説明

ゴルフクラブヘッドの処理方法及びゴルフクラブヘッド

【課題】スコアラインが既に形成されたフェース面に対して、スコアラインの形成精度に与える影響を低減してブラスト処理を施すこと。
【解決手段】スコアラインが形成されたフェース面をブラスト処理するゴルフクラブヘッドの処理方法において、ブラスト処理の前に、前記スコアラインをマスキング材で埋める工程と、ブラスト処理の後に、前記マスキング材を前記スコアラインから除去する工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドのフェース面のブラスト処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドでは、特にアイアン型のゴルフクラブヘッドについて、そのフェース面にブラスト処理が施されることが多い(特許文献1及び2)。ブラスト処理は、フェース面の外観向上や、太陽光の反射抑制(眩しさの防止)、或いは、打球のバックスピン量の調整等を目的として行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−248974号公報
【特許文献2】特開平10−179824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スコアラインが既に形成されたフェース面にブラスト処理を施すとスコアラインの縁や内壁も研磨されてしまい、スコアラインの形成精度に影響を与えることになる。この問題を解消するため、特許文献1にはスコアラインの形成前にフェース面にブラスト処理を施すことが提案されているが、製造工程の都合上、スコアラインの形成後にブラスト処理を施す必要がある場合がある。
【0005】
本発明の目的は、スコアラインが既に形成されたフェース面に対して、スコアラインの形成精度に与える影響を低減してブラスト処理を施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、スコアラインが形成されたフェース面をブラスト処理するゴルフクラブヘッドの処理方法において、ブラスト処理の前に、前記スコアラインをマスキング材で埋める工程と、ブラスト処理の後に、前記マスキング材を前記スコアラインから除去する工程と、を備えたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スコアラインが既に形成されたフェース面に対して、スコアラインの形成精度に与える影響を低減してブラスト処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の外観図。
【図2】ゴルフクラブヘッド1の処理方法の説明図。
【図3】スコアライン20をマスキング材30で埋める工程の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の外観図である。同図の例はアイアン型のゴルフクラブヘッドに本発明を適用した例を示す。本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッド、特に、ミドルアイアン、ショートアイアン、ウェッジ型のゴルフクラブヘッドに好適であり、具体的には、ロフト角が30度以上70度以下、ヘッド重量が240g以上320g以下のゴルフクラブヘッドに好適である。しかし、本発明はウッド型やユーティリティー型(ハイブリッド型)のゴルフクラブヘッドにも適用できる。
【0010】
ゴルフクラブヘッド1は、そのフェース面(打撃面)10に複数本のスコアライン20が形成されている。各々のスコアライン20はトウ−ヒール方向に延設された、互いに平行な直線状の溝である。本実施形態の場合、各々のスコアライン20の配設間隔(ピッチ)は等間隔(等ピッチ)であるが、配設間隔が異なっていてもよい。
【0011】
フェース面10は、ブラスト処理により粗面化されている。フェース面10による太陽光の反射を抑制する観点では、フェース面10の表面粗さは、算術平均粗さで0.5μm以上4.0μm以下であることが好ましい。ブラスト処理に際しては、各種のブラスト材(研磨材)を用いることができるが、砂(サンドブラスト)を挙げることができる。
【0012】
次に、図2を参照して、このブラスト処理に関わるゴルフクラブヘッド1の処理方法について説明する。図2(A)は、スコアライン20の、その長手方向(トウ−ヒール方向)に直交する方向の断面図であり、ブラスト処理前の状態を示す。スコアライン20は、鍛造加工、切削加工等によりブラスト処理前に形成される。本実施形態の場合、スコアライン20の断面形状は、その長手方向の両端部(トウ側端部、ヒール側端部)を除き、同じである。また、各々のスコアライン20の断面形状は同じである。
【0013】
本実施形態の場合、スコアライン20は、一対の側壁21と、底壁22とを有し、その断面形状は左右対称な台形状に形成されている。なお、スコアライン20の断面形状は台形状に限られず、V字状等、他の形状でもよい。スコアライン20の縁23には丸みが形成されているが、丸みを形成しない構成も採用可能である。
【0014】
次に、図2(A)の状態で、ブラスト処理前にスコアライン20をマスキング材で埋める。図2(B)はスコアライン20をマスキング材30で埋めた状態を示す。マスキング材30としては、水溶性固形物或いは熱溶融性固形物等の可溶性固形物を用いることができる。水溶性固形物としては塩や、砂等の粒状物と水溶性樹脂等の添加物との混合物を挙げることができる。熱溶融性固形物としては、油脂、蝋、ワックスを挙げることができ、特にパラフィンワックスが好適である。本実施形態ではマスキング材30としてワックスを用いた場合を想定している。以下、マスキング材30をワックス30ともいう。
【0015】
図3はマスキング材30としてワックスを用いた場合の、スコアライン20をマスキング材30で埋める工程の例を示す説明図である。まず、図3(A)に示すようにスコアライン20を含むフェース面10全体に溶解したワックス30を塗布して被覆する。ワックス30が軟化している間に図3(B)に示すようにへら40等でフェース面10上のワックス30を剥ぎ取って除去し、スコアライン20のみがワックス30で埋まるようにする。その後、ワックス30が硬化すると、図2(B)の状態となる。
【0016】
次に、図2(B)の状態で、フェース面10に対してブラスト処理を行う。スコアライン20はマスキング材30で埋まっているのでブラスト材はスコアライン20内に進入することが阻害され、スコアライン20内が粗面化されることが抑制される。こうして、スコアライン20が既に形成されたフェース面10に対して、スコアライン20の形成精度に与える影響を低減してブラスト処理を施すことができる。
【0017】
図2(C)は、ブラスト処理後の状態を示す。ブラスト処理の影響でスコアライン20を埋めるマスキング材30の上部は若干研磨されてへこんでいる。しかし、マスキング材30の存在により、スコアライン20の内壁(側壁21、底壁22)はブラスト処理により粗面化されず、その痕跡が存在しない。一方、スコアライン20の縁23に関しては、ブラスト処理の条件(ブラスト材やその噴射の条件等)や、使用するマスキング材30の種類に依存するが、ブラスト処理の痕跡が存在する場合(特に、縁23とフェース面10との境界付近)がある。
【0018】
ブラスト処理が終了すると、その後、マスキング材30をスコアライン20から除去する。マスキング材30として可溶性固形物を用いた場合は、これを溶解させることにより比較的簡単に除去できる。本実施形態のようにマスキング材30としてワックスを用いた場合は、フェース面10或いはゴルフクラブヘッド1全体を加熱してワックスを溶融し、除去することができる。図2(D)は、マスキング材30を除去した後の状態を示す。以上により、ブラスト処理に関わる処理が終了する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコアラインが形成されたフェース面をブラスト処理するゴルフクラブヘッドの処理方法において、
ブラスト処理の前に、前記スコアラインをマスキング材で埋める工程と、
ブラスト処理の後に、前記マスキング材を前記スコアラインから除去する工程と、
を備えたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの処理方法。
【請求項2】
前記マスキング材が、ワックスであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの処理方法。
【請求項3】
ブラスト処理後の前記フェース面の表面粗さが、算術平均粗さで0.5μm以上4.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の処理方法が施されたゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
スコアラインが形成されたフェース面にブラスト処理が施されたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記スコアラインの縁に前記ブラスト処理の痕跡が存在する一方、前記スコアラインの内壁には前記ブラスト処理の痕跡が存在しないことを特徴とするゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245133(P2011−245133A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123203(P2010−123203)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】