説明

ゴミ溜まり検出機能付きシリンダ

【課題】鍵穴へのキーの挿入時にキーの窪みにゴミが溜まっているか否かを検出して利用者に知らせる。
【解決手段】ゴミ溜まり検出機能付きシリンダは、ゴミ検出回路21と報知器15を具備する。ゴミ検出回路21は、鍵穴にキー2を挿入したときにキー2とタンブラー6を介して閉回路を形成するように配線接続され、タンブラー6に電圧を印加したときの出力変化に基づいてキー2とタンブラー6との間のゴミの有無を検出する。報知器15は、ゴミ検出回路21がキー2とタンブラー6との間のゴミを検出すると、その旨をLEDの点灯・点滅やブザーの鳴動により報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵穴へのキーの挿入時にキーの窪みにゴミが溜まっているか否かを検出して利用者に知らせることができるゴミ溜まり検出機能付きシリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されるように、各種扉の錠に使用されるシリンダの種類としては、ピンを使ったピンシリンダと、タンブラーを使ったディスクシリンダに大きく分けられる。また、ディスクシリンダでは、タンブラーが直線運動をするものと回転運動するものに分けられ、さらにロッキングバーを持つものと持たないものに分けられる。
【0003】
この種のシリンダは、何れもシリンダの鍵穴の奥までキーを挿入し、所定角度回転操作させることで錠の施解錠が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−9521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の従来の各種シリンダは、例えば塵、埃、磨耗粉などのゴミがキーの窪みに付着して溜まったままの状態でシリンダの鍵穴にキーを挿入して回転操作させると、以下に示すような不具合を招くおそれがあった。
【0006】
(1)キーの回転操作でゴミが落下した場合は、シリンダ内にゴミが溜まり、キーの回転操作を繰り返すことでシリンダが回らなくなる。
(2)キーの回転操作でゴミが落下しなかった場合は、ゴミによってシアラインが揃わず、錠が施解錠できなくなる。
(3)キーの窪みにゴミが入ったまま無理にキーを回転させた場合、シリンダを破損させる。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、鍵穴へのキーの挿入時にキーの窪みにゴミが溜まっているか否かを検出して利用者に知らせることができるゴミ溜まり検出機能付きシリンダを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載されたゴミ溜まり検出機能付きシリンダは、鍵穴にキーを挿入していないときに外筒に対する内筒の回転が規制部材によって規制され、前記鍵穴へのキーの挿入に伴う該キーの刻みにより前記規制部材を移動させて前記外筒に対する前記内筒の回転の規制を解除するシリンダにおいて、
前記鍵穴にキーを挿入したときに該キーと前記規制部材を介して閉回路を形成するように配線接続され、前記規制部材に電圧を印加したときの出力変化に基づいて前記キーと前記規制部材との間のゴミの有無を検出するゴミ検出回路と、
前記ゴミ検出回路が前記キーと前記規制部材との間のゴミを検出したときに、その旨を報知する報知器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダによれば、キーを鍵穴に挿入したときに、そのキーの窪みにゴミが溜まっているか否かを検出し、ゴミを検出した時には、その旨を報知するので、キーを鍵穴に挿入した時点で、キーの窪みにゴミが溜まっているか否かを利用者に知らせ、キーを回転操作する前にキーの掃除を促すことができる。これにより、前述したキーの窪みにゴミが溜まっていることによる従来技術の課題(1)〜(3)を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダの平面図である。 (b)同ゴミ溜まり検出機能付きシリンダの内部構成を示す概略断面図である。
【図2】(a)本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダのキー未挿入時の平断面図である。 (b)同シリンダのキー挿入時の平断面図である。
【図3】(a)本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダのゴミ検出回路の一例を示す図であって、キーの窪みにゴミが無い場合の説明図である。 (b)同ゴミ検出回路においてキーの窪みにゴミが有る場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a)は本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダの平面図、図1(b)同シリンダの内部構成を示す概略断面図、図2(a)は本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダのキー未挿入時の平断面図、図2(b)は同シリンダのキー挿入時の平断面図、図3(a)は本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダのゴミ検出回路の一例を示す図であって、キーの窪みにゴミが無い場合の説明図、図3(b)は同ゴミ検出回路においてキーの窪みにゴミが有る場合の説明図である。なお、図1(b)及び図2では、一部のみに断面を施している。
【0012】
本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダは、鍵穴にキーを挿入し回転操作することで施解錠が行われるものであり、鍵穴へのキーの挿入時にキーの窪みに溜まったゴミの有無を検出する機能を有する。ここでは、ゴミ溜まり検出機能付きシリンダとして、回転運動するタンブラーを使ったディスクシリンダの構成を例にとって図1及び図2を参照しながら説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、ゴミ溜まり検出機能付きシリンダとしてのディスクシリンダ1は、ディスクシリンダ1に適合したキー形状のキー2の鍵穴3への挿入により外筒4に対して回転可能な内筒5を有している。内筒5には、規制部材としての複数のタンブラー6が設けられている。各タンブラー6は、C字形状をなし、タンブラー回転軸7に回転可能に軸支されている。内筒5の下部には、スプリング8によって外筒4の溝4aに嵌合するように付勢されたロッキングバー9が設けられている。各タンブラー6は、鍵穴3にキー2が挿入されていない状態でタンブラーバネ10により図2(a)の矢印A方向に付勢され、切欠き6aがロッキングバー9の上方から外れて位置している。各タンブラー6及びタンブラー回転軸7には抵抗材が使用される。また、各タンブラー6間にはタンブラー6を挟み込むようにして仕切板11が設けられている。仕切板11は、電気が仕切板11を介してキー2に流れないように絶縁処理されている。また、内筒5の奥部には、鍵穴3に挿入されるキー2の先端と導通接触するスプリング電極12が設けられている。さらに、シリンダヘッド13の表面には、後述するゴミ検出回路21が実装される回路基板14が埋設されている。回路基板14には、図1(a)に示すように、例えばLEDやブザー等の報知器15が設けられている。報知器15は、後述するゴミ検出回路21がゴミを検出すると、例えばLEDが所定時間点灯又は点滅表示したり、ブザーが所定時間鳴動し、キー2の窪みにゴミが溜まっている旨を利用者に報知する。なお、図1では、報知器15としてLEDを用いた構成を示している。
【0014】
上記構成からなるディスクシリンダ1は、図2(a)に示すように、鍵穴3からキー2を抜き取った状態において、ロッキングバー9がスプリング8によって外筒4の溝4aに押し付けられている。また、各タンブラー6は、タンブラーバネ10によって図2(a)の矢印A方向へ付勢されている。この状態で内筒5を回転させようとすると、各タンブラー6の切欠き6aがロッキングバー9の上方に位置していないので、ロッキングバー9の移動がタンブラー6に阻まれて上方へ上がることができず、内筒5を回転させることができない。
【0015】
一方、各タンブラー6は、デキスクシリンダ1に適合したキー形状のキー2が鍵穴3の奥(キー2の先端がスプリング電極12と接触する位置)まで挿入されると、このキー2の挿入に伴ってキー2の刻みで押される。これにより、各タンブラー6は、タンブラー回転軸7を中心として、切欠き6aがロッキングバー9の上方に位置するまで回転して整列する。この状態で内筒5を回転させようとすると、溝4aとロッキングバー9とのテーパーによって、スプリング8に抗してロッキングバー9が上方に押し上げられ、外筒4と内筒5のシアラインが揃い、外筒4に対して内筒5を回転させることができる。
【0016】
次に、本発明の要部として上記構成のディスクシリンダ1が有するゴミ検出回路21について説明する。ゴミ検出回路21は、図1(b)に示すように、シリンダヘッド13に埋設された回路基板14に実装される。ゴミ検出回路21は、キー2とタンブラー6との接触状況を抵抗値で表し、キー2が鍵穴3の奥まで挿入されたときにキー2とタンブラー6を介して閉回路を形成し、キー2を介してタンブラー6に電圧+Vを印加したときの出力変化により、キー2とタンブラー6との間のゴミ(キー2の窪みに溜まるゴミ)の有無を検出している。図3はゴミ検出回路21の回路構成の一例を示している。
【0017】
図3に示すゴミ検出回路21は、オペアンプを使用しており、反転入力端子と出力端子との間に帰還抵抗R0が接続されるとともに、入力抵抗R1と入力抵抗R2が並列接続され、出力端子が制御手段22に接続される。また、オペアンプの非反転入力端子が抵抗Riを介して接地される。制御手段22は、例えばCPUやROM,RAMなどを有するマイクロコンピュータで構成され、オペアンプの出力端子から出力される電圧が設定電圧に変化したか否かによってキー2とタンブラー6との間のゴミ(キー2の窪みのゴミ)の有無を判別している。さらに説明すると、制御手段22は、オペアンプの出力端子から何らかの出力があるときに、鍵穴3にキー2が挿入されたものと判別し、オペアンプの出力端子から出力される電圧が設定電圧に変化したときに、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが無いものと判別している。これに対し、制御手段22は、オペアンプの出力端子から出力される電圧が設定電圧と異なる変化を示すときに、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有るものと判別し、その旨を利用者に知らせるべく報知器15を動作させている。
【0018】
上記回路構成によるゴミ検出回路21は、窪みにゴミが溜まっていないキー2が鍵穴3の奥まで挿入されると、図1(b)に示すように、電線23、タンブラー回転軸7、タンブラー6、キー2、スプリング電極12、電線24を介して閉回路が形成される。そして、図1(b)及び図3(a)に示すように、キー2とタンブラー6が接触状態となり、ゴミ検出回路21からキー2を介してタンブラー6に所定の電圧+Vが印加される。これにより、図3のゴミ検出回路21は、出力電圧が変化し、設定電圧である出力電圧Vo=ーV(1/R1+1/R2)R0を出力する。制御手段22は、オペアンプの出力端子から設定電圧である出力電圧Vo=ーV(1/R1+1/R2)R0が入力されると、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが無いものと判別する。
【0019】
これに対し、ゴミ検出回路21は、窪みにゴミが溜まっているキー2が鍵穴3の奥まで挿入されると、図3(b)に示すように、ゴミによってキー2とタンブラー6が非接触状態となり、出力電圧Vo=−V(1/R2)R0となり、出力が設定電圧と異なる変化を示す。制御手段22は、オペアンプの出力端子から設定電圧と異なる出力電圧Vo=−V(1/R2)R0が入力されると、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有るものと判別し、その旨を利用者に知らせるべく報知器15を動作させる。具体的に、報知器15は、ゴミ検出回路21がキー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有ると判別すると、LEDが所定時間点灯又は点滅表示したり、ブザーが所定時間鳴動し、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有ることを利用者に報知する。
【0020】
このように、本発明に係るゴミ溜まり検出機能付きシリンダ1は、キー2を鍵穴3に挿入した際に、キー2を介してタンブラー6に電圧を印加し、キー2とタンブラー6の接触状況を抵抗値で表し、その抵抗値による出力変化からキー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有るか否かを検出する。そして、ゴミを検出した時には、その旨を報知するので、キー2を鍵穴3に挿入した時点で、キー2とタンブラー6との間(キー2の窪み)にゴミが有るか否かを利用者に知らせ、キー2を回転操作する前にキー2の掃除を促すことができる。これにより、前述したキーの窪みにゴミが溜まっていることによる従来技術の課題(1)〜(3)を解消することができる。
【0021】
ところで、上述した実施の形態では、ロッキングバー9を持ち、規制部材としてのタンブラー6が回転運動するディスクシリンダの構成を例にとって説明したが、この構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の要部であるゴミ検出回路21は、鍵穴3にキー2を挿入した際に、キー2と規制部材を介して閉回路を形成すればよく、例えばロッキングバー9を持たないディスクシリンダ、規制部材としてのタンブラー6が直線運動するディスクシリンダ、規制部材としてピンを使ったピンシリンダに本発明の要部であるゴミ検出回路21を採用しても同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ゴミ溜まり検出機能付きシリンダ
2 キー
3 鍵穴
4 外筒
4a 溝
5 内筒
6 タンブラー(規制部材)
6a 切欠き
7 タンブラー回転軸
8 スプリング
9 ロッキングバー
10 タンブラーバネ
11 仕切板
12 スプリング電極
13 シリンダヘッド
13a 表面
14 回路基板
15 報知器
21 ゴミ検出回路
22 制御手段
23,24 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵穴にキーを挿入していないときに外筒に対する内筒の回転が規制部材によって規制され、前記鍵穴へのキーの挿入に伴う該キーの刻みにより前記規制部材を移動させて前記外筒に対する前記内筒の回転の規制を解除するシリンダにおいて、
前記鍵穴にキーを挿入したときに該キーと前記規制部材を介して閉回路を形成するように配線接続され、前記規制部材に電圧を印加したときの出力変化に基づいて前記キーと前記規制部材との間のゴミの有無を検出するゴミ検出回路と、
前記ゴミ検出回路が前記キーと前記規制部材との間のゴミを検出したときに、その旨を報知する報知器とを備えたことを特徴とするゴミ溜まり検出機能付きシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208448(P2011−208448A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78202(P2010−78202)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)