説明

サーフボードの推進補助装置および波乗り補助装置

【課題】推進力を効率的にあたえることができ、サーフィン初心者の練習にも良好なサーフボードの推進補助装置Aおよび波乗り補助装置の提供を目的とする。
【解決手段】サーフボード1裏面1aへの固定部2と、
該固定部2に揺動自在に連結され、向かい波をよける波よけ姿勢と追い波を受ける波受け姿勢に変化する推進補助フィン3とを有してサーフボード1の推進補助装置Aを構成する。
また、前記固定部2によってサーフボード1の後端部に装着される前記サーフボード1の推進補助装置Aと、
サーフボード1の先端に装着されて先端のサーフボード1基底部1bとの間の高低差を広げ、前記サーフボード1の推進補助装置Aによる追い波を利用した推進時におけるサーフボード1先端部の水面下への沈み込みを防ぐノーズキャップ7とを有してサーフボード1の波乗り補助装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーフボードの推進補助装置および波乗り補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーフボードの推進力を高めることができるアタッチメントとして、特許文献1に記載されるチャンネル部材が提案されている。このチャンネル部材は下壁の両側縁から側壁を立ち上げた断面略U字形状で、両側壁の最前方部分を内方に湾曲させて形成される。チャンネル部材の略U字状断面の開放面を塞ぐようにサーフボードの裏面に取り付けられてサーフボードの前後方向に開口する略筒状をなし、上述した側壁の湾曲によって前方開口が後方開口よりも狭いことにより、筒内の水圧がサーフボードの前方から後方に向かって高圧から低圧に推移し、前進推力が与えられる。
【特許文献1】特表2003-522680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例は、推進効率が悪いという欠点がある。
【0004】
ところで、一般にサーフィンにおいては、沖合から岸に向かう波の岸側に形成される斜面にサーフボードを介して乗り、移動する波に押されるようにして岸近くまで水面上を滑るように移動する。サーファーは移動する不安定な水面上で斜面によって傾くサーフボードを操りながら波に乗らなければならず、特有のバランス感覚や筋力を要求される。また、全長2mから3m程度もある大きなサーフボードを乗せることができる傾斜面を備えた大きな波を捉えるために、サーファーは、サーフィンをするに際して、通常は岸からパドリングにより沖合まで移動し、この後、大きな波が来るタイミングに合わせて波の流れる方向に手で漕いで勢いを付けてテイクオフする、すなわちサーフボードを波の斜面に乗せながらサーフボード上でうつぶせ等になった姿勢から立ち上がる。
【0005】
一方、サーフィン初心者の場合には、上述したバランス感覚や筋力に欠けるためにサーフボードから落ちやすく、このため一般には、岸からのパドリングによる移動を沖合までではなく浅瀬内に抑え、サーフボードを小さな波の流れに乗せてサーフボード上で立ち上がり、そのまま岸近くまで移動するという練習を繰り返す。浅瀬に生じる小さな波は沖合の大きな波が崩れて発生するいわゆるスープと呼ばれるもので、波の厚さはあまり厚くないもののある程度の勢いがあり、サーフボードを乗せれば、その流れによってサーファーをほぼ水平に岸側に運ぶ。このときサーフボードはあまり厚くないスープの表面に乗っているに過ぎないために、サーファーのバランス感覚等が悪いとスープの流れにきれいに乗れず、サーフボードからのサーファーの落下を招いたり、サーフボードのスピードが遅くなってあまり有効な練習にはならない。このような練習の繰り返しによってバランス感覚や筋力が養われるまでには一般に長期間を必要とし、この間サーフィン本来の波のうねりに乗るという楽しみは味わうことができないことから、ここで挫折してしまう初心者も多い。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、推進力を効率的にあたえることができ、サーフィン初心者の練習にも良好なサーフボードの推進補助装置および波乗り補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
サーフボード1裏面1aへの固定部2と、
該固定部2に揺動自在に連結され、向かい波をよける波よけ姿勢と追い波を受ける波受け姿勢に変化する推進補助フィン3とを有するサーフボード1の推進補助装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、推進補助フィン3は揺動して波よけ姿勢と波受け姿勢に変化し、向かい波をよけることによりサーフボード1を後退させる方向の力を逃がすことができ、追い波を受けることによりサーフボード1を推進させる力を得ることができる。したがって推進補助フィン3に波受け姿勢をとらせて直接追い波を当てることにより、水流を利用してサーフボード1を効率的に推進させることができる。
【0009】
また、波よけ姿勢によって向かい波をよけることができるために、パドリングで岸から沖合方向に向かうときに推進補助フィン3に向かい波を受けて岸側に戻され、沖合方向への移動が困難になってしまうということはない。さらに、パドリングによる沖合方向への移動に際し、大きな向かい波をかわすいわゆるドルフィンスルー等の動作についても、波よけ姿勢をとることによって推進補助フィン3が妨げになることはない。加えて、スープを利用してサーフィン初心者が浅瀬でバランス感覚等を養うに際しては、波受け姿勢をとる推進補助フィン3によってスープの勢いをサーフボード1に直接反映させることにより、より実戦に近い速度でサーフボード1を走らせることができ、極めて有効な練習をすることができる。このようなサーフボード1の推進速度の向上はまた、楽しみを生じさせる。
【0010】
上記推進補助フィン3は、揺動により向かい波の波よけにより適した波よけ姿勢と、より波受けに適した波受け姿勢とに変化できれば足り、具体的には、推進補助フィン3の板面3aが、揺動によって少なくとも波受け姿勢において波よけ姿勢よりもサーフボード1の進行方向、すなわち長手方向に対する角度を大きくできれば足りる。推進効率を考慮すると、板面3aが波受け姿勢においてサーフボード1の長手方向に対して直交し、また波よけ姿勢において平行になることが望ましい。
【0011】
推進補助フィン3の板面3aを揺動によりサーフボード1の推進方向に対して直交させたり、平行にしたりするには、推進補助フィン3の揺動軸をサーフボード1の推進方向に直交する面内に配置すれば足りる。この場合において、揺動軸をサーフボード1の裏面1aに沿わせる、すなわちサーフボード1の幅方向を軸方向とし、板面3aをサーフボード1の裏面1aにほぼ平行な姿勢からほぼ直交する姿勢まで回転させれば、波よけ姿勢においてよりスムーズに向かい波をかわすことができ、抵抗をより少なくすることができる。この場合推進補助フィン3をサーフボード1裏面1aに揺動自在に固定する固定部2は、サーフボード1の裏面1aに沿う薄板状に形成することができ、水流の抵抗を低く抑えることができる。
【0012】
上記推進補助フィン3の形状は、波受け姿勢において追い波を良好に受けることができるものであれば足り、固定部2との揺動自在な連結には、ヒンジ4を用いることができる。上述したように推進補助フィン3の板面3aをサーフボード1の裏面1aに平行な姿勢から直交姿勢まで回転させる、すなわち板面3aの回転をサーフボード1の裏面1aから該裏面1aに対して直交する範囲内に限定するには、ヒンジ4周りに突起などの回転規制手段を設ければ良いが、この回転規制手段としてサーフボード1裏面1aに形成される安定用のフィン5を流用することもできる。
【0013】
安定用のフィン5は、一般にサーフボード1裏面1aからほぼ垂直に突出し、サーフボード1の推進方向に沿う薄板状に形成されるもので、サーフボード1の水平安定性、直進安定性を確保し、また舵としても機能するものである。この安定用のフィン5に推進補助フィン3の板面3aを当てて回転範囲を規制すれば、より装置全体の構造を単純化することができる。推進補助フィン3を波受け姿勢において安定用のフィン5に接触させるには、上述したヒンジ4を安定用のフィン5の後方に隣接して配置すれば足りる。
【0014】
また、上記安定用のフィン5は、サーフボード1の操作性等を考慮して、その枚数や配置を変更する場合があるが、一般には、トライフィンが多用されている。このトライフィンは3枚の安定用のフィン5を用いるもので、1枚をサーフボード1後端に近接配置し、残余の2枚をこの1枚を二等辺三角形の頭部の頂点に見立てて底辺の両端に配置される頂点の配置に合わせてサーフボード1の前方寄りの位置に並べたものである。この場合上記推進補助フィン3は、上記2枚の安定用フィン5への接触によって追い波を受けて波受け姿勢を維持するようにすることができ、サーフボード1の幅方向に長く形成すれば、幅方向両端部をしっかりと支えられてサーフボード1の推進方向に対する直交姿勢を良好に保持することができる。また、上記1枚の安定用フィン5をかわす溝を中央に設ければ、波よけ姿勢におけるサーフボード1裏面1aへの接近を妨げられることはない。
【0015】
さらに、上記安定用フィン5は、近年、その交換を容易にするためにサーフボード1に着脱できるものが多用されている。安定用のフィン5の着脱性は、サーフボード1裏面1aに予めプラグを埋設しておき、このプラグに安定用フィン5を例えばねじ止め等することにより確保される。このように安定用フィン5を着脱自在にしたサーフボード1において、安定用フィン5の装着を利用して上述した固定部2をも装着させるようにすれば、推進補助フィン3のサーフボード1への装着を極めて簡単に行うことができ、同時に取り外しも簡単にすることができる。着脱自在な安定用フィン5を利用した装着には、上記固定部2に安定用のフィン5とサーフボード1裏面1aとの間に挟持される挟持部6を設ければ足り、挟持部6を薄く形成すれば、安定用フィン5のプラグへのねじ止め等を不安定にしてしまうことはない。
【0016】
以上の推進補助フィン3は、サーフボード1の後端部に配置すれば、実戦に近い推進力を働かせることができ、よりバランス感覚等の練習に好ましい上に、上述した安定用フィン5による回転範囲の規制等も可能になる。一方、サーフィン初心者の場合、サーフボード1が後端部側から押されるように推進すると、サーフボード1前後方向のバランスを崩してしまい、サーフボード1先端部を水面に突き刺してしまうおそれも考えられる。この点、サーフボード1先端にノーズキャップ7を装着し、サーフボード1の水面に接する裏面1aの中央部である基底部1bと先端との間の高低差を広げれば、かかる突き刺さりを生じにくくすることができる。
【0017】
また、サーフボード1としては、取り回しが容易なショートボードが一般に好まれる一方、サーフィン初心者は、ロングボードとショートボードの中間の長さ、曲率を備えて比較的扱いやすいファンボードで練習することにより早期のバランス感覚等の向上を図ることが望ましい。このため、バランス感覚等が向上したときには、ファンボードからショートボードに買い換えるケースが多く、費用負担の増大を招いている。この点、上述したノーズキャップ7の装着によってショートボードの長さを長くして裏面1aの面積を広げることができれば、ショートボードの比較的小さい浮力を補って扱いやすくすることができ、バランス感覚等の向上に伴ってノーズキャップ7を取り外せば、かかる費用負担を解消することが可能になる。
【0018】
ショートボードの曲率が大きいことによる推進性の低さは、上述した推進補助装置と併用することによって補うことができる。また、上記ノーズキャップ7を透明、あるいはサーフボード1と同系色にすれば、装着によってサーフボード1の外観を損ねることはない。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、推進力を効率的にあたえることができ、サーフィン初心者の練習にも良好なサーフボードの推進補助装置および波乗り補助装置を提供することができ、サーフィン初心者のバランス感覚等の上達を促してサーフィンをより楽しみやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
サーフボードの推進補助装置Aは、図1(a)に示すように、ベース板(固定部2)に推進補助フィン3をヒンジ4によって回転自在に連結して形成され、図1(c)に示すようにサーフボード1の裏面1a後端部に装着される。また、ノーズキャップ7は、図1(b)に示すように、サーフボード1の先端を挿入する挿入穴7aを有し、図1(c)に示すようにサーフボード1の先端に被せられる。
【0021】
図1(c)に示す5は、トライフィンを構成する安定用のフィンであり、図3(a)に示すようにサーフボード1に着脱自在に装着される。このように安定用フィン5を着脱自在にする手段として周知のいわゆるフィンコントロールシステム(fcs)と呼ばれるものを用いるこの実施の形態において、図3(a)に示すように、サーフボード1にはトライフィンにおける安定用フィン5の配置に合わせてプラグ11が埋め込まれ、各安定用フィン5はフィン本体5aの基端部に連結片5bを備えて形成される。上記プラグ11は、安定用フィン5の連結片5bに嵌合する嵌合穴11aと、この嵌合穴11aに対して斜め方向から連通するネジ穴11bとを有し、図3(b)に示すように、ネジ穴11bにねじ込まれるイモネジ11cの先端によって連結片5bを嵌合穴11aの側壁に押し付けるようにして安定用フィン5をサーフボード1に固定する。
【0022】
各安定用フィン5は、フィン本体5aの底面の一部、具体的にはフィン本体5aの底面から下方に向かって、その板面3aに沿って二本の薄板状の連結片5bを適宜間隔隔てて突出させて形成され、サーフボード1への取り付け状態においてフィン本体5aがプラグ11の嵌合穴11aに嵌合する連結片5bを隠すようにして外部に露出する。なお、安定用フィン5は、サーフボード1の幅方向中央部に配置されるものがセンターフィン5A、側縁に沿って配置されるものがサイドフィン5Bと呼ばれる。
【0023】
上記推進補助装置Aにおけるベース板2は、アクリル樹脂等の適宜の強度を備えた軽量な材料により形成され、例えば大きくて薄く、透明な矩形のアクリル板からサーフボード1の後端の形状に合わせて切り出して形成される。図1(c)および図2(a)に示すように、ベース板2は、サーフボード1の側縁から幅方向に飛び出さないように、サーフボード1の後端に向かって漸次細くなる形状に合わせて後端部が漸次幅狭になるように形成される。また、上記ベース板2には、サーフボード1への固定状態において上述したプラグ11の嵌合穴11a、およびネジ穴11bに連通する連結片挿通孔2a、およびイモネジ挿通孔2bが開設される。
【0024】
上記推進補助フィン3は、ベース板2と同じアクリル板から切り出され、ベース板2とほぼ同じ幅寸法の基端部から先端側に向かってV字状の溝3bを挟んで二股状に分岐し、該溝3bを境にした翼片3cの一対を備える。この推進補助フィン3は、図1(a)および図2(c)に示すように、基端部をベース板2の裏面における長手方向中間部にヒンジ4により連結される。
【0025】
図2(a)および(b)に示すように、ベース板2の中間部にはヒンジ4を固定するネジ12を取り付けるためのネジ止め穴2cが長手方向に所定ピッチで複数、この実施の形態においては3列設けられ、推進補助フィン3のベース板2に対する連結位置を調整できるようにされる。また、上記推進補助フィン3は、ベース板2における最も後端側のネジ止め穴2c’にヒンジ4を介して取り付けられ、かつ、後端側に回転したときに、サーフボード1の幅方向に過剰に飛び出さないように、翼片3c,3cのサーフボード1側方側の隅部が斜めに落とされる。以上の推進補助フィン3は、図2(c)に示すように、ヒンジ4のネジ12等との衝接などにより、ベース板2上でヒンジ4により180度よりもやや小さい程度の角度範囲内で板面3aが回転する。
【0026】
推進補助装置Aのサーフボード1への取り付けは、図3(a)に示すように、安定用フィン5をサーフボード1から取り外した後、ベース板2を間に挟むようにして安定用フィン5を再度サーフボード1に取り付けてなされる。安定用フィン5のフィン本体5aの底面の一部から突出する連結片5bを連結片挿通孔2aを通してプラグ11の嵌合穴11aに挿入することにより、フィン本体5aの底面とサーフボード1の裏面との間にベース板2が挟まれる。したがってベース板2は、連結片挿通孔2a近傍の領域(挟持部6)でサーフボード1に支持され、全体的には、安定用フィン5の配置に対応して、ヒンジ4を間に挟んで前方側の両側縁部と、後方側の中央部の三点でしっかりと支持される。
【0027】
サーフボード1への取り付け状態において、推進補助フィン3は、前後をセンターフィン5Aとサイドフィン5B、5Bにより挟まれた状態になり、サーフボード1前方側への倒伏は、図4(b)に示すようにサイドフィン5Bと各翼片3cとの衝接によってほぼ禁止される。一方、センターフィン5Aに対しては、翼片3c、3c間に配置される溝3bによって衝突が回避され、これによりサーフボード1後方側には倒伏することができる。したがって推進補助フィン3は、サーフボード1裏面1aに対し、直交する姿勢からサーフボード1後端側に回転してほぼ平行に沿う姿勢まで回転する。
【0028】
したがってサーフボード1を海面13に浮かべ、サーファーが乗った状態で図5(a)に矢印で示す方向に流れる向かい波を受けると、推進補助フィン3は二点鎖線で示す姿勢から実線で示す姿勢まで後方に倒伏し、板面3aをサーフボード1の裏面に沿わせて向かい波の力を逃がすことから、サーフボード1の前方への推進の妨げになることはない。一方、追い波を受けると、推進補助フィン3は図5(b)に示すようにヒンジ4によって板面3aがサイドフィン5Bに衝接するまで回転し、サーフボード1の進行方向に板面3aを直交させ、追い波の水勢をサーフボード1に推進方向の力として伝達させる。図2(b)に示したように推進補助フィン3のベース2に対する連結位置を調整し、これによりサイドフィン5Bとの相対位置を変更することにより、追い波を受けたときに板面3aがサーフボード1先頭側にやや傾斜するようにすれば、追い波が翼片3cに当たることによって、上向きの力が発生して浮力が発生する。更に翼片3cがサイドフィン5Bに当たる角度を調整することにより、その効果を調整することが可能である。また、この後、追い波の流速よりも早くサーフボード1が推進した場合には、推進補助フィン3は図5(a)に示すように後方に倒伏することから、サーフボード1の推進速度を低下させてしまうことはない。
【0029】
さらに、表面をサーフボード1裏面1aに密着させた固定部2の中間部に推進補助フィン3を連結することにより、推進補助フィン3に向かい波や追い波が衝突したときに固定部2に作用する剥離力に対する耐性を高めることができる。
【0030】
一方、上述したノーズキャップ7はゴム等の適宜の軽量な材料で形成され、挿入穴7aにサーフボード1の先端を入れて該先端に被さることより、図6(a)に示すようにサーフボード1先端の高さを高くする。例えば、略菱形の2枚のゴム板を重ね、それぞれのサーフボード1先端側の2辺間を塞ぐようにさらに幅狭のゴムを間に挟んでこれらを接着等して形成することが可能なノーズキャップ7は、この場合、ゴム板の厚さとサーフボード1先端の上方への曲率に従って、サーフボード1先端の高さを寸法Hだけより高くする(図6(a)参照)。ノーズキャップ7のサーフボード1に対する固定強度は、上述した挿入穴7aに適宜接着剤等を充填すれば高めることができる。
【0031】
したがってノーズキャップ7によって先端のサーフボード1基底部1bからの突出量が大きくなったサーフボード1は、前方に傾いても、より海面13下に沈みにくくなり、例えば、サーフボード1先端が海水に突き刺さった状態で上述したように推進補助フィン3により推進力を得てしまうような事態の発生を防ぐ。また、図6(b)に示すように、ノーズキャップ7の先端に隆起部7bを設ければ、上述した高さ寸法の増大分Hをさらに大きくすることができる。この場合、ノーズキャップ7はゴム等の一体成形により形成することが可能である。
【0032】
なお、以上においては固定部2の中間部に推進補助フィン3の基端部を連結する場合を示したが、固定部2の材端に連結することも可能で、固定部2の後端側の材端に連結すれば、推進補助フィン3をサーフボード1の裏面1aに沿わせるようにしたときに、該裏面1aからの推進補助フィン3の突出高さをより低く抑えることができる。また、ヒンジ4の取り付け方などを調整することにより、推進補助フィン3の板面3aをサーフボード1の裏面1a等にほぼ密着するまで回転できるようにすることも可能で、この場合には、推進補助フィン3の先端を曲成するなどして追い波を受けたときにサーフボード1裏面1aから推進補助フィン3を離す回転方向の分力を生じさせる傾斜面を適宜設けることが望ましい。
【0033】
さらに、以上においてはトライフィンを備えたサーフボード1に推進補助フィン3を取り付ける場合を示したが、固定部2を安定用フィン5に挟持させ、かつ、推進補助フィン3の前方への倒れ込みを防止できる位置にヒンジ4を配置させれば、ツインフィン等を備えたサーフボード1にも適用することができる。加えて、安定用フィン5を取り付けずに、プラグ11のネジ穴11b等を利用して推進補助フィン3をサーフボード1に直接取り付けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を示す図で、(a)は推進補助装置の斜視図、(b)はノーズキャップの斜視図、(c)は推進補助装置およびノーズキャップを取り付けたサーフボードの主に裏面側を示す斜視図である。
【図2】推進補助装置を示す図で、(a)は推進補助フィンが固定部に対して垂直な姿勢をとるときの平面図、(b)は推進補助フィンの固定部に対する取り付け位置の調整を説明する図、(c)は(a)の2C-2C線断面図であって推進補助フィンの固定部に対する回転動作を説明する図である。
【図3】推進補助装置のサーフボードに対する組み付けを説明する図で、(a)は組み付け状態の分解斜視図、(b)は(a)の3B-3B線断面図ある。
【図4】推進補助装置の安定用フィンとの取り合いを示す図で、(a)は推進補助装置が波よけ姿勢をとるときの平面図、(b)は波受け姿勢をとるときの平面図である。
【図5】推進補助フィンの動作を説明する図で、(a)は向かい波を受けたときの側面図、(b)は追い波を受けたときの側面図である。
【図6】ノーズキャップのサーフボードへの装着状態を示す図で、(a)は図1(c)の6A-6A線断面図、(b)はノーズキャップの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 サーフボード
1a 裏面
1b 基底部
2 固定部
3 推進補助フィン
3a 板面
4 ヒンジ
5 安定用のフィン
6 挟持部
7 ノーズキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーフボード裏面への固定部と、
該固定部に揺動自在に連結され、向かい波をよける波よけ姿勢と追い波を受ける波受け姿勢に変化する推進補助フィンとを有するサーフボードの推進補助装置。
【請求項2】
前記固定部はサーフボード裏面に沿う薄板状に形成され、
前記推進補助フィンは、基端部を固定部にヒンジにより連結されて板面がサーフボード裏面にほぼ沿う波よけ姿勢とサーフボードの長手方向にほぼ直交する波受け姿勢との間で回転する請求項1記載のサーフボードの推進補助装置。
【請求項3】
前記固定部はサーフボードへの固定によって該サーフボードに形成される安定用のフィンの後方に前記ヒンジを隣接して配置し、
前記推進補助フィンは、前記安定用のフィンによりサーフボード前方側への倒伏を規制されて追い波によって波受け姿勢を保持する請求項2記載のサーフボードの推進補助装置。
【請求項4】
前記固定部には、サーフボード裏面に着脱自在に装着される安定用のフィンとサーフボードとの間に挟持される挟持部が形成される請求項1、2または3記載のサーフボードの推進補助装置。
【請求項5】
前記固定部によってサーフボードの後端部に装着される請求項1ないし4のいずれかに記載のサーフボードの推進補助装置と、
サーフボードの先端に装着されて先端のサーフボード基底部との間の高低差を広げ、前記サーフボードの推進補助装置による追い波を利用した推進時におけるサーフボード先端部の水面下への沈み込みを防ぐノーズキャップとを有する波乗り補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−230315(P2008−230315A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69484(P2007−69484)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)