説明

サイドウォール又はトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】タイヤ表面の変色を抑制しながら、耐オゾン性を改善できるサイドウォール用ゴム組成物、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるサイドウォール用ゴム組成物又はトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物、トレッド用ゴム組成物及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォールゴムやトレッドゴムには、耐屈曲亀裂成長性や耐チップカット性能以外にも、耐酸化性、耐オゾン性、耐紫外線性などが求められ、これらの性能を維持しつつ、配合される薬品由来の茶変色を最小限に抑えることを目的として、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6C)や、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(RD)などの老化防止剤が一般的に配合されている。
【0003】
しかし、老化防止剤6Cは、耐オゾン性に優れるが、タイヤ表面に析出しやすく、揮発性など熱的安定性が劣り、タイヤ表面が薬品由来の茶色へ変色しやすい。これに対し、変色を防止するため老化防止剤6Cを減量すると、著しく劣化しやすくなり、亀裂やゴム欠けなどの破壊現象が発生しやすくなってしまう。
【0004】
他方、変色し難い老化防止剤RDを使用すると、耐オゾン性が劣る。また、老化防止剤3Cは、オゾン耐性に優れるものの、ゴムへの溶解度が低く、揮発し易く、長期にわたってゴム中に存在できないため好ましくない。このように、変色を抑制しながら、耐オゾン性を改善することは困難であった。
【0005】
特許文献1には、サイドウォールやケースなどのサイドウォール部材に特定量のフェニレンジアミン系老化防止剤を使用することが提案されているが、変色を抑制しながら、耐オゾン性を改善する点については未だ改善の余地がある。また、トレッドについては検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−188955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、タイヤ表面の変色を抑制しながら、耐オゾン性を改善できるサイドウォール用ゴム組成物、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0009】
前記ブタジエンゴムのシス含量が97質量%以上であることが好ましい。前記ブタジエンゴムが、充填剤との反応性を有する官能基をもつことが好ましい。ゴム成分100質量%中の前記ブタジエンゴムの含有量が60質量%以上であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム成分100質量%中の前記天然ゴムの含有量が40質量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤がN,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンで、かつ該N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜6質量部であることが好ましい。
【0012】
N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して4質量部以下であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるトレッド用ゴム組成物に関する。
【0014】
前記炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤がN,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンで、かつ該N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜6質量部であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、前記サイドウォール用ゴム組成物を用いて作製したサイドウォール及び/又は前記トレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
前記空気入りタイヤは、重荷重用タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるサイドウォール又はトレッド用ゴム組成物であるので、タイヤ表面の変色を抑制しながら、耐オゾン性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のサイドウォール及びトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるものである。
【0018】
オゾン劣化を受けやすい天然ゴムを上記アミン系老化防止剤とあらかじめ混合してマスターバッチを調製した後に、ブタジエンゴムを混合することで、タイヤ表面の変色を効果的に抑制しながら、耐オゾン性を顕著に改善できる。このためオゾン劣化に起因すると考えられるクラック発生・成長やゴム欠けなども抑制できる。また、耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能も良好に得られる。
【0019】
本発明のゴム組成物は、例えば、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合してマスターバッチを調製する工程1と、該マスターバッチ及びブタジエンゴムを混合する工程2とを含む製造方法により好適に得られる。
【0020】
(工程1)
工程1では、天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤が混合され、マスターバッチが調製される。
【0021】
天然ゴム(NR)としては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0022】
工程1におけるNRの配合率は、ゴム組成物の製造工程で用いられるNRの全配合量の80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。配合率が80質量%未満では、耐オゾン性の改善効果が充分に得られず、タイヤ表面の変色を抑制できないおそれがある。
【0023】
炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤は、ゴム組成物中に侵入してきた酸素に対するラジカルキャッチャーとして機能し、優れた耐オゾン性が得られ、他のアミン系老化防止剤と比較して、変色の問題が起こりにくいという特徴をもつ。
【0024】
ここで、炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤とは、−(CR−(Rは同一又は異なってアルキル基又は水素を表し、kは4以上の整数を表す。)で示される炭化水素鎖を持つアミン系老化防止剤を意味し、該炭化水素鎖は分枝状、非分岐状のいずれでもよい。該アミン系老化防止剤は、該炭化水素鎖を2個以上有するものが好ましく、2個有するものが特に好ましい。また、該アミン系老化防止剤としては、−NH−CH(CH)−(CH−CH(CHで示される構造を有するものがより好ましい。
【0025】
このようなアミン系老化防止剤としては、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤6C)、N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)などが挙げられ、なかでも、変色を効果的に抑制でき、耐オゾン性を良好に改善できるという点から、N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)が好ましい。このようなアミン系老化防止剤としては、例えば、LANXESS社製のVulkanox4030などを使用できる。
【0026】
老化防止剤77PDを用いる場合、工程1における老化防止剤77PDの配合率は、ゴム組成物の製造工程で用いられる老化防止剤77PDの全配合量の80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。配合率が80質量%未満では、耐オゾン性の改善効果が充分に得られず、タイヤ表面の変色を抑制できないおそれがある。
【0027】
工程1の混合方法としては特に限定されず、バンバリーミキサー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される混練機を使用できる。
【0028】
工程1の混練り温度は好ましくは110〜150℃、より好ましくは120〜140℃であり、混練り時間は好ましくは1〜30分、より好ましくは3〜10分である。下限未満であると、変色の抑制効果、耐オゾン性の改善効果が充分に得られないおそれがある。上限を超えると、混練り時にNRが損傷し易くなり、耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能が悪化する傾向がある。
【0029】
(工程2)
工程2では、上記マスターバッチとブタジエンゴムとが混合される。
【0030】
ブタジエンゴム(BR)のシス含量は、好ましくは97質量%以上である。上記範囲内であると、耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能が良好に得られる。
なお、本発明において、BRのシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
なお、BRとしては、充填剤との反応性を有する官能基をもつもの、例えば、特開2010−111753号公報に記載の化合物により変性されたものなどを用いてもよい。
【0031】
工程1におけるBRの配合率は、ゴム組成物の製造工程で用いられるBRの全配合量の80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。配合率が80質量%未満では、耐オゾン性の改善効果が充分に得られず、タイヤ表面の変色を抑制できないおそれがある。
【0032】
工程2では、上記マスターバッチ及びBRとともに、他のゴム成分、カーボンブラック、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックスなどを混合できる。
【0033】
工程2の混合方法、混練り温度、混練り時間としては特に限定されず、公知のベース練り工程と同様に実施できる。例えば、工程2の混合方法としては、工程1と同様の方法が挙げられ、混練り温度110〜150℃、混練り時間1〜30分で実施できる。
【0034】
(工程3)
本発明では前記工程1〜2を行った後、通常、仕上げ練り工程、例えば、オープンロールなどを用いて工程2で得られた混練物、硫黄などの加硫剤及び加硫促進剤などを混練りする工程が行われ、未加硫ゴム組成物が得られる。その後加硫工程を行うことで加硫ゴム組成物が得られる。
【0035】
前述の製造法により得られたゴム組成物において、サイドウォール用ゴム組成物の場合、優れた破断強度が得られ、本発明の効果が良好に得られるという理由から、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、下限が好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、上限が好ましくは70質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0036】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、下限が好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、上限が好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、優れた耐チップカット性能が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0037】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、優れた破断強度が得られ、本発明の効果が良好に得られるという理由から、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、下限が好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、上限が好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0038】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、下限が好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、上限が好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、優れた耐チップカット性能が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0039】
ゴム成分100質量%中のNR及びBRの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、良好な耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0040】
老化防止剤77PDを用いる場合、ゴム組成物中の老化防止剤77PDの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.2質量部未満では、老化防止剤77PDを配合した効果が充分に得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。6質量部を超えると、耐オゾン性の更なる向上は期待できず、また、ゴム表面の変色の問題が発生するため、望ましくない。
【0041】
また、老化防止剤77PDを用いる場合、他の老化防止剤(老化防止剤6Cなど)を併用してもよいが、タイヤ表面の変色による外観不良を抑制するという点から、老化防止剤77PD以外の老化防止剤の含有量をできるだけ少量にとどめることが好ましい。ゴム組成物において、老化防止剤77PD以外の老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、上限が好ましくは4質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下であり、下限が好ましくは1質量部以上である。
【0042】
ゴム組成物において、炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤の含有量(老化防止剤77PD及び老化防止剤6Cなどを使用する場合、老化防止剤77PD及び老化防止剤6Cなどの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、下限が好ましくは2質量部以上であり、上限が好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、変色の抑制効果、耐オゾン性の改善効果が良好に得られる。
【0043】
本発明のゴム組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)の下限は25m/g以上が好ましく、35m/g以上がより好ましく、上限は120m/g以下が好ましく、50m/g以下がより好ましい。下限未満であると充分な耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能が得られないおそれがあり、上限を超えると加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0044】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。10質量部未満では、充分な耐屈曲亀裂性能、耐チップカット性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。90質量部を超えると、加工性が悪化するおそれがある。
【0045】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。これにより優れた耐オゾン性が得られる。ワックスとしては特に限定されないが、変色を抑制でき、優れた耐オゾン性が得られるという点から、パラフィンワックスが好ましい。
【0046】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満であると、ワックスを配合した効果が充分に得られない傾向がある。該ワックスの含有量は、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。3.5質量部を超えると、ワックスの析出によってタイヤ表面が変色するおそれがある。
【0047】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、優れた耐屈曲亀裂性能が得られ、本発明の効果が良好に得られるという点から、オイルを含むことが好ましい。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物などを用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好適に用いられる。
【0048】
上記サイドウォール用ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、下限が好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、上限が好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、耐屈曲亀裂性能、加工性が良好に得られる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、タイヤのサイドウォール又はトレッド(例えば、トラック・バスなどの大型車両タイヤ(重荷重用タイヤ)のトレッドなど)に使用される。
【0050】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォール、トレッドなどの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
【実施例】
【0051】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含有量:97質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックE(N550)(NSA:41m/g)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー社製のプロセスX−140
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製の椿
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶物60%、オイル分10%)
6PPD(6C):住友化学(株)製のアンチゲン6C(下記式)
【化1】

77PD:LANXESS社製のVulkanox4030(N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン)(下記式)
【化2】

ワックス(1):大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス(パラフィンワックス)
ワックス(2):日本精鑞(株)製のオゾエース0355(パラフィンワックス)
【0053】
(マスターバッチの製造)
表1〜2に示すマスターバッチ配合成分(NR、77PD)を、1.7Lバンバリーミキサーを用いて130℃で5〜8分間混練りし、マスターバッチを得た。
【0054】
表1〜2に示す配合処方に従い、充填率が58%になるように硫黄及び加硫促進剤以外の各薬品を(株)神戸製鋼製の1.7Lバンバリーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練した。得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
【0055】
得られた未加硫ゴム組成物(トレッド用配合)を170℃で15分間加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。また、未加硫ゴム組成物(サイドウォール用配合)を160℃で20分間加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
得られた加硫ゴム組成物(加硫ゴム片)について下記の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0056】
(耐オゾン性能)
JIS K6259に準拠し、加硫ゴム片(長さ60mm×幅10mm×厚み2.0mm)を30%伸張させ、オゾン濃度50pphm、雰囲気温度40℃にて24時間放置させる静的オゾン劣化試験を行った。また、同規格に準拠し、オゾン濃度50pphm、雰囲気温度40℃にて24時間、0〜20%で往復運動伸張させる動的オゾン劣化試験を行った。試験後のクラックの発生状態を目視により観察し、下記の基準で耐オゾン性能を評価した。
1:クラックの発生なし
2:微細なクラックあり
3:1mm未満のクラックあり
4:1mm以上のクラックあり
5:大きなクラックあり
【0057】
(変色)
加硫ゴム片(長さ150mm×幅150mm×厚み2.0mm)を60℃に温度調節したギアーオーブン中に入れて30日間放置し、その後、加硫ゴム片の表面を目視により観察して、1〜5の5段階で変色を評価した。1は黒(変色なし)の状態を示し、5は茶色(変色度合いが大きい)の状態を示し、数値が小さいほど変色が小さく良好である。
【0058】
(耐屈曲亀裂成長性評価)
加硫ゴム組成物を用いて、1mm×50mm×20mmのゴムスラブシートを作製し、サンプル幅の2mmまでカミソリにてカットして初期亀裂を入れ、長辺方向(カット方向に垂直な方向)に繰り返し歪みを加えた。歪み率は5%、周波数は5Hz、サンプル温度は70℃とした。
繰り返し歪みを加えてから亀裂成長長さが1mm程度になるまでの、初期の亀裂成長速度dc/dn(m/cycle)を測定した。亀裂成長速度dc/dnは、繰り返し伸張1回あたりの亀裂成長長さであることから、亀裂成長速度dc/dnが小さいほど、耐亀裂成長性に優れることを示す。なお、比較例1の亀裂成長速度dc/dnを100とし、各配合の亀裂成長速度dc/dnを指数表示した。耐屈曲亀裂成長性評価指数が小さいほど、耐屈曲亀裂成長性に優れることを示す。なお、データはN=4の平均とした。
【0059】
(耐チップカット性能)
上記加硫ゴム組成物を用いて3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、ゴム強度(TB×EB)を算出した。比較例8を100とし、下記計算式により、各配合の耐チップカット性能を指数表示した。指数が大きいほど、耐チップカット性能に優れることを示す。
(耐チップカット性能指数)=(各配合のTB×EB)/(比較例8のTB×EB)×100
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1に示すとおり、NR及び77PDを混合して得られたマスターバッチとBRとを混練りしたサイドウォール用配合の実施例では、耐オゾン性、耐変色性が改善された。また、実施例では、耐屈曲亀裂成長性は比較例と同等以上であった。一方、77PDを用いなかった比較例1、単に0.5質量部混練した比較例2では、耐オゾン性、耐変色性が劣っていた。また、単に77PDを2質量部以上混練した比較例3〜7では、タイヤ表面の変色を充分に抑制できなかった。
【0063】
更に表2に示すとおり、NR及び77PDを混合して得られたマスターバッチとBRとを混練りしたトレッド用配合の実施例でも、耐オゾン性、耐変色性が改善された。また、実施例では、耐チップカット性は比較例と同等以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ブタジエンゴムのシス含量が97質量%以上である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ブタジエンゴムが、充填剤との反応性を有する官能基をもつ請求項1又は2記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量%中の前記ブタジエンゴムの含有量が60質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量%中の前記天然ゴムの含有量が40質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項6】
前記炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤がN,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンで、かつ該N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜6質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項7】
N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して4質量部以下である請求項1〜6のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項8】
天然ゴム及び炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤を混合して得られたマスターバッチと、ブタジエンゴムとを混合して得られるトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
前記炭素数4以上の直鎖型飽和アルキル鎖を持つアミン系老化防止剤がN,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンで、かつ該N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜6質量部である請求項8記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物を用いて作製したサイドウォール及び/又は請求項8又は9記載のトレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【請求項11】
重荷重用タイヤである請求項10記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−95837(P2013−95837A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239489(P2011−239489)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】