説明

サーバルームおよびサーバルームの空調方法

【課題】 本発明は、サーバ等の電子機器を収納するサーバルームの空調に関するものである。
【解決手段】 本発明のサーバルームは、発熱機器を設置した機器設置空間と、機器設置空間の床下に設けられた床下空間と、機器設置空間で暖められた暖気を取込み、圧縮液化した冷媒の気化熱で暖気を冷却して冷気とし、冷気を床下空間に送出するベース空調機と、ベース空調機が取り込む暖気の一部を床下空間にバイパスする暖気導入通路と、暖気導入通路中に設置され、バイパスされた暖気が吹きつけられて吸着剤に吸着した冷媒を気化し、気化に基づく気化熱により暖気を冷却して床下空間に流出する補助冷却器とを備える、よう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ等の電子機器を収納するサーバルームの空調に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバを収容するサーバルームでは、サーバを誤動作なく稼働させるために設定温度範囲を維持する空調システムが不可欠となっている。このような空調システムとして、サーバルームを機器設置空間と床下空間とに区画し、機器設置空間に設置した空調機から床下空間に冷気を吹き込み、床下空間から機器設置空間に連通するグリルを介して冷気を供給する床下空調方式が知られている。
【0003】
ところで近年においてはアプリケーションシステムの運用を複数のサーバで行い、アクセスの多い時間帯と少ない時間帯(即ち、情報処理量の多い時間帯と少ない時間帯)とでシステム構成を変えて運用することが行われている。一方、空調機においては、サーバルームのサーバの情報処理量による熱負荷の変動に応じて風量や温度を変えることが行われるようになっている。このため、上記したサーバによる熱負荷の変動が生じた場合に、機器設置空間の温度を検知してダイナミックに風量や温度の設定を変更して機器設置空間が許容温度範囲になるよう制御を行っている。このような制御を行うことで過剰に冷却することはなく、無駄なエネルギー消費を抑制している。
【0004】
サーバルームの温度制御に関連する技術として、サーバを搭載するラックにサーバと共に局所冷却器を搭載(即ち、サーバと局所冷却器を混載)し、稼働率の高いラックに対して部分的に冷却することが知られている。サーバルーム全体の空調を行うベース空調機に加えて局所冷却器を設けることにより、ベース空調機の冷却能力を上げることなく省エネルギーを実現するものである。
【0005】
また、機器設置空間にラック型の小型空調機を配置し、サーバ増設等に伴うベース空調機の冷却能力の不足を補うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−169942号公報
【特許文献2】特開2009−257721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、サーバルームの熱負荷はサーバの情報処理量により変動する。また、サーバルーム全体の空調制御を行うベース空調機は機器設置空間の温度を監視し、熱負荷の変動に応じて設定温度を変更して所定の温度範囲になるよう空調機出力を制御している。この制御において、熱負荷が上昇した場合にベース空調機は設定温度を下げて冷却出力を上げることを行うが、ベース空調機から吹き出す冷気の温度は直ちに設定温度とはならず、5〜10分程度の時間差(タイムラグ)を生じて設定温度になることが知られている。このため、時間差が生じている間にサーバの温度が上昇して誤動作が生じる、という場合があった。この時間差(ベース空調機の温度設定の時点から吹き出し温度が設定温度になるまでの時間の差)が生ずる理由は、ベース空調機の冷凍機で冷媒の温度を所定温度に下げるために要する時間によるものである(ベース空調機は、この冷媒に空気を吹きつけて熱交換を行い、冷気を冷媒送出口から送出している)。
【0008】
上記した局所冷却器や小型空調機を予め設けておき、ベース空調機が熱負荷の上昇を検知して温度設定を行なった時点で、時間差の5〜10分の間をこれらの機器をフル稼働させてこの間の温度上昇を解消する方法が考えられる。しかしながら、このために局所冷却器や小型空調機をベース空調機に加えて設置するのは経済的な面で問題である。また、これら機器は稼働している間、電力を消費するという問題もある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ベース空調機の冷気吹き出し温度が温度設定されてから所定時間を経てその設定温度となるまでの間、電力を消費することなくベース空調機の冷却を補助するサーバルームとその空調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の一観点によれば、本発明のサーバルームは、発熱機器を設置した機器設置空間と、機器設置空間の床下に設けられた床下空間と、機器設置空間で暖められた暖気を取込み、圧縮液化した冷媒の気化熱で暖気を冷却して冷気とし、冷気を床下空間に送出するベース空調機と、ベース空調機が取り込む暖気の一部を床下空間にバイパスする暖気導入通路と、暖気導入通路中に設置され、バイパスされた暖気が吹きつけられて吸着剤に吸着した冷媒を気化し、気化に基づく気化熱により暖気を冷却して床下空間に流出する補助冷却器と、を備えるサーバルームが提供される。
【0011】
発明の他の一観点によれば、本発明のサーバルームの空調方法は、稼動中のベース空調機が現在の温度設定値より低い温度に再設定された際に、ベース空調機にリターンされる暖気の一部を取り込む暖気取込手順と、暖気を補助冷却器に吹きつけ、補助冷却器が保持する吸着剤に吸着した冷媒を気化させ、気化に基づく気化熱により暖気を冷却する補助冷却手順と、ベース空調機からの吹き出し温度が再設定された温度になったとき、暖気の取り込みを停止する暖気取込停止手順と、を有するサーバルームの空調方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
稼動中のベース空調機が現在値より低い温度に再設定さたとき、ベース空調機にリターンされる暖気の一部を用いて吸着剤に吸着した冷媒を気化するようにしたので、この気化熱によりベース空調機から吹き出す冷気の温度が再設定温度になるまでの間、電力を消費することなく補助冷却できるサーバルームとサーバルームの空調方法とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のサーバルーム(その1)を示す図である。
【図2】本発明のサーバルーム(その2)を示す図である。
【図3】補助冷却器の構造例を示す図である。
【図4】冷却ユニットの構造例を示す図である。
【図5】サーバルームの空調制御のフロー例を示す図である。
【図6】本発明の補助冷却器を用いた実験例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のサーバルームを図1と図2を用いて説明する。図1は、サーバルーム10を模式的に示した図で、サーバルーム10は機器設置空間20と床下空間30、および排気空間40の3つの空間に区画している。機器設置空間20は、さらに機器設置空間20に設置したサーバラック50と、そのサーバラック50と機器設置空間20の天井とを仕切ったキャッピング21とによってコールドアイル22とホットアイル23とに区画されている。図1に示した機器設置空間20は、サーバラック50の前面の空間でコールドアイル22となっており、ホットアイル23として示した空間はサーバラック50の背面の空間と連通する空間の一部である。コールドアイル22は床下空間30とグリル31で連通し、ホットアイル23は排気空間40と排気グリル41で連通している。
【0015】
サーバルーム10の全体の空調制御を行なうベース空調機60は、図に示すように上面の空気取込口61が排気空間40と連結し、底面の冷気送出口62が床下空間30と連結している。ベース空調機60は排気空間40の空気(後述する暖気)を吸い込んで熱交換を行い、床下空間30に冷気を送出する構造になっている。床下空間30に送出された冷気はコールドアイル22に吹き出すことになる。機器設置空間20に設置したサーバラック50は、コールドアイル22に吹き出した冷気を前面から吸気し、暖気を背面のホットアイル23に排気する。即ち、ベース空調機60から送出された冷気は床下空間30、グリル31、コールドアイル22、サーバラック50、ホットアイル23、排気グリル41、排気空間40を経てベース空調機60にリターンされる。なお、ここまでは一般的なサーバルームの構造と空調の方法である。
【0016】
本発明のサーバルーム10は、さらに排気空間40からベース空調機60にリターンされる暖気の一部を床下空間30にバイパスさせる暖気導入通路70と補助冷却器100とを備えている。暖気導入通路70の一端は補助冷却器100と連結し、補助冷却器100を介して床下空間30に連通している。暖気導入通路70の他の一端は、ベース空調機60に隣接して暖気空間40と接続し、その接続個所に暖気の流れを開閉する暖気ダンパー71を備えている。また、暖気導入通路70は、床下空間30において、ベース空調機60の冷気送出口62から送出された冷気の一部を取り込む冷気ダンパー72を備えている。暖気ダンパー71と冷気ダンパー72とを開閉操作することにより、補助冷却器100に暖気、または冷気を吹きつけることができる。暖気ダンパー71と冷気ダンパー72は、図示しない制御装置の指令に基づいて開閉するようになっている。また、ベース空調機60の空気取込口61と冷気送出口62の近傍にはそれぞれ暖気温度センサ80と冷気温度センサ81を備え、これらの温度計測に基づいて制御装置は空調制御している。
【0017】
図1は暖気ダンパー71を開き、冷気ダンパー72を閉じて暖気導入通路70を介して補助冷却器100に暖気を吹きつけている状態を示している。詳細は後述するが、この状態は機器収容空間20の熱負荷の増大に伴いベース空調機60が送出する冷気の温度を再設定(温度を下げるように再設定される)したとき、ベース空調機60の冷媒が再設定温度になるまでの間、補助冷却器100に補助冷却させる状態を示している。
【0018】
補助冷却器100は暖気導入通路70を通って吹きつけられた暖気で補助冷却器10に充填している吸着剤の冷媒が気化し、その気化熱で吹きつけられた暖気を冷気に変える。この冷気は、床下空間30に流出するようになっており、ベース空調機60の冷却を補助している。図1の黒の矢印は暖気を、白抜きの矢印は冷気を表しており、ベース空調機60が暖気を取り込んで冷気に変え、床下空間30に冷気を送出していると共に、補助冷却器100も暖気導入通路70を介して暖気を取り込んで冷気を床下空間30に供給している暖気と冷気の流れを示している。
【0019】
図2は、ベース空調機60の冷媒が再設定温度になり、補助冷却器100の補助冷却を必要としなくなったときに、暖気導入通路70の暖気ダンパー71を閉じると共に冷気ダンパー72を開いた状態を示している。この状態で、補助冷却器100はベース空調機60から送出された冷気の一部が吹きつけられ、補助冷却器100の中で気化した冷媒は冷気により液化する。液化した冷媒は充填している吸着剤に戻され、そこで吸着剤は液化冷媒を再吸着することになる。即ち、図2は補助冷却器100が再吸着の段階にある状態のサーバルーム10を示している。
【0020】
次に、上記で説明した補助冷却器100の構造例を図3と図4とを用いて説明する。図3は、補助冷却器100の全体構造を上面図、正面図および側面図の三面図で示した図である。補助冷却器100は筐体A110と筐体B120と冷却ユニット200とを含んで構成される。筐体A110は、正面と背面とに開口部111を設け、右側面が開口した箱型の筐体である。筐体Bは、左側面が開口した箱型の筐体である。複数個の冷却ユニット200は、縦に重ね(図1では12個を縦に積み重ねている)、筐体A110と筐体B120とにそれぞれの開口を介して収容される。冷却ユニット200は、正面から背面に貫通するラジエータグリル211を備え、このラジエータグリル211は筐体Aの開口部111から露出している。冷却ユニット200の詳細は後述するが、このラジエータグリル211を暖気または冷気が通過し、冷却ユニット200との間で熱交換が行なわれる。補助冷却器100の大凡の外形(幅(W)×高さ(H)×奥行き(D))は、1,200×750×250mmである。
【0021】
図4は冷却ユニット200の構造例を示し、図4(a)は冷却ユニット200の外形を三面図で示した図であり、図4(b)は冷却ユニット200を縦方向に切断した断面を示している。図4(b)の下方の図は、冷却ユニット200の左端部と接続部230の部分拡大図である。
【0022】
図4(a)に示すように、冷却ユニット200は気化/液化部210と還流部220と接続部230とを含んで構成する。次にこれらの構造と機能について説明する。
【0023】
気化/液化部210は、図4(b)に示すように下方の気化部212とその上の液化部213との空間を分離板214で区画している。分離板214は、孔明けした金属板(図2(a)の上面図に示される点線の円形が孔を示している)の上面に透湿膜を配置した板で、気化部212で気化した冷媒を透過する。この分離板214は、より詳細には、左端から還流部220に向かって低くなる傾斜(ここでは、傾斜角3°としている)を持たせており、右端は後述する還流部220に入り込んでいる。
【0024】
気化部212は、空間に冷媒を吸着した吸着剤を充填し、補助冷却時に吸着剤からこの冷媒を気化させる空間である。そして、充填された吸着剤の中にあって、気化部212の正面から背面に貫通するラジエータグリル211を設けている。ラジエータグリル211に暖気を通すことで吸着剤に吸着された冷媒の気化を行なう。冷媒は、例えば水やシリコーンオイル、炭化水素溶媒等で、蒸気圧が低く、潜熱が大きく、また安価であるものがよい。また、吸着剤は、冷媒を多く吸着保持できるもので、活性炭やシリカゲルなどの多孔質物質、あるいはカオリナイトやモンモリナイト、ゼオライトなどの粘土系鉱物が適している。
【0025】
図4(b)の部分拡大図に示すように、ラジエータグリル211と気化部212の端部の間は吸着剤で埋まった隙間を設けており、ラジエータグリル211の下方にある吸着剤から気化した冷媒はこの隙間を通り、さらに分離板214の透過膜を通って液化部213に抜け出るようになっている(ラジエータグリル211の上方にある吸着剤から気化した冷媒は、そのまま分離板214の透過膜を通って液化部213に抜け出る)。部分拡大図に実線で示した矢印は気化した冷媒の流れる方向を示している。
【0026】
また、気化部212は、補助冷却後の再吸着時に還流部220から還流された液化冷媒を吸着剤に吸着させることも行なう部分である。気化部212の右端はメッシュの仕切り板215を配置し、充填された吸着剤が気化部212から出ないようにしている。この仕切り板215は、還流部220からリターンされた液化冷媒を気化部212の中に取り込む。気化部212に流れ込んだ液化冷媒は、毛細管現象により吸着剤に浸透し、吸着剤の微細な孔に吸着される。部分拡大図に点線で示した矢印は、液化冷媒の流れを示している。
【0027】
液化部213は、補助冷却時に気化部212で気化した冷媒を分離板214を介して貯留し、補助冷却終了後に貯留している気化冷媒を冷気により凝縮して液化する空間である。液化した冷媒は、上記した傾斜する分離板214を伝って還流部220に流れる。なお、分離板214の透湿膜は、気体を透過するが液体は透過させない性質を持っている。なお、気化部212と液化部213とからなる気化/液化部210の筐体は、熱伝導率のよい銅やアルミニュウム等を用いて作製される。
【0028】
還流部220は気化部212と連結し、液化部213で液化した冷媒を気化部212に還流する役割を担っている。気化/液化部210から延出した分離板214は、この還流部220において突き出した状態で配置される。分離板214を伝って流れる液化冷媒は、この突き出したところで還流部220に滴下する。還流部220には、液化冷媒が気化部212に流れ込むようにするため、左方に傾斜するスロープ216を備えている。
【0029】
次に、サーバルーム10における空調制御のフローを図5を用いて説明する。なお、フローの説明に当たって図1および図2で示したサーバルーム10は図示しない制御装置を備え、その制御装置はベース空調機60、暖気ダンパー71、冷気ダンパー72および暖気温度センサ80、冷気温度センサ81と制御ネットワーク(例えばBACnet(Building Automation and Control Networking protocol))と接続しているものとする。フローは制御装置が行なう空調制御のフローである。
【0030】
図5において、制御装置はベース空調機60の空気取込口61近傍に設置した暖気温度センサ80で計測した温度データを取得する。例えば、1分間隔で温度データを取得する(S1)。
【0031】
暖気温度センサ80から取得した温度データが規定値以下であった場合は、S1に戻り暖気温度センサ80から温度データを取得することを繰り返す。温度データが規定値を超えた場合(例えば30℃以上)、ベース空調機60に対し、冷気送出口62から送出する冷気の設定温度を現行の設定温度から所定温度を下げる。例えば、現行の設定温度から2℃下げた温度に設定変更する。この温度を再設定温度ということにする(S2、S3)。
【0032】
制御装置は暖気ダンパー71に制御コマンドを送り、暖気導入通路70の暖気ダンパー71を開く。暖気ダンパー71が開いたことで、ベース空調機60が取り込んでいる暖気の一部が暖気導入通路70にバイパスされる。即ち、暖気導入通路70に暖気が取り込まれることになる。なお、このとき冷気ダンパー72は閉じているものとする(S4)。
【0033】
暖気導入通路70に取り込まれた暖気は、補助冷却器100のラジエータグリル211を通り、ラジエータグリル211で熱交換が行なわれる。ラジエータグリル211に伝えられた熱は、補助冷却器10の気化部212に充填された吸着剤を暖め、吸着剤に吸着した冷媒を気化する。このときの気化熱でラジエータグリル211を冷し、ラジエータグリル211を通過する暖気を冷却する。即ち、ラジエータグリル211を通過する暖気は冷気に変えられ、床下空間30に流れ出ることで補助冷却が行なわれる。なお、補助冷却器100の気化部212で気化した冷媒は、分離板214を通って液化部213に貯留される(S5)。
【0034】
制御装置は、ベース空調機60の冷気送出口62近傍に設置した冷気温度センサ81で計測した温度データを取得し、取得した温度データが再設定温度になったかを調べる。未達の場合に、補助冷却器100による補助冷却を行なっている状態(暖気ダンパー71を開き、冷気ダンパー72を閉じた状態)を維持し、所定時間間隔(例えば1分間隔)で冷気温度センサ81から温度データを取得する(S6)。
【0035】
冷気温度センサ81から取得した温度データが再設定温度に未達(再設定温度より高い)であった場合は、S6に戻り気温度センサ81から温度データを取得することを繰り返す。
冷気温度センサ81の温度データが再設定温度となった時点で暖気ダンパー71を閉じ、補助冷却器100による補助冷却を停止する(S7、S8)。
【0036】
続いて、冷気ダンパー72を開く。冷気ダンパー72を開くことで、補助冷却器100の液化部213にベース空調機60からの冷気が当たることになる(S9)。
【0037】
冷気が当った補助冷却器100は、補助冷却器100の液化部213に気化している冷媒を凝縮し、液化する。液化した冷媒は還流部220を介して気化部212に戻り、吸着剤に再吸着する(S10)。
【0038】
上記のS3〜S7の制御を行なっている間、ベース空調機60は冷凍機の冷媒温度を下げることを行なっている。ベース空調機60の冷媒の温度低下と共に冷気送出口62の冷気温度は再設定温度に近づいて行く。従って、S3〜S7迄の時間は前述のように5〜10分程度であり、この時間だけ補助冷却器100は補助冷却を行なっていることになる。
【0039】
次に、上記した補助冷却器100の設計例を説明する。設計条件を次に示すものとする。
【0040】
・ラック当たりの平均発熱量 9kw
・ラック設置数 10ラック
・ラック当たりの発熱量増加率 30%
・冷媒 水(蒸発潜熱2,400kJ/kg)
・吸着剤 モンモリナイト(比重2.38)
・吸着重量比(水:モンモリナイト) 1:2
・ベース空調機の再設定温度到達時間 10分
これより、以下の値を求めることができる。
【0041】
・ラック全体の総発熱量 9kw×10=90kw
・30%の増加発熱量 90kw×30%=27kw
・27kwの1分当たりの熱量 27kw×60=1,620kJ/min
・再設定温度到達時間10分間に必要な総熱量
1,620kJ/min×10=16,200kJ
上記を満足する補助冷却器100に必要な水(冷媒)と吸着剤の量は次のように求めることができる。
【0042】
・水(冷媒)の量 16,200kJ/2,400kJ=6.75kg(約7kg)
・水に対するモンモリナイトの量 7kg/2=3.5kg
従って、補助冷却器100は冷媒(7kg)と吸着剤(3.5kg)とを保持する必要があり、これらに必要な容積は0.1mあれば良い。図1に示した気化/液化部210の容積は、この冷媒と吸着剤に必要な容積に加えて、ラジエータグリル211や液化部213等の空間を考慮して0.15mの容積があればよいことになる。
【0043】
次に、本発明の補助冷却器の効果を調べるために行なった実験の例を説明する。実験では上記に示した内容の補助冷却器(冷媒として水7kg、吸着剤としてモンモリナイト3.5kg、気化/液化部の合計容積0.15m)を用い、総発熱量90kwを30%アップさせたときのベース空調機の空気取り入れ口の温度の経時変化を計測した(開始時の温度25℃で発熱量をアップする)。
【0044】
図6は実験結果を示し、図6(a)は補助冷却器なしの場合のサーバルームの機器収容空間の温度の経時変化を、図6(b)は補助冷却器を用いた場合の経時変化を示している。図6(a)に示すように、補助冷却器がない場合では、発熱量アップと共に温度上昇し、10分(600秒)後には45℃に達した。補助冷却器を用いた図6(b)における10分後の温度上昇は約2℃に抑えられ、補助冷却器の効果が確認できた。なお、補助冷却器を10分稼動後に再吸着を行い、同様の実験を行なった結果、図6(b)と同じ結果を得た。
【0045】
以上、本発明のサーバルームと、サーバルームの空調方法の実施例を説明したが、これらは上記した内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0046】
10 サーバルーム
20 機器設置空間
21 キャッピング
22 コールドアイル
23 ホットアイル
30 床下空間
31 グリル
40 排気空間
41 排気グリル
50 サーバラック
60 ベース空調機
61 空気取込口
62 冷気送出口
70 暖気導入通路
71 暖気ダンパー
72 冷気ダンパー
80 暖気温度センサ
81 冷気温度センサ
100 補助冷却器
111 開口部
110 筐体A
120 筐体B
200 冷却ユニット
210 気化/液化部
211 ラジエータグリル
212 気化部
213 液化部
214 分離板
215 仕切り板
216 スロープ
220 還流部
230 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機器を設置した機器設置空間と、
前記機器設置空間の床下に設けられた床下空間と、
前記機器設置空間で暖められた暖気を取込み、圧縮液化した冷媒の気化熱で該暖気を冷却して冷気とし、該冷気を前記床下空間に送出するベース空調機と、
前記ベース空調機が取り込む暖気の一部を前記床下空間にバイパスする暖気導入通路と、
前記暖気導入通路中に設置され、バイパスされた暖気が吹きつけられて吸着剤に吸着した冷媒を気化し、該気化に基づく気化熱により該暖気を冷却して前記床下空間に流出する補助冷却器と、
を備えることを特徴とするサーバルーム。
【請求項2】
前記暖気導入通路は、前記ベース空調機が取り込む暖気と、該ベース空調機が送出する冷気とを切り換えるダンパーを備え、
前記補助冷却器は、前記ダンパーの切り換えによって取り込まれた冷気が吹きつけられ、前記気化した冷媒を前記吸着剤に吸着する
ことを特徴とする請求項1に記載のサーバルーム。
【請求項3】
前記補助冷却器は、
暖気と熱交換を行う熱交換部と、
冷媒を吸着した吸着剤を保持し、前記熱交換部に吹きつけられた前記暖気により該吸着剤から該冷媒を気化させる気化部と、
気化した前記冷媒を透湿膜を介して取り込み貯留すると共に、吹きつけられた冷気で貯留している該気化した冷媒を液化する液化部と、
前記液化部に連結して液化した前記冷媒を取り込み、該冷媒を前記気化部に還流する還流部とを備える
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のサーバルーム。
【請求項4】
前記吸着剤は、活性炭、シリカゲルを含む多孔質物質、またはカオリナイト、モンナイト、ゼオライトを含む粘土系鉱物である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサーバルーム。
【請求項5】
前記冷媒は、水、シリコンオイル、炭化水素溶媒のいずれかを用いる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサーバルーム。
【請求項6】
稼動中のベース空調機が現在の温度設定値より低い温度に再設定された際に、該ベース空調機にリターンされる暖気の一部を取り込む暖気取込手順と、
前記暖気を補助冷却器に吹きつけ、該補助冷却器が保持する吸着剤に吸着した冷媒を気化させ、該気化に基づく気化熱により該暖気を冷却する補助冷却手順と、
前記ベース空調機からの吹き出し温度が前記再設定された温度になったとき、前記暖気の取り込みを停止する暖気取込停止手順と
を有することを特徴とするサーバルームの空調方法。
【請求項7】
前記補助冷却方法は、さらに
前記暖気の取り込みが停止された後に、前記ベース空調機から送出された冷気を取り込む冷気取込手順と、
前記冷気を前記補助冷却器に吹きつけ、該補助冷却器内で気化した冷媒を前記吸着剤に再吸着させる再吸着手順と
を有することを特徴とする請求項6に記載のサーバルームの空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163251(P2012−163251A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23664(P2011−23664)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】