説明

ゴルフクラブシャフト

【課題】設計自由度が高く、耐久性に優れるゴルフクラブシャフトの提供。
【解決手段】シャフト6は、プリプレグシートよりなる。このシャフト6のシートは、シャフト長手方向の全体に亘る全長シートa2、a3、a8及びa11と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートa1、a4、a5、a6、a7、a9、a10及びa12とを含む。全長シートのシート枚数は2以上である。部分シートのシート枚数は4以上である。各部分シートは端を有する。シャフトを長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされ、上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、N1、N2、N3及びN4が、いずれも1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトとして、いわゆるスチールシャフトやカーボンシャフトが知られている。カーボンシャフトは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)よりなる。
【0003】
カーボンシャフトの多くは、いわゆるシートワインディング製法により製造されている。シートワインディング製法では、繊維とマトリクス樹脂とを備えたプリプレグシートが用いられる。この製法では、プリプレグよりなるシートが金属製の芯体に巻回され、次いで加熱によりマトリクス樹脂が硬化され、この硬化後に上記芯体が引き抜かれる。この製法により、プリプレグシートが巻回されつつ硬化されてなるシャフトが形成される。
【0004】
特開2003−24489公報は、ストレート層、アングル層及びフープ層を有し、繊維の引張弾性率等が規定されたカーボンシャフトを開示する。このシャフトでは、軽量性と高強度とが達成されうる。
【特許文献1】特開2003−24489公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンシャフトでは、シャフト長手方向の全体に亘って設けられた全長層の他、シャフト長手方向の一部に設けられた層である部分層(部分補強層)が設けられうる。この部分層は、例えば、シャフトの先端部、シャフトの後端部、シャフトの中央部等に設けられうる。この部分層の位置、長さ、厚さ等は、選択されうる。この部分層により、シャフトの設計自由度が向上しうる。この設計自由度の向上は、飛距離の増大及び打球感の向上に寄与しうる。
【0006】
近年、ゴルフクラブヘッドの反発係数が規制される傾向にある。ヘッドの特性に起因した飛距離の増大は困難となりつつある。このため、シャフトの特性に起因した飛距離の増大が求められている。軽量なシャフトは、飛距離の増大に寄与する。部分層は、強度の低い部分を選択的に補強しうるため、シャフトの軽量化に役立つ。
【0007】
ところが、部分層の存在により、シャフトの耐久性が低下しやすいことが判明した。更に、部分層が多い場合、シャフトの耐久性が特に低下しやすいことが判明した。
【0008】
本発明の目的は、部分層を有しつつ耐久性を向上させうるゴルフクラブシャフトの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシャフトは、マトリクス樹脂と繊維とを備えたプリプレグシートが巻回されつつ硬化されてなる。上記シートは、シャフト長手方向の全体に亘って設けられている全長シートと、シャフト長手方向の一部に設けられている部分シートとを含む。上記全長シートのシート枚数は2以上である。上記部分シートのシート枚数は4以上である。シャフトを長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされ、上記部分シートの端のうち上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記部分シートの端のうち上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記部分シートの端のうち上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記部分シートの端のうち上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、N1、N2、N3及びN4は、いずれも1以上である。
【0010】
好ましくは、N1、N2、N3及びN4のうちの最大値がNxとされ、N1、N2、N3及びN4のうちの最小値がNnとされたとき、差(Nx−Nn)が4以下である。
【0011】
上記第一区間に属する上記シート枚数の合計がP1とされ、上記第二区間に属する上記シート枚数の合計がP2とされ、上記第三区間に属する上記シート枚数の合計がP3とされ、上記第四区間に属する上記シート枚数の合計がP4とされ、P1、P2、P3及びP4のうちの最大値がPxとされ、P1、P2、P3及びP4のうちの最小値がPnとされたとき、比(Px/Pn)は1.5以下であるのが好ましい。
【0012】
本発明のゴルフクラブは、ヘッド、グリップ及びゴルフクラブシャフトを備える。このゴルフクラブシャフトは、マトリクス樹脂と繊維とを有するプリプレグシートを巻回させつつ硬化させてなる。上記シートは、シャフト長手方向の全体に亘って設けられている全長シートと、シャフト長手方向の一部に設けられている部分シートとを含む。上記全長シートのシート枚数は2以上である。上記部分シートのシート枚数は4以上である。シャフトを長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされ、上記部分シートの端のうち上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記部分シートの端のうち上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記部分シートの端のうち上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記部分シートの端のうち上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、N1、N2、N3及びN4は、いずれも1以上である。
【発明の効果】
【0013】
部分シートをシャフト長手方向に分散させた本発明のゴルフクラブシャフトは、部分シートの端がシャフト長手方向に分散される。このシャフトでは、部分シートの端に作用する応力が分散するので、耐久性が向上しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ2の全体図である。ゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を有している。ヘッド4は、シャフト6の一端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6の他端部に取り付けられている。
【0016】
なおヘッド4及びグリップ8は限定されない。ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、アイアン型ゴルフクラブヘッド、いわゆるユーティリティー型ヘッド、パターヘッド等が例示される。
【0017】
図2は、シャフト6の全体図である。シャフト6は、管状体である。シャフト6は、チップ端Tとバット端Bとを有する。チップ端Tにヘッド4が取り付けられる。バット端Bにグリップ8が取り付けられる。ゴルフクラブ2において、チップ端Tは、ヘッド4のシャフト穴の内部に位置している。ゴルフクラブ2において、バット端Bは、グリップ8のシャフト挿入穴の内部に位置している。シャフト6の外面は、テーパー面を有している。このテーパー面は、チップ端Tに近づくほど小径である。チップ端Tの外径は、バット端Bの外径よりも小さい。
【0018】
シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。典型的なプリプレグシートでは、繊維は一方向に配向している。このプリプレグシートは、繊維とマトリクス樹脂とを有している。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。
【0019】
シャフト6は、いわゆるシートワインディング製法により製造される。シャフト6は、プリプレグシートが巻回されつつ硬化されてなる。この硬化は、加熱により達成される。シャフト6の製造工程には、加熱工程が含まれる。この加熱工程により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。
【0020】
図3は、シャフト6を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト6は、複数枚のシートにより構成されている。具体的には、シャフト6は、a1からa12までの12枚のシートにより構成されている。図3等で示される展開図は、シャフトを構成するシートを、シャフトの半径方向内側から順に示している。巻回されたシートは、層を構成する。シャフト軸線に対して垂直なシャフト断面において、この層は、渦巻き状である。展開図において上側に位置しているシートほど、シャフトの半径方向内側に位置している。図3等の展開図において、図面の左右方向は、シャフト長手方向(シャフト軸線方向)と一致する。図3等の展開図において、図面の右側は、シャフトのチップ端側である。図3等の展開図において、図面の左側は、シャフトのバット端側である。
【0021】
シャフト6は、ストレート層、アングル層及びフープ層を有する。図3等の展開図において、繊維の配向角度が記載されている。「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。「90°」と記載されているシートが、フープ層を構成している。「−45°」及び「+45°」と記載されているシートが、アングル層を構成している。
【0022】
ストレート層は、繊維の配向方向がシャフト軸線方向に対して実質的に平行とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向方向はシャフト軸線方向に対して完全に平行とはならない。ストレート層において、繊維の配向方向とシャフト軸線方向とのなす角度Afは、−10度以上+10度以下程度である。シャフト6において、ストレート層を構成するシートは、シートa1、シートa4、シートa6、シートa8、シートa9、シートa11及びシートa12である。ストレート層は、シャフトの曲げ剛性及び曲げ強度との相関が高い。
【0023】
アングル層は、シャフトの捻れ剛性及び捻れ強度を高める目的で設けられる。アングル層は、繊維の配向方向が互いに逆方向とされた2以上のシートから構成されている。アングル層は、上記角度Afが−60度以上−30度以下の層と、上記角度Afが30度以上60度以下の層とを含む。シャフト6において、アングル層を構成するシートは、シートa2及びシートa3である。
【0024】
フープ層は、シャフトのつぶし剛性及びつぶし強度を高めるために設けられる。つぶし剛性とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する剛性である。つぶし強度とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する強度である。つぶし強度は、曲げ強度とも関連しうる。曲げ変形に連動してつぶし変形が生じうる。特に肉厚の薄い軽量シャフトにおいては、この連動性が大きい。つぶし強度の向上により、曲げ強度も向上しうる。
【0025】
フープ層は、繊維の配向方向がシャフト軸線方向に対して実質的に直角とされた層である。換言すれば、フープ層は、前記の配向方向がシャフトの周方向に対して実質的に平行とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向方向はシャフト軸線方向に対して完全に直角とはならない。フープ層において、上記角度Afは、通常、90度±10度である。シャフト6において、フープ層を構成するシートは、シートa5、シートa7及びシートa10である。
【0026】
シャフト6の製造においては、芯金(マンドレル)が用意される。この芯金の断面は、円形である。この芯金の外面は、テーパー面を有している。図3の実施形態では、先ず、シートa1が芯金に巻き付けられる。次に、シートa1が巻き付けられている芯金に、シートa2及びシートa3が巻き付けられる。巻き付けられる前に、シートa3は、シートa2に貼り合わせられる。このとき、シートa3は、裏返される。この貼り合わせにより、シートa2の繊維とシートa3の繊維とは、互いに逆方向に配向する。この点に鑑み、図3では、シートa2の繊維角度が−45度とされ、シートa3の繊維角度が+45度とされている。この張り合わされたシートが、巻き付けられる。次に、シートa4が巻き付けられる。以下、シートa5、シートa6、シートa7、シートa8、シートa9、シートa10、シートa11及びシートa12がこの順で巻き付けられる。シートを巻き付ける工程は、巻き付け工程とも称される。前述したように、巻き付けられた各シートは、層を形成する。次に、ラッピング工程がなされる。ポリプロピレン等よりなるラッピングテープが巻き付けられる。このラッピング工程により、シート層内の空気が排除される。次に、加熱工程がなされる。加熱工程により、マトリックス樹脂が硬化する。この硬化の後、芯金が引き抜かれる。ラッピングテープが取り除かれた後、研磨等の仕上げ工程がなされる。
【0027】
図3等の展開図は、各シートの巻き付け順序のみならず、各シートのシャフト長手方向における配置をも示している。例えばシートa1の一端はチップ端T(位置p1)に位置している。例えばシートa4の他端はバット端B(位置p5)に位置している。
【0028】
本発明では、第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間が定義される。図2が示すように、シャフト6を長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされる。シャフトの全長がLであるとき、第一区間の長さはL/4であり、第二区間の長さはL/4であり、第三区間の長さはL/4であり、第四区間の長さはL/4である(図2参照)。
【0029】
図2が示すように、第一区間は、位置p1から位置p2までの区間である。第二区間は、位置p2から位置p3までの区間である。第三区間は、位置p3から位置p4までの区間である。第四区間は、位置p4から位置p5までの区間である。位置p1には、チップ端Tが存在する。位置p5には、バット端Bが存在する。位置p1、位置p2、位置p3、位置p4及び位置p5は、図3等の展開図においても示されている。位置p2は、第一区間と第二区間との境界である。位置p3は、第二区間と第三区間との境界である。位置p4は、第三区間と第四区間との境界である。
【0030】
シャフト6を構成する複数のシートは、シャフト長手方向の全体に亘って設けられている全長シートと、シャフト長手方向の一部に設けられている部分シートとを含む。図3の実施形態において、全長シートは、シートa2、シートa3、シートa8及びシートa11である。全長シートのシート枚数は4である。図3の実施形態において、部分シートは、シートa1、シートa4、シートa5、シートa6、シートa7、シートa9、シートa10及びシートa12である。部分シートのシート枚数は、8である。
【0031】
図3が示すように、シートa1からa12は、全て四角形である。シートa1からa12では、4つの角のうちの少なくとも1つが直角とされている。全長シート(シートa2、シートa3、シートa8及びシートa11)において、4つの角のうちの2つが直角である。部分シート(シートa1、シートa4、シートa5、シートa6、シートa7、シートa9、シートa10及びシートa12)において、4つの角のうちの1つが直角である。
【0032】
本発明では、各部分シートの端の位置が、シャフト長手方向において分散されている。この分散により、部分層の端における応力集中が緩和され、シャフトの耐久性が向上することが判明した。
【0033】
本発明では、部分シートの端を、上記四区間の全てに分散させている。上記部分シートの端のうち上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記部分シートの端のうち上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記部分シートの端のうち上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記部分シートの端のうち上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、N1、N2、N3及びN4が、いずれも1以上である。
【0034】
部分シートの端とは、シャフト長手方向の一方側(チップ端T側)又は他方側(バット端B側)に位置する端である。この部分シートの端は、チップ端T及びバット端Bを除く位置に存在する。例えば図3の実施形態において、台形のシートa1は、4つの辺を有している。この4つの辺のうち、バット端B側に位置する辺h1(図3参照)が、部分シートa1の端t1である。シートa1の辺h2は、チップ端Tに位置しているので、本発明における部分シートの端とは見なされない。また例えば、図3の実施形態において、台形のシートa6は、4つの辺を有している。この4つの辺のうち、チップ端T側に位置する辺h3が、部分シートの端t3である。シートa6の辺h4は、バット端Bに位置しているので、本発明における部分シートの端とは見なされない。
【0035】
なお、部分シートの形状が三角形である場合、この三角形の各辺は、いずれも部分シートの端とはみなされない。部分シートの形状が三角形である場合、この部分シートは、端を有さないとみなされる。
【0036】
部分シートa1の端t1を構成する辺h1は、シャフト軸線方向に対して傾斜している。この傾斜により、端t1がシャフト長手方向に分散される。この分散により、応力集中が緩和されうる。図3が示すように、他の部分シートにおいても、端を構成する辺は、シャフト軸線方向に対して傾斜している。例えば前述した辺h3はシャフト軸線方向に対して傾斜している。
【0037】
図3の実施形態において、第一区間には、シートa1の端と、シートa10の端とが位置している。よって、上記N1は2である。図3の実施形態において、第二区間には、シートa7の端と、シートa9の端とが位置している。よって、上記N2は2である。第三区間には、シートa5の端と、シートa6の端とが位置している。よって、上記N3は2である。第四区間には、シートa4の端と、シートa12の端とが位置している。よって、上記N4は2である。
【0038】
部分シートの端の位置は、この端の中点により決定される。例えば、図4に示す部分シートz1において、端taの中点Maが、端taの位置を決定する。よって、端taは、第三区間に位置している。
【0039】
なお、境界p2は第一区間に属するものとし、境界p3は第二区間に属するものとし、境界p4は第三区間に属するものとする。よって例えば、端の中点が境界p3上に位置している場合、この端は第二区間に属するものとする。
【0040】
N1、N2、N3及びN4のうちの最大値がNxとされ、N1、N2、N3及びN4のうちの最小値がNnとされたとき、差(Nx−Nn)が4以下であるのが好ましい。これにより、部分シートの端の位置が更に分散されるため、シャフトの耐久性がより一層向上しうる。図3の実施形態では、Nxは2であり、Nnは2であり、差(Nx−Nn)は0である。
【0041】
本発明では、各区間に属するシート枚数の合計が考慮される。上記第一区間に属する上記シート枚数の合計がP1とされ、上記第二区間に属する上記シート枚数の合計がP2とされ、上記第三区間に属する上記シート枚数の合計がP3とされ、上記第四区間に属する上記シート枚数の合計がP4とされる。
【0042】
P1からP4を算出するために、各区間におけるシート枚数がカウントされる。このシート枚数のカウント方法が、図4を用いて説明される。図4で示される部分シートz1は、第二区間の全長に亘って1枚配置されている。換言すれば、第二区間に属する部分の長さL2は、L/4に等しい。よって、この部分シートz1に関し、第二区間に属するシート枚数は、1である。一方、部分シートz1は、第一区間の全長に亘って配置されていない。この場合、第一区間に属するシート枚数は、第一区間に属する部分シートz1の長さによって比例計算される。例えば、図4の長さL1が(L/4)の0.6倍であるとき、第一区間に属する部分シートz1の枚数は、0.6とされる。この長さL1の基準となる点Mbは、端tbの中点とされる。即ち、シート枚数のカウントの基準となるシートの長さは、端の中点により決定される。同様に、例えば図4の長さL3が(L/4)の0.9倍であるとき、第三区間に属する部分シートz1の枚数は、0.9とされる。
【0043】
シート枚数は、全てのシートにおいてカウントされる。シート枚数は、全長シートにおいてもカウントされ、部分シートにおいてもカウントされる。シート枚数は、そのシートの形状に関わらずカウントされる。
【0044】
シート枚数は、プライ数とは異なる。本願においてプライ数とは、巻回数を意味する。例えば、図3のシートa8において、シート幅Ws(図3参照)が広いほど、シートa8のプライ数は多くなる。しかし、このプライ数に関わらず、シートa8のシート枚数は、1である。仮に、シャフト断面において1枚のシートが周方向に3周している場合、このシートのプライ数は3であるが、このシートのシート枚数は1である。なおシート幅Wsは、シャフト長手方向位置のそれぞれにおいて定まる。
【0045】
上記P1からP4は、このようにカウントされたシート枚数を各区間ごとに合計して得られる。例えば、図3の実施形態において、第一区間に属するシート枚数は、シートa1に関して0.7であり、シートa2に関して1であり、シートa3に関して1であり、シートa8に関して1であり、シートa9に関して1であり、シートa10に関して0.5であり、シートa11に関して1であり、シートa12に関して1である。よって、上記P1は、[0.7+1+1+1+1+0.5+1+1]=7.2である。同様に計算すると、P2は7.2であり、P3は8.0であり、P4は9.4である。
【0046】
P1、P2、P3及びP4のうちの最大値がPxとされ、P1、P2、P3及びP4のうちの最小値がPnとされたとき、比(Px/Pn)は1.5以下とされるのが好ましい。これにより、シート枚数が各区間に分散されるので、シャフトの耐久性が向上しうる。上記図3の実施形態においては、Pxが9.4であり、Pnが7.2であるから、比(Px/Pn)は1.31である。
【0047】
シャフトの耐久性の観点から、全長シートのシート枚数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。シャフトの軽量性及び生産性の観点から、全長シートのシート枚数は、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0048】
シャフトの耐久性の観点から、全長シートのプライ数は、4以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。シャフトの軽量性及び生産性の観点から、全長シートのプライ数は、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0049】
全長シートにより構成される全長層は、上記角度Afが−60度以上−30度以下の層と、上記角度Afが30度以上60度以下の層とを含むのが好ましい。これらは、ねじり剛性、曲げ剛性及びつぶし剛性を高めうる。更に全長層は、上記角度Afが−10度以上10度以下の層を含むのが好ましい。この層は、曲げ剛性を高めうる。
【0050】
部分シートが多い場合、設計自由度が向上する。設計自由度の観点から、部分シートのシート枚数は、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。生産性を高める観点から、部分シートのシート枚数は、16以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
【0051】
N1、N2、N3及びN4がいずれも1以上とされることにより、設計自由度が向上するとともに、部分シートの端の位置がシャフト長手方向において分散される。この分散により、応力集中が緩和され、シャフトの耐久性が向上しうる。N1、N2、N3及びN4の上限は限定されない。シート枚数の増加に伴う生産性の低下を抑制する観点から、N1、N2、N3及びN4は、いずれも4以下が好ましい。
【0052】
差(Nx−Nn)が大きい場合、特定の区間に部分シートの端が集中しやすくなるため、この区間において応力集中が起こりやすい。応力集中を緩和して耐久性を高める観点から、差(Nx−Nn)は、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。
【0053】
比(Px/Pn)が大きい場合、シート枚数の合計がPnである区間に応力が集中しやすくなり、耐久性が低下しやすい。応力集中を緩和して耐久性を向上させる観点から、比(Px/Pn)は、1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.35以下が更に好ましい。
【0054】
1枚の全長シートにより構成されるプライ数Lhが大きいほど、シート幅Wsが大きくなる。シート幅Wsが過度に大きい場合、しわ等の巻き付け不良が発生しやすい。この観点から、上記プライ数Lhは、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。シャフトの周方向における均一性を高める観点から、上記プライ数Lhは、1以上が好ましい。
【0055】
1枚の部分シートにより構成されるプライ数Lpが大きいほど、シート幅Wsが大きくなる。シート幅Wsが過度に大きい場合、しわ等の巻き付け不良が発生しやすい。この観点から、上記プライ数Lpは、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。シャフトの周方向における均一性を高める観点から、端を構成する部分を除き、上記プライ数Lpは、1以上が好ましい。なお、端を構成する部分とは、シャフト軸線方向に対して傾斜した端により形成される部分を意味する。例えば、図3のシートa6では、辺h3(端t3)に接する部分が、端を構成する部分である。このシートa6では、二点鎖線j1よりもチップ端T側の部分が、端を構成する部分である。
【0056】
強度及び生産性を向上させる観点から、全長シート及び部分シートの厚みは、0.025mm以上が好ましく、0.058mm以上がより好ましく、0.083mm以上が更に好ましい。軽量性の観点から、全長シート及び部分シートの厚みは、0.150mm以下が好ましく、0.145mm以下がより好ましく、0.136mm以下が更に好ましい。
【0057】
強度を向上させる観点から、全長シート及び部分シートの繊維含有割合は、60質量%以上が好ましく、63質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。繊維含有割合が大きすぎる場合、マトリックス樹脂の含有割合が少なくなるので、シートのタック性が低下する。このタック性の低下により、しわ等の巻き付け不良が発生しやすくなる。この観点から、全長シート及び部分シートの繊維含有割合は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0058】
全長シートの形状は、限定されない。シャフト長手方向の全位置において同一のプライ数とされる場合、全長シートの形状は、図3で示すような台形となる。これらの全長シートにおいて、シート幅Wsは、チップ端Tに近づくほど狭くなっている。このシート形状は、シャフトのテーパー形状に対応している。
【0059】
部分シートの形状は、限定されない。部分シートの形状として、三角形や四角形等の多角形が例示される。成形性(巻き付け工程における作業性)の観点から、部分シートの形状は、四角形が好ましい。
【0060】
部分シート及び全長シートは、シャフト長手方向に対して略平行とされた平行辺h5を有している(図3及び図4参照)。平行辺h5とシャフト軸線方向とのなす角度の絶対値は、10度以下が好ましく、5度以下がより好ましい。この平行辺h5がシャフト長手方向に対して平行とされることにより、設計されたシャフトが生産される。
【0061】
端を構成する辺と平行辺h5とのなす角度αが、図4で示されている。成形性の観点から、この角度αの絶対値は、30度以上が好ましく、45度以上がより好ましく、60度以上が更に好ましい。この角度αの上限は、90度である。1枚の部分シートにおいてシートの端をシャフト軸線方向に分散させる観点から、角度αは、80度以下が好ましく、70度以下がより好ましい。
【0062】
強度の観点から、シャフト重量は、30g以上が好ましく、34g以上がより好ましく、38g以上が更に好ましい。軽量なシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離を向上させうる。この観点から、シャフト重量は60g以下が好ましく、58g以下がより好ましく、56g以下が更に好ましい。
【0063】
本発明に用いられうるプリプレグシートの具体例は、限定されない。下記の表1は、本発明で用いられうる市販品のプリプレグシートの例を示している。この表1は、プリプレグシートの品番、プリプレグシートに用いられている炭素繊維の品番、炭素繊維の引張弾性率、炭素繊維の引張強度、プリプレグシートの厚み及び繊維含有割合を示している。表1で示されたプリプレグシートは、東レ社製又は三菱レイヨン社製である。本発明では、UDプリプレグシート(ユニディレクションプリプレグシート)の他、繊維が織られている織物シートも使用されうる。表1に記載されているように、織物シートとして、例えば、三菱レイヨン社製のTR1100M、TR1120M及びTR3110Mが用いられうる。三菱レイヨン社製のTR1100M、TR1120M及びTR3110Mは、平織りの織物に樹脂を含浸させたプリプレグシートである。
【0064】
強度及び弾性率の観点から、プリプレグシートを構成する繊維としては、炭素繊維が好ましい。強度の観点から、シートを構成する繊維の引張強度は、300kgf/mm以上が好ましく、400kgf/mm以上がより好ましく、500kgf/mm以上が更に好ましい。入手しうる炭素繊維の物性を考慮すると、繊維の引張強度は、680kgf/mm以下が好ましい。
【0065】
本発明のシャフトは、フープ層を有していてもよい。フープ層とは、繊維強化樹脂よりなる層であって、繊維の配向角度がシャフト軸線に対して実質的に直角とされた層である。フープ層として、例えば下記の表1に記載された東レ社製の805S−3等が用いられる。この805S−3は、他のプリプレグ品種と比較して、単位面積当たりの重量及び単位面積当たりの炭素繊維質量が少なく、厚みが薄い。このような薄いプリプレグは、炭素繊維を曲げつつ巻き付けることが容易なので、フープ層に適している。
【0066】
【表1】

【0067】
シャフト全長Lが長いほど、シート端の位置をシャフト長手方向に分散させやすい。この観点から、シャフト全長Lは、35インチ(889mm)以上が好ましく、41インチ(1041mm)以上とされるのが好ましく、43インチ(1092mm)以上とされるのがより好ましく、44インチ(1117mm)以上とされるのがより好ましく、45インチ(1143mm)以上とされるのが特に好ましい。シャフトの強度を確保する観点から、シャフト全長Lは52インチ(1321mm)以下が好ましく、50インチ(1270mm)以下がより好ましく、48インチ(1219mm)以下とされるのが特に好ましい。
【0068】
本発明に係るシャフトの製造方法は、シートワインディング製法が好ましい。プリプレグシートのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂の他、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等も用いられ得る。
【0069】
なお、シャフトのバット部分(後端部)におけるつぶし剛性が低い場合、当該バット部分においてシャフト半径方向のつぶれ変形が大きくなる。つぶれ変形が大きくなると、打撃時におけるヘッドスピードが低下しやすい。この観点から、バット部分におけるつぶし剛性を従来よりも高くするのがよい。つぶれ変形とは、シャフトの断面形状が円形から略楕円形に変化するような変形である。
【0070】
バット部分のつぶし剛性を高める観点から、下記の(A1)を満たすシャフトが好ましい。
【0071】
(A1)シャフトのチップ端Tから30mm隔てた位置が第一位置r1とされ、
シャフトのバット端Bから30mm隔てた位置が第十二位置r12とされ、上記第一位置r1と上記第十二位置r12との間を11等分する位置がチップ端T側から順に第二位置r2、第三位置r3、第四位置r4、第五位置r5、第六位置r6、第七位置r7、第八位置r8、第九位置r9、第十位置r10及び第十一位置r11とされ、
上記第一位置r1から第十二位置r12までの12箇所において測定されたつぶし剛性EIのそれぞれが、チップ端T側から順にEI(1)、EI(2)、EI(3)、EI(4)、EI(5)、EI(6)、EI(7)、EI(8)、EI(9)、EI(10)、EI(11)及びEI(12)とされ、
測定位置のチップ端Tからの距離(mm)がX軸とされ且つつぶし剛性EIの値(kgf/mm)がY軸とされたXY座標平面に、上記12箇所の位置における測定値をプロットして得られた点のそれぞれが、チップ端T側から順にT(1)、T(2)、T(3)、T(4)、T(5)、T(6)、T(7)、T(8)、T(9)、T(10)、T(11)及びT(12)とされ、
上記XY座標平面上において、上記T(7)と上記T(12)とを通る直線Kの式が、[Y=aX+b7]とされ、
上記直線Kと平行で且つ上記T(1)、T(2)、T(3)、T(4)、T(5)、T(6)、T(8)、T(9)、T(10)及びT(11)のそれぞれを通る直線のY切片の値(kgf/mm)が、それぞれb1、b2、b3、b4、b5、b6、b8、b9、b10及びb11とされ、
上記b7、b8、b9、b10及びb11のうちの最大値がbmaxとされたとき、
上記直線Kの傾きaが−0.006以上−0.003以下であり、
上記b8、b9、b10及びb11は、何れもb7より大きく、
上記bmaxは、b8、b9、b10又はb11のうちのいずれかであり、
(bmax−b7)が2(kgf/mm)以上12(kgf/mm)以下である。
【0072】
より好ましくは、上記(A1)を満たすシャフトにおいて、上記b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10及びb11のうちの最小値がb6又はb7であるのがよく、さらに好ましくはこの最小値がb7であるのがよい。
【0073】
より好ましくは、上記(A1)を満たすシャフトにおいて、次の関係式が成り立つのがよい。
EI(1)>EI(2)>EI(3)>EI(4)>EI(5)>EI(6)
【0074】
より好ましくは、上記(A1)を満たすシャフトにおいて、次の関係式が成り立つのがよい。
b1>b2>b3>b4>b5>b6
【0075】
上記(A1)の物性を達成しうるシャフトとしては、次の(B1)を満たすシャフトが好ましい。
(B1)平織りの織物を含むクロス層又はフープ層からなる部分層(部分補強層)を有し、
上記部分層は、そのチップ端T側の端が上記第七位置r7よりもバット端B側であり且つそのバット端B側の端が上記第十二位置r12よりもチップ端T側であり、
上記部分層は、少なくとも上記第九位置に存在し、
上記部分層のシャフト長手方向長さLzが次の式(F1)を満たしている。
[(L−60)×(2/11)]≦Lz ・・・(F1)
ただし、式(F1)において、Lは、シャフト全長(mm)である。
【0076】
上述したつぶし剛性の測定方法は、次の通りである。測定点を中心に、シャフト軸線方向のチップ端T側及びバット端B側に各々(W/2)の位置でシャフトを切断し、長さWのリング状の試験片を切り出す。切り出した試験片を台座治具に載せ、圧子治具により荷重Nを加える。荷重Nは、シャフト軸線方向と直交する方向に加え、この荷重Nによる試験片の変形量δmmが測定される。δ(mm)は、圧子治具の変位量である。荷重Nは、試験片の長さ方向について均一に加える。つぶれ剛性Gは、G=N/(δ×W)で求める。本願における測定法において、Nは5kgfとされ、Wは10mmとされる。圧縮面は、試験片を載せる台座治具、及び荷重を加える圧子治具共に、平面とされる。
【0077】
なお、上記第一位置r1から第十二位置r12は、図2に示されている。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
[耐久性試験]
耐久性が評価された。シャフトにヘッド及びグリップを装着して、ゴルフクラブを作製した。このゴルフクラブを、ミヤマエ社製の商品名「ショットロボIII−1」に装着し、ヘッドスピード54m/sにてゴルフボールを繰り返し打撃させた。シャフトが折れるまでの打撃回数が確認された。比較例1を100として、この打撃回数が指数化された。この指数が、「耐久性試験結果(指数)として、下記の表2から表8で示される。この指数が大きいほど、耐久性が良好である。
【0080】
[実施例1]
前述した実施形態に係るシャフト6と同様にして、図3の展開図(シート構成図)を有するシャフトを得た。製造方法として、シートワインディング製法が採用された。シャフト全長Lは、1168mmとされた。シートa1にはTR350C−100Sが用いられ、シートa2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートa3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートa4にはMR350C−100Sが用いられ、シートa5には805S−3が用いられ、シートa6にはMR350C−100Sが用いられ、シートa7には805S−3が用いられ、シートa8にはMR350C−100Sが用いられ、シートa9にはMR350C−100Sが用いられ、シートa10には805S−3が用いられ、シートa11にはMR350C−100Sが用いられ、シートa12にはTR350C−100Sが用いられた。シートa2とシートa3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、47gであった。実施例1において、N1は2であり、N2は2であり、N3は2であり、N4は2であった。実施例1において、P1は7.2であり、P2は7.2であり、P3は8.0であり、P4は9.4であった。各シートa1からa12の繊維配向角度が図3で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表2で示される。
【0081】
【表2】

【0082】
[実施例2]
シャフトの展開図(シート構成図)が図5で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例2に係るシャフトを得た。シートb1にはTR350C−100Sが用いられ、シートb2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートb3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートb4にはMR350C−100Sが用いられ、シートb5には805S−3が用いられ、シートb6にはMR350C−100Sが用いられ、シートb7には805S−3が用いられ、シートb8にはMR350C−100Sが用いられ、シートb9にはMR350C−100Sが用いられ、シートb10には805S−3が用いられ、シートb11にはMR350C−100Sが用いられ、シートb12にはTR350C−100Sが用いられた。シートb2とシートb3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、43gであった。各シートb1からb12の繊維配向角度が図5で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表3で示される。
【0083】
【表3】

【0084】
[実施例3]
シャフトの展開図(シート構成図)が図6で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例3に係るシャフトを得た。シートc1にはTR350C−100Sが用いられ、シートc2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートc3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートc4にはMR350C−100Sが用いられ、シートc5には805S−3が用いられ、シートc6にはMR350C−100Sが用いられ、シートc7には805S−3が用いられ、シートc8にはMR350C−100Sが用いられ、シートc9にはMR350C−100Sが用いられ、シートc10には805S−3が用いられ、シートc11にはMR350C−100Sが用いられ、シートc12にはTR350C−100Sが用いられた。シートc2とシートc3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、42gであった。各シートc1からc12の繊維配向角度が図6で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表4で示される。
【0085】
【表4】

【0086】
[実施例4]
シャフトの展開図(シート構成図)が図7で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例4に係るシャフトを得た。シートd1にはTR350C−100Sが用いられ、シートd2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートd3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートd4にはMR350C−100Sが用いられ、シートd5には805S−3が用いられ、シートd6にはMR350C−100Sが用いられ、シートd7には805S−3が用いられ、シートd8にはMR350C−100Sが用いられ、シートd9にはMR350C−100Sが用いられ、シートd10には805S−3が用いられ、シートd11にはMR350C−100Sが用いられ、シートd12にはTR350C−100Sが用いられた。シートd2とシートd3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、45gであった。各シートd1からd12の繊維配向角度が図7で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表5で示される。
【0087】
【表5】

【0088】
[実施例5]
シャフトの展開図(シート構成図)が図8で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例5に係るシャフトを得た。シートe1にはTR350C−100Sが用いられ、シートe2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートe3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートe4にはMR350C−100Sが用いられ、シートe5には805S−3が用いられ、シートe6にはMR350C−100Sが用いられ、シートe7には805S−3が用いられ、シートe8にはMR350C−100Sが用いられ、シートe9にはMR350C−100Sが用いられ、シートe10には805S−3が用いられ、シートe11にはMR350C−100Sが用いられ、シートe12にはTR350C−100Sが用いられた。シートe2とシートe3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、45gであった。各シートe1からe12の繊維配向角度が図8で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表6で示される。
【0089】
【表6】

【0090】
[実施例6]
シャフトの展開図(シート構成図)が図9で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例6に係るシャフトを得た。シートf1にはTR350C−100Sが用いられ、シートf2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートf3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートf4にはMR350C−100Sが用いられ、シートf5には805S−3が用いられ、シートf6にはMR350C−100Sが用いられ、シートf7には805S−3が用いられ、シートf8にはMR350C−100Sが用いられ、シートf9にはMR350C−100Sが用いられ、シートf10には805S−3が用いられ、シートf11にはMR350C−100Sが用いられ、シートf12にはTR350C−100Sが用いられた。シートf2とシートf3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、44gであった。各シートf1からf12の繊維配向角度が図9で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表7で示される。
【0091】
【表7】

【0092】
[比較例1]
シャフトの展開図(シート構成図)が図10で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、比較例1に係るシャフトを得た。シートs1にはTR350C−100Sが用いられ、シートs2にはHRX350C−075Sが用いられ、シートs3にはHRX350C−075Sが用いられ、シートs4にはMR350C−100Sが用いられ、シートs5には805S−3が用いられ、シートs6にはMR350C−100Sが用いられ、シートs7には805S−3が用いられ、シートs8にはMR350C−100Sが用いられ、シートs9にはMR350C−100Sが用いられ、シートs10には805S−3が用いられ、シートs11にはMR350C−100Sが用いられ、シートs12にはTR350C−100Sが用いられた。シートs2とシートs3との合計が3プライとされた。その他の全てのシートは、それぞれ1プライとされた。ただし、部分シートの端を構成する部分は、そのプライ数が1プライ未満である。シャフト重量は、48gであった。各シートs1からs12の繊維配向角度が図10で示されている。このシャフトの仕様と評価結果が下記の表8で示される。
【0093】
【表8】

【0094】
実施例1と実施例2との間の相違は、シャフト内側から数えて6枚目のシートの長さ及び、シャフト内側から数えて12枚目のシートの長さである。実施例1と実施例3との間の相違は、シャフト内側から数えて6枚目のシートの長さ、シャフト内側から数えて10枚目のシートの長さ、及びシャフト内側から数えて12枚目のシートの長さである。実施例1と実施例4との間の相違は、シャフト内側から数えて6枚目のシートの長さ及び、シャフト内側から数えて12枚目のシートの長さである。実施例1と実施例5との間の相違は、シャフト内側から数えて6枚目のシートの長さ及び、シャフト内側から数えて12枚目のシートの長さである。実施例1と実施例6との間の相違は、シャフト内側から数えて6枚目のシートの長さ、シャフト内側から数えて10枚目のシートの長さ及びシャフト内側から数えて12枚目のシートの長さである。実施例1と比較例1との間の相違は、シャフト内側から数えて7枚目のシートの長さ及びシャフト内側から数えて9枚目のシートの長さである。
【0095】
実施例2は、特に差(Nx−Nn)が2であることに起因して、実施例1よりも耐久性が低い。実施例3は、特に比(Px/Pn)が大きいことに起因して、実施例2よりも耐久性がやや低い。実施例4は、特に差(Nx−Nn)が3であることに起因して、実施例2よりも耐久性がやや低い。実施例5では、シートa6の端のシャフト長手方向位置と、シートa9の端のシャフト長手方向位置とが一致しており、この位置において応力集中が生じやすい。このため実施例5は、実施例4と比較して耐久性がやや低い。実施例6は、差(Nx−Nn)が4であることに起因して、実施例4よりも耐久性がやや低い。
【0096】
表2から表8に示されるように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。比較例1では、特にN2が0であることに起因して、耐久性が低下している。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブ用シャフト、アイアン型ゴルフクラブ用シャフト、パター用シャフトなど、あらゆるゴルフクラブシャフトに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの全体図である。
【図2】図2は、図1のゴルフクラブに装着されているシャフトの全体図である。
【図3】図3は、図2のシャフトの展開図(シート構成図)である。
【図4】図4は、シート枚数及びシート端の位置について説明するための図である。
【図5】図5は、実施例2のシャフトの展開図である。
【図6】図6は、実施例3のシャフトの展開図である。
【図7】図7は、実施例4のシャフトの展開図である。
【図8】図8は、実施例5のシャフトの展開図である。
【図9】図9は、実施例6のシャフトの展開図である。
【図10】図10は、比較例1のシャフトの展開図である。
【符号の説明】
【0099】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ゴルフクラブヘッド
6・・・ゴルフクラブシャフト
8・・・グリップ
T・・・チップ端
B・・・バット端
L・・・シャフト全長
Ws・・・シート幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス樹脂と繊維とを備えたプリプレグシートが巻回されつつ硬化されてなり、
上記シートが、シャフト長手方向の全体に亘って設けられている全長シートと、シャフト長手方向の一部に設けられている部分シートとを含み、
上記全長シートのシート枚数が2以上であり、
上記部分シートのシート枚数が4以上であり、
シャフトを長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされ、上記部分シートの端のうち上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記部分シートの端のうち上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記部分シートの端のうち上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記部分シートの端のうち上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、
N1、N2、N3及びN4が、いずれも1以上であるゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
N1、N2、N3及びN4のうちの最大値がNxとされ、N1、N2、N3及びN4のうちの最小値がNnとされたとき、差(Nx−Nn)が4以下である請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
上記第一区間に属する上記シート枚数の合計がP1とされ、上記第二区間に属する上記シート枚数の合計がP2とされ、上記第三区間に属する上記シート枚数の合計がP3とされ、上記第四区間に属する上記シート枚数の合計がP4とされ、P1、P2、P3及びP4のうちの最大値がPxとされ、P1、P2、P3及びP4のうちの最小値がPnとされたとき、比(Px/Pn)が1.5以下である請求項1又は2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
ヘッド、グリップ及びゴルフクラブシャフトを備え、
このゴルフクラブシャフトが、マトリクス樹脂と繊維とを有するプリプレグシートを巻回させつつ硬化させてなり、
上記シートが、シャフト長手方向の全体に亘って設けられている全長シートと、シャフト長手方向の一部に設けられている部分シートとを含み、
上記全長シートのシート枚数が2以上であり、
上記部分シートのシート枚数が4以上であり、
シャフトを長手方向に4等分したときの4つの区間が、チップ端側から順に第一区間、第二区間、第三区間及び第四区間とされ、上記部分シートの端のうち上記第一区間に位置する端の合計数がN1とされ、上記部分シートの端のうち上記第二区間に位置する端の合計数がN2とされ、上記部分シートの端のうち上記第三区間に位置する端の合計数がN3とされ、上記部分シートの端のうち上記第四区間に位置する端の合計数がN4とされたとき、
N1、N2、N3及びN4が、いずれも1以上であるゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−66130(P2009−66130A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236779(P2007−236779)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】