説明

サンドイッチの具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なサンドイッチの具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、卵を主体としたサンドイッチの具としては、茹で卵を原料として、これをチョッパーにかけ、次いで、これをマヨネーズと和えたものが知られている。なお、このものは通常卵白部のサイズはチョッパーにかけたことにより2〜3mm程度の小片状になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、サンドイッチの具としてパンに挟んだものは、小片状の卵白はペースト化した卵黄に覆われて、全体として黄色が主体のペースト状として映り、見映えが必ずしもよいとは言えない。本発明の目的は、卵を主体として用いているけれども、見映えがよく、しかも食感上で咀しゃく感のあるサンドイッチの具を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成しようといろいろ検討し、ようやく本発明に到達した。すなわち本発明のサンドイッチの具は、加熱凝固卵白片と、冷却凝固材で固形化された卵黄片とを水中油型酸性乳化物で和えてあることを特徴とする。
【0005】以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明の説明において、「%」と表示するのは全て「重量%」を意味する。本発明において加熱凝固卵白片(以下、卵白片という)とは、卵白液を加熱凝固させた小塊状態にある固形物をいう。加熱凝固に使用する卵白の種類としては、生卵白、濃縮卵白、冷凍卵白を解凍したもの又は乾燥卵白を水戻ししたもののいずれか、もしくはこれらの混合品等があげられる。なお、割卵分離して得られる生卵白(固形分約10%)の固形分濃度をおよそ15〜20%程度にまで高めた濃縮卵白を使用すると、食感がより硬く、弾力に富んだ卵白片が得られる。卵白片のサイズや形状は特別に限定するものではないが、サイズとしては一辺が10mm以上の小片であることが好ましい。食べ易さや見映え等から、10〜20mm辺程度のサイズであることがさらに好ましい。好みのサイズや形状にする方法には、例えばダイサーやナイフ等で裁断する方法があげられる。また、卵白片は、本発明の目的を損なわない範囲で卵白以外の任意の原料・成分、例えば、さとう・食塩・グルタミン酸ソーダ・スパイス類・酸化防止材・キレート材(リン酸塩など)等を含んでいてもさしつかえない。
【0006】つぎに、本発明において冷却凝固材で固形化された卵黄片(以下、卵黄片という)とは、卵黄に冷却凝固材が混和させており、常温下でその混和物全体が冷却凝固材により固形化され小塊状態になっているものをいう。卵黄の種類としては、生の卵黄液、茹で卵の卵黄部をほぐしたもの、または卵黄粉等があげられる。また、卵黄片のサイズや形状は特に限定されるものではないが、見映えを考えると、サイズとしては一辺が5mm以上の小片であることが好ましい。食べ易さ等から、一辺のサイズが5〜20mm辺程度の小片であることがさらに好ましい。好みのサイズや形状にする方法には、例えば、ダイサーやナイフ等で裁断する方法があげられる。また、2mm以下のサイズに細かく潰した卵黄片の摩砕物を上記のダイス状の大きな卵黄片とは別に適量併存させると、茹で卵を粗く潰したときの卵黄の状態に近づいて、外観的により自然な状態を引き出せる。2mm辺以下の卵黄片は卵黄片の全体中の10〜30%程度が好ましい。
【0007】なお、冷却凝固材とは、そのもの自体またはそのものの水溶液が加熱により流動状となり、冷却により固体状になる性質を備えた物質をいう。具体的には、ゼラチンの類の蛋白質とか、寒天・LMペクチン・ジェランガム等の多糖類とか、パーム油・ラード・ヘッド等の常温固体脂等があげられる。これらを単品として用いても二種類以上の混合品として用いてもよい。食感の面からゼラチンもしくは融点が25℃以上のパーム油が特に適している。
【0008】固形化に用いる冷却凝固材の割合は、卵黄片全体量中、前記したゼラチンや多糖類の場合は、一般的に0.2〜6.0%配合するのが適しており、0.5〜4.0%配合であるとさらに好ましい。この配合に際しては、冷却凝固材は数%〜約15%濃度の水溶液にして用いると使い易い。なお、冷却凝固材が常温固体脂の場合には、卵黄片の全体量中5〜20%配合するのが適しており、7〜18%配合であるとさらに好ましい。冷却凝固材の配合割合が少ないと卵黄片の強度が不足し、多すぎると冷却凝固材の特性に強い影響を受けて、食感が硬すぎたり、卵黄特有の風味を損なうことになる。また、多糖類としてLMペクチンを用いる場合には、必要に応じて塩化カルシウム等のカルシウム塩水溶液を添加してもよい。
【0009】次に本発明において水中油型酸性乳化物とは、酸性の水相中に食油の多数の微粒子が分散した状態のものをいう。具体的には、マヨネーズや各種のドレッシングソース等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】本発明のサンドイッチの具は、前記した卵白片と卵黄片とを水中油型酸性乳化物で和えてある。和える場合の卵白片と卵黄片および水中油型酸性乳化物の割合は、マヨネーズ等で和えて製する卵サラダでの配合比率に準じ、卵白片が約20〜約70%、卵黄片が約10〜約60%および水中油型酸性乳化物が約10〜約50%が一般的である。
【0011】サンドイッチの具とは、サンドイッチのフィリング材をいう。具体的には、卵サラダや卵スプレッド等があげられる。この具を挟むものは任意であり、例えば、スライスした食パンとか、ホットドッグ用等のロールパン等があげられる。なお、本発明のサンドイッチの具には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記した以外の任意の副材、例えば、茹でたポテトや玉ネギ等のきざんだものを添加してあっても支障がない。
【0012】次に、本発明のサンドイッチの具の代表的な製造方法を説明する。まず、卵白を加熱凝固させ卵白片とする。この際、卵白としては、生卵白、濃縮卵白または乾燥卵白を水戻ししたもの等を使用する。加熱凝固させるには、例えば、卵白をケーシング等の適当な容器に詰めて湯浴中で加熱処理する。加熱凝固させたものはそのままでもよいが、好みのサイズや形状、例えば、一辺が約15mm程度のダイス状にしたければ、適当な器具等で裁断する。裁断には、一般的にはダイサーやナイフ等を使用する。
【0013】一方、使用する冷却凝固材が蛋白質系か多糖類系の場合は、約0.4%〜約15%濃度の水溶液にしたものを準備し、これを加熱して溶解状態にする。冷却凝固材が常温固体脂の場合には、加熱して溶融状態にする。そして次に、この溶解もしくは溶融した状態にある冷却凝固材を攪拌しながら卵黄を徐々に添加していき、全体を均一に混和する。冷却凝固材には、例えばゼラチン、寒天、パーム油等を使用する。また、卵黄には、例えば、卵黄液または卵黄粉もしくは茹で卵の卵黄部を細かくほぐしたもの等を使用する。このようにして得られた混和物を冷却凝固させて卵黄片とする。この時、混和物を熱いうちに適当な容器、例えばケーシング等に充填してから冷却させてもよい。好みのサイズや形状、例えば、一辺が約10mm程度のダイス状にしたければ、適当な器具等で裁断する。裁断には、一般的にはダイサーやナイフ等を使用する。
【0014】上記の卵白片と卵黄片および水中油型酸性乳化物の三者を前記した比率で配合し、適度に混和してサンドイッチの具とする。水中油型酸性乳化物には、例えばマヨネーズ等を使用する。
【0015】
【作用】本発明で、卵黄片は冷却凝固材で固形化して小塊状態としたものが材料として使用してあるので、任意の大きさのものとすることができ、ひいては、サンドイッチの具として食するときにも、また固形化された卵黄による咀しゃく感も楽しむことができる。また、卵白も加熱凝固卵白片であり、必要により大きさは任意であるので、そのサイズを大きめとすれば、固形の卵白片の白色と、同じ固形である卵黄片の黄色とのコントラストも鮮やかであり、従来のタマゴベースのサンドイッチの具と比べ、比べ物にならないほど見映えの良い具となる。
【0016】
【実施例】
実施例1下記の配合及び手順でサンドイッチの具を製造した。90℃に加熱した4%濃度のゼラチン水溶液を準備し、これに卵黄粉を徐々に添加しながら分散・混和させる。均一になったら、これを直径が約6.5cmのケーシングに充填し、そのまま冷却凝固させ、充分に凝固したなら一辺のサイズが約10mmのダイス状にナイフで細断して卵黄片を製した。
原料の種類 配合(%)
卵黄粉 50 4%濃度のゼラチン水溶液 50 合 計 100%また、生卵白を直径が約6.5cmのケーシングに充填してから、95℃の湯浴中に浸漬し、そのまま30分間加熱して凝固させる。これを流水中で1時間冷却して品温を常温まで下げて加熱凝固卵白を得る。次にこれを一辺のサイズが約15mmのダイス状にナイフで細断して卵白片とした。そして、この卵白片と上記の卵黄片及びマヨネーズの三者をそれぞれほぼ等量にして和えることによりサンドイッチの具を製造した。
原料の種類 配合(%)
卵黄片 33卵白片 33マヨネーズ 34合 計 100%こうして得られたサンドイッチの具を用いてつくったサンドイッチは、卵黄片と卵白片とがバランスよく配分され、卵黄と卵白との色彩のコントラストも際立ち、視覚的に卵リッチな高級感と美味感を引き出すことができた。
【0017】実施例2卵黄片をつくる際に、90℃に加熱した8%濃度のゼラチン水溶液の中に、卵黄液を徐々に添加して混和する方法で卵黄片を製した。卵黄片の配合は下記の通りである。
原料の種類 配合(%)
卵黄液 80 8%濃度のゼラチン水溶液 20 合 計 100%また、こうして得られた卵黄片の一部をチョッパーに通して、一辺のサイズを約1mmに砕いたものも準備し、サンドイッチの具の原料に供した。なお、それ以外は全て実施例1の手順に従ってサンドイッチの具を製造した。配合は下記の通りである。
原料の種類 配合(%)
卵黄片(一辺が10mm) 27卵黄片(一辺が1mm) 6卵白片 33マヨネーズ 34合 計 100%
【0018】実施例3卵黄液の代わりに茹卵の卵黄部を用いた以外は、全て実施例2の手順に従ってサンドイッチの具を製造した。なお、茹で卵の卵黄部は使用し易いように、あらかじめ適度なサイズに細かくほぐしておいた。卵黄片の配合は下記の通りである。
原料の種類 配合(%)
茹で卵の卵黄部 80 8%濃度のゼラチン水溶液 20 合 計 100%
【0019】実施例460℃に加熱溶融したパーム油中に、50%濃度で卵黄粉を溶解させた水溶液を徐々に添加しながら分散・混和させる。これを直径が約6.5cmのケーシングに充填し、そのまま冷却凝固させたあと、ほぼ10mm角にナイフで裁断して卵黄片を製した。その他は全て実施例1の手順に従ってサンドイッチの具を製造した。卵黄片の配合は下記の通りである。
原料の種類 配合(%)
50%濃度の卵黄粉水溶液 85 パーム油(融点25℃) 15 合 計 100%
【0020】
【試験例】試験例として、卵黄片をつくる際のゼラチン水溶液の濃度を0.4〜12%の5段階にした他は、全て実施例1と同じ条件にして本発明品のサンドイッチの具をつくった。一方、卵黄片をつくる際のゼラチン水溶液の濃度が0%である他は実施例1と同じ条件にしてつくったサンドイッチの具を比較品とした。こうしてつくった本発明品5種類と、比較品について、それぞれ外観上の見映えや食感上の咀しゃく感等を比較した。本発明品は、比較品と比べてサンドイッチの具として好ましいものであった。結果を表1に示す。
【表1】


【0021】
【発明の効果】本発明により、卵白による白色と、卵黄による黄色とのコントラストも鮮やかであり、また、両者が片状をなすことによる咀しゃく感も楽しむことができる新規なサンドイッチの具が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱凝固卵白片と、冷却凝固材で固形化された卵黄片とを水中油型酸性乳化物で和えてあることを特徴とするサンドイッチの具。
【請求項2】 加熱凝固卵白片のサイズが約10mm以上である請求項1記載のサンドイッチの具。
【請求項3】 卵黄片のサイズが約5mm以上である請求項2記載のサンドイッチの具。
【請求項4】 サイズが約2mm以下の卵黄片が含まれる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のサンドイッチの具。

【特許番号】特許第3290523号(P3290523)
【登録日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【発行日】平成14年6月10日(2002.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−276861
【出願日】平成5年11月5日(1993.11.5)
【公開番号】特開平7−123951
【公開日】平成7年5月16日(1995.5.16)
【審査請求日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【参考文献】
【文献】特開 昭55−9708(JP,A)
【文献】特開 昭57−74040(JP,A)
【文献】特開 昭59−39269(JP,A)