説明

ゴムコネクタの製造方法

【課題】電子部品または回路基板と接触面における接触抵抗が低いゴムコネクタを製造できるゴムコネクタの製造方法を提供する。
【解決手段】周面が金めっき処理されたチタン系金属線14が、ゴム状弾性体からなるコネクタ本体12を貫通して、該コネクタ本体12内に埋設されたゴムコネクタ10の製造方法において、チタン系金属線14の端面をフッ酸で処理した後、該端面を金めっき処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板との電気的接続、回路基板同士の電気的接続等にゴムコネクタが用いられている(特許文献1、2)。該ゴムコネクタの具体例としては、コンデンサ型マイクロフォンを収納するホルダと、コンデンサ型マイクロフォンと回路基板とを電気的に接続するゴムコネクタとが一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタが知られている(特許文献3)。
【0003】
ゴムコネクタは、ゴム状弾性体からなるコネクタ本体を貫通して、該コネクタ本体内に金属線が埋設されたものである。該ゴムコネクタは、電子部品と回路基板との間、または回路基板同士の間で圧縮された状態で用いられるため、金属線としては、繰り返しの圧縮耐久性を有する、ニッケル−チタン合金等の超弾性合金が用いられている。しかし、超弾性合金は、電気抵抗が高いため、超弾性合金からなる金属線としては、その周面があらかじめ金めっき処理された金属線が用いられ、さらに、コネクタ本体から露出する金属線の端面も後処理によって金めっき処理されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、チタン系金属線は、コネクタ本体内に埋設された状態で金めっき処理した場合、その端面に金が均一にかつ充分に析出しにくいという問題を有する。そのため、得られたゴムコネクタは、電子部品または回路基板と接触面における接触抵抗が高い。
【特許文献1】実開平6−68320号公報
【特許文献2】特開2001−126787号公報
【特許文献3】特開平11−88990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の目的は、電子部品または回路基板と接触面における接触抵抗が低いゴムコネクタを製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴムコネクタの製造方法は、ゴム状弾性体からなるコネクタ本体を貫通して、該コネクタ本体内に埋設された、周面が金めっき処理されたチタン系金属線の端面をフッ酸で処理した後、該端面を金めっき処理することを特徴とする。
前記チタン系金属線は、ニッケル−チタン合金からなる金属線であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴムコネクタの製造方法によれば、電子部品または回路基板と接触面における接触抵抗が低いゴムコネクタを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の製造方法によって製造されるゴムコネクタの一例を示す斜視図である。ゴムコネクタ10は、ゴム状弾性体からなるコネクタ本体12と、該コネクタ本体12を貫通して、コネクタ本体12内に埋設された複数のチタン系金属線14とを有するものである。チタン系金属線14は、周面および端面が金めっき処理されている。
【0009】
ゴム状弾性体としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、シリコーンゴムが好ましい。
【0010】
チタン系金属線14は、チタンを含む金属線であり、チタンを含む超弾性合金からなる金属線が好ましい。チタンを含む超弾性合金としては、ニッケル−チタン合金が挙げられる。ニッケル−チタン合金におけるニッケルの含有量は、49〜51原子%が好ましい。ニッケル−チタン合金は、コバルト、銅等を含んでいてもよい。
チタン系金属線14は、一本の細線からなる金属線であってもよく、複数の細線を束ねた金属線であってもよい。
【0011】
チタン系金属線14の線径は、5〜100μmが好ましい。
コネクタ本体12の大きさ、形状、チタン系金属線14の長さ、本数等は、ゴムコネクタ10の用途に応じて適宜決定すればよい。
【0012】
ゴムコネクタ10は、例えば、以下の工程を経て製造される。
(a)周面があらかじめ金めっき処理されたチタン系金属線14が、ゴム状弾性体からなるコネクタ本体12を貫通するように、該コネクタ本体12内に埋設されたゴムコネクタ前駆体を得る工程。
(b)コネクタ本体12内に埋設されたチタン系金属線14の端面をフッ酸で処理した後、該端面を金めっき処理する工程。
【0013】
(a)工程:
ゴムコネクタ前駆体を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(a−1)チタン系金属線14を、ゴム状弾性体からなる2枚のシートで挟み、これらを熱プレスする方法。
(a−2)チタン系金属線14を型内に配列させた後、型内に液状のゴム状弾性体を流し込み、硬化させる方法。
【0014】
(a−1)または(a−2)の方法で得られた、チタン系金属線14がゴム状弾性体内に埋設されたシート状物を、スライサ等で所望の大きさに切断し、チタン系金属線14の両端面を露出させることによって、チタン系金属線14が、コネクタ本体12を貫通するように、該コネクタ本体12内に埋設されたゴムコネクタ前駆体が得られる。
【0015】
(b)工程:
(a)工程で得られたゴムコネクタ前駆体に、必要に応じてアルカリ脱脂処理を施す。アルカリ脱脂処理は、公知の条件で行えばよく、例えば、10〜40質量%の水酸化ナトリウム水溶液中にゴムコネクタ前駆体を、20〜40℃で1〜5分間浸漬することによって行われる。
【0016】
ついで、チタン系金属線14の端面をフッ酸で処理する。該処理は、例えば、5〜10質量%のフッ化水素水溶液(フッ酸)にゴムコネクタ前駆体を、20〜40℃で1〜10分間浸漬することによって行われる。
【0017】
ついで、必要に応じて、チタン系金属線14の端面をニッケルめっき処理する。ニッケルめっき処理は、公知の条件で行えばよく、例えば、市販の無電解ニッケルめっき液中にゴムコネクタ前駆体を浸漬し、80〜85℃で1〜10分間加熱することにより、チタン系金属線14の端面にニッケルを析出させることによって行われる。
ニッケルめっきの厚さは、0.1〜3μmが好ましい。
【0018】
ついで、チタン系金属線14の端面を金めっき処理する。金めっき処理は、公知の条件で行えばよく、例えば、市販の無電解金めっき液中にゴムコネクタ前駆体を浸漬し、80〜85℃で1〜10分間加熱することにより、チタン系金属線14の端面に金を析出させることによって行われる。
金めっきの厚さは、0.05〜0.1μmが好ましい。
【0019】
以上説明したゴムコネクタ10の製造方法にあっては、チタン系金属線14の端面を金めっき処理する前に、該端面をフッ酸で処理するため、チタン系金属酸化膜が除去され、該端面に金が均一にかつ充分に析出できる。そのため、得られたゴムコネクタ10は、電子部品または回路基板と接触面における接触抵抗が充分に低い。
【0020】
本発明の製造方法によって製造されたゴムコネクタ10は、電子部品と回路基板との電気的接続、回路基板同士の電気的接続等に用いることができる。ゴムコネクタ10の応用例としては、図2および図3に示すような、コンデンサ型マイクロフォン(図示略)を収納する凹部が形成された、ゴム状弾性体からなるホルダ22と、コンデンサ型マイクロフォンと回路基板(図示略)とを電気的に接続するゴムコネクタ10とが一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタ20が挙げられる。
【実施例】
【0021】
〔実施例1〕
シリコーンゴムコンパウンド(信越化学工業社製、商品名:KE−174)100質量部、加硫剤(信越化学工業社製、商品名:C−19A)0.5質量部を、ミキシングロールにて混練した後、これを幅300mm、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にカレンダーロールにて塗布し、シリコーンゴム層を形成した。これを切断して幅300mm、長さ300mmのシートを形成した。
【0022】
あらかじめ下地ニッケルめっき処理(ニッケルめっきの厚さ0.1μm)および金めっき処理(金めっきの厚さ0.15μm)を施した超弾性合金(ニッケル−チタン合金、ニッケル含有量50原子%)からなる金属線(線径30μm)を用意した。
【0023】
前記シートのシリコーンゴム層上に、複数の金属線を0.1mmピッチで配列した。金属線上に別のシートを、シリコーンゴム層が金属線側となるように被せた。2枚のシートで金属線を挟んだ状態で、これらを125℃で2分間、熱プレスし、シリコーンゴムを硬化させた。
【0024】
金属線を挟んだ状態でシリコーンゴムを硬化させたシートからPETフィルムを剥離した後、金属線の長さ方向の長さが10mm、金属線に直交する方向の長さが10mm、厚さが5mmとなるように切断し、ゴムコネクタ前駆体を得た。
10質量%の水酸化ナトリウム水溶液中にゴムコネクタ前駆体を、40℃で1分間浸漬してアルカリ脱脂処理を行った。
【0025】
ついで、10質量%のフッ化水素水溶液(フッ酸)(ステラケミファ社製、商品名:10%フッ化水素酸)にゴムコネクタ前駆体を、20℃で5分間浸漬して、金属線の端面をフッ酸で処理した。
ついで、無電解ニッケルめっき液(メルテックス社製、商品名:エンプレート NI−426)中にゴムコネクタ前駆体を浸漬し、85℃で5分間加熱することにより、金属線の端面にニッケルを析出させた。ニッケルめっきの厚さは2μmであった。
【0026】
ついで、無電解金めっき液(メルテックス社製、商品名:メルプレート AU−601)中にゴムコネクタ前駆体を浸漬し、80℃で5分間加熱することにより、金属線の端面のニッケルめっき上に金を析出させ、ゴムコネクタを得た。金めっきの厚さは0.08μmであった。
ゴムコネクタの金属線の電気抵抗を、以下の方法で測定したところ、0.7Ωであった。
(測定方法)
金ベタ電極−金ベタ電極間に、ゴムコネクタを挿入し、0.2mm圧縮状態で回路抵抗を測定した。装置としては、MICRO OHM METER(HP社製、商品名:34420A)を用いた。測定値は、10本の金属線の値である。
【0027】
〔比較例1〕
金属線の端面をフッ酸で処理する代わりに、20質量%の塩化水素水溶液(塩酸)で処理した以外は、実施例1と同様にしてゴムコネクタを得た。金属線の端面に金が充分に析出しておらず、しかも不均一であった。ゴムコネクタの金属線の電気抵抗を実施例1と同様にして測定したところ、2.0Ωであった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法によって製造されたゴムコネクタは、電子部品と回路基板との電気的接続、回路基板同士の電気的接続等を行うコネクタ、例えば、マイクロフォンホルダ一体型コネクタ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ゴムコネクタの一例を示す斜視図である。
【図2】マイクロフォンホルダ一体型コネクタの一例を示す上面図である。
【図3】図2のマイクロフォンホルダ一体型コネクタのIII−III断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ゴムコネクタ
12 コネクタ本体
14 チタン系金属線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体からなるコネクタ本体を貫通して、該コネクタ本体内に埋設された、周面が金めっき処理されたチタン系金属線の端面をフッ酸で処理した後、該端面を金めっき処理する、ゴムコネクタの製造方法。
【請求項2】
前記チタン系金属線が、ニッケル−チタン合金からなる金属線である、請求項1に記載のゴムコネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−47409(P2008−47409A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221458(P2006−221458)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】