説明

ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】ポリマーゲルの分散性を向上させて、物性バランスの向上を図る。
【解決手段】ジエン系ゴムからなるゴム成分に、数平均分子量が100〜100000の低分子量ジエン系ポリマーと、トルエン膨潤指数Qiが9以下かつガラス転移温度が−100〜0℃の架橋されたジエン系ポリマー粒子であるポリマーゲルと、を配合してなるゴム組成物である。前記低分子量ジエン系ポリマーとしては、官能基を有する変性低分子量ポリマーが好ましく、また、前記ポリマーゲルとしては、前記変性低分子量ポリマーの官能基と相互作用する官能基を有する変性ポリマーゲルが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及び、それを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料の低発熱化や加工性改善といった問題は、各種材料の最適化等で改善はされるものの、その要求は年々高くなっている。例えば、ゴム製品であるタイヤの転がり抵抗と、湿潤路面でのグリップ性能(wetμ)の改良にあたっては、両者がトレードオフの関係にあることから、そのバランス改善の技術的ハードルは高い。また、近年、低燃費タイヤなどの環境に対応した商品へのニーズが大きいことから、その要求に対して大幅な改良が必要になっている。そのようなゴム製品に対する要求特性を満たすためには、何かしらのブレークスルーが必要である。
【0003】
上記要求性能に対応するために、架橋されたポリマー粒子であるゴムゲル(ポリマーゲル)をゴム組成物に配合することが提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらのポリマーゲルはナノゲルとも称されるようにナノサイズの微粒子状のゲルであるため、ゴム組成物中で凝集しやすく、分散性については未だ改良の余地があり、更なる物性の改良が求められる。
【0004】
なお、下記特許文献4には、ジエン系ゴムとスチレンブタジエンゴムゲルとからなる固形ゴム成分に、重量平均分子量2000〜90000の低分子量スチレンブタジエンゴムを配合することが開示されている。しかしながら、この文献では、スチレンブタジエンゴムゲルとして、トルエン膨潤指数が16〜70と大きなものが用いられており、すなわち、該スチレンブタジエンゴムゲルはゴム成分の一部を構成するものであって、架橋密度が低く、比較的柔軟なゴム成分であって、高強度である従来のフィラーに匹敵する特性を発揮するものではなく、本発明の有利な効果を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−204217号公報
【特許文献2】特開平06−057038号公報
【特許文献3】特表2004−504465号公報
【特許文献4】特開2006−257160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、特定のポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーを組み合わせることにより、該ポリマーゲルの分散性を向上させて、物性バランスの更なる向上を図ることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分に、数平均分子量が100〜100000の低分子量ジエン系ポリマーと、トルエン膨潤指数Qiが9以下かつガラス転移温度が−100〜0℃の架橋されたジエン系ポリマー粒子であるポリマーゲルと、を配合してなるものである。本発明に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物を用いてなるゴム部分を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トルエン膨潤指数の低い特定のポリマーゲルとともに、低分子量ジエン系ポリマーを組み合わせて用いたことにより、硬度や強度を維持しつつ、ポリマーゲルの分散性を向上し、物性バランスを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本発明に係るゴム組成物は、(A)ジエン系ゴムからなるゴム成分(但し、下記ポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーは除く。)と、(B)ポリマーゲルと、(C)低分子量ジエン系ポリマーと、を含有するものである。
【0011】
上記(A)成分のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。上記の中でも、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムが好ましい。該ジエン系ゴムの分子量は、常温で固形状をなす限り特に限定されず、重量平均分子量が10万を超えること、より好ましくは20万以上であることが好ましい。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、通常は200万以下のものを用いることが好ましい。
【0012】
本発明における重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて求められる。具体的には、測定装置として(株)島津製作所製「LC−10A」を用い、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel−MIXED−C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHF、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した。
【0013】
上記(B)成分のポリマーゲルとしては、トルエン膨潤指数Qiが9以下であり、かつガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃である、架橋されたジエン系ポリマー粒子が用いられる。かかるポリマーゲルは、その低いトルエン膨潤指数によりフィラーとしての性質を持つものであるが、それ自体はジエン系ポリマーからなり、上記(A)のジエン系ゴムと共通ないし類似しているので、従来のカーボンブラックやシリカ等のフィラーとは異なる優れた物性をゴム組成物に付与することができる。例えば、従来のフィラーに置換して配合することにより、硬度や強度を維持しつつ、低発熱化を図ることができ、また低温性能の改良や加工性の改良などを図ることができる。また、ポリマーゲルは、カーボンブラックやシリカに比べて比重が小さいので、ゴム製品の軽量化を図ることができる。
【0014】
該ポリマーゲルは、ゴム分散液を架橋することにより製造することができる。ゴム分散液としては、懸濁重合により製造されるゴムラテックス、溶液重合されたゴムを水中に乳化させて得られるゴム分散液などが挙げられ、また、架橋剤としては、有機ペルオキシド、硫黄系架橋剤など挙げられる。また、ゴム粒子の架橋は、ゴムの乳化重合中に、架橋作用を持つ多官能化合物との共重合によっても行うことができる。具体的には、例えば、特開平10−204225号公報、特表2004−504465号公報、特表2004−506058号公報、特表2004−530760号公報などに開示の方法を用いることができる。
【0015】
該ポリマーゲルを構成するジエン系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムを主成分とするものである。
【0016】
該ポリマーゲルのガラス転移温度(Tg)は−100〜0℃である。このようなガラス転移温度の低いポリマーゲルを用いることで損失係数(tanδ)を低くして低発熱性を改良することができる。ガラス転移温度は、より好ましくは、−90〜−20℃であり、更に好ましくは−80〜−40℃である。ポリマーゲルのガラス転移温度は、ベースとなるジエン系ポリマーの種類と、その架橋度により調整することができる。ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される値(昇温速度20℃/分)である。
【0017】
該ポリマーゲルのトルエン膨潤指数Qiは9以下である。このようなトルエン膨潤指数Qiの小さいポリマーゲルを用いることにより、フィラーとしての補強効果を発揮することができる。すなわち、トルエン膨潤指数が大きすぎると、ポリマー粒子が柔らかくなり、補強効果が失われる。トルエン膨潤指数Qiは、より好ましくは1〜9であり、更に好ましくは3〜8である。トルエン膨潤指数Qiは、例えば、ポリマーゲルの架橋度により調整することができる。
【0018】
ここで、トルエン膨潤指数Qiは、ポリマーゲルをトルエンに膨潤させた後、乾燥させることにより測定される。すなわち、ポリマーゲル250mgを、トルエン25mL中で、24時間、振とう下に膨潤させ、20000rpmで遠心分離してから、濡れ質量を秤量し、次いで70℃で質量一定まで乾燥させてから、乾燥質量を秤量する。トルエン膨潤指数は、Qi=(ゲルの濡れ質量)/(ゲルの乾燥質量)により求められる。
【0019】
該ポリマーゲルの粒径は、平均粒子径(DIN 53 206によるDVN値)が5〜2000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nmであり、更に好ましくは20〜200nmである。
【0020】
該ポリマーゲルとしては、官能基を有する変性ポリマーゲルを用いることが好ましい。官能基としては、例えば、カルボキシル基などのカルボン酸誘導体、ヒドロキシル基などのヒドロキシ系官能基、アミノ基、チオール基、スルホ基などのヘテロ原子を含むものが挙げられる。このような官能基は、ジエン系ポリマーの重合時に、官能基が導入されたモノマーを用いて合成してもよく、また重合後の活性末端に官能基を導入してなる末端変性ポリマーを用いることもできる。また、上記架橋によりポリマー粒子を作製した後に、その粒子表面のC=C二重結合に対して官能基を有する化合物を反応させることにより、粒子表面に官能基を組み込むこともできる。
【0021】
該ポリマーゲルの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜70質量部であり、更に好ましくは20〜60質量部である。ポリマーゲルの配合量が少なすぎると、その添加効果が不十分となるおそれがある。逆に配合量が多すぎると、不均一な分散状態が局所的に生起することにより、ポリマーゲルの異物化が進み物性が低下するおそれがある。
【0022】
上記(C)の低分子量ジエン系ポリマーとしては、数平均分子量が100〜100000である液状のポリマーが用いられる。上記のようにポリマーゲルはナノサイズの微粒子状ゲルであるため、ゴム組成物中で凝集しやすいが、該低分子量ジエン系ポリマーを併用することにより、ポリマーゲルの分散性を向上させることができ、更なるゴム物性の改良を図ることができる。
【0023】
該低分子量ジエン系ポリマーの種類としては、例えば、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体である。
【0024】
該低分子量ジエン系ポリマーの数平均分子量は100〜100000であり、より好ましくは、1000〜30000、更に好ましくは2000〜20000である。数平均分子量が100未満では、ポリマーゲルの凝集阻害因子として空間的な機能が十分でなく、逆に、100000を超えると、相対的にゴム成分が増えることから、ゴム材料の強度が低下する。
【0025】
該低分子量ジエン系ポリマーとしては、上記(B)の変性ポリマーゲルの官能基と相互作用する官能基を有する変性低分子量ポリマーを用いることが好ましい。このような官能基としては、例えば、カルボキシル基などのカルボン酸誘導体、ヒドロキシル基などのヒドロキシ系官能基、アミノ基、チオール基、スルホ基などのヘテロ原子を含むものが挙げられる。このような官能基は、ジエン系ポリマーの重合時に、官能基が導入されたモノマーを用いて合成してもよく、また重合後の活性末端に官能基を導入してなる末端変性ポリマーを用いることもできる。好ましくは、末端変性物を用いることである。ここで、相互作用とは、変性ポリマーゲルの官能基と変性低分子量ポリマーの官能基との間での化学反応による化学結合でもよく、また、ヒドロキシル基同士やヒドロキシル基とカルボキシル基との間等で生じる水素結合であってもよい。
【0026】
上記(B)のポリマーゲルと上記(C)の低分子量ジエン系ポリマーとは、ともにジエン系ゴムをベースとするものであるため、C=C二重結合部分同士の親和性により、低分子量ジエン系ポリマーによってポリマーゲルの凝集を抑えることができる。更に、上記のように両者を変性させて、変性ポリマーゲルと変性低分子量ポリマーとを相互作用させることにより、立体構造的にポリマーゲルの凝集を抑え(変性ポリマーゲルに結合した変性低分子量ポリマーがポリマーゲル同士が近づくのを立体的に妨げる。)、また、ゴム成分であるジエン系ポリマーとの相溶性がよくなることから、更なる物性の改善を図ることができる。
【0027】
該低分子量ジエン系ポリマーの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部であり、更に好ましくは5〜15質量部である。低分子量ジエン系ポリマーの配合量が少なすぎると、ポリマーゲルの分散性を改良する効果が小さくなるおそれがある。逆に配合量が多すぎると、低発熱性が損なわれる。
【0028】
上記(B)のポリマーゲルと上記(C)の低分子量ジエン系ポリマーは、予め両者を混合(反応)してから、上記(A)のゴム成分であるジエン系ゴムに混合(混練)することが好ましい。このような事前混合を行うことにより、ポリマーゲルの粒子表面に液状の低分子量ジエン系ポリマーを満遍なくなじませることができ、低分子量ジエン系ポリマーによるポリマーゲルの分散性向上効果を高めて、物性バランスの更なる向上を図ることができる。
【0029】
本発明に係るゴム組成物には、カーボンブラックやシリカなどの無機充填剤を配合してもよい。かかる無機充填剤の配合量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、例えば、5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。
【0030】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAFクラス(N100番台)、ISAFクラス(N200番台)、HAFクラス(N300番台)、FEF(N500番台)、GPF(N600番台)(ともにASTMグレード)のものなどが挙げられる。また、シリカとしても、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられ、そのうち含水珪酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。なお、無機充填剤としてシリカを配合する場合、スルフィドシランやメルカプトシランなどのシランカップリング剤を併用することが好ましく、シランカップリング剤は、通常、シリカ100質量部に対して2〜25質量部にて用いることができる。
【0031】
カーボンブラック及びシリカ以外の無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられる。なお、以上挙げたカーボンブラックやシリカ、更にはその他の無機充填剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、あるいはまた複数種の無機充填剤を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明に係るゴム組成物には、上記の成分の他に、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される種々の添加剤を任意に配合することができる。特に限定するものではないが、加硫剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0033】
上記ゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、通常に用いられるバンバリーミキサーやロール、ニーダー等の混合機を用いて混練することで調製され、所定形状に成形し加硫することで、タイヤ、防振ゴム、ベルトなどの各種ゴム製品を得ることができる。好ましくは、タイヤ用ゴム組成物して用いることであり、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤのトレッドゴムやサイドウォールゴムなどの様々なゴム部分を形成することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[ポリマーゲル1の作製]
日本ゼオン(株)製SBRラテックス「Nipol Lx110」177.8gと蒸留水182.2gを、攪拌手段を備えた反応器へ注ぎ、次いで、日油(株)製過酸化物架橋剤「パーブチルL」1.44gを添加した。反応器内を2時間窒素置換した後、80℃で4時間攪拌し、反応器を室温に戻し、貧溶媒に注ぎ洗浄した。3回洗浄後、乾燥することでポリマーゲルを得た。得られたポリマーゲルは、Tg=−50℃、Qi=3、平均粒子径=80nmであった。
【0036】
[ポリマーゲル2の作製]
乳化重合により得たポリブタジエンラテックス(固形分40質量%、平均粒子径220nm)200.0gと蒸留水200.0gを、攪拌手段を備えた反応器へ注ぎ、次いで、日油(株)製過酸化物架橋剤「パーブチルL」2.00gを添加した。反応器内を2時間窒素置換した後、80℃で4時間攪拌し、反応器を室温に戻し、貧溶媒に注ぎ洗浄した。3回洗浄後、乾燥することでポリマーゲルを得た。得られたポリマーゲルは、Tg=−70℃、Qi=8、平均粒子径=200nmであった。
【0037】
[ポリマーゲル3の作製]
日本ゼオン(株)製SBRラテックス「Nipol Lx432M」195.1gと蒸留水204.8gを、攪拌手段を備えた反応器へ注ぎ、次いで、日油(株)製過酸化物架橋剤「パーブチルL」1.44gを添加した。反応器内を2時間窒素置換した後、80℃で4時間攪拌し、反応器を室温に戻し、貧溶媒に注ぎ洗浄した。3回洗浄後、乾燥することでポリマーゲルを得た。得られたポリマーゲルは、カルボキシル基変性品であって、Tg=−55℃、Qi=4、平均粒子径=130nmであった。
【0038】
[ポリマーゲル4の作製](比較例)
日本ゼオン(株)製SBRラテックス「Nipol Lx415M」186.0gと蒸留水213.9gを、攪拌手段を備えた反応器へ注ぎ、次いで、日油(株)製過酸化物架橋剤「パーブチルL」1.44gを添加した。反応器内を2時間窒素置換した後、80℃で4時間攪拌し、反応器を室温に戻し、貧溶媒に注ぎ洗浄した。3回洗浄後、乾燥することでポリマーゲルを得た。得られたポリマーゲルは、Tg=27℃、Qi=3、平均粒子径=110nmであった。
【0039】
[ポリマーゲル5の作製](比較例)
日本ゼオン(株)製SBRラテックス「Nipol Lx110」177.8gと蒸留水182.2gを、攪拌手段を備えた反応器へ注ぎ、次いで、日油(株)製過酸化物架橋剤「パーブチルL」0.72gを添加した。反応器内を2時間窒素置換した後、80℃で1時間攪拌し、反応器を室温に戻し、貧溶媒に注ぎ洗浄した。3回洗浄後、乾燥することでポリマーゲルを得た。得られたポリマーゲルは、Tg=−50℃、Qi=24、平均粒子径=100nmであった。
【0040】
[第1実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合に従って、タイヤ用ゴム組成物を調製した。詳細には、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して、ゴム組成物を調製した。表中の各成分、及び共通配合については以下の通りである。なお、実施例1〜10及び比較例5〜7については、第1混合段階の前に、予め、ポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーとを事前混合した。
【0041】
・天然ゴム:RSS#3
・カーボンブラック:N339、三菱化学(株)製
・オイル:株式会社ジャパンエナジー製「プロセスNC−140」
・低分子量ジエン系ポリマー1:末端OH基変性ポリブタジエン、出光興産(株)製「R−45HT」(数平均分子量=2800)
・低分子量ジエン系ポリマー2:未変性ポリブタジエン、日本曹達(株)製「NISSO−PB B−3000」(数平均分子量=3000)
・低分子量ジエン系ポリマー3:未変性ポリイソプレン、(株)クラレ製「LIR−30」(数平均分子量=28000)
・低分子量ジエン系ポリマー4:アミン変性ポリブタジエン(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(アクリロニトリル単位量:10質量%)のシアノ基を還元してアミン変性したもの。数平均分子量=3500)
・ブタジエンゴム:宇部興産(株)製「BR150B」
【0042】
共通配合は、ゴム成分100質量部に対して、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」)3質量部、老化防止剤(住友化学(株)製「アンチゲン6C」)2質量部、ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−20」)2質量部、ワックス(日本精鑞(株)製「OZOACE0355」)2質量部、硫黄(鶴見化学工業(株)製「5%油入微粉末硫黄」)1.5質量部、加硫促進剤1(住友化学(株)製「ソクシノールCZ」)1.8質量部、加硫促進剤2(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」)2.0質量部とした。
【0043】
得られた各ゴム組成物について、ムーニー粘度を測定するとともに、160℃×30分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、硬度、引張強度、tanδ、反発弾性率を測定した。各測定方法は以下の通りである。
【0044】
・ムーニー粘度:混合後におけるゴム組成物の100℃でのムーニー粘度(ASTM D1646)を測定した。
【0045】
・硬度:JIS K6253に準拠したタイプAデュロメータを使用し、23℃での硬度を測定した。
【0046】
・引張強度:JIS K6251に準拠して引張試験を行い(3号形ダンベル使用)、破断時引っ張り強さを測定した。
【0047】
・tanδ:動的粘弾性測定装置(上島製作所(株)製)を使用し、JIS K6394に準じて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み1.0%、温度50℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、発熱しにくい(即ち、低発熱性に優れる)ことを示す。
【0048】
・反発弾性率:リュプケ式反発弾性試験機を使用し、JIS K6301に準じて、室温雰囲気下での反発弾性率(%)を測定し、反発弾性率の逆数について比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、反発弾性率が低く、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【表1】

【0049】
結果は表1に示す通りであり、比較例2ではポリマーゲルを配合したものの、低分子量ジエン系ポリマーを配合していないので、比較例1に対し、加工性が悪く、低発熱性も悪化傾向にあった。また、比較例3では低分子量ジエン系ポリマーのみを配合したので、tanδが高く低発熱性に劣っていた。これに対し、本発明に係る特定のポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーを組み合わせた実施例1〜10であると、比較例1に対し、同等の硬度及び強度を維持しつつ、またウェットグリップ性を同等以上に確保しつつ、低発熱化が図られており、また、ムーニー粘度が低く、加工性にも優れていた。
【0050】
なお、比較例4では、低分子量ジエン系ポリマーの代わりに固形のブタジエンゴムを配合したので、低発熱化されておらず、また加工性の改良効果もなかった。比較例5では、Tgの高いポリマーゲルを用いたため、低発熱化されておらず、加工性の改良効果も小さかった。また、比較例7では、架橋密度が低くトルエン膨潤指数の高いポリマーゲルを用いたので、十分な補強性が得られなかった。
【0051】
[第2実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合に従って、タイヤ用ゴム組成物を調製した。詳細には、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して、ゴム組成物を調製した。また、実施例11〜15及び比較例10については、第1混合段階の前に、予め、ポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーとを事前混合した。表中のSBRは、スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製「SBR1502」)であり、その他は表1と同じである。
【0052】
得られた各ゴム組成物について、第1実施例と同様に、ムーニー粘度、硬度、引張強度、tanδ、反発弾性率を測定した。tanδと反発弾性率については、比較例8の値を100とした指数で表示した。
【0053】
結果は表2に示す通りであり、表1と同様、実施例によれば、ポリマーゲルと低分子量ジエン系ポリマーの相乗効果による材料の低発熱化とウェットグリップ性のバランス向上、加工性の改善を示し、強度も保持されていた。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るゴム組成物は、タイヤ、防振ゴム、ベルトなどの各種ゴム製品に用いることができ、好ましくは、空気入りタイヤのトレッドやサイドウォールに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムからなるゴム成分に、
数平均分子量が100〜100000の低分子量ジエン系ポリマーと、
トルエン膨潤指数Qiが9以下かつガラス転移温度が−100〜0℃の架橋されたジエン系ポリマー粒子であるポリマーゲルと、
を配合してなるゴム組成物。
【請求項2】
前記低分子量ジエン系ポリマーが官能基を有する変性低分子量ポリマーであることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリマーゲルが、前記変性低分子量ポリマーの官能基と相互作用する官能基を有する変性ポリマーゲルであることを特徴とする請求項2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記低分子量ジエン系ポリマーと前記ポリマーゲルを予め混合してから、前記ゴム成分に混合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記低分子量ジエン系ポリマーを1〜30質量部と、前記ポリマーゲルを1〜100質量部配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなるゴム部分を有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−140544(P2012−140544A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294544(P2010−294544)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】