説明

コーン及び硬さ測定装置

【課題】容易に測定対象の貫入抵抗値の測定、或いは貫入距離から測定対象の硬さを評価、測定するコーン、及び簡易な構造で、測定場所にも容易に持ち運べ、コーンを保持、落下させ、再現性もよく測定対象の硬さを評価・測定する硬さ測定装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するため、測定対象に落下させて、貫入距離から測定対象の硬さを評価する硬さ測定装置に用いられるコーンであって、頂点からの距離を示す目盛りを、側面に一周に渡って複数設けたことを特徴とするコーン、及び台部と、前記台部に立設した軸部前記軸部に保持され前記コーンを着脱可能に係止する保持機構を備えた保持部からなる支持体と、前記保持部に着脱可能に係止されるロットと前記ロットに連設された前記コーンからなる測定部と、から構成されることを特徴とする硬さ測定装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象、例えば粘性物・弾性物、より具体的には、油脂、クリーム、ホイップクリーム等の表面に落下させ、貫入抵抗値の測定、或いは貫入距離から測定対象の硬さを評価、測定するコーン及び硬さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の硬さを測定する装置として、特許文献1段落0020、特許文献2段落0142に記載のペネトロメーター等がある。円錐形のコーンと呼ばれる部分を、カップ等に取り分けた測定対象表面に落下させ、測定対象へのコーンの貫入距離を測定して、測定対象の硬度を知ることができる装置である。
【0003】
しかしながら、ペネトロメーターによる測定対象の硬度測定は、ペネトロメーターが設置されている実験室等においては、精度よく測定することができるものの、高価、かつ大掛かりである。従って、このようなペネトロメーターを測定対象がある測定場所への持ち込むのは困難であった。さらに、測定対象が時間の経過とともに変化する場合であって、実験室まで距離があるときには、測定結果はまるで意味のない値となり、測定対象の硬さを即座に測定できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−129286号公報
【特許文献2】特開2000−60450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、容易に測定対象の貫入抵抗値の測定、或いは貫入距離から測定対象の硬さを評価、測定するコーン、及び簡易な構造で、測定場所にも容易に持ち運べ、コーンを保持、落下させ、再現性もよく測定対象の硬さを評価・測定する硬さ測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
測定対象に落下させて、貫入距離から測定対象の硬さを評価する硬さ測定装置に用いられるコーンであって、頂点からの距離を示す目盛りを、側面に一周に渡って複数設けたことを特徴とするコーンの構成とした。
(2)
測定対象表面に(1)に記載のコーンを落下させて、前記コーンの貫入距離から測定対象の硬さを評価する硬さ測定装置であって、台部と、前記台部に立設した軸部前記軸部に保持され前記コーンを着脱可能に係止する保持機構を備えた保持部からなる支持体と、前記保持部に着脱可能に係止されるロットと前記ロットに連設された前記コーンからなる測定部と、から構成されることを特徴とする硬さ測定装置の構成とした。
(3)
前記台部に、測定対象を分注したカップの形状に凹んだ凹みを備え、前記カップを前記凹みに接して配置することで、前記コーンの頂点が、前記カップの平面略中央に位置することを特徴とする(2)に記載の硬さ測定装置の構成とした。
(4)
前記カップが筒状で、前記台部を前記凹みがカップの形状に湾曲した湾曲部で、前記湾曲部の端部にそれぞれネジ留めされた左右バーを備えた台部とし、前記湾曲部中央から反カップ側に突出した固定部に、前記軸体を立設したことを特徴とする(3)に記載の硬さ測定装置の構成とした。
(5)
前記保持部が前記軸部に沿って、上下移動可能としたことを特徴とする(2)〜(4)の何れか1項に記載の硬さ測定装置の構成とした。
(6)
前記軸部の軸にネジ山を設け、前記軸に螺着したナットで前記保持部を挟持するとともに、前記ナットを回転させることで前記保持部を上下移動可能としたことを特徴とする(5)に記載の硬さ測定装置の構成とした。
(7)
前記保持機構が、前記軸部に高さ調節可能に接続する上下に貫通する貫通孔を備えた筒部に穿設された前記貫通孔に垂直に接続する第二貫通孔に挿通固定される筒と、前記筒内の前記貫通孔側に移動可能に挿入されたピンと、前記ピンを前記貫通孔側に押し込む方向に押圧するバネ体と、前記バネ体の反球体側を係止して前記筒内に閉じ込めるストッパーと、からなることを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の硬さ測定装置の構成とした。
(8)
さらに、前記保持部から前記コーンを脱離させる脱離部材を備え、前記脱離部材が、前記保持筒の貫通孔に挿入され、前記ロットを押し出すことを特徴とする(7)に記載の硬さ測定装置の構成とした。
(9)
前記コーンが、内部空洞で、上部天材が着脱可能であることを特徴とする(2)〜(8)の何れかに記載の硬さ測定装置の構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、コーンに目盛りを設けているので、作業者は測定対象に落下したコーンの貫入距離を簡単に把握することができる。さらに、本発明の硬さ測定装置は、簡易な構造でコーンを保持、落下させることができるので、小型、携帯性に優れている。従って、測定対象が存在する場所で即座に測定対象の硬さを測定、評価することが可能になるとともに、硬さが変化する測定対象の硬さの評価・把握、測定に極めて有効である。
【0008】
また、測定作業、貫入距離の読み取り容易であるので、短時間で繰り返し測定するケース、多数サンプルの測定にも有効である。さらに、簡易な構造のため、硬さ測定装置を複数台所持しても設備費用を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明である硬さ測定装置の斜視模式図である。
【図2】本発明であるコーンの説明図である。
【図3】測定部の保持機構の説明断面図である。
【図4】測定部の脱離機構の説明断面図である。
【図5】本発明を用いた測定対象の硬さの評価方法の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に示すように、本発明である硬さ測定装置1は、支持体2と、支持体2に着脱可能に係止されるコーン8aを含む測定部8と、コーンを脱離、落下させる脱離部材7とからなり、測定対象10表面にコーン8aを落下させて、コーン8aの貫入距離から測定対象10の硬さを評価する装置である。
【0012】
支持体2は、台部4と、台部4に立設した軸部5、軸部5に保持されコーン8aを着脱可能に係止する保持機構6dを備えた保持部6からなる。
【0013】
台部4は、測定対象10(一点鎖線)を分注したカップ9(点線透視図)が筒状である場合には、カップ9の側面形状に湾曲した湾曲部4cと、湾曲部4cの端部を折曲げ、それぞれネジ4e留めされた水平に設置面に接触する左右バー4a、4bと、湾曲部4cの中央から反カップ9側に突出した固定部4dとからなる。左右バー4a、4bとすることで、軽量で、分解、洗浄が容易で、携帯性にも優れている。
【0014】
そして、カップ9を湾曲部4cに接して配置することで、コーン8aの頂点8fが、カップ9の平面略中央に位置することとなる。そして、固定部4dから軸部5が立設する。
【0015】
なお、ここでは、測定対象10を分注したカップ9が筒状であるので、湾曲部4cの形状の凹みとしたが、測定対象10を分注したカップの形状に凹んだ凹みを備え、凹みに接してカップ9を配置することで、コーン8aの頂点8fが、カップ9の平面略中央に位置すれば、どのような凹みであってもよい。
【0016】
軸部5は、固定部4dに挿通し立設するネジ山5bを設けた軸5aと、軸5aを固定部4dに固定する軸5aに螺着して固定部4dを挟持するナット5c及びワッシャー5dと、保持部6を挟持するナット5c及びワッシャー5dとからなり、ナット5cを回転させることで、保持部6を軸5aに沿って上下位置調節可能とする。
【0017】
保持部6は、一端が軸5aに挿通する張り出し部6aと、張り出し部6aの他端に接続し上下に貫通した貫通孔6cが穿設された筒状の筒部6bと、貫通孔6c内で測定部8を着脱可能に係止する保持機構6dとからなる。
【0018】
保持機構6dは、図3、4に示すように、筒部6bに穿設され貫通孔6cに垂直に接続する第二貫通孔6eに挿通固定される筒6kと、筒6k内の貫通孔6c側に移動可能に挿入されたピン6iと、ピン6iを貫通孔6c側に押し込む方向に押圧するバネ体6hと、バネ体6hの反ピン6i側を係止して筒6k内に閉じ込めるストッパーあるネジ6g及び筒部6b側面に固定されたナット6fからなる。ナット6fを筒部に固定することで、第二貫通孔6e内にネジ山を形成する必要がなく加工が極めて容易である。また、第二貫通孔6e及び筒6kにネジ山を形成し、螺合させるとともに、ナット6fで締め付けてもよい。
【0019】
図3(B)に、保持機構6dの拡大断面図を示したように、保持機構6dは一般にスプリングプランジャーなどと呼ばれるもので、ピン6i先端が弧状に湾曲し、筒6kの先端の穴から脱落しないように、ピン6iの反先端側の径は筒6kの先端の穴より太く形成されている。ストッパーであるネジ6gは、筒6k内にネジ山で螺合し、筒6k外に露出している端部に形成された締め穴6mを六角レンチなどで回転させることで、ネジ6gの位置が変わりバネ体6hの反発力を調節することができる。
【0020】
また、第二貫通孔6eの貫通孔6cへの接続端の径は狭められていて、ピン6iのみがロットを押圧する構造が望ましい。必要以上にピン6iを貫通孔6c内に突出させないことにより、脱離動作が滑らかに行うことができる。保持機構は、ここに示す保持機構6dの構造に限定されることなく、例えば球体をバネ体6hで押圧するなど、種々の構造を採用することができる。何れにしても、ロット8cを係止するとともに、何らかの機構で係止を解除することができればよい。特に、ロット8cと触れる側は弧状であることが後述の理由から望ましい。バネ体6hには、コイルバネ、ゴムなどピン6iにバネ付勢を付与できるものであればよい。
【0021】
測定部8は、図1、2に示すように、保持部6に着脱可能に係止されるロット8c(点線)とロット8cに連設されたコーン8aからなる。
【0022】
コーン8aは、図2、3にも示すように、頂点8fからの等距離を示す目盛り8bを、側面8hに一周に渡って複数本設けた円錐形である。目盛りは、ラインとしてペイントしても、溝を形成してもよい。
【0023】
また、コーン8aの上部に連設されたロット8cとともに、図2に見られる外側から2列目の円の内側(天材8d)は、コーン8a上部に螺着8gしてロット8cとともに着脱できる。
【0024】
そしてコーン8aの内部は空洞8eとすることができる。空洞8eに重しを出し入れすることで、コーン8aの重さを調節することができ、異なる負荷で、また異なる測定対象の硬さを調べることができる。
【0025】
脱離部材7は、保持部6に連設するワイヤー7aと、ワイヤー7aに連結した係止部7cと棒7bからなる側面T字形状の部材である。棒7bは、貫通孔6cに挿入され、保持機構6dで係止されているロット8cを押し込み、ピン6iによるロット8cの係止を解除する。
【0026】
従って、棒7bは、貫通孔6c上部から保持機構6dを通過する程度の長さを要する。また、係止部7cは、ワイヤー7aを接続する部分であるとともに、棒7bが貫通孔6cに嵌り取り出せなくなるのを防ぐ。また、棒7bの先端は、球体のバネ体6h側への押し込みを滑らかにするために、先端がテーパー状であることが望ましい。
【0027】
次に、図3、4を参照して、測定部8、即ちコーン8a及びロット8cの保持機構及び脱離機構を説明する。先ず、図3に示すように、コーン8aに連設したロット8cを筒部6b底部から貫通孔6cに挿入する。そして、ロット8cでピン6iをバネ体6h側に押し込みピン6iの位置より図3上方に位置させる。すると、ピン6iがバネ体6hに押され、ロット8cを貫通孔6cの側壁に押しあて、ロット8cをピン6i及び貫通孔6c側壁で挟持して、測定部8を筒部6bに保持させることができる。
【0028】
測定部8を保持部6の筒部6bから脱離させ、落下させるには、図4に示すように、筒部6b上部の貫通孔6cに、脱離部材7の棒7bを挿入する。すると、ロット8cは下方に押し下げられつつ、ピン6iを通過するとピン6iによる貫通孔6c壁への押圧がなくなり落下する。このとき棒7bは、ピン6iによって貫通孔6c壁側へ押しつけられる。従って、緩やかに棒7bを上方から貫通孔6cに押し込んでいくと、棒7bの進入には抵抗が生じ、進入速度が遅くなりロット8cを不規則な加重で押し込むことがなく、測定部8は常に自由落下となる。よって、測定毎、作業者毎の落下速度の誤差が極めて低くなり、測定精度が高まる。
【0029】
次に、図5を参照して、本発明である硬さ測定装置の測定方法を説明する。コーン8aを測定対象10へ落下させ、測定対象10の硬さを把握或いは評価、測定する方法は概ね次の通りである。
【0030】
測定対象10表面から所定の高さに位置させたコーン8aを測定対象10表面に落下させ、所定時間経過後、測定対象10へのコーン8aの貫入距離を測定する。図5は、所定時間経過後の状態を示している。
【0031】
作業者は、コーン8aを落下させ所定時間経過後に、測定対象10表面付近に位置するコーン8aの側面8hの目盛り8bを目視することで、簡易に貫入距離を知り、測定対象10の硬さを把握或いは評価、測定することができる。多くの測定対象の測定或いは測定対象の硬さを繰り返し測定する場合に極めて有効である。
【0032】
加えて、予め硬さ(貫入抵抗値)が正確に調べられている対象を用いて、本発明で貫入距離を調べ、正確な貫入抵抗値と対比させた対照表(スタンダードカーブ)を作成しておくことで、より正確な測定対象の硬さも知ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 硬さ測定装置
2 支持体
4 台部
4a 左バー
4b 右バー
4c 湾曲部
4d 固定部
4e ネジ
5 軸部
5a 軸
5b ネジ山
5c ナット
5d ワッシャー
6 保持部
6a 張り出し部
6b 筒部
6c 貫通孔
6d 保持機構
6e 第二貫通孔
6f ナット
6g ネジ
6h バネ体
6i ピン
6k 筒
6m 締め穴
7 脱離部材
7a ワイヤー
7b 棒
7c 係止部
8 測定部
8a コーン
8b 目盛り
8c ロット
8d 天材
8f 頂点
8e 空洞
8g 螺着
8h 側面
9 カップ
9a 取っ手
10 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に落下させて、貫入距離から測定対象の硬さを評価する硬さ測定装置に用いられるコーンであって、頂点からの距離を示す目盛りを、側面に一周に渡って複数設けたことを特徴とするコーン。
【請求項2】
測定対象表面に請求項1に記載のコーンを落下させて、前記コーンの貫入距離から測定対象の硬さを評価する硬さ測定装置であって、台部と、前記台部に立設した軸部前記軸部に保持され前記コーンを着脱可能に係止する保持機構を備えた保持部からなる支持体と、前記保持部に着脱可能に係止されるロットと前記ロットに連設された前記コーンからなる測定部と、から構成されることを特徴とする硬さ測定装置。
【請求項3】
前記台部に、測定対象を分注したカップの形状に凹んだ凹みを備え、前記カップを前記凹みに接して配置することで、前記コーンの頂点が、前記カップの平面略中央に位置することを特徴とする請求項2に記載の硬さ測定装置。
【請求項4】
前記カップが筒状で、前記台部を前記凹みがカップの形状に湾曲した湾曲部で、前記湾曲部の端部にそれぞれネジ留めされた左右バーを備えた台部とし、前記湾曲部中央から反カップ側に突出した固定部に、前記軸体を立設したことを特徴とする請求項3に記載の硬さ測定装置。
【請求項5】
前記保持部が前記軸部に沿って、上下移動可能としたことを特徴とする請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の硬さ測定装置。
【請求項6】
前記軸部の軸にネジ山を設け、前記軸に螺着したナットで前記保持部を挟持するとともに、前記ナットを回転させることで前記保持部を上下移動可能としたことを特徴とする請求項5に記載の硬さ測定装置。
【請求項7】
前記保持機構が、前記軸部に高さ調節可能に接続する上下に貫通する貫通孔を備えた筒部に穿設された前記貫通孔に垂直に接続する第二貫通孔に挿通固定される筒と、前記筒内の前記貫通孔側に移動可能に挿入されたピンと、前記ピンを前記貫通孔側に押し込む方向に押圧するバネ体と、前記バネ体の反球体側を係止して前記筒内に閉じ込めるストッパーと、からなることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の硬さ測定装置。
【請求項8】
さらに、前記保持部から前記コーンを脱離させる脱離部材を備え、前記脱離部材が、前記保持筒の貫通孔に挿入され、前記ロットを押し出すことを特徴とする請求項7に記載の硬さ測定装置。
【請求項9】
前記コーンが、内部空洞で、上部天材が着脱可能であることを特徴とする請求項2〜請求項8の何れか1項に記載の硬さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2852(P2013−2852A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131735(P2011−131735)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000165284)月島食品工業株式会社 (22)