説明

ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】メルカプトシランカップリング剤を使用した場合のスコーチ性を改良して、加工性と低燃費性のバランスを向上する。
【解決手段】シリカ100重量部に対し、1〜4重量部の式(1)で表されるメルカプトシランカップリング剤と、1〜9重量部の式(2)で表されるアルキルアルコキシシランを、両者の合計量で5〜10重量部含有するゴム組成物である。
(R(RSi−R−SH …(1)
(R(RSi−R …(2)
(式中、R,Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、R,Rは炭素数1〜40のアルキル基やアルキルポリエーテル基等、Rは炭素数1〜16のアルキレン基、Rは炭素数1〜30のアルキル基、m=1〜3、m+n=3、p=1〜3、p+q=3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン系ゴムにシリカを配合してなるゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの低燃費性の向上のためには、タイヤを構成するゴム組成物のヒステリシスロスを低減して低発熱性にすることが有効であることが知られている。そこで、タイヤ用ゴム組成物において充填剤としてシリカが配合されている。しかしながら、シリカは粒子表面にシラノール基(Si−OH)を有していることから、粒子同士が凝集しやすく、分散性に劣る。そのため、シランカップリング剤を配合して、シリカの分散性を向上している。
【0003】
シランカップリング剤としては、スルフィド結合を持つスルフィドシランカップリング剤が汎用されており、メルカプト基を持つメルカプトシランカップリング剤も知られている。メルカプトシランカップリング剤は、スルフィドシランカップリング剤に比べて低燃費性には優れているものの、スコーチが速く使用しづらいという問題がある。そこで、かかるメルカプトシランカップリング剤のスコーチ性を改良するため、メルカプト基をブロックするような構造を持つシランカップリング剤(例えば、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン)も開発されているが、そのようなカップリング剤は高価であったり、あるいはまたスコーチ性において未だ十分なレベルに達していないなどの問題がある。そのため、保護されていないメルカプト基を持つメルカプトシランカップリング剤をそのまま使用しながら、かつスコーチ性を改良する方策が望まれる。
【0004】
なお、従来、シランカップリング剤をゴム組成物に配合する場合、その配合量は、シリカの配合量に対して少なくとも5重量%、一般的には5〜10重量%とされており、優れた低燃費性を発揮するためには、このような配合量が必要であると考えられていた。
【0005】
ところで、下記特許文献1には、シリカ配合のゴム組成物において、アルキルアルコキシシランと、高級脂肪酸金属塩と、シランカップリング剤を配合することが開示され、シランカップリング剤としては、分子内にスルフィド結合を持つスルフィドシランカップリング剤が用いられている。また、下記特許文献2には、シリカ配合のゴム組成物において、アルキルアルコキシシランと、メルカプト基をブロックしてなるシランカップリング剤とを配合することが開示されている。更に、下記特許文献3にも、アルキルアルコキシシランとスルフィドシランカップリング剤とを組み合わせて配合することが開示されている。これらの文献には、シランカップリング剤とアルキルアルコキシシランとを組み合わせて配合することは開示されているものの、メルカプトシランカップリング剤とアルキルアルコキシシランとの組合せについては開示されていない。また、特に特許文献3では、アルキルアルコキシシランによるスルフィドシランカップリング剤の一部置換は望ましくないとされており、シランカップリング剤の通常の配合量に対してアルキルアルコキシシランを追加するように配合すべきと記載されている。
【0006】
一方、下記特許文献4には、ジエン系ゴムに対し、補強性充填剤としてシリカを配合することが記載され、該シリカとして、メルカプトシランカップリング剤及びアルキルアルコキシシランで予め処理された疎水化シリカを用いることが開示されている。このように特許文献4はメルカプトシランカップリング剤とアルキルアルコキシシランとの組合せを開示するものの、予めシリカに処理して用いられるものであり、また、シリカに対するメルカプトシランカップリング剤やアルキルアルコキシシランの使用量についても開示されていない。
【0007】
上記のように、従来、シリカ配合のゴム組成物において、シランカップリング剤とアルキルアルコキシシランとの組合せについては開示されているものの、配合量を少量に抑えたメルカプトシランカップリング剤とともに、その配合量を補うようにアルキルアルコキシシランを配合することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−284482号公報
【特許文献2】特開2007−204684号公報
【特許文献3】特開平10−001565号公報
【特許文献4】特開2001−354805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、保護されていないメルカプト基を持つメルカプトシランカップリング剤をそのまま使用しながら、スコーチ性を改良することにより、加工性と低燃費性のバランスを向上することができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意検討していく中で、メルカプトシランカップリング剤は、スルフィドシランカップリング剤に比べて少量でも、低燃費性についての改良効果に優れ、またその配合量を抑えることによりスコーチ性の悪化を抑えることができることを見出した。一方で、メルカプトシランカップリング剤の配合量が少ないと、未加硫状態での粘度が高くなり、違う意味での加工性が悪化することが判明した。そこで、メルカプトシランカップリング剤の配合量を従来に比べて少なくして、スコーチ性の悪化を抑えつつ、低燃費性を向上するとともに、減量したメルカプトシランカップリング剤を補うように硫黄を有しないアルキルアルコキシシランを配合することで、未加硫状態での粘度を下げて加工性を改善できることを見出した。このように、従来の一般的なスルフィドシランカップリング剤の配合量に比べて、少量に抑えたメルカプトシランカップリング剤とともに、その配合量を補うように配合したアルキルアルコキシシランとの組合せにより、スルフィドシランカップリング剤を用いた場合に比べて、未加硫状態での粘度上昇及びスコーチ性の悪化を抑えて加工性を維持しつつ、低燃費性を向上できることは従来知られておらず、この点に本発明の要旨がある。
【0011】
すなわち、本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムにシリカを配合してなるゴム組成物であって、前記シリカ100重量部に対し、1〜4重量部の下記一般式(1)で表されるメルカプトシランカップリング剤と、1〜9重量部の下記一般式(2)で表されるアルキルアルコキシシランを、両者の合計量で5〜10重量部含有するものである。
【0012】
(R(RSi−R−SH …(1)
式中、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、Rは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、Rは炭素数1〜16のアルキレン基、m=1〜3、m+n=3である。
【0013】
(R(RSi−R …(2)
式中、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、Rは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、Rは炭素数1〜30のアルキル基、p=1〜3、p+q=3である。
【0014】
本発明は、また、該ゴム組成物を少なくとも一部に使用した空気入りタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護されていないメルカプト基を持つメルカプトシランカップリング剤をそのまま使用しながら、スコーチ性を改良することにより、加工性と低燃費性のバランスを向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るゴム組成物では、ゴム成分として、ジエン系ゴムが用いられる。ジエン系ゴムとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0017】
上記ジエン系ゴムとしては、その分子量やミクロ構造などは特に制限されない。例えば、SBRの場合、その重合方法やスチレン量、ビニル含量などのミクロ構造、分子量などにより制限されることはない。タイヤトレッドに用いる場合は、強度や低発熱性、耐摩耗性、加工性等に優れ、従来よりトレッド用に用いられる溶液重合或いは乳化重合により得られるSBRの中から選択し使用することが好ましい。
【0018】
上記ジエン系ゴムとしては、その末端、主鎖又は側鎖が、アミノ基、エポキシ基、水酸基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、カルボキシル基等の官能基で変性された溶液重合ジエン系ポリマーを用いてもよく、その場合、ゴム成分100重量部中、このような変性ポリマーを30重量部以上含有することが好ましい。
【0019】
本発明に係るゴム組成物には、補強性充填剤としてシリカが配合される。シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びに低燃費性とウェット性能の両立効果が良好である湿式シリカが好ましく、また生産性に優れる点からも好ましい。
【0020】
シリカは、窒素吸着比表面積(BET)が100〜300m/gであるものが好ましく、BETが100m/g未満であるとシリカの補強効果が得られにくくなり、300m/gを超えるとシリカの分散性が著しく低下し、加工性(混合、押出性)が悪化する傾向にある。このようなシリカとしては、東ソーシリカ工業(株)のニップシールAQ、トクヤマ(株)のトクシールUR、U−13、エボニック社製のウルトラジルVN3などの市販品が使用できる。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0021】
シリカの配合量は、特に限定されず、ゴム組成物の用途などに応じて適宜設定することができる。一般には、ジエン系ゴム100重量部に対し、5〜200重量部にて用いることができる。また、例えば、タイヤ用ゴム組成物であれば、ジエン系ゴム100重量部に対して20〜150重量部で用いることができ、より好ましくは40〜100重量部、更に好ましくは50〜90重量部である。
【0022】
本発明に係るゴム組成物に配合される上記式(1)で表されるメルカプトシランカップリング剤は、シリカのシラノール基と反応し得るアルコキシ基と、ゴムポリマーと反応し得るメルカプト基を有するシランカップリング剤である。
【0023】
式(1)中、Rは、炭素数1〜3のアルコキシ基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。また、Rは、炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、アルキル基又はアルケニル基の場合、炭素数1〜4であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Rについて、上記アルキルポリエーテル基とは、−O−(R−O)−Rで表される。ここで、Rは炭素数1〜4のアルキレン基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。Rは炭素数1〜16のアルキル基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、より好ましくは炭素数8〜16のアルキル基である。k=1〜20であり、より好ましくは3〜8である。Rは、炭素数1〜16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。
【0024】
このようなメルカプトシランカップリング剤の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、式(1)中、n=1〜2であり、Rが上記アルキルポリエーテル基であるものとして、例えば、エボニック社製「Si363」(R:OC、R:−O(CO)−C1327、R:−(CH−、m=平均1、n=平均2、k=平均5)が挙げられ、これを使用した場合、低燃費性とスコーチ性を更に改善することができ、好ましい。
【0025】
本発明に係るゴム組成物に配合される上記式(2)で表されるアルキルアルコキシシランは、シリカのシラノール基と反応し得るアルコキシ基と、シリカを疎水化するアルキル基を有するシラン化合物であり、硫黄を有しないので、スコーチすることなく、シリカを疎水化して未加硫状態での粘度低減効果を発揮することができる。
【0026】
式(2)中、Rは、炭素数1〜3のアルコキシ基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。また、Rは、炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基であり、1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Rについて、上記アルキルポリエーテル基とは、−O−(R−O)−R(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜16のアルキル基、k=1〜20であることが好ましい。)で表される。Rは、炭素数1〜30のアルキル基であり、炭素数が大きいほど疎水性を向上することができるので、好ましくは炭素数6〜22のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数8〜18のアルキル基である。p=1〜3、p+q=3であり、より好ましくはp=3,q=0である。
【0027】
このようなアルキルアルコキシシランの具体例としては、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジオクチルジエトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシランなどが挙げられる。
【0028】
上記メルカプトシランカップリング剤の配合量は、シリカ重量に対して1〜4重量%、即ち、シリカ100重量部に対して1〜4重量部である。このようにメルカプトシランカップリング剤の配合量を従来に比べて少量に抑える点が本発明の特徴とするところであり、メルカプトシランカップリング剤であればこのような少量でもtanδを小さくして低燃費性の改良効果に優れる。但し、配合量が1重量部未満であると、補強性が損なわれるので、配合量は1重量部以上であることが要求される。一方、メルカプトシランカップリング剤は、4重量部を超えて配合しても低燃費性の更なる改良効果はほとんど得られず、その一方でスコーチ性の悪化が大きくなる。そのため、配合量を4重量部以下として、スコーチ性の悪化を抑える。配合量の上限は、より好ましくは3重量部以下である。
【0029】
上記アルキルアルコキシシランの配合量は、シリカ重量に対して1〜9重量%、即ち、シリカ100重量部に対して1〜9重量部である。アルキルアルコキシシランは、上記のように減量したメルカプトシランカップリング剤を補うように配合して未加硫状態での粘度を下げるものであり、この配合量が1重量部未満では、粘度低減効果が小さく、メルカプトシランカップリング剤を減量したことに起因する未加硫粘度の上昇を抑えることができない。逆に、配合量が9重量部を超えると、低燃費性が悪化してしまう。アルキルアルコキシシランの配合量は、より好ましくは3〜7重量部である。
【0030】
メルカプトシランカップリング剤とアルキルアルコキシシランの配合量は、両者の合計量で、シリカ重量に対して5〜10重量%、即ちシリカ100重量部に対して5〜10重量部である。合計量が5重量部よりも少ないと、粘度低減効果が不十分となったり、補強性が損なわれるなどの問題が生じる。合計量は、より好ましくは6〜9重量部である。
【0031】
本発明に係るゴム組成物には、上記成分の他、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、活性剤、カーボンブラック等の他の充填剤、滑剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー等の混合機を用いて混練し作成することができる。ゴム組成物の用途は、特に限定されないが、トレッドやサイドウォール等のタイヤ、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種ゴム組成物に用いることができる。
【0032】
該ゴム組成物をタイヤに用いる場合、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのトレッドゴムに用いることが好ましく、低燃費性に優れたタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合に従い、常法に従ってゴム組成物を調製した。詳細には、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対して硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製した。シランカップリング剤及びアルキルアルコキシシランの配合量は、下記表2に示す通りである。
【0035】
【表1】

【0036】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・スチレンブタジエンゴム:ランクセス社製「VSL5025−2HM」
・シリカ:エボニック社製「Ultrasil VN3」
・鉱物油:アロマオイル、昭和シェル石油(株)製「エキストラクト4号S」
・老化防止剤:6PPD、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
・ステアリン酸:花王(株)製「工業用ステアリン酸」
・ワックス:パラフィンワックス、日本精蝋社製「オゾエース0355」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業株式会社製「1号亜鉛華」
・加硫促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
・硫黄:5%油処理粉末イオウ
【0037】
表2中のシランカップリング剤及びアルキルアルコキシシランの詳細は以下の通りである。
[シランカップリング剤]
・Si69:商品名、エボニック社製、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・A−1891:商品名、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン
・Si363:商品名、エボニック社製、上記式(1)中、R:OC、R:アルキルポリエーテル基、R:−(CH−、m=1、n=2)
[アルキルアルコキシシラン]
・OTES:商品名、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、オクチルトリエトキシシラン
・ODTES:東京化成工業(株)製、オクタデシルトリエトキシシラン
得られた各ゴム組成物について、未加硫時のムーニー粘度とスコーチを測定するとともに、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、tanδと300%引張モジュラスを測定し評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0038】
・ムーニー粘度:JIS K6300に準じて、100℃でのムーニー粘度ML(1+4)を測定し、比較例1を100とした指数で表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性に優れることを示す。
【0039】
・スコーチ:JIS K6300に準拠したムーニースコーチ試験をレオメーター(L形ロータ)を用いて行い、予熱1分、温度125℃で測定時のt5値(分)を求め、比較例1からの差を表示した。マイナスの値は比較例1よりもスコーチしやすいことを示し、その絶対値が大きいほど、加工性に劣ることを示す。
【0040】
・tanδ:JIS K6394に準じて、温度70℃、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み2%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、発熱しにくいこと、即ち低発熱性に優れることを示す。
【0041】
・300%引張モジュラス:JIS K6251に準じて引張試験(ダンベル3号形)を実施し、300%伸長時のモジュラス値を比較例1の数値を100とした指数で表示した。数値が小さいほど低モジュラスであることを示す。
【0042】
結果は表2に示す通りであり、シリカに対して特定量のメルカプトシランカップリング剤及びアルキルアルコキシシランを配合した実施例1〜5であると、スルフィドシランカップリング剤を単独で用いた比較例1に対し、未加硫粘度を維持しつつ、かつスコーチの悪化を抑えながら、更には補強性も維持しつつ、低発熱性を改善することができ、加工性と低燃費性のバランスを向上することができた。特に、メルカプトシランカップリング剤としてSi−363を用いた実施例4は、A−1891を同配合で用いた実施例2に比べて、低燃費性が更に改善され、スコーチの悪化も抑えられた。また、アルキルアルコキシシランとしてODTESを用いた実施例3では、OTESを同配合で用いた実施例2に比べて、低燃費性が更に改善され、スコーチの悪化も抑えられた。
【0043】
これに対し、比較例2では、スルフィドシランカップリング剤をメルカプトシランカップリング剤に置換することにより、低燃費性は改良されたが、ムーニー粘度が高く、またスコーチタイムが大幅に短くなって加工性に劣っていた。比較例3,4では、アルキルアルコキシシランを併用するも、メルカプトシランカップリング剤の配合量が規定量よりも多いため、比較例2と同様に、ムーニー粘度が高く、またスコーチタイムが大幅に短くなって加工性に劣っていた。比較例5では、アルキルアルコキシシランの配合量が規定量よりも少ないため、ムーニー粘度が高く、加工性に劣っていた。比較例6では、アルキルアルコキシシランの配合量が規定量よりも多いため、低発熱性の効果が損なわれていた。比較例7では、メルカプトシランカップリング剤の配合量が規定量よりも少ないため、ムーニー粘度が高く、加工性に劣り、また補強性が損なわれていた。
【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムにシリカを配合してなるゴム組成物であって、
前記シリカ100重量部に対し、1〜4重量部の下記一般式(1)で表されるメルカプトシランカップリング剤と、1〜9重量部の下記一般式(2)で表されるアルキルアルコキシシランを、両者の合計量で5〜10重量部含有する
ことを特徴とするゴム組成物。
(R(RSi−R−SH …(1)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、Rは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、Rは炭素数1〜16のアルキレン基、m=1〜3、m+n=3である。)
(R(RSi−R …(2)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、Rは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、Rは炭素数1〜30のアルキル基、p=1〜3、p+q=3である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、n=1〜2であり、Rは、−O−(R−O)−R(但し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜16のアルキル基、k=1〜20である。)ことを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を少なくとも一部に使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−32402(P2011−32402A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181538(P2009−181538)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】