説明

ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーの粒子サイズ及び形態のコントロール

【課題】官能基がコントロールされたラジカル重合を可能にする、官能基化ジエンゴムを利用して増加した速度でゴム変性ポリマーの製造においてゴム粒子サイズ、分布及び形態のコントロールを達成する溶液の提供。
【解決手段】官能基化ゴムを利用してゴムの存在下ビニル芳香族モノマーを重合することからなるビニル芳香族モノマーからゴム変性ポリマーを製造する塊状重合/溶液重合方法であって、ゴムが、グラフトされたゴム粒子が形成されそして重合したビニル芳香族モノマーからなるマトリックス内に分散するようにa)50センチポイズ(cps)より低い溶液粘度、及びb)コントロールされたラジカル重合を可能にする1ゴム分子あたり少なくとも1つの官能基を有する官能基化ジエンゴムからなる塊状重合/溶液重合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル芳香族モノマーから得られるゴム変性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム変性ポリマー例えば高衝撃ポリスチレン(HIPS)及びアクリロニトリル―ブタジエン―スチレン(ABS)は、一般的に、溶解したゴムの存在下スチレンまたはスチレン/アクリロニトリルを塊状重合することにより製造される。ABSは、さらに一般的に、概して小さいゴムの粒子を生成する乳化重合法を使用して製造されるが、光沢の良い製品という利益を得ることができる一方、変換コストは高くなる。
【0003】
ゴム変性ポリマーの製造では、ゴムの粒子サイズ及び形態は、最終製品の物理的性質をコントロールするのに重要な役割をはたす。最終のゴムの粒子サイズは、せん断、粘度及び界面張力を含む多数の異なるパラメータにより決定できる。相反転後のせん断の増大は、粒子のサイズを低下させるのに使用されるが、これはコストがかかり方法を複雑にする。最終のゴム粒子のサイズは、また分散相/連続相の粘度比及び連続相ポリマーの粘度により影響される。分粒は、粘度比が0.2−1の場合に容易に生じ、そして連続相の粘度が高くなるにつれ、粒子の分散は容易になる。ゴム相の粘度は、ゴムのレベル及びゴムの溶液粘度により決定される。さらに、ゴムのグラフト化及び架橋化は、ゴムの粘度を増大させる。界面の表面張力もゴム粒子のサイズ及び形態に影響し、界面張力の低下は、融和性のブロックゴムを利用することにより、またはグラフトして融和性のゴムをその場で作ることにより達成できる。融和性のブロックゴムは、連続相と混和できるブロック及び不連続相と混和できるブロックを有することを特徴とする。界面張力の低下は、分粒の方法を助け、それにより順応性が増加する。HIPS組成物では、融和性のゴムは、スチレン−ブタジエンブロックゴムを含む。ABS組成物では、スチレン−ブタジエンブロックゴムは、ポリスチレンがSAN連続相と混和しないので、融和しない。SAN−ブタジエンブロックゴムは、ABSと融和できるが、市販されていない。そのため、ABSポリマー組成物では、融和性のブロックコポリマーは、グラフト化によりその場で製造されねばならない。官能基化ゴムの使用は、経済的な利点のために、HIPS及びABSの工程の両者においてその場でこの融和性のブロックゴムをつくるために、研究されてきている。
【0004】
特許文献1は、スチレン−ジエンブロックまたはSAN−ジエンゴムが形成されるように安定な遊離基を有する官能基化ジエンゴムの存在下のラジカル重合を開示している。しかし、特許文献1は、透明なHIPS及びABSの製造に関しており、ゴム粒子サイズは非常に小さく(0.1ミクロン)であって多くの高衝撃の応用には不十分である。
【0005】
特許文献2は、安定な遊離基の存在下でビニル芳香族ポリマーを製造する方法を開示している。しかし、得られた生成物は、非常に広いゴム粒子サイズの分布を有し、それは物理的性質にマイナスに作用する。
【0006】
特許文献3は、安定な遊離基を発生する基を含むゴムの存在下少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを重合する方法を開示している。しかし、この方法は、ポリマーの物理的性質例えば光沢にマイナスに作用する高い溶液粘度を有するものを含む広い種類のゴムを利用する。
【0007】
特許文献4は、ベータ位に置換基を有する安定な遊離基の存在下の少なくとも1つのモノマーの重合方法を開示している。しかし、これらのベータ置換の安定な遊離基は、コストを増加させ、そして置換基の反応性のためにアニオン性カップリングに使用できない。
【0008】
特許文献5は、安定な遊離基及び開始剤を使用する方法を開示している。この方法も光沢及び他の物理的性質にマイナスに影響する高粘度のゴムを利用する。
【0009】
特許文献6は、安定な遊離基及びチオール化合物の存在下の重合方法を開示している。特許文献7は、コントロールされたラジカル重合におけるアルコキシアミン(>N―O―X)の使用を開示しており、その場合アルコキシアミンは、遊離基開始剤及び安定な遊離基(>N―O)として好適な遊離基(X)を形成する。しかし、この方法は、ゴム変性ポリマーの製造を含んでいない。
【0010】
そのため、コストの低い塊状/溶液重合を使用して向上した物理的性質及び有効な処理を提供するその場で製造されるブロックゴムを利用して、所望のゴム粒子サイズ、分布及び形態を達成する必要性が依然存在する。
【特許文献1】米国特許5721320(Priddy et al)
【特許文献2】米国特許6262179(Atochem)
【特許文献3】米国特許6255402(Atochem)
【特許文献4】米国特許6255448(Atochem)
【特許文献5】WO99/62975(Atochem)
【特許文献6】WO01/74908(BASF)
【特許文献7】米国特許4581429
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、官能基がコントロールされたラジカル重合を可能にする、官能基化ジエンゴムを利用して増加した速度でゴム変性ポリマーの製造においてゴム粒子サイズ、分布及び形態のコントロールを達成する溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、官能基化ジエンゴムを利用してジエンゴムの存在下ビニル芳香族モノマーを重合することからなるビニル芳香族モノマーからゴム変性ポリマーを製造する塊状重合/溶液重合方法であって、ジエンゴムが、グラフトされたゴム粒子が形成されそしてゴム粒子サイズ、分布及び形態の改良されたコントロールを可能にするように
a)50センチポイズ(cps)より低い溶液粘度、及び
b)コントロールされたラジカル重合を可能にする1ゴム分子あたり少なくとも1つの官能基
を有する官能基化ジエンゴムからなる塊状重合/溶液重合方法である。より早い製造速度は、これらのグラフトされた融和性のゴムの存在によって可能になる。
【0013】
本発明の方法が、記述された特定の官能基化ジエンゴムを利用してゴム粒子サイズ、分布及び形態のコントロールの増加によって、優れた光沢及び剛性のゴム変性ポリマーを製造することが、驚いたことに分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の方法で使用して好適なビニル芳香族モノマーは、任意のビニル芳香族モノマー例えば本明細書に参考として引用される米国特許4666987、4572819、4585825及び5721320に記述されたものを含む。ビニル芳香族モノマーは、また他の共重合可能なモノマーと混合できる。これらのモノマーの例は、アクリルモノマー例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸及びメチルアクリレート;マレイミド、N―フェニルマレイミド、及び無水マレイン酸を含むが、これらに限定されない。ビニル芳香族モノマーの重合は、あらかじめ溶解されたエラストマー/ゴムの存在下行われて、衝撃変性グラフト化ゴムを含む製品が製造され、それらの例は、本明細書で参考として引用される米国特許3123655、3346520、3639522及び4409369に記載されている。
【0015】
本発明の方法で使用されるゴムは、5センチポイズ(cps)から50cpsより低い、好ましくは10cpsから、さらに好ましくは15cpsからそして最も好ましくは20cpsから、45cpsより低い、好ましくは40cpsより低い、さらに好ましくは35cpsより低いそして最も好ましくは30cpsより低い範囲の溶液粘度(20℃でスチレン中5%)を有する官能基化低粘度ジエンゴムからなる。一般に、官能基化ジエンゴムに関する溶液粘度は、50cpsより低いだろう。官能基化ジエンゴムは、さらに、0℃以下そして好ましくは約―20℃以下の二次転移温度を示す。
【0016】
好適な官能基化ジエンゴムは、1、3―共役ジエン例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンなどから誘導されるゴムを含む。これらのゴムは、ジエンホモポリマー、並びにアルカジエン及びビニル芳香族モノマーのコポリマー及びブロックコポリマーを含む。特に、官能基化コポリマーは、1、3―共役ジエン例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレンまたはピペリレンを含むアルカジエン及びビニル芳香族モノマーのジブロックコポリマーであり、その場合ビニル芳香族モノマーから製造されたブロックは、ブロックコポリマーの全重量に基づいて少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%である。最も好ましい官能基化ブロックコポリマーは、1、3―ブタジエン及びスチレンの官能基化コポリマーである。官能基化ブロックコポリマーは、任意の数の(AB)構造を有するブロック(ただし、nは1―4の整数である)例えばAB、ABAB、ABABABなどを有する。好ましくは、官能基化コポリマーゴムは、官能基化ブロックコポリマーの全重量に基づいて、少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、そして最も好ましくは少なくとも15重量%から40重量%まで、好ましくは35重量%までそして最も好ましくは25重量%までを含む。少量のテーパーリングがこれらのブロックゴムの製造で生ずることが知られている。ゴムは、ゴムが記述された他の要件を満たす限り、線状、分枝状または星形分枝状及び任意のビニル/シス/トランスの比を有するミクロ構造のような任意の構成を有することができる。
【0017】
これらのゴムは、Science and Technology of Rubber(Academic Press)、Ed.James E.Mark、Burak Erman、Frederick R.Eirich−Chapter 2、VIII pgs.60−70に開示されているように、そららの製造方法とともに、当業者に広く知られている。
【0018】
官能基化ジエンゴムは、1ゴム分子あたり最低1つの官能基を含む。官能基は、コントロールされたラジカル重合を可能にする官能性と定義される。コントロールされたラジカル重合は、「Controlled/Living Radical Polymerization」(2000)p.2―7 ACS zymposium series,768に開示されているように、成長する遊離基とドーマントすなわち未反応性種との間の動的平衡の原理を用いる。
【0019】
官能基化ジエンゴムに含まれる官能性は、多数の異なる機構によってコントロールされたラジカル重合を可能にする。機構は、以下のものを含む。
I)安定な遊離基重合例えばニトロオキシド媒介重合。
II)金属触媒による原子移動ラジカル重合(ATRP)。
III)可逆付加フラグメンテーション連鎖(RAFT)。
IV)成長するラジカルとドーマント種との間の熱力学的に中性な(成長反応段階における)交換方法に基づく縮退移動方法。及びHandbook of Radical Polymerization、Ed.K.Matyjaszewski、T.P.Davis(Wiley)p.383−384に記載されたような他の縮退移動方法。
【0020】
官能基は、ジエンゴムの骨格または鎖の終わりに少なくとも1つの官能基を配置する任意の認められた方法を利用してゴムに付加される。1つの態様では、官能基は、ポリマー鎖の末端を経てゴムに付加され、どんな官能基のランダムな付加も、ゴムのポリマー鎖に生じない。これらの例は、米国特許5721320に含まれる。好ましい態様では、官能基化ジエンゴムは、ジエンゴムに存在する代表的な不飽和以外に、ラジカル重合方法中反応性の他の官能基を全く含まない。
【0021】
さらに、非官能基化ゴムは、本発明の方法において官能基化ジエンゴムと組み合わせて使用できる。この場合、典型的には、存在するすべてのゴムの少なくとも5重量%は、官能基化ジエンゴムであり、すべてのゴムの全重量に基づいて、一般に少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、さらに好ましくは少なくとも20重量%そして最も好ましくは少なくとも25重量%から、約100重量%まで、好ましくは約90重量%まで、さらに好ましくは約80重量%まで、より好ましくは約70重量%までそして最も好ましくは約60重量%までである。非官能基化ゴムは、ゴム変性ポリマーに典型的に使用される任意のゴムであり、ビニル芳香族とのジエンホモポリマー及びコポリマー、ブロックコポリマー、星形分枝状ゴム、線状ゴムなどを含む。
【0022】
1つの態様では、官能基化ジエンゴムの官能基は、コントロールされた遊離基重合を可能にできる安定な遊離基を発生するだろう。安定な遊離基は、米国特許6262179及び5721320(両者とも本明細書において参考として引用される)に開示されたような、ニトロオキシドラジカルのようなラジカル重合開始剤として働くことのできる化合物、例えば2、2、6、6―テトラメチル―1―ピペリジニルオキシ(TEMPO)を含む。他の安定な遊離基化合物は、2、2、6、6―テトラメチル―1―[4―(オキシラニル―メトキシ)フェニル]エトキシ]―ピペリジン及び3、3、8、8、10、10―ヘキサメチル―9―[1―[4―(オキシラニルメトキシ)フェニル]エトキシ]―1、5―ジオキサ―9―アザスピロ[5、5]ウンデカンを含むがこれらに限定されない。
【0023】
安定な遊離基は、米国特許5721320に記載されたように活性化により安定な遊離基を形成できる置換基として定義される。他のニトロキシ含有化合物は、本明細書において参考として引用される米国特許4581429に見いだすことができる。
【0024】
ゴム補強ポリマーは、官能基化ゴムをビニル芳香族モノマーに溶解しそして重合することにより製造できる。この方法は、本明細書で参考として引用される米国特許2646418、4311819及び4409369に記載された高衝撃ポリスチレン(HIPS)及びABSのようなゴム補強ポリマーを製造するのに当業者に周知の従来技術を使用して行うことができる。
【0025】
本発明の方法で使用される、官能基化ゴムそしてもし存在するならば非官能基化ゴムを含むすべてのゴムの量は、典型的には、重合混合物の全重量に基づいて、5%から、好ましくは7%から、25%まで、好ましく20%までそしてさらに好ましくは18%までである。すべてのゴムとは、官能基化ゴム及び非官能基化ゴムを含む重合の最初の供給物に存在するゴムの全重量を意味する。最初の供給物は、第一の反応槽に添加され、そしてモノマー、ゴム、溶媒などを含む。
【0026】
開始剤は、所望により、本発明の方法で使用してもよい。有用な開始剤は、ビニル芳香族モノマーの重合を促進する遊離基開始剤例えば過酸化物及びアゾ化合物を含む。好適な開始剤は、過酸化物例えば第三級ブチルペルオキシアセテート、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、1、3―ビス―(第三級ブチルペルオキシ)―3、3、5―トリメチルシクロヘキサン、t―ブチルヒドロペルオキシド、ジ第三級―ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1、1―ビス(第三級ブチルペルオキシ)―3、3、5―トリメチル―シクロヘキサン、t―ブチルペルオキシベンゾエート、1、1―ビス(t―ブチルペルオキシ)―シクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、サクシノイルペルオキシド及びt―ブチル―ペルオキシピビレート、並びにアゾ化合物例えばアゾビスイソブチロ―ニトリル、アゾビス―2、4―ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボ―ニトリル、アゾビスメチルイソラクテート及びアゾビスシアノバレレートを含むが、これらに限定されない。
【0027】
開始剤は、使用される特定の開始剤、ポリマーのグラフト化の所望のレベル及び塊状重合が行われる条件を含む種々のファクターに依存する濃度の範囲で使用される。典型的には、最初の供給物の全重量に基づいて百万部あたり50―500部、好ましくは75―250部である。
【0028】
さらに、溶媒は、本発明の方法で使用できる。許容できる溶媒は、ゴム、ビニル芳香族モノマー及びそれらから製造されるポリマーと溶液を形成する常態で液体の物質を含む。溶媒の代表例は、芳香族及び置換芳香族の炭化水素例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンなど、置換または未置換の直鎖または分枝鎖の5以上の炭素原子の飽和脂肪族例えばヘプタン、ヘキサン、オクタンなど、脂環族または置換脂環族の5または6炭素原子を有する炭化水素例えばシクロヘキサンなどを含む。好ましい溶媒は、置換芳香族を含み、エチルベンゼン及びキシレンが最も好ましい。一般に、溶媒は、加工性及び重合中の熱移動を改善するのに十分な量で使用される。そのような量は、使用されるゴム、モノマー及び溶媒、方法の装置及び重合の所望の程度に応じて変化するだろう。もし使用されるならば、溶媒は、一般に、最初の供給物の全重量に基づいて、約35重量%以内、好ましく約5―約25重量%の量で使用される。
【0029】
他の物資/添加物も本発明の方法で存在でき、可塑剤例えば鉱油、流動促進剤、潤滑剤、抗酸化剤例えばアルキル化フェノール例えばジ―tertブチル―p―クレゾールまたはホスファイト例えばトリスノニルフェニルホスファイト;触媒例えば酸性化合物例えばカンファースルホン酸;離型剤例えばステアリン酸亜鉛または重合助剤例えば連鎖移動剤例えばアルキルメルカプタン例えばn―ドデシルメルカプタン及びシリコーン油を含む。もし使用されるならば、連鎖移動剤は、一般に、最初の供給物の全重量に基づいて約0.11―約0.5重量%の量で使用される。
【0030】
マトリックス相の重量平均分子量(Mw)は、ゴム変性ポリマーの応用に応じて非常に変化できる。典型的には、Mwは50000g/モルから約300000g/モルに変化できる。Mwは、ポリスチレン標準品を使用して較正されたゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定される。
【0031】
重合は、多数の方法により達成でき、そして好ましくは本明細書で参考として引用される米国特許2727884に記載されたような、1つ以上の実質的に線状の層流またはいわゆる栓流のタイプの反応槽で行われる。1つの態様では、本発明の組成物は、広いモノモダルゴム粒子サイズ分布を有するゴム変性ポリマーを製造するために、1つ以上の重合槽を利用して、直線に並んだ重合方法を使用して製造される。他の態様では、再循環が直線に並んだ方法と組み合わされる。再循環は、部分的に重合した供給物の一部を重合方法のそれ以前の段階に戻して加える技術である。もしバイモダル粒子サイズの分布が望ましいならば、それは、米国特許4221883、5240993及び4146589(これらのすべては本明細書で参考として引用される)並びにEP96447B及び892820に開示されたものを含む任意の許容された方法によって達成できる。1つの構成では、モノビニリデン芳香族モノマー所望ならばエチレン性不飽和ニトリルモノマーの溶液とゴムとの第一の混合物は、ポリマー及び特定の体積平均直径を有する非常にグラフト化されたゴムの分離した粒子を含む部分的に重合した連続相を形成するのに十分な条件下で開始剤の存在下で塊状重合される。次に、第二のゴムを含む混合物は、すでに形成されたゴム粒子が連続するポリマー相全体に分散したままであるような条件下で部分的に重合した供給物と混合される。新しく添加されたゴムは、第二の体積平均直径を有する分離した粒子として分散する。バイモダル組成物も、それぞれの粒子サイズを別個の反応槽で製造し、両方の反応流を合わせそして重合を続けることにより得ることができる。別の方法として、溶融ブレンドが使用されて、2つの異なるゴム変性ポリマーを組み合わせてバイモダル粒子サイズ分布を有するゴム変性ポリマーまたは2つの異なるゴム粒子密度を有する組成物を製造する。
【0032】
本発明の方法は、高衝撃ポリスチレン(HIPS)及びアクリロニトリル―ブタジエン―スチレンポリマー(ABS)を製造するのに特に有用であり、それらは、冷蔵庫のライナー、家庭用電気器具、おもちゃ、自動車の部品及び家具の射出成型並びに熱成型を含む種々の応用に使用できる。本発明の方法により生成したゴム変性ポリマーが、従来技術の他のゴム変性ポリマーに比較したとき改善された溶接性を有する点で、生成したゴム変性ポリマーは、また他の熱可塑性ポリマーを含む物品の製造における有利な応用を有する。さらに、生成されたポリマーは、さらなる応用のために他のポリマーとブレンドできる。
【0033】
好ましい態様では、本発明は、50cpsより低い溶液粘度を有しそして5重量%より多い重合したスチレンブロックを含む官能基化ブロックコポリマーゴムの存在下スチレン/アクリロニトリルを重合し、その場合官能基化ゴムは安定な遊離基を形成できる官能基を含むことから本質的になるアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)ゴム変性ポリマーを製造する塊状重合方法である。
【0034】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。実施例は、本発明の範囲を制限することを目的としておらず、それらはそのように解釈されてはならない。量は、特に指示されていない限り、重量部である。
【0035】
[実施例]
固有(intrinsic)光沢は、「Dr.LangeRB3」反射計によりISO2813に従って成型30分後の成型されたサンプルから製造された試料の60度Gardner光沢により決定される。
【0036】
固有光沢試料は、以下の成型条件を有するDEMAG射出成型機モデルD150−452で成型された。210℃、215℃及び220℃のバレル温度設定、225℃のノズル温度、30℃の成型温度、射出圧力1500バール、保持圧力50バール、保持時間6秒、キャビティスイッチ圧力200バール、冷却時間30秒、射出速度1秒あたり10立方センチメートル。
【0037】
成型されたプラークの寸法は、64.2mm×30.3mm×2.6mmである。固有光沢は、圧力が測定された表面上のプラークの中心で測定される。材料は、型の短い面の中心に位置する1つの射出点を経て射出される。射出成型中、キャビティ圧力が予め設定された値に達したとき、射出圧力を保持圧力に変える。圧力トランスデューサーは、射出点から19.2mmの距離に位置する。
【0038】
型の磨きは、Society of Plastic EngineersのSPI−SPEIによる。
【0039】
溶液粘度は、25℃でスチレン中5重量%の溶液で測定される。
【0040】
RPS(ゴム粒子サイズ)は、Coulter Counter(20μmオリフィス)を使用して測定される。
【0041】
SB(スチレン―ブタジエン)ブロックコポリマーは、米国特許5721320に記載された方法に従って製造される。
実施例 1−3
直列で接続された3つの2.4L容のプラグフロー反応槽からなる連続重合装置(それぞれのプラグフロー反応槽は等しいサイズの3つのゾーンに分割され、それぞれのゾーンは、別個の温度コントロールを有しそして撹拌機を備える(それぞれ、120rpmの撹拌機速度で107/110/114℃の温度設定、120rpmの撹拌機速度で114/116/120℃、30rpmの撹拌機速度で125/140/150℃))に、連続して12重量部のゴム、55.5重量部のスチレン、17.5重量部のアクリロニトリル及び15重量部のエチルベンゼンからなる供給物を900g/時の速度で加える。開始剤である1、1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンを第一の反応槽の頂部に添加する。N―ドデシルメルカプタン(NDM)(連鎖移動剤)を添加してゴム粒子のサイズ及びマトリックス分子量を最適にする。表2は、実験条件及び性質に関してさらなる詳細を含む。
【0042】
3つの反応槽を通過した後、重合混合物を、予熱機次に脱揮発押し出し機を使用して分離及び回収段階に導く。最後に、溶融した樹脂をストランドにし、冷却しそして顆粒状ペレットに切断する。4つの異なる官能基化ゴム(表1)を使用して種々の条件(開始剤及び連鎖移動剤の濃度を最適にする)下のサイズの特徴を評価する。
【0043】
【表1】

表2から、RPSが比較例1よりも遙かに大きく、遙かに低い固有光沢に反映されていることが明らかである。
【0044】
【表2】

実施例 4−5
既述したのと同じ装置を使用して、3つのゴムを表3に示すように評価する。比較例は、標準の非官能基化ブロックゴムを使用し、そして第二のシリーズの実施例は、コントロールされたラジカル重合を可能にする官能性を含むゴム(30重量%スチレン)を使用する。
【0045】
【表3】

供給物の組成、反応槽の温度及び撹拌機の速度は、同じである。同じ開始剤及び連鎖移動剤が使用されるが、一方異なる量が添加されて粒子のサイズ及びマトリックス分子量を最適にする。非官能基化ゴムに基づく供給物は、大きな粒子及び非常に低い固有光沢を生ずるが、小さいゴム粒子及び良好な固有光沢は官能基化ゴムを使用して得られる。
【0046】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基化ゴムを利用してゴムの存在下ビニル芳香族モノマーを重合することからなるビニル芳香族モノマーからゴム変性ポリマーを製造する塊状重合/溶液重合方法であって、ゴムが、グラフトされたゴム粒子が形成されそして重合したビニル芳香族モノマーからなるマトリックス内に分散するように
a)50センチポイズ(cps)より低い溶液粘度、及び
b)コントロールされたラジカル重合を可能にする1ゴム分子あたり少なくとも1つの官能基
を有する官能基化ジエンゴムからなることを特徴とする塊状重合/溶液重合方法。
【請求項2】
ビニル芳香族モノマーがスチレンである請求項1の方法。
【請求項3】
ビニル芳香族モノマーがアクリロニトリルと共重合している請求項1の方法。
【請求項4】
官能基化ジエンゴムが、スチレン/ブタジエンブロックコポリマーゴムである請求項1の方法。
【請求項5】
官能基化ジエンゴムが、20℃でスチレン中5重量%で45cpsより低い溶液粘度を有する請求項1の方法。
【請求項6】
官能基化ジエンゴムが、安定な遊離基を形成できる官能基を含む請求項1の方法。
【請求項7】
官能基化ジエンゴムが、ニトロオキシド官能基を含む請求項6の方法。
【請求項8】
官能基化ジエンゴムが、2、2、6、6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2、2、6、6−テトラメチル−1−[1−[4−(オキシラニルメトキシ)フェニル]エトキシ]−ピペリジンまたは3、3、8、8、10、10−ヘキサメチル−9−[1−[4−(オキシラニルメトキシ)フェニル]エトキシ]−1、5−ジオキサ−9−アザスピロ[5、5]ウンデカンから選ばれる官能基を含む請求項6の方法。
【請求項9】
官能基化ジエンゴムが、原子移動ラジカル重合ができる官能基を含む請求項1の方法。
【請求項10】
官能基化ジエンゴムが、可逆付加フラグメンテーション連鎖移動重合ができる官能基を含む請求項1の方法。
【請求項11】
重合が連鎖移動剤の存在下で行われる請求項1の方法。
【請求項12】
重合が開始剤の存在下で行われる請求項1の方法。
【請求項13】
重合が、開始剤と連鎖移動剤との存在下で行われる請求項1の方法。
【請求項14】
バイモダルゴム粒子サイズが、請求項1の方法を利用して別個の反応槽でそれぞれの粒子サイズを生成し、両方の反応槽の流れを合わせそして重合を続けることにより得られる請求項1の方法。
【請求項15】
塊状重合が、第一のゴム含有混合物からポリマー及び特定の体積平均直径を有する高グラフト化ゴムの分離した粒子を含む部分的に重合した連続相を形成するのに十分な条件下で行われ、次に第二のゴム含有混合物が、すでに形成されたゴム粒子が連続ポリマー相全体に分散したままであるような条件下で部分的に重合した供給物と混合され、そして新しく添加されたゴムが第二の体積平均直径を有する分離した粒子として分散されている請求項1の方法。
【請求項16】
第二のゴム含有混合物が、第一のゴム含有混合物とは異なる組成物である請求項15の方法。
【請求項17】
部分的に重合した供給物の一部が、それ以前の重合段階に再循環される請求項1の方法。
【請求項18】
請求項1の方法により生成されたゴム変性ポリマー。
【請求項19】
請求項18のゴム変性ポリマーからなる物品または組成物。

【公表番号】特表2006−517002(P2006−517002A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502825(P2006−502825)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/000962
【国際公開番号】WO2004/072136
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(502130582)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】