説明

ゴルフクラブシャフトとそのシャフトの製造方法

【課題】従来以上に振動減衰性に優れソフトなフィーリングを有する軽量繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトとその簡単な製造方法を提供する。
【解決手段】複数の繊維強化樹脂(A〜E)層で構成されるゴルフクラブシャフトにおいて、繊維強化樹脂層間または繊維強化樹脂層の最内層の内面に、厚さ0.01mmから0.70mmのポリエステル樹脂制振材料(PE)層が1層以上配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールの打球時にクラブヘッドからグリップに伝播される振動が効果的に低減される機能を有し、打球感の優れた繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトと同ゴルフクラブシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、比強度・比剛性の高い炭素繊維を強化繊維とする繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトが製造され市場に定着している。特にゴルフクラブの軽量化や長尺化に対応するため軽量の炭素繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトが普及している。さらに最近ではゴルフクラブヘッドのほとんどが金属製からなりヘッドが大型化しているため、打球時の手に伝わる振動や硬質感が高まり、振動の低減や打球感を改良に対する要求が強まっている。
【0003】
従来も、例えば特開平3−221079号公報(特許文献1)、特開平4−263936号公報(特許文献2)、特開平5−123428号公報(特許文献3)、特開平7−1120403号公報(特許文献4)にはゴルフクラブシャフトに一定の振動損失係数をもつ振動抑止材層を設ける繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトが開示されている。
【0004】
前記振動抑止材としては、例えば特許文献1及び2によれば、ゴム弾性を有する樹脂、又はこれらの樹脂に鉛や無機物質を混合したもの、或いはエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂及び黒鉛、フェライト、マイカなどの無機充填材を混合した熱硬化性樹脂材料が特に好ましい材料として例示されている。特許文献3では、振動抑止材として前記材質の他に、各種のエラストマーや発泡プラスチックを挙げている。更に、特許文献4では接着性を確保すべく、振動抑止材としてゴルフシャフトの主な構成材料である繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂と同種の樹脂のみからなる層をシャフトと同心円状に配することを開示している。
【特許文献1】特開平3−221079号公報
【特許文献2】特開平4−263936号公報
【特許文献3】特開平5−123428号公報
【特許文献4】特開平7−1120403号公報
【特許文献5】特開平9−24554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の状況下にあって、各特許文献1〜4に挙げられた振動抑制材よりも高い減衰性を有する材料を用いて、近年の軽量シャフトに応用しても重量の増加がなく、また部分的な振動減衰層の存在による外観の凹凸が出現しないゴルフクラブシャフトの実現と、より高い制振性を有するゴルフクラブシャフトの容易な製造方法の実現とが切望されてきた。
【0006】
本発明の目的は、幅広い周波数領域で優れた振動吸収特性を有する制振材料を用いることにより、従来以上に振動減衰性に優れソフトなフィーリングを有する軽量繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトとその簡単な製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明に係る繊維強化樹脂製ゴルフシャフトの第1の基本構成は、複数の繊維強化樹脂層で構成されるゴルフクラブシャフトにおいて、繊維強化樹脂層間または繊維強化樹脂層の最内層の内面に、厚さ0.01mmから0.70mmのポリエステル樹脂制振材料層を1層以上有している。
【0008】
また、本発明に係る繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトの第2の基本構成は、複数の繊維強化樹脂層からなるゴルフクラブシャフトにおいて、シャフト長手方向の長さ100mmからシャフトの全長にわたり1層以上のポリエステル樹脂制振材料層を有している。
【0009】
これらのゴルフクラブシャフトにあって、前記ポリエステル樹脂制振材料層のポリエステル樹脂に導電性フィラーを分散させるとよい。
【0010】
こうした強化繊維樹脂製のゴクフクラブシャフトは、本発明に係る製造方法の基本構成である、繊維強化樹脂層を形成するプリプレグにポリエステル樹脂制振材料シートを予備接着して貼り合わせプリプレグを得、最内層に制振材料シートが配置されるように、あるいは繊維強化樹脂層間に前記制振材料シートが配置されるように、芯金にプリプレグと前記貼り合わせプリプレグとを巻きつけ、樹脂を硬化する方法をもって効率的に実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトは、従来の制振材料と比較してより高い振動減衰性能を有するポリエステル樹脂を主成分とする制振材料層を有するため、重量増加をもたらすことがなく、軽量で振動吸収性に優れたソフトな打球感をもち、その製造も、従来の方式を効果的に利用できるため、簡単で極めて効率的に実施化を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のゴルフクラブシャフトは複数の繊維強化樹脂層により形成されている。繊維強化樹脂層の、一層あたりの厚みは概ね0.01mmから0.25mmである。繊維強化樹脂層マトリックス樹脂には熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができるが、好ましくは熱硬化性樹脂がよい。
【0013】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂など、およびこれらの混合樹脂を使用することができる。一方、熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂など、およびこれらの混合樹脂を使用することができる。なかでもエポキシ系樹脂は硬化収縮率が少なく、高い剛性と靭性値を有するので最も好適に使用される。
【0014】
本発明の繊維強化樹脂層を構成する繊維は、金属繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ガラス系繊維、セラミクス繊維などの無機系繊維やアラミド繊維、その他の高強力合成繊維などを使用することができる。無機繊維は軽量で高強力であることから好適に使用される。なかでも炭素繊維が比強度、比剛性に優れるので最適である。かかる繊維は、単独またはそれらを混合して使用してもよく、また長繊維、短繊維またはこれらの混合のいずれの形状で使用されてもよい。
【0015】
本発明における制振材料層は、繊維強化樹脂層間または繊維強化樹脂層の最内層の内面に一層以上配置され、一層あたりの厚さが0.01mmから0.70mmのポリエステル樹脂を主成分とする。
【0016】
かかる制振性を有するポリエステル樹脂としては商品名ネオフェード(三菱瓦斯化学株式会社製)を挙げることができる。ほかにも、ジカルボン酸とジオールの重縮合ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸としてイソフタル酸、アゼライン酸またはこれらの混合物を、ジオールとして1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールを原料として重縮合して得られる樹脂組成物を0.01mmから0.70mmにシート化して用いることができる。なお重縮合反応には公知のエステル化触媒や安定化剤を用いることができる他、製造方法は特に限定されない。適宜化学的に変性を行ったり、添加剤を混合して用いることができる。
【0017】
ポリエステル樹脂制振材料層の厚さを0.01mm以上とすることにより、ゴルフシャフトとしたときの振動減衰性が十分に得られる。一方、0.70mm以下とすることにより、重量の増加を抑えることができる。また、部分的に制振材料層を配置した場合にもシャフト外面に凹凸が生じない。更に、貼り合わせプリプレグを芯金に容易に巻きつけてシャフトを形成することができる。
【0018】
ポリエステル樹脂からなる制振材料層は、繊維強化樹脂層の最内層の内面に、または強化繊維樹脂層間に1層以上配置される。ゴルフクラブシャフトの最外層に配置されるとポリエステル樹脂制振材料層の耐溶剤性が十分でない場合、溶剤を用いるゴルフクラブシャフトの塗装工程で不具合が生じ好ましくない。またゴルフクラブシャフトの研磨工程でポリエステル制振材料層が削られてしまうことになる。
【0019】
またポリエステル樹脂制振材料層は、シャフトの長手方向に長さ100mmからシャフト全長にわたって1層以上有することが好ましい。長さを100mm以上とすることによより、ゴルフクラブシャフトとしたときの振動減衰性が十分に得られる。またポリエステル樹脂制振材料層の主たる部分は円周方向に正の整数層で配置される。ポリエステル樹脂制振材料層の主たる部分を正の整数とすることにより、シャフト円周方向の肉厚が均一となってゴルフクラブシャフトの円周方向での剛性分布に差異が生じない。
【0020】
さらにポリエステル樹脂制振材料に導電性フィラーを分散させると振動減衰率が高くなり好ましい。ポリエステル樹脂制振材料の弾性率も高くできるので好適である。
【0021】
導電性フィラーとしては、無機系では銀、鉄、銅などの金属粉末や金属繊維、あるいは酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの金属酸化物の微粒子やウイスカー、さらには各種カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性カーボン粉末、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長黒鉛などの炭素繊維を例示することができる。特にカーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性カーボン粉末が好適に用いられる。さらに、鱗片状の無機充填材を用いることができ、例えばマイカ鱗片、ガラス片、セリサイト、グラファイト、タルク、アルミニウムフレーク、黒鉛などの鱗片状充填材が例示できる。
【0022】
ポリエステル樹脂制振材料のその他の物性としては、JISK7127に準拠した測定法による引張り弾性率が0.2GPaから0.4GPa、JISK7197に準拠した測定法による線膨張係数が2.2×10-4/℃から3.5×10-4/℃、加振周波数500Hzで測定温度が20℃のとき損失弾性率が3GPaから6GPa、加振周波数500Hzで測定温度が20℃のとき損失係数が0.04から0.06であることが好ましい。このようなポリエステル樹脂製の制振材料はゴム系の制振材料よりも弾性率が高く、損失弾性率も大きいので繊維強化樹脂層間に挟んだ際に物性の低下が少なく、制振特性が高くなるので好適である。
【0023】
本発明のゴルフクラブシャフトは長さあたりの重量が0.1g/mm以下、より好ましくは0.08g/mm以下、さらに好ましくは0.06g/mm以下である。長さあたりの重量が0.1g/mm以下に抑えることにより、ゴルフクラブとしたときのスイングの速度が低くなることがない。
【0024】
本発明のゴルフクラブシャフトは繊維強化樹脂層を形成するプリプレグに予めポリエステル樹脂製の制振材料シートを予備接着して貼り合わせプリプレグを得、最内層に制振材料シートが配置されるように、離型剤を塗布した芯金に貼り合わせプリプレグとプリプレグとを巻きつけるか、あるいは繊維強化樹脂層間に制振材料シートが配置されるようにプリプレグを芯金にプリプレグとを巻きつけ、そのあとで樹脂を硬化する。本製造法によれば、それ自体にはタックがないポリエステル樹脂制振材料シートを容易に芯金に巻きつけることができる。
【0025】
ポリエステル樹脂制振材料シートをプリプレグに予備接着する方法は特に限定されないが、加熱したローラー対の間に挿入して加熱圧着する方法や、特開平9−24554号公報(特許文献5)に開示された、真空バッグで減圧にすることにより制振材料シートとプリプレグとを密着する方法を例示できる。これによりタックのないポリエステル樹脂制振材料シートを層間に空気を包含させることなく巻きつけることができる。また、こうして予備接着しておくと、制振材料シートを単独で巻きつけたときに生じる、制振材料シートが芯金に巻きつけたプリプレグ層から剥離してしまうという問題を解決することができる。
【0026】
次に実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
以下の実施例および比較例では表1に示す材料を用いた。
【0027】
【表1】

【0028】
(実施例1)
巻き付け材料の切り出し
制振材料シートPEは、図1に示す芯金Mに巻きつけたときにシャフト太径側端部から215mmの位置まで配され、一辺が335mmの長さからなり、その辺を挟む両端の短片長さが41mm、40mmである2辺をもつ台形の制振材料シートを、その40mmの短辺側の一隅部から対向辺側に向けて斜め直線状に120mmの位置まで切除して、図2に示す台形の第1巻き付けシート1に切り出した。ここで芯金Mは、図1に示すように、太径側端部から200mmまで径が13mmである同径部分が連続し、そこから300mmまで徐々に径を小さくして12.80mmとし、以降は細径側端部で径が3.30mmとなるように漸次径を減少させた2段のテーパ構造を有している。
【0029】
次に、図2に示すような長い四角形状のプリプレグAからなるアングル層形成用の第2巻き付けシート2を用意した。この第2巻き付けシート2は二枚の同一形状のプリプレグを重ねた2層から構成される。同一形状をもつ二枚のプリプレグは、上底部分が81mm、下底部分が91mm、上底と下底とを直角に連結する一辺部分が1165mmである台形を呈し、一枚は炭素繊維の配向方向が一辺部分の方向に対して+45°、もう一枚は炭素繊維の配向方向が−45°となるように切り出した。81mmの上底側を7mm、91mmの下底側を22mmずらして2枚のプリプレグを重ね合わせ、フュージングプレスで貼り合わせて、アングル層形成用の第2巻き付けシート2を用意した。さらに、第1巻き付けシート1の一辺部分をアングル層形成用第2巻き付けシート2の太径側端部の上記一辺側に沿わせて貼り合わせ、フュージングプレスに通して接着させた。
【0030】
以下は同様にして、第3から第7の巻き付けシート3〜7をプリプレグA、B、Cを使って、図2に示す形状となるよう切り出して、繊維の配向方向がシャフトの軸線と平行な0°であるストレート層形成用のプリプレグシートを準備した。
【0031】
プリプレグの巻き付け
図1に示す芯金Mに市販の離型剤を塗布した上に、タッキングレジンMRS−3ラッカー(三菱レイヨン(株)製)を塗布した。
【0032】
芯金Mの細径側先端から120mmの位置を基点として1165mm太径側の位置の範囲に、第1巻き付けシート1とプリプレグAを使ったアングル層形成用第2巻き付けシート2とを貼り合わせた複合シートを、巻き付けた。続いて、図2に示す順序でプリプレグA,B,Cを使ったストレート層形成用の第3〜第7巻き付けシート3〜7を順次巻き付けたのち、その表面全体に厚さ20μm、幅30mmの熱収縮性を有する図示せぬポリプロピレンテープを、巻き付けピッチ2mmで巻き付け固定した。
【0033】
樹脂の硬化、研磨
芯金Mに、制振材料シートPE、第1〜第7巻き付けシート1〜7を巻き付けポリプロピレンテープで固定したシャフト素管を硬化炉に入れ、145℃で2時間加熱して樹脂を硬化した処理後、ポリプロピレンテープを取り除いた。得られたゴルフクラブシャフト素管の両端を11mmカットして、全長を1143mmとした。研磨前のシャフトの片持ちフレックス(細径側先端から920mmまでの位置を固定して、シャフト細径側先端から10mmの位置に3kgの錘を掛けたときのシャフト細径側先端のたわみ量)は186mmであった。また研磨前のゴルフクラブシャフト素管の細径側外径は8.75mm、太径側外径は15.3mmであった。
【0034】
得られたゴルフクラブシャフト素管は細径側先端部の外径が8.5mmで、片持ちフレックスが207mmとなるよう円筒研磨機で研磨仕上げを行った。
【0035】
得られたゴルフクラブシャフトの重量は57.5g、シャフト細径側から1040mmの位置を固定し、シャフト細径側端部からシャフト細径側から50mmまでの位置に138.5kgf・mmのトルクを掛けたときのシャフトのねじれ角は5.0°であった。
【0036】
こうして得られたゴルフクラブシャフトに市販のチタン製ドライバー用ゴルフクラブヘッド(体積430cm3 、重量203g、ロフト角10.5°)をエポキシ樹脂接着剤で細径側端部に取り付け、シャフト太径側端部を50mmカットした後に市販のゴム製グリップを両面テープを使って取り付け、ドライバー用ゴルフクラブを製作した。得られたゴルフクラブでゴルフボールを打球したところ、手や肘に伝わる振動は軽減されており非常にソフトな打球感が得られた。
【0037】
(実施例2)
一枚は炭素繊維の配向方向が+45°に、もう一枚は炭素繊維の配向方向が−45°となるように、プリプレグAを使い図3の示す台形に切り出した。この二枚のプリプレグを、81mmの辺側で7mm、82mmの辺側で20mmずれるようにして重ね、フュージングプレスで貼り合わせて、アングル層形成用第1巻き付けシート1を用意した。次いで、芯金Mに二層目として巻き付けるため、プリプレグBを使った繊維の配向方向を0°としたストレート層形成用プリプレグシートを図3に示す三角形状に切り出して第2巻き付けシート2とした。
【0038】
制振材料シートPEは、芯金M上に巻き付けたプリプレグAからなる上記第1巻き付けシート1を芯金Mの太径側に巻き付けたときに、シャフト太径側端部からシャフト細径側端部方向215mmの位置までを一層で構成するとともに、そこから細径側端部側に向けて120mmの位置でゼロになるよう図3に示す第3巻き付けシート3の形状に切り出し、更にこれをプリプレグAから図3に示すシート形状に切り出した第4巻き付けシート4の太径側短部から335mmの長さにわたり重ね合わせてフュージングプレスを用いて貼り合わせた。
【0039】
以下は、プリプレグC,B,Bを使って、図3に示す第5〜第7の巻き付けシート5〜7のシート形状となるように、ストレート層形成用プリプレグを順次切り出して準備した。
【0040】
各材料シートの巻き付けは、実施例1と同様にして行った。アングル層形成用の第1巻き付けシート1を芯金Mに巻き付け、第2巻き付けシート2をシャフト先端部に巻きつけたのち、制振材料シートPEから切り出した第3巻き付けシート3とプリプレグAからなるストレート層形成用の第4巻き付けシート4とを貼り合わせた複合シート材料を、制振材料シートPEが内側になるように巻き付けた。以降、プリプレグC,B,Bからなる材料を使い、実施例1と同じく、第5〜第7ストレート層形成用プリプレグシートからなる三枚の第5〜第7巻き付けシート5〜7を順次巻き付け、図示せぬポリプロピレンテープによる固定、加熱して樹脂を硬化処理した。
【0041】
得られたゴルフクラブシャフトの両端を11mmカットして、全長を1143mmとした。研磨前のシャフトの片持ちフレックスは186mmであった。また研磨前のシャフト素体の細径側外径は8.75mm、太径側外径は15.3mmであった。
【0042】
研磨後に得られるゴルフクラブシャフトを、細径側先端部の外径が8.5mmで、片持ちフレックスが207mmとなるよう円筒研磨機で研磨仕上げを行った。
【0043】
研磨後のゴルフクラブシャフトの重量は57.5g、ねじれ角は5.4°であった。得られたゴルフクラブシャフトに実施例1と同じドライバー用ゴルフクラブヘッドとグリップを取り付け、ドライバー用ゴルフクラブを製作した。得られたゴルフクラブを打球したところ、手や肘に伝わる振動は軽減されており非常にソフトな打球感が得られた。
【0044】
(比較例1)
第1巻き付けシート1として、プリプレグDを使い、炭素繊維の配向方向がシャフト長手方向に対して90°になるように、図4に示す第1の巻き付けシート1のシート形状に切り出した。第2から第7の巻き付けシート2〜7は、実施例1と同じ形状に切り出して巻き付け準備を行った。
【0045】
繊維方向が90°に配向した第1巻き付けシート1を芯金Mに巻き付け、以下順に第2から第7までの巻き付けシート2〜7を巻き付けたのち、実施例1と同じくポリプロピレンテープによる巻き付け固定、加熱して樹脂硬化処理した。
【0046】
得られたゴルフクラブシャフト素管は両端を11mmカットして、全長を1143mmとした。研磨前のシャフト素体の片持ちフレックスは186mmであった。また研磨前のシャフトの細径側外径は8.75mm、太径側外径は15.25mmであった。
【0047】
得られたゴルフクラブシャフト素体を、研磨後に細径側先端部の外径が8.5mmで、片持ちフレックスが207mmとなるよう円筒研磨機で研磨仕上げを行った。
【0048】
研磨後のゴルフクラブシャフトの重量は58.5g、ねじれ角は5.0°であった。得られたゴルフクラブシャフトに実施例1と同じドライバー用ゴルフクラブヘッドとグリップを取り付け、ドライバー用ゴルフクラブを製作した。得られたゴルフクラブを打撃したところ、実施例1や実施例2よりも手や肘に伝わる振動は大きいと感じられた。
【0049】
このように、本発明のゴルフシャフトによれば、使用時の振動が効果的に軽減され、ソフトな打球感をもつゴルフクラブシャフトを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例および比較例におけるゴルフクラブシャフトの製作に用いた芯金の形状例を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例1であるゴルフシャフトの製作に用いた材料シートの形状と巻き付け手順とを示す説明図である。
【図3】本発明の実施例2であるゴルフシャフトの製作に用いた材料シートの形状と巻き付け手順とを示す説明図である。
【図4】比較例1であるゴルフシャフトの製作に用いた材料シートの形状と巻き付け手順とを示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1〜7 第1〜第7巻き付けシート
A〜D プリプレグ
PT ポリエステル樹脂制振材料
M 芯金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維強化樹脂層で構成されるゴルフクラブシャフトにおいて、繊維強化樹脂層間または繊維強化樹脂層の最内層の内面に、厚さ0.01mmから0.70mmのポリエステル樹脂制振材料層を1層以上有するゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
複数の繊維強化樹脂層からなるゴルフクラブシャフトにおいて、シャフト長手方向の長さ100mmからシャフトの全長にわたり1層以上のポリエステル樹脂制振材料層を有するゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
ポリエステル樹脂制振材料層はポリエステル樹脂に導電性フィラーを分散させてなる請求項1または2記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
繊維強化樹脂層を形成するプリプレグにポリエステル樹脂制振材料シートを予備接着して貼り合わせプリプレグを得、最内層に制振材料シートが配置されるように、あるいは繊維強化樹脂層間に前記制振材料シートが配置されるように、芯金にプリプレグと前記貼り合わせプリプレグとを巻きつけ、樹脂を硬化する繊維強化樹脂製ゴルフクラブシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237373(P2008−237373A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79757(P2007−79757)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(506266746)エムアールシーコンポジットプロダクツ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】