説明

ゴルフクラブヘッドの製造方法

【課題】 特に軟質のクラブヘッド本体及び硬質のフェース面を備えることにより、シャフトとの連結角度の調整を簡単にすると共に、フェース面の耐摩耗性を向上させたゴルフクラブヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】 中炭素鋼又は低炭素鋼の材料からなると共に、一体成形のフェース面を備えるアイアンクラブ半製品を形成し、
加熱手段によって、前記クラブ半製品におけるフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱し、
焼入れ手段で前記クラブ半製品を急冷することにより、フェース面に硬化層を形成し、且つフェース面の硬度を、フェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下するようにし、更に、機械加工手段によって、該フェース面に線状溝を形成し、
前記クラブ半製品に表面処理を行い、クラブヘッドを完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にゴルフクラブヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドは、鋳造手段や鍛造手段によって形成され、一種類の鋼材料からなることから、その鋼材料の特性しか提供しなくて、クラブの打撃機能が低下しまうという問題がある。
【0003】
例えば、中炭素鋼又は低炭素鋼からなるゴルフクラブヘッドは、軟質であることから、フェース面への線状溝の加工や、シャフトの連結角度の調整が容易であるが、フェース面も軟質であるため、耐摩耗性に優れないと共に、飛距離が劣るという欠点があった。
一方、高炭素鋼又はステンレス鋼からなるゴルフクラブヘッドは硬質であることから、耐摩耗性に優れるので、飛距離は出るが、フェース面への線状溝の加工や、シャフトの連結角度の調整が困難であるという問題があった。
【0004】
上述したように、一種類の鋼材料からなるゴルフクラブヘッドにおける問題に鑑み、特許文献1の「ゴルフクラブヘッドの溶接方法」及び特許文献2の「ゴルフクラブヘッド及びフェース面の製造方法」のおいては、軟質鋼材料からなるゴルフクラブヘッド本体に、溶接手段や、粘着手段、嵌合手段などによって、打撃するための硬質鋼材料からなるプレートが設置されたゴルフクラブヘッドの製造方法が開発され、これによれば、異なる鋼材料の特性を備えるので、前記問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特願公告第I253366号
【特許文献2】台湾特願公告第I291886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既存のゴルフクラブヘッドの製造方法は、異なる材質の特性を備える利点はあるが、溶接手段や、粘着手段、嵌合手段などによって、異なる材質を結合させる工程が必要であることから、複雑な製造工程が追加されると共に、クラブ本体とフェース面との結合性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
中炭素鋼又は低炭素鋼の材料からなると共に、一体成形のフェース面を備えるアイアンのクラブ半製品を形成し、
加熱手段で前記クラブ半製品におけるフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱し、
焼入れ手段で前記クラブ半製品を急冷することにより、フェース面に硬化層を形成し、且つフェース面の硬度を、フェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下するようにし、更に、機械加工手段によって、該フェース面に線状溝を形成し、
前記クラブ半製品に表面処理を行い、クラブヘッドを完成させる。
【0008】
前記クラブ半製品のフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱する工程における加熱手段は、燃焼炎加熱、中周波又は高周波の誘導加熱、或いは通電加熱であり、
前記既定の焼入れ温度は、該クラブ半製品における炭素鋼材料の炭素量に応じて決められ、且つ使用される中炭素鋼又は低炭素鋼の変態温度よりも低い。
【0009】
前記クラブ半製品におけるフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱する工程においては、温度計を用いてフェース面の温度を測定する。
【0010】
前記焼入れ手段で前記クラブ半製品を急冷することにより、フェース面に硬化層を形成する工程においては、フェース面の中心が既定の焼入れ温度に至ったクラブ半製品を、すぐに5℃〜80℃の水又は油に浸して急冷することにより、フェース面に厚さ約3〜20mmの硬化層を形成する。
【0011】
また、前記クラブ半製品は、鋳造手段により形成してもよい。
【0012】
また、前記クラブ半製品は、鍛造手段により形成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法は、軟質のクラブヘッド本体を有すると共に、硬質のフェース面を有することから、シャフトの連結角度を簡単に調整できると共に、フェース面の耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法の流れ図である。
【図2】本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法で焼入れ処理を行った時、フェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて硬度が徐々に減少することを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の適切な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法は、下述工程を有する。
【0017】
中炭素鋼(炭素量:0.25%〜0.60%)又は低炭素鋼(炭素量:0.25以下)などの材料からなるアイアンクラブ半製品を形成する工程を有し、この時、該クラブ半製品は、鋳造手段又は鍛造手段によって、中炭素鋼又は低炭素鋼などの材料から形成され、一体成形のフェース面を備える。
【0018】
次に、加熱手段によって、クラブ半製品におけるフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱する工程を有し、該加熱手段では、燃焼炎加熱や、中周波誘導加熱又は高周波誘導加熱、通電加熱などの加熱処理が行われ、該既定の焼入れ温度は、該クラブ半製品における炭素鋼材料の炭素量に応じて決められ、且つ使用される中炭素鋼又は低炭素鋼の変態温度よりも低い。
【0019】
【表1】

【0020】
以下においては、前記表1に示す、炭素量0.22〜0.29%を含むクラブ半製品を燃焼炎加熱で加熱する手段例として説明する。
【0021】
その燃焼炎加熱によって、クラブ半製品のフェース面の中心を加熱する手段は、クラブ半製品のフェース面を上側に向かって水平に治具に位置決めした後、バーナーの燃焼炎を適当に調整するために、気体燃料(例えば、酸素又はアセチレン)の噴出量を調整し、フェース面の中心を向けて、バーナーの噴出口とフェース面との距離が約70mmと位置するように、フェース面の中心を720±25℃ほどの燃焼炎で加熱する、その過程に温度計を用いてフェース面の温度を測定し、また、その温度計は、レーサー式温度計であることが好ましい。
【0022】
上述した加熱工程を行った後、焼入れ手段によって、該クラブ半製品を急冷してフェース面を硬化させ、また、フェース面に厚さ約3〜20mmであり、硬度がフェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下する硬化層を形成する。
【0023】
次に、フェース面の中心が既定の焼入れ温度に至ったクラブ半製品を、治具から取り外してすぐに5℃〜80℃の水又は油に浸して急冷し、硬度を向上させる。更に、図2に示すように、燃焼炎によりフェース面10の中心を加熱し、該フェース面10の中心温度が周囲の温度よりも高くて、焼入れ工程を行われると、クラブ半製品1におけるフェース面10の硬度がフェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下する。
【0024】
前記クラブ半製品1におけるフェース面10の硬度がフェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下することに関する実行実験をして下記の表2に示す。その実験は、るフェース面10の中心点0からそれぞれX方向及びY方向に向かって、5mmの等間隔を割れ、X1-X8、Y1-Y8をつけてから各点の硬度を測定する。
【0025】
【表2】

【0026】
次に行う機械加工手段は、フェース面に線状溝を形成する工程であり、それによれば、加工機械の刃部を用いてフェース面の既定箇所に複数の線状溝を形成する。
【0027】
そして最後に、クラブ半製品の表面処理を行う工程により、例えば、クラブ半製品の表面を、研磨や洗浄、電気鍍金などの表面処理を施せば、クラブヘッドが完成する。
【0028】
上述したように、本発明におけるゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、軟質のクラブヘッド本体を有すると共に、硬質のフェース面を有する、一体成形のゴルフクラブヘッドを製造することができる。また、この製造方法によれば、フェース面の硬度が向上するため、フェース面の耐摩耗性を向上できると共に、線状溝の摩耗を減少させることができるので、クラブヘッドの使用寿命を延ばすことができる。
【0029】
さらに、本発明によれば、フェース面の硬度が向上することから、スイング時の打撃力の向上に伴い、飛距離も向上し、また、ショット時の打撃安定性や、飛翔経路の安定性、回転率(spin rate)などの機能も維持することができる。
【0030】
本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法によるクラブヘッド本体は、中炭素鋼及び低炭素鋼における軟質の特性を有すると共に、高硬度のフェース面を有し、軟質及び硬質の特性を揃えるものであることから、アイアンクラブヘッドのスイング時には快適な打撃感を得ることができる。また、クラブヘッド本体における、シャフトとの連結箇所には、中炭素鋼及び低炭素鋼における軟質特性を有することから、シャフトとの連結角度を簡単に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上述したように、本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法は、軟質のクラブヘッド本体を有すると共に、硬質のフェース面を有することから、シャフトとの連結角度を簡単に調整できると共に、フェース面の耐摩耗性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 クラブ半製品
10 フェース面
0 中心点
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8 X方向の座標
Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8 Y方向の座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中炭素鋼又は低炭素鋼の材料からなると共に、一体成形のフェース面を備えるアイアンクラブ半製品を形成し、
加熱手段によって、前記クラブ半製品におけるフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱し、
焼入れ手段で前記クラブ半製品を急冷することにより、フェース面に硬化層を形成し、且つフェース面の硬度を、フェース面の中心から放射状に周囲へ延出するにつれて低下するようにし、更に、機械加工手段によって、該フェース面に線状溝を形成し、
前記クラブ半製品に表面処理を行い、クラブヘッドを完成させることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記クラブ半製品のフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱する工程における加熱手段は、燃焼炎加熱、中周波誘導加熱、高周波誘導加熱、或いは通電加熱であり、
前記クラブ半製品のフェース面の中心を既定の焼入れ温度まで加熱する工程においては、温度計を用いてフェース面の温度を測定し、
前記既定の焼入れ温度は、該クラブ半製品における炭素鋼材料の炭素量に応じて決められ、且つ使用される中炭素鋼又は低炭素鋼の変態温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記焼入れ手段で前記クラブ半製品を急冷することにより、フェース面に硬化層を形成する工程においては、フェース面の中心が既定の焼入れ温度に至ったクラブ半製品を、すぐに5℃〜80℃の水又は油に浸して急冷することにより、フェース面に厚さ約3〜20mmの硬化層を形成することを特徴とする請求項2に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−152232(P2012−152232A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11082(P2011−11082)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(596056575)
【Fターム(参考)】