の少なくとも端縁の近傍に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層上に形成された抵抗膜層と、前記抵抗膜層のうち前記端縁の近傍であって前記端縁に沿った領域に形成されたヒータ領域と、前記ヒータ領域から前記絶縁基板の前記端縁側の側面にかけて設けられ、上面に前記抵抗膜層が形成された傾斜面と、を備えるコーナヘッド型サーマルヘッドであって、前記傾斜面において前記ヒータ領域以外の前記抵抗膜層上に設けられた共通電極と、前記傾斜面において前記共通電極に沿って前記抵抗膜層の下方に埋め込まれ、前記共通電極と協働して前記ヒータ領域へ供給する電流を流す補強導体と、前記ヒータ領域を挟んで前記共通電極と対向した前記抵抗膜層上の領域に設けられ、前記共通電極及び前記補強導体と協働して前記ヒータ領域の所定の部分に電流を供給する個別電極と、を含むことを特徴とする。
【0014】また請求項2に係る発明は、コーナヘッド型サーマルヘッドの製造方法であって、絶縁基板上にグレーズ層を形成する段階と、前記グレーズ層の上面から下方に向かい、前記グレーズ層の一部を含んだ領域をハーフカットし溝を形成する段階と、前記溝の中に補強導体を埋め込む段階と、前記グレーズ層の上面の所定の位置から、前記補強導体の一部を残して前記絶縁基板の所定深さまで傾斜面ができるようハーフカットする段階と、前記グレーズ層上及び前記傾斜面上に抵抗膜層、共通電極、個別電極及び保護膜を形成し、単品分離する段階と、を含むことを特徴とする。
【0015】
【作用】上記構成によれば、傾斜面の抵抗膜層の下に、共通電極に沿って補強導体が埋め込まれているので、共通電極と補強導体との協働により共通電極及び補強導体の全体としての抵抗値が低減される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】図1には、本発明に係るサーマルヘッドの実施例の断面図が示され、前述した図16及び図17における従来例と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】図1においては、前述の従来例と同様にヒータ領域13から絶縁基板10の側面17にかけて傾斜面18が形成されている。この傾斜面18上には抵抗膜層12が形成されており、抵抗膜層12の上には共通電極15が設けられている。そして傾斜面18には、抵抗膜層12の下に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれている。
【0019】本発明において特徴的なことは、上述の通り傾斜面18に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれたことである。これにより、ヒータ領域13への電力の供給は、共通電極15と補強導体20とを協働させて行うことができる。従って、共通電極15及び補強導体20の全体として電気抵抗が下がるので、共通電極15における電圧降下を大幅に低下させることができる。
【0020】上述したように、本発明の効果は共通電極15の近傍に補強導体20を設けることにより達成することができるが、以下に図1に示された実施例と同様の効果を奏する本発明の変形例を説明する。
【0021】図2に示される実施例は、傾斜面18に埋め込まれた補強導体20が、絶縁基板10のみならずグレーズ層11にも達している例である。これにより、より広い領域に補強導体20を形成することができる。
【0022】図3に示される実施例は、傾斜面18に埋め込まれた補強導体20が基板の側面17にまで達している例である。
【0023】図4に示される実施例は、図1に示された例と類似しているが、グレーズ層が全面グレーズタイプである点が異なっている。
【0024】図5に示される実施例は、補強導体20の断面形状が異なる例である。
【0025】図6に示される実施例は、サーマルヘッドの断面形状が図1に示される例と少し異なっているが、補強導体20については、図1に示される例と同様のものである。
【0026】以上示された各実施例は、それぞれのサーマルヘッドの用途に応じて適宜選択し得るものである。
【0027】次に図1に示されたサーマルヘッドの製造方法について説明する。
【0028】本製造方法は、図7から図11までに示されている。図7に示された工程において、絶縁基板10の上にグレーズ層11が形成される。
【0029】図8に示された工程において、ダイシング用ブレードを使用して、グレーズ層11の上面から絶縁基板10まで達する溝21を形成する。
【0030】図9に示された工程において、前述の工程で形成された溝21の中に、導体ペースト22を印刷あるいは注入により埋め込み、これを焼成硬化する。この導体ペースト22が、最終的に補強導体20となる。
【0031】図10に示された工程において、斜面付きのダイシングブレード23を使用して、前述の工程で説明した導体ペースト22の一部を残すようにコーナーヘッド型サーマルヘッドの傾斜面18を形成する。
【0032】以後化学処理あるいは熱処理によりグレーズの頂部の角取りを行う。続いて抵抗膜層12と電極14、15となるべき導体とをスパッタリング等で形成し、フォトリソグラフにより個別電極14及び共通電極15のパターニングを行う。次いで保護膜をスパッタリングし最後に単品分離をして図11に示されるコーナーヘッド型サーマルヘッドが完成する。
【0033】本製造工程において特徴的なことは、ハーフカットによって形成した溝21に導体ペースト22を埋め込み、傾斜面付きブレード23によりこの導体ペースト22の一部を残して傾斜面18を形成することである。これにより、傾斜面18に補強導体20が埋め込まれた構造が実現される。
【0034】次に、補強導体20の断面形状が他と異なる図5に示される変形例の製造方法について説明する。本製造方法は図12から図15に示される。
【0035】図12に示された工程において、傾斜面付きブレード24を使用し、グレーズ層11の上面から絶縁基板10に達する溝を形成する。この溝のグレーズ層11を含む側壁は傾斜面になっている。
【0036】図13に示された工程において、上述の溝の中に導体ペースト22を埋め込む。この埋め込みは図9R>9に示された工程と同様にして行う。
【0037】図14に示された工程において、図12に示された工程で使用したブレード24の傾斜面よりも大きな傾斜角度の傾斜面を有するブレード25を使用し、前述の導体ペースト22の一部を残すようにハーフカットし、コーナーヘッド型サーマルヘッドの傾斜面18を形成する。この場合、一部残された導体ペースト22が補強導体20になる。
【0038】以後図10及び図11の説明において述べたのと同様の工程を経て図15に示されたコーナーヘッド型サーマルヘッドが完成する。
【0039】最後に本発明の参考例を図18及び図19に示す。図18に示された例では、傾斜面18の上部に補強導体20が形成されている。そして抵抗膜層12及び共通電極15はこの補強導体20の上に形成されている。
【0040】図19に示された例においては、補強導体20が絶縁基板10の側面17の上に形成されている。
【0041】いずれの例においても、補強導体20を共通電極15と協働させて、共通電極15の電気抵抗を低下させるという本発明の効果を奏し得るものである。
【0042】しかし、図18に示された例では、傾斜面18の上に凸部ができ、ヒータ領域13の被印刷紙への圧力集中及びインクリボンの即時引き剥しに支障をきたすという問題がある。
【0043】また図19に示された例においては、ヘッドを個々に単品分離してから補強導体20を印刷等の方法により形成する必要があり、工程数の増加によるコストアップにつながるという問題がある。
【0044】従って、いずれも実施に移すには問題がある。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、傾斜面の抵抗膜層の下に、共通電極に沿って補強導体が埋め込まれているので、共通電極と補強導体との協働により共通電極及び補強導体の全体としての抵抗値が低減される。この結果、コーナヘッドの利点を損なうことなく、共通電極の抵抗値の低減を安価に実現し、ヒータ数の多い大型のコーナヘッド型サーマルヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの実施例の断面図である。
【図2】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図3】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図4】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図5】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図6】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図7】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図8】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図9】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図10】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図11】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図12】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図13】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図14】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図15】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図16】従来におけるコーナヘッド型サーマルヘッドの一例の断面図である。
【図17】従来におけるコーナヘッド型サーマルヘッドの他の例の断面図及び平面図である。
【図18】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの参考例の断面図である。
【図19】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの参考例の断面図である。
【符号の説明】
10 絶縁基板
11 グレーズ層
12 抵抗膜層
13 ヒータ領域
14 個別電極
15 共通電極
17 側面
18 傾斜面
20 補強導体
23、24、25 ブレード
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はサーマルヘッド、特に印字効率を向上させたコーナヘッド型サーマルヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】サーマルヘッドにおいては、ラフ紙に対応した印字を行うため及び印字効率の向上のために、ヒータ領域においてリボン、被印字紙及びプラテンへの圧力集中が必要である。
【0003】このため、従来よりサーマルヘッドの端縁の近傍にヒータ領域が設けられたコーナヘッド型サーマルヘッドを、プラテンに対して傾斜するように取り付け、リボン及び被印字紙に対する圧力をヒータ領域及びその近傍に集中させることが行われている。
【0004】このようなサーマルヘッドの従来例が図16R>6及び図17に示される。
【0005】図16には従来のサーマルヘッドの一例の断面図が示されており、絶縁基板10の上にグレーズ層11が形成され、グレーズ層11の上に抵抗膜層12が形成されている。この例のグレーズ層11は部分グレーズタイプであり、断面形状が山状になっている。この山の頂部には印字動作のときに所定の部分が発熱するヒータ領域13が形成されており、ヒータ領域13から絶縁基板10のヒータ領域13に近接した端縁側の側面17にかけては傾斜面18が設けられている。傾斜面18の上には共通電極15が設けられ、ヒータ領域13を挟んで共通電極15に対向する、抵抗膜層12上の領域には、共通電極15と協働してヒータ領域13の所定の部分に電流を供給する個別電極14が形成されている。
【0006】また図17には、従来のサーマルヘッドの他の例が示されており、上述の図16と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0007】図17(a)にはこの例の断面図が示されており、個別電極14及び共通電極15をヒータ領域13に対して同じ側に設け、ヒータ領域13を挟んで個別電極14及び共通電極15に対向する折り返し共通電極30が設けられている。
【0008】これらの配置は図17(b)に平面図として示される。図17(b)において、電源電圧は各共通電極15に供給され、ヒータ領域13及び折り返し共通電極30を介して個別電極14に電流が流れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記図16に示された従来例においては、傾斜面18の幅Lは200μm程度である。従ってこの部分に形成される共通電極15の幅は200μm以下に制限され、また共通電極15の厚さを厚くするとリボンの引っ掛かり等の不都合が起こるので厚さも制限される。このため従来のコーナヘッド型サーマルヘッドにおいては、ヒータ領域13を長くして、ヒータ数を多くすると、共通電極15の有する抵抗値が大きくなり、電源電圧が供給される部分から遠く離れた部分の電圧降下が大きくなって、印字品質が悪化するという問題があった。
【0010】また図17に示される従来例においては、各共通電極15に電源を接続するので電圧降下を低減でき、上述の問題に対応できる。
【0011】しかし、図17に示される例では、ヒータ領域13の実質的密度が図16に示される例の倍になり、微細パターンが要求される場合に対応できないという問題があった。
【0012】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、コーナヘッドの利点を損なうことなく、共通電極の抵抗値の低減を安価に実現し、ヒータ数の多い大型のコーナヘッド型サーマルヘッドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、絶縁基板上の少なくとも端縁の近傍に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層上に形成された抵抗膜層と、前記抵抗膜層のうち前記端縁の近傍であって前記端縁に沿った領域に形成されたヒータ領域と、前記ヒータ領域から前記絶縁基板の前記端縁側の側面にかけて設けられ、上面に前記抵抗膜層が形成された傾斜面と、を備えるコーナヘッド型サーマルヘッドであって、前記傾斜面において前記ヒータ領域以外の前記抵抗膜層上に設けられた共通電極と、前記傾斜面において前記共通電極に沿って前記抵抗膜層の下方に埋め込まれ、前記共通電極と協働して前記ヒータ領域へ供給する電流を流す補強導体と、前記ヒータ領域を挟んで前記共通電極と対向した前記抵抗膜層上の領域に設けられ、前記共通電極及び前記補強導体と協働して前記ヒータ領域の所定の部分に電流を供給する個別電極と、を含むことを特徴とする。
【0014】また請求項2に係る発明は、コーナヘッド型サーマルヘッドの製造方法であって、絶縁基板上にグレーズ層を形成する段階と、前記グレーズ層の上面から下方に向かい、前記グレーズ層の一部を含んだ領域をハーフカットし溝を形成する段階と、前記溝の中に補強導体を埋め込む段階と、前記グレーズ層の上面の所定の位置から、前記補強導体の一部を残して前記絶縁基板の所定深さまで傾斜面ができるようハーフカットする段階と、前記グレーズ層上及び前記傾斜面上に抵抗膜層、共通電極、個別電極及び保護膜を形成し、単品分離する段階と、を含むことを特徴とする。
【0015】
【作用】上記構成によれば、傾斜面の抵抗膜層の下に、共通電極に沿って補強導体が埋め込まれているので、共通電極と補強導体との協働により共通電極及び補強導体の全体としての抵抗値が低減される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】図1には、本発明に係るサーマルヘッドの実施例の断面図が示され、前述した図16及び図17における従来例と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】図1においては、前述の従来例と同様にヒータ領域13から絶縁基板10の側面17にかけて傾斜面18が形成されている。この傾斜面18上には抵抗膜層12が形成されており、抵抗膜層12の上には共通電極15が設けられている。そして傾斜面18には、抵抗膜層12の下に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれている。
【0019】本発明において特徴的なことは、上述の通り傾斜面18に共通電極15に沿った補強導体20が埋め込まれたことである。これにより、ヒータ領域13への電力の供給は、共通電極15と補強導体20とを協働させて行うことができる。従って、共通電極15及び補強導体20の全体として電気抵抗が下がるので、共通電極15における電圧降下を大幅に低下させることができる。
【0020】上述したように、本発明の効果は共通電極15の近傍に補強導体20を設けることにより達成することができるが、以下に図1に示された実施例と同様の効果を奏する本発明の変形例を説明する。
【0021】図2に示される実施例は、傾斜面18に埋め込まれた補強導体20が、絶縁基板10のみならずグレーズ層11にも達している例である。これにより、より広い領域に補強導体20を形成することができる。
【0022】図3に示される実施例は、傾斜面18に埋め込まれた補強導体20が基板の側面17にまで達している例である。
【0023】図4に示される実施例は、図1に示された例と類似しているが、グレーズ層が全面グレーズタイプである点が異なっている。
【0024】図5に示される実施例は、補強導体20の断面形状が異なる例である。
【0025】図6に示される実施例は、サーマルヘッドの断面形状が図1に示される例と少し異なっているが、補強導体20については、図1に示される例と同様のものである。
【0026】以上示された各実施例は、それぞれのサーマルヘッドの用途に応じて適宜選択し得るものである。
【0027】次に図1に示されたサーマルヘッドの製造方法について説明する。
【0028】本製造方法は、図7から図11までに示されている。図7に示された工程において、絶縁基板10の上にグレーズ層11が形成される。
【0029】図8に示された工程において、ダイシング用ブレードを使用して、グレーズ層11の上面から絶縁基板10まで達する溝21を形成する。
【0030】図9に示された工程において、前述の工程で形成された溝21の中に、導体ペースト22を印刷あるいは注入により埋め込み、これを焼成硬化する。この導体ペースト22が、最終的に補強導体20となる。
【0031】図10に示された工程において、斜面付きのダイシングブレード23を使用して、前述の工程で説明した導体ペースト22の一部を残すようにコーナーヘッド型サーマルヘッドの傾斜面18を形成する。
【0032】以後化学処理あるいは熱処理によりグレーズの頂部の角取りを行う。続いて抵抗膜層12と電極14、15となるべき導体とをスパッタリング等で形成し、フォトリソグラフにより個別電極14及び共通電極15のパターニングを行う。次いで保護膜をスパッタリングし最後に単品分離をして図11に示されるコーナーヘッド型サーマルヘッドが完成する。
【0033】本製造工程において特徴的なことは、ハーフカットによって形成した溝21に導体ペースト22を埋め込み、傾斜面付きブレード23によりこの導体ペースト22の一部を残して傾斜面18を形成することである。これにより、傾斜面18に補強導体20が埋め込まれた構造が実現される。
【0034】次に、補強導体20の断面形状が他と異なる図5に示される変形例の製造方法について説明する。本製造方法は図12から図15に示される。
【0035】図12に示された工程において、傾斜面付きブレード24を使用し、グレーズ層11の上面から絶縁基板10に達する溝を形成する。この溝のグレーズ層11を含む側壁は傾斜面になっている。
【0036】図13に示された工程において、上述の溝の中に導体ペースト22を埋め込む。この埋め込みは図9R>9に示された工程と同様にして行う。
【0037】図14に示された工程において、図12に示された工程で使用したブレード24の傾斜面よりも大きな傾斜角度の傾斜面を有するブレード25を使用し、前述の導体ペースト22の一部を残すようにハーフカットし、コーナーヘッド型サーマルヘッドの傾斜面18を形成する。この場合、一部残された導体ペースト22が補強導体20になる。
【0038】以後図10及び図11の説明において述べたのと同様の工程を経て図15に示されたコーナーヘッド型サーマルヘッドが完成する。
【0039】最後に本発明の参考例を図18及び図19に示す。図18に示された例では、傾斜面18の上部に補強導体20が形成されている。そして抵抗膜層12及び共通電極15はこの補強導体20の上に形成されている。
【0040】図19に示された例においては、補強導体20が絶縁基板10の側面17の上に形成されている。
【0041】いずれの例においても、補強導体20を共通電極15と協働させて、共通電極15の電気抵抗を低下させるという本発明の効果を奏し得るものである。
【0042】しかし、図18に示された例では、傾斜面18の上に凸部ができ、ヒータ領域13の被印刷紙への圧力集中及びインクリボンの即時引き剥しに支障をきたすという問題がある。
【0043】また図19に示された例においては、ヘッドを個々に単品分離してから補強導体20を印刷等の方法により形成する必要があり、工程数の増加によるコストアップにつながるという問題がある。
【0044】従って、いずれも実施に移すには問題がある。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、傾斜面の抵抗膜層の下に、共通電極に沿って補強導体が埋め込まれているので、共通電極と補強導体との協働により共通電極及び補強導体の全体としての抵抗値が低減される。この結果、コーナヘッドの利点を損なうことなく、共通電極の抵抗値の低減を安価に実現し、ヒータ数の多い大型のコーナヘッド型サーマルヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの実施例の断面図である。
【図2】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図3】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図4】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図5】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図6】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの変形例の断面図である。
【図7】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図8】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図9】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図10】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図11】図1に示された実施例の製造方法を示す工程図である。
【図12】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図13】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図14】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図15】図5に示された変形例の製造方法を示す工程図である。
【図16】従来におけるコーナヘッド型サーマルヘッドの一例の断面図である。
【図17】従来におけるコーナヘッド型サーマルヘッドの他の例の断面図及び平面図である。
【図18】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの参考例の断面図である。
【図19】本発明に係るコーナヘッド型サーマルヘッドの参考例の断面図である。
【符号の説明】
10 絶縁基板
11 グレーズ層
12 抵抗膜層
13 ヒータ領域
14 個別電極
15 共通電極
17 側面
18 傾斜面
20 補強導体
23、24、25 ブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板上の少なくとも端縁の近傍に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層上に形成された抵抗膜層と、前記抵抗膜層のうち前記端縁の近傍であって前記端縁に沿った領域に形成されたヒータ領域と、前記ヒータ領域から前記絶縁基板の前記端縁側の側面にかけて設けられ、上面に前記抵抗膜層が形成された傾斜面と、を備えるコーナヘッド型サーマルヘッドであって、前記傾斜面において前記ヒータ領域以外の前記抵抗膜層上に設けられた共通電極と、前記傾斜面において前記共通電極に沿って前記抵抗膜層の下方に埋め込まれ、前記共通電極と協働して前記ヒータ領域へ供給する電流を流す補強導体と、前記ヒータ領域を挟んで前記共通電極と対向した前記抵抗膜層上の領域に設けられ、前記共通電極及び前記補強導体と協働して前記ヒータ領域の所定の部分に電流を供給する個別電極と、を含むことを特徴とするコーナヘッド型サーマルヘッド。
【請求項2】 絶縁基板上にグレーズ層を形成する段階と、前記グレーズ層の上面から下方に向かい、前記グレーズ層の一部を含んだ領域をハーフカットし溝を形成する段階と、前記溝の中に補強導体を埋め込む段階と、前記グレーズ層の上面の所定の位置から、前記補強導体の一部を残して前記絶縁基板の所定深さまで傾斜面ができるようハーフカットする段階と、前記グレーズ層上及び前記傾斜面上に抵抗膜層、共通電極、個別電極及び保護膜を形成し、単品分離する段階と、を含むことを特徴とするコーナヘッド型サーマルヘッドの製造方法。
【請求項1】 絶縁基板上の少なくとも端縁の近傍に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層上に形成された抵抗膜層と、前記抵抗膜層のうち前記端縁の近傍であって前記端縁に沿った領域に形成されたヒータ領域と、前記ヒータ領域から前記絶縁基板の前記端縁側の側面にかけて設けられ、上面に前記抵抗膜層が形成された傾斜面と、を備えるコーナヘッド型サーマルヘッドであって、前記傾斜面において前記ヒータ領域以外の前記抵抗膜層上に設けられた共通電極と、前記傾斜面において前記共通電極に沿って前記抵抗膜層の下方に埋め込まれ、前記共通電極と協働して前記ヒータ領域へ供給する電流を流す補強導体と、前記ヒータ領域を挟んで前記共通電極と対向した前記抵抗膜層上の領域に設けられ、前記共通電極及び前記補強導体と協働して前記ヒータ領域の所定の部分に電流を供給する個別電極と、を含むことを特徴とするコーナヘッド型サーマルヘッド。
【請求項2】 絶縁基板上にグレーズ層を形成する段階と、前記グレーズ層の上面から下方に向かい、前記グレーズ層の一部を含んだ領域をハーフカットし溝を形成する段階と、前記溝の中に補強導体を埋め込む段階と、前記グレーズ層の上面の所定の位置から、前記補強導体の一部を残して前記絶縁基板の所定深さまで傾斜面ができるようハーフカットする段階と、前記グレーズ層上及び前記傾斜面上に抵抗膜層、共通電極、個別電極及び保護膜を形成し、単品分離する段階と、を含むことを特徴とするコーナヘッド型サーマルヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開平6−344584
【公開日】平成6年(1994)12月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−137955
【出願日】平成5年(1993)6月8日
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【公開日】平成6年(1994)12月20日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)6月8日
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
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