説明

ゴルフ練習用マット

【目的】 使用者がゴルフボ−ルを正確に打てたかどうかを、目でみて簡単に判断することが可能であるようなゴルフ練習用マットを提供する。
【構成】 ゴルフクラブ8とゴルフ練習用マットの間の摩擦熱によって、ベヘン酸5の温度に応じた透明度変化が起き、前記摩擦が起こった部分だけブタジエンゴム4の色が出現し、タ−フの位置を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴルフ練習用マットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ゴルフ練習用マットは、板状のゴム素材上に細かいひも状の樹脂を植毛したものが一般的に知られている。このような従来のゴルフ練習用マットは、図6に示したように樹脂を緑色に着色することによって、芝に対する類似感を与えたり、中央に色の異なるラインを設けることによって、使用者がかまえるべき方向を明示したり、あるいはゴルフクラブをスウィングするための指標とするなどの工夫がなされている。また、最近では、樹脂種類、あるいは形状を選択することによって、それまでにはなかったソフトな使用感を得られるようにしたものも実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述のような従来のゴルフ練習用マットでは、使用者が打球を打つ前の目標とすべき指標や、使用者が実際に打球を打った時の使用感などについては工夫されているが、打球を打った後、使用者が正確に球を捕らえることができたかどうかを判断できるような指標は設けられていない。従って、使用者は、打球の飛び方と、使用者自身の球を打った感触のみでしか、球を正確に打てたかどうかを判断する手だてがなかった。
【0004】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ゴルフ練習用マットの使用者が打球を打った後、球を正確に打てたかどうか、あるいは正確に打てなかったならばどのような当り方をしたのかを、目で見て簡単に判断できるようにすることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のゴルフ練習用マットは、常には不透明状態であり、加熱されることにより透明状態となる感熱体を含む透明材料で形成される表面層を備えている。
【0006】
【作用】上記のゴルフ練習用マットにおいて、ゴルフのスウィングによるゴルフクラブと該ゴルフ練習用マットとの摩擦による熱によって、該ゴルフ練習用マットの表面層に含まれる感熱体が透明となる。従って、該ゴルフクラブの当たった部分のみ、該ゴルフ練習用マットの表面層が透明となり、その部分は目視でそれ以外の表面層部分との判別が可能となる。
【0007】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
【0008】本実施例において、本発明の感熱体を構成する物質はベヘン酸である。該ベヘン酸は、温度によってその透明度が変化するが、これを図1によって説明する。
【0009】図1において、感熱体としての該ベヘン酸は、例えばT0以下の常温では白濁不透明状態にある。これをT1〜T2間の温度に加熱すると透明になり、この状態でT0以下の常温に戻しても透明のままである。さらにT3以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態になる。次にこの温度を下げていくと、再び透明状態をとることなく、最初の不透明状態になる。すなわち、常温において、不透明および透明の両形態をとることができる。
【0010】本実施例のゴルフ練習用マットは、図2に示すように、感熱組成物1と透明材料としてのポリエチレン樹脂2からなる感熱樹脂組成物3と、ブタジエンゴム4によって構成されている。また、該感熱組成物1は本発明の感熱体であるベヘン酸5と、透明材料としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体6により構成されている。尚、該感熱樹脂組成物3は、以下のような重量組成となっている。
【0011】
ベヘン酸 3重量%塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 9重量%ポリエチレン樹脂 88重量%本実施例のゴルフ練習用マットは以下のような方法で作成することができる。まず最初に、該ベヘン酸5と該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体6を重量比1:3で用意し、これらを常温のテトラヒドロフラン溶媒下で充分に混合分散した後、100℃で乾燥させると該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体6中に該ベヘン酸5が粒径1μm以下で微分散した該感熱組成物1となる。次に該感熱組成物1と該ポリエチレン樹脂2を重量比3:22で用意し、150℃の加熱条件下で充分に混練混合して、該感熱樹脂組成物3とする。さらに、該感熱組成物3は、押出成形により紐状に成形する。一方、該ブタジエンゴム4を予め染料または顔料によって着色し、さらに板状に成形しておき、紐状の該感熱樹脂組成物3を板状の該ブタジエンゴム4に植毛する。
【0012】完成した本実施例のゴルフ練習用マットは、該ベヘン酸5が白濁不透明状態であるので、該ブタジエンゴム4の着色された色は、上部から見ると隠ぺいされている。
【0013】以下に本実施例のゴルフ練習用マットを使用した場合の作用と効果を図面を参照して説明する。
【0014】図3(a)は、ゴルフボ−ル7を本実施例のゴルフ練習用マット上に置いた状態を示している。使用者はこの状態から、ゴルフクラブ8のスウィングを行なうことによって置かれた該ゴルフボ−ル7を打つ。このとき、該ゴルフクラブ8と本実施例のゴルフ練習用マットの間で摩擦が起こり、結果として熱を発生する。この熱によって該ベヘン酸5は、図1に従った透明度変化を起こす。その結果、図3(b)に示すように、摩擦が起こって熱が発生した部分だけ該感熱樹脂組成物3が透明化し、それまで隠ぺいされていた該ブタジエンゴム4の色がその部分だけ発現する。
【0015】また、前記の摩擦によって起こる熱は、最終的には図1におけるT3をかなり上回るほどの温度となる。従って、該感熱樹脂組成物3は打球を打った後、最初透明となり、その後T3の温度を越えてから常温に戻るので、最終的には初期段階と同じ様な白濁不透明状態となる。すなわち、本実施例のゴルフ練習用マットは、打球を打った直後にはタ−フ部分(ゴルフクラブと練習用マットが接触した部分)が着色し、その後、そのタ−フ部分の色は時間とともに消色し、最終的には初期と同じ均一な状態にもどることになる。
【0016】このように、本実施例のゴルフ練習用マットによれば、従来のゴルフ練習用マットでは確認することが不可能であったタ−フを目視で確認することができ、図4(a)〜(c)に示すように、タ−フのでき方によって球を正確に打てたかどうかのチェックをすることが可能である。
【0017】尚、本発明の感熱体を構成する本実施例で用いた該ベヘン酸5は、これ以外にも多くの物質を挙げることができる。その選択にあたっては、図1の温度T1〜T3を選定することに応じて選べばよいが、特に以下に例示するような有機低分子物質であることが好ましい。例えば、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸や、ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドコシル等の高級脂肪酸のエステル等である。
【0018】また、本実施例の該ベヘン酸5を分散させるための該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体6は、それ以外でも、前記実施例にとらわれることなく、透明性がよく、機械的に安定で有機低分子物質を均一に分散させることのできるような樹脂を選択すればよい。このような樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ−ル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレ−ト共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレ−ト、ポリメタクリレ−ト、アクリレ−ト−メタクリレ−ト共重合体、シリコン樹脂等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合して用いられる。
【0019】また、該有機低分子物質と、該樹脂を混合分散するための溶媒は、該有機低分子物質と該樹脂の種類によって各種のものが使用可能である。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノ−ル、トルエン、ベンゼン等の有機溶剤が挙げられる。
【0020】さらに、本実施例の該ポリエチレン樹脂2の代わりにポリプロピレン、ナイロン等を使用することも可能であるし、本実施例のブタジエンゴムの代わりにその他の合成ゴムや樹脂を使用してもよい。
【0021】また、本発明のゴルフ練習用マットは、前記実施例にとらわれることなく、種種の変形例を考えることができる。例えば、図5に示すように、ゴルフボ−ルを置く位置を明示するためにマットの一部に色をつければ、該ゴルフボ−ルがあった位置と打ち終わったあとにできるタ−フの位置の関係をより明確に知ることができるようになる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本発明のゴルフ練習用マットによれば、使用者が打球を打った後、球を正確に打てたかどうか、あるいは正確に打てなかったならばどのような当り方をしたのかを、目でみて簡単に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例におけるベヘン酸の温度に応じた状態変化を示す説明図である。
【図2】本実施例におけるゴルフ練習用マットの構成を示す説明図である。
【図3】本実施例における本発明の作用と効果を示す説明図である。
【図4】本実施例における本発明の作用と効果を示す説明図である。
【図5】本実施例における変形例を示す図である。
【図6】本従来技術の説明図である。
【符号の説明】
3 感熱樹脂組成物
5 ベヘン酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴルフの練習に用いる芝に見立てたゴルフ練習用マットにおいて、常には不透明状態であり、加熱されることによって透明状態となる感熱体を含む透明材料で表面層が形成されていることを特徴とするゴルフ練習用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−277218
【公開日】平成5年(1993)10月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−79620
【出願日】平成4年(1992)4月1日
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)