ゴルフクラブ用シャフト
【課題】軽量且つ高強度なシャフトの提供。
【解決手段】このシャフト6は、複数の層を有している。上記層が、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでいる。上記層が、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでいる。上記全長層が、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでいる。上記全長バイアス層が、上記全長層のなかで最も内側に位置している。上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層である。
【解決手段】このシャフト6は、複数の層を有している。上記層が、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでいる。上記層が、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでいる。上記全長層が、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでいる。上記全長バイアス層が、上記全長層のなかで最も内側に位置している。上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用シャフトとして、いわゆるカーボンシャフトが知られている。このカーボンシャフトの製造方法として、シートワインディング製法が知られている。このシートワインディング製法では、プリプレグ(プリプレグシート)をマンドレルに巻き付けることにより、積層構造が得られる。このシートワインディング製法では、シートの種類、シートの配置及び繊維の配向が選択されうる。よって、高い設計自由度が得られる。
【0003】
プリプレグは、樹脂と繊維とを含む。プリプレグには多くの種類がある。樹脂含有率が異なる複数のプリプレグが知られている。なお本願では、プリプレグを、プリプレグシート又はシートともいう。
【0004】
特許第3235964号公報に記載の管状体では、斜行繊維本体層及び軸長繊維本体層として、合成樹脂含侵量が10wt%以上25wt%未満のプリプレグが用いられている。この発明では、斜行繊維本体層と軸長繊維本体層との間に、合成樹脂含侵量の多い薄肉厚層が形成されている。
【0005】
特開平11−206934号公報は、軸長方向繊維層及び斜方向繊維層の少なくとも一方が、樹脂含侵量が10〜24wt%の低樹脂含侵量のプリプレグで構成され、このプリプレグによって形成される層の内・外層側に、前記プリプレグよりも樹脂含侵量が10wt%以上多い高樹脂含侵量のプリプレグによる層が形成されたシャフトを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3235964号公報
【特許文献2】特開平11−206934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂含有率が低いプリプレグは、シャフトの軽量化に寄与しうる。しかし、樹脂含有率が低いプリプレグは、タック性(粘着性、くっつきやすさ)が低いため、シート端部の貼り付け(端付け)が行いにくい。このため、巻回工程において、皺やズレが生じやすい。更に、巻回後に、シートの剥がれが生じやすい。これらの不具合は、生産性の低下、ボイドの発生、強度低下等を招来しうる。
【0008】
樹脂含有率が低いプリプレグは、繊維間の樹脂が少ないため、裂けやすい。この裂けは、繊維方向に沿って生じる。特に、ローリングマシンによって巻回する場合、シートの裂けが生じやすい。
【0009】
樹脂含有率が低いプリプレグでは、層間はく離が生じやすい。この層間はく離は、シャフト強度を低下させうる。
【0010】
本発明の目的は、軽量で強度に優れたゴルフクラブシャフトの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、複数の層を有している。上記層は、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでいる。上記層は、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでいる。上記全長層は、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでいる。上記全長バイアス層は、上記全長層のなかで最も内側に位置している。上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層である。ただし、上記高RC層とは、樹脂含有率が24質量%以上のプリプレグによって形成された層であり、上記低RC層とは、樹脂含有率が20質量%以下のプリプレグによって形成された層である。
【0012】
好ましくは、上記全長バイアス層の全てが上記低RC層である。
【0013】
好ましくは、上記全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。
【0014】
好ましくは、上記低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上である。
【0015】
好ましくは、シャフト質量が45g以下である。
【0016】
好ましくは、上記シャフトは、低RCプリプレグと高RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる高低合体シートが用いられてなる。
【0017】
好ましくは、上記高低合体シートは、上記高RCプリプレグを内側にして巻回されている。
【0018】
好ましくは、上記低RCプリプレグが上記ストレート層を形成しており、上記高RCプリプレグが上記フープ層を形成している。
【発明の効果】
【0019】
軽量で強度に優れたゴルフクラブシャフトが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトを備えたゴルフクラブを示す。
【図2】図2は、第1実施形態の展開図である。図2は、実施例1の展開図でもある。
【図3】図3は、合体シートが作製された後における、第1実施形態の展開図である。図3は、実施例1の展開図でもある。
【図4】図4は、第1実施形態に係るシャフトの断面図である。
【図5】図5は、実施例2の展開図である。
【図6】図6は、実施例3の展開図である。
【図7】図7は、比較例1の展開図である。
【図8】図8は、比較例2の展開図である。
【図9】図9は、比較例3の展開図である。
【図10】図10は、比較例4の展開図である。
【図11】図11は、比較例5の展開図である。
【図12】図12は、比較例6の展開図である。
【図13】図13は、三点曲げ強度の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
なお本願では、「層」という文言と、「シート」という文言とが用いられる。「層」は、巻回された後における称呼であり、これに対して「シート」は、巻回される前における称呼である。「層」は、「シート」が巻回されることによって形成される。即ち、巻回された「シート」が、「層」を形成する。
【0023】
本願において「内側」とは、シャフト半径方向における内側を意味する。本願において「外側」とは、シャフト半径方向における外側を意味する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブシャフト6を備えたゴルフクラブ2の全体図である。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。シャフト6の先端部に、ヘッド4が設けられている。シャフト6の後端部に、グリップ8が設けられている。なおヘッド4及びグリップ8は限定されない。ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、アイアン型ゴルフクラブヘッド、パターヘッド等が例示される。
【0025】
シャフト6は、繊維強化樹脂層の積層体からなる。シャフト6は、管状体である。後述される図4が示すように、シャフト6は中空構造を有する。図1が示すように、シャフト6は、チップTpとバットBtとを有する。チップTpは、ヘッド4の内部に位置している。バットBtは、グリップ8の内部に位置している。
【0026】
シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグ以外のプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。
【0027】
プリプレグシートは、繊維と樹脂とを有している。この樹脂は、マトリクス樹脂とも称される。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。
【0028】
シャフト6は、いわゆるシートワインディング製法により製造されている。プリプレグにおいて、マトリクス樹脂は、半硬化状態にある。シャフト6は、プリプレグシートが巻回され且つ硬化されてなる。この硬化とは、半硬化状態のマトリクス樹脂を硬化させることである。この硬化は、加熱により達成される。シャフト6の製造工程には、加熱工程が含まれる。この加熱工程により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。
【0029】
図2は、シャフト6を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト6は、複数枚のシートにより構成されている。図2の実施形態では、シャフト6は、a1からa10までの10枚のシートにより構成されている。本願において、図2等で示される展開図は、シャフトを構成するシートを、シャフトの半径方向内側から順に示している。展開図において上側に位置しているシートから順に巻回される。本願の展開図において、図面の左右方向は、シャフト軸方向と一致する。本願の展開図において、図面の右側は、シャフトのチップTp側である。本願の展開図において、図面の左側は、シャフトのバットBt側である。
【0030】
本願の展開図は、各シートの巻き付け順序のみならず、各シートのシャフト軸方向における配置をも示している。例えば図2において、シートa1の一端はチップTpに位置している。
【0031】
シャフト6は、ストレート層とバイアス層とを有する。本願の展開図において、繊維の配向角度が記載されている。「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。ストレート層用のシートは、本願においてストレートシートとも称される。
【0032】
ストレート層は、繊維の配向がシャフトの長手方向(シャフト軸方向)に対して実質的に0°とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に平行とはならない。ストレート層において、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaは、10°以下である。絶対角度θaとは、シャフト軸線と繊維方向との成す角度の絶対値である。即ち、絶対角度θaが10°以下とは、繊維方向とシャフト軸線方向とのなす角度Afが、−10度以上+10度以下であることを意味する。
【0033】
図2の実施形態において、ストレートシートは、シートa1、シートa5、シートa7、シートa8、シートa9及びシートa10である。ストレート層は、シャフトの曲げ剛性及び曲げ強度との相関が高い。
【0034】
バイアス層は、主として、シャフトの捻れ剛性及び捻れ強度を高める目的で設けられる。
【0035】
バイアス層は、好ましくは、繊維の配向が互いに逆方向に傾斜した2枚のシートペアから構成されている。好ましくは、バイアス層は、上記角度Afが−60°以上−30°以下の層と、上記角度Afが30°以上60°以下の層とを含む。即ち、好ましくは、バイアス層では、上記絶対角度θaが30°以上60°以下である。
【0036】
シャフト6において、バイアス層を構成するシートは、シートa2及びシートa3である。図2には、シート毎に、上記角度Afが記載されている。角度Afにおけるプラス(+)及びマイナス(−)は、互いに貼り合わされるバイアスシートの繊維が互いに逆方向に傾斜していることを示している。本願において、バイアス層用のシートは、単にバイアスシートとも称される。
【0037】
なお、図2の実施形態では、シートa2が−45度であり且つシートa3が+45度であるが、逆にシートa2が+45度であり且つシートa3が−45度であってもよいことは当然である。
【0038】
ストレート層及びバイアス層以外に、フープ層が設けられるのが好ましい。このフープ層では、上記絶対角度θaが80°以上である。この絶対角度θaの上限値は90°である。
【0039】
好ましくは、フープ層における上記絶対角度θaは、シャフト軸線に対して実質的に90°とされる。ただし、巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に90°とはならない。
【0040】
フープ層は、シャフトのつぶし剛性及びつぶし強度を高めるのに寄与する。つぶし剛性とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する剛性である。つぶし強度とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する強度である。つぶし強度は、曲げ強度とも関連しうる。曲げ変形に連動してつぶし変形が生じうる。特に肉厚の薄い軽量シャフトにおいては、この連動性が大きい。つぶし強度の向上により、曲げ強度も向上しうる。
【0041】
図2の実施形態において、フープ層用のプリプレグシートは、シートa4及びシートa6である。本願において、フープ層用のプリプレグシートは、フープシートとも称される。
【0042】
図示しないが、使用される前のプリプレグシートは、カバーシートにより挟まれている。通常、カバーシートは、離型紙及び樹脂フィルムである。即ち、使用される前のプリプレグシートは、離型紙と樹脂フィルムとで挟まれている。プリプレグシートの一方の面には離型紙が貼られており、プリプレグシートの他方の面には樹脂フィルムが貼られている。以下において、離型紙が貼り付けられている面が「離型紙側の面」とも称され、樹脂フィルムが貼り付けられている面が「フィルム側の面」とも称される。
【0043】
本願の展開図は、フィルム側の面が表側とされた図である。即ち、本願の展開図において、図面の表側がフィルム側の面であり、図面の裏側が離型紙側の面である。例えば図2では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは同じであるが、後述される貼り合わせの際にシートa3が裏返される。この結果、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは互いに逆となる。従って、巻回された後の状態では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とが互いに逆となる。この点を考慮して、図2では、シートa2の繊維方向が「−45°」と表記され、シートa3の繊維方向が「+45°」と表記されている。
【0044】
プリプレグシートを巻回するには、先ず、樹脂フィルムが剥がされる。樹脂フィルムが剥がされることにより、フィルム側の面が露出する。この露出面は、タック性(粘着性)を有する。このタック性は、マトリクス樹脂に起因する。即ち、このマトリクス樹脂が半硬化状態であるため、粘着性が発現する。次に、この露出したフィルム側の面の縁部(巻き始め縁部ともいう)を、巻回対象物に貼り付ける。マトリクス樹脂の粘着性により、この巻き始め縁部の貼り付けが円滑になされうる。巻回対象物とは、マンドレル、又はマンドレルに他のプリプレグシートが巻き付けられてなる巻回物である。次に、離型紙が剥がされる。次に、巻回対象物が回転されて、プリプレグシートが巻回対象物に巻き付けられる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、次に巻き始め端部が巻回対象物に貼り付けられ、次に離型紙が剥がされる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、巻き始め縁部が巻回対象物に貼り付けられた後に、離型紙が剥がされる。この手順により、シートの皺や巻き付け不良が抑制される。これは、離型紙が貼り付けられたシートは、離型紙に支持されているため、皺となりにくいからである。離型紙は、樹脂フィルムと比較して、曲げ剛性が高い。
【0045】
図2の実施形態では、合体シートが用いられる。合体シートは、2枚のシートが貼り合わされることによって形成される。
【0046】
図2の実施形態では、三つの合体シートが形成される。図3は、これら三つの合体シートが形成された後のシート構成を示す。
【0047】
図3が示すように、シートa2とシートa3とが貼り合わせられて、合体シートa23が形成される。合体シートa23において、シートa2の貼り合わせ端部t2と、シートa3の貼り合わせ端部t3とは、半周分ズレている。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t2の周方向位置と、端部t3の周方向位置とは、180°相違している。
【0048】
図3が示すように、シートa4とシートa5とが貼り合わせられて、合体シートa45が形成される。合体シートa45において、シートa4の貼り合わせ端部t4と、シートa5の貼り合わせ端部t5とは、一致している。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t4の周方向位置と、端部t5の周方向位置とは、一致している。
【0049】
図3が示すように、シートa6とシートa7とが貼り合わせられて、合体シートa67が形成される。合体シートa67において、シートa6の貼り合わせ端部t6と、シートa7の貼り合わせ端部t7とは、一致している。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t6の周方向位置と、端部t7の周方向位置とは、一致している。
【0050】
前述の通り、本願では、繊維の配向角度によって、シート及び層が分類される。これに加えて本願では、シャフト長手方向の長さによって、シート及び層が分類される。
【0051】
本願において、シャフト長手方向の全体に配置される層が、全長層と称される。本願において、シャフト長手方向の全体に配置されるシートが、全長シートと称される。巻回された全長シートが、全長層を形成する。
【0052】
一方、本願において、シャフト長手方向において部分的に配置される層が、部分層と称される。本願において、シャフト長手方向において部分的に配置されるシートが、部分シートと称される。巻回された部分シートが、部分層を形成する。
【0053】
本願では、バイアス層である全長層が、全長バイアス層と称される。本願では、ストレート層である全長層が、全長ストレート層と称される。本願では、フープ層である全長層が、全長フープ層と称される。
【0054】
本願では、バイアス層である部分層が、部分バイアス層と称される。本願では、ストレート層である部分層が、部分ストレート層と称される。本願では、フープ層である部分層が、部分フープ層と称される。
【0055】
また本願では、樹脂含有率による分類もなされる。
【0056】
本願において上記高RC層とは、材料プリプレグ(シート)の樹脂含有率が24質量%以上の層である。なお、後述される硬化工程において、マトリクス樹脂の一部は流出しうる。この流出に起因して、完成されたシャフトにおける高RC層の樹脂含有率は、24質量%未満となることがある。
【0057】
本願において上記低RC層とは、材料プリプレグ(シート)の樹脂含有率が20質量%以下の層である。
【0058】
本願において高RCプリプレグとは、樹脂含有率が24質量%以上であるプリプレグシートである。本願において、高RCプリプレグは、高RCシートとも称される。本願において低RCプリプレグとは、樹脂含有率が20質量%以下であるプリプレグシートである。本願において、低RCプリプレグは、低RCシートとも称される。本願において高RC層は、高RCプリプレグにより形成された層である。本願において低RC層は、低RCプリプレグにより形成された層である。
【0059】
市販のプリプレグが用いられる場合、これらの樹脂含有率は、プリプレグメーカーによる公表値である。これらの樹脂含有率は、プリプレグメーカーのカタログに記載されており、当業者に広く知られている。
【0060】
本願では、高RCプリプレグと低RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる合体シートが、高低合体シートと称される。
【0061】
図2(図3)の実施形態において、低RCプリプレグは、シートa2、シートa3、シートa5及びシートa7である。一方、図2(図3)の実施形態において、高RCプリプレグは、シートa1、シートa4、シートa6、シートa8、シートa9及びシートa10である。従って、合体シートa45は高低合体シートであり、合体シートa67も高低合体シートである。
【0062】
図2(図3)の実施形態において、全てのフープシートは、高RCシートである。図2(図3)の実施形態において、全てのフープシートは、低RCシートに貼り合わされて、巻回される。この実施形態において、全ての低RCシートは、高RCシートに貼り合わせられて巻回される。この実施形態において、バイアスシートを除く全ての低RCシートは、ストレートシートである。
【0063】
図2(図3)の実施形態は、全長フープ層(全長フープシート)を含む。全ての全長フープ層が、高RC層である。全ての全長フープ層は、全長ストレート層に貼り合わされて巻回される。
【0064】
以下に、このシャフト6の製造工程の概略が説明される。
【0065】
[シャフト製造工程の概略]
【0066】
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。この工程により、図2に示された各シートが切り出される。
【0067】
なお、裁断は、裁断機によりなされてもよいし、手作業でなされてもよい。手作業の場合、例えば、カッターナイフが用いられる。
【0068】
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、複数のシートが貼り合わされて、前述した合体シートが作製される。
【0069】
貼り合わせ工程では、加熱又はプレスが用いられてもよい。より好ましくは、加熱とプレスとが併用される。後述する巻回工程において、合体シートの巻き付け作業中に、シートのズレが生じうる。このズレは、巻き付け精度を低下させる。加熱及びプレスは、シート間の接着力を向上させる。加熱及びプレスは、巻回工程におけるシート間のズレを抑制する。
【0070】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この粘着性の低下は、合体シートと巻回対象物との接着性を低下させる。この接着性の低下は、皺の発生を許容することがあり、巻き付け位置のズレを生じさせうる。この観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0071】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。シートの粘着性の観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、300秒以下が好ましい。
【0072】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、300g/cm2以上が好ましく、350g/cm2以上がより好ましい。プレスの圧力が過大である場合、プリプレグが押し潰される場合がある。この場合、プリプレグの厚みが設計値よりも薄くなる。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、600g/cm2以下が好ましく、500g/cm2以下がより好ましい。
【0073】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、300秒以下が好ましい。
【0074】
上記合体シートa23は、バイアスシート同士が貼り合わされた合体シートである。この合体シートは、本願において、バイアス合体シートとも称される。上記合体シートa45は、ストレートシートとフープシートとが貼り合わされた合体シートである。この合体シートは、本願において、SF合体シートとも称される。上記合体シートa67も、ストレートシートとフープシートとが貼り合わされた合体シート、即ち、SF合体シートである。
【0075】
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用意される。典型的なマンドレルは、金属製である。このマンドレルに、離型剤が塗布される。更に、このマンドレルに、粘着性を有する樹脂が塗布される。この樹脂は、タッキングレジンとも称される。このマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。このタッキングレジンにより、シート端部をマンドレルに貼り付けることが容易とされている。
【0076】
貼り合せに係るシートに関しては、合体シートの状態で巻回される。即ち、図3の状態とされた各シートが、巻回される。
【0077】
この巻回工程により、巻回体が得られる。この巻回体は、マンドレルの外側にプリプレグシートが巻き付けられてなる。巻回は、例えば、平面上で巻回対象物を転がすことによりなされる。この巻回は、手作業によりなされてもよいし、機械によりなされてもよい。この機械は、ローリングマシンと称される。
【0078】
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、上記巻回体の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このラッピングテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。このラッピングテープにより、巻回体に圧力が加えられる。この圧力はボイドを低減させる。
【0079】
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の巻回体が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の課程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内の空気が排出されうる。ラッピングテープの圧力(締め付け力)により、この空気の排出が促進されている。この硬化により、硬化積層体が得られる。
【0080】
(6)マンドレルの引き抜き工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引き抜き工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。両者の順序は限定されないが、ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレルの引き抜き工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
【0081】
(7)両端カット工程
この工程では、硬化積層体の両端部がカットされる。このカットにより、チップTpの端面及びバットBtの端面が平坦とされる。
【0082】
(8)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、ラッピングテープの跡として残された螺旋状の凹凸が存在する。研磨により、このラッピングテープの跡としての凹凸が消滅し、表面が平滑とされる。
【0083】
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体に塗装が施される。
【0084】
図2及び図3によって示されるシート構成を有し、上記工程によって製造されたシャフト6は、図4に示す積層構造を有する。この図4は、部分層が配置されていない位置におけるシャフト6の断面図を示す。この断面図は、シャフト軸線に沿った断面図である。
【0085】
なお、本願では、層とシートとで同じ符号が用いられる。例えば、シートa1によって形成された層は、層a1とされる。
【0086】
シャフト6において、全長層は、層a2、層a3、層a4、層a5、層a6、層a7及び層a8である。層a2及び層a3は全長バイアス層である。層a4は全長フープ層である。層a5は全長ストレート層である。層a6は全長フープ層である。層a7及び層a8は全長ストレート層である。一方、シャフト6において、部分層は、層a1、層a9及び層a10である。
【0087】
層a4(シートa4)は、1プライである。即ち層a4(シートa4)の巻回数は1である。層a5は、1プライである。層a6は、2プライである。層a7は、2プライである。層a8は、1プライである。
【0088】
シートa4及びシートa5は、合体シートa45として巻回される。この合体シートa45は、シートa4を内側にして巻回される。即ち合体シートa45は、貼り合わせられたシートa4及びシートa5のうち、樹脂含有率の多いシートa4が内側にされて、巻回される。合体シートa45は、高RCシートa4と低RCシートa5とが貼り合わされている。この高低合体シートa45は、高RCシートa4を内側にして巻回される。樹脂含有率の多いシートが内側にされることで、端付けが容易となり、巻回の不具合が生じにくい。
【0089】
シートa6及びシートa7は、合体シートa67として巻回される。この合体シートa67は、シートa6を内側にして巻回される。即ち合体シートa67は、貼り合わせられたシートa6及びシートa7のうち、樹脂含有率の多いシートa6を内側にして巻回される。合体シートa67は、高RCシートa6と低RCシートa7とが貼り合わされている。この高低合体シートa67は、高RCシートa6を内側にして巻回される。樹脂含有率の多いシートが内側にされることで、端付けが容易となり、巻回の不具合が生じにくい。
【0090】
シートa6及びシートa7は、2プライである。合体シートa67の状態で巻回されているので、図4に示すように、層a6と層a7とが交互に配置される。
【0091】
シャフト6では、全長バイアス層a2、a3が、上記全長層のなかで最も内側に位置している。なお、全長バイアス層a2、a3は、合体シートa23の状態で巻回されているため、図4の断面図において、層a2と層a3とが交互に配置されている。合体シートa23の状態で巻回された層が、層a23とも称される。
【0092】
シャフト6は、次の構成Xを満たす。
[構成X]:上記全長バイアス層(層a23)よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。
【0093】
具体的には、低RC全長層a5には、高RC全長層a4及び高RC全長層a6が接している。低RC全長層a7には、高RC全長層a6及び高RC全長層a8が接している(図4参照)。全ての低RC全長層について、上記構成Xが満たされている。
【0094】
なお、上記構成Xでは、全長層のみが考慮される。
【0095】
上記構成Xは、巻回工程における端付けを容易とし、巻回のズレを抑制する。よって上記構成Xは、低RC層の存在下において、巻回の不具合を抑制し、生産性を高めうる。また、上記構成Xは、層間はく離を抑制し、シャフト強度を高める。この構成Xでは、軽量で且つ高強度のシャフトが得られうる。
【0096】
上記構成Xは、シャフト長手方向の一部で満たされていてもよい。上記構成Xは、シャフト長手方向の全体に亘って満たされているのが好ましい。上記構成Xは、シャフト周方向の一部で満たされていても良い。上記構成Xは、シャフト周方向の全体に亘って満たされているのが好ましい。シャフト6では、上記構成Xは、シャフト長手方向の全体に亘って満たされており、且つ、シャフト周方向の全体に亘って満たされている。
【0097】
シャフト6は、次の構成Yを満たす。
[構成Y]:上記全長バイアス層(層a23)の外面に接する上記全長層が、高RC層である。
【0098】
具体的には、層a23の外面10には、高RC全長層a4が接している(図4参照)。
【0099】
この構成Yによれば、全長バイアス層が低RC層である場合であっても、層間はく離が起こりにくい。またこの構成Yによれば、全長バイアス層が低RC層である場合であっても、端付けが容易とされる。
【0100】
シャフト6では、全長バイアス層a23が、全長層のなかで最も内側に位置している。この場合、上記タッキングレジンを用いることにより、合体シートa23をマンドレルに容易に端付けすることができる。よって、全長バイアス層a23が低RC層であっても、端付けが容易とされ、巻回の不具合が抑制される。
【0101】
全長バイアス層a23は、上記角度θaが0°ではないため、巻き剥がれが生じやすい。この巻き剥がれは、一旦巻回されたシートが起き上がり、巻回がほどける現象である。この巻き剥がれは、真っ直ぐなろうとする繊維の性質によって生じる。
【0102】
端付けの容易性及び巻き剥がれ抑制の観点から、バイアスシートa23は、加熱された状態で巻回されるのが好ましい。具体的には、巻回時におけるバイアスシートa23の温度T1は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この観点から、上記温度T1は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0103】
シャフト6では、上記全長バイアス層a2、a3の全てが、低RC層とされている。よって、低RC層のプライ数は多い。全長バイアス層が低RC層とされることで、より軽量なシャフト6が実現されている。
【0104】
シャフト6では、全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。具体的には、全長ストレート層a5の樹脂含有率は、全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。同様に、全長ストレート層a7の樹脂含有率は、全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。ストレートシートは、バイアスシートに較べて、巻回しやすい。ストレートシートは、上記角度θaが10°以下であるため、巻き付け方向に対してしなやかであり、巻き剥がれが起こりにくい。よってストレート層は、樹脂含有率が低い場合でも巻回しやすい。樹脂含有率がバイアス層より低いストレート層は、より軽量で且つ巻回精度に優れたシャフトの実現に寄与する。この観点から、最外層以外の全長ストレート層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低いのがより好ましい。
【0105】
シャフト6では、最も外側の全長層が、高RC層とされている。前述した通り、シャフトの外面は通常研磨される。高RC全長層が最外層とされることで、研磨誤差が抑制される。また、研磨に起因する繊維のささくれが抑制される。
【0106】
軽量化の観点から、好ましくは、低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上とされる。より好ましくは、この低RC層の割合が、シャフト質量に対して、55質量%以上、更には60質量%以上、更には65質量%以上である。強度の観点から、この低RC層の割合が、シャフト質量に対して、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0107】
本発明により、シャフト質量が軽量であっても、強度、生産性及び巻回精度に優れたシャフトが得られうる。この観点から、シャフト質量は、45g以下が好ましく、40g以下がより好ましい。
【0108】
タック性の観点から、全長バイアス層の樹脂含有率は、16質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、全長バイアス層の樹脂含有率は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0109】
タック性の観点から、全長ストレート層の樹脂含有率は、12質量%以上が好ましい。シャフトの軽量化の観点から、最外層以外の全長ストレート層の樹脂含有率は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0110】
互いに隣接する低RC全長層と高RC全長層との間の樹脂含有率の差がD1とされる。層間はく離を抑制して強度を高める観点から、この差D1は、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。入手可能なプリプレグ材料の樹脂含有率を考慮すると、上記差D1は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0111】
上記高低合体シートにおいて、低RCシートと高RCシートとの間の樹脂含有率の差D2は、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。差D2が大きくされることで、巻回中における低RCシートと高RCシートとの間のズレが抑制され、巻回精度が向上する。更に低RC層と高RC層との層間強度が向上する。入手可能なプリプレグ材料の樹脂含有率を考慮すると、上記差D2は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0112】
上記高低合体シートの作製(貼り合わせ)において、加熱されるのが好ましい。この加熱により、巻回中における低RCシートと高RCシートとの間のズレが抑制され、巻回精度が向上する。更に低RC層と高RC層との層間強度が向上する。これらの観点から、高低合体シートの貼り合わせ工程における加熱温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この粘着性の低下は、高低合体シートと巻回対象物との接着性を低下させる。この観点から、高低合体シートの貼り合わせ工程における加熱温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0113】
上記実施形態の如く、好ましい形態の一例は、全長ストレート層の少なくとも1層が低RC層である。また、全長バイアス層の全ての層が低RC層であるのが好ましい。また、全長フープ層の全ての層が高RC層であるのが好ましい。また、全ての低RC全長ストレートシートは、高RCシートに貼り合わされてから巻回されるのが好ましい。より好ましくは、全ての低RC全長ストレートシートは、高RCフープシートに貼り合わされてから巻回される。端付け高低合体シートは、低RCシート側を内側にして巻回されるのが好ましい。
【0114】
巻回の容易性の観点から、高低合体シートにおける高RCシートは、薄いのが好ましい。この観点から、高低合体シートにおける高RCシートの厚みは、0.05mm以下が好ましく、0.04mm以下がより好ましい。巻回の容易性の観点から、高低合体シートにおける高RCシートのCF目付は、少ないのが好ましい。この観点から、高低合体シートにおける高RCシートのCF目付は、40g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのがより好ましい。CF目付とは、プリプレグ1m2当たりの繊維質量である。
【0115】
プリプレグシートのマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂の他、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等も用いられ得る。シャフト強度の観点から、マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂が好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0117】
[実施例1]
上記シャフト6と同じ積層構成を有するシャフトが作製された。即ち、図2及び図3で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。製造方法は、上記シャフト6と同じである。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表1に示される。
【0118】
[実施例2]
図5で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートb2と全長バイアスシートb3とを貼り合わせて合体シートb23(図示されず)が作製され、この合体シートb23が巻回された。全長フープシートb4と全長ストレートシートb5とを貼り合わせてSF合体シートb45(図示されず)が作製され、この合体シートb45が巻回された。全長フープシートb6と全長ストレートシートb7とを貼り合わせてSF合体シートb67(図示されず)が作製され、この合体シートb67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表2に示される。
【0119】
この実施例2と上記実施例1との相違は、4枚目のシート及び6枚目のシートの樹脂含有率である。表2に示すように、全長フープシートb4及び全長フープシートb6として、樹脂含有率が25質量%の試作品が用いられた。その他は実施例1と同様にして、実施例2のシャフトを得た。
【0120】
[実施例3]
図6で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートc2と全長バイアスシートc3とを貼り合わせて合体シートc23(図示されず)が作製され、この合体シートc23が巻回された。全長フープシートc4と全長ストレートシートc5とを貼り合わせてSF合体シートc45(図示されず)が作製され、この合体シートc45が巻回された。全長フープシートc6と全長ストレートシートc7とを貼り合わせてSF合体シートc67(図示されず)が作製され、この合体シートc67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表3に示される。
【0121】
この実施例3と上記実施例1との相違は、バイアスシートの樹脂含有率である。表3に示すように、全長バイアスシートc2及び全長バイアスシートc3として、樹脂含有率が25質量%のプリプレグが用いられた。その他は実施例1と同様にして、実施例3のシャフトを得た。
【0122】
[比較例1]
図7で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートd2と全長バイアスシートd3とを貼り合わせて合体シートd23(図示されず)が作製され、この合体シートd23が巻回された。その他のシートについては、貼り合わせはなされなかった。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表4に示される。
【0123】
この比較例1と上記実施例1との相違は、貼り合わせの有無である。すなわちこの比較例1では、バイアスシート以外に貼り合わせはなされなかった。この結果、巻回数が2プライである低RCシートd7に起因して、低RC層d7が2層重なった。その他は実施例1と同様にして、比較例1のシャフトを得た。
【0124】
[比較例2]
図8で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートe2と全長バイアスシートe3とを貼り合わせて合体シートe23(図示されず)が作製され、この合体シートe23が巻回された。全長フープシートe4と全長ストレートシートe5とを貼り合わせてSF合体シートe45(図示されず)が作製され、この合体シートe45が巻回された。全長フープシートe6と全長ストレートシートe7とを貼り合わせてSF合体シートe67(図示されず)が作製され、この合体シートe67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表5に示される。
【0125】
この比較例2と上記実施例1との相違は、低RCシートが用いられていないことである。その他は実施例1と同様にして、比較例2のシャフトを得た。
【0126】
[比較例3]
図9で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートf2と全長バイアスシートf3とを貼り合わせて合体シートf23(図示されず)が作製され、この合体シートf23が巻回された。全長フープシートf5と全長ストレートシートf6とを貼り合わせてSF合体シートf56(図示されず)が作製され、この合体シートf56が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表6に示される。
【0127】
この比較例3と上記実施例1との相違は、積層順序である。実施例1における4枚目のシート(シートa4)が、この比較例3では、7枚目のシート(シートf7)とされている。この結果、バイアス層f23の外面に、低RC層f4が接している。これに対して実施例1においては、バイアス層の外面には高RC層a4が接しており、この高RC層a4の外側に低RC層a5が接している。その他は実施例1と同様にして、比較例3のシャフトを得た。
【0128】
[比較例4]
図10で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートg3と全長バイアスシートg4とを貼り合わせて合体シートg34(図示されず)が作製され、この合体シートg34が巻回された。全長フープシートg6と全長ストレートシートg7とを貼り合わせてSF合体シートg67(図示されず)が作製され、この合体シートg67が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表7に示される。
【0129】
この比較例4と上記実施例1との相違は、積層順序である。実施例1における4枚目のシート(シートa4)が、この比較例4では、2枚目のシート(シートg2)とされている。この結果、全長バイアス層g34は、全長層のなかで最も内側には位置していない。またこの結果、低RC全長層g7と低RC全長層g8とが接している。その他は実施例1と同様にして、比較例4のシャフトを得た。
【0130】
[比較例5]
図11で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートh6と全長バイアスシートh7とを貼り合わせて合体シートh67(図示されず)が作製され、この合体シートh67が巻回された。全長フープシートh3と全長ストレートシートh4とを貼り合わせてSF合体シートh34(図示されず)が作製され、この合体シートh34が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表8に示される。
【0131】
この比較例5と上記実施例1との相違は、積層順序である。この比較例5では、バイアス層h67が外側に位置している。その他は実施例1と同様にして、比較例5のシャフトを得た。
【0132】
[比較例6]
図12で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートj2と全長バイアスシートj3とを貼り合わせて合体シートj23(図示されず)が作製され、この合体シートj23が巻回された。全長フープシートj4と全長ストレートシートj5とを貼り合わせてSF合体シートj45(図示されず)が作製され、この合体シートj45が巻回された。全長フープシートj6と全長ストレートシートj7とを貼り合わせてSF合体シートj67(図示されず)が作製され、この合体シートj67が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表9に示される。
【0133】
この比較例6と上記実施例1との相違は、プリプレグの品種である。この比較例6では、低RCシートが用いられていない。その他は実施例1と同様にして、比較例6のシャフトを得た。
【0134】
これらのシャフトの評価結果が、下記の表10に示される。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
[評価方法]
【0146】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図13は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図13が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって、圧子22が荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。圧子22の下降のスピードは、20mm/minである。圧子22の先端には、シリコーンラバー24が装着されている。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点、A点、B点及びC点とされた。T点は、チップTpから90mmの点である。A点は、チップTpから175mmの点である。B点は、チップTpから525mmの点である。C点は、バットBtから175mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。T点が測定される場合、上記スパンSは、150mmとされる。A点、B点及びC点が測定される場合、上記スパンSは、300mmとされる。この結果が上記表10に示される。
【0147】
[耐久試験]
得られたシャフトに市販のドライバーヘッド及びグリップを装着し、46インチのゴルフクラブを作製した。スイングロボットにこのクラブを装着し、シャフトが破損するまで打球させた。ヘッドスピードは48m/sとされた。破損が発生しない場合、10000回の打球でテストは終了した。スイングロボットとして、ミヤマエ社製の製品名「ショットロボIII」が用いられた。ボールには、SRIスポーツ社製の商品名「ゼクシオ SUPER XD」が用いられた。
【0148】
[振りやすさ]
20名のテスターが上記クラブを使って打球し、打ちやすさを評価した。評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が高いほど評価が高い。20名の評価点の平均が、上記表10に示される。
【0149】
[順式フレックス]
シャフトのバットBtから75mmの位置に、第一支持点を設定した。更に、シャフトのバットBtから215mmの位置に、第二支持点を設定した。第一支持点には、シャフトをを上方から支持する支持体を設けた。第二支持点には、シャフトを下方から支持する支持体を設けた。荷重のない状態において、シャフトのシャフト軸線は略水平とされた。バットBtから1039mmである荷重点に、2.7kgの荷重を鉛直下向きに作用させた。荷重のない状態から、荷重をかけた状態までの荷重点の移動距離(mm)が、順式フレックスとされた。この移動距離は、鉛直方向に沿った移動距離である。この測定値が上記表10に示される。
【0150】
[トルク]
シャフトの後端部をバット治具により回転不能に固定するとともに、シャフトの先端部をチップ治具で把持し、チップTpから40mmの位置に13.9kgf・cmのトルクTrを作用させる。そして、このトルク作用位置でのシャフトの捻れ角(度)が、シャフトトルク値とされた。なお、トルクTrを負荷する際のチップ治具の回転速度は130゜/分以下とし、バット治具とチップ治具との間の軸方向長さは825mmとされた。チップ治具又はバット治具の把持によってシャフトが変形する場合、シャフトの内部に芯材などを入れて測定を行う。この測定値が上記表10に示される。
【0151】
上記表10には、研磨前シャフト質量と研磨後シャフト質量とが示されている。低RC層の割合(質量%)は、研磨前重量に基づいて算出した。これらの値が上記表10に示されている。
【0152】
なお、上記表1から表9では、バイアス層以外の全長層の巻回数(プライ数)が記載されている。
【0153】
実施例1では、低RC層全長層に接する全長層が高RC層であるため、層間強度が高い。このため、三点曲げ強度及び耐久試験が良好であった。また実施例1は軽量であり、打ちやすさも良好であった。
【0154】
実施例2では、高RCフープ層と低RCストレート層との間の樹脂含有率の差(質量%)が小さい(10質量%)であるため、強度が若干低下した。軽量性及び打ちやすさは良好であった。
【0155】
実施例3では、低RC層の割合が少ないため、軽量性及び振りやすさがやや劣るものの、良好な強度が得られた。
【0156】
比較例1では、2プライのシートd7に起因して、低RCストレート層が2層重なっている。このため、強度が低下した。
【0157】
比較例2では、低RC層が存在しないため、軽量性が十分でない。このため振りやすさが低下した。
【0158】
比較例3では、低RCバイアス層の外面に低RC全長層が位置しているため、層間強度が低下した。このため強度評価が悪かった。
【0159】
比較例4では、全長低RCバイアス層g34の外面に全長低RC層g5が接しており、且つ、全長低RC層g7に全長低RC層g8が接している。このため強度評価が悪かった。
【0160】
比較例5では、バイアス層が外側に位置しており、このバイアス層よりも内側にストレート層が配置された。このため順式フレックスが大きくなった。このシャフトでは、撓りが大きすぎて振りにくかった。またこの比較例5では、バイアスシートがマンドレルに直接巻回されなかったので、タッキングレジンによるバイアスシートの端付けができなかった。よって、巻き剥がれが発生しやすかった。この巻き剥がれは、巻回の作業性を低下させ、巻回不良を増加させる。
【0161】
比較例6では、低RC層が存在しないため、シャフトが重くなった。このため振りやすさが低下した。
【0162】
以上説明されたように、本発明の優位性は明らかである。
【0163】
なお、市販されているプリプレグの例が、表11に示される。この表11に記載の樹脂含有率は、プリプレグメーカーから公表されている。これらの樹脂含有率は、本願に適用される。
【0164】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上説明された方法は、ゴルフクラブシャフトに適用されうる。
【符号の説明】
【0166】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10・・・全長バイアス層の外面
20・・・シャフト
Tp・・・シャフトのチップ
Bt・・・シャフトのバット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用シャフトとして、いわゆるカーボンシャフトが知られている。このカーボンシャフトの製造方法として、シートワインディング製法が知られている。このシートワインディング製法では、プリプレグ(プリプレグシート)をマンドレルに巻き付けることにより、積層構造が得られる。このシートワインディング製法では、シートの種類、シートの配置及び繊維の配向が選択されうる。よって、高い設計自由度が得られる。
【0003】
プリプレグは、樹脂と繊維とを含む。プリプレグには多くの種類がある。樹脂含有率が異なる複数のプリプレグが知られている。なお本願では、プリプレグを、プリプレグシート又はシートともいう。
【0004】
特許第3235964号公報に記載の管状体では、斜行繊維本体層及び軸長繊維本体層として、合成樹脂含侵量が10wt%以上25wt%未満のプリプレグが用いられている。この発明では、斜行繊維本体層と軸長繊維本体層との間に、合成樹脂含侵量の多い薄肉厚層が形成されている。
【0005】
特開平11−206934号公報は、軸長方向繊維層及び斜方向繊維層の少なくとも一方が、樹脂含侵量が10〜24wt%の低樹脂含侵量のプリプレグで構成され、このプリプレグによって形成される層の内・外層側に、前記プリプレグよりも樹脂含侵量が10wt%以上多い高樹脂含侵量のプリプレグによる層が形成されたシャフトを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3235964号公報
【特許文献2】特開平11−206934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂含有率が低いプリプレグは、シャフトの軽量化に寄与しうる。しかし、樹脂含有率が低いプリプレグは、タック性(粘着性、くっつきやすさ)が低いため、シート端部の貼り付け(端付け)が行いにくい。このため、巻回工程において、皺やズレが生じやすい。更に、巻回後に、シートの剥がれが生じやすい。これらの不具合は、生産性の低下、ボイドの発生、強度低下等を招来しうる。
【0008】
樹脂含有率が低いプリプレグは、繊維間の樹脂が少ないため、裂けやすい。この裂けは、繊維方向に沿って生じる。特に、ローリングマシンによって巻回する場合、シートの裂けが生じやすい。
【0009】
樹脂含有率が低いプリプレグでは、層間はく離が生じやすい。この層間はく離は、シャフト強度を低下させうる。
【0010】
本発明の目的は、軽量で強度に優れたゴルフクラブシャフトの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、複数の層を有している。上記層は、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでいる。上記層は、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでいる。上記全長層は、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでいる。上記全長バイアス層は、上記全長層のなかで最も内側に位置している。上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層である。ただし、上記高RC層とは、樹脂含有率が24質量%以上のプリプレグによって形成された層であり、上記低RC層とは、樹脂含有率が20質量%以下のプリプレグによって形成された層である。
【0012】
好ましくは、上記全長バイアス層の全てが上記低RC層である。
【0013】
好ましくは、上記全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。
【0014】
好ましくは、上記低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上である。
【0015】
好ましくは、シャフト質量が45g以下である。
【0016】
好ましくは、上記シャフトは、低RCプリプレグと高RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる高低合体シートが用いられてなる。
【0017】
好ましくは、上記高低合体シートは、上記高RCプリプレグを内側にして巻回されている。
【0018】
好ましくは、上記低RCプリプレグが上記ストレート層を形成しており、上記高RCプリプレグが上記フープ層を形成している。
【発明の効果】
【0019】
軽量で強度に優れたゴルフクラブシャフトが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトを備えたゴルフクラブを示す。
【図2】図2は、第1実施形態の展開図である。図2は、実施例1の展開図でもある。
【図3】図3は、合体シートが作製された後における、第1実施形態の展開図である。図3は、実施例1の展開図でもある。
【図4】図4は、第1実施形態に係るシャフトの断面図である。
【図5】図5は、実施例2の展開図である。
【図6】図6は、実施例3の展開図である。
【図7】図7は、比較例1の展開図である。
【図8】図8は、比較例2の展開図である。
【図9】図9は、比較例3の展開図である。
【図10】図10は、比較例4の展開図である。
【図11】図11は、比較例5の展開図である。
【図12】図12は、比較例6の展開図である。
【図13】図13は、三点曲げ強度の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
なお本願では、「層」という文言と、「シート」という文言とが用いられる。「層」は、巻回された後における称呼であり、これに対して「シート」は、巻回される前における称呼である。「層」は、「シート」が巻回されることによって形成される。即ち、巻回された「シート」が、「層」を形成する。
【0023】
本願において「内側」とは、シャフト半径方向における内側を意味する。本願において「外側」とは、シャフト半径方向における外側を意味する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブシャフト6を備えたゴルフクラブ2の全体図である。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。シャフト6の先端部に、ヘッド4が設けられている。シャフト6の後端部に、グリップ8が設けられている。なおヘッド4及びグリップ8は限定されない。ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、アイアン型ゴルフクラブヘッド、パターヘッド等が例示される。
【0025】
シャフト6は、繊維強化樹脂層の積層体からなる。シャフト6は、管状体である。後述される図4が示すように、シャフト6は中空構造を有する。図1が示すように、シャフト6は、チップTpとバットBtとを有する。チップTpは、ヘッド4の内部に位置している。バットBtは、グリップ8の内部に位置している。
【0026】
シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグ以外のプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。
【0027】
プリプレグシートは、繊維と樹脂とを有している。この樹脂は、マトリクス樹脂とも称される。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。
【0028】
シャフト6は、いわゆるシートワインディング製法により製造されている。プリプレグにおいて、マトリクス樹脂は、半硬化状態にある。シャフト6は、プリプレグシートが巻回され且つ硬化されてなる。この硬化とは、半硬化状態のマトリクス樹脂を硬化させることである。この硬化は、加熱により達成される。シャフト6の製造工程には、加熱工程が含まれる。この加熱工程により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。
【0029】
図2は、シャフト6を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト6は、複数枚のシートにより構成されている。図2の実施形態では、シャフト6は、a1からa10までの10枚のシートにより構成されている。本願において、図2等で示される展開図は、シャフトを構成するシートを、シャフトの半径方向内側から順に示している。展開図において上側に位置しているシートから順に巻回される。本願の展開図において、図面の左右方向は、シャフト軸方向と一致する。本願の展開図において、図面の右側は、シャフトのチップTp側である。本願の展開図において、図面の左側は、シャフトのバットBt側である。
【0030】
本願の展開図は、各シートの巻き付け順序のみならず、各シートのシャフト軸方向における配置をも示している。例えば図2において、シートa1の一端はチップTpに位置している。
【0031】
シャフト6は、ストレート層とバイアス層とを有する。本願の展開図において、繊維の配向角度が記載されている。「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。ストレート層用のシートは、本願においてストレートシートとも称される。
【0032】
ストレート層は、繊維の配向がシャフトの長手方向(シャフト軸方向)に対して実質的に0°とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に平行とはならない。ストレート層において、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaは、10°以下である。絶対角度θaとは、シャフト軸線と繊維方向との成す角度の絶対値である。即ち、絶対角度θaが10°以下とは、繊維方向とシャフト軸線方向とのなす角度Afが、−10度以上+10度以下であることを意味する。
【0033】
図2の実施形態において、ストレートシートは、シートa1、シートa5、シートa7、シートa8、シートa9及びシートa10である。ストレート層は、シャフトの曲げ剛性及び曲げ強度との相関が高い。
【0034】
バイアス層は、主として、シャフトの捻れ剛性及び捻れ強度を高める目的で設けられる。
【0035】
バイアス層は、好ましくは、繊維の配向が互いに逆方向に傾斜した2枚のシートペアから構成されている。好ましくは、バイアス層は、上記角度Afが−60°以上−30°以下の層と、上記角度Afが30°以上60°以下の層とを含む。即ち、好ましくは、バイアス層では、上記絶対角度θaが30°以上60°以下である。
【0036】
シャフト6において、バイアス層を構成するシートは、シートa2及びシートa3である。図2には、シート毎に、上記角度Afが記載されている。角度Afにおけるプラス(+)及びマイナス(−)は、互いに貼り合わされるバイアスシートの繊維が互いに逆方向に傾斜していることを示している。本願において、バイアス層用のシートは、単にバイアスシートとも称される。
【0037】
なお、図2の実施形態では、シートa2が−45度であり且つシートa3が+45度であるが、逆にシートa2が+45度であり且つシートa3が−45度であってもよいことは当然である。
【0038】
ストレート層及びバイアス層以外に、フープ層が設けられるのが好ましい。このフープ層では、上記絶対角度θaが80°以上である。この絶対角度θaの上限値は90°である。
【0039】
好ましくは、フープ層における上記絶対角度θaは、シャフト軸線に対して実質的に90°とされる。ただし、巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に90°とはならない。
【0040】
フープ層は、シャフトのつぶし剛性及びつぶし強度を高めるのに寄与する。つぶし剛性とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する剛性である。つぶし強度とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する強度である。つぶし強度は、曲げ強度とも関連しうる。曲げ変形に連動してつぶし変形が生じうる。特に肉厚の薄い軽量シャフトにおいては、この連動性が大きい。つぶし強度の向上により、曲げ強度も向上しうる。
【0041】
図2の実施形態において、フープ層用のプリプレグシートは、シートa4及びシートa6である。本願において、フープ層用のプリプレグシートは、フープシートとも称される。
【0042】
図示しないが、使用される前のプリプレグシートは、カバーシートにより挟まれている。通常、カバーシートは、離型紙及び樹脂フィルムである。即ち、使用される前のプリプレグシートは、離型紙と樹脂フィルムとで挟まれている。プリプレグシートの一方の面には離型紙が貼られており、プリプレグシートの他方の面には樹脂フィルムが貼られている。以下において、離型紙が貼り付けられている面が「離型紙側の面」とも称され、樹脂フィルムが貼り付けられている面が「フィルム側の面」とも称される。
【0043】
本願の展開図は、フィルム側の面が表側とされた図である。即ち、本願の展開図において、図面の表側がフィルム側の面であり、図面の裏側が離型紙側の面である。例えば図2では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは同じであるが、後述される貼り合わせの際にシートa3が裏返される。この結果、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは互いに逆となる。従って、巻回された後の状態では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とが互いに逆となる。この点を考慮して、図2では、シートa2の繊維方向が「−45°」と表記され、シートa3の繊維方向が「+45°」と表記されている。
【0044】
プリプレグシートを巻回するには、先ず、樹脂フィルムが剥がされる。樹脂フィルムが剥がされることにより、フィルム側の面が露出する。この露出面は、タック性(粘着性)を有する。このタック性は、マトリクス樹脂に起因する。即ち、このマトリクス樹脂が半硬化状態であるため、粘着性が発現する。次に、この露出したフィルム側の面の縁部(巻き始め縁部ともいう)を、巻回対象物に貼り付ける。マトリクス樹脂の粘着性により、この巻き始め縁部の貼り付けが円滑になされうる。巻回対象物とは、マンドレル、又はマンドレルに他のプリプレグシートが巻き付けられてなる巻回物である。次に、離型紙が剥がされる。次に、巻回対象物が回転されて、プリプレグシートが巻回対象物に巻き付けられる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、次に巻き始め端部が巻回対象物に貼り付けられ、次に離型紙が剥がされる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、巻き始め縁部が巻回対象物に貼り付けられた後に、離型紙が剥がされる。この手順により、シートの皺や巻き付け不良が抑制される。これは、離型紙が貼り付けられたシートは、離型紙に支持されているため、皺となりにくいからである。離型紙は、樹脂フィルムと比較して、曲げ剛性が高い。
【0045】
図2の実施形態では、合体シートが用いられる。合体シートは、2枚のシートが貼り合わされることによって形成される。
【0046】
図2の実施形態では、三つの合体シートが形成される。図3は、これら三つの合体シートが形成された後のシート構成を示す。
【0047】
図3が示すように、シートa2とシートa3とが貼り合わせられて、合体シートa23が形成される。合体シートa23において、シートa2の貼り合わせ端部t2と、シートa3の貼り合わせ端部t3とは、半周分ズレている。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t2の周方向位置と、端部t3の周方向位置とは、180°相違している。
【0048】
図3が示すように、シートa4とシートa5とが貼り合わせられて、合体シートa45が形成される。合体シートa45において、シートa4の貼り合わせ端部t4と、シートa5の貼り合わせ端部t5とは、一致している。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t4の周方向位置と、端部t5の周方向位置とは、一致している。
【0049】
図3が示すように、シートa6とシートa7とが貼り合わせられて、合体シートa67が形成される。合体シートa67において、シートa6の貼り合わせ端部t6と、シートa7の貼り合わせ端部t7とは、一致している。即ち、巻回後のシャフト断面において、端部t6の周方向位置と、端部t7の周方向位置とは、一致している。
【0050】
前述の通り、本願では、繊維の配向角度によって、シート及び層が分類される。これに加えて本願では、シャフト長手方向の長さによって、シート及び層が分類される。
【0051】
本願において、シャフト長手方向の全体に配置される層が、全長層と称される。本願において、シャフト長手方向の全体に配置されるシートが、全長シートと称される。巻回された全長シートが、全長層を形成する。
【0052】
一方、本願において、シャフト長手方向において部分的に配置される層が、部分層と称される。本願において、シャフト長手方向において部分的に配置されるシートが、部分シートと称される。巻回された部分シートが、部分層を形成する。
【0053】
本願では、バイアス層である全長層が、全長バイアス層と称される。本願では、ストレート層である全長層が、全長ストレート層と称される。本願では、フープ層である全長層が、全長フープ層と称される。
【0054】
本願では、バイアス層である部分層が、部分バイアス層と称される。本願では、ストレート層である部分層が、部分ストレート層と称される。本願では、フープ層である部分層が、部分フープ層と称される。
【0055】
また本願では、樹脂含有率による分類もなされる。
【0056】
本願において上記高RC層とは、材料プリプレグ(シート)の樹脂含有率が24質量%以上の層である。なお、後述される硬化工程において、マトリクス樹脂の一部は流出しうる。この流出に起因して、完成されたシャフトにおける高RC層の樹脂含有率は、24質量%未満となることがある。
【0057】
本願において上記低RC層とは、材料プリプレグ(シート)の樹脂含有率が20質量%以下の層である。
【0058】
本願において高RCプリプレグとは、樹脂含有率が24質量%以上であるプリプレグシートである。本願において、高RCプリプレグは、高RCシートとも称される。本願において低RCプリプレグとは、樹脂含有率が20質量%以下であるプリプレグシートである。本願において、低RCプリプレグは、低RCシートとも称される。本願において高RC層は、高RCプリプレグにより形成された層である。本願において低RC層は、低RCプリプレグにより形成された層である。
【0059】
市販のプリプレグが用いられる場合、これらの樹脂含有率は、プリプレグメーカーによる公表値である。これらの樹脂含有率は、プリプレグメーカーのカタログに記載されており、当業者に広く知られている。
【0060】
本願では、高RCプリプレグと低RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる合体シートが、高低合体シートと称される。
【0061】
図2(図3)の実施形態において、低RCプリプレグは、シートa2、シートa3、シートa5及びシートa7である。一方、図2(図3)の実施形態において、高RCプリプレグは、シートa1、シートa4、シートa6、シートa8、シートa9及びシートa10である。従って、合体シートa45は高低合体シートであり、合体シートa67も高低合体シートである。
【0062】
図2(図3)の実施形態において、全てのフープシートは、高RCシートである。図2(図3)の実施形態において、全てのフープシートは、低RCシートに貼り合わされて、巻回される。この実施形態において、全ての低RCシートは、高RCシートに貼り合わせられて巻回される。この実施形態において、バイアスシートを除く全ての低RCシートは、ストレートシートである。
【0063】
図2(図3)の実施形態は、全長フープ層(全長フープシート)を含む。全ての全長フープ層が、高RC層である。全ての全長フープ層は、全長ストレート層に貼り合わされて巻回される。
【0064】
以下に、このシャフト6の製造工程の概略が説明される。
【0065】
[シャフト製造工程の概略]
【0066】
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。この工程により、図2に示された各シートが切り出される。
【0067】
なお、裁断は、裁断機によりなされてもよいし、手作業でなされてもよい。手作業の場合、例えば、カッターナイフが用いられる。
【0068】
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、複数のシートが貼り合わされて、前述した合体シートが作製される。
【0069】
貼り合わせ工程では、加熱又はプレスが用いられてもよい。より好ましくは、加熱とプレスとが併用される。後述する巻回工程において、合体シートの巻き付け作業中に、シートのズレが生じうる。このズレは、巻き付け精度を低下させる。加熱及びプレスは、シート間の接着力を向上させる。加熱及びプレスは、巻回工程におけるシート間のズレを抑制する。
【0070】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この粘着性の低下は、合体シートと巻回対象物との接着性を低下させる。この接着性の低下は、皺の発生を許容することがあり、巻き付け位置のズレを生じさせうる。この観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0071】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。シートの粘着性の観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、300秒以下が好ましい。
【0072】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、300g/cm2以上が好ましく、350g/cm2以上がより好ましい。プレスの圧力が過大である場合、プリプレグが押し潰される場合がある。この場合、プリプレグの厚みが設計値よりも薄くなる。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、600g/cm2以下が好ましく、500g/cm2以下がより好ましい。
【0073】
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、300秒以下が好ましい。
【0074】
上記合体シートa23は、バイアスシート同士が貼り合わされた合体シートである。この合体シートは、本願において、バイアス合体シートとも称される。上記合体シートa45は、ストレートシートとフープシートとが貼り合わされた合体シートである。この合体シートは、本願において、SF合体シートとも称される。上記合体シートa67も、ストレートシートとフープシートとが貼り合わされた合体シート、即ち、SF合体シートである。
【0075】
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用意される。典型的なマンドレルは、金属製である。このマンドレルに、離型剤が塗布される。更に、このマンドレルに、粘着性を有する樹脂が塗布される。この樹脂は、タッキングレジンとも称される。このマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。このタッキングレジンにより、シート端部をマンドレルに貼り付けることが容易とされている。
【0076】
貼り合せに係るシートに関しては、合体シートの状態で巻回される。即ち、図3の状態とされた各シートが、巻回される。
【0077】
この巻回工程により、巻回体が得られる。この巻回体は、マンドレルの外側にプリプレグシートが巻き付けられてなる。巻回は、例えば、平面上で巻回対象物を転がすことによりなされる。この巻回は、手作業によりなされてもよいし、機械によりなされてもよい。この機械は、ローリングマシンと称される。
【0078】
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、上記巻回体の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このラッピングテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。このラッピングテープにより、巻回体に圧力が加えられる。この圧力はボイドを低減させる。
【0079】
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の巻回体が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の課程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内の空気が排出されうる。ラッピングテープの圧力(締め付け力)により、この空気の排出が促進されている。この硬化により、硬化積層体が得られる。
【0080】
(6)マンドレルの引き抜き工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引き抜き工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。両者の順序は限定されないが、ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレルの引き抜き工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
【0081】
(7)両端カット工程
この工程では、硬化積層体の両端部がカットされる。このカットにより、チップTpの端面及びバットBtの端面が平坦とされる。
【0082】
(8)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、ラッピングテープの跡として残された螺旋状の凹凸が存在する。研磨により、このラッピングテープの跡としての凹凸が消滅し、表面が平滑とされる。
【0083】
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体に塗装が施される。
【0084】
図2及び図3によって示されるシート構成を有し、上記工程によって製造されたシャフト6は、図4に示す積層構造を有する。この図4は、部分層が配置されていない位置におけるシャフト6の断面図を示す。この断面図は、シャフト軸線に沿った断面図である。
【0085】
なお、本願では、層とシートとで同じ符号が用いられる。例えば、シートa1によって形成された層は、層a1とされる。
【0086】
シャフト6において、全長層は、層a2、層a3、層a4、層a5、層a6、層a7及び層a8である。層a2及び層a3は全長バイアス層である。層a4は全長フープ層である。層a5は全長ストレート層である。層a6は全長フープ層である。層a7及び層a8は全長ストレート層である。一方、シャフト6において、部分層は、層a1、層a9及び層a10である。
【0087】
層a4(シートa4)は、1プライである。即ち層a4(シートa4)の巻回数は1である。層a5は、1プライである。層a6は、2プライである。層a7は、2プライである。層a8は、1プライである。
【0088】
シートa4及びシートa5は、合体シートa45として巻回される。この合体シートa45は、シートa4を内側にして巻回される。即ち合体シートa45は、貼り合わせられたシートa4及びシートa5のうち、樹脂含有率の多いシートa4が内側にされて、巻回される。合体シートa45は、高RCシートa4と低RCシートa5とが貼り合わされている。この高低合体シートa45は、高RCシートa4を内側にして巻回される。樹脂含有率の多いシートが内側にされることで、端付けが容易となり、巻回の不具合が生じにくい。
【0089】
シートa6及びシートa7は、合体シートa67として巻回される。この合体シートa67は、シートa6を内側にして巻回される。即ち合体シートa67は、貼り合わせられたシートa6及びシートa7のうち、樹脂含有率の多いシートa6を内側にして巻回される。合体シートa67は、高RCシートa6と低RCシートa7とが貼り合わされている。この高低合体シートa67は、高RCシートa6を内側にして巻回される。樹脂含有率の多いシートが内側にされることで、端付けが容易となり、巻回の不具合が生じにくい。
【0090】
シートa6及びシートa7は、2プライである。合体シートa67の状態で巻回されているので、図4に示すように、層a6と層a7とが交互に配置される。
【0091】
シャフト6では、全長バイアス層a2、a3が、上記全長層のなかで最も内側に位置している。なお、全長バイアス層a2、a3は、合体シートa23の状態で巻回されているため、図4の断面図において、層a2と層a3とが交互に配置されている。合体シートa23の状態で巻回された層が、層a23とも称される。
【0092】
シャフト6は、次の構成Xを満たす。
[構成X]:上記全長バイアス層(層a23)よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層である。
【0093】
具体的には、低RC全長層a5には、高RC全長層a4及び高RC全長層a6が接している。低RC全長層a7には、高RC全長層a6及び高RC全長層a8が接している(図4参照)。全ての低RC全長層について、上記構成Xが満たされている。
【0094】
なお、上記構成Xでは、全長層のみが考慮される。
【0095】
上記構成Xは、巻回工程における端付けを容易とし、巻回のズレを抑制する。よって上記構成Xは、低RC層の存在下において、巻回の不具合を抑制し、生産性を高めうる。また、上記構成Xは、層間はく離を抑制し、シャフト強度を高める。この構成Xでは、軽量で且つ高強度のシャフトが得られうる。
【0096】
上記構成Xは、シャフト長手方向の一部で満たされていてもよい。上記構成Xは、シャフト長手方向の全体に亘って満たされているのが好ましい。上記構成Xは、シャフト周方向の一部で満たされていても良い。上記構成Xは、シャフト周方向の全体に亘って満たされているのが好ましい。シャフト6では、上記構成Xは、シャフト長手方向の全体に亘って満たされており、且つ、シャフト周方向の全体に亘って満たされている。
【0097】
シャフト6は、次の構成Yを満たす。
[構成Y]:上記全長バイアス層(層a23)の外面に接する上記全長層が、高RC層である。
【0098】
具体的には、層a23の外面10には、高RC全長層a4が接している(図4参照)。
【0099】
この構成Yによれば、全長バイアス層が低RC層である場合であっても、層間はく離が起こりにくい。またこの構成Yによれば、全長バイアス層が低RC層である場合であっても、端付けが容易とされる。
【0100】
シャフト6では、全長バイアス層a23が、全長層のなかで最も内側に位置している。この場合、上記タッキングレジンを用いることにより、合体シートa23をマンドレルに容易に端付けすることができる。よって、全長バイアス層a23が低RC層であっても、端付けが容易とされ、巻回の不具合が抑制される。
【0101】
全長バイアス層a23は、上記角度θaが0°ではないため、巻き剥がれが生じやすい。この巻き剥がれは、一旦巻回されたシートが起き上がり、巻回がほどける現象である。この巻き剥がれは、真っ直ぐなろうとする繊維の性質によって生じる。
【0102】
端付けの容易性及び巻き剥がれ抑制の観点から、バイアスシートa23は、加熱された状態で巻回されるのが好ましい。具体的には、巻回時におけるバイアスシートa23の温度T1は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この観点から、上記温度T1は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0103】
シャフト6では、上記全長バイアス層a2、a3の全てが、低RC層とされている。よって、低RC層のプライ数は多い。全長バイアス層が低RC層とされることで、より軽量なシャフト6が実現されている。
【0104】
シャフト6では、全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。具体的には、全長ストレート層a5の樹脂含有率は、全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。同様に、全長ストレート層a7の樹脂含有率は、全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い。ストレートシートは、バイアスシートに較べて、巻回しやすい。ストレートシートは、上記角度θaが10°以下であるため、巻き付け方向に対してしなやかであり、巻き剥がれが起こりにくい。よってストレート層は、樹脂含有率が低い場合でも巻回しやすい。樹脂含有率がバイアス層より低いストレート層は、より軽量で且つ巻回精度に優れたシャフトの実現に寄与する。この観点から、最外層以外の全長ストレート層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低いのがより好ましい。
【0105】
シャフト6では、最も外側の全長層が、高RC層とされている。前述した通り、シャフトの外面は通常研磨される。高RC全長層が最外層とされることで、研磨誤差が抑制される。また、研磨に起因する繊維のささくれが抑制される。
【0106】
軽量化の観点から、好ましくは、低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上とされる。より好ましくは、この低RC層の割合が、シャフト質量に対して、55質量%以上、更には60質量%以上、更には65質量%以上である。強度の観点から、この低RC層の割合が、シャフト質量に対して、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0107】
本発明により、シャフト質量が軽量であっても、強度、生産性及び巻回精度に優れたシャフトが得られうる。この観点から、シャフト質量は、45g以下が好ましく、40g以下がより好ましい。
【0108】
タック性の観点から、全長バイアス層の樹脂含有率は、16質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、全長バイアス層の樹脂含有率は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0109】
タック性の観点から、全長ストレート層の樹脂含有率は、12質量%以上が好ましい。シャフトの軽量化の観点から、最外層以外の全長ストレート層の樹脂含有率は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0110】
互いに隣接する低RC全長層と高RC全長層との間の樹脂含有率の差がD1とされる。層間はく離を抑制して強度を高める観点から、この差D1は、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。入手可能なプリプレグ材料の樹脂含有率を考慮すると、上記差D1は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0111】
上記高低合体シートにおいて、低RCシートと高RCシートとの間の樹脂含有率の差D2は、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。差D2が大きくされることで、巻回中における低RCシートと高RCシートとの間のズレが抑制され、巻回精度が向上する。更に低RC層と高RC層との層間強度が向上する。入手可能なプリプレグ材料の樹脂含有率を考慮すると、上記差D2は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0112】
上記高低合体シートの作製(貼り合わせ)において、加熱されるのが好ましい。この加熱により、巻回中における低RCシートと高RCシートとの間のズレが抑制され、巻回精度が向上する。更に低RC層と高RC層との層間強度が向上する。これらの観点から、高低合体シートの貼り合わせ工程における加熱温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この粘着性の低下は、高低合体シートと巻回対象物との接着性を低下させる。この観点から、高低合体シートの貼り合わせ工程における加熱温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0113】
上記実施形態の如く、好ましい形態の一例は、全長ストレート層の少なくとも1層が低RC層である。また、全長バイアス層の全ての層が低RC層であるのが好ましい。また、全長フープ層の全ての層が高RC層であるのが好ましい。また、全ての低RC全長ストレートシートは、高RCシートに貼り合わされてから巻回されるのが好ましい。より好ましくは、全ての低RC全長ストレートシートは、高RCフープシートに貼り合わされてから巻回される。端付け高低合体シートは、低RCシート側を内側にして巻回されるのが好ましい。
【0114】
巻回の容易性の観点から、高低合体シートにおける高RCシートは、薄いのが好ましい。この観点から、高低合体シートにおける高RCシートの厚みは、0.05mm以下が好ましく、0.04mm以下がより好ましい。巻回の容易性の観点から、高低合体シートにおける高RCシートのCF目付は、少ないのが好ましい。この観点から、高低合体シートにおける高RCシートのCF目付は、40g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのがより好ましい。CF目付とは、プリプレグ1m2当たりの繊維質量である。
【0115】
プリプレグシートのマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂の他、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等も用いられ得る。シャフト強度の観点から、マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂が好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0117】
[実施例1]
上記シャフト6と同じ積層構成を有するシャフトが作製された。即ち、図2及び図3で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。製造方法は、上記シャフト6と同じである。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表1に示される。
【0118】
[実施例2]
図5で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートb2と全長バイアスシートb3とを貼り合わせて合体シートb23(図示されず)が作製され、この合体シートb23が巻回された。全長フープシートb4と全長ストレートシートb5とを貼り合わせてSF合体シートb45(図示されず)が作製され、この合体シートb45が巻回された。全長フープシートb6と全長ストレートシートb7とを貼り合わせてSF合体シートb67(図示されず)が作製され、この合体シートb67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表2に示される。
【0119】
この実施例2と上記実施例1との相違は、4枚目のシート及び6枚目のシートの樹脂含有率である。表2に示すように、全長フープシートb4及び全長フープシートb6として、樹脂含有率が25質量%の試作品が用いられた。その他は実施例1と同様にして、実施例2のシャフトを得た。
【0120】
[実施例3]
図6で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートc2と全長バイアスシートc3とを貼り合わせて合体シートc23(図示されず)が作製され、この合体シートc23が巻回された。全長フープシートc4と全長ストレートシートc5とを貼り合わせてSF合体シートc45(図示されず)が作製され、この合体シートc45が巻回された。全長フープシートc6と全長ストレートシートc7とを貼り合わせてSF合体シートc67(図示されず)が作製され、この合体シートc67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表3に示される。
【0121】
この実施例3と上記実施例1との相違は、バイアスシートの樹脂含有率である。表3に示すように、全長バイアスシートc2及び全長バイアスシートc3として、樹脂含有率が25質量%のプリプレグが用いられた。その他は実施例1と同様にして、実施例3のシャフトを得た。
【0122】
[比較例1]
図7で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートd2と全長バイアスシートd3とを貼り合わせて合体シートd23(図示されず)が作製され、この合体シートd23が巻回された。その他のシートについては、貼り合わせはなされなかった。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表4に示される。
【0123】
この比較例1と上記実施例1との相違は、貼り合わせの有無である。すなわちこの比較例1では、バイアスシート以外に貼り合わせはなされなかった。この結果、巻回数が2プライである低RCシートd7に起因して、低RC層d7が2層重なった。その他は実施例1と同様にして、比較例1のシャフトを得た。
【0124】
[比較例2]
図8で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートe2と全長バイアスシートe3とを貼り合わせて合体シートe23(図示されず)が作製され、この合体シートe23が巻回された。全長フープシートe4と全長ストレートシートe5とを貼り合わせてSF合体シートe45(図示されず)が作製され、この合体シートe45が巻回された。全長フープシートe6と全長ストレートシートe7とを貼り合わせてSF合体シートe67(図示されず)が作製され、この合体シートe67が巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表5に示される。
【0125】
この比較例2と上記実施例1との相違は、低RCシートが用いられていないことである。その他は実施例1と同様にして、比較例2のシャフトを得た。
【0126】
[比較例3]
図9で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートf2と全長バイアスシートf3とを貼り合わせて合体シートf23(図示されず)が作製され、この合体シートf23が巻回された。全長フープシートf5と全長ストレートシートf6とを貼り合わせてSF合体シートf56(図示されず)が作製され、この合体シートf56が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表6に示される。
【0127】
この比較例3と上記実施例1との相違は、積層順序である。実施例1における4枚目のシート(シートa4)が、この比較例3では、7枚目のシート(シートf7)とされている。この結果、バイアス層f23の外面に、低RC層f4が接している。これに対して実施例1においては、バイアス層の外面には高RC層a4が接しており、この高RC層a4の外側に低RC層a5が接している。その他は実施例1と同様にして、比較例3のシャフトを得た。
【0128】
[比較例4]
図10で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートg3と全長バイアスシートg4とを貼り合わせて合体シートg34(図示されず)が作製され、この合体シートg34が巻回された。全長フープシートg6と全長ストレートシートg7とを貼り合わせてSF合体シートg67(図示されず)が作製され、この合体シートg67が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表7に示される。
【0129】
この比較例4と上記実施例1との相違は、積層順序である。実施例1における4枚目のシート(シートa4)が、この比較例4では、2枚目のシート(シートg2)とされている。この結果、全長バイアス層g34は、全長層のなかで最も内側には位置していない。またこの結果、低RC全長層g7と低RC全長層g8とが接している。その他は実施例1と同様にして、比較例4のシャフトを得た。
【0130】
[比較例5]
図11で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートh6と全長バイアスシートh7とを貼り合わせて合体シートh67(図示されず)が作製され、この合体シートh67が巻回された。全長フープシートh3と全長ストレートシートh4とを貼り合わせてSF合体シートh34(図示されず)が作製され、この合体シートh34が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表8に示される。
【0131】
この比較例5と上記実施例1との相違は、積層順序である。この比較例5では、バイアス層h67が外側に位置している。その他は実施例1と同様にして、比較例5のシャフトを得た。
【0132】
[比較例6]
図12で示されるシート構成を有するシャフトが作製された。全長バイアスシートj2と全長バイアスシートj3とを貼り合わせて合体シートj23(図示されず)が作製され、この合体シートj23が巻回された。全長フープシートj4と全長ストレートシートj5とを貼り合わせてSF合体シートj45(図示されず)が作製され、この合体シートj45が巻回された。全長フープシートj6と全長ストレートシートj7とを貼り合わせてSF合体シートj67(図示されず)が作製され、この合体シートj67が巻回された。他のシートは、貼り合わせされずに巻回された。各シートに用いられたプリプレグの品種が、下記の表9に示される。
【0133】
この比較例6と上記実施例1との相違は、プリプレグの品種である。この比較例6では、低RCシートが用いられていない。その他は実施例1と同様にして、比較例6のシャフトを得た。
【0134】
これらのシャフトの評価結果が、下記の表10に示される。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
[評価方法]
【0146】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図13は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図13が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって、圧子22が荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。圧子22の下降のスピードは、20mm/minである。圧子22の先端には、シリコーンラバー24が装着されている。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点、A点、B点及びC点とされた。T点は、チップTpから90mmの点である。A点は、チップTpから175mmの点である。B点は、チップTpから525mmの点である。C点は、バットBtから175mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。T点が測定される場合、上記スパンSは、150mmとされる。A点、B点及びC点が測定される場合、上記スパンSは、300mmとされる。この結果が上記表10に示される。
【0147】
[耐久試験]
得られたシャフトに市販のドライバーヘッド及びグリップを装着し、46インチのゴルフクラブを作製した。スイングロボットにこのクラブを装着し、シャフトが破損するまで打球させた。ヘッドスピードは48m/sとされた。破損が発生しない場合、10000回の打球でテストは終了した。スイングロボットとして、ミヤマエ社製の製品名「ショットロボIII」が用いられた。ボールには、SRIスポーツ社製の商品名「ゼクシオ SUPER XD」が用いられた。
【0148】
[振りやすさ]
20名のテスターが上記クラブを使って打球し、打ちやすさを評価した。評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が高いほど評価が高い。20名の評価点の平均が、上記表10に示される。
【0149】
[順式フレックス]
シャフトのバットBtから75mmの位置に、第一支持点を設定した。更に、シャフトのバットBtから215mmの位置に、第二支持点を設定した。第一支持点には、シャフトをを上方から支持する支持体を設けた。第二支持点には、シャフトを下方から支持する支持体を設けた。荷重のない状態において、シャフトのシャフト軸線は略水平とされた。バットBtから1039mmである荷重点に、2.7kgの荷重を鉛直下向きに作用させた。荷重のない状態から、荷重をかけた状態までの荷重点の移動距離(mm)が、順式フレックスとされた。この移動距離は、鉛直方向に沿った移動距離である。この測定値が上記表10に示される。
【0150】
[トルク]
シャフトの後端部をバット治具により回転不能に固定するとともに、シャフトの先端部をチップ治具で把持し、チップTpから40mmの位置に13.9kgf・cmのトルクTrを作用させる。そして、このトルク作用位置でのシャフトの捻れ角(度)が、シャフトトルク値とされた。なお、トルクTrを負荷する際のチップ治具の回転速度は130゜/分以下とし、バット治具とチップ治具との間の軸方向長さは825mmとされた。チップ治具又はバット治具の把持によってシャフトが変形する場合、シャフトの内部に芯材などを入れて測定を行う。この測定値が上記表10に示される。
【0151】
上記表10には、研磨前シャフト質量と研磨後シャフト質量とが示されている。低RC層の割合(質量%)は、研磨前重量に基づいて算出した。これらの値が上記表10に示されている。
【0152】
なお、上記表1から表9では、バイアス層以外の全長層の巻回数(プライ数)が記載されている。
【0153】
実施例1では、低RC層全長層に接する全長層が高RC層であるため、層間強度が高い。このため、三点曲げ強度及び耐久試験が良好であった。また実施例1は軽量であり、打ちやすさも良好であった。
【0154】
実施例2では、高RCフープ層と低RCストレート層との間の樹脂含有率の差(質量%)が小さい(10質量%)であるため、強度が若干低下した。軽量性及び打ちやすさは良好であった。
【0155】
実施例3では、低RC層の割合が少ないため、軽量性及び振りやすさがやや劣るものの、良好な強度が得られた。
【0156】
比較例1では、2プライのシートd7に起因して、低RCストレート層が2層重なっている。このため、強度が低下した。
【0157】
比較例2では、低RC層が存在しないため、軽量性が十分でない。このため振りやすさが低下した。
【0158】
比較例3では、低RCバイアス層の外面に低RC全長層が位置しているため、層間強度が低下した。このため強度評価が悪かった。
【0159】
比較例4では、全長低RCバイアス層g34の外面に全長低RC層g5が接しており、且つ、全長低RC層g7に全長低RC層g8が接している。このため強度評価が悪かった。
【0160】
比較例5では、バイアス層が外側に位置しており、このバイアス層よりも内側にストレート層が配置された。このため順式フレックスが大きくなった。このシャフトでは、撓りが大きすぎて振りにくかった。またこの比較例5では、バイアスシートがマンドレルに直接巻回されなかったので、タッキングレジンによるバイアスシートの端付けができなかった。よって、巻き剥がれが発生しやすかった。この巻き剥がれは、巻回の作業性を低下させ、巻回不良を増加させる。
【0161】
比較例6では、低RC層が存在しないため、シャフトが重くなった。このため振りやすさが低下した。
【0162】
以上説明されたように、本発明の優位性は明らかである。
【0163】
なお、市販されているプリプレグの例が、表11に示される。この表11に記載の樹脂含有率は、プリプレグメーカーから公表されている。これらの樹脂含有率は、本願に適用される。
【0164】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上説明された方法は、ゴルフクラブシャフトに適用されうる。
【符号の説明】
【0166】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10・・・全長バイアス層の外面
20・・・シャフト
Tp・・・シャフトのチップ
Bt・・・シャフトのバット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を有しており、
上記層が、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでおり、
上記層が、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでおり、
上記全長層が、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでおり、
上記全長バイアス層が、上記全長層のなかで最も内側に位置しており、
上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層であり、
上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層であるゴルフクラブ用シャフト。
ただし、上記高RC層とは、樹脂含有率が24質量%以上のプリプレグによって形成された層であり、上記低RC層とは、樹脂含有率が20質量%以下のプリプレグによって形成された層である。
【請求項2】
上記全長バイアス層の全てが上記低RC層である請求項1に記載のシャフト。
【請求項3】
上記全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い請求項2に記載のシャフト。
【請求項4】
上記低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載のシャフト。
【請求項5】
シャフト質量が45g以下である請求項1から4のいずれかに記載のシャフト。
【請求項6】
低RCプリプレグと高RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる高低合体シートが用いられてなる請求項1から5のいずれかに記載のシャフト。
【請求項7】
上記高低合体シートが、上記高RCプリプレグを内側にして巻回されている請求項6に記載のシャフト。
【請求項8】
上記低RCプリプレグが上記ストレート層を形成しており、上記高RCプリプレグが上記フープ層を形成している請求項6又は7に記載のシャフト。
【請求項1】
複数の層を有しており、
上記層が、シャフト軸線に対する繊維の絶対角度θaが10°以下であるストレート層と、上記角度θaが30°以上60°以下であるバイアス層と、上記角度θaが80°以上であるフープ層とを含んでおり、
上記層が、シャフト長手方向の全体に配置される全長層と、シャフト長手方向において部分的に配置される部分層とを含んでおり、
上記全長層が、上記バイアス層である全長バイアス層と、上記ストレート層である全長ストレート層とを含んでおり、
上記全長バイアス層が、上記全長層のなかで最も内側に位置しており、
上記全長バイアス層よりも外側において、低RC全長層に接する全長層が高RC層であり、
上記全長バイアス層の外面に接する上記全長層が高RC層であるゴルフクラブ用シャフト。
ただし、上記高RC層とは、樹脂含有率が24質量%以上のプリプレグによって形成された層であり、上記低RC層とは、樹脂含有率が20質量%以下のプリプレグによって形成された層である。
【請求項2】
上記全長バイアス層の全てが上記低RC層である請求項1に記載のシャフト。
【請求項3】
上記全長ストレート層のうちの少なくとも1層の樹脂含有率が、上記全長バイアス層の樹脂含有率よりも低い請求項2に記載のシャフト。
【請求項4】
上記低RC層の割合が、シャフト質量に対して、50質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載のシャフト。
【請求項5】
シャフト質量が45g以下である請求項1から4のいずれかに記載のシャフト。
【請求項6】
低RCプリプレグと高RCプリプレグとの貼り合わせによって得られる高低合体シートが用いられてなる請求項1から5のいずれかに記載のシャフト。
【請求項7】
上記高低合体シートが、上記高RCプリプレグを内側にして巻回されている請求項6に記載のシャフト。
【請求項8】
上記低RCプリプレグが上記ストレート層を形成しており、上記高RCプリプレグが上記フープ層を形成している請求項6又は7に記載のシャフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−130533(P2012−130533A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285456(P2010−285456)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
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