説明

ゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法

【課題】軽量である上に、充分なねじり剛性と曲げ剛性を有し、打感に優れたゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】本発明のゴルフクラブ用シャフトは、シャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)の配向角度で配向した強化繊維を含有する厚さ0.6mm以下の繊維強化樹脂製のバイアス層11,12,13と、シャフト長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する繊維強化樹脂製のストレート層21,22,23とを各々3層以上備え、バイアス層11,12,13とストレート層21,22,23が交互に配置され、最内の層がバイアス層11であり、最内のバイアス層11以外のバイアス層12,13のいずれか少なくとも1層は、細径端からシャフト全長の5〜50%の長さに亘って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製のゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂によって形成したゴルフクラブ用のシャフトとして、強化繊維の配向方向がシャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)である層を各々貼り合せ、巻き回して形成させたバイアス層と、強化繊維の配向方向がシャフト長手軸方向に対して略平行であるストレート層とを積層したものが知られている。このようなゴルフクラブ用シャフトにおいて、ボール打撃時のシャフトのねじれを抑制して打ち出し方向を正確にし、打感を良好にするために、ねじり剛性を高めるためのバイアス層をストレート層の外側にさらに設けることが提案されている(特許文献1〜4参照)。
しかしながら、特許文献1〜4に記載のゴルフクラブ用シャフトでも、ねじり剛性が不充分になることがあった。
ねじり剛性をさらに高めるためには、例えば、シャフト全体にわたってバイアス層をさらに設けて、バイアス層数を3層にする方法(例えば特許文献5の図8参照)を適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−33872号公報
【特許文献2】特開平9−327536号公報
【特許文献3】特開平11−197277号公報
【特許文献4】特開平8−308969号公報
【特許文献5】実開平4−92270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献5に記載のゴルフクラブ用シャフトでは、ねじり剛性は高くなるものの、重くなってしまうという問題を有していた。
シャフトの質量を増加せずにねじり剛性を上げるためには、シャフトに占めるストレート層の比率を下げ、バイアス層の比を上げることが考えられるが、その場合には、充分な曲げ剛性を得ることができなくなる。
また、ねじり剛性を高くするためには、バイアス層用の強化繊維として比弾性に優れる超高弾性炭素繊維を用いることが考えられるが、超高弾性炭素繊維は破断伸度が小さく、圧縮強度が高くないので衝撃強度などのシャフトの機械的強度が不充分になることがあった。
そこで、本発明は、軽量である上に、充分なねじり剛性と曲げ剛性を有し、ゴルフクラブとしたときの打感に優れるゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、質量増加を招くことなく、シャフトのねじり剛性を高くする方法について検討した。その結果、全てのバイアス層がシャフトの全体にわたって形成されていなくても、一部のバイアス層が細径端側に形成されていれば、シャフトのねじり剛性を充分に高くできることを見出した。そして、その知見に基づき、本発明の課題を解決するべく検討して、以下のゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法を発明した。
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]シャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)の配向角度で配向した強化繊維を含有する厚さ0.6mm以下の繊維強化樹脂製のバイアス層と、シャフト長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する繊維強化樹脂製のストレート層とを各々3層以上備え、
バイアス層とストレート層とを交互に配置し、
最内の層がバイアス層であり、
最内のバイアス層以外のバイアス層のいずれか少なくとも1層を、細径端からシャフト全長の5〜50%の長さに亘って形成してなるゴルフクラブ用シャフト。
[2]強化繊維が炭素繊維である[1]に記載のゴルフクラブ用シャフト。
[3]シャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)の配向角度で配向した強化繊維を含有する2枚のプリプレグを貼り合わせてなる厚さ0.16mm以下のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグと、シャフト長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有するストレート層形成用プリプレグとを各々3枚以上巻き付ける工程を有し、
前記工程では、最内にバイアス層形成用貼り合わせプリプレグを配置し、
最内のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ以外のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグの少なくとも1つを、細径端からシャフト全長の5〜50%の長さに亘って配置するゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、軽量である上に、充分なねじり剛性と曲げ剛性を有し、ゴルフクラブとしたときの打感に優れる。
本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法によれば、軽量である上に、充分なねじり剛性と曲げ剛性を有し、ゴルフクラブとしたときの打感に優れるゴルフクラブ用シャフトを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のシャフトの一実施形態例を示す側面図である。
【図2】図1のA−A’断面の拡大図である。
【図3】図1のB−B’断面の拡大図である。
【図4】図1のC−C’断面の拡大図である。
【図5】本発明のシャフトの製造方法の一実施形態例で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。
【図6】実施例1で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。
【図7】ねじれ角度の測定方法を示す図である。
【図8】比較例1で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。
【図9】比較例2で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ゴルフクラブ用シャフト>
本発明のゴルフクラブ用シャフト(以下、シャフトと略す。)の一実施形態例について説明する。
図1〜図4に、本実施形態例のシャフトを示す。本実施形態例のシャフト10は、一端(細径端10a)から他端(太径端10b)に向かって漸次拡径しているものであり、最も内側の層がバイアス層で、外側に向かってバイアス層とストレート層とを交互に各々3層有する。すなわち、同心円状に、第1のバイアス層11、第1のストレート層21、第2のバイアス層12、第2のストレート層22、第3のバイアス層13、第3のストレート層23を内側から順に有する。
バイアス層およびストレート層が各々3層以上であることにより、ねじり剛性および曲げ剛性が充分になる。最も内側の層がバイアス層であることにより、曲げ剛性が充分になる。
【0010】
また、本実施形態例では、図2に示すように、第3のストレート層23の表面の細径端10a側の部分には、補強層24を有し、さらに、補強層24の表面には、仕上げ研磨後に所定の外径を確保できるようにするための外径調整層25を有する。
【0011】
各バイアス層11,12,13は、繊維強化樹脂製の層であり、シャフト10の軸方向に対して+α°の配向角度で配向した強化繊維と、シャフト10の軸方向に対して−α°の配向角度で配向した強化繊維とを含有する。ここで、α°は、20°〜70°である。通常、正の配向角度および負の配向角度の絶対値は同一である。
α°が20°より小さいと、シャフト10の曲げ剛性が高くなるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎる。また、α°が70°より大きいと、シャフト10の潰し剛性が高くなるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎてしまう。
【0012】
また、各バイアス層11,12,13は、厚さ0.6mm以下、好ましくは0.45mm以下である。各バイアス層11,12,13の厚さが0.60mm以下であることにより、シャフト10を軽量化することが可能となる。
また、各バイアス層11,12,13の厚さは、充分なねじり剛性を得るためには、0.10mm以上であることが好ましい。
【0013】
図2は、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の6%の長さの部分の断面図、図3は、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の51%の長さの部分の断面図、図2は、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の95%の長さの部分の断面図である。これら図2〜4に示すように、本実施形態例における第3のバイアス層13は、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の5〜50%の長さに亘って形成されたものである。以下、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の5〜50%の長さに亘って形成されたバイアス層のことを、短尺バイアス層という。
第3のバイアス層13が、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の5%以上の長さに亘って形成されていることにより、ねじり剛性を高めることができる。また、第3のバイアス層13が、シャフト10の細径端10aからシャフト10の全長の50%以下の長さに亘って形成されていることにより、シャフト10の質量増加を抑制できる。
【0014】
短尺バイアス層である第3のバイアス層13については、シャフト10の軸方向に対する強化繊維の配向角度が+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°である)であることが好ましい。第3のバイアス層13の強化繊維のα°が20°以上70°以下であれば、ねじり剛性をより向上させることができる。
本実施形態における第1のバイアス層11および第2のバイアス層12は、シャフト10のシャフト長手軸方向の全体にわたって配置されている。
【0015】
各ストレート層21,22,23は、繊維強化樹脂の層であり、シャフト10の軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する。強化繊維がシャフト10の軸方向に略平行に配向していることで、曲げ剛性を高くすることができる。
また、各ストレート層21,22,23の厚さは0.06〜0.25mmであることが好ましく、0.08〜0.15mmであることがより好ましい。各ストレート層21,22,23の厚さが0.06mm以上であれば、曲げ剛性をより向上させることができ、0.25mm以下であれば、シャフト10を充分に軽量化できる。
第1のストレート層21、第2のストレート層22および第3のストレート層23は、シャフト10の長手方向の全体にわたって形成されている。
【0016】
バイアス層11,12,13およびストレート層21,22,23を構成する樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
バイアス層11,12,13およびストレート層21,22,23を構成する強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。これらの中でも比強度および比弾性に優れることから、炭素繊維が好ましい。
また、バイアス層11,12,13を構成する強化繊維として炭素繊維を用いる場合には、引張弾性率が280〜500GPaの炭素繊維を用いることが好ましい。ここで、引張弾性率はJIS R 7608に準拠して測定された値である。
炭素繊維の引張弾性率が280GPa以上であれば、ねじり剛性をより向上させることができ、500GPa以下であれば、シャフトにした時の衝撃強度を高く保つことができる。
また、バイアス層11,12,13における繊維体積含有率は、ねじり剛性をより高くできることから、60%以上が好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、バイアス層11,12,13における繊維体積含有率は、マトリックス樹脂と補強繊維との密着を十分にするためにはある程度の樹脂量が必要であることから、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0017】
補強層24および外径調整層25は、目的の機能を果たすような寸法にされていること以外はストレート層21,22,23と同様のもので構成される。
【0018】
上述したシャフト10では、細径端10aからシャフト全長の5〜50%の長さに亘って形成されている第3のバイアス層13によって、ねじり剛性を向上させることできる。しかも、第3のバイアス層13はシャフト全長の5〜50%の長さであるから、シャフト10を軽量化できる。
また、バイアス層およびストレート層を各々3層備えているため、ねじり剛性および曲げ剛性を充分に高くできる。特に、最内の層がバイアス層11であり、各バイアス層11,12,13がα°が70°以下の強化繊維を含有するから、曲げ剛性がとりわけ高くなっている。
さらに、バイアス層11,12,13とストレート層21,22,23とが交互に配置されているため、ねじり剛性と曲げ剛性のバランスを向上させることができる。このようなシャフトを用いたゴルフクラブは打感に優れる。
【0019】
<シャフトの製造方法>
次に、上記シャフト10の製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例のシャフト10の製造方法は、図5に示すような、直径が漸次拡径する部分31を有するマンドレル30にプリプレグを巻き付けて、シャフト10を得る方法である。
具体的には、まず、マンドレル30に、図5に示すような、第1のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a、第1のストレート層形成用プリプレグ21a、第2のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ12a、第2のストレート層形成用プリプレグ22a、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13a、第3のストレート層形成用プリプレグ23aを内側から順に1枚ずつ巻き付ける。ここで、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aとストレート層形成用プリプレグ21a,22a,23aを交互に配置しない場合には、得られるシャフト10のねじり剛性と曲げ剛性のバランスが損なわれることがある。
次いで、第3のストレート層形成用プリプレグ23aの表面の、細径端側の部分に、補強層形成用プリプレグ24aを巻き付け、さらに補強層形成用プリプレグ24aの表面に外径調整層形成用プリプレグ25aを巻き付けて、未硬化の成形品を得る。
次いで、未硬化の成形品を、加熱炉等を用いて加熱し、樹脂成分を硬化させて、シャフト10を得る。
【0020】
上記製造方法で用いるバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aは、得られるシャフト10の軸方向に対して+α°で配向した強化繊維と、−α°で配向した強化繊維とを含有するプリプレグである。ここで、α°は、20°〜70°である。
α°が20°以上70°以下であることにより、得られるシャフト10のねじり剛性が充分高いものとなる。
シャフト10の軸方向に対する強化繊維の配向角度を+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)にするためには、マンドレル30の軸方向に対する強化繊維の配向角度を+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)にする。
【0021】
本実施形態例における第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aは短尺バイアス層を形成するためのプリプレグ、すなわち、シャフト10の細径端10aからシャフト全長の5〜50%の長さに亘ってバイアス層を形成するプリプレグである。第3のバイアス層形成用プリプレグ13aは、シャフト10の細径端10aからシャフト全長の5%〜50%の長さに亘って配置される。第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aが、シャフト10の細径端10aからシャフト全長の5%より小さいと、得られるシャフト10のねじり剛性の向上が得られず、また、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aが、シャフト10の細径端10aからシャフト全長の50%より大きいと、得られるシャフト10の質量が大きくなってしまう。
【0022】
また、各バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aは、厚さ0.16mm以下、好ましくは0.12mm以下である。各バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aの厚さが0.16mmを超えると、得られるシャフト10が重くなる傾向にある。
また、各バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aの厚さは、得られるシャフト10のねじり剛性を充分に向上させるためには、0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましい。
【0023】
ストレート層形成用プリプレグ21a,22a,23aは、得られるシャフト10の軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する。強化繊維がシャフト10の軸方向に略平行に配向していることで、得られるシャフト10の曲げ剛性を高くできる。
【0024】
バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aおよびストレート層形成用プリプレグ21a,22a,23aは、強化繊維が一方向に引き揃えられた一方向プリプレグを、シャフト10の形状が形成され、かつ、所定の方向に強化繊維が配向するように裁断し、必要に応じて複数を組み合わせることにより得られる。例えば、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aについては、シャフト10の軸方向に対して+α°の範囲内の配向角度で配向した強化繊維を含有するプリプレグと、−α°の範囲内の配向角度で配向した強化繊維を含有するプリプレグとを組み合わせることで得られる。ここで、α°は、20°〜70°である。
通常、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12aおよびストレート層形成用プリプレグ21a,22a,23aは、拡径する部分を有してもシャフト10の断面が円形になるようにするために、細径端10aになる側の幅が狭くなっている。
【0025】
上記製造方法では、必要に応じて、樹脂成分硬化後に仕上げ研磨加工を施してもよい。本実施形態例の製造方法では、第3のバイアス層13の表面に第3のストレート層23が形成されるから、研磨加工を施しても、第3のバイアス層13が除去されることはない。
【0026】
以上説明した製造方法では、第2のストレート層形成用プリプレグ22aと第3のストレート層形成用プリプレグ23aとの間に、細径端10aからシャフト全長の5〜50%の長さに亘って第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aを配置するため、得られるシャフト10のねじり剛性が充分高いものとなる。しかも、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aはシャフト全長の5〜50%の長さであるから、得られるシャフト10を軽量化できる。
また、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグおよびストレート層形成用プリプレグを各々3枚用いるため、得られるシャフト10のねじり剛性と曲げ剛性を充分に高くできる。特に、最内にバイアス層形成用プリプレグ11aを用い、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aが配向角度70°以下の強化繊維および配向角度−70°以上の強化繊維を含有するから、得られるシャフト10の曲げ剛性をとりわけ高くできる。
さらに、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a,12a,13aとストレート層形成用プリプレグ21a,22a,23aとを交互に配置するため、ねじり剛性と曲げ剛性のバランスを向上させることができる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態例に限定されない。例えば、バイアス層およびストレート層は各々3層である必要はなく、4層以上であってもよい。4層以上である場合にも、最内の層をバイアス層にする。
また、短尺バイアス層が第3のバイアス層でなく、第2のバイアス層であってもよいし、第2のバイアス層および第3のバイアス層の両方であってもよい。バイアス層が4層以上ある場合には、第1のバイアス層以外のバイアス層の少なくとも1つが短尺バイアス層であればよい。
また、本発明のシャフトでは、補強層24および外径調整層25の一方または両方を有していなくても構わない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
以下の例にて使用したプリプレグを表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例)
図6に示すような、細径端部の外径が4.40mmであり、細径端部から1100mmの位置までの外径がテーパー度7.91/1000で漸増して細径端部から1100mmの位置の外径が13.10mmとなり、細径端部から1100mmの位置〜細径端端部から1500mmの位置は13.10mmの一定の外径を有するマンドレル30を用いた。
マンドレル30の細径端部から110mmの位置〜細径端部から1300mmの位置の範囲に、2枚のプリプレグAからなる台形状の第1のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a(配向角度+45°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度−45°の強化繊維を含有するプリプレグとを貼り合わせて得た1枚のプリプレグ)、プリプレグBからなる台形状の第1のストレート層形成用プリプレグ21a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、2枚のプリプレグAからなる台形状の第2のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ12a(配向角度+45°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度−45°の強化繊維を含有するプリプレグとを貼り合わせて得た1枚のプリプレグ)、プリプレグCからなる台形状の第2のストレート層形成用プリプレグ22a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、2枚のプリプレグAからなる第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13a(配向角度+45°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度−45°の強化繊維を含有するプリプレグとを貼り合わせて得た1枚のプリプレグ)、プリプレグDからなる台形状の第3のストレート層形成用プリプレグ23a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)を順に巻き付けた。ここで、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ13aは、細径端10aからシャフト全長の8%の長さまでの範囲にバイアス層を形成するものとした。
次いで、第3のストレート層形成用プリプレグ23aの表面の、細径端側の部分に、プリプレグEからなる補強層形成用プリプレグ24a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)を巻き付けた。さらに、補強層形成用プリプレグ24aの表面に、プリプレグEからなる外径調整層形成用プリプレグ25a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)を巻き付けて、未硬化の成形品を得た。
次いで、幅20mm、厚さ0.03mmのポリプロピレン製のテープを1.5mm間隔で巻き付けて未硬化の成形品を固定した後、加熱炉を用い、145℃で2時間加熱し、樹脂成分を硬化させた。その後ポリプロピレン製のテープを外し、両端を各11mmカットして全長を1168mmとし、さらに表面の研磨を行ってシャフト10を得た。
【0031】
得られたシャフトについて、ねじれ角度(ねじれ角度が小さい程、ねじり剛性が大きい。)、曲げ剛性、打感(フィーリング)を以下のように評価した。評価結果を表2に示す。
[ねじれ角度]
図7に示すように、シャフト細径端部から1035mmの位置〜シャフト細径端部から1067mmの位置までを第1のチャック(幅32mm)51で固定し、シャフト細径端部〜細径端部から50mmの位置までを第2のチャック(幅50mm)52で固定した。第2のチャック52に重りを取り付けて13.8kgf・cmのトルクを負荷した時のねじれ角度を測定した。
[曲げ剛性]
曲げ剛性EIは、測定点(細径端より525mmの位置)を中心に太径端側に150mmの位置と細径端側に150mmの位置に支点(支点に設置された支持治具の半径:10mm)を設置し、測定点(測定点に設置された荷重圧子治具の半径:75mm)にかける荷重を試験速度5mm/分にて増やしていき、98Nと196Nの荷重を与えた時のシャフトのたわみ量δ10(mm)とδ20(mm)を測定し、以下の式により求めた。
EI=(△P/L)/(48・△δ)
EI:曲げ剛性(N・mm
△P:196N−98N=98N
L:支点間距離(mm)
△δ:δ20−δ10(mm)
[打感(フィーリング)]
得られたシャフトに質量200g、体積460cm、ロフト角9.5°の市販のチタン製ドライバークラブ用ヘッドと質量52gの市販のグリップをクラブ長さが45インチなるように装着した。そして、ゴルフ熟練者が実打し、ボールを打った際の打感(フィーリング)を評価した。
【0032】
【表2】

【0033】
(比較例1)
図8に示すように、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグを用いて、シャフト全長にわたって第3のバイアス層を形成したことと、第2のストレート層形成用プリプレグをプリプレグFにした以外は実施例と同様にしてシャフトを得た。得られたシャフトについて、実施例と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0034】
(比較例2)
図9に示すように、第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグを省いたこと以外は実施例と同様にしてシャフトを得た。得られたシャフトについて、実施例と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0035】
実施例では、質量増加を招くことなく、シャフトのねじり剛性および曲げ剛性を充分に高くでき、得られたシャフトを用いたゴルフクラブの打感は良好であった。
これに対し、比較例1では、ねじり剛性を高くできたものの、質量の増加が大きく、また打感(フィーリング)が硬く、良好な結果が得られなかった。
また、比較例2では、質量の増加は無く打ち易かったが、ねじり剛性が不足し、方向性の面で良好な結果を得られなかった。
【符号の説明】
【0036】
10 シャフト(ゴルフクラブ用シャフト)
10a 細径端
10b 太径端
11 第1のバイアス層
11a 第1のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ
12 第2のバイアス層
12a 第2のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ
13 第3のバイアス層
13a 第3のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ
21 第1のストレート層
21a 第1のストレート層形成用プリプレグ
22 第2のストレート層
22a 第2のストレート層形成用プリプレグ
23 第3のストレート層
23a 第3のストレート層形成用プリプレグ
24 補強層
24a 補強層形成用プリプレグ
25 外径調整層
25a 外径調整層形成用プリプレグ
30 マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)の配向角度で配向した強化繊維を含有する厚さ0.6mm以下の繊維強化樹脂製のバイアス層と、シャフト長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する繊維強化樹脂製のストレート層とを各々3層以上備え、
バイアス層とストレート層とを交互に配置し、
最内の層がバイアス層であり、
最内のバイアス層以外のバイアス層のいずれか少なくとも1層を、細径端からシャフト全長の5〜50%の長さに亘って形成してなるゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
強化繊維が炭素繊維である請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
シャフト長手軸方向に対して+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)の配向角度で配向した強化繊維を含有する2枚のプリプレグを貼り合わせてなる厚さ0.16mm以下のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグと、シャフト長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有するストレート層形成用プリプレグとを各々3枚以上巻き付ける工程を有し、
前記工程では、最内にバイアス層形成用貼り合わせプリプレグを配置し、
最内のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ以外のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグの少なくとも1つを、細径端からシャフト全長の5〜50%の長さに亘って配置するゴルフクラブ用シャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−147543(P2011−147543A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10238(P2010−10238)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】