ゴルフスイングの分析方法
【課題】多角的なスイング分析を可能とし、分析精度の向上に寄与しうるスイング分析方法の提供。
【解決手段】本発明の分析方法は、3軸方向のそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置4を用意するステップと、この加速度計測装置4を、ゴルファーt1の体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置4からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。好ましくは、上記加速度計測装置が、上記テスターt1の2箇所以上に取り付けられる。好ましくは、上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰及び手首からなる群から選ばれる部位のいずれかである。好ましくは、上記加速度計測装置の1個当たりの重量が10g以下である。
【解決手段】本発明の分析方法は、3軸方向のそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置4を用意するステップと、この加速度計測装置4を、ゴルファーt1の体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置4からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。好ましくは、上記加速度計測装置が、上記テスターt1の2箇所以上に取り付けられる。好ましくは、上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰及び手首からなる群から選ばれる部位のいずれかである。好ましくは、上記加速度計測装置の1個当たりの重量が10g以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフスイングの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフスイングは、ゴルファーごとに異なる。また、ゴルフクラブは、スイングに影響を与える。スイングとゴルフクラブとのマッチングは重要である。スイングとゴルフボールとのマッチングは重要である。
【0003】
ゴルフスイングの分析は、ゴルフクラブやゴルフボール等の開発に不可欠である。スイング分析の結果は、ゴルフクラブやゴルフボールの選択の基準となりうる。スイング分析は、ゴルフクラブやゴルフボール等の販売促進に役立つ。
【0004】
従来、ゴルファーの感性に基づくスイング分析が行われていた。このスイング分析では、定量的な評価ができなかった。ゴルファーの感性に基づく定性的な評価は、曖昧さを有している。定性的な評価は、正確さに欠ける傾向がある。
【0005】
特開平3−126477号公報は、ゴルフクラブに複数個の加速度センサを取り付けたスイング分析装置を開示する。特開平10−43349号公報は、手首よりも先側(手の甲等)に加速度センサーが取り付けられたスイング診断装置を開示する。特開2005−74010号公報には、ゴルフクラブヘッドに、シャフト軸方向の加速度を検知する加速度センサを取り付け、この加速度の値によりスイングを分類する方法が開示されている。特開2005−152321号公報は、ゴルフクラブの位置、姿勢検出システムを開示している。このシステムでは、ヘッド及びシャフトに三次元加速度センサーが取り付けられてる。特開2008−125722号公報は、シャフトに取り付けられた3軸加速度計により、シャフト周方向の振動を計測する打感評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−126477号公報
【特許文献2】特開平10−43349号公報
【特許文献3】特開2005−74010号公報
【特許文献4】特開2005−152321号公報
【特許文献5】特開2008−125722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スイング動作は複雑である。スイング分析は、種々の観点から行うことが望まれる。スイングを多角的に分析できる方法が求められている。また、分析精度の観点から、定量的なスイング分析の手法が求められている。
【0008】
本発明では、従来技術とは異なる観点に基づいてスイング分析を行う。本発明の目的は、多角的なスイング分析を可能とし、分析精度の向上に寄与しうるスイング分析方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフスイングの分析方法は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置を用意するステップと、この加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。
【0010】
好ましくは、上記加速度計測装置は、上記体の2箇所以上に取り付けられる。
【0011】
好ましくは、上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰又は手首である。
【0012】
好ましくは、上記加速度計測装置の1個当たりの重量は10g以下である。
【0013】
好ましくは、上記分析方法において、スイング中の一時点においてトリガー信号を発生させ、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づける。
【0014】
好ましくは、上記トリガー信号を発生させる一時点が、トップオブスイング又はインパクトである。
【0015】
好ましくは、打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされ、鉛直方向がY軸方向とされ、上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされたとき、上記加速度データが、上記Z軸方向の成分を有している。
【0016】
好ましくは、上記加速度データは、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータである。好ましくは、上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値と最小値との差がスイング分析の指標とされる。
【0017】
好ましくは、上記加速度データは、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータである。好ましくは、上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値における時刻と最小値における時刻との間の時間差Td1がスイング分析の指標とされる。
【0018】
好ましくは、同一のゴルファーが同一のゴルフクラブで複数回のスイングを行い、この複数のスイングデータに基づき複数のグラフ線を得る。好ましくは、これら複数のグラフ線で囲まれた面積s1がスイング分析の指標とされる。
【0019】
好ましくは、上記いずれかの分析方法に基づいて、スイングの再現性が判断される。
【0020】
本発明のゴルフクラブ選択方法は、上記いずれかに記載の分析方法に基づいて、上記スイングを行うゴルファーに適したゴルフクラブが選択される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスイング分析方法では、多角的な観点からスイング分析が可能である。また、定量的なスイング分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の分析方法に係るスイング計測方法の一例を説明するための図である。
【図2】図2は、図1のテスターを背中側から見た図である。
【図3】図3は、加速度計測装置の正面図及び側面図である。
【図4】図4は、スイングの様子を示す図である。アドレス及びテークバックが示されている。
【図5】図5は、スイングの様子を示す図である。トップオブスイング及びダウンスイングが示されている。
【図6】図6は、スイングの様子を示す図である。ダウンスイング及びインパクトが示されている。
【図7】図7は、スイングの様子を示す図である。フォロースルー及びフィニッシュが示されている。
【図8】図8は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図9】図9は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図10】図10は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図11】図11は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図12】図12は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図13】図13は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図14】図14は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図15】図15は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図16】図16は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図17】図17は、複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1を示す図である。
【図18】図18は、上記面積s1の他の一例を示す図である。
【図19】図19は、データ分析方法の一例を説明するためのグラフである。
【図20】図20は、データ分析の他の一例を説明するためのグラフである。
【図21】図21は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図22】図22は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図23】図23は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図24】図24は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図25】図25は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図26】図26は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図27】図27は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図28】図28は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図29】図29は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図30】図30は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図31】図31は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図32】図32は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図33】図33は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図34】図34は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図35】図35は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図36】図36は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図37】図37は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図38】図38は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図39】図39は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図40】図40は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。本実施形態では、スイング分析システム2が用いられる。
【0025】
スイング分析システム2は、加速度計測装置4と、無線受信装置6と、データ解析装置8とを備えている。図1の実施形態では、2個の加速度計測装置4が用いられている。
【0026】
加速度計測装置4は、無線式である。加速度計測装置4は、無線により、測定データを発信しうる。この無線通信の詳細については後述される。無線通信として、例えばBluetooth(ブルートゥース)の規格及び技術が好適に用いられ得る。
【0027】
加速度計測装置4は、3軸方向(x軸、y軸及びz軸)のそれぞれの加速度を測定できる加速度センサーを内蔵している。更に加速度計測装置4は、A/D変換器、CPU、無線インターフェース、無線アンテナ及び電源を備えている。電源として、電池が用いられている。電池は、例えばリチウムイオン電池等の小型電池が好適に用いられる。いわゆるボタン型電池が好適に用いられ得る。電池は、充電可能なものであってもよい。加速度計測装置4は、電池を充填するための充電回路を備えていてもよい。
【0028】
図示しないが、無線受信装置6は、無線アンテナ、無線インターフェース、CPU及びネットワークインターフェースを備えている。
【0029】
データ解析装置8として、例えば、コンピュータが用いられる。データ解析装置8は、入力部12及び表示部14を備えている。図示しないが、データ解析装置8は、ハードディスク、メモリ、CPU及びネットワークインターフェースを備えている。入力部12は、キーボード16とマウス18とを備えている。
【0030】
図1には、スイング分析システム2の他、テスターt1と、ゴルフクラブc1と、ゴルフボールb1とが示されている。図1に描かれたテスターt1は、アドレス状態である。テスターt1は、右利きである。
【0031】
加速度センサーは、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のそれぞれの加速度を検知する。この加速度は、アナログ信号として得られる。このアナログ信号は、A/D変換器によって、デジタル信号に変換される。A/D変換器からの出力は、例えばCPUに伝達されて1次フィルタリング等の演算処理が実行される。
【0032】
このように加速度計測装置4内で処理されたデータは、無線インタフェースを介して、無線アンテナから送信される。
【0033】
加速度計測装置4の無線アンテナから送信されたデータは、無線受信装置6側の無線アンテナを介して、無線インタフェースによって受信される。この受信されたデータは、例えばCPUで演算処理され、例えばネットワーク22を介して、データ解析装置8に送られる。
【0034】
データ解析装置8に送られたデータは、ハードディスク等のメモリ資源に記録される。ハードディスクは、データ処理等に必要なプログラム及びデータ等を記憶している。このプログラムは、CPUに、必要なデータ処理を実行させる。CPUは、各種の演算処理を実行しうる。演算処理の例については、後述される。演算結果は、表示部14又は図示しない印刷装置等によって出力される。
【0035】
図2は、アドレス状態のテスターt1を背中側から見た図である。2個の加速度計測装置4は、テスターt1の腰の背中側に取り付けられた加速度計測装置41、及び、首の付け根近傍(以下、単に首ともいう)に取り付けられた加速度計測装置42である。図2の実施形態では、粘着テープ20により、加速度計測装置4が取り付けられている。加速度計測装置4の取り付け方法は限定されない。加速度計測装置4は小型、軽量で且つ配線を有していないため、テスターt1への取り付けは容易である。
【0036】
図3は、加速度計測装置4の拡大図である。図3(a)は、加速度計測装置4の正面図である。図3(b)は、加速度計測装置4の側面図である。加速度計測装置4は、上端4aと、下端4bとを有している。加速度計測装置4は、全体として、偏平な形状を呈している。この形状の加速度計測装置4は、人体への取り付けが容易である。
【0037】
加速度計測装置4は、小型で且つ軽量であるため、スイングの邪魔にならない。加速度計測装置4は、配線を有さないため、スイングを妨げない。本実施形態では、テスターt1が、測定機器によって邪魔されることなく、自然なスイングをすることができる。テスターt1は、本来のスイングをすることができる。加速度計測装置4により、自然なスイングが達成されるため、スイングの測定精度が向上する。
【0038】
加速度測定装置4に内蔵された加速度センサーは、3軸加速度センサーであり、3軸方向の加速度のそれぞれを測定することができる。
【0039】
[加速度センサーの測定方向:x軸、y軸、z軸]
加速度センサーの3方向が、本願では、x軸方向、y軸方向及びz軸方向と表記される。このx軸、y軸及びz軸は、3次元直交軸である。即ち、x軸方向はy軸方向に対して垂直であり、且つ、z軸方向はx軸方向及びy軸方向に対して垂直である。
【0040】
図3には、加速度計測装置4の測定可能な3方向、即ち、x軸方向、y軸方向及びz軸方向が示されている。本実施形態の加速度計測装置4では、y軸方向が、加速度計測装置4の長手方向である。即ち、上端4aと下端4bとを結ぶ方向が、y軸方向である。x軸方向は、加速度計測装置4の右側面と左側面とを結ぶ方向である。z軸方向は、x軸方向に垂直であり、且つy軸方向に垂直である。
【0041】
なお、本願では、上記 x軸、y軸及びz軸とは別に、大文字の「X」、「Y」及び「Z」を用いたX軸、Y軸及びZ軸が定義される。このX軸、Y軸及びZ軸(大文字)は、空間における三次元直交軸を示す。これに対し、加速度センサーの測定方向であるx軸、y軸及びz軸では、小文字の「x」、「y」及び「z」が用いられる。このように本願では、大文字と小文字により、各軸を区別している。X軸、Y軸及びZ軸(大文字)の詳細については、次の通りである。
【0042】
[空間における三次元直交軸:X軸、Y軸、Z軸]
本願では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向が、下記の如く定義される。
【0043】
(1)X軸方向
打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされる。このX軸方向は、図2で示されている。このX軸方向が、本願において、左右方向とも称される。
【0044】
(2)Y軸方向
鉛直方向が、Y軸方向とされる。換言すれば、水平面に対して垂直な方向が、Y軸方向とされる。このY軸方向が、図1及び図2に示されている。このY軸方向は、本願において、上下方向とも称される。
【0045】
(3)Z軸方向
上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされる。Z軸方向が、図1及び図2に示されている。このZ軸方向は、本願において、前後方向とも称される。
【0046】
加速度計測装置4が取り付けられる姿勢は限定されない。上記x軸方向、y軸方向及び/又はz軸方向が測定したい方向とできるだけ一致するように、加速度計測装置4が取り付けられるのが好ましい。スイング分析の目的によって、加速度計測装置4の取り付け時の姿勢は、適宜決定されうる。
【0047】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のx軸方向がX軸方向にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0048】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のy軸方向がY軸方向(上下方向)にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0049】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のz軸方向がZ軸方向(前後方向)にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0050】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も左右方向(X軸方向)に近いのが、x軸方向である。左右方向(X軸方向)の加速度の傾向が、x軸方向の加速度によって判断されうる。
【0051】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も上下方向(Y軸方向)に近いのが、y軸方向である。上下方向(Y軸方向)の加速度の傾向が、y軸方向の加速度によって判断される。
【0052】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も前後方向(Z軸方向)に近いのが、z軸方向である。前後方向(Z軸方向)の加速度の傾向が、z軸方向の加速度によって判断される。
【0053】
本願では、スイング中の所定時間が、「区間」とも称される。測定がなされる時間が、測定区間とも称される。測定区間は、スイングの全体であってもよいし、スイングの一部であってもよい。
【0054】
スイングの始まりは、アドレスである。スイングの終わりは、フィニッシュと称される。図4から図7は、テスターt1がスイングする様子を示す図である。図4から図7は、テスターt1の正面(前側)から見た図である。スイングは、(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、(S5)、(S6)、(S7)、(S8)の順で進行する。(S1)及び(S2)が、図4に示されている。(S3)及び(S4)が、図5に示されている。(S5)及び(S6)が、図6に示されている。(S7)及び(S8)が、図7に示されている。図4の(S1)は、アドレスである。図4の(S2)は、テークバックである。図5の(S3)は、トップオブスイング(トップ)である。通常、トップオブスイングでは、ヘッドの移動速度が、スイング中において最小である。図5の(S4)は、ダウンスイングである。図6の(S5)も、ダウンスイングである。(S5)は、(S4)よりもダウンスイングが進行した状態である。図6の(S6)は、インパクトである。インパクトは、ゴルフクラブc1のヘッドとゴルフボールb1とが衝突した瞬間である。図7の(S7)は、フォロースルーである。図7の(S8)は、フィニッシュである。フィニッシュで、スイングは終了する。
【0055】
スイング分析システム2では、スイング中の少なくとも一時点(一時刻)におけるデータが計測される。好ましくは、スイング中の二時刻又は三時刻以上におけるデータが計測される。より好ましくは、スイング中の一部又は全部の区間の時系列的なデータが測定される。
【0056】
分析の対象となるデータは、加速度計測装置4により測定された一時刻又は二時刻以上における加速度データ又はこの加速度データから算出されるデータである。
【0057】
加速度計測装置4により測定される加速度データは、以下の3種類である。
(1a)x軸方向の加速度データAx
(2a)y軸方向の加速度データAy
(3a)z軸方向の加速度データAz
【0058】
好ましい本発明では、複数の加速度計測装置4が用いられる。この場合、上記加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzが、それぞれ複数得られる。複数の加速度計測装置4が用いられることにより、分析の多様性が向上する。図1の実施形態では、2個の加速度計測装置4が用いられている。
【0059】
上記加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzは、一の時刻又は二以上の複数の時刻におけるデータであってもよいし、時系列的なデータであってもよい。分析の多様性を高める観点から、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzは、時系列的なデータであるのが好ましい。時系列的なデータとは、所定の時間間隔ごとに得られるデータの集合であり、各時刻毎の加速度データを有する。この時系列的なデータの時間間隔は、例えば、加速度計測装置4のサンプリング周波数により決定される。サンプリング周波数が大きいほど、1秒当たりに得られるデータの数が増加する。
【0060】
時系列的な加速度データは、スイング中の時刻Tm1から時刻Tm2までのデータとして得られる。時刻Tm1及び時刻Tm2は、スイング中の時刻である限り、特に限定されない。
【0061】
測定区間は、スイング時間の全てであってもよいし、スイング時間の一部であってもよい。分析の対象となるデータは、スイング中の一時刻であってもよいし、二以上の時刻のデータであってもよいし、時刻Tm1から時刻Tm2までの時系列的なデータであってもよい。
【0062】
好ましくは、測定区間は、トップオブスイング(単にトップとも称される)からインパクトまでを含むのがよい。好ましくは、分析対象となる時系列的なデータは、トップオブスイングからインパクトまでを含むのがよい。トップオブスイングからインパクトまでの間に、各ゴルファーのスイングの特徴が現れやすいからである。もちろん、測定区間は、テークバック、ダウンスイング又はフォロースルーの時間を含んでいても良い。測定区間は、アドレスからフィニッシュまでであってもよい。また、インパクト近傍のみを測定区間とするなど、比較的短い時間を測定区間とすることも可能である。測定区間は、スイング分析の目的等に応じて適宜決定されうる。
【0063】
加速度計測装置4により測定された加速度データから算出されるデータとして、以下が例示される。
(1b)上記データAx、上記データAy及び上記データAzからなる群から選択される2つ又は3つのデータを用いて算出されるデータ。
(2b)2個以上の加速度計測装置4から得られる上記(1b)のデータを用いて算出されるデータ。
【0064】
上記(1b)のデータとして、加速度の三次元データが挙げられる。上記データAx、上記データAy及び上記データAzのベクトル和により、この三次元データが得られる。また、例えば、(Az2+Ay2+Az2)1/2により、加速度の大きさが算出される。
【0065】
分析精度の観点から、2個以上の加速度計測装置4が用いられる場合、それらのデータ間では同期が取られているのが好ましい。この同期により、2個以上の加速度計測装置4間におけるデータの関連性について分析することができる。
【0066】
分析対象となる加速度データは、1回のスイングで得られるデータであってもよいし、複数のスイングで得られるデータであってもよい。例えば、同一人が同一のゴルフクラブで複数回スイングしたデータを分析することは、スイングの再現性を判断するのに有効な指標となる。また、異なるテスターのスイングデータの比較によって、有益なデータが得られうる。例えば、異なるテスターが同一のゴルフクラブをスイングして得られた複数のデータは、各テスターのスイングの特徴を分類する上で有益である。
【0067】
[分析の具体例1]
例えば、以下のような分析が可能である。これらの分析により、ゴルファーに対するゴルフクラブの適合性、ゴルフクラブの特性、異なるゴルファー間でのスイングの相違等に関する様々な指標が得られる。以下の分析は、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータのいずれにも適用されうる。Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータには、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。測定区間も、前述の通り限定されない。本願において、時刻Tm1とは、測定区間内における一時刻を意味し、特に限定されない。
(1c)時刻Tm1における加速度A1と、測定区間内における最大加速度Amaxとの差。
(2c)時刻Tm1における加速度A1と、測定区間内における最小加速度Aminとの差。
(3c)測定区間内における最大加速度Amaxと、測定区間内における最小加速度Aminとの差。
(4c)上記最大加速度Amaxとなる時刻と、最小加速度Aminとなる時刻との時間差Td1。
(5c)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間の加速度の差。
(6c)測定区間内における最大加速度Amax。
(7c)測定区間内における最小加速度Amin
(8c)時刻Tm1における加速度A1。
(9c)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、加速度の平均値。
(10c)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、加速度の絶対値の平均値。
【0068】
[分析の具体例2]
更に、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータから得られるグラフ線について、下記の分析が可能である。このグラフ線が2次元直交座標系である場合、縦軸及び横軸の内容は限定されない。即ち、横軸は、例えば時間でもよい。更に横軸は、Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるあらゆるデータであってもよい。また縦軸は、例えば時間でもよい。更に縦軸は、Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるあらゆるデータであってもよい。Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータには、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。測定区間も、前述の通り限定されない。本願において、時刻Tm1とは、測定区間内における一時刻を意味し、特に限定されない。以下において、グラフ線の値とは、縦軸の値である。
(1d)時刻Tm1におけるグラフ線の値と、測定区間内におけるグラフ線の最大値との差。
(2d)時刻Tm1におけるグラフ線の値と、測定区間内におけるグラフ線の最小値との差。
(3d)測定区間内におけるグラフ線の最大値、測定区間内におけるグラフ線の最小値との差。
(4d)グラフ線の値が最大値となる時刻と、グラフ線の値が最小値となる時刻との時間差。
(5d)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間のグラフ線の値の差。
(6d)測定区間内におけるグラフ線の最大値。
(7d)測定区間内におけるグラフ線の最小値。
(8d)時刻Tm1におけるグラフ線の値。
(9d)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、グラフ線の値の平均値。
(10d)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、グラフ線の値の絶対値の平均値。
【0069】
[分析の具体例3]
上記の具体例1及び具体例2を含め、本発明では、更に多角的な分析が可能である。例えば、加速度データAx、加速度データAy、加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータから選択される値C1について、下記の分析が可能である。この値C1には、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。この値C1は、本願の測定により得られるデータに基づいて算出されるあらゆる値を含む。測定区間も、前述の通り限定されない。
(1e)時刻Tm1における値C1の値と、測定区間内における値C1の最大値との差。
(2e)時刻Tm1における値C1の値と、測定区間内における値C1の最小値との差。
(3e)測定区間内における値C1の最大値、測定区間内における値C1の最小値との差。
(4e)値C1の値が最大値となる時刻と、値C1の値が最小値となる時刻との時間差。
(5e)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間の値C1の値の差。
(6e)測定区間内における値C1の最大値。
(7e)測定区間内における値C1の最小値。
(8e)時刻Tm1における値C1の値。
(9e)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、値C1の値の平均値。
(10e)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、値C1の値の絶対値の平均値。
【0070】
これらのうち、特に好ましいのは、(3c)及び(4c)である。これら(3c)及び(4c)は、グラフ線における特徴的な指標であり、有意性のある差が発現しやすい指標であると考えられる。また、(3c)及び(4c)は、ゴルファーにとっても理解しやすい指標である。
【0071】
上記時刻Tm1として、スイング開始時、トップオブスイング、インパクト等が例示される。スイングの特徴を捉える観点から、上記時刻Tm1は、トップオブスイング又はインパクトとされるのが好ましく、トップオブスイングとされるのがより好ましい。また、スイングの特徴を捉える観点から、測定区間の開始時刻(時刻0)が時刻Tm1とされるのが好ましい。
【0072】
上記時刻Tm2は、上記時刻Tm1よりも後である限り、限定されない。上記時刻Tm2として、トップオブスイング、インパクト、フィニッシュ等が例示される。スイングの特徴を捉える観点から、上記時刻Tm2は、インパクトとされるのが好ましい。また、スイングの特徴を捉える観点から、測定区間の終了時刻が時刻Tm2とされるのが好ましい。
【0073】
スイングの再現性は、有益な情報である。この再現性は、例えば、特定のゴルファーに対する特定のゴルフクラブの適合性を判断する指標となりうる。即ち、再現性が高いゴルフクラブは、そのゴルファーに適合している可能性が高いと判断されうる。再現性は、複数のスイングの間のデータの相違により判断される。再現性を判断する際のスイング回数は限定されず、2回であってもよいし、3回以上であってもよい。
【0074】
例えば、同一のゴルファーが異なるゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することができる。再現性の高いゴルフクラブの方が、相対的に、そのゴルファーに適していると判断することができる。また、同一のゴルファーが、シャフトのみが異なる複数種類のゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することができる。再現性の高いシャフトが、相対的に、そのゴルファーに適していると判断することができる。
【0075】
このように、特定の仕様のみが異なる複数のゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することにより、そのゴルファーに適した仕様を見いだすことが可能である。この仕様は限定されず、例えば、シャフトのフレックス、シャフトトルク、スイングバランス、グリップ太さ、グリップ材質、ヘッドの重心位置(重心深度、重心距離等)、クラブ長さ、クラブ重量、等である。
【0076】
再現性を判断する指標として、上記(1c)、(2c)、(3c)、(4c)、(5c)、(6c)、(7c)、(8c)、(9c)、(10c)、(1d)、(2d)、(3d)、(4d)、(5d)、(6d)、(7d)、(8d)、(9d)、(10d)、(1e)、(2e)、(3e)、(4e)、(5e)、(6e)、(7e)、(8e)、(9e)及び(10e)からなる群から選択される1つ以上の値が挙げられる。複数回のスイングを測定し、これらの値の近似性が判断される。この近似性が高いほど、再現性が高いと判断することができる。即ち、複数回のスイングでバラツキが少ないほど、再現性が高いと判断することができる。
【0077】
再現性を判断する好ましい指標として、下記が例示される。これらの再現性の指標は、複数回のスイングデータに基づく。例えば、これらの再現性の指標は、同一のテスターが、同一のゴルフクラブを複数回スイングして得られたデータに基づく。以下の指標は、上記値C1のいずれにもに適用されうる。測定区間も、前述の通り限定されない。下記時刻Tm1は、測定区間内における一時刻を意味し、限定されない。なお、複数回のスイングとは、例えば、スイングAとスイングBからなる2回のスイングであってもよいし、3回以上のスイングであってもよい。また、スイングA及びスイングBが、3回以上のスイングから選択された2回のスイングであってもよい。
【0078】
(1f)複数回のスイング間における値C1の差が最大値となる時刻における、その差の絶対値。
(2f)複数回のスイング間における値C1の差の、測定区間における平均値。
(3f)複数回のスイング間における値C1の差の絶対値の、測定区間における平均値。
(4f)複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1。ただし、グラフの横軸は時間又は上記値C1のうち1つとされ且つグラフの縦軸は時間又は上記値C1の1つとされる。縦軸と横軸とは、異なっている限り、限定されない。本願においてグラフ線とは、値C1の時系列的データとしてプロットされた点が直線で結ばれた折れ線である。
(5f)スイングAにおける値C1の最大値と、スイングBにおける値C1の最大値との差の絶対値。これらの最大値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最大値であって、最大値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(6f)スイングAにおいて値C1が最大となる時刻Ta1と、スイングBにおいて値C1が最大となる時刻Tb1との差(Ta1−Tb1)の絶対値。
(7f)スイングAにおける値C1の最小値と、スイングBにおける値C1の最小値との差の絶対値。これらの最小値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最小値であって、最小値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(8f)スイングAにおいて値C1が最小となる時刻Ta2と、スイングBにおいて値C1が最小となる時刻Tb2との差(Ta2−Tb2)の絶対値。
【0079】
再現性を判断するより好ましい指標として、下記が例示される。これらの再現性の指標は、複数回のスイングデータに基づく。例えば、これらの再現性の指標は、同一のテスターが、同一のゴルフクラブを複数回スイングして得られたデータに基づく。以下の指標は、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzのそれぞれに適用されうる。測定区間も、前述の通り限定されない。下記時刻Tm1は、測定区間内における一時刻を意味し、限定されない。
【0080】
(1g)複数回のスイング間における加速度の差Adが最大値(Admax)となる時刻における、その加速度の差Admaxの絶対値。
(2g)複数回のスイング間における加速度の差Adの、測定区間における平均値。
(3g)複数回のスイング間における加速度の差Adの絶対値の、測定区間における平均値。
(4g)複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1。ただし、このグラフ線は、横軸が時間とされ且つ縦軸が加速度とされたグラフにおいて、加速度の時系列的データとしてプロットされた点を直線で結んだ折れ線である。
(5g)スイングAにおける加速度の最大値と、スイングBにおける加速度の最大値との差の絶対値。これらの最大値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最大値であって、最大値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(6g)スイングAにおいて加速度が最大となる時刻Ta1と、スイングBにおいて加速度が最大となる時刻Tb1との差(Ta1−Tb1)の絶対値。
(7g)スイングAにおける加速度の最小値と、スイングBにおける加速度の最小値との差の絶対値。これらの最小値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最小値であって、最小値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(8g)スイングAにおいて加速度が最小となる時刻Ta2と、スイングBにおいて加速度が最小となる時刻Tb2との差(Ta2−Tb2)の絶対値。
【0081】
これらのうち、特に好ましいのは、上記(4g)である。上記面積s1には、所定区間の時系列的なデータが反映される。よって、この面積s1は、特定の時刻のみのデータを用いる場合と比較して、再現性の指標として優れている。面積s1が小さいほど、再現性が高いと判断することができる。
【0082】
本発明では、上記加速度データAx、上記加速度データAy又は加速度データAzに代えて、Axの絶対値、Ayの絶対値又はAzの絶対値が用いられてもよい。加速度の向きよりも加速度の大きさが問題となるような分析を行う場合、絶対値を用いた分析が有効である。
【0083】
本発明では、上記加速度データAx、上記加速度データAy又は加速度データAzに代えて、これらAx、Ay及びAzを含む群から選択される2つ又は3つを用いて算出されたデータが用いられても良い。この算出方法として、例えば、Ax、Ay及びAzからなる群から選ばれる2つ又は3つの加減乗除、Axの絶対値、Ayの絶対値及びAzの絶対値からなる群から選ばれる2つ又は3つの加減乗除、等が例示される。これらの算出データは、各計算式固有の意義を有しうる。また、これらの算出データに基づき、スイングの特徴やスイングの再現性を判断することができる。種々の算出データとスイングとを比較することにより、算出データとスイングとの関連性を見いだすことが可能である。種々の算出データと打球結果とを比較することにより、両者の相関を見いだすことが可能である。これらの算出データは、スイング分析に役立ちうる。
【0084】
2個以上の加速度計測装置が用いられるとき、これらの複数の装置の測定値同士で計算される値が、分析に用いられても良い。例えば、第一の加速度計測装置のデータ(Ax、Ay、Az)が(Ax1、Ay1、Az1)とされ、第二の加速度計測装置のデータ(Ax、Ay、Az)が(Ax2、Ay2、Az2)とされるとき、Ax1、Ay1、Az1、Ax2、Ay2及びAz2からなる群から選ばれる2つ又は3つ以上のデータから計算される値が、分析に用いられても良い。この値の例として、x軸方向の加速度データ同士(Ax1及びAx2)の加減乗除、y軸方向の加速度データ同士(Ay1及びAy2)の加減乗除、z軸方向の加速度データ同士(Az1及びAz2)の加減乗除、等が挙げられる。
【0085】
また、データAx、データAy及びデータAzはベクトルデータでもある。よって、これらのベクトルを分析することにより、スイング分析がなされてもよい。例えば、これらのベクトルの分析により、加速度の方向、力の方向、加速度の角度、力の角度が分析されうる。このベクトルの分析の一例は、後述の実施例で示される。
【0086】
測定にあたっては、トリガー信号を用いるのが好ましい。トリガー信号により、測定が開始されるのが好ましい。好ましくは、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づけるのがよい。より好ましくは、トリガー信号の発生時点が、時刻0(ゼロ)とされる。
【0087】
トリガー信号を発生させるタイミングは限定されない。スイング中の特徴的な場面を基準時刻とすることにより、加速度データとスイングとの関連が理解しやすい。この観点から、トリガー信号は、テークバックの開始時点、トップオブスイング又はインパクトであるのが好ましく、トップオブスイング又はインパクトであるのがより好ましく、トップオブスイングであるのがより好ましい。
【0088】
前述の通り、測定区間は限定されない。前述の通り、測定区間は、評価目的等を考慮して適切に設定されうる。測定区間として、以下が例示される。
(1)アドレスからフィニッシュまで(つまり、スイング全体)
(2)アドレスからインパクトまで
(3)アドレスからトップオブスイングまで
(4)トップオブスイングからインパクトまで
(5)インパクトからフィニッシュまで
(6)上記(1)から(5)の区間の一部
【0089】
前述の通り、スイングの特徴は、特にトップオブスイングからインパクトまでの間に現れやすい。また、トップオブスイングからインパクトまでの間の動きは、打球結果との相関が大きい。これらの観点から、測定区間は、トップオブスイングからインパクトまでを含むのが好ましい。より少ないデータでより精度の高い分析を行う観点からは、測定区間は、トップオブスイングからインパクトまでであるのが好ましい。
【0090】
トリガー信号は、自動で発生させてもよいし、手動で発生させてもよい。手動で発生させる方法の一例としては、スイング又はスイング画像を見ながら、所定のタイミングで観察者がスイッチ等を押してトリガー信号を発生させる。例えば、トップオブスイングの時点でトリガー信号を発生させる場合、観察者がトップオブスイング(図5の(S3)の状態)を確認して、スイッチ等を押せばよい。
【0091】
トリガー信号を自動で発生させるトリガー装置が用いられてもよい。このトリガー装置は、例えばレーザーセンサを有し、このレーザーセンサのレーザーがヘッド又はシャフト等により遮られたときにトリガー信号を発生させるものでもよい。打撃されたボールがレーザーを遮ったときにトリガー信号を発生させる装置であってもよい。打球音を検知してトリガー信号を発生させる装置であってもよい。テークバックの開始時においてヘッドがレーザーを遮ったときにトリガー信号を発生させる装置であってもよい。
【0092】
トリガー装置が、ヘッドに取り付けられた加速度センサを有し、この加速度センサがインパクト時の衝撃力を検知したときにトリガー信号を発生させるものであってもよい。インパクトの瞬間にトリガー信号を発生させる場合、このインパクト前及び/又はインパクト後の所定時間(例えば、インパクト前の0.2〜0.5秒間)をデータ取り込み時間として設定してもよい。
【0093】
スイング画像の画像処理により、自動でトリガー信号を発生させてもよい。例えば、画像処理により、ヘッド、シャフト又はグリップの速度の絶対値が最小(典型的には0)となる瞬間を検知し、この瞬間にトリガー信号を発生させてもよい。この場合、トップオブスイングの時点が自動で検知されうる。
【0094】
以上の説明の如く、本発明のスイング分析方法は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の三次元加速度計測装置を用意するステップと、この三次元加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。好ましくは、この分析方法により、後述の実施例で示されるような加速度の時系列的なデータを得る。
【0095】
好ましくは、上記加速度データは、上記前後方向(Z軸方向)の成分を有しているのがよい。上記実施形態では、z軸方向の加速度データAzが、前後方向(Z軸方向)の成分を有している。この加速度データAzを分析することにより、前後方向(Z軸方向)の加速度の傾向を知ることが出来る。
【0096】
左右方向(X軸方向)の加速度は、ヘッドスピードとの関連が大きいと考えられる。、左右方向(X軸方向)の加速度は、体重移動やスウェイなど、スイングにおける重要な動きの指標になると考えられる。また、シャフトの傾角やシャフトのしなりは、上下方向(Y軸方向)の加速度との関連が大きいと考えられる。また上下方向(Y軸方向)の動きの大小は、スイングの特徴として現れやすいと考えられる。一方、これに対して、前後方向(Z軸方向)の加速度については、左右方向(X軸方向)や上下方向(Y軸方向)と比較して、あまり重要でないと予想された。しかし、今回の発明で得られたデータによれば、前後方向(Z軸方向)の加速度が、スイング分析の上で重要であることがわかった。よって、z軸方向の加速度は、スイングの特徴や再現性等を示す指標となりうることが判明した。
【0097】
本発明の分析方法は、スイングの良否の判断にも活用されうる。例えば、本来あまり動いてはいけない部位(例えば首付近)に過度の加速度変化が観測された場合、その部位に無駄な動きが存在することを確認することができる。
【0098】
[加速度計測装置の数及び位置]
加速度計測装置の装着数は限定されない。多角的な分析を可能とする観点から、加速度計測装置の取り付け数は、2箇所以上とされるのが好ましい。取り付け数の上限は特に限定されないが、分析に要する負担を考慮すると、10箇所以下、更には5箇所以下とすることができる。多角的な分析を行う観点から、2箇所以上の加速度計測装置が装着される場合、それらの加速度計測装置の最大離間距離は、20cm以上が好ましく、30cm以上がより好ましく、40cm以上が更に好ましい。
【0099】
加速度計測装置の取り付け位置は限定されない。この取り付け位置として、頭、顔、首、腕、肩、肘、背中、腰、手首、腹、尻、膝、足首、手の甲、足の甲等が例示される。加速度計測装置は、着衣に取り付けられてもよいし、人体の肌に直接取り付けられてもよい。スイングの特徴が現れやすい部位に装着するのが好ましい。この観点から、取り付け位置は、頭、首、肩、背中、腰又は手首であり、且つ、取り付け箇所が2箇所以上であるのが好ましい。より好ましくは、頭、首、肩、背中、腰及び手首から選ばれる群から選択される2つの部位以上に取り付けられるのがよい。また、分析の多様性の観点から、人体に加えて、クラブにも加速度計測装置が取り付けられてもよい。
【0100】
サンプリング周波数は限定されない。スイングの時間は0.3秒から1秒程度と比較的短い。高精度な分析のためには、単位時間当たりのデータが多い方が好ましい。この観点から、サンプリング周波数は、20Hz以上が好ましく、50Hz以上がより好ましく、100Hz以上がより好ましく、200Hz以上が更に好ましい。サンプリング周波数が多いほど分析精度が向上するので、基本的には、サンプリング周波数は大きいほど好ましい。ただし、データ数が多すぎる場合、データ処理の時間が長くなる。また、無線通信の通信速度には限界がある。現在において実施可能な無線通信の通信速度を考慮すると、サンプリング周波数は、400Hz以下が好ましい。後述される実施例で示されるように、サンプリング周波数が200Hzの場合、高精度な分析が可能である。
【0101】
ゴルフスイングでは、大きな加速度が発生しうる。特に、手首など動きの激しい部位では、大きな加速度が生じうる。この観点から、加速度計測装置の測定可能な加速度の最大値(測定限界加速度)は、3G以上が好ましく、5G以上が好ましい。測定可能範囲を広げる観点から、この最大測定加速度は大きいほど好ましい。
【0102】
加速度計測装置4の大きさ及び重量は限定されないが、スイングを妨げない観点から、加速度計測装置は、小型でかつ軽量であるのが好ましい。この観点から、加速度計測装置の重量は、10g以下であるのが好ましく、6g以下であるのがより好ましい。
【0103】
[無線通信]
無線通信の方法として、公知の規格又は技術が用いられ得る。一般に無線LAN等において普及している無線技術及び規格が用いられ得る。無線通信の規格として、IEEE802.11シリーズ、IEEE802.15シリーズ等が挙げられる。「IEEE」とは、電気電子学会(Institute of Electrical and Electronic Engineers)を意味する。IEEE802.15シリーズとして、Bluetooth(ブルートゥース;IEEE802.15.1)、Ultra Wideband(UWB;IEEE802.15.3a)、ZigBee(IEEE802.15.4)等が例示される。赤外線や可視光線等を用いた光無線通信であってもよい。汎用性、通信速度等の観点から、Bluetooth(ブルートゥース)が好ましく利用される。
【0104】
Bluetooth(ブルートゥース)は、2.4GHzの周波数帯の電波を用いて情報のやりとりを行う、無線通信規格及びその技術を意味する。このBluetooth(ブルートゥース)の規格には、1.0b、1.0b+CE(Critical Errata)、1.1、1.2、2.0、2.1等があり、これらの全てが本発明に利用可能である。また、通信のプロトコルとして、Bluetoothにおいて標準化されている各種のプロファイルが用いられうる。電波強度として、クラス1(100mW)、クラス2(2.5mW)及びクラス3(1mW)知られており、測定条件によっていずれのクラスが用いられてもよい。スイングの妨げになることを防止する観点から、通信距離が10m以上であるのが好ましく、この観点から、クラス1(100mW)又はクラス2(2.5mW)が好ましい。
【0105】
加速度データは、スイングの画像と同期して測定されるのが好ましい。この同期は、加速度データとスイングとの関連性の分析に役立つ。
【実施例】
【0106】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0107】
なお、以下の図8から図40(グラフ)の一部において、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」との記載がある。これらの「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」は、厳密な意味ではない。例えば、後述する図8において、縦軸に、「→右」及び「→左」との表記がある。この「右」及び「左」は、厳密な意味ではない。換言すれば、この「右」及び「左」は、上記左右方向(X軸方向)を厳密に示すものではない。前述したように、加速度センサーの「x軸方向」は、左右方向(X軸方向)と完全には一致しない。前述したように、「x軸方向」の加速度は、左右方向(X軸方向)の加速度の傾向を示す。このことに鑑み、グラフの理解を容易とする観点から、x軸方向の加速度が増加する方向(プラスの方向)が「→右」と表記されており、x軸方向の加速度が減少する方向(マイナスの方向)が「→左」と表記されている。他のグラフの「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」についても同様の趣旨である。
【0108】
[実施例1]
図1及び図2に示すように、テスターt1に2個の加速度計測装置4を取り付けた。加速度計測装置4として、バイセン株式会社製の加速度計測装置が用いられた。この加速度計測装置の仕様は、総重量が6gであり、電源はボタン電池であり、最大測定加速度は5Gであり、サンプリング周波数は200Hzである。
【0109】
テスターt1がスイングを行い、加速度が測定された。観察者がトップオブスイングスイングを目視で確認し、トップオブスイングの瞬間にトリガー信号を発生させるためのスイッチを押した。トップオブスイングの時刻が0(ゼロ)とされて、測定がなされた。トップオブスイングからインパクトまでが測定区間とされた。
【0110】
A氏及びB氏の2名がテスターとなり、測定が行われた。
【0111】
図8、図9及び図10は、A氏の測定結果を示す[時間−加速度]グラフである。図8は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図9は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図10は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。A氏が、同一のゴルフクラブを3回スイングした。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。この3回の測定結果のそれぞれが、各グラフに示されている。よって、各グラフにおいては、加速度計測装置41の測定結果を示すグラフ線が3本描かれており、且つ、加速度計測装置42の測定結果を示すグラフ線が3本描かれている。3本の実線は、全く同じではない。3本の実線のズレ量は、スイングの再現性と相関する。同様に、3本の波線のズレ量は、スイングの再現性と相関する。このズレ量が少ないほど、スイングの再現性が高いと考えられる。スイングの再現性が高いことは、ゴルフクラブのフィッティングにおいて重要である。スイングの再現性が高いことは、テスターに適合したゴルフクラブであることを示す指標の一つとなりうる。
【0112】
図11、図12及び図13は、B氏の測定結果を示す[時間−加速度]グラフである。図11は、x軸方向の加速度データのグラフである。図12は、y軸方向の加速度データのグラフである。図13は、z軸方向の加速度データのグラフである。これらのグラフにおいて、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。B氏が、同一のゴルフクラブを3回スイングした。ゴルフクラブとして、A氏が用いた上記ゴルフクラブが用いられた。この3回の測定結果のそれぞれが、各グラフに示されている。よって、各グラフにおいては、加速度計測装置41の測定結果を示すグラフ線が3本描かれており、且つ、加速度計測装置42の測定結果を示すグラフ線が3本描かれている。
【0113】
A氏のデータとB氏のデータとを比較すると、同一のゴルフクラブをスイングしたにも関わらず、データに有意な相違が見られる。これらの加速度データは、個々のゴルファーのスイングの特徴を示しうる。
【0114】
加速度データは、前述の通り種々の分析に適用することができる。これらの分析結果は、定量的である。この定量的なデータは、官能的なテスト(フィーリングテスト)と比較して信頼性に優れる。また、例えば、得られたデータと打球の結果とを比較することにより、良い結果を生む場合のデータを決定することができる。良い結果につながるデータの解明は、適切なゴルフクラブの選択に役立つ。例えばゴルフショップの店頭において加速度データを測定し、その結果に基づいて適切なゴルフクラブを選択することができる。また良い結果につながるデータの解明は、ゴルフクラブの開発に役立つ。また、加速度データは、スイングの分類に役立つ。例えば、得られたグラフ線のパターンに基づき、スイングが分類されうる。加速度データにより、分類されたスイング毎の適切なクラブが開発されうる。
【0115】
上記の結果から、A氏のスイングの特徴として、上下方向(Y軸方向)の加速度変動が比較的大きいと判断することが可能である。また、A氏は、上記テストクラブにおいて、比較的高い再現性を示していると考えられる。即ち上記テストクラブは、A氏に対する適合性が比較的高いと考えることができる。
【0116】
一方、B氏のスイングの特徴として、いずれの方向に対しても加速度変動が比較的小さいスイングであると判断することが可能である。また、B氏は、上記テストクラブにおいて、比較的低い再現性を示していると考えられる。即ち上記テストクラブは、B氏に対する適合性が比較的低いと考えることができる。
【0117】
[実施例2]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記A氏が2種類のゴルフクラブをスイングした。 図14、図15及び図16は、このテスト結果を示す[時間−加速度]グラフである。2種類のゴルフクラブの内訳は、次の通りである。第一のゴルフクラブは、SRIスポーツ社製の商品名「スリクソンZR−800」(W#1、SV−3016J T−55カーボンシャフト、フレックス「R」)とされた。第二のゴルフクラブは、SRIスポーツ社製の商品名「スリクソンZR−700」(W#1、SV−3012J T−55カーボンシャフト、フレックス「R」)とされた。各クラブで3回ずつスイングした。
【0118】
図14は、x軸方向の加速度データのグラフである。図15は、y軸方向の加速度データのグラフである。図16は、z軸方向の加速度データのグラフである。これらのグラフにおいて、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。また、等間隔おきに黒丸を付したグラフ線が「ZR−700」のデータであり、同黒丸が付されていないグラフ線が、「ZR−800」のデータである。これらのグラフに基づき、前述した種々の分析を行うことにより、例えば、「ZR−700」と「ZR−800」との比較において、どちらがA氏に適合しているかが判断されうる。
【0119】
上記図10のデータを例として、具体的な分析の一例を説明する。図17は、首における加速度に関して、1回目のスイングのグラフ線と2回目のスイングのグラフ線とで囲まれた面積s1が、ハッチングで示されている。この面積s1が小さいほど、スイングの再現性が高いと考えられる。図18は、3回のスイングにより得られた3本のグラフ線で囲まれた面積s1が、ハッチングで示されている。この面積s1が小さいほど、スイングの再現性が高いと考えられる。スイング回数が多くされるほど、面積s1による判断の信頼性が向上しうる。
【0120】
図19は、図10の「首」の3本のグラフ線のうちの1本を示す。このグラフ線を例として、他の具体的な分析の一例を説明する。図19のグラフ線において加速度が最大となる点が符号M1で示されており、加速度が最小となる点が符号M2で示されており、測定開始時の点が符号Msで示されており、測定終了時の点が符号Mfで示されている。例えば、M1における加速度Amaxと、M2における加速度Aminとの差(Amax−Amin)は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、M1の時刻からM2の時刻までの時間Td1は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、Msにおける加速度Asと、Mfにおける加速度Afとの差(As−Af)及びその絶対値|As−Af|は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。
【0121】
図20は、図10の「首」の3本のグラフ線のうちの2本を示す。このグラフ線を例として、他の具体的な分析の一例を説明する。図20の複数(2本)のグラフ線において加速度が最大となる点が符号M11で示されており、この複数(2本)のグラフ線において加速度が最小となる点が符号M21で示されている。例えば、M11における加速度Amaxと、M21における加速度Aminとの差(Amax−Amin)は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、M11の時刻からM21の時刻までの時間Td1は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。この例が示すように、分析は、2回の測定に対して適用されてもよい。前述したあらゆる分析項目は、1回の測定に対して適用されてもよいし、複数回の測定に対して適用されてもよい。分析対象が複数回の測定とされることにより、分析精度が向上しうる。
【0122】
[実施例3]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記A氏のスイング(上記実施例1とは別のスイング)が測定された。トップオブスイングからインパクトまでの間が測定された。図21から図30は、この測定結果を示すグラフである。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。
【0123】
図21、図22及び図23は、[時間−加速度]グラフである。図21は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図22は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図23は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0124】
図24は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がy軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0125】
図25は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がz軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0126】
図26は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,y)との角度A1(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,y)とは、x軸方向の加速度ベクトルとy軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A1は、次の式により算出される。
A1=arctan(y/x)
【0127】
図26において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A1により、スイングが分析される。この角度A1のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A1及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0128】
図27は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,z)との角度A2(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,z)とは、x軸方向の加速度ベクトルとz軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A2は、次の式により算出される。
A2=arctan(z/x)
【0129】
図27において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A2により、スイングが分析される。この角度A2のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A2及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0130】
図28は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y)の大きさA3が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、y軸方向の加速度の値がyであるとき、このA3は、次の式により算出される。
A3=(x2+y2)1/2
【0131】
図28において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A3により、スイングが分析される。この値A3のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A3及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0132】
図29は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,z)の大きさA4が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、z軸方向の加速度の値がzであるとき、このA4は、次の式により算出される。
A4=(x2+z2)1/2
【0133】
図29において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A4により、スイングが分析される。この値A4のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A4及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0134】
図30は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y,z)の大きさA5が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、y軸方向の加速度の値がyであり、z軸方向の加速度の値がzであるとき、このA5は、次の式により算出される。この値A5は、その加速度計に作用する加速度の大きさそのものである。
A5=(x2+y2+z2)1/2
【0135】
図30において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A5により、スイングが分析される。この値A5のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A5及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0136】
[実施例4]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記B氏のスイング(上記実施例1とは別のスイング)が測定された。トップオブスイングからインパクトまでの間が測定された。図31から図40は、この測定結果を示すグラフである。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。
【0137】
図31、図32及び図33は、[時間−加速度]グラフである。図31は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図32は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図33は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0138】
図34は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がy軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0139】
図35は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がz軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0140】
図36は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,y)との角度A1(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,y)とは、x軸方向の加速度ベクトルとy軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A1の算出式は、前述の通りである。
【0141】
図36において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A1により、スイングが分析される。この角度A1のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A1及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0142】
図37は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,z)との角度A2(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,z)とは、x軸方向の加速度ベクトルとz軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A2の算出式は、前述の通りである。
【0143】
図37において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A2により、スイングが分析される。この角度A2のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A2及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0144】
図38は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y)の大きさA3が示されたグラフである。このA3の算出式は、前述の通りである。
【0145】
図38において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A3により、スイングが分析される。この値A3のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A3及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0146】
図39は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,z)の大きさA4が示されたグラフである。このA4の算出式は、前述の通りである。
【0147】
図39において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A4により、スイングが分析される。この値A4のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A4及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0148】
図40は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y,z)の大きさA5を示すグラフである。このA5の算出式は、前述の通りである。
【0149】
図40において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A5により、スイングが分析される。この値A5のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A5及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0150】
以上に例示されたように、本発明では、多角的なスイング分析が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、ゴルフスイングの分析に適用されうる。この分析結果は、ゴルフクラブやゴルフボール等の開発、特定のゴルファーに適したゴルフクラブ及び/又はゴルフボールの選択、等に適用することができる。この分析結果は、ゴルフショップの店頭においても利用されうる。
【符号の説明】
【0152】
2・・・スイング分析システム
4・・・加速度計測装置
41・・・第一の加速度計測装置
42・・・第二の加速度計測装置
6・・・無線受信装置
8・・・データ解析装置
20・・・粘着テープ
c1・・・ゴルフクラブ
b1・・・ゴルフボール
t1・・・テスター(スイングを分析されるゴルファー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフスイングの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフスイングは、ゴルファーごとに異なる。また、ゴルフクラブは、スイングに影響を与える。スイングとゴルフクラブとのマッチングは重要である。スイングとゴルフボールとのマッチングは重要である。
【0003】
ゴルフスイングの分析は、ゴルフクラブやゴルフボール等の開発に不可欠である。スイング分析の結果は、ゴルフクラブやゴルフボールの選択の基準となりうる。スイング分析は、ゴルフクラブやゴルフボール等の販売促進に役立つ。
【0004】
従来、ゴルファーの感性に基づくスイング分析が行われていた。このスイング分析では、定量的な評価ができなかった。ゴルファーの感性に基づく定性的な評価は、曖昧さを有している。定性的な評価は、正確さに欠ける傾向がある。
【0005】
特開平3−126477号公報は、ゴルフクラブに複数個の加速度センサを取り付けたスイング分析装置を開示する。特開平10−43349号公報は、手首よりも先側(手の甲等)に加速度センサーが取り付けられたスイング診断装置を開示する。特開2005−74010号公報には、ゴルフクラブヘッドに、シャフト軸方向の加速度を検知する加速度センサを取り付け、この加速度の値によりスイングを分類する方法が開示されている。特開2005−152321号公報は、ゴルフクラブの位置、姿勢検出システムを開示している。このシステムでは、ヘッド及びシャフトに三次元加速度センサーが取り付けられてる。特開2008−125722号公報は、シャフトに取り付けられた3軸加速度計により、シャフト周方向の振動を計測する打感評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−126477号公報
【特許文献2】特開平10−43349号公報
【特許文献3】特開2005−74010号公報
【特許文献4】特開2005−152321号公報
【特許文献5】特開2008−125722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スイング動作は複雑である。スイング分析は、種々の観点から行うことが望まれる。スイングを多角的に分析できる方法が求められている。また、分析精度の観点から、定量的なスイング分析の手法が求められている。
【0008】
本発明では、従来技術とは異なる観点に基づいてスイング分析を行う。本発明の目的は、多角的なスイング分析を可能とし、分析精度の向上に寄与しうるスイング分析方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフスイングの分析方法は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置を用意するステップと、この加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。
【0010】
好ましくは、上記加速度計測装置は、上記体の2箇所以上に取り付けられる。
【0011】
好ましくは、上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰又は手首である。
【0012】
好ましくは、上記加速度計測装置の1個当たりの重量は10g以下である。
【0013】
好ましくは、上記分析方法において、スイング中の一時点においてトリガー信号を発生させ、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づける。
【0014】
好ましくは、上記トリガー信号を発生させる一時点が、トップオブスイング又はインパクトである。
【0015】
好ましくは、打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされ、鉛直方向がY軸方向とされ、上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされたとき、上記加速度データが、上記Z軸方向の成分を有している。
【0016】
好ましくは、上記加速度データは、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータである。好ましくは、上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値と最小値との差がスイング分析の指標とされる。
【0017】
好ましくは、上記加速度データは、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータである。好ましくは、上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値における時刻と最小値における時刻との間の時間差Td1がスイング分析の指標とされる。
【0018】
好ましくは、同一のゴルファーが同一のゴルフクラブで複数回のスイングを行い、この複数のスイングデータに基づき複数のグラフ線を得る。好ましくは、これら複数のグラフ線で囲まれた面積s1がスイング分析の指標とされる。
【0019】
好ましくは、上記いずれかの分析方法に基づいて、スイングの再現性が判断される。
【0020】
本発明のゴルフクラブ選択方法は、上記いずれかに記載の分析方法に基づいて、上記スイングを行うゴルファーに適したゴルフクラブが選択される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスイング分析方法では、多角的な観点からスイング分析が可能である。また、定量的なスイング分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の分析方法に係るスイング計測方法の一例を説明するための図である。
【図2】図2は、図1のテスターを背中側から見た図である。
【図3】図3は、加速度計測装置の正面図及び側面図である。
【図4】図4は、スイングの様子を示す図である。アドレス及びテークバックが示されている。
【図5】図5は、スイングの様子を示す図である。トップオブスイング及びダウンスイングが示されている。
【図6】図6は、スイングの様子を示す図である。ダウンスイング及びインパクトが示されている。
【図7】図7は、スイングの様子を示す図である。フォロースルー及びフィニッシュが示されている。
【図8】図8は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図9】図9は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図10】図10は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の一例である。
【図11】図11は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図12】図12は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図13】図13は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図14】図14は、x軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図15】図15は、y軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図16】図16は、z軸方向の加速度の時系列的データの測定結果を示すグラフ線の他の一例である。
【図17】図17は、複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1を示す図である。
【図18】図18は、上記面積s1の他の一例を示す図である。
【図19】図19は、データ分析方法の一例を説明するためのグラフである。
【図20】図20は、データ分析の他の一例を説明するためのグラフである。
【図21】図21は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図22】図22は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図23】図23は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図24】図24は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図25】図25は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図26】図26は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図27】図27は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図28】図28は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図29】図29は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図30】図30は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図31】図31は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図32】図32は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図33】図33は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図34】図34は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図35】図35は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図36】図36は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図37】図37は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図38】図38は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図39】図39は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【図40】図40は、データ分析の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。本実施形態では、スイング分析システム2が用いられる。
【0025】
スイング分析システム2は、加速度計測装置4と、無線受信装置6と、データ解析装置8とを備えている。図1の実施形態では、2個の加速度計測装置4が用いられている。
【0026】
加速度計測装置4は、無線式である。加速度計測装置4は、無線により、測定データを発信しうる。この無線通信の詳細については後述される。無線通信として、例えばBluetooth(ブルートゥース)の規格及び技術が好適に用いられ得る。
【0027】
加速度計測装置4は、3軸方向(x軸、y軸及びz軸)のそれぞれの加速度を測定できる加速度センサーを内蔵している。更に加速度計測装置4は、A/D変換器、CPU、無線インターフェース、無線アンテナ及び電源を備えている。電源として、電池が用いられている。電池は、例えばリチウムイオン電池等の小型電池が好適に用いられる。いわゆるボタン型電池が好適に用いられ得る。電池は、充電可能なものであってもよい。加速度計測装置4は、電池を充填するための充電回路を備えていてもよい。
【0028】
図示しないが、無線受信装置6は、無線アンテナ、無線インターフェース、CPU及びネットワークインターフェースを備えている。
【0029】
データ解析装置8として、例えば、コンピュータが用いられる。データ解析装置8は、入力部12及び表示部14を備えている。図示しないが、データ解析装置8は、ハードディスク、メモリ、CPU及びネットワークインターフェースを備えている。入力部12は、キーボード16とマウス18とを備えている。
【0030】
図1には、スイング分析システム2の他、テスターt1と、ゴルフクラブc1と、ゴルフボールb1とが示されている。図1に描かれたテスターt1は、アドレス状態である。テスターt1は、右利きである。
【0031】
加速度センサーは、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のそれぞれの加速度を検知する。この加速度は、アナログ信号として得られる。このアナログ信号は、A/D変換器によって、デジタル信号に変換される。A/D変換器からの出力は、例えばCPUに伝達されて1次フィルタリング等の演算処理が実行される。
【0032】
このように加速度計測装置4内で処理されたデータは、無線インタフェースを介して、無線アンテナから送信される。
【0033】
加速度計測装置4の無線アンテナから送信されたデータは、無線受信装置6側の無線アンテナを介して、無線インタフェースによって受信される。この受信されたデータは、例えばCPUで演算処理され、例えばネットワーク22を介して、データ解析装置8に送られる。
【0034】
データ解析装置8に送られたデータは、ハードディスク等のメモリ資源に記録される。ハードディスクは、データ処理等に必要なプログラム及びデータ等を記憶している。このプログラムは、CPUに、必要なデータ処理を実行させる。CPUは、各種の演算処理を実行しうる。演算処理の例については、後述される。演算結果は、表示部14又は図示しない印刷装置等によって出力される。
【0035】
図2は、アドレス状態のテスターt1を背中側から見た図である。2個の加速度計測装置4は、テスターt1の腰の背中側に取り付けられた加速度計測装置41、及び、首の付け根近傍(以下、単に首ともいう)に取り付けられた加速度計測装置42である。図2の実施形態では、粘着テープ20により、加速度計測装置4が取り付けられている。加速度計測装置4の取り付け方法は限定されない。加速度計測装置4は小型、軽量で且つ配線を有していないため、テスターt1への取り付けは容易である。
【0036】
図3は、加速度計測装置4の拡大図である。図3(a)は、加速度計測装置4の正面図である。図3(b)は、加速度計測装置4の側面図である。加速度計測装置4は、上端4aと、下端4bとを有している。加速度計測装置4は、全体として、偏平な形状を呈している。この形状の加速度計測装置4は、人体への取り付けが容易である。
【0037】
加速度計測装置4は、小型で且つ軽量であるため、スイングの邪魔にならない。加速度計測装置4は、配線を有さないため、スイングを妨げない。本実施形態では、テスターt1が、測定機器によって邪魔されることなく、自然なスイングをすることができる。テスターt1は、本来のスイングをすることができる。加速度計測装置4により、自然なスイングが達成されるため、スイングの測定精度が向上する。
【0038】
加速度測定装置4に内蔵された加速度センサーは、3軸加速度センサーであり、3軸方向の加速度のそれぞれを測定することができる。
【0039】
[加速度センサーの測定方向:x軸、y軸、z軸]
加速度センサーの3方向が、本願では、x軸方向、y軸方向及びz軸方向と表記される。このx軸、y軸及びz軸は、3次元直交軸である。即ち、x軸方向はy軸方向に対して垂直であり、且つ、z軸方向はx軸方向及びy軸方向に対して垂直である。
【0040】
図3には、加速度計測装置4の測定可能な3方向、即ち、x軸方向、y軸方向及びz軸方向が示されている。本実施形態の加速度計測装置4では、y軸方向が、加速度計測装置4の長手方向である。即ち、上端4aと下端4bとを結ぶ方向が、y軸方向である。x軸方向は、加速度計測装置4の右側面と左側面とを結ぶ方向である。z軸方向は、x軸方向に垂直であり、且つy軸方向に垂直である。
【0041】
なお、本願では、上記 x軸、y軸及びz軸とは別に、大文字の「X」、「Y」及び「Z」を用いたX軸、Y軸及びZ軸が定義される。このX軸、Y軸及びZ軸(大文字)は、空間における三次元直交軸を示す。これに対し、加速度センサーの測定方向であるx軸、y軸及びz軸では、小文字の「x」、「y」及び「z」が用いられる。このように本願では、大文字と小文字により、各軸を区別している。X軸、Y軸及びZ軸(大文字)の詳細については、次の通りである。
【0042】
[空間における三次元直交軸:X軸、Y軸、Z軸]
本願では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向が、下記の如く定義される。
【0043】
(1)X軸方向
打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされる。このX軸方向は、図2で示されている。このX軸方向が、本願において、左右方向とも称される。
【0044】
(2)Y軸方向
鉛直方向が、Y軸方向とされる。換言すれば、水平面に対して垂直な方向が、Y軸方向とされる。このY軸方向が、図1及び図2に示されている。このY軸方向は、本願において、上下方向とも称される。
【0045】
(3)Z軸方向
上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされる。Z軸方向が、図1及び図2に示されている。このZ軸方向は、本願において、前後方向とも称される。
【0046】
加速度計測装置4が取り付けられる姿勢は限定されない。上記x軸方向、y軸方向及び/又はz軸方向が測定したい方向とできるだけ一致するように、加速度計測装置4が取り付けられるのが好ましい。スイング分析の目的によって、加速度計測装置4の取り付け時の姿勢は、適宜決定されうる。
【0047】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のx軸方向がX軸方向にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0048】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のy軸方向がY軸方向(上下方向)にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0049】
本実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、加速度計測装置4のz軸方向がZ軸方向(前後方向)にできるだけ近くなるように、加速度計測装置4がテスターt1に装着される(図2参照)。
【0050】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も左右方向(X軸方向)に近いのが、x軸方向である。左右方向(X軸方向)の加速度の傾向が、x軸方向の加速度によって判断されうる。
【0051】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も上下方向(Y軸方向)に近いのが、y軸方向である。上下方向(Y軸方向)の加速度の傾向が、y軸方向の加速度によって判断される。
【0052】
上記実施形態では、アドレス状態のテスターt1において、x軸方向、y軸方向及びz軸方向のうち、最も前後方向(Z軸方向)に近いのが、z軸方向である。前後方向(Z軸方向)の加速度の傾向が、z軸方向の加速度によって判断される。
【0053】
本願では、スイング中の所定時間が、「区間」とも称される。測定がなされる時間が、測定区間とも称される。測定区間は、スイングの全体であってもよいし、スイングの一部であってもよい。
【0054】
スイングの始まりは、アドレスである。スイングの終わりは、フィニッシュと称される。図4から図7は、テスターt1がスイングする様子を示す図である。図4から図7は、テスターt1の正面(前側)から見た図である。スイングは、(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、(S5)、(S6)、(S7)、(S8)の順で進行する。(S1)及び(S2)が、図4に示されている。(S3)及び(S4)が、図5に示されている。(S5)及び(S6)が、図6に示されている。(S7)及び(S8)が、図7に示されている。図4の(S1)は、アドレスである。図4の(S2)は、テークバックである。図5の(S3)は、トップオブスイング(トップ)である。通常、トップオブスイングでは、ヘッドの移動速度が、スイング中において最小である。図5の(S4)は、ダウンスイングである。図6の(S5)も、ダウンスイングである。(S5)は、(S4)よりもダウンスイングが進行した状態である。図6の(S6)は、インパクトである。インパクトは、ゴルフクラブc1のヘッドとゴルフボールb1とが衝突した瞬間である。図7の(S7)は、フォロースルーである。図7の(S8)は、フィニッシュである。フィニッシュで、スイングは終了する。
【0055】
スイング分析システム2では、スイング中の少なくとも一時点(一時刻)におけるデータが計測される。好ましくは、スイング中の二時刻又は三時刻以上におけるデータが計測される。より好ましくは、スイング中の一部又は全部の区間の時系列的なデータが測定される。
【0056】
分析の対象となるデータは、加速度計測装置4により測定された一時刻又は二時刻以上における加速度データ又はこの加速度データから算出されるデータである。
【0057】
加速度計測装置4により測定される加速度データは、以下の3種類である。
(1a)x軸方向の加速度データAx
(2a)y軸方向の加速度データAy
(3a)z軸方向の加速度データAz
【0058】
好ましい本発明では、複数の加速度計測装置4が用いられる。この場合、上記加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzが、それぞれ複数得られる。複数の加速度計測装置4が用いられることにより、分析の多様性が向上する。図1の実施形態では、2個の加速度計測装置4が用いられている。
【0059】
上記加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzは、一の時刻又は二以上の複数の時刻におけるデータであってもよいし、時系列的なデータであってもよい。分析の多様性を高める観点から、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzは、時系列的なデータであるのが好ましい。時系列的なデータとは、所定の時間間隔ごとに得られるデータの集合であり、各時刻毎の加速度データを有する。この時系列的なデータの時間間隔は、例えば、加速度計測装置4のサンプリング周波数により決定される。サンプリング周波数が大きいほど、1秒当たりに得られるデータの数が増加する。
【0060】
時系列的な加速度データは、スイング中の時刻Tm1から時刻Tm2までのデータとして得られる。時刻Tm1及び時刻Tm2は、スイング中の時刻である限り、特に限定されない。
【0061】
測定区間は、スイング時間の全てであってもよいし、スイング時間の一部であってもよい。分析の対象となるデータは、スイング中の一時刻であってもよいし、二以上の時刻のデータであってもよいし、時刻Tm1から時刻Tm2までの時系列的なデータであってもよい。
【0062】
好ましくは、測定区間は、トップオブスイング(単にトップとも称される)からインパクトまでを含むのがよい。好ましくは、分析対象となる時系列的なデータは、トップオブスイングからインパクトまでを含むのがよい。トップオブスイングからインパクトまでの間に、各ゴルファーのスイングの特徴が現れやすいからである。もちろん、測定区間は、テークバック、ダウンスイング又はフォロースルーの時間を含んでいても良い。測定区間は、アドレスからフィニッシュまでであってもよい。また、インパクト近傍のみを測定区間とするなど、比較的短い時間を測定区間とすることも可能である。測定区間は、スイング分析の目的等に応じて適宜決定されうる。
【0063】
加速度計測装置4により測定された加速度データから算出されるデータとして、以下が例示される。
(1b)上記データAx、上記データAy及び上記データAzからなる群から選択される2つ又は3つのデータを用いて算出されるデータ。
(2b)2個以上の加速度計測装置4から得られる上記(1b)のデータを用いて算出されるデータ。
【0064】
上記(1b)のデータとして、加速度の三次元データが挙げられる。上記データAx、上記データAy及び上記データAzのベクトル和により、この三次元データが得られる。また、例えば、(Az2+Ay2+Az2)1/2により、加速度の大きさが算出される。
【0065】
分析精度の観点から、2個以上の加速度計測装置4が用いられる場合、それらのデータ間では同期が取られているのが好ましい。この同期により、2個以上の加速度計測装置4間におけるデータの関連性について分析することができる。
【0066】
分析対象となる加速度データは、1回のスイングで得られるデータであってもよいし、複数のスイングで得られるデータであってもよい。例えば、同一人が同一のゴルフクラブで複数回スイングしたデータを分析することは、スイングの再現性を判断するのに有効な指標となる。また、異なるテスターのスイングデータの比較によって、有益なデータが得られうる。例えば、異なるテスターが同一のゴルフクラブをスイングして得られた複数のデータは、各テスターのスイングの特徴を分類する上で有益である。
【0067】
[分析の具体例1]
例えば、以下のような分析が可能である。これらの分析により、ゴルファーに対するゴルフクラブの適合性、ゴルフクラブの特性、異なるゴルファー間でのスイングの相違等に関する様々な指標が得られる。以下の分析は、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータのいずれにも適用されうる。Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータには、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。測定区間も、前述の通り限定されない。本願において、時刻Tm1とは、測定区間内における一時刻を意味し、特に限定されない。
(1c)時刻Tm1における加速度A1と、測定区間内における最大加速度Amaxとの差。
(2c)時刻Tm1における加速度A1と、測定区間内における最小加速度Aminとの差。
(3c)測定区間内における最大加速度Amaxと、測定区間内における最小加速度Aminとの差。
(4c)上記最大加速度Amaxとなる時刻と、最小加速度Aminとなる時刻との時間差Td1。
(5c)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間の加速度の差。
(6c)測定区間内における最大加速度Amax。
(7c)測定区間内における最小加速度Amin
(8c)時刻Tm1における加速度A1。
(9c)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、加速度の平均値。
(10c)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、加速度の絶対値の平均値。
【0068】
[分析の具体例2]
更に、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータから得られるグラフ線について、下記の分析が可能である。このグラフ線が2次元直交座標系である場合、縦軸及び横軸の内容は限定されない。即ち、横軸は、例えば時間でもよい。更に横軸は、Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるあらゆるデータであってもよい。また縦軸は、例えば時間でもよい。更に縦軸は、Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるあらゆるデータであってもよい。Ax、Ay及びAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータには、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。測定区間も、前述の通り限定されない。本願において、時刻Tm1とは、測定区間内における一時刻を意味し、特に限定されない。以下において、グラフ線の値とは、縦軸の値である。
(1d)時刻Tm1におけるグラフ線の値と、測定区間内におけるグラフ線の最大値との差。
(2d)時刻Tm1におけるグラフ線の値と、測定区間内におけるグラフ線の最小値との差。
(3d)測定区間内におけるグラフ線の最大値、測定区間内におけるグラフ線の最小値との差。
(4d)グラフ線の値が最大値となる時刻と、グラフ線の値が最小値となる時刻との時間差。
(5d)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間のグラフ線の値の差。
(6d)測定区間内におけるグラフ線の最大値。
(7d)測定区間内におけるグラフ線の最小値。
(8d)時刻Tm1におけるグラフ線の値。
(9d)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、グラフ線の値の平均値。
(10d)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、グラフ線の値の絶対値の平均値。
【0069】
[分析の具体例3]
上記の具体例1及び具体例2を含め、本発明では、更に多角的な分析が可能である。例えば、加速度データAx、加速度データAy、加速度データAz及びそれらの少なくとも1つから算出されるデータから選択される値C1について、下記の分析が可能である。この値C1には、Ax、Ay及びAzをベクトルデータとして用いる場合も含まれる。この値C1は、本願の測定により得られるデータに基づいて算出されるあらゆる値を含む。測定区間も、前述の通り限定されない。
(1e)時刻Tm1における値C1の値と、測定区間内における値C1の最大値との差。
(2e)時刻Tm1における値C1の値と、測定区間内における値C1の最小値との差。
(3e)測定区間内における値C1の最大値、測定区間内における値C1の最小値との差。
(4e)値C1の値が最大値となる時刻と、値C1の値が最小値となる時刻との時間差。
(5e)測定区間内における時刻Tm1と、測定区間内における時刻Tm2との間の値C1の値の差。
(6e)測定区間内における値C1の最大値。
(7e)測定区間内における値C1の最小値。
(8e)時刻Tm1における値C1の値。
(9e)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、値C1の値の平均値。
(10e)測定区間内における時刻Tm1から時刻Tm2までの、値C1の値の絶対値の平均値。
【0070】
これらのうち、特に好ましいのは、(3c)及び(4c)である。これら(3c)及び(4c)は、グラフ線における特徴的な指標であり、有意性のある差が発現しやすい指標であると考えられる。また、(3c)及び(4c)は、ゴルファーにとっても理解しやすい指標である。
【0071】
上記時刻Tm1として、スイング開始時、トップオブスイング、インパクト等が例示される。スイングの特徴を捉える観点から、上記時刻Tm1は、トップオブスイング又はインパクトとされるのが好ましく、トップオブスイングとされるのがより好ましい。また、スイングの特徴を捉える観点から、測定区間の開始時刻(時刻0)が時刻Tm1とされるのが好ましい。
【0072】
上記時刻Tm2は、上記時刻Tm1よりも後である限り、限定されない。上記時刻Tm2として、トップオブスイング、インパクト、フィニッシュ等が例示される。スイングの特徴を捉える観点から、上記時刻Tm2は、インパクトとされるのが好ましい。また、スイングの特徴を捉える観点から、測定区間の終了時刻が時刻Tm2とされるのが好ましい。
【0073】
スイングの再現性は、有益な情報である。この再現性は、例えば、特定のゴルファーに対する特定のゴルフクラブの適合性を判断する指標となりうる。即ち、再現性が高いゴルフクラブは、そのゴルファーに適合している可能性が高いと判断されうる。再現性は、複数のスイングの間のデータの相違により判断される。再現性を判断する際のスイング回数は限定されず、2回であってもよいし、3回以上であってもよい。
【0074】
例えば、同一のゴルファーが異なるゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することができる。再現性の高いゴルフクラブの方が、相対的に、そのゴルファーに適していると判断することができる。また、同一のゴルファーが、シャフトのみが異なる複数種類のゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することができる。再現性の高いシャフトが、相対的に、そのゴルファーに適していると判断することができる。
【0075】
このように、特定の仕様のみが異なる複数のゴルフクラブをスイングし、再現性を比較することにより、そのゴルファーに適した仕様を見いだすことが可能である。この仕様は限定されず、例えば、シャフトのフレックス、シャフトトルク、スイングバランス、グリップ太さ、グリップ材質、ヘッドの重心位置(重心深度、重心距離等)、クラブ長さ、クラブ重量、等である。
【0076】
再現性を判断する指標として、上記(1c)、(2c)、(3c)、(4c)、(5c)、(6c)、(7c)、(8c)、(9c)、(10c)、(1d)、(2d)、(3d)、(4d)、(5d)、(6d)、(7d)、(8d)、(9d)、(10d)、(1e)、(2e)、(3e)、(4e)、(5e)、(6e)、(7e)、(8e)、(9e)及び(10e)からなる群から選択される1つ以上の値が挙げられる。複数回のスイングを測定し、これらの値の近似性が判断される。この近似性が高いほど、再現性が高いと判断することができる。即ち、複数回のスイングでバラツキが少ないほど、再現性が高いと判断することができる。
【0077】
再現性を判断する好ましい指標として、下記が例示される。これらの再現性の指標は、複数回のスイングデータに基づく。例えば、これらの再現性の指標は、同一のテスターが、同一のゴルフクラブを複数回スイングして得られたデータに基づく。以下の指標は、上記値C1のいずれにもに適用されうる。測定区間も、前述の通り限定されない。下記時刻Tm1は、測定区間内における一時刻を意味し、限定されない。なお、複数回のスイングとは、例えば、スイングAとスイングBからなる2回のスイングであってもよいし、3回以上のスイングであってもよい。また、スイングA及びスイングBが、3回以上のスイングから選択された2回のスイングであってもよい。
【0078】
(1f)複数回のスイング間における値C1の差が最大値となる時刻における、その差の絶対値。
(2f)複数回のスイング間における値C1の差の、測定区間における平均値。
(3f)複数回のスイング間における値C1の差の絶対値の、測定区間における平均値。
(4f)複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1。ただし、グラフの横軸は時間又は上記値C1のうち1つとされ且つグラフの縦軸は時間又は上記値C1の1つとされる。縦軸と横軸とは、異なっている限り、限定されない。本願においてグラフ線とは、値C1の時系列的データとしてプロットされた点が直線で結ばれた折れ線である。
(5f)スイングAにおける値C1の最大値と、スイングBにおける値C1の最大値との差の絶対値。これらの最大値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最大値であって、最大値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(6f)スイングAにおいて値C1が最大となる時刻Ta1と、スイングBにおいて値C1が最大となる時刻Tb1との差(Ta1−Tb1)の絶対値。
(7f)スイングAにおける値C1の最小値と、スイングBにおける値C1の最小値との差の絶対値。これらの最小値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最小値であって、最小値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(8f)スイングAにおいて値C1が最小となる時刻Ta2と、スイングBにおいて値C1が最小となる時刻Tb2との差(Ta2−Tb2)の絶対値。
【0079】
再現性を判断するより好ましい指標として、下記が例示される。これらの再現性の指標は、複数回のスイングデータに基づく。例えば、これらの再現性の指標は、同一のテスターが、同一のゴルフクラブを複数回スイングして得られたデータに基づく。以下の指標は、加速度データAx、加速度データAy及び加速度データAzのそれぞれに適用されうる。測定区間も、前述の通り限定されない。下記時刻Tm1は、測定区間内における一時刻を意味し、限定されない。
【0080】
(1g)複数回のスイング間における加速度の差Adが最大値(Admax)となる時刻における、その加速度の差Admaxの絶対値。
(2g)複数回のスイング間における加速度の差Adの、測定区間における平均値。
(3g)複数回のスイング間における加速度の差Adの絶対値の、測定区間における平均値。
(4g)複数回のスイングによって描かれる複数本のグラフ線によって囲まれる部分の面積s1。ただし、このグラフ線は、横軸が時間とされ且つ縦軸が加速度とされたグラフにおいて、加速度の時系列的データとしてプロットされた点を直線で結んだ折れ線である。
(5g)スイングAにおける加速度の最大値と、スイングBにおける加速度の最大値との差の絶対値。これらの最大値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最大値であって、最大値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(6g)スイングAにおいて加速度が最大となる時刻Ta1と、スイングBにおいて加速度が最大となる時刻Tb1との差(Ta1−Tb1)の絶対値。
(7g)スイングAにおける加速度の最小値と、スイングBにおける加速度の最小値との差の絶対値。これらの最小値は、同一測定区間内における各スイングそれぞれの最小値であって、最小値をとる時刻は、スイングAとスイングBとの間で異なっていても良い。
(8g)スイングAにおいて加速度が最小となる時刻Ta2と、スイングBにおいて加速度が最小となる時刻Tb2との差(Ta2−Tb2)の絶対値。
【0081】
これらのうち、特に好ましいのは、上記(4g)である。上記面積s1には、所定区間の時系列的なデータが反映される。よって、この面積s1は、特定の時刻のみのデータを用いる場合と比較して、再現性の指標として優れている。面積s1が小さいほど、再現性が高いと判断することができる。
【0082】
本発明では、上記加速度データAx、上記加速度データAy又は加速度データAzに代えて、Axの絶対値、Ayの絶対値又はAzの絶対値が用いられてもよい。加速度の向きよりも加速度の大きさが問題となるような分析を行う場合、絶対値を用いた分析が有効である。
【0083】
本発明では、上記加速度データAx、上記加速度データAy又は加速度データAzに代えて、これらAx、Ay及びAzを含む群から選択される2つ又は3つを用いて算出されたデータが用いられても良い。この算出方法として、例えば、Ax、Ay及びAzからなる群から選ばれる2つ又は3つの加減乗除、Axの絶対値、Ayの絶対値及びAzの絶対値からなる群から選ばれる2つ又は3つの加減乗除、等が例示される。これらの算出データは、各計算式固有の意義を有しうる。また、これらの算出データに基づき、スイングの特徴やスイングの再現性を判断することができる。種々の算出データとスイングとを比較することにより、算出データとスイングとの関連性を見いだすことが可能である。種々の算出データと打球結果とを比較することにより、両者の相関を見いだすことが可能である。これらの算出データは、スイング分析に役立ちうる。
【0084】
2個以上の加速度計測装置が用いられるとき、これらの複数の装置の測定値同士で計算される値が、分析に用いられても良い。例えば、第一の加速度計測装置のデータ(Ax、Ay、Az)が(Ax1、Ay1、Az1)とされ、第二の加速度計測装置のデータ(Ax、Ay、Az)が(Ax2、Ay2、Az2)とされるとき、Ax1、Ay1、Az1、Ax2、Ay2及びAz2からなる群から選ばれる2つ又は3つ以上のデータから計算される値が、分析に用いられても良い。この値の例として、x軸方向の加速度データ同士(Ax1及びAx2)の加減乗除、y軸方向の加速度データ同士(Ay1及びAy2)の加減乗除、z軸方向の加速度データ同士(Az1及びAz2)の加減乗除、等が挙げられる。
【0085】
また、データAx、データAy及びデータAzはベクトルデータでもある。よって、これらのベクトルを分析することにより、スイング分析がなされてもよい。例えば、これらのベクトルの分析により、加速度の方向、力の方向、加速度の角度、力の角度が分析されうる。このベクトルの分析の一例は、後述の実施例で示される。
【0086】
測定にあたっては、トリガー信号を用いるのが好ましい。トリガー信号により、測定が開始されるのが好ましい。好ましくは、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づけるのがよい。より好ましくは、トリガー信号の発生時点が、時刻0(ゼロ)とされる。
【0087】
トリガー信号を発生させるタイミングは限定されない。スイング中の特徴的な場面を基準時刻とすることにより、加速度データとスイングとの関連が理解しやすい。この観点から、トリガー信号は、テークバックの開始時点、トップオブスイング又はインパクトであるのが好ましく、トップオブスイング又はインパクトであるのがより好ましく、トップオブスイングであるのがより好ましい。
【0088】
前述の通り、測定区間は限定されない。前述の通り、測定区間は、評価目的等を考慮して適切に設定されうる。測定区間として、以下が例示される。
(1)アドレスからフィニッシュまで(つまり、スイング全体)
(2)アドレスからインパクトまで
(3)アドレスからトップオブスイングまで
(4)トップオブスイングからインパクトまで
(5)インパクトからフィニッシュまで
(6)上記(1)から(5)の区間の一部
【0089】
前述の通り、スイングの特徴は、特にトップオブスイングからインパクトまでの間に現れやすい。また、トップオブスイングからインパクトまでの間の動きは、打球結果との相関が大きい。これらの観点から、測定区間は、トップオブスイングからインパクトまでを含むのが好ましい。より少ないデータでより精度の高い分析を行う観点からは、測定区間は、トップオブスイングからインパクトまでであるのが好ましい。
【0090】
トリガー信号は、自動で発生させてもよいし、手動で発生させてもよい。手動で発生させる方法の一例としては、スイング又はスイング画像を見ながら、所定のタイミングで観察者がスイッチ等を押してトリガー信号を発生させる。例えば、トップオブスイングの時点でトリガー信号を発生させる場合、観察者がトップオブスイング(図5の(S3)の状態)を確認して、スイッチ等を押せばよい。
【0091】
トリガー信号を自動で発生させるトリガー装置が用いられてもよい。このトリガー装置は、例えばレーザーセンサを有し、このレーザーセンサのレーザーがヘッド又はシャフト等により遮られたときにトリガー信号を発生させるものでもよい。打撃されたボールがレーザーを遮ったときにトリガー信号を発生させる装置であってもよい。打球音を検知してトリガー信号を発生させる装置であってもよい。テークバックの開始時においてヘッドがレーザーを遮ったときにトリガー信号を発生させる装置であってもよい。
【0092】
トリガー装置が、ヘッドに取り付けられた加速度センサを有し、この加速度センサがインパクト時の衝撃力を検知したときにトリガー信号を発生させるものであってもよい。インパクトの瞬間にトリガー信号を発生させる場合、このインパクト前及び/又はインパクト後の所定時間(例えば、インパクト前の0.2〜0.5秒間)をデータ取り込み時間として設定してもよい。
【0093】
スイング画像の画像処理により、自動でトリガー信号を発生させてもよい。例えば、画像処理により、ヘッド、シャフト又はグリップの速度の絶対値が最小(典型的には0)となる瞬間を検知し、この瞬間にトリガー信号を発生させてもよい。この場合、トップオブスイングの時点が自動で検知されうる。
【0094】
以上の説明の如く、本発明のスイング分析方法は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の三次元加速度計測装置を用意するステップと、この三次元加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含む。好ましくは、この分析方法により、後述の実施例で示されるような加速度の時系列的なデータを得る。
【0095】
好ましくは、上記加速度データは、上記前後方向(Z軸方向)の成分を有しているのがよい。上記実施形態では、z軸方向の加速度データAzが、前後方向(Z軸方向)の成分を有している。この加速度データAzを分析することにより、前後方向(Z軸方向)の加速度の傾向を知ることが出来る。
【0096】
左右方向(X軸方向)の加速度は、ヘッドスピードとの関連が大きいと考えられる。、左右方向(X軸方向)の加速度は、体重移動やスウェイなど、スイングにおける重要な動きの指標になると考えられる。また、シャフトの傾角やシャフトのしなりは、上下方向(Y軸方向)の加速度との関連が大きいと考えられる。また上下方向(Y軸方向)の動きの大小は、スイングの特徴として現れやすいと考えられる。一方、これに対して、前後方向(Z軸方向)の加速度については、左右方向(X軸方向)や上下方向(Y軸方向)と比較して、あまり重要でないと予想された。しかし、今回の発明で得られたデータによれば、前後方向(Z軸方向)の加速度が、スイング分析の上で重要であることがわかった。よって、z軸方向の加速度は、スイングの特徴や再現性等を示す指標となりうることが判明した。
【0097】
本発明の分析方法は、スイングの良否の判断にも活用されうる。例えば、本来あまり動いてはいけない部位(例えば首付近)に過度の加速度変化が観測された場合、その部位に無駄な動きが存在することを確認することができる。
【0098】
[加速度計測装置の数及び位置]
加速度計測装置の装着数は限定されない。多角的な分析を可能とする観点から、加速度計測装置の取り付け数は、2箇所以上とされるのが好ましい。取り付け数の上限は特に限定されないが、分析に要する負担を考慮すると、10箇所以下、更には5箇所以下とすることができる。多角的な分析を行う観点から、2箇所以上の加速度計測装置が装着される場合、それらの加速度計測装置の最大離間距離は、20cm以上が好ましく、30cm以上がより好ましく、40cm以上が更に好ましい。
【0099】
加速度計測装置の取り付け位置は限定されない。この取り付け位置として、頭、顔、首、腕、肩、肘、背中、腰、手首、腹、尻、膝、足首、手の甲、足の甲等が例示される。加速度計測装置は、着衣に取り付けられてもよいし、人体の肌に直接取り付けられてもよい。スイングの特徴が現れやすい部位に装着するのが好ましい。この観点から、取り付け位置は、頭、首、肩、背中、腰又は手首であり、且つ、取り付け箇所が2箇所以上であるのが好ましい。より好ましくは、頭、首、肩、背中、腰及び手首から選ばれる群から選択される2つの部位以上に取り付けられるのがよい。また、分析の多様性の観点から、人体に加えて、クラブにも加速度計測装置が取り付けられてもよい。
【0100】
サンプリング周波数は限定されない。スイングの時間は0.3秒から1秒程度と比較的短い。高精度な分析のためには、単位時間当たりのデータが多い方が好ましい。この観点から、サンプリング周波数は、20Hz以上が好ましく、50Hz以上がより好ましく、100Hz以上がより好ましく、200Hz以上が更に好ましい。サンプリング周波数が多いほど分析精度が向上するので、基本的には、サンプリング周波数は大きいほど好ましい。ただし、データ数が多すぎる場合、データ処理の時間が長くなる。また、無線通信の通信速度には限界がある。現在において実施可能な無線通信の通信速度を考慮すると、サンプリング周波数は、400Hz以下が好ましい。後述される実施例で示されるように、サンプリング周波数が200Hzの場合、高精度な分析が可能である。
【0101】
ゴルフスイングでは、大きな加速度が発生しうる。特に、手首など動きの激しい部位では、大きな加速度が生じうる。この観点から、加速度計測装置の測定可能な加速度の最大値(測定限界加速度)は、3G以上が好ましく、5G以上が好ましい。測定可能範囲を広げる観点から、この最大測定加速度は大きいほど好ましい。
【0102】
加速度計測装置4の大きさ及び重量は限定されないが、スイングを妨げない観点から、加速度計測装置は、小型でかつ軽量であるのが好ましい。この観点から、加速度計測装置の重量は、10g以下であるのが好ましく、6g以下であるのがより好ましい。
【0103】
[無線通信]
無線通信の方法として、公知の規格又は技術が用いられ得る。一般に無線LAN等において普及している無線技術及び規格が用いられ得る。無線通信の規格として、IEEE802.11シリーズ、IEEE802.15シリーズ等が挙げられる。「IEEE」とは、電気電子学会(Institute of Electrical and Electronic Engineers)を意味する。IEEE802.15シリーズとして、Bluetooth(ブルートゥース;IEEE802.15.1)、Ultra Wideband(UWB;IEEE802.15.3a)、ZigBee(IEEE802.15.4)等が例示される。赤外線や可視光線等を用いた光無線通信であってもよい。汎用性、通信速度等の観点から、Bluetooth(ブルートゥース)が好ましく利用される。
【0104】
Bluetooth(ブルートゥース)は、2.4GHzの周波数帯の電波を用いて情報のやりとりを行う、無線通信規格及びその技術を意味する。このBluetooth(ブルートゥース)の規格には、1.0b、1.0b+CE(Critical Errata)、1.1、1.2、2.0、2.1等があり、これらの全てが本発明に利用可能である。また、通信のプロトコルとして、Bluetoothにおいて標準化されている各種のプロファイルが用いられうる。電波強度として、クラス1(100mW)、クラス2(2.5mW)及びクラス3(1mW)知られており、測定条件によっていずれのクラスが用いられてもよい。スイングの妨げになることを防止する観点から、通信距離が10m以上であるのが好ましく、この観点から、クラス1(100mW)又はクラス2(2.5mW)が好ましい。
【0105】
加速度データは、スイングの画像と同期して測定されるのが好ましい。この同期は、加速度データとスイングとの関連性の分析に役立つ。
【実施例】
【0106】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0107】
なお、以下の図8から図40(グラフ)の一部において、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」との記載がある。これらの「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」は、厳密な意味ではない。例えば、後述する図8において、縦軸に、「→右」及び「→左」との表記がある。この「右」及び「左」は、厳密な意味ではない。換言すれば、この「右」及び「左」は、上記左右方向(X軸方向)を厳密に示すものではない。前述したように、加速度センサーの「x軸方向」は、左右方向(X軸方向)と完全には一致しない。前述したように、「x軸方向」の加速度は、左右方向(X軸方向)の加速度の傾向を示す。このことに鑑み、グラフの理解を容易とする観点から、x軸方向の加速度が増加する方向(プラスの方向)が「→右」と表記されており、x軸方向の加速度が減少する方向(マイナスの方向)が「→左」と表記されている。他のグラフの「上」、「下」、「右」、「左」、「前」及び「後」についても同様の趣旨である。
【0108】
[実施例1]
図1及び図2に示すように、テスターt1に2個の加速度計測装置4を取り付けた。加速度計測装置4として、バイセン株式会社製の加速度計測装置が用いられた。この加速度計測装置の仕様は、総重量が6gであり、電源はボタン電池であり、最大測定加速度は5Gであり、サンプリング周波数は200Hzである。
【0109】
テスターt1がスイングを行い、加速度が測定された。観察者がトップオブスイングスイングを目視で確認し、トップオブスイングの瞬間にトリガー信号を発生させるためのスイッチを押した。トップオブスイングの時刻が0(ゼロ)とされて、測定がなされた。トップオブスイングからインパクトまでが測定区間とされた。
【0110】
A氏及びB氏の2名がテスターとなり、測定が行われた。
【0111】
図8、図9及び図10は、A氏の測定結果を示す[時間−加速度]グラフである。図8は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図9は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図10は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。A氏が、同一のゴルフクラブを3回スイングした。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。この3回の測定結果のそれぞれが、各グラフに示されている。よって、各グラフにおいては、加速度計測装置41の測定結果を示すグラフ線が3本描かれており、且つ、加速度計測装置42の測定結果を示すグラフ線が3本描かれている。3本の実線は、全く同じではない。3本の実線のズレ量は、スイングの再現性と相関する。同様に、3本の波線のズレ量は、スイングの再現性と相関する。このズレ量が少ないほど、スイングの再現性が高いと考えられる。スイングの再現性が高いことは、ゴルフクラブのフィッティングにおいて重要である。スイングの再現性が高いことは、テスターに適合したゴルフクラブであることを示す指標の一つとなりうる。
【0112】
図11、図12及び図13は、B氏の測定結果を示す[時間−加速度]グラフである。図11は、x軸方向の加速度データのグラフである。図12は、y軸方向の加速度データのグラフである。図13は、z軸方向の加速度データのグラフである。これらのグラフにおいて、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。B氏が、同一のゴルフクラブを3回スイングした。ゴルフクラブとして、A氏が用いた上記ゴルフクラブが用いられた。この3回の測定結果のそれぞれが、各グラフに示されている。よって、各グラフにおいては、加速度計測装置41の測定結果を示すグラフ線が3本描かれており、且つ、加速度計測装置42の測定結果を示すグラフ線が3本描かれている。
【0113】
A氏のデータとB氏のデータとを比較すると、同一のゴルフクラブをスイングしたにも関わらず、データに有意な相違が見られる。これらの加速度データは、個々のゴルファーのスイングの特徴を示しうる。
【0114】
加速度データは、前述の通り種々の分析に適用することができる。これらの分析結果は、定量的である。この定量的なデータは、官能的なテスト(フィーリングテスト)と比較して信頼性に優れる。また、例えば、得られたデータと打球の結果とを比較することにより、良い結果を生む場合のデータを決定することができる。良い結果につながるデータの解明は、適切なゴルフクラブの選択に役立つ。例えばゴルフショップの店頭において加速度データを測定し、その結果に基づいて適切なゴルフクラブを選択することができる。また良い結果につながるデータの解明は、ゴルフクラブの開発に役立つ。また、加速度データは、スイングの分類に役立つ。例えば、得られたグラフ線のパターンに基づき、スイングが分類されうる。加速度データにより、分類されたスイング毎の適切なクラブが開発されうる。
【0115】
上記の結果から、A氏のスイングの特徴として、上下方向(Y軸方向)の加速度変動が比較的大きいと判断することが可能である。また、A氏は、上記テストクラブにおいて、比較的高い再現性を示していると考えられる。即ち上記テストクラブは、A氏に対する適合性が比較的高いと考えることができる。
【0116】
一方、B氏のスイングの特徴として、いずれの方向に対しても加速度変動が比較的小さいスイングであると判断することが可能である。また、B氏は、上記テストクラブにおいて、比較的低い再現性を示していると考えられる。即ち上記テストクラブは、B氏に対する適合性が比較的低いと考えることができる。
【0117】
[実施例2]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記A氏が2種類のゴルフクラブをスイングした。 図14、図15及び図16は、このテスト結果を示す[時間−加速度]グラフである。2種類のゴルフクラブの内訳は、次の通りである。第一のゴルフクラブは、SRIスポーツ社製の商品名「スリクソンZR−800」(W#1、SV−3016J T−55カーボンシャフト、フレックス「R」)とされた。第二のゴルフクラブは、SRIスポーツ社製の商品名「スリクソンZR−700」(W#1、SV−3012J T−55カーボンシャフト、フレックス「R」)とされた。各クラブで3回ずつスイングした。
【0118】
図14は、x軸方向の加速度データのグラフである。図15は、y軸方向の加速度データのグラフである。図16は、z軸方向の加速度データのグラフである。これらのグラフにおいて、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。また、等間隔おきに黒丸を付したグラフ線が「ZR−700」のデータであり、同黒丸が付されていないグラフ線が、「ZR−800」のデータである。これらのグラフに基づき、前述した種々の分析を行うことにより、例えば、「ZR−700」と「ZR−800」との比較において、どちらがA氏に適合しているかが判断されうる。
【0119】
上記図10のデータを例として、具体的な分析の一例を説明する。図17は、首における加速度に関して、1回目のスイングのグラフ線と2回目のスイングのグラフ線とで囲まれた面積s1が、ハッチングで示されている。この面積s1が小さいほど、スイングの再現性が高いと考えられる。図18は、3回のスイングにより得られた3本のグラフ線で囲まれた面積s1が、ハッチングで示されている。この面積s1が小さいほど、スイングの再現性が高いと考えられる。スイング回数が多くされるほど、面積s1による判断の信頼性が向上しうる。
【0120】
図19は、図10の「首」の3本のグラフ線のうちの1本を示す。このグラフ線を例として、他の具体的な分析の一例を説明する。図19のグラフ線において加速度が最大となる点が符号M1で示されており、加速度が最小となる点が符号M2で示されており、測定開始時の点が符号Msで示されており、測定終了時の点が符号Mfで示されている。例えば、M1における加速度Amaxと、M2における加速度Aminとの差(Amax−Amin)は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、M1の時刻からM2の時刻までの時間Td1は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、Msにおける加速度Asと、Mfにおける加速度Afとの差(As−Af)及びその絶対値|As−Af|は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。
【0121】
図20は、図10の「首」の3本のグラフ線のうちの2本を示す。このグラフ線を例として、他の具体的な分析の一例を説明する。図20の複数(2本)のグラフ線において加速度が最大となる点が符号M11で示されており、この複数(2本)のグラフ線において加速度が最小となる点が符号M21で示されている。例えば、M11における加速度Amaxと、M21における加速度Aminとの差(Amax−Amin)は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。また、M11の時刻からM21の時刻までの時間Td1は、スイングのタイプや再現性等を判断する上で重要な指標となりうる。この例が示すように、分析は、2回の測定に対して適用されてもよい。前述したあらゆる分析項目は、1回の測定に対して適用されてもよいし、複数回の測定に対して適用されてもよい。分析対象が複数回の測定とされることにより、分析精度が向上しうる。
【0122】
[実施例3]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記A氏のスイング(上記実施例1とは別のスイング)が測定された。トップオブスイングからインパクトまでの間が測定された。図21から図30は、この測定結果を示すグラフである。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。
【0123】
図21、図22及び図23は、[時間−加速度]グラフである。図21は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図22は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図23は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0124】
図24は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がy軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0125】
図25は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がz軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0126】
図26は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,y)との角度A1(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,y)とは、x軸方向の加速度ベクトルとy軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A1は、次の式により算出される。
A1=arctan(y/x)
【0127】
図26において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A1により、スイングが分析される。この角度A1のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A1及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0128】
図27は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,z)との角度A2(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,z)とは、x軸方向の加速度ベクトルとz軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A2は、次の式により算出される。
A2=arctan(z/x)
【0129】
図27において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A2により、スイングが分析される。この角度A2のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A2及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0130】
図28は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y)の大きさA3が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、y軸方向の加速度の値がyであるとき、このA3は、次の式により算出される。
A3=(x2+y2)1/2
【0131】
図28において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A3により、スイングが分析される。この値A3のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A3及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0132】
図29は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,z)の大きさA4が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、z軸方向の加速度の値がzであるとき、このA4は、次の式により算出される。
A4=(x2+z2)1/2
【0133】
図29において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A4により、スイングが分析される。この値A4のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A4及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0134】
図30は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y,z)の大きさA5が示されたグラフである。x軸方向の加速度の値がxであり、y軸方向の加速度の値がyであり、z軸方向の加速度の値がzであるとき、このA5は、次の式により算出される。この値A5は、その加速度計に作用する加速度の大きさそのものである。
A5=(x2+y2+z2)1/2
【0135】
図30において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A5により、スイングが分析される。この値A5のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A5及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0136】
[実施例4]
上記実施例1と同様の測定条件にて、上記B氏のスイング(上記実施例1とは別のスイング)が測定された。トップオブスイングからインパクトまでの間が測定された。図31から図40は、この測定結果を示すグラフである。ゴルフクラブとして、SRIスポーツ社製の商品名「Theゼクシオ(ザ ゼクシオ)」(W#1、MP500カーボンシャフト、フレックス「R」)が用いられた。
【0137】
図31、図32及び図33は、[時間−加速度]グラフである。図31は、x軸方向の加速度データのグラフ線である。図32は、y軸方向の加速度データのグラフ線である。図33は、z軸方向の加速度データのグラフ線である。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0138】
図34は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がy軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0139】
図35は、横軸がx軸方向の加速度とされ、縦軸がz軸方向の加速度とされたグラフである。これらのグラフ線において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。各グラフは、波形、極大値、極小値、最大値、最小値、極大値の時刻、極小値の時刻、最大値の時刻、最小値の時刻、等において特徴を有する。上記の通り、各グラフのデータは、様々に分析されうる。
【0140】
図36は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,y)との角度A1(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,y)とは、x軸方向の加速度ベクトルとy軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A1の算出式は、前述の通りである。
【0141】
図36において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A1により、スイングが分析される。この角度A1のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A1及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0142】
図37は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸がx軸方向とベクトル(x,z)との角度A2(degree)を示すグラフである。ベクトル(x,z)とは、x軸方向の加速度ベクトルとz軸方向の加速度ベクトルとの和のベクトルである。この角度A2の算出式は、前述の通りである。
【0143】
図37において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この角度A2により、スイングが分析される。この角度A2のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この角度A2及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0144】
図38は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y)の大きさA3が示されたグラフである。このA3の算出式は、前述の通りである。
【0145】
図38において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A3により、スイングが分析される。この値A3のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A3及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0146】
図39は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,z)の大きさA4が示されたグラフである。このA4の算出式は、前述の通りである。
【0147】
図39において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A4により、スイングが分析される。この値A4のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A4及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0148】
図40は、横軸がトップオブスイングからの時間を示し、縦軸が上記ベクトル(x,y,z)の大きさA5を示すグラフである。このA5の算出式は、前述の通りである。
【0149】
図40において、波線は、腰に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置41)による測定データであり、実線は、首に取り付けられた加速度計測装置(図2の加速度計測装置42)による測定データである。本発明では、例えば、この値A5により、スイングが分析される。この値A5のグラフ線が、更に分析されてもよい。上記の通り、この値A5及びこのグラフ線は、様々に分析されうる。
【0150】
以上に例示されたように、本発明では、多角的なスイング分析が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、ゴルフスイングの分析に適用されうる。この分析結果は、ゴルフクラブやゴルフボール等の開発、特定のゴルファーに適したゴルフクラブ及び/又はゴルフボールの選択、等に適用することができる。この分析結果は、ゴルフショップの店頭においても利用されうる。
【符号の説明】
【0152】
2・・・スイング分析システム
4・・・加速度計測装置
41・・・第一の加速度計測装置
42・・・第二の加速度計測装置
6・・・無線受信装置
8・・・データ解析装置
20・・・粘着テープ
c1・・・ゴルフクラブ
b1・・・ゴルフボール
t1・・・テスター(スイングを分析されるゴルファー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置を用意するステップと、
この加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、
スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、
上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含むスイング分析方法。
【請求項2】
上記加速度計測装置が上記体の2箇所以上に取り付けられる請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰又は手首である請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
上記加速度計測装置の1個当たりの重量が10g以下である請求項1から3のいずれかに記載の分析方法。
【請求項5】
スイング中の一時点においてトリガー信号を発生させ、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づける請求項1から4に記載の分析方法。
【請求項6】
上記トリガー信号を発生させる一時点が、トップオブスイング又はインパクトである請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされ、鉛直方向がY軸方向とされ、上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされたとき、
上記加速度データが、上記Z軸方向の成分を有している請求項1から6のいずれかに記載の分析方法。
【請求項8】
上記加速度データが、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータであり、
上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値と最小値との差がスイング分析の指標とされる請求項1から7のいずれかに記載の分析方法。
【請求項9】
上記加速度データが、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータであり、
上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値における時刻と最小値における時刻との間の時間差Td1がスイング分析の指標とされる請求項1から7のいずれかに記載の分析方法。
【請求項10】
同一のゴルファーが同一のゴルフクラブで複数回のスイングを行い、この複数のスイングデータに基づき複数のグラフ線を得て、これら複数のグラフ線で囲まれた面積s1がスイング分析の指標とされる請求項1から9のいずれかに記載の分析方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の分析方法に基づいて、スイングの再現性が判断されるスイング分析方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の分析方法に基づいて、上記スイングを行うゴルファーに適したゴルフクラブが選択されるゴルフクラブ選択方法。
【請求項1】
x軸方向、y軸方向及びz軸方向の3軸方向におけるそれぞれの加速度が測定可能な無線式の加速度計測装置を用意するステップと、
この加速度計測装置を、ゴルファーの体に装着するステップと、
スイング中における上記加速度計測装置からの計測データを無線通信を介して受信するステップと、
上記加速度データに基づいてゴルフスイングを分析するステップとを含むスイング分析方法。
【請求項2】
上記加速度計測装置が上記体の2箇所以上に取り付けられる請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
上記加速度計測装置の取り付け位置が、頭、首、肩、背中、腰又は手首である請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
上記加速度計測装置の1個当たりの重量が10g以下である請求項1から3のいずれかに記載の分析方法。
【請求項5】
スイング中の一時点においてトリガー信号を発生させ、このトリガー信号に基づいて上記加速度データとスイング動作とを時系列的に関連づける請求項1から4に記載の分析方法。
【請求項6】
上記トリガー信号を発生させる一時点が、トップオブスイング又はインパクトである請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
打球地点と目標地点とを結び且つ地面と平行な方向がX軸方向とされ、鉛直方向がY軸方向とされ、上記X軸対して垂直であり且つ上記Y軸に対して垂直な方向がZ軸方向とされたとき、
上記加速度データが、上記Z軸方向の成分を有している請求項1から6のいずれかに記載の分析方法。
【請求項8】
上記加速度データが、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータであり、
上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値と最小値との差がスイング分析の指標とされる請求項1から7のいずれかに記載の分析方法。
【請求項9】
上記加速度データが、上記x軸方向における加速度Ax、上記y軸方向における加速度Ay又は上記z軸方向における加速度Azの時系列的なデータであり、
上記加速度Ax、上記加速度Ay、上記加速度Az又はそれらの少なくとも1つから算出される値について、スイング中の特定区間内における最大値と最小値とを得て、この最大値における時刻と最小値における時刻との間の時間差Td1がスイング分析の指標とされる請求項1から7のいずれかに記載の分析方法。
【請求項10】
同一のゴルファーが同一のゴルフクラブで複数回のスイングを行い、この複数のスイングデータに基づき複数のグラフ線を得て、これら複数のグラフ線で囲まれた面積s1がスイング分析の指標とされる請求項1から9のいずれかに記載の分析方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の分析方法に基づいて、スイングの再現性が判断されるスイング分析方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の分析方法に基づいて、上記スイングを行うゴルファーに適したゴルフクラブが選択されるゴルフクラブ選択方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
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【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2011−210(P2011−210A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143944(P2009−143944)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【出願人】(306037218)バイセン株式会社 (7)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【出願人】(306037218)バイセン株式会社 (7)
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