説明

サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブ

【課題】ディスクに対するヘッドスライダの位置合わせ精度を向上させることができるサスペンションを提供する。
【解決手段】本発明によるサスペンション101は、ヘッドスライダ112が実装されるヘッド領域2を有するサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1に取り付けられたロードビーム103と、を備えている。このうちロードビーム103は、サスペンション用基板1のヘッド領域2の側に突出した、ヘッド領域2を揺動自在に支持するディンプル部105を有している。サスペンション用基板1は、ヘッド領域2に設けられた、ロードビーム103のディンプル部105を受容してディンプル部105が当接する当接凹部50を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブに係り、とりわけ、ディスクに対するヘッドスライダの位置合わせ精度を向上させることができるサスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハードディスクドライブ(HDD)は、データが記憶されるディスクに対してデータの書き込みおよび読み取りを行う磁気ヘッドスライダ(以下、単にヘッドスライダと記す)が実装されたサスペンション用基板を備えている。このようなサスペンション用基板は、ヘッドスライダが実装されるヘッド領域から、外部接続基板(FPC基板、フレキシブルプリント基板)が接合されるテール領域に延びるように形成されており、金属支持層と、金属支持層に絶縁層を介して積層された複数の配線を有する配線層と、を有している。各配線に電気信号を流すことにより、ディスクに対してデータの書き込みまたは読み取りが行われるようになっている。
【0003】
このようなサスペンション用基板は、ロードビームに数箇所で溶接されて、ロードビームによって支持されるようになっている。ロードビームは、曲げ剛性が小さくなるように形成されたヒンジ部を有しており、ディスクが回転する際、ディスクの回転により生じた気流の影響を受けて、ヒンジ部の撓み量が変化し、ヘッドスライダがディスクに所望のフライングハイトを保って浮上するようになっている。
【0004】
また、ディスクの回転により生じた気流の影響を受けてヘッドスライダがディスクに対して位置ずれすることを抑制するために、ヘッドスライダはロードビームに対して揺動するようになっている。すなわち、サスペンション用基板は、ヘッド領域(ジンバル領域)に設けられた、ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有しており、このタング部が、ロードビームに揺動自在に支持されている。このようなサスペンション用基板は、例えば、特許文献1により知られている。ここでは、ロードビームに、タング部の側に突出する凸部が設けられ、タング部に、ロードビームの側に突出してロードビームの凸部に当接するディンプルが設けられており、ヘッドスライダが取り付けられたタング部の揺動運動(ジンバル運動)の可動範囲を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−96298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すようなサスペンションでは、ロードビームとサスペンション用基板のタング部との間のギャップが大きくなっている。このことにより、ディスクの回転により生じる気流がロードビームとサスペンション用基板との間に入り込み、サスペンション用基板とロードビームとが相対的に変位する可能性が考えられる。とりわけ、ディスクの外方の退避領域からディスクの最外トラックの領域へヘッドスライダを進入させる際に気流による強い風乱の影響を受けやすく、この際、サスペンション用基板とロードビームとが相対的に変位して、タング部の側のディンプルがロードビームの側の凸部に対して滑り、ディスクに対してヘッドスライダが位置ずれする場合が考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ディスクに対するヘッドスライダの位置合わせ精度を向上させることができるサスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヘッドスライダが実装されるヘッド領域を有するサスペンション用基板と、前記サスペンション用基板に取り付けられたロードビームと、を備え、前記ロードビームは、前記サスペンション用基板の前記ヘッド領域の側に突出した、当該ヘッド領域を揺動自在に支持するディンプル部を有し、前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ロードビームの前記ディンプル部を受容して当該ディンプル部が当接する当接凹部を有していることを特徴とするサスペンションを提供する。
【0009】
なお、上述したサスペンションにおいては、前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、前記当接凹部は、前記タング部に設けられている、ことが好ましい。
【0010】
また、上述したサスペンションにおいては、前記ディンプル部は、曲面状に形成され、前記当接凹部は、曲面状に形成されると共に、前記ディンプル部の曲率より大きい曲率を有している、ことが好ましい。
【0011】
また、上述したサスペンションにおいては、前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されている、ことが好ましい。
【0012】
また、上述したサスペンションにおいては、前記当接凹部に、めっき層が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、上述したサスペンションにおいては、前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部と、前記タング部に絶縁層を介して積層された、前記ヘッドスライダに電気的に接続される導体層と、を有し、前記タング部に、当該タング部を貫通し、前記ディンプル部を受容すると共に前記導体層を露出させるタング開口部が設けられ、前記導体層は、前記タング開口部によって露出した、当該ディンプル部が当接する当接面を有し、前記当接凹部は、前記タング開口部と前記導体層の前記当接面とにより構成されている、ことが好ましい。
【0014】
また、上述したサスペンションにおいては、前記導体層の前記当接面に、めっき層が設けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述したサスペンションにおいては、前記絶縁層に、当該絶縁層を貫通し、前記タング開口部に連通した絶縁開口部が設けられ、前記導体層は、前記絶縁開口部内に設けられた導体貫通部を有し、前記導体層の前記当接面は、前記導体貫通部の前記ディンプル部の側の面である、ことが好ましい。
【0016】
また、上述したサスペンションにおいては、前記絶縁層に、当該絶縁層を貫通し、前記タング開口部に連通すると共に前記ディンプル部を受容する絶縁開口部が設けられ、前記当接凹部は、前記タング開口部と前記絶縁開口部と前記導体層の前記当接面とにより構成されている、ことが好ましい。
【0017】
また、上述したサスペンションにおいては、前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、前記タング部の前記ディンプル部の側の面に、当該ディンプル部の周囲に配置された、当該ディンプル部を受容する枠状のめっき壁が設けられ、前記タング部は、前記めっき壁により囲まれた、前記ディンプル部に当接する当接面を有し、前記当接凹部は、前記めっき壁の内周面と前記タング部の前記当接面とにより構成されている、ことが好ましい。
【0018】
また、上述したサスペンションにおいては、前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されている、ことが好ましい。
【0019】
また、上述したサスペンションにおいては、前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、前記タング部の前記ディンプル部の側の面に、めっき層が設けられ、前記当接凹部は、前記めっき層に設けられている、ことが好ましい。
【0020】
また、上述したサスペンションにおいては、前記ディンプル部は、曲面状に形成され、前記当接凹部は、曲面状に形成されると共に、前記ディンプル部の曲率より大きい曲率を有している、ことが好ましい。
【0021】
また、上述したサスペンションにおいては、前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されている、ことが好ましい。
【0022】
本発明は、上述の前記サスペンションと、前記サスペンションに実装された前記ヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンションを提供する。
【0023】
本発明は、上述の前記ヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ディスクに対するヘッドスライダの位置合わせ精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるサスペンションの一例を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるサスペンションにおいて、当接凹部を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態におけるサスペンションにおいて、サスペンション用基板の断面の一例を示す図である。
【図4】図4は、図2の当接凹部の平面形状を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態におけるサスペンションにおいて、ピエゾ素子を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態におけるヘッド付サスペンションの一例を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態におけるハードディスクドライブの一例を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態において、ヘッド付サスペンションとディスクとを示す側面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、当接凹部の平面形状の変形例(変形例1〜3)を示す図である。
【図10】図10(a)は、当接凹部の変形例(変形例4)を示す平面図であり、図10(b)は、図10(a)の断面図である。
【図11】図11は、当接凹部の変形例(変形例5)を示す断面図である。
【図12】図12は、当接凹部の変形例(変形例6)を示す断面図である。
【図13】図13は、当接凹部の変形例(変形例7)を示す断面図である。
【図14】図14は、当接凹部の変形例(変形例8)を示す断面図である。
【図15】図15は、当接凹部の変形例(変形例9)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1乃至図8を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブについて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0027】
まず、図1を用いて、本実施の形態によるサスペンション101について説明する。図1に示すように、サスペンション101は、ベースプレート102と、ベースプレート102にロードビーム103を介して取り付けられたサスペンション用基板1と、を備えている。このうち、ロードビーム103には、後述するヘッドスライダ(図6参照)112をスウェイ方向(旋回方向)に微小移動させるための一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子)104が接合されている。このピエゾ素子104は、サスペンション用基板1の素子端子34に、導電性接着剤を用いて電気的に接続されている。
【0028】
ロードビーム103は、一対のヒンジ部103aを有している。このヒンジ部103aは、ヘッドスライダ112がディスク123(図7および図8参照)に近接するように予め曲げ加工されている。また、一対のヒンジ部103aの間には、ヒンジ開口部103bが設けられており、ヒンジ部103aは、その曲げ剛性を小さくするように形成されている。このことにより、後述するハードディスクドライブ(図7参照)121においてディスク123が回転する際、ディスク123の回転により生じた気流の影響を受けてヒンジ部103aの撓み量が変化し、ヘッドスライダ112がディスク123に所望のフライングハイトを保って浮上するようになっている(図8参照)。また、ロードビーム103は、接合される一対のピエゾ素子104の間に介在された、ピエゾ素子104が伸縮した場合に弾性変形する素子可撓部103cを有している。なお、ベースプレート102およびロードビーム103は、ステンレスにより形成されていることが好適である。
【0029】
図1および図2に示すように、ロードビーム103は、サスペンション用基板1のヘッド領域2(後述するタング部21)の側に突出したディンプル部105を有している。このディンプル部105は、当該タング部21を揺動自在に支持するようになっている。また、ディンプル部105は、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。このことにより、ヘッドスライダ112を長手方向軸線(X)に対して対称(左右均等)に揺動させることが可能となる。また、ディンプル部105は、曲面状に形成されていることが好ましく、例えば、プレスによって、半球状に形成されていることが好適である。この場合、図2に示すように、ロードビーム103のタング部21の側とは反対側の面には、ディンプル部105に対応するようにディンプル凹部106が形成される。また、ディンプル部105は、エッチングによって形成することもでき、この場合には、上述したようなディンプル凹部106を形成させることなく、ロードビーム103のタング部21の側とは反対側の面を、平坦状に形成することもできる。
【0030】
続いて、図1を用いて、本実施の形態によるサスペンション用基板1について説明する。図1に示すように、サスペンション用基板1は、ヘッドスライダ112が実装されるヘッド領域2から、ロードビーム103のヒンジ開口部103bに対応するヒンジ領域4を通って、FPC基板(外部接続基板、フレキシブルプリント基板、図6参照)131が実装されるテール領域3に延びるように形成されている。すなわち、サスペンション用基板1は、ヘッド領域2からヒンジ領域4を越えた箇所まで長手方向軸線(X)に沿って略直線的に延び、そこから斜め横方向に曲げられてテール領域3まで延びている。
【0031】
また、図1および図3に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層20と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層30と、を備えている。このうち配線層30は、図1に示すように、読取配線および書込配線を含む複数の配線31と、ヘッドスライダ112に接続されるヘッド端子32と、FPC基板131に接続されるテール端子33と、ピエゾ素子104に接続される素子端子34と、を有している。各ヘッド端子32および素子端子34は、配線31を介して対応するテール端子33に接続されている。
【0032】
図1に示すように、金属支持層20は、ヘッド領域2に設けられた、実装されるヘッドスライダ112が取り付けられるタング部21と、タング部21よりテール領域3の側に配置され、ロードビーム103に接合された一対の溶接点22a、23aを含む接合部22、23と、を有している。本実施の形態においては、2つの接合部22、23が設けられており、このうちヘッド領域2の側の接合部22は、ヘッド領域2とヒンジ領域4との間に配置され、テール領域3の側の接合部22は、ヒンジ領域4とテール領域3との間に配置されている。また、各接合部22、23の接合点22a、23aは、配線層30の複数の配線31の両側に配置されており、各溶接点22a、23aにおいて、ロードビーム103と金属支持層20の接合部22、23とが溶接されて、サスペンション用基板1がロードビーム103に取り付けられている。また、2つの接合部22、23のうちヘッド領域2の側の接合部22とタング部21とは、タング部21の両外側に配置された細長状に延びる一対のアウトリガー部24を介して連結されており、タング部21が揺動運動(ジンバル運動)可能に構成されている。また、2つの接合部22、23は、複数の配線31に沿って延びると共にヒンジ領域4を通る連結部25を介して連結されている。
【0033】
図1および図2に示すように、サスペンション用基板1は、ヘッド領域2に設けられた、ロードビーム103のディンプル部105を受容して当該ディンプル部105に当接する当接凹部50を有している。本実施の形態においては、当接凹部50は、タング部21のディンプル部105の側の面に設けられている。また、当接凹部50は、ハーフエッチングにより曲面状に形成されると共に、ディンプル部105の曲率より大きい曲率を有している。さらに、図4に示すように、当接凹部50は、平面視で、円形状に形成されている。このような当接凹部50は、ロードビーム103のディンプル部105に対応するように、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0034】
また、本実施の形態においては、図2に示すように、タング部21のヘッドスライダ112の側の面は、平坦状に形成されており、当該面にヘッドスライダ112が接着剤によって取り付けられるようになっている。
【0035】
また、図3に示すように、絶縁層10上には、配線31を覆い、配線31の腐食を防止するための保護層40が設けられている。なお、図1においては、図面を明瞭にするために、保護層40は省略している。
【0036】
次に、各構成部材について詳細に述べる。
【0037】
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層20と各配線31との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての曲げ剛性が喪失されることを防止することができる。
【0038】
配線31は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、配線31の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、配線31の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、配線31の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。
【0039】
ヘッド端子32、テール端子33および素子端子34は、配線31と同一の材料および同一の厚みからなっており、それぞれの露出された部分にニッケルめっきおよび金めっきがこの順で施されている。
【0040】
金属支持層20の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、このうちステンレスを用いることが好適である。金属支持層20の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmとすることができる。このことにより、金属支持層20の導電性、曲げ剛性、および弾力性を確保することができる。
【0041】
保護層40の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層40の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。
【0042】
次に、ピエゾ素子104について説明する。ピエゾ素子104は、電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子として構成されている。各ピエゾ素子104は、図5に示すように、互いに対向する一対の電極104aと、一対の電極104a間に介在され、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部104bとを有している。一対のピエゾ素子104の圧電材料部104bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子104が収縮すると共に、他方のピエゾ素子104が伸長するようになっている。このようなピエゾ素子104は、図1に示すように、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されている。このことにより、ヘッドスライダ112のスウェイ方向への変位に対して、2つのピエゾ素子104の伸縮による影響を均等にすることができ、スライダ112のスウェイ方向の変位を容易に調整することができる。各ピエゾ素子104は、非導電性接着剤によりベースプレート102およびロードビーム103に接合されると共に、導電性接着剤により、サスペンション用基板1の素子端子34に電気的に接続されている。
【0043】
続いて、図6により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション111について説明する。図6に示すヘッド付サスペンション111は、上述したサスペンション101と、サスペンション用基板1のヘッド領域2に実装されたヘッドスライダ112と、を備えている。
【0044】
次に、図7により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ121について説明する。図7に示すハードディスクドライブ121は、ケース122と、このケース122に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク123と、このディスク123を回転させるスピンドルモータ124と、ディスク123に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク123に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ112を含むヘッド付サスペンション111と、を備えている。このうちヘッド付サスペンション111は、ケース122に対して移動自在に取り付けられており、ケース122にはヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112をディスク123上に沿って移動させるボイスコイルモータ125が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション111は、ボイスコイルモータ125にアーム126を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ121を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板131(図6参照)に接合されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、制御部とヘッドスライダ112との間で伝送されるようになっている。
【0045】
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1をサブトラクティブ法により製造する場合について説明する。
【0046】
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層20と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層30と、を有する積層体(図示せず)を準備する。続いて、配線層30が、所望の形状にエッチングされて、配線31、ヘッド端子32、テール端子33および素子端子34が形成される。次に、絶縁層10上に、各配線31を覆う保護層40が形成されて、絶縁層10が所望の形状にエッチングされる。その後、金属支持層20がエッチングされて、タング部21、2つの接合部22、23およびアウトリガー部24が形成される。この際、タング部21に、ハーフエッチングによって当接凹部50が形成される。このようにして、本実施の形態におけるサスペンション用基板1が得られる。なお、サスペンション用基板1は、アディティブ法により製造することもできる。
【0047】
次に、このようにして得られたサスペンション用基板1を用いたサスペンションの製造方法について説明する。
【0048】
まず、プレス等により形成されたディンプル部105を有するロードビーム103と、ベースプレート102とを準備する。続いて、ロードビーム103とベースプレート102とが溶接により取り付けられる。
【0049】
次に、サスペンション用基板1が、ロードビーム103に溶接により取り付けられる。この場合、まず、タング部21の当接凹部50に、ロードビーム103のディンプル部105が受容されて当接し、サスペンション用基板1とロードビーム103との位置決めをする。その後、サスペンション用基板1の各接合部22、23がロードビーム103に溶接されて溶接点22a、23aが形成され、サスペンション用基板1がロードビーム103に取り付けられる。
【0050】
続いて、ピエゾ素子104が、非導電性接着剤を用いてベースプレート102に接合されると共に、導電性接着剤を用いて、ピエゾ素子104の一方の電極104aが、ベースプレート102に電気的に接続される。また、ピエゾ素子104の他方の電極104aは、導電性接着剤を用いてサスペンション用基板1の素子端子34に電気的に接続される。
【0051】
このようにして、図1に示すサスペンション101が得られる。
【0052】
このサスペンション101のヘッド領域2に、ヘッドスライダ112が実装されて、図6に示すヘッド付サスペンション111が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション111がアーム126に取り付けられると共に、サスペンション用基板1のテール領域3にFPC基板131(図6参照)が接合されて、図7に示すハードディスクドライブ121が得られる。
【0053】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。まず、ハードディスクドライブ121における各構成部材の作用について説明する。
【0054】
図7に示すハードディスクドライブ121においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ125によりヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112がディスク123上に沿って移動する。この際、ディスク123の回転により生じた気流の影響を受けてロードビーム103のヒンジ部103aの撓み量が変化することにより(図8参照)、スピンドルモータ124により回転しているディスク123に所望のフライングハイトを保って浮上する。また、ディスク123が回転している間、ディスク123の回転により生じた気流の影響を受けて、タング部21に取り付けられたヘッドスライダ112が、ロードビーム1−3のディンプル部105によって支持されながら揺動し、ディスク123に対してヘッドスライダ112が所望の位置に位置合わせされる。このようにしてヘッドスライダ112が、ディスク123上を移動しながら、ヘッドスライダ112とディスク123との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、図示しない制御部とヘッドスライダ112との間で電気信号が伝送される。
【0055】
続いて、ディスク123に対してヘッドスライダ112を位置合わせするための各構成部材の作用について説明する。この場合、ボイスコイルモータ125が、ヘッドスライダ112の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子104が、ヘッドスライダ112の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の一対のピエゾ素子104に所定の電圧を印加することにより、一方のピエゾ素子104が長手方向に収縮すると共に、他方のピエゾ素子104が伸長する。この場合、ベースプレート102の素子可撓部(図示せず)およびロードビーム103の素子可撓部103cが弾性変形し、先端側に位置するヘッドスライダ112がスウェイ方向(旋回方向)に移動することができる。このようにして、ヘッドスライダ112を、ディスク123の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
【0056】
このように本実施の形態によれば、ロードビーム103が、サスペンション用基板1のタング部21の側に突出したディンプル部105を有し、サスペンション用基板1のタング部21に、ディンプル部105を受容して当該ディンプル部105が当接する当接凹部50が設けられている。このことにより、タング部21とロードビーム103との間のギャップ(図2における寸法A)を低減することができる。このため、ディスク123の回転により生じる気流が、ロードビーム103とタング部21との間に入り込むことを抑制し、サスペンション用基板1とロードビーム103とが相対的に変位することを抑制することができる。この結果、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置ずれを抑制し、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。とりわけ、ディスク123の外方の退避領域からディスク123の最外トラックの領域へヘッドスライダ112を進入させる際に気流による強い風乱の影響を受けた場合であっても、ロードビーム103とタング部21との間のギャップを低減していることから、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置ずれを確実に抑制することができる。なお、タング部21とロードビーム103との間のギャップが低減した場合であっても、例えば、ディンプル部105の突出高さを高くすることにより、タング部21の揺動運動の可動範囲を増大させて、タング部21がロードビーム103に干渉することを防止できる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、ロードビーム103のディンプル部105が曲面状に形成されており、タング部21の当接凹部50が、曲面状に形成されると共に、ディンプル部105の曲率より大きい曲率を有している。このことにより、ディンプル部105は、タング部21を揺動自在に支持することができる。また、ディンプル部105に対するタング部21の位置を規制して、タング部21に取り付けられたヘッドスライダ112がディスク123に対して位置ずれすることを抑制できる。このため、ピエゾ素子104の伸縮によるディンプル部105の変位を、タング部21に確実に伝達させることができる。また、サスペンション用基板1をロードビーム103に取り付ける際、ディンプル部105をタング部21の当接凹部50に受容して当接させることにより、サスペンション用基板1とロードビーム103との位置合わせを容易に行うことができ、サスペンション用基板1とロードビーム103とを精度良く取り付けることができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、タング部21のヘッドスライダ112の側の面は、平坦状に形成されている。このことにより、ヘッドスライダ112のタング部21の側の面を、全域にわたって、タング部21に当接させることができ、ピエゾ素子104の伸縮によるタング部21の変位を、ヘッドスライダ112に確実に伝達させることができる。この結果、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。また、上述したようにヘッドスライダ112のタング部21の側の全面がタング部21に当接させるようにヘッドスライダ112がタング部21に取り付けられているため、ヘッドスライダ112とタング部21との接合強度を向上させることができる。これらのことは、ヘッドスライダ112が小型化されている場合に特に有利である。
【0059】
以下、本発明の実施の形態の変形例について、図9乃至図15を用いて説明する。図9乃至図15においては、図1乃至図8に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0060】
(変形例1〜3)
上述した実施の形態においては、当接凹部50は、平面視で、円形状に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、当接凹部50は、種々の平面形状を有することができる。例えば、図9(a)に示すように、当接凹部50は、平面視で、楕円形状に形成されていてもよい(変形例1)。この場合、楕円の短軸方向においては、長軸方向よりも、ディンプル部105に対するタング部21の位置をより一層規制することができる。なお、楕円の長軸の方向は、サスペンション101の長手方向軸線(X)に沿った方向であってもよく、長手方向軸線(X)に対して直交する方向であってもよく、任意の方向に配置することができる。また、図9(b)に示すように、当接凹部50は、長軸が互いに直交する2つの楕円によって形成された十字状の平面形状を有していてもよく(変形例2)、図9(c)に示すように、長軸が等角度(45°間隔)で配置された4つの楕円によって形成された平面形状を有していてもよい(変形例3)。
【0061】
(変形例4)
また、図10(a)、(b)に示すように、タング部21のディンプル部105の側の面に円筒状に形成された円筒凹部60が設けられて、当該円筒凹部60の底面に、当接凹部50が設けられていてもよい。この場合においても、当接凹部50にディンプル部105が受容されて当接するため、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0062】
(変形例5)
図11に示すように、当接凹部50に、めっき層61が設けられていてもよい。このめっき層61は、当接凹部50に、ニッケルめっきおよび金めっきがこの順に施されることにより形成されることが好ましい。この場合、ハーフエッチングにより形成された当接凹部50の表面粗さよりも、めっき層61の表面粗さの方が小さくなる。すなわち、ディンプル部105が当接する面の表面粗さを小さくすることができる。このため、タング部21の揺動運動を滑らかにすることができ、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度をより一層向上させることができる。なお、めっき層61は、金めっきを施すことなく、ニッケルめっきのみにより構成されていてもよい。
【0063】
(変形例6)
当接凹部は、図12に示すような形態とすることもできる。図12に示す変形例6を具体的に説明すると、金属支持層20のタング部21には、絶縁層10を介して導体層70が積層されている。この導体層70は、本実施の形態における配線層30の一部を構成しているものである。すなわち、配線層30は、タング部21上に設けられた導体層70を有するように構成されており、当該導体層70は、配線31、ヘッド端子32とは分離されている。そして、ヘッドスライダ112は、導体層70に接着剤によって取り付けられると共に、当該導体層70に電気的に接続されている。
【0064】
タング部21には、タング部21を貫通し、ディンプル部105を受容するタング開口部71が設けられている。また、絶縁層10には、絶縁層10を貫通し、タング開口部71に連通した絶縁開口部72が設けられている。タング開口部71および絶縁開口部72は、例えば、平面視で円形状に形成することが好適である。
【0065】
導体層70は、絶縁開口部72内に設けられた導体貫通部73を有している。すなわち、導体層70の一部が、絶縁開口部72内に入り込むように形成されており、この絶縁開口部72内に入り込んだ部分が、導体貫通部73を構成している。このような導体貫通部73は、アディティブ法により形成することができる。なお、導体層70には、導体貫通部73に対応して導体凹部74が形成されており、この導体凹部74には、ヘッドスライダ112を取り付けるための接着剤が充填されるようになっている。
【0066】
また、導体層70の一部は、タング開口部71によって露出されている。すなわち、導体層70は、タング開口部71によってディンプル部105の側に露出した、ディンプル部105に当接する平坦状の当接面75を有している。変形例6においては、導体層70の当接面75は、導体貫通部73のディンプル部105の側の面となっており、絶縁層10のタング部21の側の面と略同一平面上に位置している。この当接面75を含む導体層70の露出された面には、めっき層76が形成されており、導体貫通部73を含む導体層70が腐食することを防止している。このめっき層76は、当接面75に、ニッケルめっきおよび金めっきがこの順に施されることにより形成されることが好ましいが、金めっきを施すことなく、ニッケルめっきのみが施されることにより形成されていてもよい。
【0067】
このようにして、変形例6においては、ロードビーム103のディンプル部105を受容して当該ディンプル部105に当接する当接凹部77は、タング開口部71と、導体層70の導体貫通部73の当接面75とにより構成されており、ディンプル部105は、タング開口部71に受容されて、導体貫通部73の当接面75にめっき層76を介して当接するように構成されている。なお、上述した実施の形態による当接凹部50と同様に、当接凹部77は、ロードビーム103のディンプル部105に対応するように、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0068】
このような変形例6によれば、ディンプル部105は、タング開口部71によって受容されて、タング開口部71によって露出された導体貫通部73の当接面75に当接する。このことにより、上述した実施の形態と同様に、ロードビーム103とタング部21との間のギャップをより一層低減することができ、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度をより一層向上させることができる。この場合、ディンプル部105に対するタング部21の位置は、タング開口部71によって規制することが可能である。
【0069】
また、変形例6によれば、ヘッドスライダ112が導体層70に電気的に接続され、当該導体層70の導体貫通部73の当接面75が、ロードビーム103のディンプル部105に当接している。このため、ヘッドスライダ112に蓄えられている静電気を、配線層30を構成する導体層70を介してロードビーム103に逃がすことができる。この場合、静電気は、タング部21を介することなく、例えば銅により形成された導電性の良好な導体層70を介してロードビーム103に流れるため、静電気を確実に逃がすことができ、ヘッドスライダ112の静電破壊(ESD)を防止することができる。
【0070】
(変形例7)
図13に示す変形例7においては、図12に示す変形例6とは、導体層70が絶縁開口部72に入り込んでいない点で相違している。すなわち、導体層70は、導体貫通部73を有することなく、略同一平面上に形成されており、導体層70の平坦状の当接面75は、絶縁層10の導体層70の側の面と、略同一平面上に配置されている。なお、導体層70には、図12に示すような導体凹部74は形成されていない。
【0071】
このようにして、変形例7においては、ロードビーム103のディンプル部105を受容して当該ディンプル部105に当接する当接凹部78は、タング開口部71と絶縁開口部72と導体層70の当接面75とにより構成されており、ディンプル部105は、タング開口部71および絶縁開口部72に受容されて、導体層70の当接面75にめっき層76を介して当接するように構成されている。なお、上述した実施の形態による当接凹部50と同様に、当接凹部78は、ロードビーム103のディンプル部105に対応するように、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0072】
このような変形例7によれば、ディンプル部105は、タング開口部71および絶縁開口部72によって受容されて、タング開口部71および絶縁開口部72によって露出された導体層70の当接面75に当接する。このことにより、上述した実施の形態と同様に、タング部21とロードビーム103との間のギャップをより一層低減することができ、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度をより一層向上させることができる。この場合、ディンプル部105に対するタング部21の位置は、タング開口部71および絶縁開口部72によって規制することが可能である。
【0073】
また、変形例7によれば、ヘッドスライダ112が導体層70に電気的に接続され、当該導体層70の当接面75が、ロードビーム103のディンプル部105に当接している。このため、ヘッドスライダ112に蓄えられている静電気を、配線層30を構成する導体層70を介してロードビーム103に逃がすことができ、ヘッドスライダ112の静電破壊を防止することができる。この場合、静電気は、タング部21を介することなく、例えば銅により形成された導電性の良好な導体層70を介してロードビーム103に流れるため、静電気を確実に逃がすことができ、ヘッドスライダ112の静電破壊(ESD)を防止することができる。
【0074】
(変形例8)
当接凹部は、図14に示す形態とすることもできる。図14に示す変形例8を具体的に説明すると、タング部21のディンプル部105の側の面に、ディンプル部105の周囲に配置された枠状(例えば、円形リング状)のめっき壁80が設けられている。ディンプル部105は、このめっき壁80によって受容されるようになっている。このめっき壁80は、タング部21に、ニッケルめっきおよび金めっきがこの順に施されることにより形成されることが好ましいが、金めっきを施すことなく、ニッケルめっきのみが施されることにより形成されていてもよい。
【0075】
タング部21は、めっき壁80により囲まれた、ディンプル部105に当接する平坦状の当接面81を有している。また、タング部21は、ヘッドスライダ112の側の面を含めて全体として平坦状に形成されている。
【0076】
このようにして、変形例8においては、ロードビーム103のディンプル部105を受容して当該ディンプル部105に当接する当接凹部82は、めっき壁80の内周面80aと、タング部21の当接面81とにより構成されており、ディンプル部105は、めっき壁80に受容されて、タング部21の当接面81に当接するように構成されている。なお、上述した実施の形態による当接凹部50と同様に、当接凹部82は、ロードビーム103のディンプル部105に対応するように、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0077】
このような変形例8によれば、ディンプル部105は、めっき壁80によって受容されて、タング部21の当接面81に当接する。このことにより、上述した実施の形態と同様に、ロードビーム103とタング部21との間のギャップを低減することができ、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。この場合、ディンプル部105に対するタング部21の位置は、めっき壁80によって規制することが可能である。
【0078】
また、変形例8によれば、タング部21のヘッドスライダ112の側の面が平坦状に形成されている。このことにより、ヘッドスライダ112のタング部21の側の面を、全域にわたって、タング部21に当接させることができ、ピエゾ素子104の伸縮によるタング部21の変位を、ヘッドスライダ112に確実に伝達させることができる。この結果、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。また、上述したようにヘッドスライダ112のタング部21の側の全面がタング部21に当接させるようにヘッドスライダ112がタング部21に取り付けられているため、ヘッドスライダ112とタング部21との接合強度を向上させることができる。これらのことは、ヘッドスライダ112が小型化されている場合に特に有利である。さらに、タング部21が全体として平坦状に形成されているため、タング部21の剛性を向上させることができる。
【0079】
(変形例9)
当接凹部は、図15に示す形態とすることもできる。図15に示す変形例9を具体的に説明すると、タング部21のディンプル部105の側の面に、めっき層83が設けられている。このめっき層83は、当接面75に、ニッケルめっきおよび金めっきがこの順に施されることにより形成されることが好ましいが、金めっきを施すことなく、ニッケルめっきのみが施されることにより形成されていてもよい。
【0080】
ロードビーム103のディンプル部105を受容して当該ディンプル部105に当接する当接凹部84は、当該めっき層83のディンプル部105の側の面に設けられている。この当接凹部84は、曲面状に形成されて、ディンプル部105の曲率より大きい曲率を有している。ところで、タング部21上にめっき層83を形成する際、めっき層83の表面は、厳密には平坦とはならずに、(図15においては誇張して示しているが)僅かに凹状に形成されることが一般的である。このため、このようにして形成された凹状の部分を当接凹部83とすることができる。なお、このような当接凹部84は、タング部21上にめっき層83を形成した後に、ハーフエッチングにより形成することもできる。また、当接凹部83は、めっき層83のディンプル部105の側の面の一部の領域に形成されていてもよく、当該面の全体にわたって形成されていてもよい。また、当接凹部83は、平面視で、円形状に形成されていてもよい。さらに、上述した実施の形態による当接凹部50と同様に、当接凹部84は、ロードビーム103のディンプル部105に対応するように、サスペンション101の長手方向軸線(X)上であって、ヘッドスライダ112の重心に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0081】
タング部21は、ヘッドスライダ112の側の面を含めて全体として平坦状に形成されている。
【0082】
このような変形例9によれば、ディンプル部105に対するタング部21の位置を、めっき層83に形成された当接凹部84によって規制することができる。このことにより、タング部21に取り付けられたヘッドスライダ112がディスク123に対して位置ずれすることを防止でき、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0083】
また、変形例9によれば、タング部21のヘッドスライダ112の側の面が平坦状に形成されている。このことにより、ヘッドスライダ112のタング部21の側の面を、全域にわたって、タング部21に当接させることができ、ピエゾ素子104の伸縮によるタング部21の変位を、ヘッドスライダ112に確実に伝達させることができる。この結果、ディスク123に対するヘッドスライダ112の位置合わせ精度を向上させることができる。また、上述したようにヘッドスライダ112のタング部21の側の全面がタング部21に当接させるようにヘッドスライダ112がタング部21に取り付けられているため、ヘッドスライダ112とタング部21との接合強度を向上させることができる。これらのことは、ヘッドスライダ112が小型化されている場合に特に有利である。さらに、タング部21が全体として平坦状に形成されているため、タング部21の剛性を向上させることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0085】
なお、本実施の形態においては、サスペンション101が、ヘッドスライダ112をスウェイ方向に微小移動させるための一対のピエゾ素子104を有している例について説明したが、このことに限られることはなく、サスペンション101がピエゾ素子104を有していなくてもよい。また、本実施の形態においては、接合部22のテール領域3側に、接合部23が設けられている例について説明したが、接合部23は設けられていなくてもよく、あるいは、接合部22のテール領域3の側に、2つ以上の接合部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 サスペンション用基板
2 ヘッド領域
3 テール領域
4 ヒンジ領域
10 絶縁層
20 金属支持層
21 タング部
22、23 接合部
22a、23a 溶接点
24 アウトリガー部
25 連結部
30 配線層
31 配線
32 ヘッド端子
33 テール端子
34 素子端子
40 保護層
50 当接凹部
60 円筒凹部
61 めっき層
70 導体層
71 タング開口部
72 絶縁開口部
73 導体貫通部
74 導体凹部
75 当接面
76 めっき層
77、78 当接凹部
80 めっき壁
80a 内周面
81 当接面
82 当接凹部
83 めっき層
84 当接凹部
101 サスペンション
102 ベースプレート
103 ロードビーム
103a ヒンジ部
103b ヒンジ開口部
103c 素子可撓部
104 ピエゾ素子
104a 電極
104b 圧電材料部
105 ディンプル部
106 ディンプル凹部
111 ヘッド付サスペンション
112 ヘッドスライダ
121 ハードディスクドライブ
122 ケース
123 ディスク
124 スピンドルモータ
125 ボイスコイルモータ
126 アーム
131 FPC基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドスライダが実装されるヘッド領域を有するサスペンション用基板と、
前記サスペンション用基板に取り付けられたロードビームと、を備え、
前記ロードビームは、前記サスペンション用基板の前記ヘッド領域の側に突出した、当該ヘッド領域を揺動自在に支持するディンプル部を有し、
前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ロードビームの前記ディンプル部を受容して当該ディンプル部が当接する当接凹部を有していることを特徴とするサスペンション。
【請求項2】
前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、
前記当接凹部は、前記タング部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション。
【請求項3】
前記ディンプル部は、曲面状に形成され、
前記当接凹部は、曲面状に形成されると共に、前記ディンプル部の曲率より大きい曲率を有していることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション。
【請求項4】
前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のサスペンション。
【請求項5】
前記当接凹部に、めっき層が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のサスペンション。
【請求項6】
前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部と、前記タング部に絶縁層を介して積層された、前記ヘッドスライダに電気的に接続される導体層と、を有し、
前記タング部に、当該タング部を貫通し、前記ディンプル部を受容すると共に前記導体層を露出させるタング開口部が設けられ、
前記導体層は、前記タング開口部によって露出した、当該ディンプル部が当接する当接面を有し、
前記当接凹部は、前記タング開口部と前記導体層の前記当接面とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション。
【請求項7】
前記導体層の前記当接面に、めっき層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のサスペンション。
【請求項8】
前記絶縁層に、当該絶縁層を貫通し、前記タング開口部に連通した絶縁開口部が設けられ、
前記導体層は、前記絶縁開口部内に設けられた導体貫通部を有し、
前記導体層の前記当接面は、前記導体貫通部の前記ディンプル部の側の面であることを特徴とする請求項6または7に記載のサスペンション。
【請求項9】
前記絶縁層に、当該絶縁層を貫通し、前記タング開口部に連通すると共に前記ディンプル部を受容する絶縁開口部が設けられ、
前記当接凹部は、前記タング開口部と前記絶縁開口部と前記導体層の前記当接面とにより構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載のサスペンション。
【請求項10】
前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、
前記タング部の前記ディンプル部の側の面に、当該ディンプル部の周囲に配置された、当該ディンプル部を受容する枠状のめっき壁が設けられ、
前記タング部は、前記めっき壁により囲まれた、前記ディンプル部に当接する当接面を有し、
前記当接凹部は、前記めっき壁の内周面と前記タング部の前記当接面とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション。
【請求項11】
前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のサスペンション。
【請求項12】
前記サスペンション用基板は、前記ヘッド領域に設けられた、前記ヘッドスライダが取り付けられるタング部を有し、
前記タング部の前記ディンプル部の側の面に、めっき層が設けられ、
前記当接凹部は、前記めっき層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション。
【請求項13】
前記ディンプル部は、曲面状に形成され、
前記当接凹部は、曲面状に形成されると共に、前記ディンプル部の曲率より大きい曲率を有していることを特徴とする請求項12に記載のサスペンション。
【請求項14】
前記タング部の前記ヘッドスライダの側の面は、平坦状に形成されていることを特徴とする請求項12または13に記載のサスペンション。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の前記サスペンションと、
前記サスペンションに実装された前記ヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項16】
請求項15に記載の前記ヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−97847(P2013−97847A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242235(P2011−242235)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】