説明

サイクロン式電気掃除機

【課題】安価にサイクロン作用を向上させることができるサイクロン式電気掃除機を提供すること。
【解決手段】電動送風機5を有する掃除機本体2と、この掃除機本体2に着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部3とを有し、このサイクロン式集塵部3が、サイクロン筒13と、このサイクロン筒13の内壁13Aに沿うように気流を導入する導入部14とを有するサイクロン式電気掃除機1であり、吸引ホース部材4の挿入筒部17が前記導入部14に挿入可能に構成されると共に、前記挿入筒部17の一端部17Aにおける前記サイクロン式集塵部3の中心側の壁を、前記サイクロン式集塵部3の外周側に向けて屈曲させた屈曲部17Bを設けたことで、単純で且つ安価な構成でありながら、旋回流が前記サイクロン筒13の外周側を通り且つ旋回流の角速度を速くすることができるので、遠心分離作用を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサイクロン式電気掃除機としては、電動送風機が内蔵された掃除機本体と、この掃除機本体に着脱自在に取り付けられるダストボックス101(本願発明の集塵部に相当する)とを有し、このダストボックス101の側壁102の略接線方向に気流が流入するように吸気口103(本願発明の導入部に相当する)を設けると共に、ダストボックスの側壁と同心円状且つ吸気口からダストボックスに流入する空気の流れ方向に前記ダストボックスの壁104を延設して前記吸気口の一部を閉塞したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなサイクロン式電気掃除機は、前記壁104によって前記吸気口103の口径を連通部105の内径より小さくすることにより、前記ダストボックス内でのサイクロン作用を良好にすることができ、遠心力を良好にして高い集塵性能を得ることができると共に、前記ダストボックス内に溜まる塵埃の量を多くすることができて、使い勝手がよい電気掃除機を実現することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3298573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサイクロン式電気掃除機は、前記吸気口の口径部に前記壁を形成しなければならないため、成形金型の構造が複雑となり、コストアップを招くという問題があった。また、前記吸気口を通る気流をスムーズに前記ダストボックスの内壁に向かうように導くには、前記吸気口の流通面積が口径部に向かって徐々に小さくなるようにしなければならないが、この場合、ダストボックスに肉厚となる部分が生じるため、成形の難易度は更に向上し、更にコストアップを招くことになる。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、安価にサイクロン作用を向上させることができるサイクロン式電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のサイクロン式電気掃除機は、電動送風機を有する掃除機本体と、この掃除機本体に着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部とを有し、このサイクロン式集塵部が、サイクロン筒と、このサイクロン筒の内壁に沿うように気流を導入する導入部とを有するサイクロン式電気掃除機において、前記導入部に、吸引ホース部材の挿入筒部が挿入可能に構成されると共に、この挿入筒部の端部における前記サイクロン式集塵部の中心側の壁を、前記サイクロン式集塵部の外周側に向けて屈曲させた屈曲部を設けたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のサイクロン式電気掃除機は、請求項1において、前記挿入筒部を前記導入部に挿入した状態において、前記屈曲部の端部が、前記サイクロン筒の内壁の延長面とほぼ等しい位置となるように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載のサイクロン式電気掃除機は、以上のように構成することにより、前記吸引ホース部材を通って吸引された含塵気流が、前記導入部内に挿入された前記挿入筒を通って前記サイクロン筒内に流入し、このサイクロン筒の内壁に沿って旋回する渦流となり、遠心力によって気流に含まれる塵埃を分離することができる。そしてこの際、含塵気流が前記サイクロン筒内に流入する直前に、前記屈曲部によって含塵気流の流通面積が狭められると共に前記サイクロン筒の内壁に向けて方向付けられるので、遠心分離作用を向上させることができる。また、前記挿入筒部に屈曲部を設けたことで、前記サイクロン式集塵部自体の構造を単純にすることができるため、サイクロン式集塵部の成形が容易であると共に、前記挿入筒部の成形の難易度は単なる円筒の場合と大差ない。従って、前記サイクロン式電気掃除機の遠心分離作用を向上させつつ、安価に構成することができる。
【0009】
また、前記挿入筒部を前記導入部に挿入した状態において、前記屈曲部の端部が、前記サイクロン筒の内壁の延長面とほぼ等しい位置となるように構成したことで、前記屈曲部が前記サイクロン筒内を旋回する渦流の妨げにならないので、遠心分離作用の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すサイクロン式電気掃除機の平面図である。
【図2】同、サイクロン式集塵部の概略説明図である。
【図3】従来のサイクロン式電気掃除機におけるサイクロン式集塵部の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。1は本発明のサイクロン式電気掃除機である。このサイクロン式電気掃除機1は、掃除機本体2と、サイクロン式集塵部3と、吸引ホース部材4とを有して構成される。
【0012】
前記掃除機本体2は、その内部に電動送風機5を有する。また、前記掃除機本体2は、被清掃面上を自由に移動できるように、車輪6を有する。また、前記掃除機本体2は、その上面に、前記電動送風機5を作動させるためのスイッチ操作部7を有する。また、前記掃除機本体2は、その上面に、先端にプラグ8が設けられた図示しない電源コードを巻き取るためのコード巻き取り操作部9を有する。また、前記掃除機本体2は、その上面に、この掃除機本体を把持して持ち運ぶための把持部10を有する。また、前記掃除機本体2は、その上面に、前記サイクロン式集塵部3を着脱自在に固定するためのフック11を有する。更に、前記掃除機本体2は、その後部に排気口部12を有する。
【0013】
前記サイクロン式集塵部3は、前記掃除機本体2に対して着脱自在に取り付けられる。そして、前記サイクロン式集塵部3は、サイクロン筒13と、このサイクロン筒13と一体に設けられた導入部14と、この導入部14に固定された取付部15と、前記サイクロン筒13の中央に設けられた出口部16とを有する。前記取付部15には、前記吸引ホース部材4の挿入筒部17が挿入される。そして、この挿入筒部17は、前記取付部15に対して取り付けられる。なお、前記挿入筒部17の一端部17Aは、前記導入部14内に達すると共に、前記サイクロン筒13の内壁13Aの延長面とほぼ等しい位置となる。また、前記出口部16は、前記サイクロン式集塵部3を掃除機本体2に取り付けた際に、前記電動送風機5と連通する。
【0014】
また、前記挿入筒部17を前記導入部14に挿入した際に前記サイクロン集塵部3の中心側となる前記挿入筒部17の一端部17Aの壁を、前記サイクロン式集塵部3の外周側に向けてスムーズに屈曲させることで、屈曲部17Bが形成される。なお、前記挿入筒部17は、前記屈曲部17Bが前記サイクロン式集塵部3の中心側(図2における下側)となるように、挿入方向が規制される。また、前記挿入筒部17の他端部には、図示しない屈曲ホース及び吸引ノズル等が設けられる。
【0015】
このように、前記サイクロン式集塵部3の導入部14を単なる筒状に形成することができるので、サイクロン式集塵部3自体の構造を単純にすることができる。従って、前記サイクロン式集塵部3を成形するための成形金型の構造も単純化することができるので、前記サイクロン式集塵部3を容易に且つ安価に製造することができる。一方、前記挿入筒部17の成形の難易度は、成形金型の形状が違うだけで、単なる筒状のものを成形する場合と大差ない。従って、サイクロン式電気掃除機1を、容易且つ安価に製造することができる。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。まず使用者は、図示しないコードリールから前記コードを引き出し、前記プラグ8を図示しない交流電源に接続する。また、前記サイクロン式集塵部3を前記掃除機本体2に取り付けると共に、前記ホース部材4の挿入筒部17を、前記サイクロン式集塵部3の取付部15に挿入し、取り付ける。そして、前記スイッチ操作部7を操作することで、前記電動送風機5を作動させる。このように、前記電動送風機5が作動すると、含塵気流が、前記ホース部材4を通って前記サイクロン式集塵部3に流入する。そして、このサイクロン式集塵部3で、気流から塵埃が分離される。また、塵埃が分離された気流は、前記サイクロン式集塵部3の出口部16から前記電動送風機5に至り、更に、前記排気口部12から大気中に放出される。
【0017】
前記サイクロン式集塵部3及びその周辺における気流について詳述する。前記ホース部材4を通った含塵気流は、前記挿入筒部17を通って前記サイクロン筒13に流入する。この際、含塵気流のうち、図2の状態で前記サイクロン集塵部3の外周側となる前記挿入筒部17の一端部17Aの壁(図2における前記挿入筒部17の上壁)に沿って流れる含塵気流は、前記サイクロン筒13の内壁13Aに沿うように前記サイクロン筒13内に流入する。一方、含塵気流のうち、図2の状態で前記サイクロン集塵部3の中心側となる前記挿入筒部17の一端部17Aの壁(図2における前記挿入筒部17の下壁)に沿って流れる含塵気流は、前記屈曲部17Bによって前記サイクロン筒13の内壁13Aに向かうように方向付けられる。これによって、前記挿入筒部17を通って前記サイクロン筒13内に流入する含塵気流は、前記サイクロン筒13の外周側を通るように方向付けられる。このため、前記挿入筒部17から前記サイクロン筒13内に流入した含塵気流は、ほぼ全て前記サイクロン筒13の内壁13Aに沿って旋回する渦流となり、前記出口部16から直接流出することが殆どない。
【0018】
また、前記挿入筒部17の一端部17A側が狭くなっていることで、前記サイクロン筒13に流入する気流の流速は、前記挿入筒部17を通過する気流の流速よりも速い。従って、前記サイクロン筒13内の旋回気流の角速度を速くすることができるので、その分、気流中に含まれる塵埃に働く遠心力を大きくすることができ、遠心分離作用を高めることができる。
【0019】
なお、前述したように、前記挿入筒部17の一端部17Aが、前記サイクロン筒13の内壁13Aの延長面とほぼ等しい位置となることで、前記挿入筒部17の一端部17Aが前記サイクロン筒13内の旋回流を殆ど妨げないので、旋回流による遠心分離作用の低下を抑えることができる。なお、前記挿入筒部17の一端部17Aが前記サイクロン筒13内に突出すると、この突出部分によって旋回流が妨げられ、遠心分離作用が低下する虞がある。逆に、前記挿入筒部17の一端部17Aが前記サイクロン筒13から引っ込んだ位置にあると、前記サイクロン筒13の内壁13Aと前記挿入筒部17の一端部17Aとの間で乱流が発生することになり、遠心分離作用が低下する虞がある。
【0020】
以上のように本発明は、電動送風機5を有する掃除機本体2と、この掃除機本体2に着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部3とを有し、このサイクロン式集塵部3が、サイクロン筒13と、このサイクロン筒13の内壁13Aに沿うように気流を導入する導入部14とを有するサイクロン式電気掃除機1であり、吸引ホース部材4の挿入筒部17が前記導入部14に挿入可能に構成されると共に、前記挿入筒部17の一端部17Aにおける前記サイクロン式集塵部3の中心側の壁を、前記サイクロン式集塵部3の外周側に向けて屈曲させた屈曲部17Bを設けたことで、単純で且つ安価な構成でありながら、旋回流が前記サイクロン筒13の外周側を通り且つ旋回流の角速度を速くすることができるので、遠心分離作用を向上させることができるものである。
【0021】
また、前記挿入筒部17を前記導入部14に挿入した状態において、前記屈曲部17Bの端部、即ち前記一端部17Aが、前記サイクロン筒13の内壁13Aの延長面とほぼ等しい位置となるように構成したことで、前記屈曲部17Bが前記サイクロン筒13内を旋回する渦流の妨げにならないので、遠心分離作用の低下を抑えることができる。
【0022】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能となる。例えば、上記実施形態では、サイクロン式集塵部の軸方向を水平としたが、サイクロン式集塵部の軸方向が垂直となる場合であっても、作用は同じである。
【符号の説明】
【0023】
1 サイクロン式電気掃除機
2 掃除機本体
3 サイクロン式集塵部
4 吸引ホース部材
5 電動送風機
13 サイクロン筒
13A 内壁
14 導入部
17 挿入筒部
17A 一端部
17B 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を有する掃除機本体と、この掃除機本体に着脱自在に取り付けられるサイクロン式集塵部とを有し、このサイクロン式集塵部が、サイクロン筒と、このサイクロン筒の内壁に沿うように気流を導入する導入部とを有するサイクロン式電気掃除機において、
前記導入部に、吸引ホース部材の挿入筒部が挿入可能に構成されると共に、この挿入筒部の端部における前記サイクロン式集塵部の中心側の壁を、前記サイクロン式集塵部の外周側に向けて屈曲させた屈曲部を設けたことを特徴とするサイクロン式電気掃除機。
【請求項2】
前記挿入筒部を前記導入部に挿入した状態において、前記屈曲部の端部が、前記サイクロン筒の内壁の延長面とほぼ等しい位置となるように構成したことを特徴とする請求項1記載のサイクロン式電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147697(P2011−147697A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12799(P2010−12799)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】