説明

サンプリングバッグ及び採血器具

【課題】血液を真空採血管内に採取する際、真空採血管内に空気が混入することがないサンプリングバッグ及び採血器具を提供すること。
【解決手段】バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)と第3仕切部(P3)を形成し、血液(BL)を空のバッグ本体(21)に貯留した後は、血液溜(S1)内に血液(BL)が一杯に満たされるとともに、空気溜(S2)内に、血液溜(S1)内に最初に存在した空気(A)と血液溜(S1)内に最初に貯留された血液(BL)が部分的に満たされ、バッグ本体(21)から血液(BL)を採取する際には、最初は血液溜(S1)に血液(BL)が一杯に満たされ、血液溜(S1)内の血液(BL)が残り少なくなっても、血液溜(S1)内の血液の出口(24)側は、血液(BL)に満たされた状態に維持されるサンプリングバッグ(B)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初流血液を採取するとともに、検査用血液の採取を容易に行うことのできるサンプリングバッグ及び採血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
採血針から採取した血液を血液バッグに導入する際、供血者の穿刺位置をアルコール等で消毒を行うが、消毒を行っても、皮膚や皮下に存在する細菌が採取した血液の中に混入することがある。
混入した細菌は、細菌の種類によっては、血液バッグを保存している間にも増殖し、細菌の増殖に気づくことなく輸血などに用いられると、輸血された患者に感染症などを引き起こし、重篤な事態となるおそれもある。
そこで、採取された血液の細菌汚染防止を図ることができるように、特に採血時の初流の血液を除去するシステムが発明されるようになった。
【0003】
特許文献1の図1、図4、特許文献2の図1、図2等に記載のように、初流血の採血は、サンプリングバッグ(容器)に初流血を貯め、サンプリングバッグの下部に付属したサンプリングホルダに真空採血管を挿入し、真空採血管内に初流血を導いている。
また採血時、サンプリングバッグは通常、採血者の採血部位より下方に位置し、落差にてバッグ内に初流血を貯めるようにしている。
しかしながら、バッグ内に貯まった初流血は、真空採血管によって、バッグ下部に接続されたサンプリングホルダから採られるが、サンプリングホルダがバッグの下部にあるため、作業者は腰をかがめたりしゃがんだりといった低い姿勢で真空採血管を操作しなければならなかった。
【0004】
また特許文献2は図2D、[0038]に記載のように、サンプリング容器42の口部に特許文献3のYコネクタを使用して、サンプリングホルダ68を装着し、当該サンプリングホルダ68に真空採血管を装着するようにしている。
特許文献2には落差による採血についての記載がないが、通常、サンプリング容器(サンプリングバッグ)は上腕より20〜30cmほど下で採血するようになるため、サンプリングホルダは、サンプリング容器より20〜30cmほど上に位置する方が操作がしやすい。
しかし、特許文献2ではサンプリング容器42にY字管(Yコネクタ)を介してサンプリングホルダ68を接続しているため、サンプリングホルダ68がサンプリング容器42に接近して配置されるため、やはり従来のように落差を利用すると、サンプリングホルダ68の位置が低くなり、作業者は屈んだりしゃがんだりしなければならず、真空採血管の操作性が悪くなる。
さらに配管セグメント62(血液導入チューブ)を容器42内部に伸長することになっているため、チューブ下端が容器42の底部からずれたり、潰れ、曲がりといったチューブの変形が起こったりする可能性がある。
【特許文献1】特開2001−17539(図1、図4)
【特許文献2】特表2003−505185(図1、図2、図2D)
【特許文献3】特許3326501(図5〜図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、
(1)採血初流除去バッグ(サンプリングバッグ)に採取した血液を、真空採血管ホルダ等の外部への血液採取手段から真空採血管へと採取する際、どうしても真空採血管内に空気を取り込んでしまう点、
(2)また、空気を取り込まないようにするためには、血液バッグの構成上、採血時には採血初流除去システムが低位置にあることから、作業者が屈みこんだりしゃがんだりといった無理な体勢から血液を採取しなければならない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、バッグ本体(21)の上部に初流血液の入口(23)を形成し、バッグ本体(21)の下部に初流血液の出口(24)を形成し、
前記バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)と第3仕切部(P3)を形成し、
前記第1仕切部(P1)は、前記入口(23)から、前記バッグ本体(21)の略斜め下方向に形成し、
前記第2仕切部(P2)は、前記バッグ本体(21)の略縦方向に形成し、当該バッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
前記第3仕切部(P3)は、前記第2仕切部(P2)の上端部から連続して略斜め上方向に形成し、
血液(BL)を空のバッグ本体(21)に貯留した後は、
前記血液溜(S1)内に血液(BL)が一杯に満たされるとともに、前記空気溜(S2)内に、血液溜(S1)内に最初に存在した空気(A)と血液溜(S1)内に最初に貯留された血液(BL)が部分的に満たされ、
バッグ本体(21)から血液(BL)を採取する際には、最初は血液溜(S1)に血液(BL)が一杯に満たされ、血液溜(S1)内の血液(BL)が残り少なくなっても、血液溜(S1)内の血液の出口(24)側は、血液(BL)に満たされた状態に維持されるサンプリングバッグ(B)を提供する。
[2]本発明は、バッグ本体(21)の上部に初流血液の入口(23)を形成し、バッグ本体(21)の下部に初流血液の出口(24)を形成し、
前記バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)と第3仕切部(P3)を形成し、
前記第1仕切部(P1)は、前記入口(23)から、前記バッグ本体(21)の略斜め下方向に形成し、
前記第2仕切部(P2)は、前記バッグ本体(21)の略縦方向に形成し、当該バッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
前記第3仕切部(P3)は、前記第2仕切部(P2)の上端部から連続して略斜め上方向に形成し、
前記第1仕切部(P1)と前記バッグ本体(21)上部間に、血液通路(W1)を形成し、当該血液通路(W1)の端部に第1開放部(O1)を形成し、
前記第2仕切部(P2)と前記バッグ本体(21)上部間に、第2開放部(O2)を形成し、
前記第3仕切部(P3)と前記バッグ本体(21)上部間に、空気通路(W2)を形成し、当該空気通路(W2)の端部に第3開放部(O3)を形成し、
前記空気通路(W2)は、前記第2開放部(O2)及び前記第3開放部(O3)を経て、前記血液溜(S1)と前記空気溜(S2)とを連通し、
前記初流血液の入口(23)は、前記血液通路(W1)と前記第1開放部(O1)を経て、前記血液溜(S1)と連通し、
当該血液溜(S1)は、前記初流血液の出口(24)と連通し、
前記血液溜(S1)は、前記第2開放部(O2)、前記空気通路(W2)及び前記第3開放部(O3)を経て、前記空気溜(S2)と連通しているサンプリングバッグ(B)を提供する。
[3]本発明は、前記第1開放部(O1)、前記第2開放部(O2)及び前記第3開放部を、バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)側に配置した[1]または[2]に記載のサンプリングバッグ(B)を提供する。
[4]本発明は、血液溜(S1)の容量は、空気溜(S2)の容量よりも大きく形成した[1]から[3]のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)を提供する。
[5]本発明は、前記サンプリングバッグ(B)の初流血液の出口(24)に、外部容器への血液採取手段(22)を形成した[1]から[4]のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)を提供する。
[6]本発明は、血液を採取する親バッグ(4)と複数の子バッグ(5、6)からなる採血器具(1)であって、
上流に採血針(8)を接続した採血チューブ(T1)の途中に配置された分岐管(13a)に、初流血液導入チューブ(T2)を接続し、当該初流血液導入チューブ(T2)の下流に[1]から[5]のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)を接続したことを特徴とする採血器具(1)を提供する。
【発明の効果】
【0007】
(1)本発明のサンプリングバッグBは、バッグ本体21から血液BLを採取する際には、最初は血液溜S1内に血液BLが一杯に満たされ、血液溜S1内の血液BLが残り少なくなっても、血液溜S1内の血液の出口24側は、血液BLで満たされた状態に維持されるので、血液BLをバッグ本体21の下部に形成した出口24、血液採取手段22を経て、真空採血管27内に採取する際、真空採血管27内に空気Aが混入することがない。
(2)本発明のサンプリングバッグBは、血液採取手段22を下に向けた場合でも、または上に向けた場合でも、バッグ本体21内に溜まった血液を、空気を混入させることなく、真空採血管27で採血することができる。
(3)(2)により、従来のように落差を利用しなくても、サンプリングバッグBからサンプリング用の血液を真空採血管27に採取することができるため、サンプリング用の血液採取時には、作業者は腰をかがめたりしゃがんだりすることなく、楽な姿勢で容易に作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明のサンプリングバッグBの概略図、図2はサンプリングバッグBを接続した採血器具1の概略図、図3はサンプリングバッグBの初流血液採取時の血液BLの流れの状態図で、(A)は初流血液採取開始時、(B)は初流血液採取時、(C)は初流血液採取終了時である。
図4は、サンプリングバッグBのサンプリング用の血液採取の状態図で、(A)はサンプリング用の血液採取開始時、(B)はサンプリング用の血液採取時、(C)はサンプリングバッグBを逆さにした場合のサンプリング用の血液採取開始時である。
【0009】
[サンプリングバッグB]
サンプリングバッグBは、採血時等に、供血者の初流血液をサンプリングバッグBに採取することで、針穿刺部の皮膚や皮下に存在する細菌等の混入を防止するとともに、サンプリングバッグB内に採取した初流血液を、検査用の血液としても用いるためのものである。
サンプリングバッグBは、図1に例示するように、バッグ本体21の上部に初流血液の入口23を形成し、バッグ本体21の下部に初流血液の出口24を形成している。
バッグ本体21内部に、第1仕切部P1と第2仕切部P2と第3仕切部P3を形成している。
第1仕切部P1は、バッグ本体21の略斜め下方向に形成している。
第2仕切部P2は、前記バッグ本体21の略縦方向に形成し、バッグ本体21内部を、血液溜S1と空気溜S2に区画している。
第3仕切部P3は、第2仕切部P2の上端部から連続して略斜め上方向に形成している。
【0010】
本発明のサンプリングバッグBの基本的な性能は以下の通りである。
血液BLを、空のバッグ本体21に貯留した後は、血液溜S1内に血液BLが一杯に満たされるとともに、空気溜S2内に、血液溜S1内に最初に存在した空気Aと血液溜S1内に最初に貯留された血液BLとが部分的に満たされる。
バッグ本体21から血液BLを採取する際には、最初は血液溜S1内に血液BLが一杯に満たされ、血液溜S1内の血液BLが残り少なくなっても、血液溜S1内の血液の出口24側は、血液BLに満たされた状態に維持される。
このため、血液BLをバッグ本体21の下部に形成した血液出口24、血液採取手段22を経て、真空採血管27に採取する際、真空採血管27に空気が混入することがない。
さらに詳述すればサンプリングバッグBは、図1に例示するように、第1仕切部(P1)とバッグ本体(21)上部間に、血液通路(W1)を形成し、血液通路(W1)の血液溜S1側の端部に第1開放部(O1)を形成している。
第2仕切部(P2)とバッグ本体(21)上部間に、第2開放部(O2)を形成している。
第3仕切部(P3)とバッグ本体(21)上部間に、空気通路(W2)を形成し、空気通路(W2)の空気溜S21側の端部に第3開放部(O3)を形成している。
初流血液の入口(23)は、血液通路(W1)と第1開放部(O1)を経て、血液溜(S1)と連通している。
血液溜(S1)は、初流血液の出口(24)と連通し、さらに血液溜(S1)は、第2開放部(O2)、空気通路(W2)及び第3開放部(O3)を経て、空気溜(S2)と連通している。
【0011】
第1仕切部P1、第2仕切部P2、第3仕切部P3は、例えば熱溶着等の手段により形成される。血液溜S1の容量は空気溜S2の容量よりも大きく区画され、具体的には血液溜S1の容量は、おおむね20〜25mlが好ましく、一方の空気溜S2の容量は、10〜15mlが好ましい。
また、血液通路W1の幅は、おおむね2〜10mm程度に設定して形成するのが好ましい。この血液通路W1の幅が狭すぎると、血液を採取する際に、血液溜S1へと血液がスムーズに導入できない可能性があり、逆に血液通路W1があまりに広すぎると、血液が確実に血液溜S1の上部に空気を押し上げられないなどといったおそれがあるため、好ましくない。
なお、第1開放部O1(非溶着部分)、空気通路W2、第2開放部O2(非溶着部分)及び第3開放部O3(非溶着部分)の幅についても、血液通路W1の幅の設定と同様の理由により、2〜10mm程度に設定するのが好ましい。
さらに詳述すれば本発明のサンプリングバッグBは、第1仕切部P1、第2仕切部P2、第3仕切部P3のそれぞれ第1開放部O1、第2開放部O2、第3開放部O3を、バッグ本体21の初流血液の入口23側に、配置することにより、血液は血液溜S1の底部から溜まり、不要な空気は第2開放部O2、第3開放部O3から空気溜S2へと追いやられる。血液が空気溜S2に貯まっても、比重が血液より軽い空気は、必ず空気溜S2の上部に溜まる。
したがって、血液をバッグ本体21の下部に形成した血液出口24、血液採取手段22を経て、真空採血管27に採取する際、真空採血管27内に空気が混入することがない。
【0012】
[採血器具1]
本発明の採血器具1は、血液を採取する親バッグ4と複数の子バッグ5、6からなる。具体的には、例えば図2に示すように、親バッグ4の上流に採血チューブT1を接続し、採血チューブT1の上端に採血針8を接続し、採血チューブT1の途中に分岐管13aを配置し、この分岐管13aに、初流血液導入チューブT2を接続し、初流血液導入チューブT2の下端に、サンプリングバッグBを接続している。
分岐管13aとサンプリングバッグB間の初流血液導入チューブT2の途中には、クランプ11aを装着している。
また、親バッグ4と分岐管13aの採血チューブT1の途中には、流路閉塞手段12を装着している。
流路閉塞手段12は、図1に例示するように採血チューブT1の内側に配置される連通ピース12(一部を破断して液体流路を開通するもの)でもよいし、図2に例示するように各チューブT2、T3の外側に装着し、その開閉により液体流路を開通・閉塞できるクランプ11a、11bでもよい。
さらに親バッグ4の下流には、連結チューブT3を介して血液フィルタ3及び第1子バッグ5を接続している。さらに第1子バッグ5は、連結チューブT4、分岐管13b、連結チューブT5、T6を介して、それぞれ第2子バッグ6、赤血球保存液入バッグ7を接続している。
親バッグ4及び赤血球保存液入りバッグ7には、採血時または輸血保存時における血液の凝固の防止または保存のために、例えばACD液、CPD液、MAP液のような抗凝固剤または赤血球保存液を収納している。
【0013】
[血液採取手段(サンプリングホルダ)22]
サンプリングバッグB内に採取した血液を、検査等のために外部容器へ採取する手段(血液採取手段22)として例えば図1に示すように、バッグ本体21の下部(初流血液の入口23の反対側)に形成した初流血液の出口24に、サンプリングホルダ22を装着することができる。または図示しないが、このサンプリングホルダ22の代わりに、コネクタ付きチューブ(チューブ先端にコネクタを接続したもの)等を装着してもよい。要するに、血液採取手段22は、外部容器に血液を採取することが可能であれば、何でも採用することができる。
血液採取手段22の具体的な手段として、図1に例示するようなサンプリングホルダ22を採用する場合、サンプリングバッグBの下部に形成した出口24に、初流血液の採取針25を装着し、採取針25の外周にはサンプリングホルダ22を装着する。
なお、採取針25はシース26で覆うのが好ましい。
【0014】
サンプリングバッグB及び採血器具1のバッグ類を構成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の可撓性合成樹脂が用いられる。
【0015】
[サンプリングバッグBの使用例]
次に本発明のサンプリングバッグBと血液採取手段(サンプリングホルダ)22を採用した場合の使用方法の一例について説明する。
以下に詳細な使用方法の一例について詳述する。
(1:初流血液採取時)
供血者の初流血液を、採血針8から分岐管13a、初流血液導入チューブT2を経て、サンプリングバッグBのバッグ本体21内に導入する。初流血液は、入口23から血液通路W1を通って、第1開放部O1を経て血液溜S1に貯留される。
血液通路W1は初流血液を確実に血液溜S1に導き、血液溜S1に血液が貯留されるにしたがって、当初の血液溜S1内の空気は、血液の流体圧力に押されて図3(A)のように血液溜S1の上部へと追いやられていく。
サンプリングバッグBの初流血液の入口(第1開放部O1)がバッグ本体21の上部側面近くにあるため、血液BLは上部側面から血液溜S1の底部へと溜まっていく。図3Aのように、血液BLが血液溜S1の底部から中間部に溜まるにつれて、血液溜S1内の空気Aは血液BLに追い出されて、上部に移動する。
さらに血液溜S1内に血液BLが溜まると、血液溜S1の空気Aは空気通路W2を通って空気溜S2へと移動していく。
このとき、血液BLが、血液通路W1から血液溜S1内に流入し続けているため、空気Aは血液通路W1に入る(逆流する)ことはなく、血液溜S1内から空気通路W2に沿って移動し、空気溜S2へと入っていく。
図3(B)のように、血液溜S1の空気Aが空気溜S2にすべて移動し、血液溜S1が血液BLで満杯になると、さらに血液BLは空気通路W2から空気溜S2に入り、空気溜2の底部から溜まっていく。
この空気溜S2への血液BLの流入は、血液溜S1内の(血液BLの)圧力と空気溜S2内の(空気A及び血液BLの)圧力が同等(平衡)になった時点で、初流血液導入チューブT2からの血液BLの流入が止まる。
血液BLの流入が止まった時点[血液溜S1の圧力と空気溜S2の圧力が同等(平衡)になった時点]で、図3(C)のように、血液溜S1内は血液のみで満たされ、空気溜S1内は下方に血液BL、上方に空気Aが溜まった状態になる。
【0016】
(2:初流血液採取終了時)
(1)により、初流血液の採取が規定量に達した時点(血液BLの流入が止まった時点)で、クランプ11aを閉じてサンプリングバッグBへの血液BLの流れを遮断する。その後、連通ピース12を破断して採血チューブT1の親バッグ4への流路を開放し、親バッグ4に血液を貯留する。
【0017】
(3:サンプリング時)
一方、サンプリングバッグBからサンプリング用の血液を採取する際は、図4(A)に示すように、従来のようにバッグ本体21の下部に位置する出口24に接続した血液採取手段(サンプリングホルダ)22内に真空採血管27を挿入し、採血針25に真空採血管27の口部(栓体)を穿刺することにより、血液溜S1内の血液BLは初流血液の出口24から採血針25を経て、真空採血管27に導くことができる。出口24から導かれた血液BLは、真空採血管27へと採取される。
このとき、血液溜S1は血液BLだけで満たされているため、空気Aが混入することなく、サンプリング用の血液を真空採血管27に採取することができる。
また、血液溜S1の血液BLが真空採血管27に採取されていくと、次第に血液溜S1の血液BLが少なくなるとともに血液溜S1内の圧力が低下し、空気溜S2の空気Aが空気通路W2を逆流して血液溜S1に移動してくるが、図4(B)のように、移動した空気Aは血液BLよりも比重が軽いので、血液溜S1内で、ただちに血液BLよりも上方に移動するため、真空採血管27へ空気Aが混入することはない。
【0018】
また、本発明のサンプリングバッグBでは、上述に限らず、採血の状況等に応じて、サンプリングホルダ22が上方を向くようにバッグ本体21を逆さにして採血することも可能である。
図4(C)に例示するように、サンプリングバッグBを倒立させる(逆さにする)前には空気溜S2内の上部(空気通路W2側)にあった空気Aは、サンプリングバッグBを倒立させる(逆さにする)ことで、下部となった空気通路W2側から上部となったサンプリングホルダ22側へと上昇し、この空気Aと入れ替わりに血液BLは、下部となった空気通路W2側へと下降する。
このように、サンプリングバッグBを逆さにした場合でも、血液溜S1は血液BLに満たされたままであるため、サンプリングホルダ22より真空採血管27に空気Aが混入することなくサンプリング用の血液を採取できる。
真空採血管22への血液BLの採取により、血液溜S1内の圧力が次第に低下していくと、空気溜S2の血液BLが空気通路W1から血液溜S1へと移動し、最後まで空気Aが混入することなく、サンプリングバッグB内の血液BLを真空採血管27に採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のサンプリングバッグBの概略図
【図2】サンプリングバッグBを接続した採血器具1の概略図
【図3】サンプリングバッグBの初流血液採取時の血液BLの流れの状態図(A)初流血液採取開始時(B)初流血液採取時(C)初流血液採取終了時
【図4】サンプリングバッグBのサンプリング用の血液採取の状態図(A)サンプリング用の血液採取開始時(B)サンプリング用の血液採取時(C)サンプリングバッグBを逆さにした場合のサンプリング用の血液採取開始時
【符号の説明】
【0020】
B サンプリングバッグ(採血初流除去バッグ)
1 採血器具
3 血液フィルタ
4 親バッグ
5 第1子バッグ
6 第2子バッグ
7 赤血球保存液入バッグ
8 採血針
10 針カバー
11a、11b クランプ
12 流路閉塞手段(連通ピース)
13a、13b 分岐管
22 血液採取手段(サンプリングホルダ)
23 (初流血液の)入口
24 (初流血液の)出口
25 (初流血液の)採取針
26 シース
27 真空採血管
S1 血液溜
S2 空気溜
P1 第1仕切部
P2 第2仕切部
P3 第3仕切部
W1 血液通路
W2 空気通路
T1 採血チューブ
T2 初流血液導入チューブ
T3、T4、T5、T6 連結チューブ
O1 第1開放部(非溶着部分)
O2 第2開放部(非溶着部分)
O3 第3開口部(非溶着部分)
A 空気
BL 血液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ本体(21)の上部に初流血液の入口(23)を形成し、バッグ本体(21)の下部に初流血液の出口(24)を形成し、
前記バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)と第3仕切部(P3)を形成し、
前記第1仕切部(P1)は、前記入口(23)から、前記バッグ本体(21)の略斜め下方向に形成し、
前記第2仕切部(P2)は、前記バッグ本体(21)の略縦方向に形成し、当該バッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
前記第3仕切部(P3)は、前記第2仕切部(P2)の上端部から連続して略斜め上方向に形成し、
血液(BL)を空のバッグ本体(21)に貯留した後は、
前記血液溜(S1)内に血液(BL)が一杯に満たされるとともに、前記空気溜(S2)内に、血液溜(S1)内に最初に存在した空気(A)と血液溜(S1)内に最初に貯留された血液(BL)が部分的に満たされ、
バッグ本体(21)から血液(BL)を採取する際には、最初は血液溜(S1)に血液(BL)が一杯に満たされ、血液溜(S1)内の血液(BL)が残り少なくなっても、血液溜(S1)内の血液の出口(24)側は、血液(BL)に満たされた状態に維持されることを特徴とするサンプリングバッグ(B)。
【請求項2】
バッグ本体(21)の上部に初流血液の入口(23)を形成し、バッグ本体(21)の下部に初流血液の出口(24)を形成し、
前記バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)と第3仕切部(P3)を形成し、
前記第1仕切部(P1)は、前記入口(23)から、前記バッグ本体(21)の略斜め下方向に形成し、
前記第2仕切部(P2)は、前記バッグ本体(21)の略縦方向に形成し、当該バッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
前記第3仕切部(P3)は、前記第2仕切部(P2)の上端部から連続して略斜め上方向に形成し、
前記第1仕切部(P1)と前記バッグ本体(21)上部間に、血液通路(W1)を形成し、当該血液通路(W1)の端部に第1開放部(O1)を形成し、
前記第2仕切部(P2)と前記バッグ本体(21)上部間に、第2開放部(O2)を形成し、
前記第3仕切部(P3)と前記バッグ本体(21)上部間に、空気通路(W2)を形成し、当該空気通路(W2)の端部に第3開放部(O3)を形成し、
前記空気通路(W2)は、前記第2開放部(O2)及び前記第3開放部(O3)を経て、前記血液溜(S1)と前記空気溜(S2)とを連通し、
前記初流血液の入口(23)は、前記血液通路(W1)と前記第1開放部(O1)を経て、前記血液溜(S1)と連通し、
当該血液溜(S1)は、前記初流血液の出口(24)と連通し、
前記血液溜(S1)は、前記第2開放部(O2)、前記空気通路(W2)及び前記第3開放部(O3)を経て、前記空気溜(S2)と連通していることを特徴とするサンプリングバッグ(B)。
【請求項3】
前記第1開放部(O1)、前記第2開放部(O2)及び前記第3開放部を、バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)側に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサンプリングバッグ(B)。
【請求項4】
血液溜(S1)の容量は、空気溜(S2)の容量よりも大きく形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)。
【請求項5】
前記サンプリングバッグ(B)の初流血液の出口(24)に、外部容器への血液採取手段(22)を形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)。
【請求項6】
血液を採取する親バッグ(4)と複数の子バッグ(5、6)からなる採血器具(1)であって、
上流に採血針(8)を接続した採血チューブ(T1)の途中に配置された分岐管(13a)に、初流血液導入チューブ(T2)を接続し、当該初流血液導入チューブ(T2)の下流に請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサンプリングバッグ(B)を接続したことを特徴とする採血器具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−100868(P2009−100868A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273952(P2007−273952)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】