説明

サウナバス用加熱制御装置

【課題】電気加熱手段(ヒーター)を熱源とする電気サウナバスに関し、具体的には、電気サウナバスに使用して好適な加熱制御装置を提供する。
【解決手段】電熱器(ヒーター)90による運転開始当初のサウナバス内の加熱を、温度センサー60の抵抗素子が温まって設定温度に達するまでは、電熱器(ヒーター)90のエネルギー消費をセーブして、電熱器(ヒーター)90がオフである時間を確保し、温度センサー60の抵抗素子が温まって設定温度に達した後は、電熱器(ヒーター)90から熱が連続的に出力されて、サウナバス内の温度を設定温度に維持することにより、大幅な省エネルギー効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱手段(ヒーター)を熱源とする電気サウナバスに関し、具体的には、電気サウナバスに使用して好適な加熱制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サウナバス用の加熱手段として、例えば特許文献1及び2に見られるように、従来より、電気加熱手段(ヒーター)と温度センサを用いることによって、温度センサーによる検知出力に基づいて電気加熱手段に高温を発生させて、サウナ室内の空気を設定温度(例えばmax100℃)に昇温させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209438号公報
【特許文献2】実用新案登録第3125195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の温度センサーに関しては、例えばPt100Ωといった測温抵抗体(温度センサー)の技術的な規格として、IECまたはJISによって抵抗素子や公称誤差は定められているが、時間的な感度は特に重要視されておらず、基本的には誤差が基準となっている。
【0005】
更に、温度センサーは使用する用途によって環境条件が異なるため、その用途別に素子部の絶縁方法は工夫されている。また、シース管の形状も異なっていて、まさに、この素子部を保護する絶縁体と、シース管の構造が「感度(熱伝導)」に影響を与えている。
【0006】
図3は、現在一般に使用されている上記温度センサー60の一例を、一部破断して示した断面図であって、図中、60Aはステンレス製のシース管、60Cはシース管60Aの内部に充填した絶縁物で、60Bはこの絶縁物60Cの中に埋め込んだ抵抗素子、60X…はそのリード線を示すものであって、本発明に於いてもこれと同じ構成の温度センサー60が使用される。
【0007】
以上の如く構成した温度センサー60によると、後述する電気加熱手段としての電熱器から出力された熱エネルギーが空気に伝熱し、暖められた空気温度を一次側とすると、温度センサー60の内部の抵抗素子60Bでとらえる温度は二次側の温度であって、温度がセンサー内部の抵抗素子60Bにたどり着くまでには、シース管60A、絶縁物60Cの熱伝導率が関与することになる。ここではその伝熱時間の差を「感度」とする。
【0008】
特に、この伝熱時間に関しては、サウナの運転をスタートアップ(立ち上げ)するときに大きくなる特徴を有している。実験では、サウナ室があらかじめ空気温度24℃で温度センサー60のシース管60Aの表面温度も24℃とし、そこから設定温度70℃に運転をスタートした場合、電気加熱手段(ヒータ)から熱交換されて出力された高温の一次側空気温度と、受身である温度センサー60の伝熱時間が関与する二次側との間には、図4のグラフに見られるように、特にスタートアップ時の温度差は約14.5℃となり、エネルギーの余分(差分)が大きくなる問題があった。また、その時間差は約5分であった。尚、上述した図4は、上記の空気温度と、温度センサー60による感知情報(表示)との差分を説明したものである。
【0009】
ここまでは、温度センサー60の伝熱時間と温度差に関して述べたが、実際、サウナに入浴するにあたっては、サウナ室内の内装材も温まらなければ平面からの輻射効果が得られず、快適な入浴はできない。
【0010】
図5は内装材が温まって入浴環境が整うまでの時間をグラフにしたものであって、従って、サウナ室内の内装材が適度な輻射効果を発揮するまでには、ここでも有る程度の時間は必要である。
【0011】
以上のことから、一般的な構造のサウナ室の場合、サウナ環境が整うまでのスターアップの時間はおおよそ40分以上必要と考えられる。熱出力を上げて40分を短縮しても、設定温度に達した時点で結局、積算電力量は変わらないため省エネルギーにはならない。加えて、ヒーター周囲の温度が高くなるため安全上の問題になる場合がある。逆に小さな出力にしても設定温度に達した時点で、同じく積算電力量は変わらないため、電気加熱手段側の出力を変えても省エネルギーにはつながらない問題もあった。
【0012】
図8は、上述した従来のサウナバス用加熱装置の通常運転(ON/OFF制御)時における温度センサー60の検知情報をグラフに示したものであって、以上のことから、従来の加熱装置はスターアップ時のエネルギーの余分(差分)が非常に大きくて、大変不経済であることが判明した。
【0013】
従って、本発明の技術的課題は、電気加熱手段としてのヒーターの選定バランスと内装材が輻射効果を発揮する経過時間を、サウナ環境が整うおおよそ40分が妥当として、この40分後以降に入浴可能な時間として制御システムを構築することにより、サウナ室の断熱構造やヒーターの熱効率を変えることなく、大幅な省エネルギー効果を発揮できるように工夫したサウナバス用加熱制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係るサウナバス用加熱制御装置は、サウナバス内の空気温度を検知する温度センサーと、この温度センサーによる検知出力に基づいて高温を発生させて、サウナ室内の空気を設定温度に昇温させる電気加熱手段とを備えたサウナバス用加熱制御装置であって、上記電気加熱手段による運転開始当初の加熱を、上記温度センサーの抵抗素子が温まって設定温度に達するまでは、上記電気加熱手段のエネルギー消費をセーブして、上記電気加熱手段がオフである時間を確保すると共に、上記温度センサーの抵抗素子が温まって上記設定温度に達した後は、上記電気加熱手段から熱が連続的に出力して、上記サウナバス内の温度が設定温度に維持されることを特徴としている。
【0015】
(2)また、本発明の請求項2に係るサウナバス用加熱制御装置は、運転開始から、前記温度センサーの抵抗素子が温まって設定温度に達する迄の運転時間帯を、馴らし運転時間帯と成し、この馴らし運転時間帯終了後に、前記電気加熱手段のOFF点を、前記設定温度より低くした制御に切り替えることを特徴としている。
【0016】
上記(1)と(2)で述べた請求項1と2に係る手段によれば、温度センサーが温まるまで一次側のエネルギーをセーブして、ヒーターがOFF(切)である時間を確保する。且つ、サウナバスの環境が整う約40分手前の約35分を経過した時点で、設定温度に向かって熱が連続的に出力するようにした。これは、時間と温度の上昇勾配を考慮して35分と定めたもので、40分後には丁度設定温度に達するようにしたものである。
【0017】
更に、上記2に係る手段によれば、例えば35分経過後の省エネルギー対策として、電気加熱手段のOFF点を設定温度より例えば5℃低くした制御に切り替えている。これは、余熱で生じるオーバーシュートを見込んだもので、実際の空気温度は設定温度を超えるようにバランスを考慮したものである。
【0018】
補足すると、動物のマラソンに例えると、足の速い動物が「うさぎ」即ち一次側の熱せられた空気温度、足の遅い動物が「かめ」即ち温度センサー部の伝熱時間である。「かめ」がある地点に到達するまで、「うさぎ」は休む(OFF)ことができるというものである。
【発明の効果】
【0019】
以上述べた次第で、本発明に係るサウナバス用加熱制御装置によれば、入浴可能な目安時間(例えば40分)になるまでの間に、温度センサーの抵抗素子が温まり、設定温度に達するまでには、前述したようにスタートアップ時にやむを得ず温度差が生じるが、本発明ではこの差分(電気加熱手段の出力エネルギー)を余分に出さないように工夫しているため、サウナバスの構造を変えなくても、温度センサーの感度を考慮した制御設定を制御部に組み込むことで、大幅な省エネルギー効果を上げられることが可能と成った。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る加熱制御装置が実施されたサウナバスの一例と、その電気配線の構成例を説明した斜視図。
【図2】本発明で使用される加熱制御装置の電気的構成の一例を説明したブロック図。
【図3】本発明で使用する温度センサーの一例を一部分を省略して示した断面図。
【図4】本発明によって検出されたサウナバス内の空気温度と温度センサー感知との差を示したグラフ。
【図5】サウナバスの内装材が温まって入浴環境が整うだ問おうな時間を示したグラフ。
【図6】本発明の通常運転時における温度変化の状態を説明したグラフ。
【図7】本発明と従来装置の省エネルギー効果を比較して表にした図。
【図8】従来装置の通常運転時における温度変化の状態を説明したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るサウナバス用加熱制御装置の実施の形態を図面と共に説明すると、図1は本発明が実施されたサウナバス1の外観と、その電気的な配線の構成例を説明した斜視図、図2はその電気的構成を説明したブロック図であって、これ等の図面において、符号10で全体的に示したのは、サウナバス1のシステム全体をコントロールする制御部(パワーサプライ)、20は電源部、30は操作部(コントローラー)、40は警報部、50は時刻をカウントする時計部、90はサウナバス1の熱源である電気加熱手段としての電熱器(ヒーター)、70は温度ヒューズ、80は照明器具、60は温度センサーを示す。
【0022】
更に図中、21,22,31,41,51,61,71,81,91は、上述した各部材20〜90と制御部10との 間を電気的に結ぶ接続線(配線)であって、これ等各部材20〜90は、制御部10に設けた基板のメモリ(いずれも図示省略)に格納されているプログラムに従って制御作動されて、サウナバス1を所定の温度でサウナ入浴可能な状態に調整できる仕組みに成っている。
【0023】
尚、図面にはサウナバス1としてフリースタンディング形式のサウナ室が記載されているが、これは実施の一例であって、例えばビルドイン形式のサウナ室であっても勿論よく、その選択は任意とする。また、図1に示した配線は実施の一例であって、配線の形式や構成はいずれも任意とする。
【0024】
図6の記載に従って本発明の制御構成を更に詳しく説明すると、運転開始から入浴可能な目安時間(例えば40分)になるまでの間、温度センサー60の抵抗素子60Bが温まって設定時間に達する迄には、スタートアップ時に温度差が生じることになる。しかし、本発明ではこの差分を余分に出さないため、サウナバス1の構造を変えなくても、大幅な省エネルギー効果を発揮できるように構成されている。
【0025】
即ち、上述した温度センサー60が所定の温まる迄は、前述した如く、図3に示した一次側(サウナ室側)のエネルギーロスをセーブして、図4に示す如く電熱器(ヒーター)90がOFFである時間が確保され、更に、スタートからサウナバス1内の環境が整う約40分手前の、約35分(35min)を経過した時点で、電熱器(ヒーター)90が作動して、設定温度に向かってサウナバス1内に熱が連続的に出力されるため、スタートから約40分経過後に、サウナバス1内の空気温度を設定温度(例えば100℃)に加熱することが可能になり、快適なサウナ入浴を可能にする。
【0026】
図7は、本発明に係るサウナバス用加熱制御装置を使用した場合の省エネルギー効果を、従来より一般に使用されている加熱制御装置(通常制御)の省エネルギー効果と比較した場合のデータを、表に示したものであって、ON時間、OFF時間、積算電力量、効果の全てで、本発明の制御が優れていることを示唆している。
【0027】
即ち、本発明の省エネルギー効果を立証する目的で、電熱器(ヒーター)90や、サウナ室の壁面等が同構造のサウナバス1(サウナ室)に、本発明のシステムを導入したものと、導入していないものとを用意して、その通常運転の状態を比較したところ、導入した本発明に係るシステムでは、積算電力量が11%の削減を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るサウナバス用加熱制御装置は、一般家庭用のサウナバスは勿論のこと、面積が広くて大きい業務用のサウナバスにも利用可能であって、フリースタンディング形式やビルドイン形式といった各種形式のサウナバスに使用して、優れた経済性を発揮することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 サウナバス
10 制御部
20 電源部
30 操作部
40 警報部
50 時計部
60 温度センサー
70 温度ヒューズ
80 照明器具
90 電熱器(ヒーター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウナバス内の空気温度を検知する温度センサーと、この温度センサーによる検知出力に基づいて高温を発生させて、サウナ室内の空気を設定温度に昇温させる電気加熱手段とを備えたサウナバス用加熱制御装置であって、
上記電気加熱手段による運転開始当初の加熱を、上記温度センサーの抵抗素子が温まって設定温度に達するまでは、上記電気加熱手段のエネルギー消費をセーブして、上記電気加熱手段がオフである時間を確保すると共に、
上記温度センサーの抵抗素子が温まって上記設定温度に達した後は、上記電気加熱手段から熱が連続的に出力して、上記サウナバス内の温度が設定温度に維持されることを特徴とするサウナバス用加熱制御装置。
【請求項2】
運転開始から、前記温度センサーの抵抗素子が温まって設定温度に達する迄の運転時間帯を、馴らし運転時間帯と成し、この馴らし運転時間帯終了後に、前記電気加熱手段のOFF点を、前記設定温度より低くした制御に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のサウナバス用加熱制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65845(P2012−65845A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213059(P2010−213059)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(392010120)株式会社メトス (3)
【Fターム(参考)】