説明

サーマルプリンタ及びプログラム

【課題】所望のサーマルヘッドを容易に組み入れることを可能とする。
【解決手段】実施形態のサーマルプリンタは、電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子が配置され、発熱素子の発熱により記録媒体に印字するサーマルヘッドと、サーマルヘッドに供給される電圧を検出する検出部と、サーマルヘッドに供給される電圧に応じて印字速度を可変制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、サーマルプリンタ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のサーマルプリンタは、色々な場所で使用される場合が多くなっている。具体的には、サーマルプリンタは、従来からの店頭や倉庫での使用に加えて、屋外のイベントや野外市場、宅配でのラベルやレシートの発行などの様々な場面で使用されるようになっている。さらに、サーマルプリンタは、1つの場面での専用機としてではなく、複数の場面での汎用機として使用したいなどの要望が増えている。そして、様々な場面や汎用機としてサーマルプリンタを使用するため、サーマルプリンタのサーマルヘッドには、24Vの電圧供給により高速印字が可能なものから、12Vの電力供給により低速ながら消費電力を少なくしたものなど、様々な種類がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した様々なサーマルヘッドには、供給される電圧によって適した印字速度がある。したがって、従来のサーマルプリンタでは、組み入れるサーマルヘッドに応じた印字速度に調整する必要があり、所望のサーマルヘッドを容易に組み入れることができなかった。例えば、高速印字が可能な24Vの電圧供給で印字するサーマルヘッドや、低速ながら消費電力を少なくした12Vの電圧供給で印字するサーマルヘッドなどの様々な種類のサーマルヘッドを使用される場面に合わせて選定してサーマルプリンタに組み入れる場合は、組み入れるサーマルヘッドの種類に合わせた印字速度に調整する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、実施形態のサーマルプリンタは、電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子が配置され、前記発熱素子の発熱により記録媒体に印字するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに供給される電圧を検出する検出部と、前記サーマルヘッドに供給される電圧に応じて印字速度を可変制御する制御部とを備える。
【0005】
また、実施形態のプログラムは、電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子が配置され、前記発熱素子の発熱により記録媒体に印字するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに供給される電圧を検出する検出部とを備えたサーマルプリンタを制御するコンピュータを、前記サーマルヘッドに供給される電圧に応じて印字速度を可変制御する制御手段として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態にかかるサーマルプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、カバーが開いた状態のサーマルプリンタの外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、用紙搬送経路を示す模式図である。
【図4】図4は、サーマルプリンタの制御系を示すブロック図である。
【図5】図5は、プリンタ制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、テーブルデータを例示する概念図である。
【図7】図7は、サーマルプリンタの動作の一例を示すフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、サーマルプリンタ及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、サーマルプリンタ及びプログラムの一実施形態であって、その構成や仕様等を限定するものではない。本実施形態では、台紙に複数のラベルが貼付されたラベル用紙を巻き取った用紙ロールを内部に収納し、サーマルヘッドによりバーコードなど印刷を行う感熱式のサーマルプリンタを例示する。
【0008】
本実施形態にかかるサーマルプリンタの概略構造について図1、図2を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかるサーマルプリンタ1の外観を示す斜視図である。図2は、カバーが開いた状態のサーマルプリンタ1の外観を示す斜視図である。
【0009】
サーマルプリンタ1は、直方体形状の外観形状を有しており、サーマルプリンタ1の印字機能、用紙送り機能をなす印字機構300(図4参照)および電源となる充電池270(図4参照)などは、ハウジング102内に収納されている。本実施形態においては、充電池270としてリチウムイオン電池(バッテリ電池)を使用している。
【0010】
ハウジング102は、台紙に複数の記録媒体であるラベルL(図2参照)が貼付されたラベル用紙PTを巻き取った用紙ロールPRを収納する内部構造を有しており、用紙ロールPRを内部に導入できるように上面に開口部106が形成されている。開口部106にはカバー107が回動自在に配置されている。開口部106は、カバー107を開閉することにより開状態又は閉状態にされる。
【0011】
なお、ハウジング102には、カバー107の開閉状態を検知するカバー開閉センサ57(図4参照)が設けられている。カバー開閉センサ57は、機械式センサであるマイクロスイッチで構成されており、カバー107がハウジング102から開放され、開口部106が開放された状態では電流が流れないオフ状態となる。一方、カバー107が開口部106を覆った状態では電流が流れるオン状態となる。なお、このカバー開閉センサ57は、上述したマイクロスイッチに限られるものではなく、光センサを備えた非接触式スイッチなども使用することができる。
【0012】
カバー107は、開口部106の一辺をなすハウジング102の奥側辺108に取り付けられている。カバー107を閉じた状態において、カバー107の先端である外側辺111と、開口部106の一辺である手前側辺109との間には、サーマルプリンタ1の幅方向に印字されたラベル用紙PTを取り出すための細長い隙間部が形成される。この隙間部は、用紙排出口110として機能する。
【0013】
また、ハウジング102の一側面には、各種のコネクタ(例えばUSB(Universal Serial Bus)コネクタなど)を有する接続コネクタ部103および充電池270の着脱を可能とするバッテリー収納部104が配置されている。
【0014】
用紙排出口110から排出されたラベル用紙PTをカットするため、用紙排出口110を構成するハウジング102の手前側辺109やカバー107の外側辺111は、鋭利な形状に形成されている。
【0015】
ハウジング102の内部には、用紙ロールPRを着脱自在に収納可能な用紙収納部105が形成されている。用紙ロールPRは、ロール軸をサーマルプリンタ1の幅方向に向けた状態で用紙収納部105に収納され、プラテンローラ117によって引き出されて用紙排出口110(図1参照)に向けて搬送される。このプラテンローラ117に対向してラインサーマルヘッド12が配置されている。
【0016】
ラインサーマルヘッド12は、下方に配置されたヘッドブラケット115に着脱できるように配置されている。ヘッドブラケット115は、ハウジング102に固定され、ラインサーマルヘッド12をサーマルプリンタ1の奥側上方に付勢する。また、ラインサーマルヘッド12のサーマルプリンタ1の奥側には、ヘッドカバー116が隣接して配置される。ヘッドカバー116は、ハウジング102に必要に応じて装着され、ラインサーマルヘッド12を付勢してラインサーマルヘッド12の振動を防止する。
【0017】
ラインサーマルヘッド12は、本実施形態にかかるサーマルプリンタ1がライン型の印刷方式を採用することから、複数の発熱素子24がライン状に配置されている。ラインサーマルヘッド12は、ヘッドコントローラ40(図4参照)の制御に基づいて発熱素子24が発熱することで、ラベル用紙PTのラベルLを加熱し印字を行う。ラインサーマルヘッド12はヘッドブラケット115に着脱自在に配置され、例えば203dpiのものと、300dpiのものとを選択して配置することができる。なお、本実施形態では、203dpiのラインサーマルヘッド12がヘッドブラケット115に配置されているものとする。
【0018】
また、ハウジング102の内部には、駆動ギア119が配置されている。駆動ギア119は、モータ制御部134(図4参照)に制御されて駆動するステッピングモータ131(図4参照)を駆動源として回動する。
【0019】
カバー107において、プラテンローラ117の近傍には、用紙抑えローラ118が配置されている。プラテンローラ117および用紙抑えローラ118は、いずれもサーマルプリンタ1の幅方向に回転軸を向けて回動自在となっている。
【0020】
プラテンローラ117は、カバー107が閉じられた状態でラインサーマルヘッド12の発熱素子24と接する位置に位置決めされてカバー107に配置されている。サーマルプリンタ1の正面側からみてプラテンローラ117の左側には、プラテンローラ117と一体に回動する従動ギア119aが接続されている。
【0021】
従動ギア119aは、カバー107が閉じられた状態になると駆動ギア119と噛み合い、駆動ギア119に駆動される。用紙抑えローラ118は、カバー107が閉じられた状態でヘッドカバー116と接する位置に位置決めされるようにカバー107に接続されている。カバー107が閉じられると、カバー107に取り付けられている従動ギア119aは、駆動ギア119と噛合し、従動ギア119aに連結されたプラテンローラ117を回転駆動する。本実施形態において、駆動ギア119、従動ギア119aとは変速機132(図4参照)を構成する。
【0022】
本実施形態では、用紙ロールPRは、用紙収納部105内に配置され、レバー122で取り付け/取り外し可能に配置され、その間隔を用紙ロールPRの間隔にあわせて変更できる2枚のガイドフェンス121の間に配置されている。
【0023】
また、ハウジング102には、外部電源からの直流電力を入力する直流電力入力部210が配置されている。この直流電力入力部210にACアダプタ400のプラグ404が挿し込まれることで、サーマルプリンタ1には直流電力が供給される。
【0024】
ACアダプタ400は、サーマルプリンタ1と別体に形成され、外部の商用電力コンセントに挿し込まれて、直流電力をプラグ404から出力する。ACアダプタ400は、内部に直流変換回路を備えた本体401と、本体401に取り付けられたコンセントプラグ402と、直流電力出力用のケーブル403と、プラグ404とを備える。例えば、ACアダプタ400は、コンセントプラグ402から入力されたAC100Vの電力をケーブル403先端のプラグ404にDC24Vとして出力する。
【0025】
なお、直流電力入力部210から直流電力を供給する装置としては、汎用ACアダプタの他、カーアダプタ(入出力12V)、DC−DCコンバータ(入力10〜60V、出力20V)等を使用してもよい。プラグ404を直流電力入力部210に接続することにより、サーマルプリンタ1に直流電力が供給され、サーマルプリンタ1の駆動や充電池270の充電が可能な状態になる。
【0026】
加えて、ハウジング102には、表示・操作部150が設けられている。表示・操作部150には、電源スイッチ151と、ユーザが紙送りなどを指示するための紙送りボタン152と、ユーザが紙送りの一時停止などを指示するための一時停止ボタン153と、充電池270の充電状態をユーザに報知するためのインジケータ154と、LCD155(Liquid Crystal Display)と、通信用窓156とが設けられている。概略的には、サーマルプリンタ1は、通信用窓156および通信インタフェース29(図5参照)を介した赤外線通信や、接続コネクタ部103および通信インタフェース29を介したデータ通信によって、外部機器とのデータ送受信を実行できる。例えば、このデータ送受信によって、バーコードなどの印字データを外部機器から受信し、RAM13やフラッシュメモリ14(いずれも図5参照)に蓄積して印字することができる。外部機器は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機、ハンディターミナル等であって、ユーザによる操作入力などに応じて各種演算処理を実行する情報機器であってよい。
【0027】
次に、用紙収納部105とラインサーマルヘッド12とを結ぶ用紙搬送経路について図3を参照して説明する。図3は、用紙搬送経路を示す模式図である。
【0028】
図3に示すように、用紙収納部105とラインサーマルヘッド12とを結ぶ用紙搬送経路中には、搬送される用紙の位置を検出するセンサであるラベルセンサ56が設けられている。具体的には、ラベルセンサ56は、ラベル用紙PTの台紙に添付されたラベルLの位置を光の明暗によって検出するフォトセンサである。ラベルセンサ56は、ラベル用紙PTの台紙に添付されたラベルL間のギャップを検出するための透過型センサでもよいし、ラベル用紙PTの台紙に貼付されたラベルLを検出するための反射型センサでもよい。ラベルセンサ56はプリンタ制御部135(図4参照)に接続されている。プリンタ制御部135は、ラベルセンサ56の出力値と予め設定された閾値(設定値)とを比較して明暗を区別することで、ラベルLを検出している。また、ラベルセンサ56は、搬送されるラベルLの位置を検出するだけでなく、用紙上の所定位置に印刷するために用紙上に予め設けられたブラックマークを検出してもよい。
【0029】
次に、サーマルプリンタ1の制御系について説明する。ここで、図4は、サーマルプリンタ1の制御系を示すブロック図である。
【0030】
図4に示すように、サーマルプリンタ1の印字機構300は、ラインサーマルヘッド12にストローブ信号(STB)、印字信号を含む印字制御信号(DTA)を出力するヘッドコントローラ40と、ステッピングモータ131に駆動パルス信号を出力するモータ制御部134とを備えている。そして、プリンタ制御部135は、カバー開閉センサ57、ラベルセンサ56、表示・操作部150、印字機構300など、装置全体を制御する。
【0031】
また、サーマルプリンタ1の印字機構300は、ヘッドブラケット115に取り付けられたラインサーマルヘッド12の解像度が300dpiのものであるか、203dpiのものであるかを検出する印字密度検出部136を備えている。なお。本実施形態では、上述したように、ヘッドブラケット115に取り付けられたラインサーマルヘッド12の解像度が203dpiの場合について説明する。
【0032】
ここで、図5は、プリンタ制御部135の構成を示すブロック図である。図5に示すように、プリンタ制御部135は、各種の演算処理を実行して各部を中央制御するCPU(Central Processing Unit)17を有している。このCPU17には、RAM(Random Access Memory)13および電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性メモリであるフラッシュメモリ14がシステムバス15を介して接続されている。
【0033】
フラッシュメモリ14は、サーマルプリンタ1の動作プログラムの他、テーブルデータ140等の各種設定情報を記憶する。CPU17は、フラッシュメモリ14に記憶された動作プログラムをRAM13の作業領域に展開して実行することにより各部を制御する。
【0034】
RAM13は、各種の可変情報を一時的に記憶する。例えば、RAM13の一部の領域は、ラベル用紙PTのラベルLに印刷される印刷データ(画像データ)が展開される印刷バッファとして利用される。印刷データは、外部機器から受信した印刷対象となるデータである。なお、印刷データは、フラッシュメモリ14に記憶されたものであってもよい。
【0035】
また、CPU17には、通信インタフェース29、表示コントローラ141、キーコントローラ142、センサコントローラ143がシステムバス15を介して接続されている。表示コントローラ141は、CPU17の制御のもとで、表示・操作部150のLCD155における表示(バッテリ残量、電波受信状況、ラベルセンサ56による用紙の位置の検出結果など)を制御する。キーコントローラ142は、CPU17の制御のもとで、表示・操作部150の電源スイッチ151、紙送りボタン152、一時停止ボタン153などからのキー入力を制御する。センサコントローラ143は、CPU17の制御の下で、カバー開閉センサ57やラベルセンサ56などのセンサ類からの入力を制御する。
【0036】
通信インタフェース29は、接続コネクタ部103や通信用窓156などを介し、ホストコンピュータなどの外部の機器と通信を行うためのインタフェースである。通信インタフェース29は、例えばIrDA等の赤外線通信、USB、無線LAN(Local Area Network)、RS−232C、Bluetooth(登録商標)等により構成され、ホストコンピュータに設けられた通信インタフェースとの通信が可能である。
【0037】
図6は、テーブルデータ140を例示する概念図である。図6に示すように、テーブルデータ140は、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧毎(例えば12[V]…24[V]…)に、その電圧での印字率[%]に対応して、ラインサーマルヘッド12に供給するストローブ信号(STB)の通電幅[ms]と、ステッピングモータ131(図4参照)に供給する駆動パルス信号の通電幅[ms]とを記憶する。ストローブ信号の通電幅は、ラインサーマルヘッド12においてライン状に配置される複数の発熱素子24の駆動時間に相当し、ラインサーマルヘッド12のライン方向、すなわち走査方向における印字速度に相当する。また、駆動パルス信号の通電幅は、ステッピングモータ131により搬送されるラベル用紙PTの搬送速度に相当し、ラインサーマルヘッド12のライン方向と直交する副走査方向における印字速度に相当する。
【0038】
以上のように、テーブルデータ140は、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧毎に、その電圧での印字率に対応した印字速度とする制御値(ストローブ信号の通電幅、駆動パルス信号の通電幅)を記憶する。CPU17は、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧と、ラインサーマルヘッド12における印字率とをもとに、テーブルデータ140を参照して得られた制御値に従ってステッピングモータ131、ラインサーマルヘッド12を制御する。これにより、サーマルプリンタ1では、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧や、印字率に対応して、ラベル用紙PTのラベルLに印字する際の印字速度を可変制御できる。
【0039】
ここで、テーブルデータ140に記憶されるストローブ信号の通電幅及び駆動パルス信号の通電幅は、印字率の増加に応じて大きな値(例えば0.AAA<0.BBB,0.WWW<0.XXX)が記憶されている。このため、印字率に応じた適切な印字速度とすることで、印字の濃淡を均一なものとすることができる。例えば、印字率が標準(印字率50%)より大きい値である場合は、印字速度を標準より小さくすることで印字が薄くなることを防止する。また、印字率が標準より小さい値である場合は、印字速度を大きくすることで、印字が濃くなることを防止する。
【0040】
また、テーブルデータ140に記憶される電圧毎のストローブ信号の通電幅及び駆動パルス信号の通電幅は、同じ印字率において電圧が高くなるのに従って小さな値(0.BBB>0.DDD,0.XXX>0.ZZZ)が記憶されている。このため、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧に応じた適切な印字速度とすることができる。例えば、ラインサーマルヘッド12が24[V]の電圧供給で駆動する場合は、12[V]の電圧供給で駆動するラインサーマルヘッドと比較して短時間で印字できることから、12[V]の電圧供給で駆動するラインサーマルヘッドよりも印字速度を早くする。
【0041】
図4に戻り、サーマルプリンタ1は、ハウジング102の内部に電力制御回路200を備える。電力制御回路200は、表示・操作部150の電源スイッチ151のON/OFFに従って、ACアダプタ400等を介した外部の商用電力コンセントからの電力または充電池270からの電力の供給/遮断をソフト的に制御する。ここでいうソフト的とは、サーマルプリンタ1の制御信号によって電力の供給/遮断を制御することを意味する。
【0042】
電力制御回路200は、直流電力入力部210と、電圧変更部220と、電力監視部230と、電力制御部240と、電力遮断部250と、電源切替部260と、システム電源供給回路280とを備える。
【0043】
直流電力入力部210は、発熱素子24のブロックに対して、予め設定された所定の電圧値および電流値の電力を供給する。本実施形態においてラインサーマルヘッド12は、24[V]、19[V]の電圧供給で駆動するものとし、直流電力入力部210は、24Vの電圧および当該24Vの電圧に応じて設定された電流値:1.2Aの電流を供給する。つまり、直流電力入力部210は、発熱素子24のブロックに対して28.8W(以下、29Wとする)の電力を供給する。
【0044】
なお、充電池270は、発熱素子24のブロックに対して、19Vの電圧および当該19Vの電圧に応じて設定された電流値:1.5Aの電流を供給する。つまり、充電池270は、発熱素子24のブロックに対して28.5W(以下、29Wとする)の電力を供給する。
【0045】
電圧変更部220は、直流電力入力部210から入力された直流電力の電圧(24V)を充電池270の充電に適した電圧(例えば8.4Vまたは16.8V:充電池の仕様により異なる)に変更して、充電池270に供給する。本実施形態では、充電池270はリチウムイオン充電池であるので、CC/CV充電方式、すなわち、外部DC電圧を降圧して、電流電圧一定充電を行う。
【0046】
また、電圧変更部220は、充電池270から供給される電電圧値をADC(アナログ/デジタル変換)によりデジタル変換して検出し、検出した電圧値を電源切替部260やプリンタ制御部135に通知する。また、電圧変更部220は、充電に際して、充電電圧、電流を可変にすることや、再充電の閾値を調整することにより、電池の寿命を延ばすことができる長寿命モードに設定することができる。電力監視部230は、直流電力入力部210からの直流電力の電圧を監視する。具体的には、電力監視部230は、発熱素子24のブロックに供給される電圧値をADC(アナログ/デジタル変換)によりデジタル変換して検出し、検出した電圧値を電力制御部240やシステム電源供給回路280に通知する。電力遮断部250は、電力監視部230により直流電力の電圧(例えば、24V)が検出されなくなった場合、直流電力入力部210からの直流電力を遮断状態にする。電源切替部260は、システム電源供給回路280に供給する電圧を直流電力入力部210からの電圧および充電池270からの電圧のうちの一方に切り替える。
【0047】
電力制御部240は、電力遮断部250および電源切替部260に対して以下の制御を行う。まず、電力制御部240は、電力監視部230の検出結果に基づいて、直流電力入力部210からの直流電力の電圧が24Vである場合(直流電力入力部210から電圧供給がある場合)、電源切替部260を動作させ、直流電力入力部210からの電圧をシステム電源供給回路280および電圧変更部220に導通させる。これにより、電力制御部240は、電圧変更部220から充電池270に充電用の電圧(例えば8.4V)を供給する。さらに、電力制御部240は、プリンタ制御部135から印字信号を受けると、印字機構300の駆動電力をACアダプタ400の電力とする。
【0048】
また、電力制御部240は、電力監視部230の検出結果に基づいて、直流電力入力部210からの直流電力の電圧が検出されなかった場合(または電力監視部230で検出された直流電力の電圧値が充電池270の電圧より低い場合)、電源切替部260を動作させ、充電池270からの電圧をシステム電源供給回路280に導通させる。これにより、電力制御部240は、プリンタ制御部135からの印字信号を受けると、印字機構300の駆動電力を充電池270の電力とする。
【0049】
システム電源供給回路280は、プリンタ制御部135を介して、印字機構300、カバー開閉センサ57、ラベルセンサ56および表示・操作部150などの各部に電力を供給する。印字機構300のラインサーマルヘッド12には、直流電力入力部210からの直流電力の電圧または充電池270からの電力の電圧を供給する。ここで、システム電源供給回路280は、直流電力入力部210からの直流電力の電圧または充電池270からの電力の電圧の内のどちらをラインサーマルヘッド12に供給しているかを、プリンタ制御部135に通知する。この時、直流電力入力部210からの直流電力の電圧を供給している場合は、電力監視部230により検出された、ラインサーマルヘッド12に供給している電圧の電圧値をプリンタ制御部135に通知する。したがって、プリンタ制御部135では、ラインサーマルヘッド12に供給している電圧値に対応した印字速度とすることが可能となる。
【0050】
また、システム電源供給回路280は、プリンタ制御部135、カバー開閉センサ57、ラベルセンサ56、および表示・操作部150などを駆動する電力(例えば電圧、5V、3.5V、3.3V、1.5V等)を供給する。このように、システム電源供給回路280は、直流電力入力部210からの直流電力の電圧または充電池270からの電力の電圧の範囲で適正に動作できるように各部への動作入力電圧が設定されている。
【0051】
また、システム電源供給回路280は、充電池270および直流電力入力部210からの直流電力で駆動する各電源系のオン、オフの制御を行う。すなわち、システム電源供給回路280は、直流電力入力部210に直流電力が供給されている状態では直流電力入力部210からの直流電力をプリンタ制御部135に供給し、直流電力入力部210に直流電力が供給されていない状態では充電池270からの直流電力をプリンタ制御部135に供給する。
【0052】
なお、プリンタ制御部135は、印字機構300の制御を行う他、電力供給に際しては、電力制御回路200およびシステム電源供給回路280からの情報を取得し、電圧変更部220およびシステム電源供給回路280が充電できる条件であるとき、電力制御部240に充電開始の指示を送る。
【0053】
また、プリンタ制御部135は、表示・操作部150によるユーザの操作や、外部直流電力が供給されるか否かなどの状況に応じて、サーマルプリンタ1をさまざまな状態モードに設定する。モードとしては、ラインサーマルヘッド12による印刷が直ちに行われるインラインモード、表示・操作部150によるユーザの操作を受け付けて各種設定を行うオンラインモード、電力消費を低減するためシステムを省エネルギー状態としたスリープモード、ラインサーマルヘッド12で印字を行う印字モード、充電池270を充電する充電モード、充電池270の寿命を縮めることがない低電圧で充電を行う長寿命充電モードが設定されている。
【0054】
このようなサーマルプリンタ1では、用紙収納部105に用紙ロールPRを収納してラベル用紙PTを引き出して、カバー107を閉じると、引き出されたラベル用紙PTはラインサーマルヘッド12およびプラテンローラ117の間に挟まれ、かつ、ヘッドカバー116および用紙抑えローラ118の間に挟まれる。この状態でプリンタ制御部135の制御の下に印字モードとなった場合には、ステッピングモータ131がモータ制御部134の制御によって駆動されると、ラベル用紙PTは、用紙ロールPRからラインサーマルヘッド12を経由して用紙排出口110に向かう方向に搬送される。また、ラインサーマルヘッド12は、ヘッドコントローラ40の制御に基づいて発熱素子24を発熱させることによって、搬送されるラベル用紙PTのラベルLに対し所定の内容を印刷する。
【0055】
ここで、印字速度にかかるサーマルプリンタ1の動作の詳細について説明する。図7は、サーマルプリンタ1の動作の一例を示すフロチャートである。
【0056】
図7に示すように、印字モードの設定などによりラインサーマルヘッド12による印字が開始されると、プリンタ制御部135は、ラインサーマルヘッド12に供給する電圧値を取得する(S1)。具体的には、プリンタ制御部135は、直流電力入力部210からの直流電力の電圧をラインサーマルヘッド12に供給している場合には電力監視部230により検出された電圧値を、充電池270からの電力の電圧をラインサーマルヘッド12に供給している場合には電圧変更部220により検出された電圧値を取得する。
【0057】
次いで、プリンタ制御部135は、入力された印刷データをもとに、ラインサーマルヘッド12における印字率を取得する(S2)。具体的には、プリンタ制御部135は、複数の発熱素子24の中で、印刷データにより実際に印字を行う発熱素子24の数と発熱素子24の総数との比である印字率を算出する。
【0058】
次いで、プリンタ制御部135は、S1、S2で取得した電圧値と、印字率とをもとに、テーブルデータ140を参照する(S3)。次いで、プリンタ制御部135は、S3による参照で得られたストローブ信号と駆動パルス信号の通電幅で、ラインサーマルヘッド12における印字を制御する(S4)。すなわち、プリンタ制御部135は、ラインサーマルヘッド12に供給する電圧の電圧値と、ラインサーマルヘッド12の印字率とに応じて、ラインサーマルヘッド12によりラベル用紙PTのラベルLに印字する際の、走査方向及び副走査方向における印字速度を制御する。
【0059】
次いで、プリンタ制御部135は、表示・操作部150による印字終了の操作など、印刷データによる印字の終了の有無を判定する(S5)。ここで、印字を終了する場合(S5:YES)、プリンタ制御部135は、印字モードを終了させて処理を終了する。また、印字を継続する場合(S5:NO)、プリンタ制御部135はS1へ処理を戻す。
【0060】
以上のように、サーマルプリンタ1は、電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子24が配置され、その発熱素子24の発熱により記録媒体であるラベルLに印字するラインサーマルヘッド12に供給される電圧を電力制御回路200で検出している。そして、サーマルプリンタ1は、プリンタ制御部135において、電力制御回路200で検出された、ラインサーマルヘッド12に供給される電圧に応じて印字速度を可変制御している。このため、サーマルプリンタ1は、24[V]…12[V]等の電圧供給で駆動する様々なラインサーマルヘッドの中で、所望のラインサーマルヘッド12を組み入れた場合でも適切な印字速度とすることができ、所望のラインサーマルヘッド12を容易に組み入れることができる。
【0061】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0062】
さらに、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0063】
本実施形態のサーマルプリンタ1で実行されるプログラムは、上述した機能構成を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上述した機能構成が主記憶装置上にロードされ、主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0064】
1…サーマルプリンタ、12…ラインサーマルヘッド、13…RAM、14…フラッシュメモリ、15…システムバス、17…CPU、24…発熱素子、29…通信インタフェース、40…ヘッドコントローラ、50…カバー開閉センサ、56…ラベルセンサ、57…カバー開閉センサ、101…プリンタ、102…ハウジング、103…接続コネクタ部、104…バッテリー収納部、105…用紙収納部、106…開口部、107…カバー、108…奥側辺、109…手前側辺、110…用紙排出口、111…外側辺、112…サーマルヘッド、114…発熱素子列、115…ヘッドブラケット、116…ヘッドカバー、117…プラテンローラ、118…用紙抑えローラ、119…駆動ギア、119a…従動ギア、121…ガイドフェンス、122…レバー、131…ステッピングモータ、132…変速機、133…ヘッド制御部、134…モータ制御部、135…プリンタ制御部、136…印字密度検出部、140…テーブルデータ、141…表示コントローラ、142…キーコントローラ、143…センサコントローラ、150…表示・操作部、151…電源スイッチ、152…紙送りボタン、153…一時停止ボタン、154…インジケータ、155…LCD、156…通信用窓、200…電力制御回路、210…直流電力入力部、220…電圧変更部、230…電力監視部、240…電力制御部、250…電力遮断部、260…電源切替部、270…充電池、280…システム電源供給回路、300…印字機構、400…ACアダプタ、401…本体、402…コンセントプラグ、403…ケーブル、404…プラグ、L…ラベル、PT…ラベル用紙、PR…用紙ロール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平5−238044号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子が配置され、前記発熱素子の発熱により記録媒体に印字するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに供給される電圧を検出する検出部と、
前記サーマルヘッドに供給される電圧に応じて印字速度を可変制御する制御部と、
を備えるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記サーマルヘッドで前記記録媒体に印字する際の印字率に応じて前記印字速度を可変制御する、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記サーマルヘッドに供給される電圧毎に、当該電圧での印字率に対応した印字速度とする制御値を記憶する制御値記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記サーマルヘッドに供給される電圧と、前記記録媒体に印字する際の印字率とをもとに前記制御値記憶部を参照して得られる制御値をもとに、前記印字速度を可変制御する、
請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
電圧の供給を受けて発熱する複数の発熱素子が配置され、前記発熱素子の発熱により記録媒体に印字するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに供給される電圧を検出する検出部とを備えたサーマルプリンタを制御するコンピュータを、
前記サーマルヘッドに供給される電圧に応じて印字速度を可変制御する制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記サーマルヘッドで前記記録媒体に印字する際の印字率に応じて前記印字速度を可変制御する、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記サーマルヘッドに供給される電圧と、前記記録媒体に印字する際の印字率とをもとに、前記サーマルヘッドに供給される電圧毎に、当該電圧での印字率に対応した印字速度とする制御値を記憶する制御値記憶部を参照して得られる制御値をもとに、前記印字速度を可変制御する、
請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103352(P2013−103352A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246710(P2011−246710)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】