ゴルフクラブヘッド
【課題】高い打球音を有するヘッドの提供。
【解決手段】多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部Psと非ポーラス部NPsとを有するゴルフクラブヘッド2である。このポーラス部Psが、ソール8の少なくとも一部を構成している。このポーラス部Psが、上記ソール8の厚みの全体を占める全厚み部Ptを有している。好ましくは、ソール面積のうち、上記全厚み部Ptの占める面積の割合Raが、15%以上である。好ましくは、ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとが溶接されている。このヘッド2におけるポーラス部Psの配置において、好ましくは、ポーラス部Psに隣接する非ポーラス部NPsと同じ材質でポーラス部Psを置換した置換ヘッドが考慮される。
【解決手段】多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部Psと非ポーラス部NPsとを有するゴルフクラブヘッド2である。このポーラス部Psが、ソール8の少なくとも一部を構成している。このポーラス部Psが、上記ソール8の厚みの全体を占める全厚み部Ptを有している。好ましくは、ソール面積のうち、上記全厚み部Ptの占める面積の割合Raが、15%以上である。好ましくは、ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとが溶接されている。このヘッド2におけるポーラス部Psの配置において、好ましくは、ポーラス部Psに隣接する非ポーラス部NPsと同じ材質でポーラス部Psを置換した置換ヘッドが考慮される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドに用いられる材料に関して、様々な提案がなされている。特開2002−35180号公報は、ポーラス金属を用いたゴルフクラブヘッドが開示されている。特開2002−126138号公報は、打音や打感の向上のために、金属製外殻よりなるヘッド本体内に多孔質金属が配置されたヘッドを開示する。日本金属学会秋期(第135回)大会講演概要(2004)の第466頁には、チタン合金の多孔質金属での、気孔率と弾性率との関係を示す図が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−35180号公報
【特許文献2】特開2002−126138号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本金属学会秋期大会講演概要(2004)の第466頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質金属が、新たな作用効果をもたらしうることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、打球音が高くされうるゴルフクラブヘッドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部と非ポーラス部とを有している。このポーラス部は、ソールの少なくとも一部を構成している。このポーラス部が、上記ソールの厚みの全体を占める全厚み部を有している。
【0008】
好ましくは、上記ポーラス部が、2層のスキン層と、これらスキン層の内側に位置するコア層とを有しており、上記スキン層の気孔率が、上記コア層の気孔率よりも小さい。
【0009】
好ましくは、ソール面積のうち、上記全厚み部の占める面積の割合Raが、15%以上である。
【0010】
好ましくは、上記ポーラス部と上記非ポーラス部とが溶接されている。
【0011】
好ましくは、上記ポーラス部に隣接する上記非ポーラス部と同じ材質で上記ポーラス部を置換した置換ヘッドにおいて、一次モードの固有振動数がFp1であるとき、一次モードの固有振動数F1が、上記置換ヘッドの上記固有振動数Fp1よりも大きい。ただし、上記置換ヘッドにおける置換部分は、置換された上記ポーラス部と同じ重量であり、その外面が上記ポーラス部の外面と共通であり、且つ、均一の厚みを有する。
【0012】
好ましくは、上記置換ヘッドにおいて、一次モードの最大振幅点がPe1であるとき、この最大振幅点Pe1が、上記全厚み部に位置している。
【0013】
好ましくは、上記置換ヘッドにおいて、一次モードの振動の最大振幅がMa1とされ、この最大振幅Ma1に対する振幅比がRh(%)とされ、この振幅比Rhが60%以上である領域が高振幅比領域とされるとき、この高振幅比領域の全体に亘って、上記全厚み部が配置されている。
【発明の効果】
【0014】
中空のゴルフクラブヘッドにおいて、高い打球音が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドをクラウン側から見た図である。
【図2】図2は、図1のヘッドをソール側から見た図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1のヘッドに対応する置換ヘッドをソール側から見た図である。
【図6】図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7は、他の実施形態に係るヘッドの断面図である。
【図8】図8は、図7のヘッドの他の断面図である。
【図9】図9は、図7のヘッドの製造工程を説明するための断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態に係るヘッドの断面図である。
【図11】図11は、実施例に係る置換ヘッドHrのシミュレーション画像である。
【図12】図12は、実施例のそれぞれにおけるポーラス部Psの位置を示す図である。
【図13】図13は、実施例(ヘッドC1、C2、C3及びC4)のシミュレーション画像である。
【図14】図14は、気孔率と弾性率比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド2をクラウン側から見た図である。図2は、ヘッド2をソール側から見た図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【0018】
ヘッド2は、フェース4、クラウン6、ソール8、サイド10及びホーゼル12を有する。クラウン6は、フェース4の上縁からヘッド後方に向かって延びている。ソール8は、フェース4の下縁からヘッド後方に向かって延びている。サイド10は、クラウン6とソール8との間に延びている。図3及び図4が示すように、ヘッド2の内部は中空である。ヘッド2は、中空ヘッドである。ヘッド2は、いわゆるウッド型のゴルフクラブヘッドである。
【0019】
図3及び図4が示すように、ヘッド2の内面には、サイド10とクラウン6との境界k1が存在する。
【0020】
なお、サイド10は、存在していなくてもよい。即ち、クラウン6とソール8とが隣接していてもよい。ソール8からクラウン6まで滑らかに連続している場合、サイド10は存在しないとみなされる。
【0021】
ヘッド2は、ポーラス部材を含む複数の部材が接合されてなる。具体的には、ヘッド2は、ヘッド本体16と、フェース部材18と、ポーラス部材20とが接合されてなる(図4参照)。接合方法は、溶接である。ポーラス部材20と、それに隣接する部材(ヘッド本体16)とは、溶接可能である。ヘッド本体16、フェース部材18及びポーラス部材20は、いずれも、チタン合金よりなる。図2等には、ポーラス部材20とヘッド本体16との境界k2が示されている。図4には、ヘッド本体16とフェース部材18との境界kfが示されている。
【0022】
ポーラス部材20と隣接する部材(ヘッド本体16)とが溶接されていることで、ポーラス部材20は、ヘッド本体16と一体化する。溶接されたポーラス部材20は、ヘッド2の構造体として機能する。溶接は、ポーラス部材20による打球音の改善効果を高めうる。
【0023】
フェース部材18は、フェース4の全体を構成する。更にフェース部材18は、クラウン6の一部、ソール8の一部及びサイド10の一部を構成する。フェース部材18は、略皿状(カップ状)である。フェース部材18は、カップフェースと称されることがある。
【0024】
ヘッド本体16は、クラウン6の一部、ソール8の一部、サイド10の一部及びホーゼル12の全体を構成している。本体16には、ポーラス部材20の形状に対応した形状の貫通孔が開けられている。この貫通孔は、ソール8に位置する。この貫通孔に、ポーラス部材20が配置されている。
【0025】
ポーラス部材20は、多孔質金属を含む。ポーラス部材20は、その全体が一体成形されている。ポーラス部材20の全体が、多孔質金属であってもよい。
【0026】
図1が示すように、ホーゼル12は、シャフトを装着するための孔22を有する。図示されないシャフトは、孔22に挿入される。
【0027】
なお、本発明では、ヘッドの構造及びヘッドの製法は限定されない。
【0028】
本願では、ポーラス部Psが定義される。ポーラス部Psは、多孔質金属を含む。ポーラス部Psは、その全体が一体成形されている。本実施形態では、ポーラス部材20によって形成された部分が、ポーラス部Psである。ポーラス部Psの全体が多孔質金属であってもよい。
【0029】
本願では、非ポーラス部NPsが定義される。非ポーラス部NPsは、ポーラス部Ps以外の部分である。本実施形態では、ヘッド本体16及びフェース部材18が、非ポーラス部NPsである。
【0030】
ポーラス部Psは、ソール8に位置している。ポーラス部Psの全体がソール8に位置している。ソール8以外に、ポーラス部Psは存在しない。本実施形態では、ポーラス部Psの全体が、ソール8に位置している。
【0031】
本実施形態では、ソール8の一部が、ポーラス部Psである。ソール8の全体がポーラス部Psであってもよい。
【0032】
図3及び図4が示すように、ポーラス部Psは、ソール8の厚みの全体を占めている。本願では、ソール8の厚みの全体を占めるポーラス部Psが、全厚み部Ptとも称される。本実施形態では、ポーラス部Psの全体が、全厚み部Ptである。ポーラス部Psの一部が全厚み部Ptであってもよく、この一例は後述される。
【0033】
全厚み部Ptの外面は、ヘッド2の外部に露出している。全厚み部Ptの内面は、ヘッド2の中空部に露出している。
【0034】
全厚み部Ptの外面は、ソール面の一部を構成している。ソール面とは、ソール8の外面である。全厚み部Ptの外面と、非ポーラス部NPsの外面とは、滑らかに連続している。
【0035】
全厚み部Ptの内面は、滑らかに連続する曲面である。
【0036】
図3及び図4が示すように、全厚み部Ptの厚みは、それに隣接する非ポーラス部NPsの厚みよりも大きい。
【0037】
ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとは、溶接されている。具体的には、ポーラス部Psとヘッド本体16とが溶接されている。この溶接により、ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとは一体化している。溶接されたポーラス部Psは、ヘッド2の構造体として機能する。この溶接は、ポーラス部Psによる打球音の改善効果を高めうる。
【0038】
[置換ヘッド]
図5及び図6は、ヘッド2に対応する置換ヘッドRp2を示す。この置換ヘッドRp2を解析することは、ヘッド2におけるポーラス部Psの配置を決定するのに有用である。置換ヘッドは、実際のヘッドとして作成されてもよいし、シミュレーション用の三次元データとして作成されてもよい。
【0039】
置換ヘッドRp2の仕様は、次の通りである。
【0040】
[置換ヘッドRp2における置換部分の材質]
ヘッド2のポーラス部Psを、非ポーラス部NPsと同じ材質で置換する。非ポーラス部NPsと同じ材質とは、ポーラス部Psに隣接する非ポーラス部NPsの材質を意味する。本実施形態では、ヘッド本体16が、ポーラス部Psに隣接している。よって、ポーラス部Psが、ヘッド本体16の材質によって置換される。なお、ポーラス部Psに複数の部材が隣接している場合、ポーラス部Psとの境界面が最も広い隣接部材の材質が採用される。
【0041】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の外面]
この置換部分E1の外面frは、ポーラス部Psの外面fpと共通とされる。
【0042】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の厚みTx]
この置換部分E1の厚みTxは、均一とされる(図6参照)。なお、この厚みTxは、全厚み部Ptの平均厚みよりも大きいのが好ましい。
【0043】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の重量Wx]
この置換部分E1の重量Wxは、ポーラス部Psの重量Wpと同じとされる。
【0044】
このように設定された置換ヘッドRp2は、ヘッド2の設計に重要な情報を提供しうる。この置換ヘッドRp2の振動解析の結果に基づいて、ポーラス部Psの配置が決定されうる。
【0045】
好ましい振動解析として、モード解析が例示される。好ましくは、この置換ヘッドRp2のモード解析の結果に基づいて、ポーラス部Psの配置が決定される。
【0046】
モード解析では、置換ヘッドRp2の固有モードが得られる。固有モードとは、物体に固有の振動形態である。好ましくは、置換ヘッドRp2全体の固有モードが考慮される。
【0047】
振動解析(モード解析)は、ヘッド2の解析にも利用できる。例えば、置換ヘッドRp2の解析結果とヘッド2の解析結果とを比較することにより、ポーラス部Psを設けたことに起因する効果が検証されうる。
【0048】
固有モードを得る方法は限定されず、モード試験(実験モード解析とも称される)又はモード解析が用いられ得る。モード試験では、加振実験を行い、この実験の結果に基づいて、固有モードを求める。モード解析では、シミュレーションにより、固有モードを求める。このシミュレーションでは、例えば、有限要素法が用いられ得る。モード試験及びモード解析の方法は、公知である。
【0049】
好ましくは、モード試験又はモード解析は、自由支持条件で行われる。即ち、拘束条件がフリーとされる。モード解析では、例えば、市販の固有値解析ソフトウェアが用いられる。このソフトウェアとして、商品名「ABAQUS」(ABAQUS INC.製)、MARC(MSC SOFT社製)及び商品名「IDEAS」(EDS PLM Solutions社製)が例示される。
【0050】
後述される実施例では、固有値解析ソフトウェアを用いたモード解析がなされている。実測によるモード試験では、例えば、ヘッドのいずれかの部位(例えばネック端面)に糸を取り付け、ヘッドを糸につるした状態で、ヘッド各部をインパクトハンマーで叩き、フェース中心の加速度応答との伝達関数を計測することで、モードが求められる。
【0051】
モード解析では、固有振動数が得られる。本願にいう「固有振動数」とは、ヘッドの固有振動数である。置換ヘッドRp2の固有振動数と、ヘッド2の固有振動数とを比較することにより、ポーラス部Psによる効果を確認することができる。
【0052】
本願にいう「N次モードでの固有振動数」(N次固有振動数ともいう)とは、「ヘッド全体における固有振動数のうち、小さい方から数えてN番目の固有振動数」である。ただし、Nは1以上の整数である。ヘッドが変形しない剛体モードは、次数に数えない。例えば、「一次固有振動数」とは、「ヘッド全体における一次の固有振動数」である。例えば、「二次固有振動数」とは、「ヘッド全体における二次の固有振動数」である。本願において、単に「N次固有振動数」という場合、ヘッド全体におけるN次の固有振動数を意味する。本願において、「ヘッドのN次固有振動数」という場合も、ヘッド全体におけるN次の固有振動数を意味する。
【0053】
「一次モードの固有振動数」は、ヘッドの固有振動数のうち、最も小さい固有振動数である。「二次モードでの固有振動数」は、小さいほうから2番目の固有振動数である。「三次モードでの固有振動数」は、小さい方から3番目の固有振動数である。「N次モードでの固有振動数」とは、小さい方からN番目の固有振動数である。打球音を高くするには、一次モードの固有振動数を高くするのが最も有効であると考えられる。
【0054】
本願にいう「N次モード」とは、「ヘッド全体におけるN次の固有モード」である。ただし、Nは1以上の整数である。例えば、「一次モード」とは、「ヘッド全体における一次の固有モード」である。例えば、「二次モード」とは、「ヘッド全体における二次の固有モード」である。本願において、単に「N次モード」という場合、ヘッド全体におけるN次の固有モードを意味する。本願において、「ヘッドのN次モード」という場合も、ヘッド全体におけるN次の固有モードを意味する。
【0055】
[最大振幅点、最大振幅]
N次の固有モードにおいて、最も振幅が大きい点が、最大振幅点である。例えば、一次モードの最大振幅点は、一次モードにおいて、最も振幅の大きな点である。
【0056】
[振幅比Rh]
一次モードの振動において、最大振幅Ma1に対する振幅比率が、振幅比Rh(%)と定義される。この振幅比Rhは、置換ヘッドRp2での一次モードの振動において決定される。
【0057】
[高振幅比領域]
「高振幅比領域」とは、上記振幅比Rh(%)が60%以上である領域を意味する。典型的には、高振幅比領域は、ソール8に位置する。高振幅比領域の数は、単数又は複数である。例えば、ヘッド体積が400cc以上の大型ヘッドでは、高振幅比領域の数が複数となりやすい。本発明の効果を顕在化させる観点から、ヘッド2において、上記高振幅比領域の全てがソールに位置しているのが好ましい。
【0058】
置換ヘッドRp2の一次モードの固有振動数がFp1とされ、ヘッド2の一次モードの固有振動数がF1とされる。このとき、好ましくは、固有振動数F1が、固有振動数Fp1よりも大きい。固有振動数F1が固有振動数Fp1よりも大きいことは、重量の増加を伴わずに高い打球音が得られうることを示す。
【0059】
図5には、一次モードの最大振幅点Pe1が示されている。更に図5には、高振幅比領域R60が2点鎖線のハッチングで示されている。後述される実施例で示されるように、高振幅比領域R60は、上記シミュレーションソフトを用いて容易に表示されうる。図5の実施形態では、高振幅比領域R60は、3箇所に存在している。
【0060】
図5に示すように、一次モードの最大振幅点Pe1は、置換ヘッドRp2において決定される。図2では、置換ヘッドRp2において決定された一次モードの最大振幅点Pe1が、ヘッド2に転写されている。図2に示すように、ヘッド2において、最大振幅点Pe1は、全厚み部Ptに位置している。この場合、一次モードの固有振動数F1が高くなりやすい。高い固有振動数F1は、高い打球音に寄与する。
【0061】
図5に示すように、高振幅比領域R60は、置換ヘッドRp2において決定される。図2では、置換ヘッドRp2において決定された高振幅比領域R60が、ヘッド2に転写されている。図2に示すように、ヘッド2では、高振幅比領域R60の全体に亘って、上記全厚み部Ptが配置されている。この場合、一次モードの固有振動数F1が高くなりやすい。高い固有振動数F1は、高い打球音に寄与する。
【0062】
図7及び図8は、他の実施形態に係るヘッド30の断面図である。このヘッド30は、ポーラス部Psをヘッドの内側から支持するバックアップ部b1を有する(図8の拡大部参照)。バックアップ部b1は、ポーラス部Psの周囲に設けられている。このバックアップ部b1の存在を除き、ヘッド30は、ヘッド2と同じである。
【0063】
バックアップ部b1は、ポーラス部Psの接合強度を向上させうる。バックアップ部b1は、ポーラス部Psの接合工程を効率化しうる。
【0064】
前述したヘッド2と異なり、ヘッド30では、全厚み部Ptとポーラス部Psとが相違する。ポーラス部Psのうち、バックアップ部b1が存在しない部分が、全厚み部Ptである(図8参照)。
【0065】
図9は、このヘッド30の製造方法の一工程を説明するための断面図である。この工程では、ポーラス部材32と、このポーラス部材32に隣接する隣接部材34とが用意される。ポーラス部材32は、均一の厚みを有している。隣接部材34は、基部36と立設部38とを有する。この工程では、先ず、ポーラス部材32の端面32aと立設部38とを当接させる。次に、プレス工程を行う。このプレス工程では、立設部38をポーラス部材32の側に倒すと同時に、この立設部38に押圧されてポーラス部材32が圧縮変形する(矢印ya参照)。より好ましくは、上記プレス工程において、ポーラス部材32及び基部36が曲げられる(矢印yb参照)。この曲げにより、ソール面の最終形状が形成されうる。ポーラス部材32は気孔を含むので、立設部38の押圧によって変形しやすい。この変形により、ポーラス部材32(ポーラス部Ps)の縁部がバックアップ部b1に沿った形状となる。よって、ポーラス部材32(ポーラス部Ps)の縁部とバックアップ部b1とが確実に当接する。この構造は、ポーラス部Psの接合強度を向上させる。この工程は、立設部38の変形とポーラス部材32の変形とが同時になされるので、生産性に優れる。好ましくは、このプレス工程の後に、ポーラス部材32と隣接部材34とが溶接される。
【0066】
図10は、他の実施形態に係るヘッド40の断面図である。このヘッド40では、ポーラス部Ps(全厚み部Pt)が、三層構造である。図10の拡大部が示すように、ポーラス部Ps(全厚み部Pt)は、2層のスキン層Lsとコア層Lcとを有する。2層のスキン層Lsの内側にコア層Lcが位置する。第一のスキン層Lsと第二のスキン層Lsとの間にコア層Lcが位置する。
【0067】
スキン層Lsの気孔率は、コア層Lcの気孔率よりも小さい。気孔率の小さなスキン層Lsは、ポーラス部Psの剛性を向上させる。気孔率の大きなコア層Lcは、ポーラス部Psの重量(比重)の低減に寄与する。また気孔率の大きなコア層Lcは、ポーラス部Psの重量を抑制しつつ、ポーラス部Psの厚みを増加させうる。この厚みの増加は、ポーラス部Psの剛性を高めうる。スキン層Lsとコア層Lcとが併用されたポーラス部Psでは、高い剛性と軽量性とが達成されうる。この構造のポーラス部Psは、固有振動数を高くするのに寄与する。この構造のポーラス部Psは、打球音を高くするのに寄与する。
【0068】
ヘッド外面を形成するスキン層Lsは、気孔率が少ないので、気孔が目立たない。よって、ヘッドの外観性が向上しうる。また、ヘッド外面を形成するスキン層Lsは、打球時にソール面に付着しうる土や芝などが気孔に入り込むのを抑制する。
【0069】
スキン層Lsの気孔率は限定されない。ポーラス部Psの剛性を高める観点から、スキン層Lsの気孔率は、5%(0.05)以下が好ましく、1%(0.01)以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。スキン層Lsの気孔率は、0%(0.00%)であってもよい。本願における気孔率は、体積%である。
【0070】
コア層Lcの気孔率は限定されない。ポーラス部Psの比重を下げることで、重量を抑制しつつポーラス部Psの厚みを増やすことができる。ポーラス部Psの厚みの増加は、ポーラス部Psの剛性を高める。この高い剛性は、固有振動数を高めるのに役立つ。これらの観点から、コア層Lcの気孔率は、25%(0.25)以上が好ましく、30%(0.30)以上がより好ましい。剛性及び強度の観点から、コア層Lcの気孔率は、80%(0.80)以下が好ましく、70%(0.70)以下がより好ましく、60%(0.60)以下が更に好ましく、50%(0.50)以下が特に好ましい。
【0071】
スキン層Lsとコア層Lcとを有するポーラス部材の製造方法は限定されない。この製造方法として、スキン層Ls用の材料とスキン層Ls用の材料とをそれぞれ別々に成形した後、それらを一体化させてポーラス部材を得る方法が例示される。
【0072】
スキン層Lsの厚みTsは限定されない。換言すれば、第一のスキン層Lsの厚みTs1及び第二のスキン層Lsの厚みTs2は限定されない。ポーラス部Psの比重を小さくする観点から、スキン層Lsの厚みTsは、コア層Lcの厚みTcよりも薄いのが好ましい。ポーラス部Psの比重を小さくする観点から、厚みTsは、0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。ポーラス部Psの剛性を高める観点から、厚みTsは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
【0073】
コア層Lcの厚みTcは限定されない。ポーラス部Psの比重を小さくしつつポーラス部Psの剛性を高める観点から、厚みTcは、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。厚みTcの上限値は、ポーラス部Psの設定重量によって適宜設定されるが、例えば1.0mm以下、更には0.8mm以下、更には0.6mm以下とされうる。
【0074】
ポーラス部Psの全厚み中におけるスキン層Lsの厚みの比率(本願において、スキン層比率とも称される)は限定されない。スキン層比率(%)は、次の式によって算出される。
スキン層比率(%)=[(Ts1+Ts2)/(Ts1+Ts2+Tc)]×100
【0075】
ポーラス部Psの表層の剛性を大きくして打球音を高める観点からは、スキン層比率は、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上が更に好ましい。ポーラス部Psの厚みを大きくしてポーラス部Psの剛性を上げる観点からは、スキン層比率は、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましく、50%以下が更に好ましい。
【0076】
前述したように、ソールに配置されたポーラス部Psは、一次固有振動数を高めうる。高い打球音の観点から、ソール面積Asのうち、上記全厚み部の占める面積Apの割合Raは、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。この割合Raは、100%であってもよい。
【0077】
ヘッド体積は限定されない。大型ヘッドは、打球音が低くなりやすい。よって、大型ヘッドにおいて、打球音を高くする効果が顕在化しやすい。この観点から、ヘッド体積は、400cc以上が好ましく、420cc以上がより好ましく、440cc以上がより好ましい。ゴルフクラブに関する規則を遵守する観点から、ヘッド体積は470cc以下が好ましく、10ccの測定誤差を考慮すると、460cc±10ccが特に好ましい。
【0078】
一次モードの固有振動数F1が高い場合、実際の打撃における打球音も高くなりやすい。この観点から、この固有振動数F1は、2000Hz以上が好ましく、2500Hzがより好ましく、2700Hz以上がより好ましい。なお、固有振動数F1が過度に高い場合、反発性能が低下する場合があり、また、ヘッド設計上の制限もある。これらの観点から、固有振動数F1は、5000Hz以下、更には4000Hz以下とすることもできる。
【0079】
ソールが薄いヘッドの場合、ポーラス部Psに起因する効果が顕在化しやすい。この観点から、ポーラス部Ps以外の部分におけるソールの平均厚さは、1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下がより好ましい。ヘッドの強度の観点から、ポーラス部Ps以外の部分におけるソールの平均厚さは、0.5mm以上が好ましい。
【0080】
非ポーラス部NPsの材質は限定されない。非ポーラス部NPsの材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。非ポーラス部NPsに用いられる上記金属として、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン−ニッケル合金から選ばれる一種以上の金属が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。チタン合金として、6−4チタン(Ti−6Al−4V)、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al等が例示される。前述の通り、本発明は、打球音が大きなヘッドにおいて特に効果的である。この観点から、非ポーラス部NPsの材質は、チタン合金が好ましい。この観点から、ソールの材質は、チタン合金が好ましい。非ポーラス部NPsがチタン合金である場合、ポーラス部Psもチタン合金とされるのが、溶接強度の点で好ましい。
【0081】
ヘッドの製造方法は限定されない。通常、中空のヘッドは、2以上の部材が接合されることにより製造される。好ましいヘッドは、上記ポーラス部材を含む2以上の部材が接合されることにより製造される。各部材の製造方法は限定されず、鋳造、鍛造及びプレスフォーミングが例示される。
【0082】
ポーラス部材の製造方法は限定されず、公知の方法が採用されうる。この製造方法として、金属粉末射出成形法(Metal Powder Injection Molding:MIM)、金属粉末を圧縮成形する方法、金属粉末を焼結成形する方法、溶融金属中にガスを注入する方法、等が例示される。
【0083】
金属粉末射出成形法は、樹脂及び/又はワックスを含むバインダと金属粉末とを混合させて混合体を得る工程と、この混合体を金型内に射出成形する工程と、上記バインダを抜く脱脂工程と、この脱脂工程後に焼結する工程とを含む。
【0084】
これらの製造方法によって成形されうる多孔質金属は、多数の小さい気孔(気孔)を有する金属である。気孔の大きさは、通常、10nm以上1mm以下程度である。剛性及び強度の観点から、気孔の大きさは、100μm以下が好ましい。多孔質金属全体の体積に対する気孔の体積の割合が、気孔率である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0086】
以下の評価Aでは、ヘッドの固有振動数を確認した。また、以下の評価Bでは、スキン層の厚み及びコア層の気孔率が剛性に及ぼす影響を確認した。
【0087】
[評価A:ヘッドの固有振動数]
【0088】
[ヘッドHr(置換ヘッド)]
ソールの厚みが一定とされた他は上記置換ヘッドRp2と同じにして、ヘッドHrの三次元データが作成された。このヘッドHrは、後述するヘッドC1からC4の置換ヘッドである。このヘッドのクラウンの厚さは0.5(mm)とされ、ソールの厚さは0.7mmとされ、ヘッド体積は460ccとされた。ヘッドの材質として、チタン合金が選択された。このチタン合金の物性値は、弾性率が126GPaとされ、密度が4420kg/m3とされ、ポアソン比が0.35とされた。このチタン合金は、等方性弾性体として定義された。ヘッド重量は190.6gとされた。
【0089】
市販のプリプロセッサ(HyperMesh等)を用いて、ヘッドHrを有限の要素にメッシュ分割し、計算モデルを得た。次に、市販の固有値解析ソフトウェアを用いて固有値解析を行い、固有振動数及びモード形状を計算した。メッシュ分割の分割線は、図11に示される。
【0090】
図11は、メッシュ分割されたヘッドHrのシミュレーション結果を示す画像である。図11は、ソール側から見た画像であり、ソールの振動形態が示されている。図11の濃淡は、一次モードの固有振動の形態を示す。濃い部分ほど、振幅が大きい。
【0091】
[ヘッドC1からC4]
上記ヘッドHrを置換ヘッドとする4種類のヘッドが検討された。図12は、これら4種類のヘッドC1、C2、C3及びC4におけるポーラス部Psの位置を示している。
【0092】
図12におけるラインL1は、ヘッドC1のポーラス部Psの輪郭線を示す。このラインL1の内側の全領域RC1がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC1の三次元データが作成された。ヘッドC1の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC1の三次元データが作成された。
【0093】
ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1は、3箇所である。これらの3箇所は、ヘッドHrの一次モードの振動における腹の位置に対応している。ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1は、上記高振幅比領域(振幅比Rhが60%以上の領域)に略等しい。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、15%であった。
【0094】
図12におけるラインL2は、ヘッドC2のポーラス部Psの輪郭線を示す。このラインL2の内側の全領域RC2がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC2の三次元データが作成された。ヘッドC2の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC2の三次元データが作成された。ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2は、ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1よりも広い。ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2は、ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1の全てを含む。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、32%であった。
【0095】
図12におけるラインL3は、ヘッドC3のポーラス部Psの輪郭線を示す。ラインL3は、図12において最も薄い部分の外側の輪郭線である。このラインL3の内側の全領域RC3がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC3の三次元データが作成された。ヘッドC3の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC3の三次元データが作成された。ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3は、ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2よりも広い。ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3は、ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2の全てを含む。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、64%であった。
【0096】
図12におけるラインL4は、ヘッドC4のポーラス部Psの輪郭線を示す。ラインL4は、図12において最も濃い部分の外側の輪郭線である。このラインL4の内側の全領域RC4がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC4の三次元データが作成された。ヘッドC4の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC4の三次元データが作成された。ヘッドC4におけるポーラス部Psの領域RC4は、ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3よりも広い。ヘッドC4におけるポーラス部Psの領域RC4は、ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3の全てを含む。ヘッドC4では、ソールの全てがポーラス部Psとされた。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、100%であった。
【0097】
ヘッドC1からC4に用いられたポーラス部Psは、図10に示す3層構造とされた。スキン層Lsの気孔率は、0.00%とされた。スキン層Lsの物性は、上記チタン合金と同じとされた。コア層Lcの気孔率として、35%程度を想定した。この想定の下で、コア層Lcの物性を決定した。コア層Lcの物性は、弾性率が37.8GPaとされ、密度が2873kg/m3とされ、ポアソン比が0.35とされた。このコア層Lcの物性は、日本金属学会秋期(第135回)大会講演概要(2004)の第466頁に記載の図「多孔質合金における弾性率と気孔率の関係」を参考として決定した。上記ヘッドHr(ソール厚み0.7mm)が置換ヘッドとなるようにした結果、スキン層Lsの厚みTsは0.20mmとなり、コア層Lcの厚みTcは0.46mmとなった。
【0098】
図13は、上記ヘッドC1、ヘッドC2、ヘッドC3及びヘッドC4のシミュレーション結果を示す。図13は、ソール側から見た画像であり、ソールの振動形態が示されている。図13の濃淡は、一次モードの固有振動の形態を示す。濃い部分ほど、振幅が大きい。
【0099】
シミュレーションの結果、一次モードの固有振動数は次の通りであった。ヘッドHrの固有振動数がFp1は、2743Hzであった。ヘッドC1の固有振動数がF1は、2762Hzであった。ヘッドC2の固有振動数がF1は、2746Hzであった。ヘッドC3の固有振動数がF1は、2792Hzであった。ヘッドC4の固有振動数がF1は、2841Hzであった。ヘッドC1からC4の全てにおいて、一次モードの固有振動数F1は、置換ヘッドHrの固有振動数Fp1よりも大きかった。
【0100】
[評価B:スキン層の厚み及びコア層の気孔率が剛性に与える影響]
重量が一定であるという条件の下で、スキン層の厚みTs及びコア層の気孔率がポーラス部の剛性に与える影響を確認した。
【0101】
このシミュレーションでは、先ず、ベース体Aが考慮された。このベース体Aは、気孔を有さない。ベース体Aの厚みはTであり、密度はρであり、弾性率はEである。このベース体Aでは、気孔が無いので、コア層とスキン層という区別は存在しない。即ちこのベース体Aでは、スキン層の厚みTsが0mmである。上記厚みTは、0.7mmに設定された。密度ρは、4420kg/m3に設定された。Eは126GPaに設定された。
【0102】
次に、多数のテスト体Bが考察された。このテスト体Bの重量及び材質は、上記ベース体Aと同じとされた。テスト体Bは、上記コア層及び上記スキン層を有する。コア層は、気孔を有する。スキン層は、気孔を有さない。スキン層の密度及び弾性率は、上記ベース体Aのそれらと同じである。上記テスト体Bの曲げ剛性と上記ベース体Aの曲げ剛性とが比較された。
【0103】
テスト体Bの厚みhは、次の式で表される。
h=Ts+Ts+Tc
【0104】
テスト体Bの重量が上記ベース体Aの重量と同一であることから、テスト体Bのコア層の厚みTcは、次の式で表される。
Tc=ρ/ρp(T−2×Ts)
ただしρpは、コア層の密度である。
【0105】
長方形断面における断面二次モーメントを考慮すると、テスト体Bの曲げ剛性EIbは、次の式で表される。
EIb=W×{(Ep−E)×Tc3+E×h3}/12
ただし、Wは長方形断面の幅であり、Epはコア層の弾性率である。
【0106】
上記弾性率Eと上記弾性率Epとの関係は、次の式で表される。
Ep=E×(ρp/ρ)α
【0107】
前述した日本金属学会秋期大会講演概要(2004)の第466頁に記載の図を参考とし、上記αを2.79とした。気孔率が0.35の場合に弾性率比[(Ep/E)×100]が30%となるように、上記αが決定された。
【0108】
以上の条件に基づく場合、気孔率と弾性率比(Ep/E)との関係は、図14に示すグラフの通りとなる。
【0109】
テスト体Bにおいて、スキン層の厚みTs及びコア層の気孔率を変化させて、剛性比[EIb/EIa]及びスキン層比率が算出された。上記テスト体Bの曲げ剛性EIbを、上記ベース体Aの曲げ剛性EIaで除することにより、剛性比[EIb/EIa]が算出された。この剛性比の算出結果が下記の表1に示される。スキン層比率の算出結果が、下記の表2に示される。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表1の結果が示すように、スキン層の厚みTs及び気孔率に関わらず、全ての上記テスト体Bにおいて、剛性比は1.00よりも大きい。即ち、表1に示される全てのバリエーションのテスト体Bは、ベース体Aよりも高い曲げ剛性を示した。また、気孔率が高いほど、剛性が向上することが判った。スキン層が無い場合、即ちTsが0の場合であっても、ベース体Aと比較して剛性が向上することが判った。この結果が示すように、ポーラス部は、重量を増加させることなく、曲げ剛性を高める効果を有する。この効果は、打球音の振動数を高くするのに寄与する。
【0113】
表1の結果は、スキン層厚みTsに好適な数値範囲が存在することを示している。表1は、スキン層厚みTsが0.05mm以上0.3mm以下の場合に好ましい剛性が得られうることを示している。表1が示すように、この範囲では、1.3以上の剛性比が得られやすい。更に、スキン層厚みTsが0.15mmの場合、剛性比が極大値を示した。
【0114】
表1と表2との対比により、本実施例での好ましいスキン層比率(%)が理解されうる。即ち、高い剛性比を実現しうるスキン層比率が好ましい。この観点から、スキン層比率(%)は、8%以上が好ましく、80%以下が好ましい。コア層の気孔率が0.2以上0.5以下であり且つスキン層比率(%)が8%以上80%以下の場合、剛性比(表1)が1.21以上と良好である。
【0115】
これらの結果が示すように、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明されたヘッドは、あらゆる中空のゴルフクラブヘッドに適用されうる。
【符号の説明】
【0117】
2・・・ヘッド
4・・・フェース
6・・・クラウン
8・・・ソール
20・・・ポーラス部材
30・・・ヘッド
40・・・ヘッド
Ps・・・ポーラス部
Pt・・・全厚み部
Rp2・・・置換ヘッド
Pe1・・・一次モードの最大振幅点
Ls・・・スキン層
Lc・・・コア層
C1・・・ヘッド
C2・・・ヘッド
C3・・・ヘッド
C4・・・ヘッド
Hr・・・置換ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドに用いられる材料に関して、様々な提案がなされている。特開2002−35180号公報は、ポーラス金属を用いたゴルフクラブヘッドが開示されている。特開2002−126138号公報は、打音や打感の向上のために、金属製外殻よりなるヘッド本体内に多孔質金属が配置されたヘッドを開示する。日本金属学会秋期(第135回)大会講演概要(2004)の第466頁には、チタン合金の多孔質金属での、気孔率と弾性率との関係を示す図が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−35180号公報
【特許文献2】特開2002−126138号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本金属学会秋期大会講演概要(2004)の第466頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質金属が、新たな作用効果をもたらしうることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、打球音が高くされうるゴルフクラブヘッドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部と非ポーラス部とを有している。このポーラス部は、ソールの少なくとも一部を構成している。このポーラス部が、上記ソールの厚みの全体を占める全厚み部を有している。
【0008】
好ましくは、上記ポーラス部が、2層のスキン層と、これらスキン層の内側に位置するコア層とを有しており、上記スキン層の気孔率が、上記コア層の気孔率よりも小さい。
【0009】
好ましくは、ソール面積のうち、上記全厚み部の占める面積の割合Raが、15%以上である。
【0010】
好ましくは、上記ポーラス部と上記非ポーラス部とが溶接されている。
【0011】
好ましくは、上記ポーラス部に隣接する上記非ポーラス部と同じ材質で上記ポーラス部を置換した置換ヘッドにおいて、一次モードの固有振動数がFp1であるとき、一次モードの固有振動数F1が、上記置換ヘッドの上記固有振動数Fp1よりも大きい。ただし、上記置換ヘッドにおける置換部分は、置換された上記ポーラス部と同じ重量であり、その外面が上記ポーラス部の外面と共通であり、且つ、均一の厚みを有する。
【0012】
好ましくは、上記置換ヘッドにおいて、一次モードの最大振幅点がPe1であるとき、この最大振幅点Pe1が、上記全厚み部に位置している。
【0013】
好ましくは、上記置換ヘッドにおいて、一次モードの振動の最大振幅がMa1とされ、この最大振幅Ma1に対する振幅比がRh(%)とされ、この振幅比Rhが60%以上である領域が高振幅比領域とされるとき、この高振幅比領域の全体に亘って、上記全厚み部が配置されている。
【発明の効果】
【0014】
中空のゴルフクラブヘッドにおいて、高い打球音が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドをクラウン側から見た図である。
【図2】図2は、図1のヘッドをソール側から見た図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1のヘッドに対応する置換ヘッドをソール側から見た図である。
【図6】図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7は、他の実施形態に係るヘッドの断面図である。
【図8】図8は、図7のヘッドの他の断面図である。
【図9】図9は、図7のヘッドの製造工程を説明するための断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態に係るヘッドの断面図である。
【図11】図11は、実施例に係る置換ヘッドHrのシミュレーション画像である。
【図12】図12は、実施例のそれぞれにおけるポーラス部Psの位置を示す図である。
【図13】図13は、実施例(ヘッドC1、C2、C3及びC4)のシミュレーション画像である。
【図14】図14は、気孔率と弾性率比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド2をクラウン側から見た図である。図2は、ヘッド2をソール側から見た図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【0018】
ヘッド2は、フェース4、クラウン6、ソール8、サイド10及びホーゼル12を有する。クラウン6は、フェース4の上縁からヘッド後方に向かって延びている。ソール8は、フェース4の下縁からヘッド後方に向かって延びている。サイド10は、クラウン6とソール8との間に延びている。図3及び図4が示すように、ヘッド2の内部は中空である。ヘッド2は、中空ヘッドである。ヘッド2は、いわゆるウッド型のゴルフクラブヘッドである。
【0019】
図3及び図4が示すように、ヘッド2の内面には、サイド10とクラウン6との境界k1が存在する。
【0020】
なお、サイド10は、存在していなくてもよい。即ち、クラウン6とソール8とが隣接していてもよい。ソール8からクラウン6まで滑らかに連続している場合、サイド10は存在しないとみなされる。
【0021】
ヘッド2は、ポーラス部材を含む複数の部材が接合されてなる。具体的には、ヘッド2は、ヘッド本体16と、フェース部材18と、ポーラス部材20とが接合されてなる(図4参照)。接合方法は、溶接である。ポーラス部材20と、それに隣接する部材(ヘッド本体16)とは、溶接可能である。ヘッド本体16、フェース部材18及びポーラス部材20は、いずれも、チタン合金よりなる。図2等には、ポーラス部材20とヘッド本体16との境界k2が示されている。図4には、ヘッド本体16とフェース部材18との境界kfが示されている。
【0022】
ポーラス部材20と隣接する部材(ヘッド本体16)とが溶接されていることで、ポーラス部材20は、ヘッド本体16と一体化する。溶接されたポーラス部材20は、ヘッド2の構造体として機能する。溶接は、ポーラス部材20による打球音の改善効果を高めうる。
【0023】
フェース部材18は、フェース4の全体を構成する。更にフェース部材18は、クラウン6の一部、ソール8の一部及びサイド10の一部を構成する。フェース部材18は、略皿状(カップ状)である。フェース部材18は、カップフェースと称されることがある。
【0024】
ヘッド本体16は、クラウン6の一部、ソール8の一部、サイド10の一部及びホーゼル12の全体を構成している。本体16には、ポーラス部材20の形状に対応した形状の貫通孔が開けられている。この貫通孔は、ソール8に位置する。この貫通孔に、ポーラス部材20が配置されている。
【0025】
ポーラス部材20は、多孔質金属を含む。ポーラス部材20は、その全体が一体成形されている。ポーラス部材20の全体が、多孔質金属であってもよい。
【0026】
図1が示すように、ホーゼル12は、シャフトを装着するための孔22を有する。図示されないシャフトは、孔22に挿入される。
【0027】
なお、本発明では、ヘッドの構造及びヘッドの製法は限定されない。
【0028】
本願では、ポーラス部Psが定義される。ポーラス部Psは、多孔質金属を含む。ポーラス部Psは、その全体が一体成形されている。本実施形態では、ポーラス部材20によって形成された部分が、ポーラス部Psである。ポーラス部Psの全体が多孔質金属であってもよい。
【0029】
本願では、非ポーラス部NPsが定義される。非ポーラス部NPsは、ポーラス部Ps以外の部分である。本実施形態では、ヘッド本体16及びフェース部材18が、非ポーラス部NPsである。
【0030】
ポーラス部Psは、ソール8に位置している。ポーラス部Psの全体がソール8に位置している。ソール8以外に、ポーラス部Psは存在しない。本実施形態では、ポーラス部Psの全体が、ソール8に位置している。
【0031】
本実施形態では、ソール8の一部が、ポーラス部Psである。ソール8の全体がポーラス部Psであってもよい。
【0032】
図3及び図4が示すように、ポーラス部Psは、ソール8の厚みの全体を占めている。本願では、ソール8の厚みの全体を占めるポーラス部Psが、全厚み部Ptとも称される。本実施形態では、ポーラス部Psの全体が、全厚み部Ptである。ポーラス部Psの一部が全厚み部Ptであってもよく、この一例は後述される。
【0033】
全厚み部Ptの外面は、ヘッド2の外部に露出している。全厚み部Ptの内面は、ヘッド2の中空部に露出している。
【0034】
全厚み部Ptの外面は、ソール面の一部を構成している。ソール面とは、ソール8の外面である。全厚み部Ptの外面と、非ポーラス部NPsの外面とは、滑らかに連続している。
【0035】
全厚み部Ptの内面は、滑らかに連続する曲面である。
【0036】
図3及び図4が示すように、全厚み部Ptの厚みは、それに隣接する非ポーラス部NPsの厚みよりも大きい。
【0037】
ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとは、溶接されている。具体的には、ポーラス部Psとヘッド本体16とが溶接されている。この溶接により、ポーラス部Psと非ポーラス部NPsとは一体化している。溶接されたポーラス部Psは、ヘッド2の構造体として機能する。この溶接は、ポーラス部Psによる打球音の改善効果を高めうる。
【0038】
[置換ヘッド]
図5及び図6は、ヘッド2に対応する置換ヘッドRp2を示す。この置換ヘッドRp2を解析することは、ヘッド2におけるポーラス部Psの配置を決定するのに有用である。置換ヘッドは、実際のヘッドとして作成されてもよいし、シミュレーション用の三次元データとして作成されてもよい。
【0039】
置換ヘッドRp2の仕様は、次の通りである。
【0040】
[置換ヘッドRp2における置換部分の材質]
ヘッド2のポーラス部Psを、非ポーラス部NPsと同じ材質で置換する。非ポーラス部NPsと同じ材質とは、ポーラス部Psに隣接する非ポーラス部NPsの材質を意味する。本実施形態では、ヘッド本体16が、ポーラス部Psに隣接している。よって、ポーラス部Psが、ヘッド本体16の材質によって置換される。なお、ポーラス部Psに複数の部材が隣接している場合、ポーラス部Psとの境界面が最も広い隣接部材の材質が採用される。
【0041】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の外面]
この置換部分E1の外面frは、ポーラス部Psの外面fpと共通とされる。
【0042】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の厚みTx]
この置換部分E1の厚みTxは、均一とされる(図6参照)。なお、この厚みTxは、全厚み部Ptの平均厚みよりも大きいのが好ましい。
【0043】
[置換ヘッドRp2における置換部分E1の重量Wx]
この置換部分E1の重量Wxは、ポーラス部Psの重量Wpと同じとされる。
【0044】
このように設定された置換ヘッドRp2は、ヘッド2の設計に重要な情報を提供しうる。この置換ヘッドRp2の振動解析の結果に基づいて、ポーラス部Psの配置が決定されうる。
【0045】
好ましい振動解析として、モード解析が例示される。好ましくは、この置換ヘッドRp2のモード解析の結果に基づいて、ポーラス部Psの配置が決定される。
【0046】
モード解析では、置換ヘッドRp2の固有モードが得られる。固有モードとは、物体に固有の振動形態である。好ましくは、置換ヘッドRp2全体の固有モードが考慮される。
【0047】
振動解析(モード解析)は、ヘッド2の解析にも利用できる。例えば、置換ヘッドRp2の解析結果とヘッド2の解析結果とを比較することにより、ポーラス部Psを設けたことに起因する効果が検証されうる。
【0048】
固有モードを得る方法は限定されず、モード試験(実験モード解析とも称される)又はモード解析が用いられ得る。モード試験では、加振実験を行い、この実験の結果に基づいて、固有モードを求める。モード解析では、シミュレーションにより、固有モードを求める。このシミュレーションでは、例えば、有限要素法が用いられ得る。モード試験及びモード解析の方法は、公知である。
【0049】
好ましくは、モード試験又はモード解析は、自由支持条件で行われる。即ち、拘束条件がフリーとされる。モード解析では、例えば、市販の固有値解析ソフトウェアが用いられる。このソフトウェアとして、商品名「ABAQUS」(ABAQUS INC.製)、MARC(MSC SOFT社製)及び商品名「IDEAS」(EDS PLM Solutions社製)が例示される。
【0050】
後述される実施例では、固有値解析ソフトウェアを用いたモード解析がなされている。実測によるモード試験では、例えば、ヘッドのいずれかの部位(例えばネック端面)に糸を取り付け、ヘッドを糸につるした状態で、ヘッド各部をインパクトハンマーで叩き、フェース中心の加速度応答との伝達関数を計測することで、モードが求められる。
【0051】
モード解析では、固有振動数が得られる。本願にいう「固有振動数」とは、ヘッドの固有振動数である。置換ヘッドRp2の固有振動数と、ヘッド2の固有振動数とを比較することにより、ポーラス部Psによる効果を確認することができる。
【0052】
本願にいう「N次モードでの固有振動数」(N次固有振動数ともいう)とは、「ヘッド全体における固有振動数のうち、小さい方から数えてN番目の固有振動数」である。ただし、Nは1以上の整数である。ヘッドが変形しない剛体モードは、次数に数えない。例えば、「一次固有振動数」とは、「ヘッド全体における一次の固有振動数」である。例えば、「二次固有振動数」とは、「ヘッド全体における二次の固有振動数」である。本願において、単に「N次固有振動数」という場合、ヘッド全体におけるN次の固有振動数を意味する。本願において、「ヘッドのN次固有振動数」という場合も、ヘッド全体におけるN次の固有振動数を意味する。
【0053】
「一次モードの固有振動数」は、ヘッドの固有振動数のうち、最も小さい固有振動数である。「二次モードでの固有振動数」は、小さいほうから2番目の固有振動数である。「三次モードでの固有振動数」は、小さい方から3番目の固有振動数である。「N次モードでの固有振動数」とは、小さい方からN番目の固有振動数である。打球音を高くするには、一次モードの固有振動数を高くするのが最も有効であると考えられる。
【0054】
本願にいう「N次モード」とは、「ヘッド全体におけるN次の固有モード」である。ただし、Nは1以上の整数である。例えば、「一次モード」とは、「ヘッド全体における一次の固有モード」である。例えば、「二次モード」とは、「ヘッド全体における二次の固有モード」である。本願において、単に「N次モード」という場合、ヘッド全体におけるN次の固有モードを意味する。本願において、「ヘッドのN次モード」という場合も、ヘッド全体におけるN次の固有モードを意味する。
【0055】
[最大振幅点、最大振幅]
N次の固有モードにおいて、最も振幅が大きい点が、最大振幅点である。例えば、一次モードの最大振幅点は、一次モードにおいて、最も振幅の大きな点である。
【0056】
[振幅比Rh]
一次モードの振動において、最大振幅Ma1に対する振幅比率が、振幅比Rh(%)と定義される。この振幅比Rhは、置換ヘッドRp2での一次モードの振動において決定される。
【0057】
[高振幅比領域]
「高振幅比領域」とは、上記振幅比Rh(%)が60%以上である領域を意味する。典型的には、高振幅比領域は、ソール8に位置する。高振幅比領域の数は、単数又は複数である。例えば、ヘッド体積が400cc以上の大型ヘッドでは、高振幅比領域の数が複数となりやすい。本発明の効果を顕在化させる観点から、ヘッド2において、上記高振幅比領域の全てがソールに位置しているのが好ましい。
【0058】
置換ヘッドRp2の一次モードの固有振動数がFp1とされ、ヘッド2の一次モードの固有振動数がF1とされる。このとき、好ましくは、固有振動数F1が、固有振動数Fp1よりも大きい。固有振動数F1が固有振動数Fp1よりも大きいことは、重量の増加を伴わずに高い打球音が得られうることを示す。
【0059】
図5には、一次モードの最大振幅点Pe1が示されている。更に図5には、高振幅比領域R60が2点鎖線のハッチングで示されている。後述される実施例で示されるように、高振幅比領域R60は、上記シミュレーションソフトを用いて容易に表示されうる。図5の実施形態では、高振幅比領域R60は、3箇所に存在している。
【0060】
図5に示すように、一次モードの最大振幅点Pe1は、置換ヘッドRp2において決定される。図2では、置換ヘッドRp2において決定された一次モードの最大振幅点Pe1が、ヘッド2に転写されている。図2に示すように、ヘッド2において、最大振幅点Pe1は、全厚み部Ptに位置している。この場合、一次モードの固有振動数F1が高くなりやすい。高い固有振動数F1は、高い打球音に寄与する。
【0061】
図5に示すように、高振幅比領域R60は、置換ヘッドRp2において決定される。図2では、置換ヘッドRp2において決定された高振幅比領域R60が、ヘッド2に転写されている。図2に示すように、ヘッド2では、高振幅比領域R60の全体に亘って、上記全厚み部Ptが配置されている。この場合、一次モードの固有振動数F1が高くなりやすい。高い固有振動数F1は、高い打球音に寄与する。
【0062】
図7及び図8は、他の実施形態に係るヘッド30の断面図である。このヘッド30は、ポーラス部Psをヘッドの内側から支持するバックアップ部b1を有する(図8の拡大部参照)。バックアップ部b1は、ポーラス部Psの周囲に設けられている。このバックアップ部b1の存在を除き、ヘッド30は、ヘッド2と同じである。
【0063】
バックアップ部b1は、ポーラス部Psの接合強度を向上させうる。バックアップ部b1は、ポーラス部Psの接合工程を効率化しうる。
【0064】
前述したヘッド2と異なり、ヘッド30では、全厚み部Ptとポーラス部Psとが相違する。ポーラス部Psのうち、バックアップ部b1が存在しない部分が、全厚み部Ptである(図8参照)。
【0065】
図9は、このヘッド30の製造方法の一工程を説明するための断面図である。この工程では、ポーラス部材32と、このポーラス部材32に隣接する隣接部材34とが用意される。ポーラス部材32は、均一の厚みを有している。隣接部材34は、基部36と立設部38とを有する。この工程では、先ず、ポーラス部材32の端面32aと立設部38とを当接させる。次に、プレス工程を行う。このプレス工程では、立設部38をポーラス部材32の側に倒すと同時に、この立設部38に押圧されてポーラス部材32が圧縮変形する(矢印ya参照)。より好ましくは、上記プレス工程において、ポーラス部材32及び基部36が曲げられる(矢印yb参照)。この曲げにより、ソール面の最終形状が形成されうる。ポーラス部材32は気孔を含むので、立設部38の押圧によって変形しやすい。この変形により、ポーラス部材32(ポーラス部Ps)の縁部がバックアップ部b1に沿った形状となる。よって、ポーラス部材32(ポーラス部Ps)の縁部とバックアップ部b1とが確実に当接する。この構造は、ポーラス部Psの接合強度を向上させる。この工程は、立設部38の変形とポーラス部材32の変形とが同時になされるので、生産性に優れる。好ましくは、このプレス工程の後に、ポーラス部材32と隣接部材34とが溶接される。
【0066】
図10は、他の実施形態に係るヘッド40の断面図である。このヘッド40では、ポーラス部Ps(全厚み部Pt)が、三層構造である。図10の拡大部が示すように、ポーラス部Ps(全厚み部Pt)は、2層のスキン層Lsとコア層Lcとを有する。2層のスキン層Lsの内側にコア層Lcが位置する。第一のスキン層Lsと第二のスキン層Lsとの間にコア層Lcが位置する。
【0067】
スキン層Lsの気孔率は、コア層Lcの気孔率よりも小さい。気孔率の小さなスキン層Lsは、ポーラス部Psの剛性を向上させる。気孔率の大きなコア層Lcは、ポーラス部Psの重量(比重)の低減に寄与する。また気孔率の大きなコア層Lcは、ポーラス部Psの重量を抑制しつつ、ポーラス部Psの厚みを増加させうる。この厚みの増加は、ポーラス部Psの剛性を高めうる。スキン層Lsとコア層Lcとが併用されたポーラス部Psでは、高い剛性と軽量性とが達成されうる。この構造のポーラス部Psは、固有振動数を高くするのに寄与する。この構造のポーラス部Psは、打球音を高くするのに寄与する。
【0068】
ヘッド外面を形成するスキン層Lsは、気孔率が少ないので、気孔が目立たない。よって、ヘッドの外観性が向上しうる。また、ヘッド外面を形成するスキン層Lsは、打球時にソール面に付着しうる土や芝などが気孔に入り込むのを抑制する。
【0069】
スキン層Lsの気孔率は限定されない。ポーラス部Psの剛性を高める観点から、スキン層Lsの気孔率は、5%(0.05)以下が好ましく、1%(0.01)以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。スキン層Lsの気孔率は、0%(0.00%)であってもよい。本願における気孔率は、体積%である。
【0070】
コア層Lcの気孔率は限定されない。ポーラス部Psの比重を下げることで、重量を抑制しつつポーラス部Psの厚みを増やすことができる。ポーラス部Psの厚みの増加は、ポーラス部Psの剛性を高める。この高い剛性は、固有振動数を高めるのに役立つ。これらの観点から、コア層Lcの気孔率は、25%(0.25)以上が好ましく、30%(0.30)以上がより好ましい。剛性及び強度の観点から、コア層Lcの気孔率は、80%(0.80)以下が好ましく、70%(0.70)以下がより好ましく、60%(0.60)以下が更に好ましく、50%(0.50)以下が特に好ましい。
【0071】
スキン層Lsとコア層Lcとを有するポーラス部材の製造方法は限定されない。この製造方法として、スキン層Ls用の材料とスキン層Ls用の材料とをそれぞれ別々に成形した後、それらを一体化させてポーラス部材を得る方法が例示される。
【0072】
スキン層Lsの厚みTsは限定されない。換言すれば、第一のスキン層Lsの厚みTs1及び第二のスキン層Lsの厚みTs2は限定されない。ポーラス部Psの比重を小さくする観点から、スキン層Lsの厚みTsは、コア層Lcの厚みTcよりも薄いのが好ましい。ポーラス部Psの比重を小さくする観点から、厚みTsは、0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。ポーラス部Psの剛性を高める観点から、厚みTsは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
【0073】
コア層Lcの厚みTcは限定されない。ポーラス部Psの比重を小さくしつつポーラス部Psの剛性を高める観点から、厚みTcは、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。厚みTcの上限値は、ポーラス部Psの設定重量によって適宜設定されるが、例えば1.0mm以下、更には0.8mm以下、更には0.6mm以下とされうる。
【0074】
ポーラス部Psの全厚み中におけるスキン層Lsの厚みの比率(本願において、スキン層比率とも称される)は限定されない。スキン層比率(%)は、次の式によって算出される。
スキン層比率(%)=[(Ts1+Ts2)/(Ts1+Ts2+Tc)]×100
【0075】
ポーラス部Psの表層の剛性を大きくして打球音を高める観点からは、スキン層比率は、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上が更に好ましい。ポーラス部Psの厚みを大きくしてポーラス部Psの剛性を上げる観点からは、スキン層比率は、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましく、50%以下が更に好ましい。
【0076】
前述したように、ソールに配置されたポーラス部Psは、一次固有振動数を高めうる。高い打球音の観点から、ソール面積Asのうち、上記全厚み部の占める面積Apの割合Raは、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。この割合Raは、100%であってもよい。
【0077】
ヘッド体積は限定されない。大型ヘッドは、打球音が低くなりやすい。よって、大型ヘッドにおいて、打球音を高くする効果が顕在化しやすい。この観点から、ヘッド体積は、400cc以上が好ましく、420cc以上がより好ましく、440cc以上がより好ましい。ゴルフクラブに関する規則を遵守する観点から、ヘッド体積は470cc以下が好ましく、10ccの測定誤差を考慮すると、460cc±10ccが特に好ましい。
【0078】
一次モードの固有振動数F1が高い場合、実際の打撃における打球音も高くなりやすい。この観点から、この固有振動数F1は、2000Hz以上が好ましく、2500Hzがより好ましく、2700Hz以上がより好ましい。なお、固有振動数F1が過度に高い場合、反発性能が低下する場合があり、また、ヘッド設計上の制限もある。これらの観点から、固有振動数F1は、5000Hz以下、更には4000Hz以下とすることもできる。
【0079】
ソールが薄いヘッドの場合、ポーラス部Psに起因する効果が顕在化しやすい。この観点から、ポーラス部Ps以外の部分におけるソールの平均厚さは、1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下がより好ましい。ヘッドの強度の観点から、ポーラス部Ps以外の部分におけるソールの平均厚さは、0.5mm以上が好ましい。
【0080】
非ポーラス部NPsの材質は限定されない。非ポーラス部NPsの材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。非ポーラス部NPsに用いられる上記金属として、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン−ニッケル合金から選ばれる一種以上の金属が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。チタン合金として、6−4チタン(Ti−6Al−4V)、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al等が例示される。前述の通り、本発明は、打球音が大きなヘッドにおいて特に効果的である。この観点から、非ポーラス部NPsの材質は、チタン合金が好ましい。この観点から、ソールの材質は、チタン合金が好ましい。非ポーラス部NPsがチタン合金である場合、ポーラス部Psもチタン合金とされるのが、溶接強度の点で好ましい。
【0081】
ヘッドの製造方法は限定されない。通常、中空のヘッドは、2以上の部材が接合されることにより製造される。好ましいヘッドは、上記ポーラス部材を含む2以上の部材が接合されることにより製造される。各部材の製造方法は限定されず、鋳造、鍛造及びプレスフォーミングが例示される。
【0082】
ポーラス部材の製造方法は限定されず、公知の方法が採用されうる。この製造方法として、金属粉末射出成形法(Metal Powder Injection Molding:MIM)、金属粉末を圧縮成形する方法、金属粉末を焼結成形する方法、溶融金属中にガスを注入する方法、等が例示される。
【0083】
金属粉末射出成形法は、樹脂及び/又はワックスを含むバインダと金属粉末とを混合させて混合体を得る工程と、この混合体を金型内に射出成形する工程と、上記バインダを抜く脱脂工程と、この脱脂工程後に焼結する工程とを含む。
【0084】
これらの製造方法によって成形されうる多孔質金属は、多数の小さい気孔(気孔)を有する金属である。気孔の大きさは、通常、10nm以上1mm以下程度である。剛性及び強度の観点から、気孔の大きさは、100μm以下が好ましい。多孔質金属全体の体積に対する気孔の体積の割合が、気孔率である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0086】
以下の評価Aでは、ヘッドの固有振動数を確認した。また、以下の評価Bでは、スキン層の厚み及びコア層の気孔率が剛性に及ぼす影響を確認した。
【0087】
[評価A:ヘッドの固有振動数]
【0088】
[ヘッドHr(置換ヘッド)]
ソールの厚みが一定とされた他は上記置換ヘッドRp2と同じにして、ヘッドHrの三次元データが作成された。このヘッドHrは、後述するヘッドC1からC4の置換ヘッドである。このヘッドのクラウンの厚さは0.5(mm)とされ、ソールの厚さは0.7mmとされ、ヘッド体積は460ccとされた。ヘッドの材質として、チタン合金が選択された。このチタン合金の物性値は、弾性率が126GPaとされ、密度が4420kg/m3とされ、ポアソン比が0.35とされた。このチタン合金は、等方性弾性体として定義された。ヘッド重量は190.6gとされた。
【0089】
市販のプリプロセッサ(HyperMesh等)を用いて、ヘッドHrを有限の要素にメッシュ分割し、計算モデルを得た。次に、市販の固有値解析ソフトウェアを用いて固有値解析を行い、固有振動数及びモード形状を計算した。メッシュ分割の分割線は、図11に示される。
【0090】
図11は、メッシュ分割されたヘッドHrのシミュレーション結果を示す画像である。図11は、ソール側から見た画像であり、ソールの振動形態が示されている。図11の濃淡は、一次モードの固有振動の形態を示す。濃い部分ほど、振幅が大きい。
【0091】
[ヘッドC1からC4]
上記ヘッドHrを置換ヘッドとする4種類のヘッドが検討された。図12は、これら4種類のヘッドC1、C2、C3及びC4におけるポーラス部Psの位置を示している。
【0092】
図12におけるラインL1は、ヘッドC1のポーラス部Psの輪郭線を示す。このラインL1の内側の全領域RC1がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC1の三次元データが作成された。ヘッドC1の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC1の三次元データが作成された。
【0093】
ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1は、3箇所である。これらの3箇所は、ヘッドHrの一次モードの振動における腹の位置に対応している。ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1は、上記高振幅比領域(振幅比Rhが60%以上の領域)に略等しい。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、15%であった。
【0094】
図12におけるラインL2は、ヘッドC2のポーラス部Psの輪郭線を示す。このラインL2の内側の全領域RC2がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC2の三次元データが作成された。ヘッドC2の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC2の三次元データが作成された。ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2は、ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1よりも広い。ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2は、ヘッドC1におけるポーラス部Psの領域RC1の全てを含む。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、32%であった。
【0095】
図12におけるラインL3は、ヘッドC3のポーラス部Psの輪郭線を示す。ラインL3は、図12において最も薄い部分の外側の輪郭線である。このラインL3の内側の全領域RC3がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC3の三次元データが作成された。ヘッドC3の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC3の三次元データが作成された。ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3は、ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2よりも広い。ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3は、ヘッドC2におけるポーラス部Psの領域RC2の全てを含む。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、64%であった。
【0096】
図12におけるラインL4は、ヘッドC4のポーラス部Psの輪郭線を示す。ラインL4は、図12において最も濃い部分の外側の輪郭線である。このラインL4の内側の全領域RC4がポーラス部Psとされた他は上記ヘッド2と同じにして、ヘッドC4の三次元データが作成された。ヘッドC4の置換ヘッドが上記ヘッドHrとなるように、ヘッドC4の三次元データが作成された。ヘッドC4におけるポーラス部Psの領域RC4は、ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3よりも広い。ヘッドC4におけるポーラス部Psの領域RC4は、ヘッドC3におけるポーラス部Psの領域RC3の全てを含む。ヘッドC4では、ソールの全てがポーラス部Psとされた。ポーラス部Psの上記面積割合Raは、100%であった。
【0097】
ヘッドC1からC4に用いられたポーラス部Psは、図10に示す3層構造とされた。スキン層Lsの気孔率は、0.00%とされた。スキン層Lsの物性は、上記チタン合金と同じとされた。コア層Lcの気孔率として、35%程度を想定した。この想定の下で、コア層Lcの物性を決定した。コア層Lcの物性は、弾性率が37.8GPaとされ、密度が2873kg/m3とされ、ポアソン比が0.35とされた。このコア層Lcの物性は、日本金属学会秋期(第135回)大会講演概要(2004)の第466頁に記載の図「多孔質合金における弾性率と気孔率の関係」を参考として決定した。上記ヘッドHr(ソール厚み0.7mm)が置換ヘッドとなるようにした結果、スキン層Lsの厚みTsは0.20mmとなり、コア層Lcの厚みTcは0.46mmとなった。
【0098】
図13は、上記ヘッドC1、ヘッドC2、ヘッドC3及びヘッドC4のシミュレーション結果を示す。図13は、ソール側から見た画像であり、ソールの振動形態が示されている。図13の濃淡は、一次モードの固有振動の形態を示す。濃い部分ほど、振幅が大きい。
【0099】
シミュレーションの結果、一次モードの固有振動数は次の通りであった。ヘッドHrの固有振動数がFp1は、2743Hzであった。ヘッドC1の固有振動数がF1は、2762Hzであった。ヘッドC2の固有振動数がF1は、2746Hzであった。ヘッドC3の固有振動数がF1は、2792Hzであった。ヘッドC4の固有振動数がF1は、2841Hzであった。ヘッドC1からC4の全てにおいて、一次モードの固有振動数F1は、置換ヘッドHrの固有振動数Fp1よりも大きかった。
【0100】
[評価B:スキン層の厚み及びコア層の気孔率が剛性に与える影響]
重量が一定であるという条件の下で、スキン層の厚みTs及びコア層の気孔率がポーラス部の剛性に与える影響を確認した。
【0101】
このシミュレーションでは、先ず、ベース体Aが考慮された。このベース体Aは、気孔を有さない。ベース体Aの厚みはTであり、密度はρであり、弾性率はEである。このベース体Aでは、気孔が無いので、コア層とスキン層という区別は存在しない。即ちこのベース体Aでは、スキン層の厚みTsが0mmである。上記厚みTは、0.7mmに設定された。密度ρは、4420kg/m3に設定された。Eは126GPaに設定された。
【0102】
次に、多数のテスト体Bが考察された。このテスト体Bの重量及び材質は、上記ベース体Aと同じとされた。テスト体Bは、上記コア層及び上記スキン層を有する。コア層は、気孔を有する。スキン層は、気孔を有さない。スキン層の密度及び弾性率は、上記ベース体Aのそれらと同じである。上記テスト体Bの曲げ剛性と上記ベース体Aの曲げ剛性とが比較された。
【0103】
テスト体Bの厚みhは、次の式で表される。
h=Ts+Ts+Tc
【0104】
テスト体Bの重量が上記ベース体Aの重量と同一であることから、テスト体Bのコア層の厚みTcは、次の式で表される。
Tc=ρ/ρp(T−2×Ts)
ただしρpは、コア層の密度である。
【0105】
長方形断面における断面二次モーメントを考慮すると、テスト体Bの曲げ剛性EIbは、次の式で表される。
EIb=W×{(Ep−E)×Tc3+E×h3}/12
ただし、Wは長方形断面の幅であり、Epはコア層の弾性率である。
【0106】
上記弾性率Eと上記弾性率Epとの関係は、次の式で表される。
Ep=E×(ρp/ρ)α
【0107】
前述した日本金属学会秋期大会講演概要(2004)の第466頁に記載の図を参考とし、上記αを2.79とした。気孔率が0.35の場合に弾性率比[(Ep/E)×100]が30%となるように、上記αが決定された。
【0108】
以上の条件に基づく場合、気孔率と弾性率比(Ep/E)との関係は、図14に示すグラフの通りとなる。
【0109】
テスト体Bにおいて、スキン層の厚みTs及びコア層の気孔率を変化させて、剛性比[EIb/EIa]及びスキン層比率が算出された。上記テスト体Bの曲げ剛性EIbを、上記ベース体Aの曲げ剛性EIaで除することにより、剛性比[EIb/EIa]が算出された。この剛性比の算出結果が下記の表1に示される。スキン層比率の算出結果が、下記の表2に示される。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表1の結果が示すように、スキン層の厚みTs及び気孔率に関わらず、全ての上記テスト体Bにおいて、剛性比は1.00よりも大きい。即ち、表1に示される全てのバリエーションのテスト体Bは、ベース体Aよりも高い曲げ剛性を示した。また、気孔率が高いほど、剛性が向上することが判った。スキン層が無い場合、即ちTsが0の場合であっても、ベース体Aと比較して剛性が向上することが判った。この結果が示すように、ポーラス部は、重量を増加させることなく、曲げ剛性を高める効果を有する。この効果は、打球音の振動数を高くするのに寄与する。
【0113】
表1の結果は、スキン層厚みTsに好適な数値範囲が存在することを示している。表1は、スキン層厚みTsが0.05mm以上0.3mm以下の場合に好ましい剛性が得られうることを示している。表1が示すように、この範囲では、1.3以上の剛性比が得られやすい。更に、スキン層厚みTsが0.15mmの場合、剛性比が極大値を示した。
【0114】
表1と表2との対比により、本実施例での好ましいスキン層比率(%)が理解されうる。即ち、高い剛性比を実現しうるスキン層比率が好ましい。この観点から、スキン層比率(%)は、8%以上が好ましく、80%以下が好ましい。コア層の気孔率が0.2以上0.5以下であり且つスキン層比率(%)が8%以上80%以下の場合、剛性比(表1)が1.21以上と良好である。
【0115】
これらの結果が示すように、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明されたヘッドは、あらゆる中空のゴルフクラブヘッドに適用されうる。
【符号の説明】
【0117】
2・・・ヘッド
4・・・フェース
6・・・クラウン
8・・・ソール
20・・・ポーラス部材
30・・・ヘッド
40・・・ヘッド
Ps・・・ポーラス部
Pt・・・全厚み部
Rp2・・・置換ヘッド
Pe1・・・一次モードの最大振幅点
Ls・・・スキン層
Lc・・・コア層
C1・・・ヘッド
C2・・・ヘッド
C3・・・ヘッド
C4・・・ヘッド
Hr・・・置換ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部と非ポーラス部とを有しており、
このポーラス部が、ソールの少なくとも一部を構成しており、
このポーラス部が、上記ソールの厚みの全体を占める全厚み部を有しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記ポーラス部が、2層のスキン層と、これらスキン層の内側に位置するコア層とを有しており、
上記スキン層の気孔率が、上記コア層の気孔率よりも小さい請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
ソール面積のうち、上記全厚み部の占める面積の割合Raが、15%以上である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記ポーラス部と上記非ポーラス部とが溶接されている請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記ポーラス部に隣接する上記非ポーラス部と同じ材質で上記ポーラス部を置換した置換ヘッドにおいて、一次モードの固有振動数がFp1であるとき、
一次モードの固有振動数F1が、上記置換ヘッドの上記固有振動数Fp1よりも大きい請求項1から4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
ただし、上記置換ヘッドにおける置換部分は、置換された上記ポーラス部と同じ重量であり、その外面が上記ポーラス部の外面と共通であり、且つ、均一の厚みを有する。
【請求項6】
上記置換ヘッドにおいて、一次モードの最大振幅点がPe1であるとき、
この最大振幅点Pe1が、上記全厚み部に位置している請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記置換ヘッドにおいて、一次モードの振動の最大振幅がMa1とされ、この最大振幅Ma1に対する振幅比がRh(%)とされ、この振幅比Rhが60%以上である領域が高振幅比領域とされるとき、
この高振幅比領域の全体に亘って、上記全厚み部が配置されている請求項5又は6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項1】
多孔質金属を含んで一体成形されているポーラス部と非ポーラス部とを有しており、
このポーラス部が、ソールの少なくとも一部を構成しており、
このポーラス部が、上記ソールの厚みの全体を占める全厚み部を有しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記ポーラス部が、2層のスキン層と、これらスキン層の内側に位置するコア層とを有しており、
上記スキン層の気孔率が、上記コア層の気孔率よりも小さい請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
ソール面積のうち、上記全厚み部の占める面積の割合Raが、15%以上である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記ポーラス部と上記非ポーラス部とが溶接されている請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記ポーラス部に隣接する上記非ポーラス部と同じ材質で上記ポーラス部を置換した置換ヘッドにおいて、一次モードの固有振動数がFp1であるとき、
一次モードの固有振動数F1が、上記置換ヘッドの上記固有振動数Fp1よりも大きい請求項1から4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
ただし、上記置換ヘッドにおける置換部分は、置換された上記ポーラス部と同じ重量であり、その外面が上記ポーラス部の外面と共通であり、且つ、均一の厚みを有する。
【請求項6】
上記置換ヘッドにおいて、一次モードの最大振幅点がPe1であるとき、
この最大振幅点Pe1が、上記全厚み部に位置している請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記置換ヘッドにおいて、一次モードの振動の最大振幅がMa1とされ、この最大振幅Ma1に対する振幅比がRh(%)とされ、この振幅比Rhが60%以上である領域が高振幅比領域とされるとき、
この高振幅比領域の全体に亘って、上記全厚み部が配置されている請求項5又は6に記載のゴルフクラブヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−272(P2012−272A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138073(P2010−138073)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]