説明

コーナーアングル部材

【課題】包装作業における作業性を向上させるとともに、当該包装用部材の生産性を向上させる。
【解決手段】複数の積荷3より形成される略直方体の角部に配設される断面L字形状の板状部材からなり、当該複数の積荷の荷崩れを防止するコーナーアングル部材1であって、前記板状部材が、中空状に膨出する複数のキャップ11が形成されたキャップシート12と、このキャップシート12のキャップ開口側に積層されるバックシート13とを有する気泡ボード10、又は、この前記キャップシートのキャップ膨出側に積層されるライナーシートをさらに有する気泡ボード10からなり、気泡ボード10の積荷3の角部と接触する表面が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する積荷接触層15からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送時等における積荷の荷崩れを防止するために用いるコーナーアングル部材に関し、特に、気泡ボードからなる屈曲形状のコーナーアングル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の輸送や倉庫内における移動等の際には、積荷の荷崩れ防止等の観点から様々な包装用部材を用いて包装が行われている。
例えば、特許文献1又は2には、断面がL字状に屈曲した形状の包装用部材(以下、コーナーアングル部材という。)が開示されている。
このような部材は、例えば、直方体状に積み重ねられた段ボール箱の角部の鉛直方向の稜線にコーナーアングル部材の内側の谷線を当てて、これらを結束ベルトやストレッチフィルム等で一括りに巻き付けるようにして使用される。
このようにすることで、積荷の横方向に対する結束性を高め、段ボール箱の荷崩れや落下を効果的に防止することができる。
ところで、このような包装作業に当たっては、前述したようにコーナーアングル部材を積荷の角部に当接し、かつ、直立した状態のまま結束ベルト等で固縛する必要がある。このため、複数の作業員で作業を行わなければ円滑に包装作業ができない不便を生じていた。
【0003】
そこで、特許文献3〜5には、複数の作業員に依らなくてもこのような包装作業を円滑に遂行できるコーナーアングル部材が提案されている。
例えば、特許文献3には、積荷に接する面に両面粘着テープを接着したコーナーアングル部材が開示されており、両面粘着テープの接着力により直立状態を保持できるようになっている。
また、特許文献4又は5には、積荷に接する側の所定の高さの位置に平状の差込部材を一体的に形成したコーナーアングル部材が開示されている。このようなコーナーアングル部材によれば、差込部材を積荷の上下間に単に差し込むだけでコーナーアングル部材を自立状態に保持させることができる。
すなわち、これらの開示されているコーナーアングル部材によれば、従来のように部材を押し当てておく必要がないため、作業員一人でも適切に包装作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3119707号公報
【特許文献2】登録実用新案第3135241号公報
【特許文献3】特開平11−208658号公報
【特許文献4】特開2004−359246号公報
【特許文献5】実公昭55−41374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3のコーナーアングル部材は、その製造過程において基材である合成樹脂板や段ボール等に対して両面粘着テープ接着させる別の工程を必要とするか、包装の現場で作業員が基材に両面粘着テープを接着させる別の作業が必要となる。
このため、前者の場合には、コーナーアングル部材の生産性を低下させ、後者の場合には、包装の現場における作業性を低下させる問題となっていた。
加えて、特許文献3のコーナーアングル部材は、パレットとの接着を考慮してその下端にのみ両面粘着テープが貼付されており、長尺のコーナーアングル部材を用いた場合には自立状態を保持できない場合があった。
【0006】
また、特許文献4や5のコーナーアングル部材は、製品としては差込部材の位置が固定されるため、積荷やその集積物の高さの変化に適切に対応できない場合があった。つまり、積荷等の高さには通常バラツキがあるため、コーナーアングル部材を適当な高さの位置に配置することができない場合が多く、そのまま使用すると荷崩れの防止効果が大幅に低下する場合がある。
このため、差込部材の位置が異なる複数のコーナーアングル部材を準備し、あるいは、コーナーアングル部材の一部を切断し、切断したコーナーアングル部材を組み合わせる等して対応できる場合もあるが、組み合わせの検討や切断等の余分な作業が本来の包装作業の遂行を妨げることとなっていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、積荷に接する面に粘性や摩擦性を有する屈曲形状の気泡ボードを用いることにより、優れた作業性を提供するとともに、高い生産性を有するコーナーアングル部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のコーナーアングル部材は、複数の積荷より形成される略直方体の角部に配設される断面L字形状の板状部材からなり、当該複数の積荷の荷崩れを防止するコーナーアングル部材であって、前記板状部材が、中空状に膨出する複数のキャップが形成されたキャップシートと、このキャップシートのキャップ開口側に積層されるバックシートとを有する積層気泡ボードからなり、前記積層気泡ボードの前記積荷の角部と接触する表面が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する積荷接触層からなる構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコーナーアングル部材によれば、包装作業における作業性を向上させるとともに当該コーナーアングル部材の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る気泡ボードの第一の構造を示した積層図である。
【図3】図2に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る気泡ボードの第二の構造を示した積層図である。
【図5】図4に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る気泡ボードの第三の構造を示した積層図である。
【図7】図6に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係るコーナーアングル部材の形成方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第一実施形態のコーナーアングル部材の積荷接触面を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係るコーナーアングル部材を用いた包装方法を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための第一の説明図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための第二の説明図である。
【図13】本発明の第三実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図である。
【図14】本発明の第四実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図であり、図1(a)は、コーナーアングル部材全体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のZ部分を拡大した要部拡大図である。
本実施形態のコーナーアングル部材1は、図1(a)に示すように、断面がL字形状からなる板状部材からなり、この板状部材に複数のプラスチックシートを積層した気泡ボード10を用いるようにしている。
【0013】
コーナーアングル部材1は、図1(a),(b)に示すように、中空状に膨出する多数のキャップ11が真空成形されたキャップシート12に、キャップ11内に空気を封入するためキャップ11の開口側にバックシート13を積層し、さらに、キャップ11の膨出側にライナーシート14を積層した三層の気泡ボード10を用いて形成することができる。
また、コーナーアングル部材1は、キャップシート12とバックシート13とによって積層された二層の気泡ボード10を用いて形成することもできる。
なお、気泡ボード10の端面は、プラスチックシートなどの封止材19により覆うことで封止処理が施されている。
【0014】
このようなコーナーアングル部材1は、一般に、複数の積荷からなる略直方体の角部に配設して用いられ、このように配設されたコーナーアングル部材1を結束ベルト2で結束することで積荷の荷崩れを防ぐようにしている。
このため、コーナーアングル部材1は、図1(a)に示すように、結束ベルト2を通すためのスリット(ベルト通し孔16)を設けるのが好ましい。ベルト通し孔16を備えることにより、適切な位置で確実に結束ベルト2を締め付けることができ、振動等により結束ベルト2が外れることを防ぐことができる。また、所謂バックルのように結束ベルト2を締め付けた状態を保持することができるため、逐次的な締め付けや部分的な締め直しができ作業性を向上することができる。
なお、ベルト通し孔16は、積荷3に接触する両側の気泡ボード10又は片側の気泡ボード10の所定箇所に一又は二以上設けてもよく、また、スリットの代わりにベルトフック等何らかの係止手段を設けてもよい。
ただし、ストレッチフィルムを用いて結束する場合等もあるため、ベルト通し孔16を設けない態様も可能である。
【0015】
また、本実施形態のコーナーアングル部材1は、積荷3の角部に配設したときに積荷3と接する面の表層が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する積荷接触層15からなるようにしている。
このため、コーナーアングル部材1は、表層となるバックシート13又はライナーシート14そのものが所定の粘性や摩擦係数を有する粘性剤を成形した粘性シートからなる構成とすることができる。
図2は、本実施形態に係る気泡ボードの第一の構造を示した積層図であり、具体的には、バックシート又はライナーシートが粘性シートからなる気泡ボードの断面を示した断面図である。
すなわち、コーナーアングル部材1は、図2(a)に示すように、バックシート13の層を粘性シートからなる積荷接触層15とした三層の気泡ボード10によって形成してもよく、図2(b)に示すように、ライナーシート14の層を粘性シートからなる積荷接触層15とする三層の気泡ボード10によって形成してもよく、図2(c)に示すように、バックシート13の層を粘性シートからなる積荷接触層15とする二層の気泡ボード10によって形成してもよい。
【0016】
ここで、ライナーシート14を積荷接触層15として一体成形する気泡ボードの製造方法について説明する。
図3は、図2に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図であり、製造装置の一例を示した図である。
【0017】
図3に示すように、製造装置5は、三つのフラットダイ51〜53と、成形ロール55と、押圧ロール56と、融着ロール57とを備えている。
フラットダイ51及び52は、所定の樹脂材料を薄膜状に押し出し、フラットダイ53は、所定の粘性を有する粘性剤を薄膜状に押し出すことによって、それぞれフラット状のシートを連続的に供給する。
樹脂材料は、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を単独で、又は、二種以上を混合して用いることができる。
粘性剤は、コーナーアングル部材1を剥がしたときに積荷の表面を損傷することがなく、繰り返し利用し得る粘性の材料等(例えば、ゴム系の樹脂材料)が好ましい。
【0018】
また、粘性剤として、ゴムや熱可塑性エラストマー等、積荷に当接したコーナーアングル部材1を一時的に保持できる程度の摩擦係数を有する他の材料を用いてもよい。具体的には、水素添加型熱可塑性エラストマー、エチレン−α−オレフィン共重合プラストマー、又は、これらをブロックポリプロピレンと水素添加型熱可塑性エラストマー及び/又はエチレン−α−オレフィン共重合プラストマーとを主成分とした材料を用いることができる。
なお、これらの材料は例示であり、特に、これらに限定されるものではない。
【0019】
キャップシート用のフラットダイ51から供給されたフラット状のキャップシート12は、成形ロール55に供給される。
成形ロール55には、外周面に多数のキャビティ孔551が設けられている。
各キャビティ孔551は、図示しない真空ポンプにつながっており、キャビティ孔551を真空吸引することにより、キャップシート12に中空状に膨出する多数のキャップ11が形成される。
【0020】
キャップ11が形成されたキャップシート12は、成形ロール55と押圧ロール56との間で、フラットダイ52から供給されるバックシート13と熱融着することで二層の気泡ボード10が形成される。
その後、この二層の気泡ボード10のキャップ11の頂面側に、フラットダイ53から供給される粘性シートからなるライナーシート14を融着ロール57で加圧して融着させる。
このようにして、ライナーシート14の層を積荷接触層15とする三層の気泡ボード10(図2(b)参照)を製造することができる。
このような製造方法によれば、従来の気泡ボードの製造工程において、キャップシート12とライナーシート14とを積層する工程に代えて、所定の粘性や摩擦係数を有する積荷接触層15を表層として積層する工程を組み込むことで必要な気泡ボード10を一体成形することができる。
このため、従来のように、製造された気泡ボードに対して粘着テープを接着させるなどの手間や工程が不要となり、優れた作業性と高い生産性を有するコーナーアングル部材1を実現することができる。
【0021】
また、本実施形態のコーナーアングル部材1は、気泡ボード10の表層上に前述した粘性シートからなる積荷接触層15をさらに積層したものを用いて形成することもできる。
図4は、本実施形態に係る気泡ボードの第二の構造を示した積層図であり、具体的には、バックシート上又はライナーシート上に粘性シートからなる積荷接触層15をさらに積層した気泡ボードの断面を示した断面図である。
すなわち、コーナーアングル部材1は、図4(a)に示すように、三層の気泡ボード10のバックシート13上に積荷接触層15を積層したものを用いて形成してもよく、図4(b)に示すように、三層の気泡ボード10のライナーシート14上に積荷接触層15を積層したものを用いて形成してもよく、図4(c)に示すように、二層の気泡ボード10のバックシート13上に積荷接触層15を積層したものを用いて形成してもよい。
【0022】
ここで、ライナーシート14上に粘性シートからなる積荷接触層15をさらに積層した気泡ボードの製造方法について説明する。
図5は、図4に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図であり、製造装置の一例を示した図である。
図5に示すように、この製造装置5aは、図3に示す製造装置5にフラットダイ54と融着ロール58とを加えたものである。
ただし、図3に示す製造装置5においては、フラットダイ53が粘性シートを形成する役割を担っていたが、図5に示す製造装置5aにおいては、フラットダイ53が樹脂材料からなるライナーシート14を形成し、フラットダイ54が粘性シートを形成するようにしている。
なお、二層の気泡ボードを形成するまでは、図3に示す製造装置5を用いた場合と同様であるため、その部分については前述の説明を援用する。
【0023】
ここで、製造装置5aは、形成した二層の気泡ボードのキャップ11の頂面と、フラットダイ53から供給されるライナーシート14とを融着ロール57で加圧しつつ熱融着することで、三層の気泡ボードを形成する。
その後、この三層の気泡ボードのライナーシート14側に、フラットダイ54から供給される粘性シートを融着ロール58で加圧しつつ融着させる。
このようにして、ライナーシート14の層に積荷接触層15をさらに積層した気泡ボード10(図4(b)参照)を製造することができる。
このような製造方法によれば、従来の気泡ボードの製造工程に所定の粘性や摩擦係数を有する積荷接触層15をさらに積層する工程を組み込むことで必要な気泡ボード10を一体成形することができる。
このため、このようにして作られた気泡ボード10を用いることで、優れた作業性のみならず高い生産性を有するコーナーアングル部材1を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態のコーナーアングル部材1は、表面に所定の塗料を塗布した気泡ボード10を用いて形成することもできる。
すなわち、気泡ボード10の表面に所定の塗料を塗布することによりその表層上に所定の粘性や摩擦係数を有する積荷接触層15をさらに積層するものである。
塗料は、例えば、加温された状態で供給されるホットメルトタイプ(たとえば、百数十℃にて塗布される)の粘着剤を用いることが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、コーナーアングル部材1を積荷から剥がしたときに積荷の表面を損傷することがなく、また、繰り返し利用し得る程度の粘性を有する塗料を適宜選択することができる。
【0025】
図6は、本実施形態に係る気泡ボードの第三の構造を示した積層図であり、具体的には、気泡ボードの表面に所定の粘性や摩擦係数を有する塗料を塗布することによって表層上に積荷接触層15を積層した気泡ボードの断面を示した断面図である。
すなわち、図6(a)〜(c)に示すように、所定の粘性又は摩擦係数を有する塗料を塗布することによっても、図4(a)〜(c)と同じ層構造の気泡ボード10を形成することができる。
このため、このような気泡ボード10を用いてコーナーアングル部材1を形成することができ、さらに、図6(d)に示すように、キャップ11の頂面に前記塗料を塗布することで積荷接触層15を積層した二層の気泡ボードを用いて形成してもよく、図6(e)に示すように、キャップ11の頂面部分のライナーシート14上に前記塗料を塗布することで積荷接触層15を積層した三層の気泡ボード10を用いて形成してもよい。
【0026】
ここで、表面に粘着剤を塗布することでライナーシート14上に積荷接触層15を積層した気泡ボードの製造方法について説明する。
図7は、図6に示す気泡ボードの製造方法を説明するための説明図であり、製造装置の一例を示す説明図である。
図7に示すように、製造装置5bは、図3に示す製造装置5に粘着剤塗布ユニット6を加えたものである。
なお、三層の気泡ボードを形成するまでは、図5に示す製造装置5aと共通であるため、その部分については前述した説明を援用する。
【0027】
ここで、製造装置5bは、形成した三層の気泡ボードを粘着剤塗布ユニット6に供給する。
粘着剤塗布ユニット6は、図7に示すように、粘着剤塗布部61、転写ベルト62、駆動ロール63、従動ロール64、転写ロール65、押圧ロール66を備える。
粘着剤塗布部61は、非図示の開閉弁やスロットダイ等を備える。開閉弁は、転写ベルト62の幅方向に相当数配列され粘着剤塗布のオンオフを制御する。スロットダイは、転写ベルト62に当接され、粘着剤を転写ベルト62上に薄くかつ均一に塗布することができる。
このため、粘着剤塗布部61は、転写ベルト62の移動速度に応じた開閉弁の制御にもとづき、所望のパターンの粘着剤をこの転写ベルト62上に塗布することができる。
【0028】
転写ベルト62は、従動ロール64から駆動ロール63に向かう方向に移動し、従動ロール64を通過した後で粘着剤塗布部61により粘着剤が塗布される。
続いて、粘着剤の塗布された転写ベルト62は、駆動ロール63を経た後、転写ロール65によって気泡ボード10と当接し、押圧ロール66との間で加圧される。
これにより、転写ベルト62上に塗布された粘着剤が気泡ボード10に転写される。
このようにして、ライナーシート14の層に積荷接触層15をさらに積層した気泡ボード10(図6(b)又は(e)参照)を製造することができる。
【0029】
このような製造方法によれば、所望のパターンで塗料を塗布できるため、塗料の塗布面積を調整することができる。
このため、被着物の種類や用途に応じ、粘性や摩擦係数が最適なコーナーアングル部材1を形成することができる。
また、このような製造方法によれば、従来の気泡ボードの製造工程に組み合わせた一工程で必要な気泡ボード10を製造することができる。
このため、このようにして作られた気泡ボード10を用いることで、優れた作業性のみならず高い生産性を有するコーナーアングル部材1を実現することができる。
【0030】
つぎに、このようにして製造した気泡ボードを用いたコーナーアングル部材の形成方法について説明する。
図8は、コーナーアングル部材の形成方法を説明するための図である。
すなわち、図8(a)に示すように、断面の一方が斜め加工された2つの長尺矩形状の気泡ボード10を準備し、これらをL字状に組み合わせて接合することで本実施形態のコーナーアングル部材1を形成することができる。
このように、L字の形状が固定されたコーナーアングル部材1によれば、屈曲する手間を必要とせず即座に包装部材として使用することができる。また、屈曲形状が安定しているため作業性に優れている。
また、図8(b)に示すように、1枚の長尺矩形状の気泡ボード10の幅中央部に、表層のシートを残したV字状の溝部17を作ることで、この溝部17を軸に屈曲可能なコーナーアングル部材1を形成することができる。
このようなコーナーアングル部材1によれば、平状あるいは二つ折りにして平積みしておくことができるため、収納しやすく持ち運びにも便利である。また、使用時には、積荷の形状にあわせて屈曲させることができるため、柔軟性を有する。
【0031】
図9は、本実施形態のコーナーアングル部材1の積荷接触面を示す説明図である。
図9(a)に示すように、本実施形態のコーナーアングル部材1は、積荷に接する面の全部を所定の粘性や摩擦係数を有する積荷接触層15とすることができる。
また、図9(b)〜(d)に示すように、本実施形態のコーナーアングル部材1は、積荷に接する面の一部を所定の粘性や摩擦係数を有する粘着剤等の塗料で所望のパターンに塗布することで形成することもできる。
塗料の塗布パターンは、例えば、同図(b)に示すように複数の所定サイズの長方形のパターンや、同図(c)に示すように所定サイズの正方形が千鳥状に散らばったパターンにすることができる。また、同図(d)に示すように積荷に当接させた場合に応力がより働くキャップ11の頂面に塗料を塗布するようにしてもよい。
このように、被着物と接する積荷接触層15の面積を変えることによって粘着力に差異を持たせることができる。
このため、部材自身の重さや積荷3の被着面の素材等に応じ最適な粘着力を有するコーナーアングル部材1を、積荷接触層15をなす塗料の塗布パターンや塗布面積を調整することで形成することができる。
【0032】
つぎに、本実施形態に係るコーナーアングル部材1を用いた包装方法について説明する。
図10は、本実施形態のコーナーアングル部材1を用いた包装方法を説明するための説明図である。
ここでは、図10(a)に示すように、所謂パレット4上に積載された段ボール箱などの積荷3を包装する方法について説明する。また、同図に示すように、本包装方法においては、4本のコーナーアングル部材1と、積荷の締め付けに用いる1本の結束ベルト2を用いる。
【0033】
本包装方法は、各コーナーアングル部材1を、積荷3の各角部Cに当て、これらコーナーアングル部材1と積荷3とを結束ベルト2で一括りに結束する作業を作業員一人で実施することができる。
【0034】
このため、図10(b)に示すように、まず、作業員は、一本目のコーナーアングル部材1をその内側の面を積荷3の角部C1に向けて押し当てる。
これにより、コーナーアングル部材1は、積荷3の角部C1に鉛直方向に立った状態に仮止めされる。これは、本実施形態のコーナーアングル部材1が、その内側の層に所定の粘性や摩擦係数を有する積荷接触層15を有し、その粘着力や摩擦力により自立した状態を保つことができるからである。
【0035】
次に、同作業員は、図10(c)に示すように、積荷3の角部C2に対して二本目のコーナーアングル部材1を当てて自立させる。
続いて、同作業員は、図10(d)に示すように積荷3の角部C3に対して三本目のコーナーアングル部材1を当て、最後に、図10(e)に示すように、積荷3の角部C4に対して四本目のコーナーアングル部材1を当てて自立させる。
これにより、各コーナーアングル部材1はすべての角部Cに自立した状態に仮止めされ、かつ、各コーナーアングル部材1のベルト通し孔16には結束ベルト2が通された状態となる。
そして、同作業員は、図10(f)に示すように、積荷3を周回させた結束ベルト2を締め付け、留め具により結束ベルト2を留める。
これにより、本実施形態のコーナーアングル部材1を用いた積荷3の包装作業は終了する。
【0036】
以上のように、本実施形態のコーナーアングル部材1によれば、複数の積荷3より形成される略直方体の角部Cに配設される断面L字形状の板状部材からなり、前記板状部材が、中空状に膨出する複数のキャップ11が形成されたキャップシート12と、このキャップシート12のキャップ11の開口側に積層されるバックシート13とを有する気泡ボード10からなり、気泡ボード10の前記積荷の角部Cと接触する表面が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する積荷接触層15からなるようにしている。
このため、コーナーアングル部材1を積荷3の角部Cの適切な位置に当てることで、人手を介さずコーナーアングル部材1をその位置に自立させることができる。
このため、複数の作業員に依らずとも、容易、円滑かつ適切に包装作業を行うことができ、これにより積荷3の荷崩れを効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態のコーナーアングル部材1は、即時使用できるように屈曲形状が固定されたもののほか、使用時に屈曲するようにした屈曲自在なものによっても実現することができる。このため、平状や折り畳み形状にすることができ、収納性や可搬性に優れたコーナーアングル部材1を提供することができる。
また、積荷接触層15の材料のみならず積荷接触面に変化を持たせることで粘着力を変えることができるため、積荷3の被着面やコーナーアングル部材1の重さに応じた最適な粘着力を有するコーナーアングル部材1を提供することができる。
【0038】
また、本実施形態のコーナーアングル部材1は、プラスチックの気泡ボード10によって形成されているため、耐久性や耐水性にも優れる。このため、繰り返しの利用が可能であり経済的である。
また、耐衝撃性に優れ、積荷3を外部の衝撃等から効果的に保護することができる。
また、軽量であるため、持ち運び等の取扱いが容易である。また、被着物に対する粘着力も小さくてすむため必要な粘性材を節約することができる。
また、熱可塑性を有しているためリサイクル性に優れており、また、焼却による塩素ガスの発生もないため、環境性にも優れている。
【0039】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るコーナーアングル部材1aについて説明する。
図11及び図12は、本発明の第二実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図である。具体的には、図11(a)は、コーナーアングル部材1aの正面図、平面図及び右側面であり、図11(b)は、図11(a)のA−A部分の要部断面図であり、図12は、コーナーアングル部材1aが束ねられた様子を示した図である。
これらの図に示すように、本実施形態のコーナーアングル部材1aは、断面L字状の気泡ボード10からなるコーナーアングル部材1である点において第一実施形態と同様である。
【0040】
しかしながら、コーナーアングル部材1aの外側の面に突出した所定形状の凸部1tを備えるとともに、内側の面にこの形状に対応して陥没した形状の凹部1oを備える点において第一実施形態と異なる。すなわち、本実施形態のコーナーアングル部材1aが、凸部1tと凹部1oとを備えることにより、このコーナーアングル部材1aと同形状の他のコーナーアングル部材(1a)とを束ねたときに、コーナーアングル部材1aの凸部1tと他のコーナーアングル部材(1a)の凹部1oとが係合され、または、コーナーアングル部材1aの凹部1oと他のコーナーアングル部材(1a)の凸部1tとが係合されるようにしている。
他の構成は、第一実施形態と同様である。このため、共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態のコーナーアングル部材1aは、図11(a)に示すように、L1(外頂点Poから右側の凸部1tまでの距離)とL2(内頂点Piから右側の凹部1oまでの距離)とが同一となるようにして右側の凸部1t及び右側の凹部1oを形成する。同様に、L3(外頂点Poから左側の凸部1tまでの距離)とL4(内頂点Piから左側の凹部1oまでの距離)とが同一となるように左側の凸部1t及び左側の凹部1oを形成する。
ここで、少なくとも、右側の凸部1tと右側の凹部1oとの位置関係は、気泡ボード10の長手方向の同じライン上の位置に配置し、左側の凸部1tと左側の凹部1との位置関係は、気泡ボード10の長手方向の同じライン上の位置に配置されるようにする。なお、同図においては、右側の凸部1t、右側の凹部1o、左側の凸部1t及び左側の凹部1oが、気泡ボード10の長手方向の同じライン上の位置に配置されている。
【0042】
また、凸部1tの形状と凹部1oの形状は、対応する形状になるように形成する。
例えば、凸部1tは、図11(b)に示すように、コーナーアングル部材1aの外側の面に直径φの柱状樹脂を融着又は接着することで形成することができる。
これに対し、凹部1oは、同図に示すように、コーナーアングル部材1aの内側の面に前記柱状樹脂の直径φと同じ直径φ’の筒状の窪みを形成する。
この場合、凹部1oの窪みの深さdは、凸部1tの高さh以上であればよい。このため、凹部1oの底面は、貫通されていてもよく、最表層のみで形成されていてもよい。
【0043】
このようにしてなる本実施形態のコーナーアングル部材1aは、図12の上図に示すように、そのコーナーアングル部材1aの外頂点Poを含む稜線と他のコーナーアングル部材(1a)の内頂点Piの谷線とが重なるようにして束ねると、その右側の凸部1tが他のコーナーアングル部材(1a)の右側の凹部1oに係合されるとともに、その左側の凸部1tが、他のコーナーアングル部材(1a)の左側の凹部1oに係合される。
この結果、各コーナーアングル部材1aは、図12の下図に示すように、一定方向に束ねた状態で収まりよく固定することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明の第二実施形態に係るコーナーアングル部材1aによれば、気泡ボード10の一方の面に所定形状の凸部1tと、この他方の面に前記所定形状に対応した凹部1oとを備え、前記凸部1t及び凹部1oを有する他のコーナーアングル部材(1a)と束ねたときに、前記他のコーナーアングル部材(1a)の凹部1oと当該コーナーアングル部材1aの前記凸部1tとが係合し、又は、前記他のコーナーアングル部材(1a)の凸部1tと当該コーナーアングル部材1aの前記凹部1oとが係合するように前記凸部1t及び凹部1oを配置するようにしている。
このため、複数のコーナーアングル部材1aを束ねた状態で固定することができ、高い収容性や可搬性を実現することができる。
【0045】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係るコーナーアングル部材1bについて説明する。
本実施形態に係るコーナーアングル部材1bは、図13に示すように、断面L字状の気泡ボード10からなるコーナーアングル部材である点において前述した第一又は第二実施形態と同様である。
しかしながら、本実施形態においては、所定サイズの大小2組のコーナーアングル部材1cを所定の向きに組み合わせることによって、特定の形状とすることができる点で前述の各実施形態とは異なる。
他の構成は第一実施形態と同様である。このため、共通する構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0046】
図13は、本実施形態のコーナーアングル部材を説明するための図である。具体的には、図13(a)は、本実施形態に係る大小二組のコーナーアングル部材1bを組み合わせる前の様子を説明するための図であり、図13(b)は、これらコーナーアングル部材1bを組み合わせた後の様子を説明するための図である。
なお、大きい方のコーナーアングル部材1bをコーナーアングル部材1L、小さい方のコーナーアングル部材1bをコーナーアングル部材1Sとして以下説明する。
【0047】
図13(a),(b)に示すように、本実施形態においては、コーナーアングル部材1S同士を互いに係合するように組み合わせ、さらにこれらの周囲をコーナーアングル部材1Lで包囲するように組み合わせることにより、これらのコーナーアングル部材1bを柱状の束としてまとめることができる。
【0048】
ここで、本実施形態のコーナーアングル部材1bを実現するには、以下の(1)〜(7)の条件を満たす必要がある。
まず、コーナーアングル部材1Sの外辺長laは、コーナーアングル部材1Sの内辺長lcと幅lbの和であるため、次式(1)の関係が成り立つ。
la=lb+lc ・・・・・(1)
また、コーナーアングル部材1Sの外辺長laは、コーナーアングル部材1Lの内辺長Lcからコーナーアングル部材1Lの幅Lbを減じた長さと等しくなる必要があるため、次式(2)の関係が成り立つ。
la=Lc−Lb ・・・・・(2)
また、コーナーアングル部材1Sの内辺長lcは、コーナーアングル部材1Sの幅lbと同じ長さである必要があるため、次式(3)の関係が成り立つ。
lb=lc ・・・・・(3)
また、コーナーアングル部材1Lの外辺長Laは、コーナーアングル部材1Lの内辺長Lcと幅Lbとの和であるため、次式(4)の関係が成り立つ。
La=Lc+Lb ・・・・・(4)
また、コーナーアングル部材1Lの外辺長Laは、コーナーアングル部材1Sの外辺長laとコーナーアングル部材1Lの幅Lbの二幅分との和と等しくなる必要があるため、次式(5)の関係が成り立つ。
La=la+2Lb ・・・・・(5)
また、コーナーアングル部材1Lの内辺長Lcは、コーナーアングル部材1Sの外辺長laとコーナーアングル部材1Lの幅Lbとの和と等しく、また、コーナーアングル部材1Sの外辺長laとコーナーアングル部材1Sの幅lbとの和と等しくなる必要があるため、次式(6)の関係が成り立つ。
Lc=la+lb=la+Lb ・・・・・(6)
また、前記式(6)により、コーナーアングル部材1Sの幅lbと、コーナーアングル部材1Lの幅Lbとは、次式(7)の関係が成り立つ。
lb=Lb ・・・・・(7)
【0049】
このように、2つの外辺長が等しいコーナーアングル部材1Lとコーナーアングル部材1Sとを、図13(b)に示すように密接した柱状の束とするには、前記(1)〜(7)の条件を満たす必要がある。
特に、式(7)に示すように、少なくともコーナーアングル部材1Lの幅Lbとコーナーアングル部材1Sの幅lbとを等しく形成する必要がある。
【0050】
以上説明したように、本発明の第三実施形態においては、各サイズが所定条件を満たすことを前提に、大小二組のコーナーアングル部材1bを形成することによって、各コーナーアングル部材1bを係合した状態で束ねることができる。
このため、単純な柱状にして複数のコーナーアングル部材1bを束ねることができる。
したがって、本実施形態によれば、収納性や可搬性に優れたコーナーアングル部材1bを提供することができる。
【0051】
[第四実施形態]
つぎに、本発明の第四実施形態に係るコーナーアングル部材1cについて説明する。
図14は、本実施形態に係るコーナーアングル部材を説明するための説明図である。
図14に示すように、本実施形態のコーナーアングル部材1cは、気泡ボード10同士を屈曲自在に連結する樹脂ヒンジ7を備える。
すなわち、本実施形態のコーナーアングル1cは、この樹脂ヒンジ7を介してL字状に屈曲させることで積荷3の角部を包装する包装部材としての役割を果たすものであり、この点において前述の第一〜第三実施形態とは異なる。
他の構成は第一実施形態と同様である。このため、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
以下、樹脂ヒンジ7について詳細に説明する。
樹脂ヒンジ7は、図14に示すように、樹脂製の継手部材であって、二つの気泡ボード10を連結することで本実施形態のコーナーアングル部材1cを形成する。
ちなみに、図14に示す樹脂ヒンジ7の連結部70は、気泡ボード10同士の初期連結角度が0゜である。このため、コーナーアングル部材1cとしては、この屈曲連結角度をおおよそ90゜にすることでL字の形状を形成することができる。なお、この屈曲連結角度は、180゜程度までの屈曲が可能である。
【0053】
樹脂ヒンジ7は、気泡ボード10の端部が取り付けられる一対の取付け部74と、取付け部74同士を屈曲自在に連結する連結部70とを備えている。
具体的には、樹脂ヒンジ7の連結部70は、取付け部74同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な軟質樹脂部71と、取付け部74同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な薄肉状(例えば、厚さ0.5〜1.5mm)の硬質樹脂部72とを備えている。
このようにすると、ヒンジ軸を持たない曲げ変形式の樹脂ヒンジ7でありながら、連結状態を維持し得る強度と、スムーズな屈曲を可能にする柔軟性を兼ね備えることができる。
つまり、連結部70は、軟質樹脂部71だけでなく、強度的に優れる硬質樹脂部72を併せ持つので、要求される連結強度を確保することが可能となる。
また、硬質樹脂部72は、柔軟性に優れる薄膜状としたので、連結部70のスムーズな屈曲も可能となる。
【0054】
また、硬質樹脂部72は、軟質樹脂部71の少なくとも一つの面を覆うことが好ましい。
例えば、図14に示す樹脂ヒンジ7では、軟質樹脂部71の二つの面のうち、一方の側面を硬質樹脂部72で覆っている。
このようにすると、軟質樹脂部71の表面を硬質樹脂部72で保護することができるので、軟質樹脂部71の損傷に起因する連結部70の強度低下を防止することができる。
【0055】
また、硬質樹脂部72は、取付け部74と同一の樹脂材料によって、取付け部74と一体に成型されることが好ましい。
例えば、図14に示す樹脂ヒンジ7では、取付け部74及び硬質樹脂部72を同一の樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂)で一体に成形し、硬質樹脂部72の片側に沿って軟質樹脂部71を形成している。
このようにすると、硬質樹脂部72による取付け部74同士の連結強度を高めることができるだけでなく、共押出成形などによって樹脂ヒンジ7を一工程で製造することが可能となり、樹脂ヒンジ7の製造工程を簡略化することができる。
【0056】
さらに、硬質樹脂部72の片側又は両側に凹部73を有し、この凹部73に軟質樹脂部71を形成することが好ましい。
例えば、図14に示す樹脂ヒンジ7では、硬質樹脂部72の片側に凹部73を有し、この凹部73内に軟質樹脂部71を形成している。
すなわち、硬質樹脂部72の取付け部74と取付け部74との間に凹部73を形成し、この凹部73に軟質樹脂部71を充填して一体成形してある。
このようにすると、軟質樹脂部71の露出部分を減らすことができるので、軟質樹脂部7の損傷に起因する連結部70の強度低下を防止することができる。
【0057】
また、軟質樹脂部71は、熱可塑性エラストマーとし、硬質樹脂部72は、ポリプロピレン樹脂とすることが好ましい。
例えば、図14に示す樹脂ヒンジ7では、軟質樹脂部71を熱可塑性エラストマーとし、硬質樹脂部72及び取付け部74をポリプロピレン樹脂としている。
このようにすると、いずれも押出成形が可能となるので、軟質樹脂部71、硬質樹脂部72及び取付け部74を共押出成形法によって同時成形することができる。
【0058】
なお、軟質樹脂部71は、熱可塑性エラストマーに限らず、熱硬化性エラストマーなどで形成してもよく、エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、PNC系、ウレタン系、エステル系、アミド系などのものを用いることができる。
また、硬質樹脂部72や取付け部74は、ポリプロピレン樹脂に限らず、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂などの汎用樹脂あるいは、ポリアミド樹脂、ポリカーボネード樹脂などのエンジニアリングプラスチックで形成してもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態のコーナーアングル部材1cによれば、二つの気泡ボード10を屈曲自在に連結する樹脂ヒンジ7を備えるようにしている。
このため、必要に応じて、気泡ボード10を屈曲形状にしてコーナーアングルとして用い、平状もしくは二つ折りの状態にして収容し、又は、持ち運びすることができる。
【0060】
また、樹脂ヒンジ7が、気泡ボード10が取り付けられる一対の取付け部74と、取付け部74同士を屈曲自在に連結する連結部70とを備え、この連結部70が、取付け部74同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な軟質樹脂部71と、取付け部74同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な薄肉状の硬質樹脂部72とを備えるので、ヒンジ軸を持たない曲げ変形式の樹脂ヒンジ7でありながら、連結状態を維持し得る強度と、スムーズな屈曲を可能にする柔軟性を兼ね備えることができる。
つまり、連結部70は、軟質樹脂部71だけでなく、強度的に優れる硬質樹脂部72を併せ持つので、連結強度を高めることができる。
また、硬質樹脂部72は、柔軟性に優れる薄肉状としたので、連結部70のスムーズな屈曲も可能となる。
【0061】
また、硬質樹脂部72が、軟質樹脂部71の少なくとも一つの面を覆うようにした場合には、軟質樹脂部71の表面を硬質樹脂部72で保護することができるので、軟質樹脂部71の損傷に起因する連結部70の強度低下を防止することができる。
【0062】
また、硬質樹脂部72が、取付け部74と同一の樹脂材料によって、取付け部74と一体に成形されるようにした場合には、硬質樹脂部72による取付け部74同士の連結強度を高めることができるだけでなく、樹脂ヒンジ7の製造工程を簡略化することができる。
【0063】
また、硬質樹脂部72の片側又は両側に、凹部73を有し、軟質樹脂部71が、凹部73内に形成されるようにした場合は、軟質樹脂部71の露出部分を減らすことができるので、軟質樹脂部71の損傷に起因する連結部70の強度低下を防止することができる。
また、軟質樹脂部71が、熱可塑性エラストマーであり、硬質樹脂部72が、ポリプロピレン樹脂である場合には、いずれも押出成形が可能になるので、軟質樹脂部71及び硬質樹脂部72を共押出成形法によって同時成形することができる。
【0064】
すなわち、本実施形態のコーナーアングル部材1cは、以上のような強度、柔軟性及び生産性に優れた樹脂ヒンジ7を用いて形成するようにしているため、利便性、作業性、生産性のみならず、繰り返し利用にも耐えうる耐久性に優れ、このため、信頼性の高いコーナーアングル部材1cとして提供することができる。
【0065】
以上、本発明について、第一〜第四実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、第一実施形態において、積荷3の角部の鉛直方向にコーナーアングル部材1を当てることで積荷の荷崩れを防止する例について説明したが、積荷3の角部の水平方向にコーナーアングル部材1を当てた使い方も可能である。この場合、積荷3の縦方向に対する結束性を高めることができるため、例えば、輸送中の振動による荷崩れを効果的に防ぐことができる。
また、第三実施形態や第四実施形態のコーナーアングル部材に、第二実施形態に係る凸部と凹部とを適用することで、可搬性や収容性がより優れたコーナーアングル部材を提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、積荷の荷崩れを防止するための部材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 コーナーアングル部材
10 気泡ボード
11 キャップ
12 キャップシート
13 バックシート
14 ライナーシート
15 積荷接触層
16 ベルト通し孔
17 溝部
1t 凸部
1o 凹部
18 接合部
2 結束ベルト
3 積荷
4 パレット
5 製造装置
6 粘着剤塗布ユニット
7 樹脂ヒンジ
70 連結部
71 軟質樹脂部
72 硬質樹脂部
74 取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積荷より形成される略直方体の角部に配設される断面L字形状の板状部材からなり、当該複数の積荷の荷崩れを防止するコーナーアングル部材であって、
前記板状部材が、中空状に膨出する複数のキャップが形成されたキャップシートと、このキャップシートのキャップ開口側に積層されるバックシートとを有する積層気泡ボードからなり、
前記積層気泡ボードの前記積荷の角部と接触する表面が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する積荷接触層からなる
ことを特徴とするコーナーアングル部材。
【請求項2】
前記板状部材が、前記キャップシートのキャップ膨出側に積層されるライナーシートを有する請求項1記載のコーナーアングル部材。
【請求項3】
前記積荷接触層が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する前記キャップシート又は前記バックシート又は前記ライナーシートからなる請求項2記載のコーナーアングル部材。
【請求項4】
前記積荷接触層が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有するシート層が、前記キャップシート又は前記バックシート又は前記ライナーシートの表面に積層形成されてなる請求項2記載のコーナーアングル部材。
【請求項5】
前記積荷接触層が、所定の粘性及び/又は所定の摩擦係数を有する塗料が、前記キャップシート又は前記バックシート又は前記ライナーシートの表面に塗布形成されてなる請求項2記載のコーナーアングル部材。
【請求項6】
前記積層気泡ボードの一方の面に所定形状の凸部と、この他方の面に前記所定形状に対応した凹部とを備え、
前記凸部及び凹部を有する他のコーナーアングル部材と束ねたときに、前記他のコーナーアングル部材の凹部と当該コーナーアングル部材の前記凸部とが係合し、又は、前記他のコーナーアングル部材の凸部と当該コーナーアングル部材の前記凹部とが係合するように前記凸部及び凹部を配置した請求項1〜5のいずれか一項記載のコーナーアングル部材。
【請求項7】
断面が所定の向きになるように組み合わせた場合に特定の形状を形成する請求項1〜6のいずれか一項記載のコーナーアングル部材。
【請求項8】
前記積層気泡ボード同士を屈曲自在に連結する樹脂ヒンジを備え、
前記樹脂ヒンジが、
前記積層気泡ボードが取り付けられる一対の取付け部と、
前記取付け部同士を屈曲自在に連結する連結部と、を備え、
前記連結部が、
前記取付け部同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な軟質樹脂部と、
前記取付け部同士を屈曲自在に連結する曲げ変形自在な薄肉状の硬質樹脂部と、を備える請求項1〜7のいずれか一項記載のコーナーアングル部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−126431(P2012−126431A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280067(P2010−280067)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】