説明

サイクロン式掃除機

【課題】サイクロン筒から排出される塵埃を低減させることができるサイクロン式掃除機を提供する。
【解決手段】電動送風機が内蔵された掃除機本体2と、集塵容器10及びそれに収納される渦流発生部材11とを有し、前記渦流発生部材11が、前記集塵容器10のサイクロン筒14内に同軸的に装着される筒状部16を有し、この筒状部16の側面16Aに前記サイクロン筒14内と前記電動送風機を連通させる通気孔17が形成され、更に、前記筒状部16の下端部に、全周にわたって突出する第一の返し部18を設けると共に、前記筒状部16の側面16Aに、全周にわたって突出する第二の返し部19を設けたことで、前記各返し部18,19を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移るので、前記筒状部16に形成された通気孔17を通過する気流F3に含まれる塵埃を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサイクロン式掃除機としては、サイクロン本体(本願発明のサイクロン筒に相当する)内に、開口部が形成された排出管(本願発明の筒状部に相当する)を設けると共に、この排出管に仕切部材(本願発明の返し部に相当する)が設けられたものが知られている。これらのサイクロン式掃除機では、旋回流に乗った塵埃が、前記サイクロン本体内で旋回流から遠心分離された後、塵埃が除かれた気流が前記排出管から流出する。なお、前記気流には、遠心力によって分離することができなかった細かい塵埃が含まれることがあるが、このような細かい塵埃は、その一部が、気流が前記仕切部材を越える際に、前記サイクロン本体の内壁に沿って流れる旋回流に移ることで、前記サイクロン本体から流出することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−200082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサイクロン式掃除機においては、前記仕切部材によって抑制されるとはいえ、塵埃が前記仕切部材を超えて前記排出管から排出されるという問題があった。そして、この排出管にフィルタ等を設けた場合、このフィルタに細かい塵埃が付着することで詰まってしまうという問題もあった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、サイクロン筒から排出される塵埃を低減させることができるサイクロン式掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のサイクロン式掃除機は、電動送風機が内蔵された掃除機本体と、サイクロン筒と、このサイクロン筒内に同軸的に装着された筒状部とを有し、この筒状部の側面に前記サイクロン筒内と前記電動送風機を連通させる通気孔が形成されたサイクロン式掃除機において、前記筒状部から、全周にわたって突出する返し部を複数設けたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のサイクロン式掃除機は、請求項1において、前記筒状部に設けられた返し部を越える気流を基準とし、前記通気孔を、何れの返し部よりも下流側に設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載のサイクロン式掃除機は、以上のように構成することにより、前記サイクロン筒内で発生した旋回流に含まれる塵埃が、遠心力によって分離される。そして、前記旋回流から分離されなかった細かい塵埃が含まれた気流が、前記返し部を越える際に、前記気流に含まれた塵埃の一部が旋回流に移ることで、前記返し部を超えた気流に含まれる塵埃の量が低減される。これを繰り返すことで、前記筒状部に形成された通気孔を通過した気流に含まれる塵埃の量を少なくすることができる。
【0009】
また、前記筒状部に設けられた返し部を越える気流を基準とし、前記通気孔を、何れの返し部よりも下流側に設けたことにより、確実に、塵埃が十分に減らされた気流を前記通気孔に通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態を示すサイクロン式掃除機の正面図である。
【図2】同、左側面図である。
【図3】同、要部概略図である。
【図4】本発明の第二の実施形態を示すサイクロン式掃除機の正面図である。
【図5】同、左側面図である。
【図6】同、要部概略図である。
【図7】本発明の第三の実施形態を示すサイクロン式掃除機の正面図である。
【図8】同、左側面図である。
【図9】同、要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、本実施形態では、便宜上、図1の姿勢に基づいて上下及び前後を規定する。また、図3は、本発明の要部を簡略化したものであるので、図1及び図2の断面とは正確に一致する訳ではない。1は本発明の縦型電気掃除機である。この縦型電気掃除機1は、掃除機本体2と、この掃除機本体2に対して着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部3と、ノズル4と、操作ハンドル5とを有して構成される。
【0012】
前記掃除機本体2には、電動送風機6等が内蔵される。また、前記掃除機本体2の上部には、前記操作ハンドル5の棒状体7の下端側を差し込んで着脱自在に固定するための差込部8が設けられる。なお、9は排気口である。
【0013】
前記サイクロン式集塵部3は、前記掃除機本体2の下部に取り付けられると共に、この掃除機本体2に取り付けられた状態において、前記電動送風機6と連通する。そして、前記サイクロン式集塵部3は、透明な合成樹脂から構成された集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材11と、この渦流発生部材11の後述する筒状部16内に収納されるフィルタ組立体12とを有して構成される。前記集塵容器10は、上下両端が開放した円筒状の導入部13と、上端が開放した円筒状又は逆円錐状のサイクロン筒14とで一体に形成される。そして、前記集塵容器10には、その上端側から前記渦流発生部材11が挿入される。また、前記集塵容器10の導入部13の下端には、前記ノズル4が着脱自在に取り付けられる。前記渦流発生部材11は、方向転換部15と、筒状部16とを有して構成される。前記方向転換部15は、前記渦流発生部材11を前記集塵容器10に取り付けた状態において、前記導入部13の上端開口部に被さるように構成される。そして、前記方向転換部15は、前記導入部13を上昇する気流F1を、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿う方向に転換させるように構成される。また、前記筒状部16は有底円筒状に形成されると共に、その側面16Aに多数の通気孔17が形成される。更に、前記筒状部16の下端部には、第一の返し部18が形成されると共に、前記筒状部16の側面16Aの下部には、第二の返し部19が形成される。そして、前記フィルタ組立体12は、貫通孔20が形成された基部21と、前記貫通孔20の周囲から下方に延びて設けられたフィルタ枠22と、このフィルタ枠22に支持されたフィルタ23とを有して構成される。
【0014】
前記筒状部16について詳述する。前記第一の返し部18は、前記筒状部16の下端部から全周に亘って、この筒状部16の軸直方向外側に突出すると共に、その先端側が湾曲して、下方に延びるように構成される。また、前記第二の返し部19は、前記筒状部16の側面16Aから全周に亘って、この筒状部16の軸直方向外側に円盤状に突出する。更に、前記通気孔17は、前記第二の返し部19よりも上方に形成される。そして、前記渦流発生部材11を前記集塵容器10に取り付けることで、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第一の返し部18との間に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと筒状部16の側面16Aとの間隔よりも狭い第一の狭間部24が形成されると共に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第二の返し部19との間に、第二の狭間部25が形成される。
【0015】
次に、本実施形態の作用について説明する。前記電動送風機6を作動させると、吸引気流Fが発生する。この吸引気流Fは、被清掃面の塵埃と共に前記ノズル4から前記導入部13に流入し、この導入部13を上昇する。そして、この導入部13を上昇する気流F1は、前記方向転換部15によって方向転換され、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って旋回しながら下降する渦流F2となる。この際、この渦流F2に含まれる塵埃は、遠心力によって前記内壁14Aに押し付けられる。そして、前記渦流F2は、前記サイクロン筒14の底部に達すると、上昇に転じる。この際、前記渦流F2に含まれる塵埃は前記サイクロン筒14の底部に留まる。そして、前記サイクロン筒14内を上昇した気流F3は、前記第一の返し部18を乗り越えて前記第一の挾間部24を通った後、前記第二の返し部19を乗り越えて前記第二の狭間部25を通過する。そして、前記気流F3は、前記通気孔17を通過した後、前記フィルタ23を通過し、前記電動送風機6に至る。更に、この電動送風機6に至った気流F3は、前記排気口9から前記掃除機本体2外に排出される。
【0016】
なお、前記サイクロン筒14内を上昇する気流F3には、細かい塵埃が分離されずに残っていることがある。しかしながら、前記上昇気流F3は、前記筒状部16の下端部に形成された前記第一の返し部18を越える際に、前記第一の狭間部24において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。更に、前記上昇気流F3は、前記筒状部16の側面16Aで且つ前記第一の返し部18よりも上方に形成された前記第二の返し部19を越える際に、前記第二の狭間部25において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。なお、前記旋回流F2中の塵埃には遠心力が働いているので、前記各狭間部24,25において、旋回流F2に含まれる塵埃は、その内側を流れる上昇気流F3へは殆ど移らない。このようにして、前記気流F3中に含まれる細かい塵埃は、前記各返し部18,19を越える際に、その量が低減される。そして、気流F3中に僅かに残った細かい塵埃も、前記気流F3が前記フィルタ23を通過する際に、殆ど取り除かれる。なお、前記筒状部16の通気孔17が、前記第二の返し部19よりも上方、即ち前記上昇気流F3の下流側に形成されるので、前記気流F3は、塵埃の量が最小限となった状態で、前記通気孔17を通過し、更に前記フィルタ23を通過する。従って、前記フィルタ23によって捕捉される塵埃の量を少なくすることができるので、前記フィルタ23が目詰まりを起こしにくくすることができる。
【0017】
なお、前記第一の返し部18と第二の返し部19との間隔、前記第一の返し部18の直径、前記第二の返し部19の直径、前記各狭間部24,25の幅は、前記電動送風機6の出力、前記サイクロン筒14の形状及び大きさ、前記筒状部16の形状及び大きさ、前記筒状部16の前記サイクロン筒14内における位置等によって、その最適値が一定ではない。但し、前記第一の返し部18と第二の返し部19との間隔が狭すぎると、前記第一の返し部18を乗り越えた上昇気流F3が、そのままスムーズに前記第二の返し部19を乗り越えてしまい、前記気流F3に含まれる細かい塵埃が十分に除去されず、前記通気孔17を塞いだり、前記フィルタ23に付着したりする虞がある。従って、前記第一の返し部18と第二の返し部19との間隔は、図3に示すように、前記上昇気流F3が、前記第一の返し部18を越えた後、前記筒状部16の側面16Aに寄って流れ、更に前記筒状部16の側面16Aから離れるように前記第二の返し部19を乗り越えて流れることができる程度に離れている必要がある。言い換えれば、前記各狭間部24,25(比較的高圧)と、これらの間の空間(比較的低圧)とで明確に圧力差が生じる程度に、前記第一の返し部18と第二の返し部19が離れている必要がある。
【0018】
以上のように本発明のサイクロン式掃除機は、電動送風機6が内蔵された掃除機本体2と、集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材11とを有し、前記集塵容器10がサイクロン筒14を有し、前記渦流発生部材11が前記サイクロン筒14内に同軸的に装着される筒状部16を有し、この筒状部16の側面16Aに前記サイクロン筒14内と前記電動送風機6を連通させる通気孔17が形成され、更に、前記筒状部16の下端部に、全周にわたって突出する第一の返し部18を設けると共に、前記筒状部16の側面16Aに、全周にわたって突出する第二の返し部19を設けたことで、前記第一の返し部18を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移り、更に、前記第二の返し部19を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移るので、前記筒状部16に形成された通気孔17を通過する気流F3に含まれる塵埃の量を少なくすることができるものである。
【0019】
また、前記通気孔17を前記第二の返し部19よりも上方、即ち前記上昇気流F3に対して下流側に設けたことにより、確実に、塵埃が十分に減らされた気流F3を前記通気孔17に通すことができるものである。
【0020】
次に、本発明の第二の実施形態について、図4乃至図6に基づいて説明する。なお、本実施形態でも、便宜上、図4の姿勢に基づいて上下及び前後を規定する。また、図6は、本発明の要部を簡略化したものであるので、図4及び図5の断面とは正確に一致する訳ではない。31は本発明の縦型電気掃除機である。この縦型電気掃除機31は、掃除機本体2と、この掃除機本体2に対して着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部32と、ノズル4と、操作ハンドル5とを有して構成される。
【0021】
前記掃除機本体2には、電動送風機6等が内蔵される。また、前記掃除機本体2の上部には、前記操作ハンドル5の棒状体7の下端側を差し込んで着脱自在に固定するための差込部8が設けられる。なお、9は排気口である。
【0022】
前記サイクロン式集塵部32は、前記掃除機本体2の下部に取り付けられると共に、この掃除機本体2に取り付けられた状態において、前記電動送風機6と連通する。そして、前記サイクロン式集塵部32は、透明な合成樹脂から構成された集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材33と、この渦流発生部材33の筒状部34内に収納されるフィルタ組立体12とを有して構成される。前記集塵容器10は、上下両端が開放した円筒状の導入部13と、上端が開放した円筒状又は逆円錐状のサイクロン筒14とで一体に形成される。そして、前記集塵容器10には、その上端側から前記渦流発生部材33が挿入される。また、前記集塵容器10の導入部13の下端には、前記ノズル4が着脱自在に取り付けられる。前記渦流発生部材33は、方向転換部15と、前記筒状部34とを有して構成される。前記方向転換部15は、前記渦流発生部材33を前記集塵容器10に取り付けた状態において、前記導入部13の上端開口部に被さるように構成される。そして、前記方向転換部15は、前記導入部13を上昇する気流F1を、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿う方向に転換させるように構成される。また、前記筒状部34は有底円筒状に形成されると共に、その側面34Aに多数の通気孔35が形成される。更に、前記筒状部34の下端部には、第一の返し部36が形成されると共に、前記筒状部34の側面34Aの下部には、前記筒状部34の軸方向に間隔を空けて第二の返し部37及び第三の返し部38が形成される。そして、前記フィルタ組立体12は、貫通孔20が形成された基部21と、前記貫通孔20の周囲から下方に延びて設けられたフィルタ枠22と、このフィルタ枠22に支持されたフィルタ23とを有して構成される。
【0023】
前記筒状部34について詳述する。前記第一の返し部36は、前記筒状部34の下端部から全周に亘って、この筒状部34の軸直方向外側に突出すると共に、その先端側が湾曲して、下方に延びるように構成される。また、前記第二の返し部37及び第三の返し部38は、前記筒状部34の側面34Aから全周に亘って、この筒状部34の軸直方向外側に円盤状に突出する。更に、前記通気孔35は、前記第三の返し部38よりも上方に形成される。そして、前記渦流発生部材33を前記集塵容器10に取り付けることで、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第一の返し部36との間に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと筒状部34の側面34Aとの間隔よりも狭い第一の狭間部39が形成され、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第二の返し部37との間に、第二の狭間部40が形成されると共に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第三の返し部38との間に、第三の狭間部41が形成される。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。前記電動送風機6を作動させると、吸引気流Fが発生する。この吸引気流Fは、被清掃面の塵埃と共に前記ノズル4から前記導入部13に流入し、この導入部13を上昇する。そして、この導入部13を上昇する気流F1は、前記方向転換部15によって方向転換され、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って旋回しながら下降する渦流F2となる。この際、この渦流F2に含まれる塵埃は、遠心力によって前記内壁14Aに押し付けられる。そして、前記渦流F2は、前記サイクロン筒14の底部に達すると、上昇に転じる。この際、前記渦流F2に含まれる塵埃は前記サイクロン筒14の底部に留まる。そして、前記サイクロン筒14内を上昇した気流F3は、前記第一の返し部36を乗り越えて前記第一の挾間部39を通過した後、前記第二の返し部37を乗り越えて前記第二の狭間部40を通過し、更に、前記第三の返し部38を乗り越えて前記第三の狭間部41を通過する。そして、前記気流F3は、前記通気孔35を通過した後、前記フィルタ23を通過し、前記電動送風機6に至る。更に、この電動送風機6に至った気流F3は、前記排気口9から前記掃除機本体2外に排出される。
【0025】
なお、前記サイクロン筒14内を上昇する気流F3には、細かい塵埃が分離されずに残っていることがある。しかしながら、前記上昇気流F3は、前記筒状部34の下端部に形成された前記第一の返し部36を越える際に、前記第一の狭間部39において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。また、前記上昇気流F3は、前記筒状部34の側面34Aで且つ前記第一の返し部36よりも上方に形成された前記第二の返し部37を越える際に、前記第二の狭間部40において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。更に、前記上昇気流F3は、前記筒状部34の側面34Aで且つ前記第二の返し部37よりも上方に形成された前記第三の返し部38を越える際に、前記第三の狭間部41において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。なお、前記旋回流F2中の塵埃には遠心力が働いているので、前記各狭間部39,40,41において、旋回流F2に含まれる塵埃は、その内側を流れる上昇気流F3へは殆ど移らない。このようにして、前記気流F3中に含まれる細かい塵埃は、前記各返し部36,37,38を越える際に、その量が低減される。そして、気流F3中に僅かに残った細かい塵埃も、前記気流F3が前記フィルタ23を通過する際に、殆ど取り除かれる。なお、前記筒状部34の通気孔35が、前記第三の返し部38よりも上方、即ち前記上昇気流F3の下流側に形成されるので、前記気流F3は、塵埃の量が最小限となった状態で、前記通気孔35を通過し、更に前記フィルタ23を通過する。従って、前記フィルタ23によって捕捉される塵埃の量を少なくすることができるので、前記フィルタ23が目詰まりを起こしにくくすることができる。
【0026】
なお、前記各返し部36,37,38同士の間隔、前記各返し部36,37,38の直径、前記各狭間部39,40,41の幅は、前記電動送風機6の出力、前記サイクロン筒14の形状及び大きさ、前記筒状部34の形状及び大きさ、前記筒状部34の前記サイクロン筒14内における位置等によって、その最適値が一定ではない。但し、前記各返し部36,37,38同士の間隔が狭すぎると、前記第一の返し部36を乗り越えた上昇気流F3が、そのままスムーズに前記第三の返し部38を乗り越えてしまい、前記気流F3に含まれる細かい塵埃が十分に除去されず、前記通気孔35を塞いだり、前記フィルタ23に付着したりする虞がある。従って、前記各返し部36,37,38同士の間隔は、図6に示すように、前記上昇気流F3が、前記第一の返し部36を越えた後、前記筒状部34の側面34Aに寄って流れ、前記筒状部34の側面34Aから離れるように前記第二の返し部37を乗り越えて流れ、更に、前記筒状部34の側面34Aに寄って流れた後、前記筒状部34の側面34Aから離れるように前記第三の返し部38を乗り越えて流れることができる程度に離れている必要がある。言い換えれば、前記各狭間部39,40,41(比較的高圧)と、これらの間の空間(比較的低圧)とで明確に圧力差が生じる程度に、前記各返し部36,37,38同士が離れている必要がある。
【0027】
以上のように本発明のサイクロン式掃除機31は、電動送風機6が内蔵された掃除機本体2と、集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材33とを有し、前記集塵容器10がサイクロン筒14を有し、前記渦流発生部材33が前記サイクロン筒14内に同軸的に装着される筒状部34を有し、この筒状部34の側面34Aに前記サイクロン筒14内と前記電動送風機6を連通させる通気孔35が形成され、更に、前記筒状部34の下端部に、全周にわたって突出する第一の返し部36を設けると共に、前記筒状部34の側面34Aに、全周にわたって突出する第二の返し部37と第三の返し部38とを前記筒状部34の軸方向に間隔を空けて設けたことで、前記第一の返し部36を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移り、前記第二の返し部37を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移り、更に、前記第三の返し部38を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移るので、前記筒状部34に形成された通気孔35を通過する気流F3に含まれる塵埃の量を少なくすることができるものである。
【0028】
また、前記通気孔35を前記第三の返し部38よりも上方、即ち前記上昇気流F3に対して下流側に設けたことにより、確実に、塵埃が十分に減らされた気流F3を前記通気孔35に通すことができるものである。
【0029】
次に、本発明の第三の実施形態について、図7乃至図9に基づいて説明する。なお、本実施形態でも、便宜上、図7の姿勢に基づいて上下及び前後を規定する。また、図9は、本発明の要部を簡略化したものであるので、図7及び図8の断面とは正確に一致する訳ではない。51は本発明の縦型電気掃除機である。この縦型電気掃除機51は、掃除機本体2と、この掃除機本体2に対して着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部52と、ノズル4と、操作ハンドル5とを有して構成される。
【0030】
前記掃除機本体2には、電動送風機6等が内蔵される。また、前記掃除機本体2の上部には、前記操作ハンドル5の棒状体7の下端側を差し込んで着脱自在に固定するための差込部8が設けられる。なお、9は排気口である。
【0031】
前記サイクロン式集塵部52は、前記掃除機本体2の下部に取り付けられると共に、この掃除機本体2に取り付けられた状態において、前記電動送風機6と連通する。そして、前記サイクロン式集塵部52は、透明な合成樹脂から構成された集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材53と、この渦流発生部材53の筒状部54内に収納されるフィルタ組立体12とを有して構成される。前記集塵容器10は、上下両端が開放した円筒状の導入部13と、上端が開放した円筒状又は逆円錐状のサイクロン筒14とで一体に形成される。そして、前記集塵容器10には、その上端側から前記渦流発生部材53が挿入される。また、前記集塵容器10の導入部13の下端には、前記ノズル4が着脱自在に取り付けられる。前記渦流発生部材53は、方向転換部15と、前記筒状部54とを有して構成される。前記方向転換部15は、前記渦流発生部材53を前記集塵容器10に取り付けた状態において、前記導入部13の上端開口部に被さるように構成される。そして、前記方向転換部15は、前記導入部13を上昇する気流F1を、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿う方向に転換させるように構成される。また、前記筒状部54は有底円筒状に形成されると共に、その側面54Aに多数の通気孔55が形成される。なお、前記筒状部54の下端は、前記サイクロン筒14の底部に達する。更に、前記筒状部54の側面54Aのほぼ中央部には、前記筒状部54の軸方向に間隔を空けて、第一の返し部56、第二の返し部57、及び第三の返し部58が形成される。そして、前記フィルタ組立体12は、貫通孔20が形成された基部21と、前記貫通孔20の周囲から下方に延びて設けられたフィルタ枠22と、このフィルタ枠22に支持されたフィルタ23とを有して構成される。
【0032】
前記筒状部54について詳述する。前記第一の返し部56、第二の返し部57、及び第三の返し部58は、前記筒状部54の側面54Aから全周に亘って、この筒状部54の軸直方向外側に円盤状に突出する。更に、前記通気孔55は、前記第三の返し部58よりも上方に形成される。そして、前記渦流発生部材53を前記集塵容器10に取り付けることで、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第一の返し部56との間に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと筒状部54の側面54Aとの間隔よりも狭い第一の狭間部59が形成され、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第二の返し部57との間に、第二の狭間部60が形成されると共に、前記サイクロン筒14の内壁14Aと第三の返し部58との間に、第三の狭間部61が形成される。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。前記電動送風機6を作動させると、吸引気流Fが発生する。この吸引気流Fは、被清掃面の塵埃と共に前記ノズル4から前記導入部13に流入し、この導入部13を上昇する。そして、この導入部13を上昇する気流F1は、前記方向転換部15によって方向転換され、前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って旋回しながら下降する渦流F2となる。この際、この渦流F2に含まれる塵埃は、遠心力によって前記内壁14Aに押し付けられる。そして、前記渦流F2は、前記サイクロン筒14の底部に達すると、上昇に転じる。この際、前記渦流F2に含まれる塵埃は前記サイクロン筒14の底部に留まる。そして、前記サイクロン筒14内を上昇した気流F3は、前記第一の返し部56を乗り越えて前記第一の挾間部59を通過した後、前記第二の返し部57を乗り越えて前記第二の狭間部60を通過し、更に、前記第三の返し部58を乗り越えて前記第三の狭間部61を通過する。そして、前記気流F3は、前記通気孔55を通過した後、前記フィルタ23を通過し、前記電動送風機6に至る。更に、この電動送風機6に至った気流F3は、前記排気口9から前記掃除機本体2外に排出される。
【0034】
なお、前記サイクロン筒14内を上昇する気流F3には、細かい塵埃が分離されずに残っていることがある。しかしながら、前記上昇気流F3は、前記筒状部54の側面54Aに形成された前記第一の返し部56を越える際に、前記第一の狭間部59において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。また、前記上昇気流F3は、前記筒状部54の側面54Aで且つ前記第一の返し部56よりも上方に形成された前記第二の返し部57を越える際に、前記第二の狭間部60において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。更に、前記上昇気流F3は、前記筒状部54の側面54Aで且つ前記第二の返し部57よりも上方に形成された前記第三の返し部58を越える際に、前記第三の狭間部61において前記サイクロン筒14の内壁14Aに沿って流れる旋回流F2に接近するので、前記上昇気流F3に含まれる細かい塵埃の一部が前記旋回流F2に移る。なお、前記旋回流F2中の塵埃には遠心力が働いているので、前記各狭間部59,60,61において、旋回流F2に含まれる塵埃は、その内側を流れる上昇気流F3へは殆ど移らない。このようにして、前記気流F3中に含まれる細かい塵埃は、前記各返し部56,57,58を越える際に、その量が低減される。そして、気流F3中に僅かに残った細かい塵埃も、前記気流F3が前記フィルタ23を通過する際に、殆ど取り除かれる。なお、前記筒状部54の通気孔55が、前記第三の返し部58よりも上方、即ち前記上昇気流F3の下流側に形成されるので、前記気流F3は、塵埃の量が最小限となった状態で、前記通気孔55を通過し、更に前記フィルタ23を通過する。従って、前記フィルタ23によって捕捉される塵埃の量を少なくすることができるので、前記フィルタ23が目詰まりを起こしにくくすることができる。
【0035】
なお、前記各返し部56,57,58同士の間隔、前記各返し部56,57,58の直径、前記各狭間部59,60,61の幅は、前記電動送風機6の出力、前記サイクロン筒14の形状及び大きさ、前記筒状部54の形状及び大きさ、前記筒状部54の前記サイクロン筒14内における位置等によって、その最適値が一定ではない。但し、前記各返し部56,57,58同士の間隔が狭すぎると、前記第一の返し部56を乗り越えた上昇気流F3が、そのままスムーズに前記第三の返し部58を乗り越えてしまい、前記気流F3に含まれる細かい塵埃が十分に除去されず、前記通気孔55を塞いだり、前記フィルタ23に付着したりする虞がある。従って、前記各返し部56,57,58同士の間隔は、図9に示すように、前記上昇気流F3が、前記第一の返し部56を越えた後、前記筒状部54の側面54Aに寄って流れ、前記筒状部54の側面54Aから離れるように前記第二の返し部57を乗り越えて流れ、更に、前記筒状部54の側面54Aに寄って流れた後、前記筒状部54の側面54Aから離れるように前記第三の返し部58を乗り越えて流れることができる程度に離れている必要がある。言い換えれば、前記各狭間部59,60,61(比較的高圧)と、これらの間の空間(比較的低圧)とで明確に圧力差が生じる程度に、前記各返し部56,57,58同士が離れている必要がある。
【0036】
以上のように本発明のサイクロン式掃除機51は、電動送風機6が内蔵された掃除機本体2と、集塵容器10と、この集塵容器10に収納される渦流発生部材53とを有し、前記集塵容器10がサイクロン筒14を有し、前記渦流発生部材53が前記サイクロン筒14内に同軸的に装着される筒状部54を有し、この筒状部54の側面54Aに前記サイクロン筒14内と前記電動送風機6を連通させる通気孔55が形成され、更に、前記筒状部54の側面54A、全周にわたって突出する第一の返し部56、第二の返し部57、及び第三の返し部58とを前記筒状部54の軸方向に間隔を空けて設けたことで、前記第一の返し部56を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移り、前記第二の返し部57を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移り、更に、前記第三の返し部58を上昇気流F3が越える際に、この気流F3に含まれた塵埃の一部が旋回流F2に移るので、前記筒状部54に形成された通気孔55を通過する気流F3に含まれる塵埃の量を少なくすることができるものである。
【0037】
また、前記通気孔55を前記第三の返し部58よりも上方、即ち前記上昇気流F3に対して下流側に設けたことにより、確実に、塵埃が十分に減らされた気流F3を前記通気孔55に通すことができるものである。
【0038】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記各実施形態では、返し部を二つ又は三つ形成したが、互いの間隔を十分空けることができるのであれば、四つ以上形成しても良い。また、上記各実施形態は、何れも縦型電気掃除機であるが、横型電気掃除機であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1,31,51 縦型電気掃除機
2 掃除機本体
3,32,52 サイクロン式集塵部
6 電動送風機
14 サイクロン筒
16,34,54 筒状部
16A,34A,54A 側面
17,35,55 通気孔
18,36,56 第一の返し部(返し部)
19,37,57 第二の返し部(返し部)
38,58 第三の返し部(返し部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機が内蔵された掃除機本体と、サイクロン筒と、このサイクロン筒内に同軸的に装着された筒状部とを有し、この筒状部の側面に前記サイクロン筒内と前記電動送風機を連通させる通気孔が形成されたサイクロン式掃除機において、
前記筒状部から、全周にわたって突出する返し部を複数設けたことを特徴とするサイクロン式掃除機。
【請求項2】
前記筒状部に設けられた返し部を越える気流を基準とし、前記通気孔を、何れの返し部よりも下流側に設けたことを特徴とする請求項1記載のサイクロン式掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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