説明

ゴミ箱

【課題】極めて簡易な構造により、使い勝手を損なうことなく、蓋のバタつきを防止して品質感を向上できるゴミ箱を提供する。
【解決手段】開放バネ10の付勢力により蓋6が自動開放するゴミ箱1において、ヒンジ部8を構成する蓋側ヒンジ8a及び枠体側ヒンジ8bのうち、枠体側ヒンジ8bの表面上に突出部16が形成されている。この突出部16の頂点は、全開位置に達する前の開放位置にある蓋6の天井面6aと摺接する。この摺接の際、可撓性を有する蓋6は僅かに撓みを生じ、この撓みによる弾性力に基づいて突出部16と天井面6aとの間に摩擦力が発生し、これがブレーキとして働いて蓋6の開放速度が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ箱本体の開口部を開閉する蓋を備えるゴミ箱に関する。
【背景技術】
【0002】
上方に開口端を有するゴミ箱本体の上端の背面側に回動可能に蓋が軸支され、バネ等の付勢力により蓋が自動的に開放するゴミ箱が知られている。そして、この種のゴミ箱は、蓋の開放動作時に生じる慣性により、全開位置に達した際、蓋及び本体が振動してバタつきを生じる場合がある。
【0003】
また、ゴミ袋の交換等の際の利便性から、蓋を本体の開口端に直接取り付けずに、ゴミ箱本体の開口端に嵌合する枠体に対して蓋が回動可能に取り付けられている場合も多く知られている。この場合は、蓋が全開位置に達した際の衝撃により、本体から枠体が外れたり、ゴミ箱全体に不要な振動が生じてしまう。
【0004】
これを防止するためには、本体に対して枠体を強固に固定する係止機構を設けることが考えられるが、複雑な構造にすると、設計及び製造コストの増大に繋がる。また、回動する蓋の慣性力に基づく衝撃に耐え得るのに十分な重量を枠体に設けることにより、開閉動作に対するバタつきを抑える構成も考えられるが、この場合はゴミ箱の上方に重量配分が偏るため、ゴミ箱の中に内容物が少ないときには非常に不安定な状態となってしまう。
【0005】
また、枠体を本体に強固に固定すると、利便性に影響が生じる。例えば、ゴミ袋を交換する際などは、複雑な操作や大きな力を加える必要なく容易に外れることが逆に望ましい。このように、ゴミ箱本体ではなく枠体にヒンジが設けられており、その枠体に自動開放する蓋が取り付けられている場合は、特に、バタつきの防止と利便性向上とのバランスを図ることが難しい。
【0006】
上記のような理由から、ゴミ箱本体と枠体とが容易に脱着でき、且つ、蓋開放時にバタつかない構成であることが望ましい。
【0007】
そこで、従来では、図5に示すような構成が考えられている。
【0008】
図5は開口状態のゴミ箱のヒンジ周辺を示した斜視図である。この図に示すゴミ箱100では、本体120の開口部230に嵌合配置された枠体140に蓋側ヒンジ180aと枠体側ヒンジ180bが設けられている。
【0009】
枠体140には蓋側ヒンジ180aと当接する板ばね210が形成されている。そして、蓋160の開度が大きくなるほど、蓋側ヒンジ180aと板ばね210との当接圧力が徐々に大きくなるように、蓋側ヒンジ180aにカム面220が形成されている。
【0010】
これにより、蓋160が全開位置に達する前に、蓋側ヒンジ180aと板ばね210との間に摩擦が生じ、緩やかに開放動作が止まる。ここで、板ばね210に当接するカム面220と回転軸240との間の距離、すなわち、蓋側ヒンジ180aの半径は、前方から背面方向に向かうにつれて緩やかに大きくなるように形成されている。したがって、ヒンジ部180近辺に設けられた開放バネ110の付勢力により跳ね上げられた蓋160は、徐々にブレーキが加えられてバタつくことなくスムースに停止する。このような構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−280143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のような構成では、スムースにブレーキを掛けるために、枠体側に板ばね210を設け、蓋側ヒンジ180aには板バネ210との間の当接圧力を半径方向の大きさで調節したカム面220を設ける必要がある。このように、従来の構成では、バタつきを防止するために、枠体140と蓋側ヒンジ180aとに個別の設計が必要となり、その分だけ製造コストが大きくなっていた。
【0013】
そこで、本発明では、上記課題を解決するために、使い勝手を損なうことなく、極めて簡易な構造により、蓋のバタつきを防止して品質感を向上できるゴミ箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のゴミ箱は、開口部を有するゴミ箱本体と、開口部に嵌合する枠体と、枠体に対してヒンジを介して回動可能に取り付けられた蓋と、蓋を開放する方向に付勢力を作用させる開放バネとを備えたゴミ箱であって、少なくとも蓋の天井部が可撓性を有し、全開位置に達する前の回転位置に位置する蓋の天井部に対して頂部を接する少なくとも1つの突出部が枠体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成すると、蓋が全開位置に達する前に天井部と枠体に形成された突出部とが接することにより両者間に摩擦が生じ、天井部が頂点を通過すると、この摩擦力は小さくなる。
【0016】
これにより、蓋が全開位置に達する前の、天井部が突出部の頂点を通過する際に、蓋の回転速度が減衰される。天井部が頂点を通過した後は、頂点に接するときよりも摩擦力が小さくなることにより回転を完全に停止することなく全開位置に送ることができる。このような動作により、全開位置に達した際の本体に対する衝撃を和らげることができ、蓋の開放時のバタつきを防止することが可能となる。
【0017】
また、本発明のゴミ箱は、請求項1の構成に加えて、突出部は、枠体上の構成のうち、ヒンジを構成する枠体側ヒンジの表面から回転半径方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成すると、蓋が全開位置に達する前に天井部と枠体側ヒンジ上に形成された突出部とが接することにより両者間に摩擦が生じ、天井部が頂点を通過すると、この摩擦力は小さくなる。
【0019】
これにより、新たに構成部品を追加することなく、既存の枠体側ヒンジの形状を改良するだけで、請求項1の構成と同様の効果が得られる。
【0020】
また、本発明のゴミ箱は、請求項1又は請求項2の構成に加えて、突出部の頂部は天井部に撓みを生じさせる突出高さを有することを特徴とする。
【0021】
このように構成すると、天井部が撓んでいる間の所定範囲の角度において、天井部と突出部の頂部とが摺接する。
【0022】
これにより、蓋の所定範囲の角度において、天井部と突出部との間に一定時間連続的に摩擦力を得ることができるので、蓋の回転速度を緩やかに低減させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、蓋の撓みを利用して、枠体側ヒンジの突出部と蓋の天井部との間に摩擦力を生じさせ、開放時の勢いを一部減衰させることにより、開放完了前の蓋のバタつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態におけるゴミ箱の蓋の開放状態を示す斜視図である。
【図2】図1のゴミ箱のヒンジ部周辺の拡大図である。
【図3】(a)は図2のゴミ箱において突出部の頂点が天井面に当接している状態を示すA−A断面図であり、(b)は(a)の突出部と天井面との当接箇所を示す拡大図である。
【図4】(a)は図2のゴミ箱において蓋の全開状態を示すA−A断面図であり、(b)は(a)の突出部と天井面との当接箇所を示す拡大図である。
【図5】従来のゴミ箱の蓋の開放状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のゴミ箱の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明のゴミ箱の蓋の開放状態を示す斜視図である。本実施の形態のゴミ箱1は、プッシュバー12を押し下げることにより、蓋6が自動的に跳ね上げられる自動開放式のゴミ箱である。蓋を跳ね上げるための付勢力は、蓋6と枠体4とを結合するヒンジ部8に設けられた開放バネ10により与えられる。蓋6の側面には係合爪6bが形成されており、この係合爪6bがプッシュバー12に係合することにより閉状態が保持される。ここで、本体2と枠体4とは分離可能であり、ゴミ袋の交換等の際に枠体4とともに蓋6を取り外すことができる。次に、このヒンジ部8の周辺の構成について図2を用いて説明を行う。
【0027】
図2は図1のヒンジ部周辺の拡大図である。
【0028】
この図に示すように、ヒンジ部8は、枠体側ヒンジ8bと蓋側ヒンジ8aとで構成されており、開放バネ10は蓋側ヒンジ8aの中空部に設けられている。
【0029】
そして、枠体側ヒンジ8bの表面のうち、回転軸14の半径方向に面している表面上に突出部16が形成されている。この突出部16は、蓋6が開放する際、全開位置に達する前に蓋6の天井面6a(天井部)に当接する。次に、枠体側ヒンジ8bの突出部16と蓋の天井面6aとの当接状態について、図3および図4を用いて説明する。
【0030】
図3(a)は図2のA−Aの位置から見た断面図であり、蓋6が回動し、突出部16の頂部16aが天井面6aに当接する位置に達したときのヒンジ部8の周辺の状態を示している。また、図3(b)は同図(a)のうち、天井面6aと当接状態にある突出部16の頂部16a付近の拡大図である。この図の(a)、(b)に示すように、突出部16の突出高さは上記枠体側ヒンジ8bの表面とこれに対向する天井面6aとの間隙よりも僅かに高くなるように形成されている。ところが、本実施の形態におけるゴミ箱1の蓋6は可撓性を有しているので、僅かに撓むことにより、天井面6aは摺接を伴って突出部16を通過することが可能である。図3(a)、(b)の中では、撓む前の蓋6の状態を2点鎖線で示し、突出部16の突き上げにより撓んだ状態を実線で示している。そして、この撓み量は図3(b)中の矢印20aで示されている。なお、本実施の形態では、この突出部16の頂部16aが天井面6aに当接する状態においては、蓋6の開度は全開角に達していない。
【0031】
図4(a)は図3の状態から更に開度が広がり、全開位置に達した蓋6の状態を示した断面図である。また、図4(b)は同図(a)のうち、天井面6aと当接状態にある突出部16の頂点付近の拡大図である。この図の(a)、(b)に示すように、蓋6は全開位置に達した状態であっても、突出部16との当接状態は保持されている。そして、この当接状態における蓋6の撓み量は、図4(b)中の矢印20bで示されている。しかし、図3に示した場合とは異なり、蓋6の撓み量は小さくなっている。
【0032】
このような構成により、プッシュバー12を押し下げることにより係合が解除された蓋6は開放バネ10の付勢力により跳ね上げられ、突出部16の付近に天井面6aが回動してきた辺りから両者の摩擦が大きくなり始める。そして、突出部16の頂点が天井面6aに当接する図3の状態においてその摩擦力が最大となり、以降、緩やかに低減する。その後、全開位置に達した時、蓋6は僅かな当接圧力を残した状態で停止する。
【0033】
本実施の形態に示すような、奥行きの長い蓋を跳ね上げる場合、十分な回転力を与え確実に全開させるために、付勢力を与える開放バネには強力なものが採用される。しかし、初動時の勢いを保ったまま全開位置に達するのではなく、蓋6は、全開位置に達する手前で突出部16と天井面6aとの間に摩擦力が生じて適度にブレーキを利かせつつ全開位置に導かれる。これにより、全開位置に達した際の蓋6の慣性力は適度に減衰されており、枠体4や本体2に対する反動は生じ難くなっている。
【0034】
また、全開位置に達した状態においても、僅かに当接圧力が残っているので、蓋6は完全に自由解放されることはない。これにより適度な当接圧力が働いて微細な蓋6のバタつきが抑えられ、停止した際にも蓋6は安定する。
【0035】
このように、一旦、適度なブレーキを利かせた後、そのブレーキ(摩擦力)を緩やかに解除するという本実施の形態に示すような構成は、単に摩擦力を右肩上がりに増大させて蓋を停止させるような構成に比べて複数の利点を有している。
【0036】
その一つとして、動作の安定性に対する利点が挙げられる。比較の対象として、回転運動を打ち消す程度に摩擦力が増大したところで蓋の回転が停止するという単純な構成では、全開となる位置が常に同じになるとは限らない。すなわち、部材の摩耗や環境温度変化等により摩擦力に変化が生じた場合、その変動した摩擦力に応じて全開位置が決まるので、同じ角度に停止せず動作が安定しない。そして、このように摩耗や環境変化が生じた場合でも常に同じ角度で停止させるように設計するのは難しい。これに比べて、本実施の形態に示すように、一旦、回転速度を減衰させるためのブレーキが適度に掛かり、その後、定位置に達するための運動を妨げないように徐々に摩擦力を緩めるというような構成になっていれば、確実に同じ角度の全開位置に達することができるので、バタつきを抑えて品質感を向上することが可能となるとともに、同じ全開位置に確実に停止できるという安定した動作を得ることが可能となる。
【0037】
また、本発明のゴミ箱1は、耐久性についても利点を有している。プラスチック材が荷重変形を生じることについては良く知られているが、これに対して、摩擦力が最大の状態となったところで蓋を停止させておくような構成では、この摩擦力を生じさせるバネ部材等の最大に撓んだ状態が長く保持されることとなり、荷重変形の生じやすい状態が多くなってしまう。これに比べて、本実施の形態のゴミ箱1では、一旦大きな当接圧力を受けて撓んだ蓋6は、その後全開位置に達するまでに圧力が緩められることにより元の形状に近い状態まで撓みが小さくなる。そして全開位置における蓋6の撓みは最大摩擦時の状態に比べて僅かな量であるので、荷重変形の影響は最小限に抑えることが可能である。
【0038】
さらに、本実施の形態のゴミ箱1では、適度な摩擦力を得るためのバネ性部材には、可撓性を有した面積の大きい蓋が利用されている。したがって、小片のバネ部材を用いる場合と比べて応力の集中を防止することができ、繰返しの撓み変形に対しても優れた耐疲労性を有している。
【0039】
しかも、これらの効果は、枠体側ヒンジに少なくとも1つの突出部を設けることのみにより得ることができるので、製造コストの大幅な削減をも実現することが可能である。
【0040】
以上に述べてきたように、本実施の形態のゴミ箱1は、開放動作に伴うバタつきを抑えることができ、全開角度は常に一定の角度を保持するという安定した動作を実現できるとともに、プラスチック製の構成部材の応力変形を最小限に抑えて荷重変形及び耐疲労性の問題を低減し、さらに、極めて簡易な構造により製造コストの低減をも実現し得るという優れた効果を奏する。
【0041】
なお、蓋の回転運動による反動を効果的に抑えるためには、短時間でブレーキを利かせるよりも、ある程度長い時間摺接させて、緩やかに蓋の開放速度を低減させる方が好ましい。従って、上述のように全開位置における当接圧力が最大当接圧力よりも小さくなる構成であれば、頂点形状が本実施の形態に示した突出部16よりも緩やかなカーブを描く形状の突出部を採用しても構わない。
【0042】
また、上述してきた本実施の形態では、突出部16が枠体側ヒンジ8bに形成されている例を示したが、蓋自身の可撓性を利用して蓋の回転速度を低減する突出部が枠体上に形成されていれば良く、例えば、枠体の背面側で、2箇所のヒンジの間の天井部と接する位置に形成されている構成でも構わない。さらに、その突出部の数は1つでも複数でも良く、複数採用する場合は、それぞれの大きさは同じでなくても良い。
【0043】
一方、蓋の角部に近い部分等のように、天井部からの立上り部が複数近接している場所では蓋自身の可撓性は低い。そのため、そのような部分に突出部を設けても、蓋は途中で停止してしまう。特に、図2において、蓋体側ヒンジ8aと枠体側ヒンジ8bの位置を入れ換えると、蓋自身の可撓性を利用したブレーキ効果は得られない。
【0044】
また、突出部は1箇所である必要もなく、全開位置において当接している突出部の当接圧力が最大当接圧力よりも小さくなる構成であれば、複数形成されていても構わない。
【0045】
さらに、ヒンジ部を複数備えている場合では、それぞれの枠体側ヒンジの表面上に形成される突出部は同じ角度に向かって突出している必要はなく、異なる角度に突出しているような構成であっても構わない。このような構成では、それぞれの突出部と天井面との間に生じる摺接時間が累積され、全体で長い摺接時間を得ることが可能であり、緩やかに回転速度を低減することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ゴミ箱
2 本体
4 枠体
6 蓋
6a 天井面(天井部)
8 ヒンジ部
8b 枠体側ヒンジ
10 開放バネ
16 突出部
18 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するゴミ箱本体と、前記開口部に嵌合する枠体と、前記枠体に対してヒンジを介して回動可能に取り付けられた蓋と、前記蓋を開放する方向に付勢力を作用させる開放バネとを備えたゴミ箱であって、
少なくとも前記蓋の天井部が可撓性を有し、
全開位置に達する前の回転位置に位置する前記蓋の天井部に対して頂部を接する少なくとも1つの突出部が前記枠体に形成されている
ことを特徴とするゴミ箱。
【請求項2】
前記突出部は、前記枠体上の構成のうち、前記ヒンジを構成する枠体側ヒンジの表面から回転半径方向に突出するように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のゴミ箱。
【請求項3】
前記突出部の頂部は前記天井部に撓みを生じさせる突出高さを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴミ箱。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256040(P2011−256040A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134383(P2010−134383)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(591011650)アスベル株式会社 (15)
【Fターム(参考)】