説明

サイホンジェット式水洗大便器

【課題】電気式切替手段により洗浄水の供給・停止を切り替える水洗大便器であっても、停電時に容易に洗浄動作を行うことが可能なサイホンジェット式水洗大便器を提供する。
【解決手段】洗浄水によって洗浄されるサイホンジェット式水洗大便器であって、電源から供給される電力により駆動され、給水源から供給される洗浄水の供給・停止を切り替える電気式切替手段と、給水源から電気式切替手段まで洗浄水を給水する給水路と、電気式切替手段からジェット吐水口まで洗浄水を導く導水路と、給水源に一端が接続され他端が導水路に接続された補助給水路と、を有し、電源から電気式切替手段へ供給される電力が停止した際も補助給水路を介して洗浄水の供給を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホンジェット式水洗大便器に係り、特に、電気式切替手段により洗浄水の供給・停止を切り替えるサイホンジェット式水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗浄水を水道から直接供給する水道直圧式水洗大便器が普及し始めている。この水道直圧式水洗大便器は、1回の洗浄用の洗浄水全てを貯めておくタンクを必要としないので、便器をコンパクトに構成することができるという利点がある反面、水道水圧の低い地域では十分な流量で洗浄水を供給することが難しく、設置することができないという問題がある。
【0003】
特開2008−82032号公報(特許文献1)には、水洗大便器が記載されており、この水洗大便器では、リム吐水用電磁開閉弁を開放することで、水道直圧で供給される洗浄水をリム吐水口から吐水させると共に、ジェット吐水口からの吐水に対しては、ポンプにより加圧を行って供給している。即ち、この水洗大便器では、水道から供給された洗浄水を貯水タンクに貯水しておき、便器洗浄時に貯水タンク内の洗浄水をポンプにより加圧してジェット吐水口から吐出させている。この水洗大便器によれば、水道直圧式水洗便器を、水道水圧の低い地域にも設置することが可能になる。
【0004】
したがって、特開2008−82032号公報記載の水洗大便器では、1回の洗浄用の洗浄水全てを貯めておくタンクを必要としないため、便器全体をコンパクトにすることができると共に、水道水圧の低い地域にも設置することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−82032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2008−82032号公報記載の水洗大便器では、リム吐水及びジェット吐水のいずれの吐水においても、電磁開閉弁やポンプなど電力を駆動源として洗浄水の供給・停止を切り替えるもの(電気式切替手段)を使用しており、停電時にはそれらが作動しないため便器洗浄が行えないという問題がある。そのため、使用者は、別途用意したバケツに水を汲み、それを便器のボウル部に直接流すことで便器洗浄を行う必要があり、小さな子供やお年寄りには大きな負担となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、電力を駆動源として洗浄水の供給・停止を切り替える水洗大便器であっても、停電時に容易に洗浄動作を行うことが可能な水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を採用している。すなわち、本発明の水洗大便器は、洗浄水によって洗浄されるサイホンジェット式水洗大便器であって、ジェット吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から排水管に接続される排水トラップ管路を備えた便器本体と、電源から供給される電力により駆動され、第1の給水源から供給される洗浄水の供給・停止を切り替える電気式切替手段と、前記給水源から前記電気式切替手段まで洗浄水を給水する給水路と、前記電気式切替手段から前記ジェット吐水口まで洗浄水を導く導水路と、前記第1の給水源または前記第1の給水源とは異なる第2の給水源に一端が接続され他端が前記導水路に接続された補助給水路と、前記第1または第2の給水源から補助給水路を介して導水路へ供給される洗浄水の供給・停止を切り替える切替弁と、前記切替弁を操作する操作部と、を有し、前記操作部は電源から前記電気式切替手段へ供給される電力が停止した際も操作可能とすることを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明においては、電力により駆動される電気式切替手段が停電等で作動しない場合でも、操作部を操作するだけで補助給水路を介して導水路へ洗浄水を供給することができる。したがって、停電等でも容易に便器洗浄を行うことができる。また、補助給水路は、少なくともジェット吐水口まで洗浄水を導く導水路に接続されるため、補助給水路を介して供給される洗浄水をジェット吐水口から吐水させることができる。したがって、ジェット吐水口からの吐水によりサイホン作用を早期に起こさせ、ボウル部に滞留した汚物等を効率良く排水トラップ管路に排出することができる。
なお、本発明におけるジェット吐水口は、少なくとも排水トラップ管路の流入口に指向していればよく、特にその位置が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力により駆動され洗浄水の供給・停止を切り替える電気式切替手段が停電等で作動しない場合でも、便器洗浄を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1の水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】補助給水管接続部の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1乃至図3により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本構造を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す側面図であり、図2は、図1の水洗大便器の平面図であり、図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、
この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0014】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排
水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された配水管15と、ジェッ
ト吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14
の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水する
ようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、
ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0015】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道(図示せず)に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22により吸引して大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0016】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を説明する。図3に示
すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、主な機器として、定流量弁26、ダイヤフラム式の電磁開閉弁28、給水路切替弁30がそれぞれ設けられている。
給水路切替弁30の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水
路32、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路34が接続され
ている。
【0017】
ここで、定流量弁26を通過した洗浄水は、電磁開閉弁28を通って、給水路切替弁3
0により、リム側であるリム導水路32からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタ
ンク側給水路34から貯水タンク20に供給されるようになっている。
これらの電磁開閉弁28の開閉操作、及び、給水路切替弁30の切替操作は、機能部1
0のコントローラ36により制御される。
【0018】
貯水タンク20と加圧ポンプ22との間にはそれらを接続するポンプ給水路38が設けられており、このポンプ給水路38の上流端には給水口40が形成されている。また、加圧ポンプ22とジェット吐水口16との間にはそれらを接続するジェット導水路42が設けられている。ここで、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を吸引して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。加圧ポンプ22の回転数や作動時間等は、機能部10に設けられたコントローラ36により制御される。
さらに、加圧ポンプの下流側のジェット導水路42には、後述するジェット側補助給水路接続部60が設けられ、ジェット導水路42に補助給水路56が接続可能に構成されている。そして、この補助給水路56の上流側は、給水路24が接続する水道(給水源)と同じ水道に接続する構造となっている。これにより、停電時等で加圧ポンプが作動しない時であっても補助給水路56からジェット導水路42へ洗浄水を供給でき、ジェット吐水口16から洗浄水が供給される。なお、図示はしないが補助給水路56への洗浄水の供給・停止を切り替える開閉弁及びその開閉弁を操作する操作部については、手動で操作可能なレバー式開閉弁または乾電池を内部に内蔵しその電力を利用して開閉動作を行う乾電池式電磁開閉弁など、停電時においても操作可能なものであればよい。
【0019】
また、ポンプ給水路38の貯水タンク20内に位置する部分には、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁44及び水抜栓46が設けられている。さらに、貯水タンク20の後述する上方フロートスイッチ52よりも上方位置に、その一端が開口し、他端がジェット導水路42に接続されたオーバーフロー流路48が設けられている。このオーバーフロー流路48には、逆止弁であるフラッパー弁50が取り付けられている。
【0020】
次に、貯水タンク20の内部には、上方フロートスイッチ52、及び、下方フロートス
イッチ54が配置されている。上方フロートスイッチ52は、貯水タンク20内の水位が
所定の上方位置L1に達するとオン(ON)に切り替わり、コントローラ36はこれを検
知して、電磁開閉弁28を閉鎖させる。下方フロートスイッチ54は、貯水タンク20内
の水位が所定の下方水位L2まで低下するとオン(ON)に切り替わり、コントローラ3
6はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0021】
次に、図4により、ジェット側補助給水路接続部60の詳細について説明する。図4(a)、(b)は、いずれもジェット導水路42に補助給水路56が接続された状態を示しており、特に図4(a)は、ジェット導水路42に加圧ポンプ22側から洗浄水が流れている状態を示した図であり、図4(b)はジェット導水路42に補助給水路56から洗浄水が流れている状態を示している。
この図4に示すように、ジェット導水路42には、接続口62が形成されており、補助給水管57が必要に応じて接続可能になっている。また、接続口62には、三方弁58が設けられており、補助給水路56の洗浄水の流れの有無に応じて補助給水路56の流出口を開閉するように構成されている。
【0022】
図4(a)に示すように、補助給水路56に洗浄水が流れていない状態では、三方弁58が閉じた状態となり、補助給水路56の流出口を塞いでいるため、ジェット導水路42に加圧ポンプ22側から洗浄水が流れてきても補助給水路56に流入することはない。
一方、補助給水路56から洗浄水が供給されると、図4(b)に示すように三方弁58が補助給水路56の流出口を開の状態にするため、補助給水路56から供給される洗浄水はジェット導水路42に合流し、ジェット吐水口16より吐水される。したがって、停電時など加圧ポンプ22が作動しない状態においては、補助給水路56に洗浄水を供給することで、ジェット吐水口16より洗浄水を吐水させ、ボウル部12の汚物等を排水トラップ管路14側へ効率良く排出させることが出来る。
【0023】
なお、本実施形態では、補助給水路56がジェット導水路42に接続された状態について説明してきたが、それに限らず停電時のみ補助給水路56をジェット導水路42に接続するようにしても良い。そのような場合には、非接続時に接続口62をキャップ等で塞いでおけば機外漏水を防止することができる。
【0024】
また、本実施形態では、ジェット導水路42と補助給水路56を別体として説明してきたが、これらを一体にしても良い。一体にすることで、補助給水管57の接続工程が不要になり、組立性が向上する。
【0025】
次に、図5により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
図5に示すように、第2実施形態による水洗大便器においては、ジェット導水路42に補助給水路接続部を設ける代わりに、リム導水路32にリム側補助給水路接続部64を設けている。そして、そのリム側補助給水路接続部64に補助給水路56が接続されている。
【0026】
この第2実施形態によれば、リム導水路32に補助給水路56が接続されているため、リム側補助給水路接続部64より上流側の電磁開閉弁28や給水路切替弁30が停電等で作動しない場合であっても、リム導水路32に洗浄水を供給でき、リム吐水口18より洗浄水を吐水させることができる。
【0027】
このように、本実施形態の水洗大便器においては、停電等で電磁開閉弁28や給水路切替弁30等の電気式切替手段が作動しない場合であっても、補助給水路56に洗浄水を供給するだけで、リム吐水口18より洗浄水を吐水させることができ、停電等でも容易にボウル部12を洗浄でき、便器洗浄動作を行うことができる。
【0028】
なお、本発明の第1、第2実施形態における補助給水路56への洗浄水の供給は、給水路24に洗浄水を供給している水道(給水源)と同じ水道から供給されるもののみを説明してきたが、別の水道から供給されるものであってもよい。別の水道とは、トイレルームに設置された手洗い器の水道であってもよく、また補助給水路56用に設けた専用の水道であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 便座
6 カバー
8 局部洗浄装置
10 機能部
11 サイドパネル
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
15 排水管
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 給水路
26 定流量弁
28 電磁開閉弁
30 給水路切替弁
32 リム導水路
34 タンク側給水路
36 コントローラ
38 ポンプ給水路
40 給水口
42 ジェット導水路
44 フラッパー弁
46 水抜栓
48 オーバーフロー流路
50 フラッパー弁
52 上方フロートスイッチ
54 下方フロートスイッチ
56 補助給水路
57 補助給水管
58 三方弁
60 ジェット側補助給水路接続部
62 接続口
64 リム側補助給水路接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって洗浄されるサイホンジェット式水洗大便器であって、
ジェット吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から排水管に接続される排水トラップ管路を備えた便器本体と、
電源から供給される電力により駆動され、第1の給水源から供給される洗浄水の供給・停止を切り替える電気式切替手段と、
前記給水源から前記電気式切替手段まで洗浄水を給水する給水路と、
前記電気式切替手段から前記ジェット吐水口まで洗浄水を導く導水路と、
前記第1の給水源または前記第1の給水源とは異なる第2の給水源に一端が接続され他端が前記導水路に接続された補助給水路と、
前記第1または第2の給水源から補助給水路を介して導水路へ供給される洗浄水の供給・停止を切り替える切替弁と、
前記切替弁を操作する操作部と、を有し、
前記操作部は電源から前記電気式切替手段へ供給される電力が停止した際も操作可能とすることを特徴とするサイホンジェット式水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83045(P2013−83045A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221985(P2011−221985)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】