説明

ゴルフ用手袋

【課題】安価に製作でき、グリップ時のフィーリングを良好にし、フィット感とグリップ力の向上を図る。
【解決手段】手の甲側を覆う手甲部の部材として伸縮性の高い合成皮革素材を使用し、前記手甲部外側の中指、薬指、小指の第1関節から第2関節にかけて補強部材を取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ用手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な手袋は、手の甲側を覆う手甲部と、掌側を覆う掌部とを左右につなげた一体的な部材を用い、左右のつなぎ個所において、折り重ねて、他の親指部及びヘギ部と縫い合わせて作製されていた。
【0003】
ところで、ゴルフ用手袋に対しては、これを装着した際のフィット感、ゴルフクラブを握った際のフィット感、使用を続けた際の耐久性、保温性、通気性、紫外線遮断性、さらにはデザイン性等の様々な特性が、複数同時に要求される場合がある。しかしながら、上記のごとく、手甲部と掌部という大部分を占める部材を単一の素材により構成した場合には、上記各特性を複数同時に満足することは困難である。
【0004】
従来、指の部分や掌の部分を二重にした手袋は種々開発されているが、そのほとんどが丈夫さとか或いは立体裁断し得ることを目的として開発されてきたものが多い。そこで、手袋を嵌めてゴルフをする場合、大きな問題となるゴルフボールの玉筋に少しでも良い結果が出せるような手袋として、特許文献1(実用登録3075291号)に記載のものが開発されている。
【0005】
特許文献1に記載のものは、伸縮性に富む材質で作成されたゴルフ用の手袋において、必要に応じて各指の甲側に各指の捩じれを防止するための当片を設けたものである。上記の当片の形状も種々考えられるが当片の各側辺を抉った形状の当片とすることが好ましい。勿論指の長さ或いは大きさによって抉る部分を一か所にするか2箇所以上にするかが決まってくるものである、とされているとともに、ゴルフをする場合、飛距離の問題も大きな問題であることは自明であるが、それよりもゴルフボールの玉筋が思った方向に飛ばすことの方がもっと大切なことであり、素人の場合、シャフトを振る場合、どうしても遠くに飛ばそうとして、力の入れ方を間違ったり、シャフトを握っている各指が捩じれてしまい、打ったゴルフボールが自分が思っている方向に飛んでいかないことが多いものであるが、特許文献1に記載のゴルフ用手袋は、このような問題を解決したものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用登録3075291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ゴルフ用手袋には、上述した様々な特性が要求されており、例えば、グリップ時のフィーリングも大切な要素となり、グリップ時のフィーリングが良いと、ゴルフクラブのグリップ部を握った手指に無駄な力が入らず、スムーズなスイングの助けとなる。この点において、特許文献1に記載の手袋では、人差し指の甲側にも当片が設けられているため、バードングリップで握るゴルファーの場合、右利きの人では、右手の小指が左手の人差し指の上に重ねられるので、グリップ時に指の重なる部分に違和感が生じ、グリップ時のフィーリングを損ねていた。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたもので、グリップ時のフィーリングを良いものとし、手指のグリップ状態を安定させ、手袋のズレを防ぐことができ、かつ安価に作製できるゴルフ用手袋を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、手の甲側を覆う手甲部の部材として伸縮性の高い合成皮革素材を使用し、前記手甲部の中指、薬指、小指の第1関節から第2関節にかけて補強部材を取付けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手の甲側を覆う手甲部の部材として伸縮性の高い合成皮革素材を使用し、前記手甲部外側の中指、薬指、小指の第1関節から第2関節にかけて補強部材を取付けたので、グリップ時に重要な指とされる手袋内の小指、薬指、中指の3本に意識が向き、ゴルフクラブのグリップ部と手袋とのグリップ力が向上し、手袋のズレを防止し、フィット感が向上し、さらには、グリップ時のフィーリングが向上し、人差し指には補強部材を取付けず安価に作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】手袋を裏返した状態の手甲部裏面を示す図
【図2】図1の掌部裏面を示す図
【図3】手袋の掌部正面図
【図4】手袋の手甲部正面図
【図5】グリップしたときの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態について図面を参照にして説明する。
【0013】
図1は、手袋を裏返した状態の手甲部1の裏側を示す図であり、手甲部1(各指の背側を含む)に伸縮性の高い合成皮革素材を使用している。また、親指部1A以外の各指部1Bの付け根の関節(第1関節)部分に、さらに伸縮性の高いストレッチ部材2を使用している。さらに、手甲部1の手首側には面ファスナーを用いた止着部3を取付けてある。
【0014】
前記手甲部1の人差し指の背側付け根下部に当る内側個所と小指の背側付け根に当る内側個所の2ヶ所に、ナノ繊維部材から成る滑り止め部材4を取付けてある。また、手甲部1の親指の背側に当る内側個所にも同様の滑り止め部材4を取付けてある。前記人差し指と小指に取付けられる滑り止め部材4は、大略三角形の形状をしたパーツから成り、親指のそれは、大略長方形の形状をしたパーツから成るものである。
【0015】
図2及び図3に示すように、前記親指部1A、各指部1Bの腹側を含む掌部5は、ナノ繊維素材を使用している。掌部5に前述した「ナノフロント」(登録商標)を使用すると、滑り止め効果が高く、手とのなじみがよく(フィットする)、透湿除湿性を有するものとなる。掌部5が、「ナノフロント」(登録商標)から形成されているだけでは、すでに市販されている手袋(「NANOLOCK」登録商標)が存在するが、この市販手袋は、3以上の素材を使用し、複雑な構造になっているので、価格的に高価なものとなる。本発明のように、手甲部1には安価な素材(伸縮性のある合成皮革素材)を使用し、複雑な構造としなければ、全体のコストは下げられる。なお、掌部5の表面摩擦係数は、1.0〜1.8が好ましく、手甲部1の表面摩擦係数は、0.5〜0.9が好ましい。
【0016】
手甲部1の小指、薬指、中指の第1関節から第2関節にかけて、図4に示すように、逆さY字型の形状に形成された補強部材6を取付けてある。この補強部材6は、手甲部1の合成皮革素材と同一素材で形成することができる。補強部材6の逆さY字の逆V字部分は、第2関節の両側を挟む形になり、直線(I字)部分は第1関節と第2関節との間に位置するようになっている。この直線部分の存在が、3本の指によるグリップ感を高め、V字部分は、指に添え木をしたように作用し、指のホールド感が高まって捩じれを防止してグリップを安定させる。
【0017】
図5は、手袋でゴルフクラブのグリップ部10をグリップした状態を示し、補強部材6がテーピング効果を発揮し、グリップの安定感を向上させ、インパクト時の指のねじれを防止する。このように、親指と人差し指を除いた3本の指に補強部材6を取付けることは、これら3本の指がグリップするときに大事な指であり、これら3本の指をゴルファーが意識することにより、親指と人差し指に無駄な力が入らずにすみ、正しいグリップ状態を作り出せる。補強部材6のI字部分をさらに長く伸ばすことにより、これら3本の指でグリップする意識を高めることにもなる。
【0018】
なお、手指の第1ないし第3関節は、俗名であって正確には、遠位指節間関節を第1関節と呼び、近位指節間関節を第2関節と呼び、中手指節間関節を第3関節と呼ぶ。
【0019】
前記ナノ繊維素材は、直径700メートルのポリエステルファイバーである「ナノフロント」(登録商標)である場合、長繊維構造で織り上げられた繊維の表面積はきわめて大きくなり、そのため、吸水性や吸着性、防透性が向上し、生地の肌触りが柔らかくなる。このように表面積が通常の繊維の10倍ほどになると、表面の凹凸が大きな摩擦力を発揮し、滑りにくく、ズレにくくなる。
【符号の説明】
【0020】
1 手甲部
1A 親指部
1B 各指部
4 滑り止め部材
5 掌部
6 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の甲側を覆う手甲部の部材として伸縮性の高い合成皮革素材を使用し、
前記手甲部外側の中指、薬指、小指の第1関節から第2関節にかけて補強部材を取付けたことを特徴とするゴルフ用手袋。
【請求項2】
前記補強部材は、逆さY字型の形状に形成され、直線部分が第1関節と第2関節の間に位置することを特徴とする請求項1に記載のゴルフ用手袋。
【請求項3】
前記掌部の部材としてナノ繊維素材を使用し、前記手甲部の部材として伸縮性の高い合成皮革素材を使用し、手甲部の親指部内側個所、人差し指付け根下部及び小指の付け根の各内側個所に掌部と同様のナノ繊維素材から成る滑り止め部材を取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフ用手袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−135400(P2012−135400A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289162(P2010−289162)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【出願人】(303030911)株式会社ナイガイ (4)
【Fターム(参考)】