説明

サービス提供サーバ

【課題】整理券発行機能を備える専用サーバを用いることなく、サービス提供サーバに安定的かつ効率的にサービスを提供させる技術を提供する。
【解決手段】サービス提供サーバ1は、サービスを提供するサービス提供処理を実行するサービス提供処理部10と、サービスの提供開始時刻または提供開始時刻迄の待機時間を含む仮想的な整理券を発行する整理券発行処理を実行する整理券発行処理部20と、サービス提供処理および整理券発行処理に対する資源の割り当てを制御する資源割当制御部30とを備え、資源割当制御部30は、提供開始時刻または待機時間を可変にすることによって資源の割り当てを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス提供サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
サービスを提供するサーバ(以下、「サービス提供サーバ」という)へのアクセス集中を回避し、輻輳によるサービス提供サーバの処理能力の低下やシステムダウンを防ぐ技術として、サービス提供迄の待機時間を含む仮想的な整理券(以下、単に「整理券」という)を発行する技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「整理券発行機能を用いたアクセス制御システムの提案」 著者 上村郷志、稗圃泰彦、小頭秀行、岡本泉、竹原啓五、中村元、発表日 2008年9月26日 81〜86ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の技術は、サービス提供サーバとは別に、整理券発行機能を備える専用サーバが必要になるという課題を残している。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、整理券発行機能を備える専用サーバを用いることなく、サービス提供サーバに安定的かつ効率的にサービスを提供させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様であるサービス提供サーバは、サービスを提供するサービス提供処理を実行するサービス提供処理部と、サービスの提供開始時刻または提供開始時刻迄の待機時間を含む仮想的な整理券を発行する整理券発行処理を実行する整理券発行処理部と、サービス提供処理および整理券発行処理に対する資源の割り当てを制御する資源割当制御部とを備え、資源割当制御部は、提供開始時刻または待機時間を可変にすることによって資源の割り当てを制御することを特徴とする。
【0007】
上記サービス提供サーバにおいて、資源割当制御部は、整理券の発行数を予測する発行数予測部と、発行数予測部によって予測された発行数に基づいて提供開始時刻を決定する提供開始時刻決定部とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、整理券発行機能を備える専用サーバを用いることなく、サービス提供サーバの処理能力低下やシステムダウンを防ぐとともに、サービス提供サーバによるサービスの効率的な提供を実現することができるようになる。即ち、サービス提供サーバに安定的かつ効率的にサービスを提供させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるサービス提供サーバ1の機能ブロック図の一例である。
【図2】サービス提供サーバ1の動作を示すフローチャートである。
【図3】資源割当制御部30の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。サービス提供サーバ1は、図1に示すように、サービス提供処理部10、整理券発行処理部20、資源割当制御部30および整理券発行実績記憶部40を備える。資源割当制御部30は、発行数予測部32および提供開始時刻決定部34を備える。
【0011】
サービス提供処理部10は、クライアント2からの要求に応じてサービスを提供するサービス提供処理を実行する。具体的には、サービス提供処理部10は、整理券発行処理部20によって発行された整理券によって示されるサービスの提供開始時刻(以下、「サービス提供開始時刻」という)またはサービス提供開始時刻迄の待機時間(以下、「サービス待機時間」という)を経過した時刻にクライアント2からのサービス提供要求を受け付けた場合に、サービス提供処理を実行する。なお、サービス提供処理の負荷の度合い(過負荷に至る迄の余裕度、処理能力)は、サービス提供処理に対する資源(例えば、CPU資源、ネットワーク資源、メモリ資源)の割当量と使用量とから算出されるが、サービス提供処理に対する資源の割当量は、整理券発行処理(後述)に対する資源の割当量に依存し、サービス提供処理に対する資源の消費量は例えばアクセス状況(セション数)などに依存する。以下、便宜上、サービス提供開始時刻を経過した時刻をサービス提供可能時刻という。
【0012】
整理券発行処理部20は、サービスを要求したクライアント2に対してサービスの提供開始時刻またはサービス待機時間を含む整理券を発行する。具体的には、まず、整理券発行処理部20は、クライアント2から整理券発行要求を受け付けた場合に、整理券発行要求を受け付けた旨を資源割当制御部30(発行数予測部32)に通知する。その後、整理券発行処理部20は、資源割当制御部30(提供開始時刻決定部34)からサービス提供開始時刻を取得する。資源割当制御部30からサービス提供開始時刻を取得した整理券発行処理部20は、サービス提供開始時刻またはサービス待機時間を含む整理券を生成しクライアント2に発行する。なお、整理券発行処理部20は、サービス提供開始時刻と現在時刻との差からサービス待機時間を計算する。また、整理券発行処理部20は、整理券発行実績を整理券発行実績記憶部40に記憶する。なお、整理券発行処理の負荷の度合い(過負荷に至る迄の余裕度、処理能力)は、整理券発行処理に対する資源の割当量と使用量とから算出されるが、整理券発行処理に対する資源の割当量は、サービス提供処理に対する資源の割当量に依存し、整理券発行処理に対する資源の消費量は例えば単位時間当たりの整理券発行数などに依存する。
【0013】
資源割当制御部30は、サービス提供処理部10によるサービス提供処理および整理券発行処理部20による整理券発行処理に対する資源の割り当てを制御する。具体的には、資源割当制御部30は、整理券発行処理部20によって発行する整理券に含めるサービス提供開始時刻またはサービス待機時間を可変にすることによって資源の割り当てを制御する。
【0014】
より詳細には、資源割当制御部30内の発行数予測部32は、整理券発行処理部20から整理券発行要求を受け付けた旨を通知された場合、整理券発行実績記憶部40に記憶されている整理券発行実績を参照し、整理券発行要求数の時系列分析によって、整理券の予測発行数を算出する。予測発行数を算出した発行数予測部32は、当該予測発行数を資源割当制御部30内の提供開始時刻決定部34に通知する。
【0015】
資源割当制御部30内の提供開始時刻決定部34は、発行数予測部32から整理券の予測発行数を通知された場合、予測発行数に基づいてサービス提供開始時刻を決定する。即ち、提供開始時刻決定部34は、予測発行数が少ない場合または減少傾向にある場合、早め目のサービス提供開始時刻を決定し、予測発行数が多い場合または増加傾向にある場合、遅め目のサービス提供開始時刻を決定する。サービス提供開始時刻を決定した提供開始時刻決定部34は、当該サービス提供開始時刻を整理券発行処理部20に通知する。
【0016】
以下、図2に示すフローチャートを用いてサービス提供サーバ1が整理券発行要求を取得してから整理券を発行する迄の動作を説明する。なお、図2に示すフローチャートは、整理券発行処理部20がクライアント2から整理券発行要求を受け付けることにより開始する。整理券発行要求を受け付けた整理券発行処理部20は、整理券発行要求を受け付けた旨を発行数予測部32に通知する(ステップS100)。
【0017】
整理券発行要求を受け付けた旨を通知された発行数予測部32は、整理券の予測発行数を算出する(ステップS110)。予測発行数を算出した発行数予測部32は、整理券の予測発行数を提供開始時刻決定部34に通知する。発行数予測部32から整理券の予測発行数を通知された提供開始時刻決定部34は、当該予測発行数に基づいてサービス提供開始時刻を決定する(ステップS120)。サービス提供開始時刻を決定した提供開始時刻決定部34は、当該サービス提供開始時刻を整理券発行処理部20に通知する。提供開始時刻決定部34からサービス提供開始時刻を通知された整理券発行処理部20は、サービス提供開始時刻またはサービス待機時間を含む整理券を生成しクライアント2に発行する(ステップS130)。また、整理券発行処理部20は、整理券発行実績を整理券発行実績記憶部40に記憶する。そして、本フローチャートは終了する。
【0018】
続いて、図3を用いて、資源割当制御部30がサービス提供処理(サービス提供処理部10)と整理券発行処理(整理券発行処理部20)とに資源を割り当てる動作について補足説明する。なお、図3において、説明の便宜上、サービス提供処理および整理券発行処理以外の処理(例えばOS)に割り当てる資源は無視するものとする。図3の縦軸は時間、横軸は資源、一点鎖線はサービス提供サーバ1全体の資源、実線はサービス提供処理に割り当てる資源、点線は整理券発行処理に割り当てる資源である。
【0019】
時刻Txに整理券発行要求Xを受け付けた場合、時刻Tx以降の各時刻の整理券の予測発行数に基づいてサービス待機時間T1(サービス提供開始時刻Tx+T1)を決定する
が、サービス待機時間T1は、サービス提供開始時刻(Tx+T1)におけるサービス提供処理に負荷を与えるものであるから、サービス提供開始時刻(Tx+T1)における整理券発行処理に割り当てる資源を確保しつつ、サービス提供開始時刻(Tx+T1)におけるサービス提供処理に割り当て可能な資源を考慮して決定する。
【0020】
例えば、現在時刻以降のある短期間に、整理券の発行数の増加が見込まれる場合、当該短期間において整理券発行処理に必要な資源が増加し、サービス提供処理に割り当て可能な資源が減少すると見込まれる。従って、サービス提供処理の能力低下(サービス提供処理の過負荷)を抑制すべく、遅めのサービス提供開始時刻を設定する。
【0021】
一方、現在時刻以降のある短期間に、整理券の発行数の減少が見込まれる場合、当該短期間において整理券発行処理に必要な資源が減少し、サービス提供処理に割り当て可能な資源が増加すると見込まれる。従って、サービス提供処理の効率低下(サービス提供処理の低負荷)を抑制すべく、つまり、サービスを効率的に提供すべく、早めのサービス提供開始時刻を設定する。
【0022】
以上、説明した様に、サービス提供サーバ1は、整理券の発行処理に必要な資源を常に確保しつつ、サービスの提供処理に割り当てる資源と整理券の発行処理に割り当てる資源の振り分けを最適化している。具体的には、サービス提供サーバ1は、混雑時において、待機時間の長い整理券を発行し、サービス提供の開始を遅らせている。
【0023】
以上、本実施形態のサービス提供サーバ1によれば、整理券発行機能を備える専用サーバを用いることなく、サービス提供サーバ1の処理能力低下やシステムダウンを防ぐとともに、サービス提供サーバによるサービスの効率的な提供を実現することができるようになる。
【0024】
また、本実施形態において、提供開始時刻決定部34は予測発行数に基づいてサービス提供開始時刻を決定するが、提供開始時刻決定部34はサービス提供開始時刻に代えてサービス待機時間を決定してもよい。提供開始時刻決定部34がサービス提供開始時刻に代えてサービス待機時間を決定する場合には、整理券発行処理部20は、現在時刻にサービス待機時間を加算してサービス提供開始時刻を計算する。
【0025】
また、本実施形態において、発行数予測部32は整理券発行要求数の時系列分析によって予測発行数を算出するが、整理券発行要求数の時系列分析に代えてまたは加えて整理券発行時の外的要因に基づいて予測発行数を算出してもよい。整理券発行時の外的要因に基づいて予測発行数を算出する態様の場合、外的要因に係る情報は、外的要因取得部(非図示)によって整理券発行時に取得され、例えば整理券発行実績記憶部40に記憶するようにしてもよい。
【0026】
なお、本発明の一実施形態によるサービス提供サーバ1の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本発明の一実施形態によるxxに係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0027】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0028】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 サービス提供サーバ 2 クライアント 10 サービス提供処理部 20 整理券発行処理部 30 資源割当制御部 32 発行数予測部 34 提供開始時刻決定部 40 整理券発行実績記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスを提供するサービス提供処理を実行するサービス提供処理部と、
サービスの提供開始時刻または前記提供開始時刻迄の待機時間を含む仮想的な整理券を発行する整理券発行処理を実行する整理券発行処理部と、
前記サービス提供処理および前記整理券発行処理に対する資源の割り当てを制御する資源割当制御部と
を備え、
前記資源割当制御部は、
前記提供開始時刻または前記待機時間を可変にすることによって前記資源の割り当てを制御することを特徴とするサービス提供サーバ。
【請求項2】
前記資源割当制御部は、
前記整理券の発行数を予測する発行数予測部と、
前記発行数予測部によって予測された前記発行数に基づいて前記提供開始時刻を決定する提供開始時刻決定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のサービス提供サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−191603(P2010−191603A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34178(P2009−34178)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)