サーマルヘッド駆動用集積回路
【課題】複数のシフトレジスタを有し、シフトレジスタ内に余りビットをなくするようにしたサーマルヘッド駆動用集積回路を提供する。
【解決手段】データ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタSR1〜SR3のシフトレジスタSR1に一個のデータ信号入力端子を、シフトレジスタSR3に一個のデータ信号出力端子が設けられている。サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数をシフトレジスタの総ビット数から選択する選択回路14の選択信号Sa、Sbの組み合わせに応じて複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段19を備える。シフトレジスタにデータ信号が入力されて外部に出力される際、シフトレジスタからの出力ビット数が変わってもシフトレジスタ内に余りビットが発生せず、また、データ信号入力端子とデータ信号出力端子を共通にすることができ、集積回路にデータ信号出力端子を追加して設ける必要がない。
【解決手段】データ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタSR1〜SR3のシフトレジスタSR1に一個のデータ信号入力端子を、シフトレジスタSR3に一個のデータ信号出力端子が設けられている。サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数をシフトレジスタの総ビット数から選択する選択回路14の選択信号Sa、Sbの組み合わせに応じて複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段19を備える。シフトレジスタにデータ信号が入力されて外部に出力される際、シフトレジスタからの出力ビット数が変わってもシフトレジスタ内に余りビットが発生せず、また、データ信号入力端子とデータ信号出力端子を共通にすることができ、集積回路にデータ信号出力端子を追加して設ける必要がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの駆動に使用するサーマルヘッド駆動用集積回路及び該集積回路を使用したサーマルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図10及び図11に示すように、放熱性の良好な金属、例えばアルミニウムで形成された支持板10上にセラミックス等の絶縁基板を材料としたヘッド基板1とガラスエポキシ等を材料としたプリント配線板3が粘着剤9によって固定されている。
前記ヘッド基板1上にはその長手方向に延びる発熱体2が形成されており、該発熱体2
の一ドット毎に個別電極8がそれぞれ接続されている。前記プリント配線板3上には前記発熱体2への通電を制御するためのサーマルヘッド駆動用集積回路(以下、駆動ICという。)4が複数個の駆動IC4が長手方向に配列して搭載されている。
【0003】
前記個別電極8の末端に形成されたパッドと前記駆動IC4の駆動出力端子16は金などのワイヤ15で電気的に接続されている。前記駆動IC4及び前記ワイヤ15を保護するために、エポキシ等の封止樹脂6が塗布されている。前記プリント配線板3には外部の制御装置等と接続するためにコネクタ5が取り付けられている。さらに前記プリント配線板3の表面には前記駆動IC4の各端子を前記コネクタ5に接続する導体パターン17等が形成されている。また、前記ヘッド基板1及び前記プリント配線板3には前記発熱体2に接続された共通電極1a及び該共通電極1aをワイヤ15を介して前記コネクタ5に導く導体パターン3aが形成されている。
【0004】
前記駆動IC4は、必要な発熱体を通電するためにデータ信号を出力する。該駆動IC4内にはデータ信号を格納するためのシフトレジスタ及びMOSトランジスタ等でなる発熱体駆動素子が形成されている。前記シフトレジスタ内のデータ信号に対応する発熱体駆動素子が駆動出力端子16に接続されている発熱体を通電して印字が行われる。
前記駆動IC4内に形成されている発熱体駆動素子、シフトレジスタのビット数は発熱体ドット数と同じ数になっている。
【0005】
サーマルヘッドに使用される駆動ICの個数は、発熱体のドット数に応じて設定され、一個の駆動ICのビット数は64ビットが一般的である。
発熱体ドットの総数に対して一個の駆動IC内に構成されるシフトレジスタのビット数で割ったものが、駆動ICの使用数となる。例えば、ドット密度が8dot/mmで有効印字幅が56mmのサーマルヘッドの場合、発熱体ドットの総数は448個である。
64ビットの駆動ICの場合、使用する駆動ICの個数は448÷64=7個必要となる。
【0006】
従来、サーマルヘッドでは駆動ICの複数のシフトレジスタを直列接続して使用する場合、図10に示すように、それぞれの駆動IC4(入力側と出力側の駆動ICには符号4a、4cを付してある)に設けられているデータ信号入力端子11とデータ信号出力端子12とを前記ヘッド基板1に形成された導体パターン7aを介して金などのワイヤ15で接続している。
【0007】
前記駆動ICは左から右にデータ信号をシフトするように動作する。該データ信号は駆動IC4のクロック端子に入力されるクロック信号でシフトされる。1ライン分のデータ信号をシフトする場合に必要なクロック信号の数はシフトレジスタのビット数、つまり発熱体ドットの総数に等しくなっている。
【0008】
図10に示すサーマルヘッドの構成では、駆動IC4を7個使用しているが、以下の説明において、駆動ICの使用数に関係なく左端の駆動ICを入力側駆動IC4aとし、右端の駆動ICを出力側駆動IC4cとして説明する。
前記出力側駆動IC4cのデータ信号出力端子12はヘッド基板1上に形成された導体パターン7aを介してプリント配線板3のデータ信号出力用導体パターン17にワイヤで電気的に接続されている。該データ信号出力用導体パターン17はコネクタ5に接続されており、外部の制御装置(図示せず)にデータ信号を出力する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サーマルヘッドの主要部品である駆動ICは材料コストに占める率が高いので、低価格化を実現する上で駆動ICのコストを下げるために、一個の駆動IC内の発熱体駆動素子の数を増やし、集積度を上げる方法が採用されている。
一方、駆動ICの高集積化によって一個の駆動IC内に発熱体駆動素子の数を増加させた場合、駆動ICの使用数によっては既存の駆動ICによって構成されているサーマルヘッドの発熱体ドット総数とシフトレジスタのビット総数とが合わなくなる場合がある。
一般にサーマルヘッドではデータ信号がシフトされたことを確認するために、出力側駆動IC4cからデータ信号を前記導体パターン17、コネクタ5を経て外部へ出力する必要がある。
【0010】
この種のサーマルヘッドでは発熱体のドット総数とシフトレジスタのビット数が同じでなければならない。
例えば、ドット密度が8dot/mmで有効印字幅が56mmのサーマルヘッドの場合、発熱体のドット総数は448個である。駆動ICの使用数は発熱体のドット総数を駆動IC1個当たりのシフトレジスタのビット数で割った値となる。但し、割り切れない場合は切り上げた値が駆動ICの使用数となる。
【0011】
サーマルヘッドの駆動ICとして主に64ビットが使用されているが、図10に示す構成の場合、駆動ICの使用数は448÷64=7個となる。これに対して高集積化された192ビットの駆動ICを使用して前記の仕様と同じサーマルヘッドとした場合、駆動ICが448÷192=2.33で3個必要となる。
前記192ビットの駆動ICを3個使用する場合、シフトレジスタの総ビット数が192×3=576ビットとなるので、本来必要とするビット数に対して576−448=128ビット余ることになる。以下、このシフトレジスタ内に余るビットを総称して、「余りビット」という。
【0012】
データ信号を前記データ信号出力用導体パターン17(図10)を介して外部に出力する場合、シフトレジスタ内に前記余りビットがあることによって、データ信号が出力するタイミングが遅れることになる。データ信号はクロック信号によってシフトレジスタ内をシフトされていくが、前記余りビットが存在する場合でも本来必要とするクロック信号は448と決まっているので、128ビット分のデータ信号はシフトされずにシフトレジスタ内に残ってしまうことになる。
【0013】
この場合、64ビットの駆動ICを7個使用したサーマルヘッドに対してデータ信号を外部に出力する際の互換性が損なわれることになるので、同じ制御プログラムを使用できない等の不具合が生じる。このような問題に際して、駆動IC内のシフトレジスタ内に余りビットがあっても、データ信号が正常なタイミングで駆動ICから外部に出力される手段が必要となる。このような問題点を解決するために、図7及び図8に示すようなシフトレジスタを有する駆動ICが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0014】
【特許文献1】特開平6−286189号公報
【特許文献2】特開平7−266597号公報
【特許文献3】特開2000−198231号公報
【0015】
図7に示すように、1個の駆動IC内にはシフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3の3個のシフトレジスタが設けられている。
1個のシフトレジスタ当たりのビット数は64ビットとなっている。よって、この駆動ICのシフトレジスタのビット総数は64×3=192ビットである。
【0016】
前記シフトレジスタSR1にはデータ信号SIが入力されるデータ信号入力端子11が設けられており、また、前記シフトレジスタSR1と前記シフトレジスタSR2との間、前記シフトレジスタSR2と前記シフトレジスタSR3との間及び前記シフトレジスタSR3にはデータ信号SO1、SO2及びSO3を出力する複数のデータ信号出力端子13、12が設けられている。また、前記シフトレジスタSR1にはデータ信号SIを入力するデータ信号入力端子11がそれぞれ設けられている。
なお、図示していないが該駆動IC内には前記データ信号出力端子の外、駆動ICに電圧を供給する電圧供給端子、データ信号出力端子への通電を制御する端子、シフトレジスタへのデータ信号読み込み、保持を切り換える端子(図示せず)等が設けられている。
【0017】
以下、サーマルヘッドに使用する3個の駆動ICのシフトレジスタのビット総数が576ビット(192×3)であり、448ビットだけを使用することで余りビットが128ビット発生する場合のサーマルヘッドを例として問題点を説明する。
図9には図7に示す前記駆動ICを使用したサーマルヘッドを示している。
図9に示すように、該サーマルヘッドは導体パターン7と接続された3個の駆動IC4a、4b及び4cを使用している。余りビット(128ビット)をなくするためには、出力側の駆動IC4c内にある64ビットのシフトレジスタSR2、64ビットのシフトレジスタSR3を使用しないようにする。
【0018】
そこで前記出力側駆動IC4c内の3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3のうち、シフトレジスタSR1の64ビットだけを使用すれば余りビット128ビットは発生しないことになる。前記出力側駆動IC4cのシフトレジスタSR1からデータ信号SO1が出力されるデータ出力端子12とプリント配線板3に設けたデータ信号出力用導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することで駆動ICの外部にデータ信号を出力することができる。
【0019】
この際、データ信号は出力側駆動IC4cのシフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3(図7)にも送られることになるが、図9に示すように、これらシフトレジスタに対応する個別電極が設けられていないので印字を行うことはない。
このような構成とすればサーマルヘッド内で連結されているシフトレジスタの総ビット数は192×2+64=448ビットとなるので余りビットはなくなり、データ信号の出力時において従来のサーマルヘッドと互換性を維持することができる。
【0020】
図8は従来の他の駆動ICのシフトレジスタの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、駆動ICは3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3を備えている。各シフトレジスタのビット数は64ビットである。
各シフトレジスタ毎にデータ信号SI1、SI2、SI3を入力するデータ信号入力端子11、データ信号SO1、SO2、SO3を出力するデータ信号出力端子13、12が設けられている。ここで前記シフトレジスタSR1乃至シフトレジスタSR3を連結して使用する場合は、前記データ信号出力端子13と前記データ信号入力端子11をそれぞれ電気的に接続して使用するが、サーマルヘッドとしては前記図9に示す構成と同様に扱うことができる。
【0021】
図7の駆動ICと図8の駆動ICとの異なる点は、図8の駆動ICはデータ信号入力端子11を任意のシフトレジスタに選択することができる点にある。使用するデータ信号入出力端子の位置を変更することで、余りビット用に割り当てるシフトレジスタの位置を変更することが可能となる。
【0022】
前記いずれの駆動ICのシフトレジスタで余りビットをなくする場合、前記シフトレジスタSR1のデータ入力端子を除く他の前記入出力端子端子を駆動ICの中程に配置する必要がある。図9に示すように駆動出力端子16が駆動ICの発熱体2側の一辺に連続して配置されているので、前記駆動出力端子16の中程に前記各データ信号入出力端子を配置することが製造上難しくなる。
このような集積度の高い駆動ICを使用すると、駆動ICの長手寸法は発熱体を配置する範囲よりも短くなる。よって、駆動ICが搭載されている間では配線パターンの密度が粗になっている。
【0023】
ところで、サーマルヘッドのヘッド基板上の導体は厚さ1μm程度の金膜で形成されているが、ヘッド基板上に導体パターンを形成する場合は個別電極等をエッチングで同時に形成することができる。一方、プリント配線板上に導体パターンを形成する場合、20μm程度の厚みの銅箔をエッチングで形成するので、ヘッド基板よりも微細なパターンを形成することが難しくなる。
【0024】
このように従来の駆動ICでは外部へのデータ信号出力端子を接続する導体パターン17(図9)をプリント配線板3内に設けなければならないのでプリント配線板が大きくなり、サーマルヘッドの小型化の妨げとなる。また、シフトレジスタを分割する数を増やした場合、それぞれのブロックに対応するデータ信号入出力端子を駆動ICに設けなければならないので、駆動ICのサイズが大きくなる。
【0025】
前記従来の駆動ICは、シフトレジスタのビット数を変更して使用する場合、駆動ICにデータ信号入出力端子を複数配置しておき、駆動IC外においてワイヤによる接続時に選択して使用する構造となっている。この場合、外部へのデータ信号出力端子を駆動ICの駆動出力端子の間に割り込ませることが難しく、外部へのデータ信号出力端子は駆動ICの前記駆動出力端子が配置される辺とは反対側の辺に設けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のサーマルヘッド駆動用集積回路は、シリアルに供給されるデータ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号入力端子及び一個のデータ信号出力端子でなる一対のデータ入出力端子と、サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数を前記シフトレジスタの総ビット数から選択する選択手段とを備えている。
また、前記選択手段の出力に応じて前記複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段を備えている。
【0027】
前記構成を有する駆動ICは、1個のデータ信号入力端子と1個のデータ信号出力端子とシフトレジスタの数選択信号によって有効となるシフトレジスタのビット数の組み合わせをサーマルヘッドの発熱体ドット数に応じて選択できる選択手段を設けることで、シフトレジスタに接続される多数のデータ信号入出力端子を駆動IC内に追加して設ける必要がなくなる。
【0028】
後述するが、例えば、データ信号入力端子と外部へのデータ信号出力端子を各1個、選択回路の組み合わせを設定するための端子を2個設ければ、駆動IC内に設けた複数のシフトレジスタの総ビット数を制御するための端子は4個で済むことになる。
ここで、組み合わせを設定するための端子を2個設ければ選択回路を4通りで切り換えることが可能となる。
これによって、前記複数のシフトレジスタのデータ信号入出力端子は1個のデータ信号入力端子と1個のデータ信号出力端子の一対の入出力端子で対応できるので駆動ICの駆動出力端子が配置される領域の一端及び他端にそれぞれ設けることが可能となり、シフトレジスタのデータ信号入出力端子を駆動ICの駆動出力端子が配置される側と同じ辺に配置することが可能となる。
【0029】
また、駆動IC内で有効となるシフトレジスタの総ビット数を所定の組み合わせから選択できる切り換え回路を設けることで、適宜に使用するビット数を選択することによって、データ信号の外部への出力タイミングの互換性を維持することができる。
【発明の効果】
【0030】
複数のシフトレジスタを有する駆動IC内にシフトレジスタの有効ビット数を選択できる切り換え回路を備えることで、シフトレジスタのデータ信号入力端子及びデータ信号出力端子を駆動ICの駆動出力端子が配置される側と同じ辺に配置することが可能となる。
これによってサーマルヘッドのヘッド基板上に設けた導体パターンで複数の駆動IC間の接続が容易となり、プリント配線板内に前記導体パターンを設ける必要がなくなるので、その分サーマルヘッドの小型化に繋がる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明によるサーマルヘッドに使用する駆動ICの実施例を説明する。図1は本発明による駆動ICの構成をブロック図で示している。
図1に示すように、駆動IC4内には3個のシフトレジスタ、例えば、シフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3が設けられている。これらシフトレジスタ1個当たりのビット数は64ビットとなっている。
よって、この駆動IC4のシフトレジスタのビット総数は、64×3=192ビットである。また、該駆動IC4は、データ信号SIをシフトレジスタSR1にシリアルに入力する1個のデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR3からデータ信号SOを外部へ出力する1個のデータ信号出力端子12を備えている。
【0032】
前記各シフトレジスタ間は駆動IC内においてそれぞれ電気的に接続されており、シフトレジスタ毎にデータ信号出力端子12に接続可能な線L1、L2及びL3が駆動ICの内部に形成されている。
前記駆動IC4内には電子的な選択スイッチ19が形成されており、該選択スイッチ19によって各シフトレジスタからのデータ信号を出力する前記線のうちの一つのデータ信号出力SOを選択してデータ信号出力端子12に接続する。
前記選択スイッチ19は、選択用端子18a及び18bに与えられる選択信号SA及びSBの電位の組み合わせに応じて動作する論理回路の出力で制御される選択回路14によって切り換えられるようになっている。
【0033】
表1には前記選択スイッチ19を切り換える前記選択回路14の論理の組み合わせの例を示している。
【表1】
【0034】
前記表1中の選択信号SA及びSBの電位を表す記号Lは駆動ICのGNDレベルを、同じくHは駆動ICの電源電圧(Vdd)のレベルをそれぞれ表している。
前記選択回路14の選択信号SAの電位がL、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR1の出力が線L1を介してデータ信号出力端子12に接続されてデータ信号出力SOとして外部に出力される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数は前記シフトレジスタSR1の64ビットである。
【0035】
選択回路14の選択信号SAの電位がH、SBの電位がLの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR2の出力が線L2を介してデータ信号出力端子12に接続される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数はシフトレジスタSR1及びシフトレジスタSR2の128ビット(64ビット×2)である。
【0036】
選択信号SAの電位がH、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR3の出力が線L3を介してデータ信号出力端子12に接続される。
この時、有効となるシフトレジスタのビット数は、前記シフトレジスタSR1、前記シフトレジスタSR2及び前記シフトレジスタSR3の192ビット(64ビット×3)である。
【0037】
前記選択回路14の前記選択用端子18a、18bに与えられる前記選択信号SA及び前記選択信号SBの電位は、サーマルヘッドのプリント配線板上のGNDパターン及びVddパターンのいずれかと電気的に接続するかを選択することによってシフトレジスタ内で使用するビット数を設定することができる。さらに、前記選択用スイッチ19の選択用端子から外部の制御装置までを個別の配線パターンで接続するようにすれば制御信号のレベルを切り換えることによってシフトレジスタのビット数を任意に可変設定することも可能である。
ここで表1によるビット数の設定では64ビット、128ビット、192ビットの3通りに対応するようになっているが、前記選択回路14の選択用端子を2個設けた場合の組み合わせは4通りまで設定可能である。
【0038】
図4には、前記図1に示すシフトレジスタを有する駆動ICを使用したサーマルヘッドの構成を示している。
図4に示すサーマルヘッドは、そのシフトレジスタの総ビット数は576ビット(64ビット×3×3)であり、このうち448ビットだけ使用する。この場合、余りビットは128ビットとなる。前記サーマルヘッド内には図1に示す192ビット(64ビット×3)のシフトレジスタを有する3個の駆動IC4a、4b及び4cを備えている。
前記余りビットの128ビットをなくするためには、出力側の駆動IC4c内にある3個のシフトレジスタSR1〜SR3のうちシフトレジスタSR1(64ビット)のみ使用するように前記選択回路14で設定する。
すると、図1の駆動ICの構成で説明したとおり選択回路14を用いることで前記余りビットをなくしてビット数を448ビット(192ビット×2+64ビット)に合わせることができる。
【0039】
この際、出力側の駆動IC4cのデータ信号出力端子12に接続されているヘッド基板1に設けた導体パターン7aとプリント配線板3に設けたデータ信号出力導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することでコネクタ5を介してサーマルヘッドの外部にデータ信号を出力することができる。この時、前記シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3に対応する個別電極はないので印字には無関係となる。
ここで、駆動用IC4cの発熱体2に接続されない駆動出力端子にワイヤが接続されていることで、ワイヤボンディング時のプログラムの共通化、樹脂封止の塗布形状の安定化を図ることができる。
【0040】
このように前記構成を備えるサーマルヘッドは、サーマルヘッド内で連結しているシフトレジスタの総ビット数は192×2+64=448ビットとなるので余りビットはなくなり、データ信号出力時の制御において従来のサーマルヘッドと互換性を維持することができる。
【0041】
図2のブロック図には他の駆動ICの実施例を示している。
図2に示すように、該駆動IC内には3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3が設けられており、1個のシフトレジスタ当たりのビット数は64ビットである。よってこの駆動IC内のシフトレジスタのビット総数は64×3=192ビットとなっている。
【0042】
データ信号SIをシリアルに入力するデータ信号入力端子11は一つであり、各シフトレジスタの出力側に線L1、L2及びL3が個別に3系統設けられている。
さらにデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR2との間に線L0が設けられており、後述するように前記線の切り換えによりデータ信号入力端子11からシフトレジスタSR2にデータ信号を直接入力することができるようになっている。
【0043】
前記駆動IC4内に設けられた電子的に形成された2個の選択スイッチ19a、19bによって前記線L0、L1、L2及びL3の接続を切り換える。データ信号入力端子11から任意のシフトレジスタを経由してデータ信号出力端子12まで接続するのに、選択スイッチ19a、19bは選択回路14の選択用端子18a及び18bに与えられる選択信号SA、SBの電位の組み合わせに応じて切り換えられる。
【0044】
表2には前記選択スイッチ19a及び19bの切り換えの組み合わせの一例を示している。
【表2】
【0045】
表2中の選択信号SA及びSBの電位を表す記号LはGNDレベルを、同じく記号Hは駆動ICの電源電圧(Vdd)のレベルをそれぞれ表している。
例えば、選択信号SAの電位がL、選択信号SBの電位がHの場合、前記選択回路14及び前記選択スイッチ19aによって、シフトレジスタSR1とシフトレジスタSR2が線L1を介して連結され、シフトレジスタSR2の出力側が線L2を介してデータ信号出力端子12に接続され、データ信号SOとして外部に出力される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数は128ビットとなる。シフトレジスタSR3にもデータ信号が転送されるが対応する発熱体がないので印字には無関係となる。
【0046】
また、有効となるシフトレジスタのビット数が128ビットとなる他の切り換え方法として、選択信号SAをLレベル、選択信号SBの電位をHレベルとしてデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR2を線L0を介して接続し、さらにシフトレジスタSR3の出力側を線L3を介してデータ信号出力端子12に接続するようにしてもよい。
さらに有効ビット数を64、192にする場合も、表2に基づいて前記選択信号SA及びSBのレベルを選択し、前記線を切り換えることで行うことができる。
【0047】
図5は、前記図2に示すシフトレジスタを備えた駆動ICを使用したサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
図5に示すサーマルヘッドは、そのシフトレジスタの総ビット数は576ビットであり、448ビット(発熱体ドット数が448)だけ使用する場合の実施例である。
前記サーマルヘッド内には192ビットのシフトレジスタ(64ビット×3)を有する駆動ICを3個(総ビット数192×3=576ビット)備えている。この場合、余りビットが128ビット(576−448=128)発生するが、該実施例では入力側、出力側の各駆動IC4a及び4c内で64ビットずつシフトレジスタのビット数を削減する方法を採用している。
【0048】
まず、入力側の駆動IC4aのシフトレジスタSR1(図2)を使用しないように設定する。この場合、前記表2に示す選択スイッチの切り換えによるビット数の組み合わせのうち、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3を使用して対応ビット数を128ビットに設定する。また、出力側の駆動IC4cはシフトレジスタSR3だけを使用しないように設定する。
【0049】
この場合、前記表2に示すビット数の組み合わせのうち、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3を使用して対応ビット数を128ビットに設定する。このようにしてシフトレジスタの使用ビット数を448ビットに合わせることができる。この際、出力側の駆動IC4cのデータ信号出力端子12に接続された導体パターン7aとプリント配線板2に設けたデータ信号出力用導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することでコネクタ5を介してサーマルヘッドの外部にデータ信号を出力することで前記余りビットをなくすることができる。
【0050】
ここで前記図4に示す実施例と図5に示す実施例を比較すると、図4に示すサーマルヘッドでは駆動IC4a〜4cの配置と発熱体2の位置が非対称なので図中右側に位置する個別電極8が必要以上に長くなり、これら個別電極の導体抵抗が増加する問題が生じる。これによって図中右側の発熱体による印字濃度が薄くなる等の不具合が生じる。
【0051】
一方、図5に示すサーマルヘッドでは余りビットを左右均等に振り分けることができるので、個別電極の長さの差を小さくすることができるので、導体抵抗の増加を抑えられて印字濃度にばらつきが生じないので、発熱体ドット数の多いサーマルヘッドの場合は図5に示す構成が好適である。
【0052】
前記実施例では一部の駆動ICのビット数を調整するものであるが、全ての駆動ICに対して使用するビット数の設定を変更して同数にすることも可能である。
例えば、図1に示す駆動ICを使用したサーマルヘッドでシフトレジスタの総ビット数が192×4=768ビットであり、640ビットだけ使用する例を説明する。
この時、余りビットは768−640=128ビットである。駆動ICの使用数は4個であればシフトレジスタ一個当たりのビット数を同数とするには、640÷4=160ビットとなる。
【0053】
表1において、選択信号SAの電位がL、選択信号SBの電位がLの場合に各シフトレジスタに160ビットずつ割り当てることが可能となる。このようにシフトレジスタを均等に分けた1ブロック分、例えば192ビットを64ビットで3等分したブロックの境界以外からでも任意のビット数でデータ信号を出力することができる。
【0054】
ここで、各駆動ICのビット数を同数にして使用する場合は、ストローブによる分割駆動を行うことで消費電流を均等化することができる。
図6にはストローブによる分割駆動の例を図1に示すシフトレジスタを有する駆動ICを使用したブロック構成図を示している。
図6に示すように、サーマルヘッドの駆動IC4は、駆動出力端子DO−1〜DO−192、電源端子VDD、グランド端子GND、データ信号がシリアルに入力されるデータ信号SIのデータ信号入力端子11、シフトレジスタから出力データ信号SOを外部に出力する一個のデータ信号出力端子12、クロック信号入力端子CLK、選択信号入力端子SA及びSB、ストローブ入力端子STR1、STR2及びSTR3、ラッチ信号入力端子LAT、分割駆動制御信号入力端子CNTを備えている。
【0055】
前記駆動出力端子DO−1〜DO−192には合計192個の発熱体ドット(図示せず)が接続されている。前記各駆動出力端子には駆動トランジスタ20がオープンドレイン接続されている。前記各駆動トランジスタ20のゲートには1出力2入力のAND回路21が接続されている。1番目から64番目までの第1のAND回路の第1の入力端子はインバータ22a及びEXOR回路23aを介してストローブ入力端子STR1に、65番目から128番目までの第2のAND回路の第1の入力端子はインバータ22b及びEXOR回路23bを介してストローブ入力端子STR2に、129番目から192番目までの第3のAND回路の第1の入力端子はインバータ22c及びEXOR回路23cを介してストローブ入力端子STR3に、それぞれ共通接続されている。
【0056】
前記第1番目から第192番目の各AND回路の第2の入力端子は全てラッチ回路LAの出力側に接続に接続されている。前記ラッチ回路(LA)は前記第1〜第3のAND回路に対応して三つの群24a、24b及び24cに分かれている。これらラッチ回路LAはラッチ信号入力端子LATにバッファ25を介して共通に接続されている。
さらに、駆動IC4は、前記図1で説明した3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3を備えている。各シフトレジスタはそれぞれデータ・フリップフロップD−FFを64段接続してなり、各D−FFの出力は前記ラッチ回路LAに入力するように接続されている。また、前記各D−FFはバッファ25を介してクロック信号入力端子CLKに共通接続されている。
【0057】
前記シフトレジスタSR1、SR2及びSR3のシフトレジスタSR1はバッファ25を介してデータ信号入力端子11に接続される。また、シフトレジスタSR1〜SR3の出力が図1で説明した駆動ICを構成する切り換え回路19を介してデータ信号出力端子12に切り換え接続されるようになっている。
前記切り換え回路19は、駆動ICに形成された選択回路14に入力される選択信号SA、SBのレベルに応じて切り換えられるようになっている。
ここでこの駆動ICは、前述したように3個のシフトレジスタSR1〜SR3には1個のデータ信号入力端子11と1個のデータ信号出力端子12しか備えていない。
【0058】
前記駆動ICにおいて、シフトレジスタを128ビットだけ使用する場合、選択回路14により表1に基づいて選択回路18の選択信号SAの電位がH、SBの電位がLにすると、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR2から線L2がデータ信号出力端子12に接続され、データ信号は外部に出力される。
このとき、ストローブSTR1及びSTR2を使用することで対応する前記AND回路が開いて前記ラッチ回路からデータ信号が駆動トランジスタ20に送られて対応する発熱体ドットを通電する。
【0059】
選択信号SAの電位がH、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR3からのデータ信号の出力配線L3がデータ信号出力端子SOに接続される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数はシフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3の192ビット(64ビット×3)である。
【0060】
このように本発明の駆動ICは、シフトレジスタにデータ信号が入力されて外部に出力される際、シフトレジスタからの出力ビット数が変わってもデータ信号入力端子とデータ信号出力端子が共通であり、従来のように駆動ICに複数のデータ信号出力端子を追加して設ける必要がない。
【0061】
5〜7.2Vの低い供給電圧範囲で使用するサーマルヘッドの場合、印字中の消費電力を抑えるために同時に駆動する発熱体ドット数を少なくするのが一般的である。
そこで前記図6に示すように、サーマルヘッド内の発熱体ドットを分割駆動するために前記ストローブ回路が設けられている。前記128ビットだけ使用する場合、前記ストローブ端子STR1及びSTR2に入力するストローブ信号のタイミングをずらして別々に入力することで同時に駆動する発熱体ドットの数を64ビット単位で通電することで印字中の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図2】本発明による他のサーマルヘド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図3】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路の形状を示す平面図である。
【図4】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図5】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの他の構成を示す平面図である。
【図6】本発明のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いた分割駆動型サーマルヘドの回路図である。
【図7】従来のサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図8】他の従来のサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図9】従来のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図10】従来の他のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図11】一般的なサーマルヘッドを説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
【0063】
4、4a、4b、4c・・駆動IC SR1、SR2、SR3・・シフトレジスタ
14・・駆動IC内に形成されたシフトレジスタの選択回路 19・・駆動IC内に形成された選択スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの駆動に使用するサーマルヘッド駆動用集積回路及び該集積回路を使用したサーマルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図10及び図11に示すように、放熱性の良好な金属、例えばアルミニウムで形成された支持板10上にセラミックス等の絶縁基板を材料としたヘッド基板1とガラスエポキシ等を材料としたプリント配線板3が粘着剤9によって固定されている。
前記ヘッド基板1上にはその長手方向に延びる発熱体2が形成されており、該発熱体2
の一ドット毎に個別電極8がそれぞれ接続されている。前記プリント配線板3上には前記発熱体2への通電を制御するためのサーマルヘッド駆動用集積回路(以下、駆動ICという。)4が複数個の駆動IC4が長手方向に配列して搭載されている。
【0003】
前記個別電極8の末端に形成されたパッドと前記駆動IC4の駆動出力端子16は金などのワイヤ15で電気的に接続されている。前記駆動IC4及び前記ワイヤ15を保護するために、エポキシ等の封止樹脂6が塗布されている。前記プリント配線板3には外部の制御装置等と接続するためにコネクタ5が取り付けられている。さらに前記プリント配線板3の表面には前記駆動IC4の各端子を前記コネクタ5に接続する導体パターン17等が形成されている。また、前記ヘッド基板1及び前記プリント配線板3には前記発熱体2に接続された共通電極1a及び該共通電極1aをワイヤ15を介して前記コネクタ5に導く導体パターン3aが形成されている。
【0004】
前記駆動IC4は、必要な発熱体を通電するためにデータ信号を出力する。該駆動IC4内にはデータ信号を格納するためのシフトレジスタ及びMOSトランジスタ等でなる発熱体駆動素子が形成されている。前記シフトレジスタ内のデータ信号に対応する発熱体駆動素子が駆動出力端子16に接続されている発熱体を通電して印字が行われる。
前記駆動IC4内に形成されている発熱体駆動素子、シフトレジスタのビット数は発熱体ドット数と同じ数になっている。
【0005】
サーマルヘッドに使用される駆動ICの個数は、発熱体のドット数に応じて設定され、一個の駆動ICのビット数は64ビットが一般的である。
発熱体ドットの総数に対して一個の駆動IC内に構成されるシフトレジスタのビット数で割ったものが、駆動ICの使用数となる。例えば、ドット密度が8dot/mmで有効印字幅が56mmのサーマルヘッドの場合、発熱体ドットの総数は448個である。
64ビットの駆動ICの場合、使用する駆動ICの個数は448÷64=7個必要となる。
【0006】
従来、サーマルヘッドでは駆動ICの複数のシフトレジスタを直列接続して使用する場合、図10に示すように、それぞれの駆動IC4(入力側と出力側の駆動ICには符号4a、4cを付してある)に設けられているデータ信号入力端子11とデータ信号出力端子12とを前記ヘッド基板1に形成された導体パターン7aを介して金などのワイヤ15で接続している。
【0007】
前記駆動ICは左から右にデータ信号をシフトするように動作する。該データ信号は駆動IC4のクロック端子に入力されるクロック信号でシフトされる。1ライン分のデータ信号をシフトする場合に必要なクロック信号の数はシフトレジスタのビット数、つまり発熱体ドットの総数に等しくなっている。
【0008】
図10に示すサーマルヘッドの構成では、駆動IC4を7個使用しているが、以下の説明において、駆動ICの使用数に関係なく左端の駆動ICを入力側駆動IC4aとし、右端の駆動ICを出力側駆動IC4cとして説明する。
前記出力側駆動IC4cのデータ信号出力端子12はヘッド基板1上に形成された導体パターン7aを介してプリント配線板3のデータ信号出力用導体パターン17にワイヤで電気的に接続されている。該データ信号出力用導体パターン17はコネクタ5に接続されており、外部の制御装置(図示せず)にデータ信号を出力する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サーマルヘッドの主要部品である駆動ICは材料コストに占める率が高いので、低価格化を実現する上で駆動ICのコストを下げるために、一個の駆動IC内の発熱体駆動素子の数を増やし、集積度を上げる方法が採用されている。
一方、駆動ICの高集積化によって一個の駆動IC内に発熱体駆動素子の数を増加させた場合、駆動ICの使用数によっては既存の駆動ICによって構成されているサーマルヘッドの発熱体ドット総数とシフトレジスタのビット総数とが合わなくなる場合がある。
一般にサーマルヘッドではデータ信号がシフトされたことを確認するために、出力側駆動IC4cからデータ信号を前記導体パターン17、コネクタ5を経て外部へ出力する必要がある。
【0010】
この種のサーマルヘッドでは発熱体のドット総数とシフトレジスタのビット数が同じでなければならない。
例えば、ドット密度が8dot/mmで有効印字幅が56mmのサーマルヘッドの場合、発熱体のドット総数は448個である。駆動ICの使用数は発熱体のドット総数を駆動IC1個当たりのシフトレジスタのビット数で割った値となる。但し、割り切れない場合は切り上げた値が駆動ICの使用数となる。
【0011】
サーマルヘッドの駆動ICとして主に64ビットが使用されているが、図10に示す構成の場合、駆動ICの使用数は448÷64=7個となる。これに対して高集積化された192ビットの駆動ICを使用して前記の仕様と同じサーマルヘッドとした場合、駆動ICが448÷192=2.33で3個必要となる。
前記192ビットの駆動ICを3個使用する場合、シフトレジスタの総ビット数が192×3=576ビットとなるので、本来必要とするビット数に対して576−448=128ビット余ることになる。以下、このシフトレジスタ内に余るビットを総称して、「余りビット」という。
【0012】
データ信号を前記データ信号出力用導体パターン17(図10)を介して外部に出力する場合、シフトレジスタ内に前記余りビットがあることによって、データ信号が出力するタイミングが遅れることになる。データ信号はクロック信号によってシフトレジスタ内をシフトされていくが、前記余りビットが存在する場合でも本来必要とするクロック信号は448と決まっているので、128ビット分のデータ信号はシフトされずにシフトレジスタ内に残ってしまうことになる。
【0013】
この場合、64ビットの駆動ICを7個使用したサーマルヘッドに対してデータ信号を外部に出力する際の互換性が損なわれることになるので、同じ制御プログラムを使用できない等の不具合が生じる。このような問題に際して、駆動IC内のシフトレジスタ内に余りビットがあっても、データ信号が正常なタイミングで駆動ICから外部に出力される手段が必要となる。このような問題点を解決するために、図7及び図8に示すようなシフトレジスタを有する駆動ICが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0014】
【特許文献1】特開平6−286189号公報
【特許文献2】特開平7−266597号公報
【特許文献3】特開2000−198231号公報
【0015】
図7に示すように、1個の駆動IC内にはシフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3の3個のシフトレジスタが設けられている。
1個のシフトレジスタ当たりのビット数は64ビットとなっている。よって、この駆動ICのシフトレジスタのビット総数は64×3=192ビットである。
【0016】
前記シフトレジスタSR1にはデータ信号SIが入力されるデータ信号入力端子11が設けられており、また、前記シフトレジスタSR1と前記シフトレジスタSR2との間、前記シフトレジスタSR2と前記シフトレジスタSR3との間及び前記シフトレジスタSR3にはデータ信号SO1、SO2及びSO3を出力する複数のデータ信号出力端子13、12が設けられている。また、前記シフトレジスタSR1にはデータ信号SIを入力するデータ信号入力端子11がそれぞれ設けられている。
なお、図示していないが該駆動IC内には前記データ信号出力端子の外、駆動ICに電圧を供給する電圧供給端子、データ信号出力端子への通電を制御する端子、シフトレジスタへのデータ信号読み込み、保持を切り換える端子(図示せず)等が設けられている。
【0017】
以下、サーマルヘッドに使用する3個の駆動ICのシフトレジスタのビット総数が576ビット(192×3)であり、448ビットだけを使用することで余りビットが128ビット発生する場合のサーマルヘッドを例として問題点を説明する。
図9には図7に示す前記駆動ICを使用したサーマルヘッドを示している。
図9に示すように、該サーマルヘッドは導体パターン7と接続された3個の駆動IC4a、4b及び4cを使用している。余りビット(128ビット)をなくするためには、出力側の駆動IC4c内にある64ビットのシフトレジスタSR2、64ビットのシフトレジスタSR3を使用しないようにする。
【0018】
そこで前記出力側駆動IC4c内の3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3のうち、シフトレジスタSR1の64ビットだけを使用すれば余りビット128ビットは発生しないことになる。前記出力側駆動IC4cのシフトレジスタSR1からデータ信号SO1が出力されるデータ出力端子12とプリント配線板3に設けたデータ信号出力用導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することで駆動ICの外部にデータ信号を出力することができる。
【0019】
この際、データ信号は出力側駆動IC4cのシフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3(図7)にも送られることになるが、図9に示すように、これらシフトレジスタに対応する個別電極が設けられていないので印字を行うことはない。
このような構成とすればサーマルヘッド内で連結されているシフトレジスタの総ビット数は192×2+64=448ビットとなるので余りビットはなくなり、データ信号の出力時において従来のサーマルヘッドと互換性を維持することができる。
【0020】
図8は従来の他の駆動ICのシフトレジスタの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、駆動ICは3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3を備えている。各シフトレジスタのビット数は64ビットである。
各シフトレジスタ毎にデータ信号SI1、SI2、SI3を入力するデータ信号入力端子11、データ信号SO1、SO2、SO3を出力するデータ信号出力端子13、12が設けられている。ここで前記シフトレジスタSR1乃至シフトレジスタSR3を連結して使用する場合は、前記データ信号出力端子13と前記データ信号入力端子11をそれぞれ電気的に接続して使用するが、サーマルヘッドとしては前記図9に示す構成と同様に扱うことができる。
【0021】
図7の駆動ICと図8の駆動ICとの異なる点は、図8の駆動ICはデータ信号入力端子11を任意のシフトレジスタに選択することができる点にある。使用するデータ信号入出力端子の位置を変更することで、余りビット用に割り当てるシフトレジスタの位置を変更することが可能となる。
【0022】
前記いずれの駆動ICのシフトレジスタで余りビットをなくする場合、前記シフトレジスタSR1のデータ入力端子を除く他の前記入出力端子端子を駆動ICの中程に配置する必要がある。図9に示すように駆動出力端子16が駆動ICの発熱体2側の一辺に連続して配置されているので、前記駆動出力端子16の中程に前記各データ信号入出力端子を配置することが製造上難しくなる。
このような集積度の高い駆動ICを使用すると、駆動ICの長手寸法は発熱体を配置する範囲よりも短くなる。よって、駆動ICが搭載されている間では配線パターンの密度が粗になっている。
【0023】
ところで、サーマルヘッドのヘッド基板上の導体は厚さ1μm程度の金膜で形成されているが、ヘッド基板上に導体パターンを形成する場合は個別電極等をエッチングで同時に形成することができる。一方、プリント配線板上に導体パターンを形成する場合、20μm程度の厚みの銅箔をエッチングで形成するので、ヘッド基板よりも微細なパターンを形成することが難しくなる。
【0024】
このように従来の駆動ICでは外部へのデータ信号出力端子を接続する導体パターン17(図9)をプリント配線板3内に設けなければならないのでプリント配線板が大きくなり、サーマルヘッドの小型化の妨げとなる。また、シフトレジスタを分割する数を増やした場合、それぞれのブロックに対応するデータ信号入出力端子を駆動ICに設けなければならないので、駆動ICのサイズが大きくなる。
【0025】
前記従来の駆動ICは、シフトレジスタのビット数を変更して使用する場合、駆動ICにデータ信号入出力端子を複数配置しておき、駆動IC外においてワイヤによる接続時に選択して使用する構造となっている。この場合、外部へのデータ信号出力端子を駆動ICの駆動出力端子の間に割り込ませることが難しく、外部へのデータ信号出力端子は駆動ICの前記駆動出力端子が配置される辺とは反対側の辺に設けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のサーマルヘッド駆動用集積回路は、シリアルに供給されるデータ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号入力端子及び一個のデータ信号出力端子でなる一対のデータ入出力端子と、サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数を前記シフトレジスタの総ビット数から選択する選択手段とを備えている。
また、前記選択手段の出力に応じて前記複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段を備えている。
【0027】
前記構成を有する駆動ICは、1個のデータ信号入力端子と1個のデータ信号出力端子とシフトレジスタの数選択信号によって有効となるシフトレジスタのビット数の組み合わせをサーマルヘッドの発熱体ドット数に応じて選択できる選択手段を設けることで、シフトレジスタに接続される多数のデータ信号入出力端子を駆動IC内に追加して設ける必要がなくなる。
【0028】
後述するが、例えば、データ信号入力端子と外部へのデータ信号出力端子を各1個、選択回路の組み合わせを設定するための端子を2個設ければ、駆動IC内に設けた複数のシフトレジスタの総ビット数を制御するための端子は4個で済むことになる。
ここで、組み合わせを設定するための端子を2個設ければ選択回路を4通りで切り換えることが可能となる。
これによって、前記複数のシフトレジスタのデータ信号入出力端子は1個のデータ信号入力端子と1個のデータ信号出力端子の一対の入出力端子で対応できるので駆動ICの駆動出力端子が配置される領域の一端及び他端にそれぞれ設けることが可能となり、シフトレジスタのデータ信号入出力端子を駆動ICの駆動出力端子が配置される側と同じ辺に配置することが可能となる。
【0029】
また、駆動IC内で有効となるシフトレジスタの総ビット数を所定の組み合わせから選択できる切り換え回路を設けることで、適宜に使用するビット数を選択することによって、データ信号の外部への出力タイミングの互換性を維持することができる。
【発明の効果】
【0030】
複数のシフトレジスタを有する駆動IC内にシフトレジスタの有効ビット数を選択できる切り換え回路を備えることで、シフトレジスタのデータ信号入力端子及びデータ信号出力端子を駆動ICの駆動出力端子が配置される側と同じ辺に配置することが可能となる。
これによってサーマルヘッドのヘッド基板上に設けた導体パターンで複数の駆動IC間の接続が容易となり、プリント配線板内に前記導体パターンを設ける必要がなくなるので、その分サーマルヘッドの小型化に繋がる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明によるサーマルヘッドに使用する駆動ICの実施例を説明する。図1は本発明による駆動ICの構成をブロック図で示している。
図1に示すように、駆動IC4内には3個のシフトレジスタ、例えば、シフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3が設けられている。これらシフトレジスタ1個当たりのビット数は64ビットとなっている。
よって、この駆動IC4のシフトレジスタのビット総数は、64×3=192ビットである。また、該駆動IC4は、データ信号SIをシフトレジスタSR1にシリアルに入力する1個のデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR3からデータ信号SOを外部へ出力する1個のデータ信号出力端子12を備えている。
【0032】
前記各シフトレジスタ間は駆動IC内においてそれぞれ電気的に接続されており、シフトレジスタ毎にデータ信号出力端子12に接続可能な線L1、L2及びL3が駆動ICの内部に形成されている。
前記駆動IC4内には電子的な選択スイッチ19が形成されており、該選択スイッチ19によって各シフトレジスタからのデータ信号を出力する前記線のうちの一つのデータ信号出力SOを選択してデータ信号出力端子12に接続する。
前記選択スイッチ19は、選択用端子18a及び18bに与えられる選択信号SA及びSBの電位の組み合わせに応じて動作する論理回路の出力で制御される選択回路14によって切り換えられるようになっている。
【0033】
表1には前記選択スイッチ19を切り換える前記選択回路14の論理の組み合わせの例を示している。
【表1】
【0034】
前記表1中の選択信号SA及びSBの電位を表す記号Lは駆動ICのGNDレベルを、同じくHは駆動ICの電源電圧(Vdd)のレベルをそれぞれ表している。
前記選択回路14の選択信号SAの電位がL、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR1の出力が線L1を介してデータ信号出力端子12に接続されてデータ信号出力SOとして外部に出力される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数は前記シフトレジスタSR1の64ビットである。
【0035】
選択回路14の選択信号SAの電位がH、SBの電位がLの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR2の出力が線L2を介してデータ信号出力端子12に接続される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数はシフトレジスタSR1及びシフトレジスタSR2の128ビット(64ビット×2)である。
【0036】
選択信号SAの電位がH、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR3の出力が線L3を介してデータ信号出力端子12に接続される。
この時、有効となるシフトレジスタのビット数は、前記シフトレジスタSR1、前記シフトレジスタSR2及び前記シフトレジスタSR3の192ビット(64ビット×3)である。
【0037】
前記選択回路14の前記選択用端子18a、18bに与えられる前記選択信号SA及び前記選択信号SBの電位は、サーマルヘッドのプリント配線板上のGNDパターン及びVddパターンのいずれかと電気的に接続するかを選択することによってシフトレジスタ内で使用するビット数を設定することができる。さらに、前記選択用スイッチ19の選択用端子から外部の制御装置までを個別の配線パターンで接続するようにすれば制御信号のレベルを切り換えることによってシフトレジスタのビット数を任意に可変設定することも可能である。
ここで表1によるビット数の設定では64ビット、128ビット、192ビットの3通りに対応するようになっているが、前記選択回路14の選択用端子を2個設けた場合の組み合わせは4通りまで設定可能である。
【0038】
図4には、前記図1に示すシフトレジスタを有する駆動ICを使用したサーマルヘッドの構成を示している。
図4に示すサーマルヘッドは、そのシフトレジスタの総ビット数は576ビット(64ビット×3×3)であり、このうち448ビットだけ使用する。この場合、余りビットは128ビットとなる。前記サーマルヘッド内には図1に示す192ビット(64ビット×3)のシフトレジスタを有する3個の駆動IC4a、4b及び4cを備えている。
前記余りビットの128ビットをなくするためには、出力側の駆動IC4c内にある3個のシフトレジスタSR1〜SR3のうちシフトレジスタSR1(64ビット)のみ使用するように前記選択回路14で設定する。
すると、図1の駆動ICの構成で説明したとおり選択回路14を用いることで前記余りビットをなくしてビット数を448ビット(192ビット×2+64ビット)に合わせることができる。
【0039】
この際、出力側の駆動IC4cのデータ信号出力端子12に接続されているヘッド基板1に設けた導体パターン7aとプリント配線板3に設けたデータ信号出力導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することでコネクタ5を介してサーマルヘッドの外部にデータ信号を出力することができる。この時、前記シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3に対応する個別電極はないので印字には無関係となる。
ここで、駆動用IC4cの発熱体2に接続されない駆動出力端子にワイヤが接続されていることで、ワイヤボンディング時のプログラムの共通化、樹脂封止の塗布形状の安定化を図ることができる。
【0040】
このように前記構成を備えるサーマルヘッドは、サーマルヘッド内で連結しているシフトレジスタの総ビット数は192×2+64=448ビットとなるので余りビットはなくなり、データ信号出力時の制御において従来のサーマルヘッドと互換性を維持することができる。
【0041】
図2のブロック図には他の駆動ICの実施例を示している。
図2に示すように、該駆動IC内には3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3が設けられており、1個のシフトレジスタ当たりのビット数は64ビットである。よってこの駆動IC内のシフトレジスタのビット総数は64×3=192ビットとなっている。
【0042】
データ信号SIをシリアルに入力するデータ信号入力端子11は一つであり、各シフトレジスタの出力側に線L1、L2及びL3が個別に3系統設けられている。
さらにデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR2との間に線L0が設けられており、後述するように前記線の切り換えによりデータ信号入力端子11からシフトレジスタSR2にデータ信号を直接入力することができるようになっている。
【0043】
前記駆動IC4内に設けられた電子的に形成された2個の選択スイッチ19a、19bによって前記線L0、L1、L2及びL3の接続を切り換える。データ信号入力端子11から任意のシフトレジスタを経由してデータ信号出力端子12まで接続するのに、選択スイッチ19a、19bは選択回路14の選択用端子18a及び18bに与えられる選択信号SA、SBの電位の組み合わせに応じて切り換えられる。
【0044】
表2には前記選択スイッチ19a及び19bの切り換えの組み合わせの一例を示している。
【表2】
【0045】
表2中の選択信号SA及びSBの電位を表す記号LはGNDレベルを、同じく記号Hは駆動ICの電源電圧(Vdd)のレベルをそれぞれ表している。
例えば、選択信号SAの電位がL、選択信号SBの電位がHの場合、前記選択回路14及び前記選択スイッチ19aによって、シフトレジスタSR1とシフトレジスタSR2が線L1を介して連結され、シフトレジスタSR2の出力側が線L2を介してデータ信号出力端子12に接続され、データ信号SOとして外部に出力される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数は128ビットとなる。シフトレジスタSR3にもデータ信号が転送されるが対応する発熱体がないので印字には無関係となる。
【0046】
また、有効となるシフトレジスタのビット数が128ビットとなる他の切り換え方法として、選択信号SAをLレベル、選択信号SBの電位をHレベルとしてデータ信号入力端子11とシフトレジスタSR2を線L0を介して接続し、さらにシフトレジスタSR3の出力側を線L3を介してデータ信号出力端子12に接続するようにしてもよい。
さらに有効ビット数を64、192にする場合も、表2に基づいて前記選択信号SA及びSBのレベルを選択し、前記線を切り換えることで行うことができる。
【0047】
図5は、前記図2に示すシフトレジスタを備えた駆動ICを使用したサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
図5に示すサーマルヘッドは、そのシフトレジスタの総ビット数は576ビットであり、448ビット(発熱体ドット数が448)だけ使用する場合の実施例である。
前記サーマルヘッド内には192ビットのシフトレジスタ(64ビット×3)を有する駆動ICを3個(総ビット数192×3=576ビット)備えている。この場合、余りビットが128ビット(576−448=128)発生するが、該実施例では入力側、出力側の各駆動IC4a及び4c内で64ビットずつシフトレジスタのビット数を削減する方法を採用している。
【0048】
まず、入力側の駆動IC4aのシフトレジスタSR1(図2)を使用しないように設定する。この場合、前記表2に示す選択スイッチの切り換えによるビット数の組み合わせのうち、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3を使用して対応ビット数を128ビットに設定する。また、出力側の駆動IC4cはシフトレジスタSR3だけを使用しないように設定する。
【0049】
この場合、前記表2に示すビット数の組み合わせのうち、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3を使用して対応ビット数を128ビットに設定する。このようにしてシフトレジスタの使用ビット数を448ビットに合わせることができる。この際、出力側の駆動IC4cのデータ信号出力端子12に接続された導体パターン7aとプリント配線板2に設けたデータ信号出力用導体パターン17をワイヤ15で電気的に接続することでコネクタ5を介してサーマルヘッドの外部にデータ信号を出力することで前記余りビットをなくすることができる。
【0050】
ここで前記図4に示す実施例と図5に示す実施例を比較すると、図4に示すサーマルヘッドでは駆動IC4a〜4cの配置と発熱体2の位置が非対称なので図中右側に位置する個別電極8が必要以上に長くなり、これら個別電極の導体抵抗が増加する問題が生じる。これによって図中右側の発熱体による印字濃度が薄くなる等の不具合が生じる。
【0051】
一方、図5に示すサーマルヘッドでは余りビットを左右均等に振り分けることができるので、個別電極の長さの差を小さくすることができるので、導体抵抗の増加を抑えられて印字濃度にばらつきが生じないので、発熱体ドット数の多いサーマルヘッドの場合は図5に示す構成が好適である。
【0052】
前記実施例では一部の駆動ICのビット数を調整するものであるが、全ての駆動ICに対して使用するビット数の設定を変更して同数にすることも可能である。
例えば、図1に示す駆動ICを使用したサーマルヘッドでシフトレジスタの総ビット数が192×4=768ビットであり、640ビットだけ使用する例を説明する。
この時、余りビットは768−640=128ビットである。駆動ICの使用数は4個であればシフトレジスタ一個当たりのビット数を同数とするには、640÷4=160ビットとなる。
【0053】
表1において、選択信号SAの電位がL、選択信号SBの電位がLの場合に各シフトレジスタに160ビットずつ割り当てることが可能となる。このようにシフトレジスタを均等に分けた1ブロック分、例えば192ビットを64ビットで3等分したブロックの境界以外からでも任意のビット数でデータ信号を出力することができる。
【0054】
ここで、各駆動ICのビット数を同数にして使用する場合は、ストローブによる分割駆動を行うことで消費電流を均等化することができる。
図6にはストローブによる分割駆動の例を図1に示すシフトレジスタを有する駆動ICを使用したブロック構成図を示している。
図6に示すように、サーマルヘッドの駆動IC4は、駆動出力端子DO−1〜DO−192、電源端子VDD、グランド端子GND、データ信号がシリアルに入力されるデータ信号SIのデータ信号入力端子11、シフトレジスタから出力データ信号SOを外部に出力する一個のデータ信号出力端子12、クロック信号入力端子CLK、選択信号入力端子SA及びSB、ストローブ入力端子STR1、STR2及びSTR3、ラッチ信号入力端子LAT、分割駆動制御信号入力端子CNTを備えている。
【0055】
前記駆動出力端子DO−1〜DO−192には合計192個の発熱体ドット(図示せず)が接続されている。前記各駆動出力端子には駆動トランジスタ20がオープンドレイン接続されている。前記各駆動トランジスタ20のゲートには1出力2入力のAND回路21が接続されている。1番目から64番目までの第1のAND回路の第1の入力端子はインバータ22a及びEXOR回路23aを介してストローブ入力端子STR1に、65番目から128番目までの第2のAND回路の第1の入力端子はインバータ22b及びEXOR回路23bを介してストローブ入力端子STR2に、129番目から192番目までの第3のAND回路の第1の入力端子はインバータ22c及びEXOR回路23cを介してストローブ入力端子STR3に、それぞれ共通接続されている。
【0056】
前記第1番目から第192番目の各AND回路の第2の入力端子は全てラッチ回路LAの出力側に接続に接続されている。前記ラッチ回路(LA)は前記第1〜第3のAND回路に対応して三つの群24a、24b及び24cに分かれている。これらラッチ回路LAはラッチ信号入力端子LATにバッファ25を介して共通に接続されている。
さらに、駆動IC4は、前記図1で説明した3個のシフトレジスタSR1、SR2及びSR3を備えている。各シフトレジスタはそれぞれデータ・フリップフロップD−FFを64段接続してなり、各D−FFの出力は前記ラッチ回路LAに入力するように接続されている。また、前記各D−FFはバッファ25を介してクロック信号入力端子CLKに共通接続されている。
【0057】
前記シフトレジスタSR1、SR2及びSR3のシフトレジスタSR1はバッファ25を介してデータ信号入力端子11に接続される。また、シフトレジスタSR1〜SR3の出力が図1で説明した駆動ICを構成する切り換え回路19を介してデータ信号出力端子12に切り換え接続されるようになっている。
前記切り換え回路19は、駆動ICに形成された選択回路14に入力される選択信号SA、SBのレベルに応じて切り換えられるようになっている。
ここでこの駆動ICは、前述したように3個のシフトレジスタSR1〜SR3には1個のデータ信号入力端子11と1個のデータ信号出力端子12しか備えていない。
【0058】
前記駆動ICにおいて、シフトレジスタを128ビットだけ使用する場合、選択回路14により表1に基づいて選択回路18の選択信号SAの電位がH、SBの電位がLにすると、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR2から線L2がデータ信号出力端子12に接続され、データ信号は外部に出力される。
このとき、ストローブSTR1及びSTR2を使用することで対応する前記AND回路が開いて前記ラッチ回路からデータ信号が駆動トランジスタ20に送られて対応する発熱体ドットを通電する。
【0059】
選択信号SAの電位がH、SBの電位がHの場合、前記選択スイッチ19によって、シフトレジスタSR3からのデータ信号の出力配線L3がデータ信号出力端子SOに接続される。この時、有効となるシフトレジスタのビット数はシフトレジスタSR1、シフトレジスタSR2及びシフトレジスタSR3の192ビット(64ビット×3)である。
【0060】
このように本発明の駆動ICは、シフトレジスタにデータ信号が入力されて外部に出力される際、シフトレジスタからの出力ビット数が変わってもデータ信号入力端子とデータ信号出力端子が共通であり、従来のように駆動ICに複数のデータ信号出力端子を追加して設ける必要がない。
【0061】
5〜7.2Vの低い供給電圧範囲で使用するサーマルヘッドの場合、印字中の消費電力を抑えるために同時に駆動する発熱体ドット数を少なくするのが一般的である。
そこで前記図6に示すように、サーマルヘッド内の発熱体ドットを分割駆動するために前記ストローブ回路が設けられている。前記128ビットだけ使用する場合、前記ストローブ端子STR1及びSTR2に入力するストローブ信号のタイミングをずらして別々に入力することで同時に駆動する発熱体ドットの数を64ビット単位で通電することで印字中の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図2】本発明による他のサーマルヘド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図3】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路の形状を示す平面図である。
【図4】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図5】本発明によるサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの他の構成を示す平面図である。
【図6】本発明のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いた分割駆動型サーマルヘドの回路図である。
【図7】従来のサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図8】他の従来のサーマルヘッド駆動用集積回路の要部ブロック図である。
【図9】従来のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図10】従来の他のサーマルヘッド駆動用集積回路を用いたサーマルヘッドの構成を示す平面図である。
【図11】一般的なサーマルヘッドを説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
【0063】
4、4a、4b、4c・・駆動IC SR1、SR2、SR3・・シフトレジスタ
14・・駆動IC内に形成されたシフトレジスタの選択回路 19・・駆動IC内に形成された選択スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号に応じて複数の発熱体の通電を制御するサーマルヘッド駆動用集積回路であって、
シリアルに供給されるデータ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタと、
前記複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号入力端子と、
前記複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号出力端子と、
サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数を前記シフトレジスタの総ビット数から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項2】
前記選択手段の出力に応じて前記複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段を備えることを特徴とする請求項1のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項3】
前記複数のシフトレジスタの全ビット数のうち、選択された所定のビット数毎に駆動を制御するストローブ回路を有することを特徴とする請求項1又は2のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項4】
前記複数の発熱体に接続される駆動出力端子列の一方の端部に前記データ信号入力端子を配置し、前記駆動出力端子列の他方の端部に前記データ信号出力端子を配置したことを特徴とする請求項1、2又は3のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4のサーマルヘッド駆動用集積回路を使用したサーマルヘッド。
【請求項1】
データ信号に応じて複数の発熱体の通電を制御するサーマルヘッド駆動用集積回路であって、
シリアルに供給されるデータ信号を順次転送して格納する複数のシフトレジスタと、
前記複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号入力端子と、
前記複数のシフトレジスタに設けられた一個のデータ信号出力端子と、
サーマルヘッドの発熱体ドット数に対応するビット数を前記シフトレジスタの総ビット数から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項2】
前記選択手段の出力に応じて前記複数のシフトレジスタを切り替える切り替え手段を備えることを特徴とする請求項1のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項3】
前記複数のシフトレジスタの全ビット数のうち、選択された所定のビット数毎に駆動を制御するストローブ回路を有することを特徴とする請求項1又は2のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項4】
前記複数の発熱体に接続される駆動出力端子列の一方の端部に前記データ信号入力端子を配置し、前記駆動出力端子列の他方の端部に前記データ信号出力端子を配置したことを特徴とする請求項1、2又は3のサーマルヘッド駆動用集積回路。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4のサーマルヘッド駆動用集積回路を使用したサーマルヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−126406(P2008−126406A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309881(P2006−309881)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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