サイクリングパンツ
【課題】 ペダリングパワー（踏力）を発生させる大殿筋をアシストでき、しかも製造が容易なサイクリングパンツの提供。
【解決手段】 サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、伸縮性生地からなり、伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされている構成のサイクリングパンツ。
【解決手段】 サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、伸縮性生地からなり、伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされている構成のサイクリングパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、サイクリストが自転車に搭乗する際に装着する、サイクリングパンツに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、運動用衣服として、下記特許文献１に示す技術が提案されている。ここの開示されている衣服は、運動能力を補助するための特定の筋肉をサポート（保護）するサポート部分が、大臀部を避けるよう設けられている。また、このサポート部分は、緊締力の強い部分として、カットボス編手法によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００１−２１４３０３（特許第３７４０３４４号）号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の運動用衣服では、特定の筋肉をサポートするサポート部分が、大殿筋を避けるよう設けられている。
ところで、サイクリストにとって自転車のペダルを踏み込むときに踏力を発生させる筋肉は、主として大殿筋があげられ、大殿筋はペダルに脚を乗せたとき（膝を曲げたとき）には伸びており、ペダルを踏み込むときには縮むよう変形する。そして、上記従来の運動用衣服では、大殿筋に相当する部分にはサポート部を設けておらず、したがって、サイクリストの大腿筋が伸びる方向へのアシスト（補助）する機能としては望めない。
また、上記従来の運動用衣服のサポート部分は、緊締力の強い部分として、カットボス編手法によって形成されているから、製造が難しいといった課題がある。
【０００５】
そこで本発明は上記課題に鑑み、ペダリングパワー（踏力）を発生させる大殿筋をアシストでき、しかも製造が容易なサイクリングパンツの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、伸縮性生地からなり、該伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされていることを特徴としている。
【０００７】
上記構成によれば、自転車のペダルを下へ踏み込む際に主として用いられる大殿筋を、大殿筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシスト（補助）し、自転車のペダルを上へ戻す際に主として用いられる大腿ニ頭筋を、大腿ニ頭筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストし、ペダリングパワーの向上が図られる。
【０００８】
ペダルの回転を時計針の指す方向で例えると、１２時から３時の間、すなわちペダルを踏み込むサイクルには、主として大殿筋の筋力が用いられ、３時から９時の間、すなわちペダルを上へ戻すサイクルの際には、主として、大腿ニ頭筋、下腿三頭筋、半腱様筋、半膜様筋が用いるようにペダリングをすることで、ペダリングパワーが向上することが知られている。
ペダルを上へ戻すサイクルの際に用いられるこれら脚の筋肉は、サイクリストの後ろ側の筋肉であって、本発明のサイクリングパンツでは、プリント部による緊締力により、特に大殿筋、大腿ニ頭筋の動きをアシストして、ペダリングパワーの向上が図られる。
【０００９】
本発明のサイクリングパンツでは、プリント部は、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部を所定間隔毎に並べて構成され、各合成樹脂領域部の間は伸縮性生地のみで構成されていることを特徴としている。
【００１０】
本発明のサイクリングパンツでは、各合成樹脂領域部は、同一の大きさ形状の微細な帯状に形成された構成単位樹脂を、所定間隔毎に多数並べて構成され、各構成単位樹脂の間は、伸縮性生地のみで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１１】
本発明のサイクリングパンツでは、伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされているから、サイクリストが自転車に搭乗して、自転車のペダルを下へ踏み込む際に主として用いられる大殿筋を、大殿筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストでき、自転車のペダルを上へ戻す際に主として用いられる大腿ニ頭筋を、大腿ニ頭筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストでき、ペダリングパワーを向上させられる。
また、サイクリングパンツにおいて、伸縮性生地の伸率を低下させる手段として、伸縮性生地の表面に合成樹脂をプリントしていることで実現させているから、伸縮性生地の所定の部分に合成樹脂をプリントするという構成だけで、ペダリングパワーの向上を可能とするサイクリングパンツが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明のサイクリングパンツの正面図
【図２】同じくサイクリングパンツの背面図
【図３】同じくサイクリングパンツの側面図
【図４】同じくサイクリングパンツの装着状態における脚の筋肉とプリント部の関係を示す背面図
【図５】同じくプリント部のみの拡大図
【図６】同じくペダルの回転角度と用いる筋肉の関係図
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、図１ないし図６に基づいて、本発明の実施形態に係るサイクリングパンツを説明する。図１はサイクリングパンツの正面図、図２はサイクリングパンツの背面図、図３はサイクリングパンツの側面図、図４はサイクリングパンツの装着状態における脚の筋肉とプリント部の関係を示す背面図、図５はプリント部のみの拡大図、図６はペダルの回転角度と用いる筋肉の関係図である。
【００１４】
サイクリングパンツ１０は、主にロードレーサやマウンテンバイクなどのスポーツ走行を目的とする自転車に搭乗する際に着用されるパンツである。サイクリングパンツ１０は、パンツ本体１２と、パンツ本体１２に固定された左右一対の肩紐部１４とを有している。
【００１５】
パンツ本体１２は、たとえばポリエステルなどの伸縮性を有する生地が用いられている。ただし、各図は、生地を伸長させない状態で描いている。パンツ本体１２は、前ウエスト部２０と、前ウエスト部２０と共にサイクリスト（搭乗者）Ｈの上半身を覆うウエスト開口部２６を形成する後ウエスト部２２と、一対の脚開口部２８の間に位置する股部２４とを有している。
前ウエスト部２０は、伸縮性を有する孔あきメッシュ製の素材でＵ字状に湾曲して形成された前上部分２０ｃと、伸縮性を有する孔なし素材で形成され股部２４に連なる前下部分２０ｄとを有している。前下部分２０ｄは、両側部で縁部分まで延びている。
【００１６】
後ウエスト部２２は、一対の肩紐部１４と一体形成されている。後ウエスト部２２は、肩紐部１４が連なる伸縮性を有する孔あきメッシュ製の素材で形成された後上部分２２ａと、伸縮性を有する孔なし素材で形成され股部２４に連なる後下部分２２ｂとを有している。
後上部分２２ａは、後下部分２２ｂに向けてＵ字状に突出して形成されている。後下部分２２ｂも前下部分２０ｄと同様に側部で縁部分まで伸びている。そして前ウエスト部２０と後ウエスト部２２との連結部分は、両側部でＵ字状に大きくえぐられている。
【００１７】
一対の肩紐部１４は、着用時にパンツ本体１２の後ウエスト部２２からサイクリストＨの両肩を経由して前ウエスト部２０に至っている。肩紐部１４は孔あきメッシュ製の伸縮性を有する素材で後ウエスト部２２の後上部分２２ａと一体形成されている。
【００１８】
股部２４は、一対の脚開口部２８の間に位置し、サイクリストＨの太股Ｈ２を覆うように形成される。股部２４は、全体が伸縮性の有する素材で形成されている。股部２４は、前後のウエスト部２０，２２から脚開口部２８が若干前方に向くように縫製されている。
股部２４の後ろは、後下部分２２ｂの下側に縫着される臀部生地２３によって構成されている。股部２４の下は、脚開口部２８（サイクリングパンツ１０の装着時にサイクリストＨの膝上に位置する）を形成している裾部生地２５から構成されている。臀部生地２３は、裾部生地２５と縫製されている。
特に裾部生地２５は編み生地によって形成され、サイクリングパンツ１０を装着し、自転車に搭乗してペダルを回転させた際の装着感の好さを維持することができるようになっている。
【００１９】
図４および図５に示すように、股部２４の臀部生地２３に、その生地の伸率を低下させる合成樹脂のプリント部２７が、サイクリストＨの大殿筋Ｍ１から、大腿ニ頭筋Ｍ２（ハムストリングの一部）に相当する領域に亘って、表面にプリントされている。
【００２０】
プリント部２７は背面投影視して、幅方向外側辺２７ａおよび幅方向内側辺２７ｂが幅方向外側に湾曲し、下側が幅狭の、全体として弧状に形成されている。このプリント部２７は、図５（左側のプリント部２７を示している）に示すように、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４を所定間隔毎に並べて構成されている。
換言すれば、各合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４の間に合成樹脂のプリントはなく、伸縮性生地（臀部生地２３）のみで構成されている。
各合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４は、異なる形状に形成されている。
【００２１】
このような構造のサイクリングパンツ１０では、着用の際には、両脚をパンツ本体１２の脚開口部２８に通してパンツ本体１２を着用してから肩紐部１４を両肩にかける。
パンツ本体１２は全体が伸縮性生地で形成されているから、臀部生地２３がサイクリストＨの臀部および太腿の裏側にフィットする。
このとき、臀部生地２３に施したプリント部２７の生地が、サイクリストＨの大殿筋Ｍ１の一部、および大腿ニ頭筋Ｍ２の一部に対応する領域に当てがわれる。
【００２２】
サイクリストＨにおいて、自転車に搭乗して、自転車のペダルを３６０°回転させる回転運動に際して、大殿筋、大腿ニ頭筋、下腿三頭筋、前脛骨筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋などを、ペダルの回転角度に応じて使い分けるように努めると、ペダリングパワーが向上することは知られている。
【００２３】
ペダルを踏み込む際（図７を参照して、例えば１２時〜３時の領域）には、主として大殿筋Ｍ１が縮むように用いられるようにサイクリストＨが意識すると、ペダリングパワーが向上する。
本発明の実施形態に係るサイクリングパンツ１０では、大殿筋Ｍ１に対応する部分の臀部生地２３には、プリント部２７のうち、例えば合成樹脂領域部３０，３１，３２がある。合成樹脂領域部３０，３１，３２は伸縮性生地の伸率を低下させるようになっており、伸縮性生地に縮む方向の力が生じている。このため、ペダルを踏み込むことによって縮むように変形する大殿筋Ｍ１の、変形に対するアシスト（補助）をするよう働く。
このため、ペダルを踏み込む際のペダリングパワーを向上させることができる。
【００２４】
また、ペダルを戻す際（図７を参照して、例えば３時〜９時）には、サイクリストＨは、大腿ニ頭筋Ｍ２、そのほか下腿三頭筋Ｍ３、半腱様筋Ｍ４、半膜様筋Ｍ５など、いわゆるハムストリングスが用いられるように意識すると、ペダリングパワーが向上する。
【００２５】
本発明の実施形態に係るサイクリングパンツ１０では、ハムストリングスのうち、ペダルの踏み込みから戻す動作に移る際に主として用いる大腿ニ頭筋Ｍ２の一部に相当する領域に、プリント部２７のうち、例えば合成樹脂領域部３２，３３，３４がある。
特に、合成樹脂領域部３２は大殿筋Ｍ１と大腿ニ頭筋Ｍ２とに係るようにあって、プリント部２７が大殿筋Ｍ１から大腿ニ頭筋Ｍ２に亘っている。
【００２６】
そして、合成樹脂領域部３２，３３，３４は伸縮性生地の伸率を低下させるようになっており、伸縮性生地に縮む方向の力が生じている。
このため、ペダルを戻す方向に回転させる脚の動きに応じて、縮むように変形する大腿ニ頭筋Ｍ２の、変形に対するアシストをするよう働き、ペダルを戻す際のペダリングパワーを向上させることができる。
【００２７】
なお、プリント部２７は大殿筋Ｍ１および大腿ニ頭筋Ｍ２のうち、最も伸縮率の大きい部分を含む領域に施すことが望ましい。
このため、プリント部２７は背面投影視して、幅方向外側辺２７ａおよび幅方向内側辺２７ｂが幅方向外側に湾曲し、下側が幅狭の、全体として弧状に形成するものとしてある。
【００２８】
そして、サイクリストＨによるペダルの回転運動をアシストする生地は、合成樹脂をプリントしてなるものを縫製することでなっているから、サイクリングパンツ１０の製造が極めて容易である。
【００２９】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態では、プリント部２７は、大殿筋Ｍ１および大腿ニ頭筋Ｍ２に対応する領域に施したが、半腱様筋Ｍ４、半膜様筋Ｍ５に相当する領域に施すことで、これら筋肉のアシストをするよう構成することもできる。
【００３０】
さらに、上記実施形態では、プリント部２７は複数の合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４を離間させて並べるように施しているがこれに限定されず、プリント部２７の全てを、間を置かない合成樹脂領域部とすることも好ましい。
【符号の説明】
【００３１】
１０…サイクリングパンツ、１２…パンツ本体、２０，２２…ウエスト部、２３…臀部生地、２４…股部、２５…裾部生地、２６…ウエスト開口部、２７…プリント部、２８…脚開口部、３０，３１，３２，３３，３４…合成樹脂領域部、Ｈ…サイクリスト、Ｍ１…大殿筋、Ｍ２…大腿ニ頭筋
【技術分野】
【０００１】
本発明は、サイクリストが自転車に搭乗する際に装着する、サイクリングパンツに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、運動用衣服として、下記特許文献１に示す技術が提案されている。ここの開示されている衣服は、運動能力を補助するための特定の筋肉をサポート（保護）するサポート部分が、大臀部を避けるよう設けられている。また、このサポート部分は、緊締力の強い部分として、カットボス編手法によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００１−２１４３０３（特許第３７４０３４４号）号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の運動用衣服では、特定の筋肉をサポートするサポート部分が、大殿筋を避けるよう設けられている。
ところで、サイクリストにとって自転車のペダルを踏み込むときに踏力を発生させる筋肉は、主として大殿筋があげられ、大殿筋はペダルに脚を乗せたとき（膝を曲げたとき）には伸びており、ペダルを踏み込むときには縮むよう変形する。そして、上記従来の運動用衣服では、大殿筋に相当する部分にはサポート部を設けておらず、したがって、サイクリストの大腿筋が伸びる方向へのアシスト（補助）する機能としては望めない。
また、上記従来の運動用衣服のサポート部分は、緊締力の強い部分として、カットボス編手法によって形成されているから、製造が難しいといった課題がある。
【０００５】
そこで本発明は上記課題に鑑み、ペダリングパワー（踏力）を発生させる大殿筋をアシストでき、しかも製造が容易なサイクリングパンツの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、伸縮性生地からなり、該伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされていることを特徴としている。
【０００７】
上記構成によれば、自転車のペダルを下へ踏み込む際に主として用いられる大殿筋を、大殿筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシスト（補助）し、自転車のペダルを上へ戻す際に主として用いられる大腿ニ頭筋を、大腿ニ頭筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストし、ペダリングパワーの向上が図られる。
【０００８】
ペダルの回転を時計針の指す方向で例えると、１２時から３時の間、すなわちペダルを踏み込むサイクルには、主として大殿筋の筋力が用いられ、３時から９時の間、すなわちペダルを上へ戻すサイクルの際には、主として、大腿ニ頭筋、下腿三頭筋、半腱様筋、半膜様筋が用いるようにペダリングをすることで、ペダリングパワーが向上することが知られている。
ペダルを上へ戻すサイクルの際に用いられるこれら脚の筋肉は、サイクリストの後ろ側の筋肉であって、本発明のサイクリングパンツでは、プリント部による緊締力により、特に大殿筋、大腿ニ頭筋の動きをアシストして、ペダリングパワーの向上が図られる。
【０００９】
本発明のサイクリングパンツでは、プリント部は、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部を所定間隔毎に並べて構成され、各合成樹脂領域部の間は伸縮性生地のみで構成されていることを特徴としている。
【００１０】
本発明のサイクリングパンツでは、各合成樹脂領域部は、同一の大きさ形状の微細な帯状に形成された構成単位樹脂を、所定間隔毎に多数並べて構成され、各構成単位樹脂の間は、伸縮性生地のみで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【００１１】
本発明のサイクリングパンツでは、伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされているから、サイクリストが自転車に搭乗して、自転車のペダルを下へ踏み込む際に主として用いられる大殿筋を、大殿筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストでき、自転車のペダルを上へ戻す際に主として用いられる大腿ニ頭筋を、大腿ニ頭筋に相当する領域のプリント部による緊締力によりアシストでき、ペダリングパワーを向上させられる。
また、サイクリングパンツにおいて、伸縮性生地の伸率を低下させる手段として、伸縮性生地の表面に合成樹脂をプリントしていることで実現させているから、伸縮性生地の所定の部分に合成樹脂をプリントするという構成だけで、ペダリングパワーの向上を可能とするサイクリングパンツが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明のサイクリングパンツの正面図
【図２】同じくサイクリングパンツの背面図
【図３】同じくサイクリングパンツの側面図
【図４】同じくサイクリングパンツの装着状態における脚の筋肉とプリント部の関係を示す背面図
【図５】同じくプリント部のみの拡大図
【図６】同じくペダルの回転角度と用いる筋肉の関係図
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、図１ないし図６に基づいて、本発明の実施形態に係るサイクリングパンツを説明する。図１はサイクリングパンツの正面図、図２はサイクリングパンツの背面図、図３はサイクリングパンツの側面図、図４はサイクリングパンツの装着状態における脚の筋肉とプリント部の関係を示す背面図、図５はプリント部のみの拡大図、図６はペダルの回転角度と用いる筋肉の関係図である。
【００１４】
サイクリングパンツ１０は、主にロードレーサやマウンテンバイクなどのスポーツ走行を目的とする自転車に搭乗する際に着用されるパンツである。サイクリングパンツ１０は、パンツ本体１２と、パンツ本体１２に固定された左右一対の肩紐部１４とを有している。
【００１５】
パンツ本体１２は、たとえばポリエステルなどの伸縮性を有する生地が用いられている。ただし、各図は、生地を伸長させない状態で描いている。パンツ本体１２は、前ウエスト部２０と、前ウエスト部２０と共にサイクリスト（搭乗者）Ｈの上半身を覆うウエスト開口部２６を形成する後ウエスト部２２と、一対の脚開口部２８の間に位置する股部２４とを有している。
前ウエスト部２０は、伸縮性を有する孔あきメッシュ製の素材でＵ字状に湾曲して形成された前上部分２０ｃと、伸縮性を有する孔なし素材で形成され股部２４に連なる前下部分２０ｄとを有している。前下部分２０ｄは、両側部で縁部分まで延びている。
【００１６】
後ウエスト部２２は、一対の肩紐部１４と一体形成されている。後ウエスト部２２は、肩紐部１４が連なる伸縮性を有する孔あきメッシュ製の素材で形成された後上部分２２ａと、伸縮性を有する孔なし素材で形成され股部２４に連なる後下部分２２ｂとを有している。
後上部分２２ａは、後下部分２２ｂに向けてＵ字状に突出して形成されている。後下部分２２ｂも前下部分２０ｄと同様に側部で縁部分まで伸びている。そして前ウエスト部２０と後ウエスト部２２との連結部分は、両側部でＵ字状に大きくえぐられている。
【００１７】
一対の肩紐部１４は、着用時にパンツ本体１２の後ウエスト部２２からサイクリストＨの両肩を経由して前ウエスト部２０に至っている。肩紐部１４は孔あきメッシュ製の伸縮性を有する素材で後ウエスト部２２の後上部分２２ａと一体形成されている。
【００１８】
股部２４は、一対の脚開口部２８の間に位置し、サイクリストＨの太股Ｈ２を覆うように形成される。股部２４は、全体が伸縮性の有する素材で形成されている。股部２４は、前後のウエスト部２０，２２から脚開口部２８が若干前方に向くように縫製されている。
股部２４の後ろは、後下部分２２ｂの下側に縫着される臀部生地２３によって構成されている。股部２４の下は、脚開口部２８（サイクリングパンツ１０の装着時にサイクリストＨの膝上に位置する）を形成している裾部生地２５から構成されている。臀部生地２３は、裾部生地２５と縫製されている。
特に裾部生地２５は編み生地によって形成され、サイクリングパンツ１０を装着し、自転車に搭乗してペダルを回転させた際の装着感の好さを維持することができるようになっている。
【００１９】
図４および図５に示すように、股部２４の臀部生地２３に、その生地の伸率を低下させる合成樹脂のプリント部２７が、サイクリストＨの大殿筋Ｍ１から、大腿ニ頭筋Ｍ２（ハムストリングの一部）に相当する領域に亘って、表面にプリントされている。
【００２０】
プリント部２７は背面投影視して、幅方向外側辺２７ａおよび幅方向内側辺２７ｂが幅方向外側に湾曲し、下側が幅狭の、全体として弧状に形成されている。このプリント部２７は、図５（左側のプリント部２７を示している）に示すように、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４を所定間隔毎に並べて構成されている。
換言すれば、各合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４の間に合成樹脂のプリントはなく、伸縮性生地（臀部生地２３）のみで構成されている。
各合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４は、異なる形状に形成されている。
【００２１】
このような構造のサイクリングパンツ１０では、着用の際には、両脚をパンツ本体１２の脚開口部２８に通してパンツ本体１２を着用してから肩紐部１４を両肩にかける。
パンツ本体１２は全体が伸縮性生地で形成されているから、臀部生地２３がサイクリストＨの臀部および太腿の裏側にフィットする。
このとき、臀部生地２３に施したプリント部２７の生地が、サイクリストＨの大殿筋Ｍ１の一部、および大腿ニ頭筋Ｍ２の一部に対応する領域に当てがわれる。
【００２２】
サイクリストＨにおいて、自転車に搭乗して、自転車のペダルを３６０°回転させる回転運動に際して、大殿筋、大腿ニ頭筋、下腿三頭筋、前脛骨筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋などを、ペダルの回転角度に応じて使い分けるように努めると、ペダリングパワーが向上することは知られている。
【００２３】
ペダルを踏み込む際（図７を参照して、例えば１２時〜３時の領域）には、主として大殿筋Ｍ１が縮むように用いられるようにサイクリストＨが意識すると、ペダリングパワーが向上する。
本発明の実施形態に係るサイクリングパンツ１０では、大殿筋Ｍ１に対応する部分の臀部生地２３には、プリント部２７のうち、例えば合成樹脂領域部３０，３１，３２がある。合成樹脂領域部３０，３１，３２は伸縮性生地の伸率を低下させるようになっており、伸縮性生地に縮む方向の力が生じている。このため、ペダルを踏み込むことによって縮むように変形する大殿筋Ｍ１の、変形に対するアシスト（補助）をするよう働く。
このため、ペダルを踏み込む際のペダリングパワーを向上させることができる。
【００２４】
また、ペダルを戻す際（図７を参照して、例えば３時〜９時）には、サイクリストＨは、大腿ニ頭筋Ｍ２、そのほか下腿三頭筋Ｍ３、半腱様筋Ｍ４、半膜様筋Ｍ５など、いわゆるハムストリングスが用いられるように意識すると、ペダリングパワーが向上する。
【００２５】
本発明の実施形態に係るサイクリングパンツ１０では、ハムストリングスのうち、ペダルの踏み込みから戻す動作に移る際に主として用いる大腿ニ頭筋Ｍ２の一部に相当する領域に、プリント部２７のうち、例えば合成樹脂領域部３２，３３，３４がある。
特に、合成樹脂領域部３２は大殿筋Ｍ１と大腿ニ頭筋Ｍ２とに係るようにあって、プリント部２７が大殿筋Ｍ１から大腿ニ頭筋Ｍ２に亘っている。
【００２６】
そして、合成樹脂領域部３２，３３，３４は伸縮性生地の伸率を低下させるようになっており、伸縮性生地に縮む方向の力が生じている。
このため、ペダルを戻す方向に回転させる脚の動きに応じて、縮むように変形する大腿ニ頭筋Ｍ２の、変形に対するアシストをするよう働き、ペダルを戻す際のペダリングパワーを向上させることができる。
【００２７】
なお、プリント部２７は大殿筋Ｍ１および大腿ニ頭筋Ｍ２のうち、最も伸縮率の大きい部分を含む領域に施すことが望ましい。
このため、プリント部２７は背面投影視して、幅方向外側辺２７ａおよび幅方向内側辺２７ｂが幅方向外側に湾曲し、下側が幅狭の、全体として弧状に形成するものとしてある。
【００２８】
そして、サイクリストＨによるペダルの回転運動をアシストする生地は、合成樹脂をプリントしてなるものを縫製することでなっているから、サイクリングパンツ１０の製造が極めて容易である。
【００２９】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態では、プリント部２７は、大殿筋Ｍ１および大腿ニ頭筋Ｍ２に対応する領域に施したが、半腱様筋Ｍ４、半膜様筋Ｍ５に相当する領域に施すことで、これら筋肉のアシストをするよう構成することもできる。
【００３０】
さらに、上記実施形態では、プリント部２７は複数の合成樹脂領域部３０，３１，３２，３３，３４を離間させて並べるように施しているがこれに限定されず、プリント部２７の全てを、間を置かない合成樹脂領域部とすることも好ましい。
【符号の説明】
【００３１】
１０…サイクリングパンツ、１２…パンツ本体、２０，２２…ウエスト部、２３…臀部生地、２４…股部、２５…裾部生地、２６…ウエスト開口部、２７…プリント部、２８…脚開口部、３０，３１，３２，３３，３４…合成樹脂領域部、Ｈ…サイクリスト、Ｍ１…大殿筋、Ｍ２…大腿ニ頭筋
【特許請求の範囲】
【請求項１】
サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、
伸縮性生地からなり、該伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされていることを特徴とするサイクリングパンツ。
【請求項２】
プリント部は、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部を所定間隔毎に並べて構成され、各合成樹脂領域部の間は伸縮性生地のみで構成されていることを特徴とする請求項１記載のサイクリングパンツ。
【請求項３】
各合成樹脂領域部は、同一の大きさ形状の微細な帯状に形成された構成単位樹脂を、所定間隔毎に多数並べて構成され、各構成単位樹脂の間は、伸縮性生地のみで構成されていることを特徴とする請求項２記載のサイクリングパンツ。
【請求項１】
サイクリストが自転車に搭乗する際に装着するためのサイクリングパンツであって、
伸縮性生地からなり、該伸縮性生地の伸率を低下させる合成樹脂製のプリント部が、サイクリストの大殿筋から大腿ニ頭筋に相当する領域に亘って、伸縮性生地の表面にプリントされていることを特徴とするサイクリングパンツ。
【請求項２】
プリント部は、丈方向および幅方向に所定の長さを有した斜め帯状の合成樹脂領域部を所定間隔毎に並べて構成され、各合成樹脂領域部の間は伸縮性生地のみで構成されていることを特徴とする請求項１記載のサイクリングパンツ。
【請求項３】
各合成樹脂領域部は、同一の大きさ形状の微細な帯状に形成された構成単位樹脂を、所定間隔毎に多数並べて構成され、各構成単位樹脂の間は、伸縮性生地のみで構成されていることを特徴とする請求項２記載のサイクリングパンツ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−１４９１１７（Ｐ２０１１−１４９１１７Ａ）
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１０４３７（Ｐ２０１０−１０４３７）
【出願日】平成２２年１月２０日（２０１０．１．２０）
【出願人】（０００００２４３９）株式会社シマノ (1,038)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月２０日（２０１０．１．２０）
【出願人】（０００００２４３９）株式会社シマノ (1,038)
【Ｆターム（参考）】
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