説明

サイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤ

【課題】転がり抵抗および電気抵抗を低減させ、耐クラック性を向上させることができるサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対して、オキシエチレンユニットを有する化合物を1.0〜7.5重量部含有するサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤのトレッド用ゴム組成物には、転がり抵抗を低減させ、ウェットグリップ性能を向上させるために、カーボンブラックのかわりにシリカを配合する技術が知られている。しかし、カーボンブラックのかわりにシリカを配合した場合、タイヤの電気抵抗が増大してしまい、たとえば、車両の燃料補給時に静電気によるスパークが発生し、燃料に引火する危険性がある。
【0003】
それを回避するために、たとえば、トレッド表面にゴムセメントを塗布する技術や、電気抵抗の低いゴムをトレッド内に埋設し、路面とタイヤとの間の電気抵抗を低減させる手法などが知られている。
【0004】
一方、タイヤの転がり抵抗を低減させる要求は年々厳しくなり、トレッドだけでなく、サイドウォールやクリンチエイペックスなどでも、転がり抵抗を低減させることが求められている。
【0005】
サイドウォールやクリンチエイペックスにおいて、転がり抵抗を低減させる手法としては、トレッドと同様に、カーボンブラックのかわりにシリカを配合する手法が知られている。しかし、この場合も、トレッドの場合と同様に、タイヤの電気抵抗を低減させることができない。
【0006】
特許文献1には、ジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラックおよびシランカップリング剤を所定量含有したサイドウォール用ゴム組成物が開示されている。しかし、タイヤの電気抵抗の低減効果において、いまだ改善の余地がある。
【0007】
特許文献2には、静電気が車に蓄積するのを防ぐために、オキシエチレンユニットを有する化合物を配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物が開示されている。しかし、タイヤトレッド以外のタイヤ部材について電気抵抗を低減させる(導電性を改善させる)ことについては改善の余地がある。
【0008】
【特許文献1】特開平10−36559号公報
【特許文献2】特許第3685569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、転がり抵抗および電気抵抗を低減させ、耐クラック性を向上させることができるサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ジエン系ゴム100重量部に対して、オキシエチレンユニットを有する化合物を1.0〜7.5重量部含有するクリンチエイペックス用ゴム組成物に関する。
【0011】
前記クリンチエイペックス用ゴム組成物は、さらに、ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを5重量部以下含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記クリンチエイペックス用ゴム組成物を用いたクリンチエイペックスを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ジエン系ゴムおよびオキシエチレンユニットを有する化合物を所定量含有することで、転がり抵抗および電気抵抗を低減させ、耐クラック性を向上させることができるサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物、ならびにそれらを用いたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のサイドウォールおよび/またはクリンチエイペックスから構成される本実施形態のタイヤの断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物は、ジエン系ゴムおよびオキシエチレンユニットを有する化合物を含有する。
【0016】
図1は、本発明のサイドウォールおよび/またはクリンチエイペックスから構成されるタイヤの断面図を示したものである。
【0017】
タイヤ1は、トレッドゴムからなるトレッド2と、その両端部からタイヤ半径方向内方に伸びる一対のサイドウォール3と、各サイドウォール3の内方端に設けられたクリンチエイペックス4とを有し、この例では乗用車用のタイヤが示されている。タイヤ1は、ビードコア5間をトロイド状にまたがってのびているカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド2の内部に配されたトレッド補強コード層7とを含んで構成されている。前記カーカス6は、例えばラジアル構造の1枚のカーカスプライから形成される。前記カーカスプライは、例えばビードコア5をまたがるトロイド状の本体部6aと、その両側に連なりビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に向けて折り返された一対の折返し部6bとを有する。またカーカスプライの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5から半径方向外側にのびるビードエーペックス8が配されている。また、前記トレッド補強コード層7は、金属コードをタイヤ周方向に対して配列した2枚のベルトプライ(9Aおよび9B)を重ねて構成したベルト9と、そのタイヤ半径方向外側に配されたタイヤ周方向にのびるコードを有したバンドプライからなるバンド10とを含んで構成されている。なおバンド10は、必要に応じて省略することもできる。前記各カーカス6のカーカスプライ、ベルト9のベルトプライおよびバンド10バンドプライは、いずれもコードと、これらを被覆するトッピングゴムとで構成される。前記カーカス6の外側において、サイドウォール3領域にはタイヤ外皮をなすサイドウォールゴム3Gが配され、またクリンチエイペックス4(ビード領域)にはクリンチエイペックスゴム4Gがそれぞれ配されている。ここで、クリンチエイペックスゴム4Gのタイヤ半径方向の外端は、前記サイドウォールゴム3Gに接続されており、同タイヤ半径方向の内端は、金属製のリムRに接触することができる。また、タイヤ1は、前記トレッド補強コード層7のタイヤ半径方向外側に、ベースゴム11を介してトレッド2が配され、ベースゴム11のタイヤ軸方向の両側縁は、前記サイドウォールゴム3Gに接続されている。
【0018】
ジエン系ゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などがあげられ、これらのジエン系ゴムはとくに制限はなく、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高過酷度のタイヤ用途としては、耐クラック性や引張特性などが良好であるという理由から、NRおよび/またはBRが好ましく、NRおよびBRがより好ましい。
【0019】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物においては、オキシエチレンユニットを有する化合物を含有することで、親水性が高くなり、導電性が高くなるという理由から、電気抵抗を低減させることができ、静電気が車に蓄積するのを防ぐことができる。
【0020】
本発明で使用するオキシエチレンユニットを有する化合物とは、下記一般式
−O−(CH2−CH2−O)n−H(式中、nは1以上の整数)
で表わされる構造を有するものである。
【0021】
式中、nは、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。nが0では、オキシエチレンユニットが存在せず、充分な電気抵抗の低減効果が得られない傾向がある。また、nは16以下が好ましく、14以下がより好ましい。nが17以上では、ゴム成分との相溶性および補強性が低下する傾向がある。
【0022】
オキシエチレンユニットを有する化合物中のオキシエチレンユニットの位置は、主鎖でも、末端でも、側鎖でもよい。なかでも、一般に永久帯電防止剤として用いられる化合物のように、オキシエチレンユニットをポリエチレンなどにグラフト重合反応させると、静電気の蓄積防止効果の持続性および電気抵抗の低減など、得られるタイヤの表面特性にすぐれるという理由から、少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物が好ましい。
【0023】
主鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシスチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアマイドなどがあげられる。
【0024】
少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物を使用する場合、オキシエチレンユニットの個数は、主鎖を構成する炭素数100個当たり4個以上が好ましく、8個以上がより好ましい。オキシエチレンユニットの個数が3個以下では、電気抵抗が増大する傾向がある。また、オキシエチレンユニットの個数は12個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。オキシエチレンユニットの個数が13個以上では、ゴム成分との相溶性および補強性が低下する傾向がある。
【0025】
また、少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物を使用する場合、主鎖としては、主としてポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンなどを有する化合物を用いるのが好ましい。
【0026】
上記のように、本発明において用いることのできる少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物としては、たとえば、下記化学式
【化1】

(式中、nは1以上の整数、pおよびqは、オキシエチレンユニットの個数が、上記条件を満たす整数、Rは水素原子またはアルキレン基である)で示される構造単位をもつものなどがあげられる。
【0027】
なお、少なくとも側鎖にオキシエチレンユニットを有する化合物は、主鎖や末端にもオキシエチレンユニットを有していてもよい。
【0028】
オキシエチレンユニットを有する化合物の含有量は、ジエン系ゴム100重量部に対して1.0重量部以上、好ましくは2.0重量部以上である。オキシエチレンユニットを有する化合物の含有量が1.0重量部未満では、電気抵抗の低減効果が不充分である。また、オキシエチレンユニットを有する化合物の含有量は7.5重量部以下、好ましくは5.0重量部以下である。オキシエチレンユニットを有する化合物の含有量が7.5重量部をこえると、補強性が低下し、電気抵抗の低減効果も小さい。
【0029】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物では、さらに、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0030】
カーボンブラックとしては、従来からタイヤ工業で用いられているものであればとくに制限はなく、たとえば、SAF、ISAF、HAF、FEFなどを用いることができる。
【0031】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100重量部に対して2重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましい。カーボンブラックの含有量が2重量部未満では、黒色度が不充分であり、補強性も低下する傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は5重量部以下が好ましく、4重量部以下がより好ましい。カーボンブラックの含有量が5重量部をこえると、石油外資源比率が不充分になり、環境に配慮することができなくなるだけでなく、tanδの低減効果も不充分な傾向がある。
【0032】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物では、カーボンブラック以外にも、補強剤を含有することができる。
【0033】
カーボンブラック以外の補強剤としては、たとえば、シリカ、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルクなどがあげられ、とくに制限はなく、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、補強性に優れるという理由から、シリカが好ましい。
【0034】
シリカとしては、たとえば、湿式法で調製されたものや、乾式法で調製されたものがあげられるが、とくに制限はなく、従来からタイヤ工業で用いられているものであれば用いることができる。
【0035】
シリカを含有する場合、シリカの含有量は、ジエン系ゴム100重量部に対して30重量部以上が好ましく、35重量部以上がより好ましい。シリカの含有量が30重量部未満では、補強性が不充分な傾向がある。また、シリカの含有量は85重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましい。シリカの含有量が85重量部をこえると、発熱が高くなり、加工性も悪化する傾向がある。なお、シリカの含有量は、サイドウォール用ゴム組成物としては30〜50重量部が好ましく、クリンチエイペックス用ゴム組成物としては65〜85重量部が好ましい。
【0036】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物では、シリカを含有する場合、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0037】
シランカップリング剤としては、とくに制限はなく、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などを好適に使用することができる。
【0038】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100重量部に対して5〜10重量部が好ましい。シランカップリング剤の含有量が5重量部未満では、シリカの分散が不充分な傾向があり、10重量部をこえると、シリカ分散の効果が飽和し、高コストになる傾向がある。
【0039】
また、本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物には、前記ジエン系ゴム、オキシエチレンユニットを有する化合物、カーボンブラック、補強剤、シランカップリング剤以外にも、通常、タイヤ工業で使用される配合剤、たとえば、プロセスオイル、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを、必要に応じて、適宜、本発明の効果を損なわない程度に含んでよい。
【0040】
ここで、サイドウォール3および/またはクリンチエイペックス4を有するタイヤの部分断面図である図1に示すように、サイドウォール3はトレッド2の両端部からタイヤ半径方向内方に伸びるタイヤ外皮に配されるゴム部であり、走行によってたわんで乗り心地を良くする役割がある。また、クリンチエイペックス4はサイドウォール3の内方端に配されるゴム部であり、タイヤとタイヤホイールをかん合させる役割がある。
【0041】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物およびクリンチエイペックス用ゴム組成物は、補強性が高く、導電性も高いという理由から、サイドウォールまたはクリンチエイペックスとして使用する。
【0042】
本発明のタイヤは、本発明のサイドウォール用ゴム組成物および/またはクリンチエイペックス用ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合した本発明のゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォールまたはクリンチエイペックスの形状にあわせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて、他のタイヤ部材とともに張り合わせて未加硫タイヤを形成し、加熱加圧することにより、本発明のタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0043】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0044】
以下、実施例、参考例および比較例で使用した各種薬品をまとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS♯3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックH(N330)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オキシエチレンユニットを有する化合物:住友化学(株)製のスミガード300G(下記化学式)
【化2】

プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH40
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製の桐
亜鉛華:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
硫黄:鶴見化学工業(株)製の硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0045】
<参考例1〜5および比較例1〜3のサイドウォール用加硫ゴム組成物の作製>
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。つぎに、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で15分間プレス加硫し、参考例1〜5および比較例1〜3のサイドウォール用加硫ゴム組成物をえた。
【0046】
<実施例6〜10および比較例4〜6のクリンチエイペックス用加硫ゴム組成物の作製>
表2に示す配合処方にしたがったこと以外は、参考例1〜5および比較例1〜3と同様に、実施例6〜10および比較例4〜6のクリンチエイペックス用加硫ゴム組成物を作製した。
【0047】
<参考例1〜5および比較例1〜3のサイドウォールを用いた試験タイヤの製造>
参考例1〜5および比較例1〜3において、未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で15分間プレス加硫し、参考例1〜5および比較例1〜3の乗用車用試験タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0048】
<実施例6〜10および比較例4〜6のクリンチエイペックスを用いた試験タイヤの製造>
実施例6〜10および比較例4〜6において、未加硫ゴム組成物をクリンチエイペックスの形状に成形したこと以外は参考例1〜5および比較例1〜3と同様に、実施例6〜10および比較例4〜6の乗用車用試験タイヤを製造した。
【0049】
(粘弾性試験)
得られた加硫ゴム組成物から所定のサイズの試験片を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪10.0%および動歪2.0%の条件下で、60℃における損失係数(tanδ)を測定した。tanδが小さいほど、低発熱性に優れ、さらに、転がり抵抗を低減でき、好ましいことを示す。
【0050】
(引張試験)
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方」に準じて、参考例1〜5および比較例1〜3では、製造した試験タイヤのサイドウォール部から、実施例6〜10および比較例4〜6では、製造した試験タイヤのクリンチエイペックス部から切り取った3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。なお、EB(%)が大きいほど、耐クラック性に優れることを示す。
【0051】
(電気抵抗)
((1)体積固有抵抗値)
得られた加硫ゴム組成物から長さおよび幅が15cmで厚さが2mmの試験片を作製し、(株)アドバンテスト(ADVANTEST)製の電気抵抗測定器R8340Aを用いて、印加電圧500Vおよび湿度50%の条件下で、25℃における体積固有抵抗値(log[Ωcm])を測定した。体積固有抵抗値(log[Ωcm])が小さいほど、ゴム組成物の電気抵抗を低減できており、好ましいことを示す。
【0052】
((2)タイヤの電気抵抗)
まず、製造したタイヤにスチールからなるリムを組んだ。つぎに、空気圧を2.0kg/cm2として荷重450kgをかけ、リムの中央部と、タイヤが接地しているスチールからなる導体板とのあいだの抵抗値(log[Ω])(表1および2ではタイヤの電気抵抗値と記載)を、印加電圧500V、温度25℃および湿度50%の条件で測定した。
【0053】
上記評価結果を表1および2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
比較例1および4は、それぞれサイドウォール、クリンチエイペックスについて、カーボンブラックを主成分とする充填剤を含有し、オキシエチレンユニットを有する化合物を含有しない従来のゴム組成物である。
【0057】
比較例2および5にように、それぞれサイドウォール、クリンチエイペックスにおいて、充填剤をシリカを主成分とし、オキシエチレンユニットを有する化合物を含有しない場合、転がり抵抗を低減でき、耐クラック性を向上させることはできたが、電気抵抗値が増大した。
【0058】
比較例3および6では、オキシエチレンユニットを有する化合物の含有量が多いため、耐クラック性が低下した。
【0059】
参考例1〜5および実施例6〜10では、オキシエチレンユニットを有する化合物を所定量含有しており、転がり抵抗および電気抵抗値を低減させ、耐クラック性を向上させることができた。とくに、カーボンブラックを含有する参考例1〜4および実施例6〜9では、耐クラック性をさらに向上させることができた。
【符号の説明】
【0060】
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
3G サイドウォールゴム
4 クリンチエイペックス
4G クリンチエイペックスゴム
5 ビードコア
6 カーカス
6a カーカスプライの本体部
6b カーカスプライの折返し部
7 コード層
8 ビードエイペックス
9 ベルト
9A、9B ベルトプライ
10 バンド
11 ベースゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対して、
オキシエチレンユニットを有する化合物を1.0〜7.5重量部含有し、
オキシエチレンユニットを有する化合物が、一般式:
−O−(CH2−CH2−O)n−H(式中、nは1〜16の整数)
で表わされる構造を有する化合物であるクリンチエイペックス用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを5重量部以下含有する請求項1記載のクリンチエイペックス用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のクリンチエイペックス用ゴム組成物を用いたクリンチエイペックスを有するタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−252157(P2011−252157A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164682(P2011−164682)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【分割の表示】特願2007−177569(P2007−177569)の分割
【原出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】