説明

サーマルプリント装置

【課題】 感熱記録用紙の画像消去部に備える従来のヒートローラによる問題を解消して、ウォームアップ時間を短縮化し、用紙に対する熱や荷重のストレスを低減し、消費電力を抑え、用紙の搬送速度を高めたサーマルプリント装置を構成する。
【解決手段】 感熱記録用紙60の搬送方向に対して直角方向で且つ用紙60に平行な向きを長手方向とするヒータ91を円筒形状のハウジング92の内部に設け、ハウジング92の用紙60の対向部にスリット状の開口93を設け、ハウジング92に対して空気を送風するブロア94を設ける。この構造により、搬送用のローラ12,23の間を用紙60が搬送される間に、その用紙60に対して非接触で熱風を吹きつけることによって画像を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感熱記録材料を用いた用紙に対して画像記録制御を行うサーマルプリント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料に対しサーマルヘッドを接触させて画像記録を行うサーマルプリンタについては多数の提案がなされている。また、ある種のタイプのサーマルプリンタ、たとえば、ロイコ染料と可逆顕色剤を用いた発色型可逆感熱記録材料(例えば、特許文献1参照)を使用して画像記録を行う、所謂リライタブルのプリント装置は、サーマルヘッドにより画像記録を行うとともに、ヒートローラを使用して画像を消去できるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このようないわゆるリライタブルのサーマルプリント装置においては、感熱記録用紙の画像を消去するために、ハロゲンランプを熱源とするヒートローラとそれに対向するプラテンとの間に用紙を通過させることによって画像の消去を行っている。図7は従来技術によるヒートローラを用いた画像消去部の構成例を示している。従来技術によれば、円筒形状のヒートローラ3の内部にハロゲンランプによるヒータを設け、このヒートローラ3を、それに対向するプラテンローラ11方向に圧縮コイルバネで押圧するように構成している。このヒートローラ3とプラテンローラ11との間に用紙60を通すことによって、用紙の記録面が所定温度まで加熱されることになる。
【特許文献1】特開2004−106308公報
【特許文献2】特開2002−331697公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようないわゆるヒートローラ方式では次のような問題およびデメリットがあることがわかった。
【0005】
(1)ハロゲンランプでヒートローラ全体を加熱することになるため、ヒートローラが画像消去可能な所定の開始温度に達するまでの時間(ウォームアップ時間)が長く(通常2分程度)かかる。
【0006】
(2)ヒートローラが用紙に対して基本的に線接触となるため、ニップ(接触面積)が少なく、消去に必要な熱エネルギを短時間で用紙に与えるためにヒートローラの温度を高く(たとえば170℃)設定しておかなければならない。そのため、用紙に対して熱ストレスがかかりやすく、またヒータの消費電力が大きくなる。
【0007】
(3)(2)と関連して、用紙に対して消去に必要な熱エネルギを与えるためには接触時間を長くしなければならないが、上記ニップが少ないため、用紙の搬送速度をたとえば60mm/s程度にしか上げることができない。すなわち、この用紙搬送速度と上記熱ストレスおよび消費電力とはトレードオフの関係にある。
【0008】
(4)ヒートローラはそれに対向するプラテンローラとともに搬送用のローラを兼ねているので、ヒートローラまたはそれに対向するプラテンローラにテンションを与えなければならない。そのため用紙には熱だけでなく荷重のストレスも加わることになる。その結果、感熱記録用紙の寿命に悪影響を与える。しかも、上記熱や荷重のストレスに対する耐性を高めようとすると用紙が厚手になり、厚手になるとヒートローラの熱容量を高めなければならないので上記ウォームアップ時間が更に長くなる、といった悪循環的問題も生じる。
【0009】
(5)ヒートローラ方式では、用紙の記録面に対してヒートローラを圧接して用紙の記録面に熱を直接伝達するので、用紙の記録面に塵埃などの異物が付着していると、その塵埃付着部分だけ正常な熱伝達がなされず画像消去不良(画像の消え残り)が生じてしまう。その結果、高品位な形成画像が得られない。
【0010】
(6)ヒートローラ方式では、用紙の記録面に対してヒートローラが圧接するので、ヒートローラの表面に付着した塵埃が用紙の記録面に転写されるおそれがある。一方、サーマルヘッドにより画像の記録を行う際に、サーマルヘッドが用紙に当接してサーマルヘッドの熱を用紙の感熱記録面に直接熱伝導させるが、用紙の記録面に上記塵埃などの異物が付着していると、その部分だけ用紙の記録面に対する熱伝達が正常になされず、正常な画像が記録されない(印字不良になる)という問題が生じる。
【0011】
そこで、この発明の目的は、用紙に直接接触するヒートローラを用いないで上述の各種問題を解消したサーマルプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)この発明のサーマルプリント装置は、熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、該用紙搬送路上を搬送されてきた感熱記録用紙を加熱して画像を消去する画像消去部と、前記用紙搬送路上を搬送されてきた感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部と、を備え、
前記画像消去部に、感熱記録用紙に接触することなく、感熱記録用紙の搬送方向に沿って、且つ該感熱記録用紙に対して所定距離分平行に放熱体を近接させて、搬送中の感熱記録用紙の記録面を所定温度にまで加熱する加熱手段を設けたことを特徴としている。
【0013】
(2)また、この発明のサーマルプリント装置は、熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、該用紙搬送路上を搬送されてきた感熱記録用紙を加熱して画像を消去する画像消去部と、前記用紙搬送路上を搬送されてきた感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部と、を備え、
前記画像消去部に、前記感熱記録用紙に接触することなく熱風を吹き付けて、該感熱記録用紙の記録面を所定温度まで加熱する加熱手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
(3)前記加熱手段は、たとえば感熱記録用紙の搬送方向に直角方向を長手方向とするヒータと、該ヒータの周囲を囲み、感熱記録用紙側を開口させたハウジングと、該ハウジング内に空気を流入させるブロアとで構成する。
【0015】
(4)前記ハウジングの内面は、感熱記録用紙に平行で且つ該感熱記録用紙の搬送方向に対して直角方向に延びる直線を焦点とする放物面鏡を構成し、当該焦点の位置に前記ヒータを配置する。
【発明の効果】
【0016】
(1)この発明のサーマルプリント装置によれば、画像消去部の加熱手段が、感熱記録用紙に接触することなく、感熱記録用紙の搬送方向に沿って、且つ該感熱記録用紙に対して所定距離分平行に放熱体を近接させて、搬送中の感熱記録用紙の記録面を所定温度にまで加熱するので、従来のヒートローラを用いることによる各種問題が解消される。すなわち、熱容量の大きなヒートローラを用いないためウォームアップ時間が短縮化できる。また、ヒートローラの場合のニップに相当する面積が広くなるので、用紙に対する熱ストレスが低減でき、消費電力が抑えられ、用紙の搬送速度も高めることができる。また、ヒートローラまたはプラテンローラによる荷重のストレスも回避できる。さらに、画像消去部で用紙の記録面に塵埃が付着しにくく、上記の画像記録部での塵埃などによる問題も解消され高品位な画像形成が可能となる。
【0017】
(2)また、この発明のサーマルプリント装置によれば、画像消去部の加熱手段が、用紙に接触することなく熱風を吹きつけることによって用紙の記録面を所定温度にまで加熱するので、上記(1)と同様に従来のヒートローラを用いることによる各種問題がされる。しかも、用紙の記録面に付着していた塵埃などの異物が画像消去部で熱風によって吹き飛ばされるので、上記の画像記録部での塵埃などによる問題もさらに効果的に解消され高品位な画像形成が可能となる。
【0018】
(3)また、この発明のサーマルプリント装置によれば、画像消去部の加熱手段が、用紙搬送方向に直角方向を長手方向とするヒータと該ヒータの周囲を囲んで感熱記録用紙側を開口させたハウジングを用い、そのハウジング内に空気を流入させるブロアを備えたことにより、熱風としての空気の温度上昇効率を高めることができ、且つ用紙に対して必要な範囲にのみ効率良く熱風を吹きつけることができる。そのため上記ウォームアップ時間、消費電力および用紙の搬送速度をより高めることができる。
【0019】
(4)また、この発明のサーマルプリント装置によれば、ヒータを収めるハウジングの内面が、感熱記録用紙に平行で且つ該感熱記録用紙の搬送方向に対して直角方向に延びる直線を焦点とする放物面鏡を構成していて、その焦点の位置にヒータを配置したことにより、ヒータから放射される熱で、用紙搬送方向に広がる所定範囲を均等に加熱することができ、用紙を最も効率良く加熱できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明の実施形態であるプリント装置100の内部の構成を示す断面図である。プリント装置100の図1における右側には大量の用紙を載置する昇降テーブル14と、それとは別の給紙トレイ16を設けている。昇降テーブル14に載置された用紙は、昇降テーブル14が上昇することによって、最も上部の用紙の図における左端部がピックアップローラ9に当接する。このピックアップローラ9の駆動軸にはクラッチを設けていて、そのクラッチのオン状態でこのピックアップローラ9が図1における右方向に回転する。このことによって、用紙は、図における左方向に搬送される。給紙ローラ6は図における右方向に回転しているので、給紙された用紙は左方向にそのまま搬送される。
【0021】
レジストローラ21の駆動軸にはクラッチを設けていて、このクラッチのオフ状態で、給紙されてきた用紙の先端(図1における左端)がレジストローラ21に当接する。その後、上記クラッチのオンによりレジストローラ21が左方向に回転して用紙は図における左方向に搬送されていく。
【0022】
同様に、給紙トレイ16に載置された用紙の最上面の用紙の先端(図における左端)はピックアップローラ8に当接する。ピックアップローラ8の駆動軸にはクラッチを設けていて、そのクラッチのオン状態でピックアップローラ8が図1における右方向に回転し、用紙は図における左方向に搬送される。給紙ローラ7は図における右方向に回転しているので、給紙された用紙は左方向に搬送される。レジストローラ20の駆動軸にはクラッチを設けていて、このクラッチのオフ状態で、給紙されてきた用紙の先端がレジストローラ20に当接する。その後、上記クラッチのオンによりレジストローラ20が左方向に回転して用紙は図における左方向に搬送されていく。
【0023】
用紙搬送路上で、搬送ローラ13と搬送ローラ22との間には非接触ICタグの読み書き等を行うR/W部5を配置している。搬送ローラ13の駆動軸にはクラッチを設けていて、搬送途中の用紙に内装されている非接触ICタグに対してR/W部5が読み書きできる位置に達したとき、搬送ローラ13のクラッチをオフすることによって、その状態で用紙を停止させる。この用紙の停止状態でR/W部5がその非接触ICタグに対するデータの読み書きを行う。その後、搬送ローラ13のクラッチをオンすることによって用紙を搬送させる。搬送ローラ22は、その用紙を前方(図における左方向)へ搬送する。
【0024】
この搬送ローラ22の前方にはクリーニングローラ4と、それに対向する駆動ローラであるプラテンローラ12とを配置してクリーニング部を構成している。このクリーニングローラ4とプラテンローラ12との間を用紙が通過する際、クリーニングローラ4は用紙の上面(記録面)に付着している付着物を取り除く。
【0025】
上記クリーニングローラ4よりさらに前方には画像消去部95を構成している。この画像消去部95は、そこを通過する用紙を所定温度にまで上昇させる。
【0026】
画像消去部95よりさらに前方には、用紙搬送路の上下に、用紙の表裏面に対して空気を吹き付ける冷却ファン2,2を配置して冷却部を構成している。この上下の冷却ファン2,2によってその間を搬送される用紙の温度を徐々に下げる。これによって用紙に記録されていた画像を消去する。
【0027】
冷却ファン2,2による冷却部よりさらに下流には、サーマルヘッド1とこのサーマルヘッド1との間で用紙を挟むプラテンローラ10を配置して画像記録部を構成している。用紙の先端がサーマルヘッド1の下部に到達した時、サーマルヘッド1は下降し、用紙の記録面に当接し、用紙の搬送と共にサーマルヘッドの駆動によって画像を記録する。
【0028】
上記サーマルヘッド1の位置よりさらに下流には搬送ローラ24,25および通常用紙排出部40を設けていて、画像記録済みの用紙を通常用紙排出部40にまで搬送・排出する。
【0029】
また、搬送ローラ22とプラテンローラ12との間には、フラッパにより異常用紙を下方へ落下させて排出する異常用紙排出部50を設けている。
【0030】
図2は上記画像消去部95の構成を示す図である。図2は、用紙搬送方向に沿って且つ用紙の面に垂直な方向での断面図である。円筒形の金属製ハウジング92の内部には、用紙60の搬送方向に対して直角方向で且つ用紙60に平行な向きを長手方向とするハロゲンランプによるヒータ91をハウジング92と同軸関係に配置している。ハウジング92の下部には、用紙60の搬送方向に直角方向に延びるスリット状の開口93を形成している。また、ハウジンク92の開口93に対向する上部には、開口93とほぼ同一断面積のスリットを設けて、そのスリットにブロア94からの風路を接続している。この風路は、ブロア94からの空気をハウジング92の軸方向のほぼ全幅にわたってハウジング内に送風するようにハウジング92の軸方向に延びている。またハウジング92には、その内部の雰囲気温度を検出するサーミスタ等による温度センサ80sを設けている。
【0031】
なお、用紙60は搬送路に沿って、クリーニングローラ4と対向するプラテンローラ12および搬送ローラ23によって搬送される。
【0032】
図2の(B)は、(A)に示したハウジング92に設けた開口93による加熱領域と、その温度分布の例を示している。また、図7の(B)は従来のヒートローラを用いた場合の加熱幅とその温度分布の例を示している。いずれも、(B)の下部は横軸を用紙搬送方向、縦軸を温度にとった温度分布、(B)の上部はその温度の平面分布をそれぞれ示している。
【0033】
このように従来のヒートローラ方式によれば、用紙60に対する加熱幅(ニップ)はほぼ直線状となり、そのニップでの温度分布はピーク温度が高い鋭い山型形状となる。これに対して、この第1の実施形態によれば、用紙60に対する加熱幅はヒートローラ方式に比べて大きく確保でき、その分ピーク温度を下げることができる。
【0034】
このように熱容量の大きなヒートローラを用いないためウォームアップ時間が短縮化できる。また、ピーク温度を下げることができるので、用紙に対する熱ストレスが低減でき、消費電力が抑えられ、用紙の搬送速度も高めることができる。また、ヒートローラまたはプラテンローラによる荷重のストレスも回避できる。さらに、画像消去部で用紙の記録面に塵埃が付着しにくく、上記の画像記録部での塵埃などによる問題も解消され高品位な画像形成が可能となる。しかも、ヒートローラに対向するプラテンローラが不要であるので、用紙を用紙搬送路に沿って順次搬送する搬送ローラの配置を1ローラピッチ分なくすことができ、サーマルプリント装置全体のサイズを縮小化できる。
【0035】
ここで第1の実施形態での上記各種効果の具体例を表1に示す。
[表1]
______________________________________
ローラテンション 消去速度 消去温度 ウォームアップ時間 ダウンサイズ量
______________________________________
(A) 4.2kg 60mm/s 165℃ 120s −
(B) 0kg 60〜100mm/s 120〜165℃ 30s 50〜80mm
______________________________________
表1において、(A)は従来のヒートローラ方式の例、(B)はこの実施形態による例である。また「ローラテンション」はヒートローラとプラテンローラによる機械的荷重、「消去温度」はヒートローラまたは熱風の温度である。また、「ダウンサイズ量」は用紙搬送用のローラを1つ分無くしたことによる用紙搬送方向の長さの短縮量を表している。
【0036】
図3はこのプリント装置100の制御部のブロック図である。制御回路70は次の各制御を行う。
・昇降テーブル14のモータ17に対して駆動部75を介して駆動信号を出力する。
・ピックアップローラのクラッチ18,19に対して駆動部77,78を介してそれぞれ駆動信号を出力する。
・異常用紙を異常用紙排出部50方向へ落下させて排出するフラッパ52に対して駆動部76を介して駆動信号を出力する。
・R/W部のクラッチ15に対して駆動部74を介して駆動信号を出力する。
・R/W部5(図3では省略)によって、用紙に内装されている非接触ICタグに対するデータの読み書きを行う。
・画像消去部95のヒータ91の制御を、駆動部73を介して行う。
・画像消去部95のブロア94の制御を、駆動部86を介して行う。
・サーマルヘッド昇降モータ26に対し駆動部72を介して駆動信号を出力する。
・サーマルヘッド1に対して駆動部71を介して駆動信号を出力する。
・キースイッチなどの操作部79の操作内容を読み取る。
・用紙搬送路上の複数の位置で用紙の有無を検出するセンサや画像消去部95の温度を検出するセンサ80sなど、各種センサ80の検出信号を読み取る。
・インターフェース90を介してホストコンピュータ101との間でデータの入出力を行う。
次に、図3に示した制御回路70の処理手順を、図4・図5を参照して説明する。
図4は前記画像消去部の制御に関するフローチャートである。まずヒータ91の通電を開始するとともに、温度センサ80sを用いてハウジンク92内部の雰囲気温度を計測し、この温度Tが予め定めた予熱温度Toに達するのを待つ(S1→S2→S3→S2→・・・)。その後、ブロア94をオンする(S4)。続いて再び温度センサ80sを用いて、上記雰囲気温度Tが予め定めた規定値T1に達するのを待つ(S5→S6→S5→・・・)。規定温度に達すれば、この画像消去部が正常に機能する状態であることを示す消去部フラグをセットし、上記雰囲気温度Tが所定値T1を保つように温度制御を開始する(S7→S8)。この温度制御は、トライアック等を用いてヒータ91への通電電力の制御によって行う。
【0037】
図5は、用紙を給紙してから排出するまでの、制御回路70の制御による一連の流れを示すフローチャートである。まず、前記消去部フラグがセットされるのを待つ(S11)。消去部フラグがセットされれば、冷却ファン2の駆動を開始する(S12)。
【0038】
その後、ピックアップローラ8または9のクラッチ18または19の一方をオンして用紙を給紙するとともに搬送を開始する(S13)。用紙搬送路上の用紙の位置を検出するセンサの読み取り結果に応じて、用紙がR/W部5に到達したことを検出すれば、R/W部5の搬送ローラ13のクラッチ15をオフする(S14→S15)。
【0039】
この状態で、用紙内の非接触ICタグはR/W部5に近接し、R/W部5は非接触ICタグからデータを読み取る(S16)。
【0040】
非接触ICタグからデータが正しく読み取れたか否かの状態(リードステータス)をチェックし(S17)、正常であれば、その非接触ICタグに書き込まれているデータに応じて、またはホストコンピュータ101からの指示に応じて用紙に画像記録すべきビットマップデータを生成する(S18)。
【0041】
その後、クラッチ15をオンすることによって用紙を再び搬送させる(S19)。これにより、用紙はクリーニングローラ4とプラテンローラ12との間を通過して、その用紙の記録面がクリーニングされる(S20)。
【0042】
その後、用紙は画像消去部95を通過することにより、用紙の記録面が所定温度まで加熱され、続く除冷によって、すでに記録されていた画像が消去される(S21)。なお、冷却ファン2を駆動することによって用紙搬送路および用紙の蓄熱を抑え、後のサーマルヘッドによる画像記録の際に用紙の記録面を所定温度範囲に保つ。
【0043】
続いて用紙の先端がサーマルヘッド1のヘッド位置の直前に到達した時、サーマルヘッド昇降モータ26を駆動してサーマルヘッド1のヘッド部を用紙に当接させ、その後サーマルヘッド1を駆動して新たな画像を記録する(S22)。
さらにそのまま用紙を搬送し、通常用紙排出部40へ排出する(S23)。
【0044】
もし、非接触ICタグからデータが読み取れなければ、または読み取ったデータが異常であれば、フラッパ52を立ち上げて、R/W部のクラッチ15をオンすることによって用紙を異常用紙排出部50へ排出する(S17→S24→S25→S26)。
【0045】
次に、第2の実施形態に係るサーマルプリント装置について図6を参照して説明する。
図6は図2に示した部分と同様の画像消去部の構成を示す図である。図2に示した例では、ハウジンク92の用紙60に対向する部分にスリット状の開口93を設けたが、この第2の実施形態に係る画像消去部では、用紙60に対向する部分に、用紙の搬送方向に沿ってその用紙に対して所定距離分平行に近接する放熱部96を設けている。ハウジング92の内部には用紙60の搬送方向に対して直角方向で且つ用紙60に平行な向きを長手方向とするハロゲンランプによるヒータ91を設けている。図2に示した構造と同様に、ハウジンク92にはブロア94を接続していて、ブロア94からの空気をハウジング92の上部から内部へ流入させるように構成している。
【0046】
また、この例では放熱部96に、用紙搬送方向に直角方向で且つ用紙に平行な向きに延びるスリット状の開口93を設けていて、この開口93から熱風を用紙60に吹きつけるようにしている。ただし、図2に示した構造とは異なり、スリット状の開口93を複数設けている。
【0047】
ハウジング92の内面は、用紙60に垂直で且つ用紙60の搬送方向に沿った平面での断面が放物線または近似放物線を成し、用紙60に平行で且つ用紙60の搬送方向に対して直角方向に延びる放物面鏡を構成している。ハロゲンランプによるヒータ91はこの放物面鏡の焦点位置に配置している。この構造によって、ヒータ91から放射される熱で、用紙搬送方向に広がる放熱部96および用紙60の記録面を最も効率良く且つ均等に加熱することができる。
【0048】
図6の(B)は、(A)に示したハウジング92に設けた放熱部96による加熱領域と、その温度分布の例を示している。(B)の下部は横軸を用紙搬送方向、縦軸を温度にとった温度分布、(B)の上部はその温度の平面分布をそれぞれ示している。この第2の実施形態に係るサーマルプリント装置によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に、次の効果を奏する。すなわち、加熱幅を図2に示したものより更に広くとることができ、その分ピーク温度を下げても用紙60の記録面を所定温度にまで上昇させた後に通過させていくことができる。また、スリット状の開口93を複数設ければ、ヒータ91からの輻射熱が直接用紙60に与えられるため、加熱効率を高めることができる。そのため、用紙に対する熱ストレスおよび消費電力がさらに抑えられ、用紙の搬送速度も高めることができる。
【0049】
なお、図6に示した例では、ハウジング92に開口93を設けるとともにブロア94を接続したが、ブロア94および開口93を設けないで放熱部96からの輻射熱によって用紙60の記録面を加熱するようにしてもよい。また、ブロア94を設けずに、開口93を設けることによって、放熱部96からの輻射熱とともに、ヒータ91からの直接の輻射熱によって用紙60を加熱するようにしてもよい。これらの構成の場合、サーミスタによる温度センサ80sをヒータ91から用紙60までの距離とほぼ同距離の位置に設ければ、用紙60の記録面の温度を間接的に正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施形態に係るプリント装置内部の構成を示す図である。
【図2】同プリント装置の画像消去部の構成を示す図である。
【図3】プリント装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】同制御部の画像消去部に関する処理手順を示すフローチャートである。
【図5】同制御部の用紙の給紙から排紙までの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係るプリント装置の画像消去部の構成を示す図である。
【図7】従来技術によるプリント装置の画像消去部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1−サーマルヘッド
2−冷却ファン
3−ヒートローラ
4−クリーニングローラ
5−R/W部(非接触ICタグ読み書き部)
6,7−給紙ローラ
8,9−ピックアップローラ
10,11,12−プラテンローラ
13−搬送ローラ
14−昇降テーブル
16−給紙トレイ
20,21−レジストローラ
22〜25−搬送ローラ
40−通常用紙排出部
50−異常用紙排出部
60−用紙
80s−温度センサ
91−ヒータ
92−ハウジング
93−開口
94−ブロア
95−画像消去部
96−放熱部
100−プリント装置
101−ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、該用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙を加熱して画像を消去する画像消去部と、前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部と、を備えたサーマルプリント装置において、
前記画像消去部に、前記感熱記録用紙に接触することなく、前記感熱記録用紙の搬送方向に沿って、且つ該感熱記録用紙に対して所定距離分平行に放熱体を近接させて、搬送中の前記感熱記録用紙の記録面を所定温度にまで加熱する加熱手段を設けたことを特徴とするサーマルプリント装置。
【請求項2】
熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、該用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙を加熱して画像を消去する画像消去部と、前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部と、を備えたサーマルプリント装置において、
前記画像消去部に、前記感熱記録用紙に接触することなく熱風を吹き付けて、該感熱記録用紙の記録面を所定温度まで加熱する加熱手段を設けたことを特徴とするサーマルプリント装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記感熱記録用紙の搬送方向に直角方向を長手方向とするヒータと、該ヒータの周囲を囲み、前記感熱記録用紙側を開口させたハウジングと、該ハウジング内に空気を流入させるブロアとで構成した請求項1または2に記載のサーマルプリント装置。
【請求項4】
前記ハウジングの内面は、前記感熱記録用紙に平行で且つ該感熱記録用紙の搬送方向に対して直角方向に延びる直線を焦点とする放物面鏡を構成し、当該焦点の位置に前記ヒータを配置した請求項3に記載のサーマルプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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