説明

サーマル印字装置

【課題】熱転写リボンテープの補充、或いは、サーマル印字機に不具合発生の場合に、印字を停止させることなく継続できるサーマル印字装置を提供する。
【解決手段】
1つのプラテンローラPの軸Oに垂直な断面で見て、その軸Oまわりの互いに異なる角度位置A,Bにそれぞれのサーマルヘッド2、22のヒータ部15、35を臨ませて複数個のサーマル印字機1、20を配置し、その複数個のサーマル印字機1、20の一方を選択して作動させ印字するように構成してある。印字中のサーマル印字機において、熱転写リボンテープが消費されリボン消費が検出され、或いは、異常信号が発せられると、そのサーマル印字機の印字を停止させ、他方のサーマル印字機による印字を始動させ印字を切り替える。印字を停止したサーマル印字機へのリボンテープの補充は、交代したサーマル印字機が印字動作を行っている間に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写リボンテープとラインサーマルヘッドを使って印字対象シートに印字を行うサーマル印字機を備えた印字装置に関わり、特に、サーマル印字機への熱転写リボンテープの補充や印字機の異常出力による印字不可の場合、印字を中断することなく待機印字機により連続して印字することを可能としたサーマル印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装品に対しては製造年月日、賞味期限、製造連番などの文字や記号を表示することが求められ、このような場合、熱転写リボンテープとラインサーマルヘッドを使ったサーマル印字機を備えたサーマル印字装置が用いて印字を行うことが多い。その場合の印字は、包装品の包装工程の中で行なわれるので、その印字装置は、包装装置の機器配置に支障なしに取り付けることができるように小スペース内に配置できることが求められ、更に、使用済となった熱転写リボンテープを再装着するときは包装ラインを停止するため、熱転写リボンテープを再装着するのに要する時間は、包装工程におけるロスタイムになるので、サーマル印字機に装着された熱転写リボンテープが使用済となって熱転写リボンテープを再装着することは迅速に行われることが求められる。
【0003】
サーマル印字機は、ラインサーマルヘッド、熱転写リボンテープリールを保持してリボンテープを巻き戻して送り出すためのリボンテープ巻戻し用駆動軸、送り出されて印字に使用後のリボンテープを巻き取るためのリボンテープ巻取り用駆動軸、これらの駆動軸を駆動回転するためのステッピングモータ、送り出されて巻き取られるリボンテープを案内するガイドローラなどの機器によって構成されている。印字によって消費された熱転写リボンテープのリールを取り外して新しいリボンテープのリールを再装着し熱転写リボンテープを走行路に通す時間を縮小するため、熱転写リボンテープリール、使用後のリボンテープを巻き取るためのリボンテープリール、送り出されて巻き取られるリボンテープを案内するガイドロールなどの機器をセットにして組み込んでカセット構成としたものを用いるなどの対策が採られている。
【0004】
このように、カセット化した熱転写リボンテープを採用しても、カセットを交換するには、印字を一旦、停止することが必要であり、それに伴って包装ラインの作動を停止させることが必要になる。従って、熱転写リボンテープの補充頻度を減らすよう長い熱転写リボンテープを巻き込んだカセットを使用することも行われるが、リボン終了時はラインを停止してリボンの交換を行うことが必要であり、また、熱転写リボンテープの巻き込み長さを大きくすると、熱転写リボンテープの巻き径が大きくなって印字装置の外形寸法が大きくなり、印字機の設置スペースを大きく取ることが必要なる。
【0005】
また、印字機は使用中に不具合が生ずることがあり、印字機に不具合が生じて異常信号が出されると、印字機を停止して、不具合箇所を点検する必要があり、その間は印字を行えないので包装ラインを作動停止することとなる。このように、従来のサーマル印字機は、熱転写リボンテープ補充のため作動停止する必要があるとともに、不具合発生により作動停止する可能性を有しており、そのように作動停止させる必要があるサーマル印字機をラインに組み入れた包装装置は作動が不安定になる要因を抱えることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱転写リボンテープを使って印字対象シートに印字を行うサーマル印字機を使ったサーマル印字装置において、熱転写リボンテープの補充のため、或いは、サーマル印字機に不具合が発生したときに、印字を停止させることなく包装装置の作動を継続できるようにしたサーマル印字装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するため、プラテンローラ上で熱転写リボンテープを介して印字対象シートにサーマル印字機のサーマルヘッドを押し当てて、その印字対象シートに印字するように構成したサーマル印字装置において、1つのプラテンローラの円筒面における同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりの互いに異なる角度位置にそれぞれのサーマルヘッドのヒータ部を臨ませて複数個のサーマル印字機を配置し、その複数個のサーマル印字機の1つを選択して作動させ印字するように構成したサーマル印字装置を提供する。
【0008】
本発明によるサーマル印字装置においては、前記複数個の印字機を、前記プラテンローラの円筒面上に同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりに自転することなく公転された状態で前記プラテンローラの軸に対して同じ姿勢で配置されたものとすることができる。
【0009】
また、本発明による前記したいずれのサーマル印字装置においても、前記複数個のサーマル印字機の1つを使って印字を行い、そのサーマル印字機がリボンテープの使用済み信号および異常信号のいずれか一方を発するとそのサーマル印字機による印字を停止させ、他のサーマル印字機による印字を始動させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるサーマル印字装置では、前記したように、1つのプラテンローラの円筒面における同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりの互いに異なる角度位置にそれぞれのサーマルヘッドのヒータ部を臨ませて複数個のサーマル印字機を配置し、その複数個のサーマル印字機の1つを選択して作動させ印字するように構成しているので、プラテンローラ上で印字中のサーマル印字機における熱転写リボンテープが消費されリボン消費の状態になったことが検出されると、そのサーマル印字機の印字を停止させ、同じプラテンローラの円筒面の異なる角度位置に配置されている他のサーマル印字機による印字を始動するよう切り替える。この場合、始動されるサーマル印字機は、プラテンローラ上の配置位置がそれまで印字中のサーマル印字機と、プラテンローラの軸に垂直な断面で見てプラテンローラの軸まわりに異なる角度位置となっているため、その角度位置の違いに相当するプラテンローラ上の距離を印字対象シートが移動する距離だけ差を付けて自動制御で印字を切り替えることができる。
【0011】
以上のように、本発明のサーマル印字装置によれば、1つのプラテンローラの円筒面上の互いに異なる角度位置に配置されている複数個の印字機を使って、印字動作が停止しないように連続させて印字対象シートに対し同じ位置に印字を行うことができる。そして、熱転写リボンテープが消費されて印字を停止したサーマル印字機に対する熱転写リボンテープの補充は、交代したサーマル印字機が印字動作を行っている時間内に適宜行ってよい。
本発明によるサーマル印字装置では、印字動作中のサーマル印字機に異常事態が生じて異常信号を発した場合も、上記したと同様に、1つのプラテンローラ上に配置されている複数個のサーマル印字機の作動を切り替えることによって、印字動作を停止させることなく継続することができ、本発明のサーマル印字装置によれば、これを組み込んで構成した包装装置の作動を印字装置における印字停止の影響で停止させることがない。
【0012】
本発明によるサーマル印字装置において、前記複数個の印字機を、前記プラテンローラの円筒面上に同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりに自転することなく公転された状態で前記プラテンローラの軸に対して同じ姿勢で配置したものでは、作動中のサーマル印字機を他のサーマル印字機に切り替えて印字する場合、プラテンローラの円筒面上における両印字機の配置位置の間隔差だけ印字動作をずらして印字対象シートに対する印字を続行するだけで印字対象シートに対する印字をそのまま連続して続けることができ、制御が簡単である。
【0013】
また、本発明のサーマル印字装置において、前記複数個のサーマル印字機の1つを使って印字を行い、そのサーマル印字機がリボンテープの使用済み信号および異常信号のいずれか一方を発するとそのサーマル印字機による印字を停止させ、他のサーマル印字機による印字を始動させる構成としたものでは、作動中のサーマル印字機が印字を継続できない状態になると、その原因の如何に関わらず自動的に印字する印字機を切り替えて、印字を停止することなく連続して行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるサーマル印字装置を図示した実施例により具体的に説明する。図1において、Pはプラテンローラを示し、その軸Oが紙面に垂直方向に伸びた状態で配置されている。このプラテンローラPの円筒面には印字が行われる印字対象シート、例えば、包装用袋が形成される印字対象シートS、が部分的に巻きつけられた状態で矢印方向に走行され製袋機などに送られる。1、20はサーマル印字機を示しており、両印字機1、20はその構成および寸法が同じになっているので、その構成を印字機1について説明する。
【0015】
サーマル印字機1は、ラインサーマルヘッド2、熱転写リボンテープ巻戻し用駆動軸3、熱転写リボンテープ巻取り用駆動軸4および操作パネル5を有している。熱転写リボンテープ巻戻し用駆動軸3にはボビンに巻回された熱転写リボンテープ原反6が装着されており、熱転写リボンテープ巻取り用駆動軸4にはラインサーマルヘッド2で印字に使用された後の熱転写リボンテープ7を巻き取るボビンが装着されている。熱転写リボンテープ8は、熱転写リボンテープ巻戻し用駆動軸3に装着された原反6から巻き戻されて、複数個のガイドローラ9、10、11、12、13、14に案内されラインサーマルヘッド2のヒータ部15を通過して、2点鎖線で示す軌跡に沿って矢印方向に送られるように構成されている。操作パネル5は、このサーマル印字機で印字すべき情報をインプットするのに使われる。ラインサーマルヘッド2のヒータ部15はプラテンローラPの円筒面上のA点に臨ませて配置されている。
【0016】
サーマル印字機20には、印字機1の構成部分と対応する構成部分の符号に20を加えた数字の符号を付してあり、それらの部分についての重複する説明を省略する。サーマル印字機20のラインサーマルヘッド22のヒータ部35は、プラテンローラPの円筒面上のB点に臨ませて配置されており、このB点と、サーマル印字機1のラインサーマルヘッド2のヒータ部15が配置されているプラテンローラの円筒面上のA点とは、プラテンローラPの軸Oまわりにθだけ離れた角度位置となっており、図示した例ではθの値はほぼ90度となっている。そして、サーマル印字機1とサーマル印字機20は、プラテンローラPの軸O方向に同じ姿勢で配置され、互いに、自転することなしに軸Oまわりにθだけ公転された位置に配置された関係となっている。
【0017】
図示したサーマル印字装置は以上説明した構成を有しており、これによる印字動作は次のように行われる。まず、このサーマル印字装置は、2つのサーマル印字機1、20を備えているが、その印字動作は、2つのサーマル印字機1、20のいずれか一方で行われ、他方は印字動作が停止され休止状態となっている。例えば、図示した印字装置においては印字機1が印字動作を行い、印字機20が休止中とする。この場合、印字機1は、プラテンローラP上を移送されている印字対象である包装袋形成用のシートSの印字位置がヒータ部15に来ると、シートSに対してプラテンローラPの円筒面上でラインサーマルヘッド2のヒータ部15が移動する熱転写リボンテープ8を介して当接され、その印字位置に対して所定の印字を行う。
【0018】
サーマル印字機1における熱転写リボンテープの原反6が印字に消費されて使用済みの状態に近づくと使用済み信号が発せられる。これによって、サーマル印字機1が所定時間後に印字動作を停止する。それと同期して休止中であったサーマル印字機20が印字動作を始動する。サーマル印字機1と20は、プラテンローラPの円筒面上で、印字対象のシートSに対し角度位置A、Bに対応する距離だけ離れて配置されているので、サーマル印字機1による印字とサーマル印字機20による印字とは、その配置位置の差を印字対象シートSが移送されるに要する時間だけずらして印字動作を行わせるようにセットして置くことにより、その引継ぎ時点におけるシートSの移送速度に応じて印字動作が引継がれ、印字対象シートSに対しサーマル印字機1が行っていたと同様の印字間隔でサーマル印字機20によって連続して印字動作が続行される。
サーマル印字機1と20による印字動作の継続は、印字動作を行っているサーマル印字機の一方が不具合を生じて異常信号を発し場合も、上記したと同様の態様で、印字動作を停止することなく連続して行うよう交代して行われる。
【0019】
以上、本発明によるサーマル印字装置を図示した実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、以上説明した実施例の構成に限定されることなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変形、変更を加えてよいことはいうまでもない。例えば、上記した実施例による印字装置では、印字中の印字機がリボンテープ使用済み或いは異常発生の状態になると、信号発生により自動制御で待機中の印字機に切り換えて印字が行われるようにしているが、本発明によるサーマル印字装置では、そのような自動制御を行わせることなく、印字機がリボンテープ使用済み或いは異常発生の状態になったときに手動で印字機を切り換えるように使用してもよく、手動で行う場合もその切り替えを迅速に行うことができ、包装ラインなどに対する印字機切り換えの影響を小さくすることができる。
【0020】
また、図示した実施例では、1つのプラテンローラPの円筒面上に2つのサーマル印字機1、20を配置しているが、3つ以上のサーマル印字機をプラテンローラの円筒面上に配置した構成として、熱転写リボンテープを補充するまでの時間を長くするようにしてもよい。更に、図示した印字装置では、印字機1と印字機20が1台ずつの場合を示しているが、印字機1、20を紙面に垂直な方向に複数台ずつ並列させて配置し並列な印字を行わせる構成としてもよい。
また、図示した実施例では、そのプラテンローラPの軸Oに垂直な断面で見てプラテンローラPの軸Oまわりにおける印字機位置における角度位置の差を約90度としているがこれに限定されない。また、3台以上のサーマル印字機を配置する場合は、プラテンローラPに対する印字対象のシートSの巻き付け角度を大きくすると共に、プラテンローラPの円筒面上におけるサーマル印字機の角度位置を適宜選定して配置することが必要となる。
【0021】
また、図示した実施例では、構造と寸法が同じサーマル印字機を2つ配置しているが、1つのプラテンローラ上に配置するサーマル印字機は必ずしも同一構造、同一寸法である必要はない。更にまた、図示した実施例では、各サーマル印字機1、20に、それぞれ、操作パネル5、25が設けたものを採用しているが、1つのプラテンローラPに対して配置する複数個のサーマル印字機に対して共通の操作パネルを設けて各サーマル印字機から操作パネルを省いて各サーマル印字機の構成を簡素化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例によるサーマル印字装置の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0023】
1、20 サーマル印字機
2、22 ラインサーマルヘッド
3、23 熱転写リボンテープ巻戻し用駆動軸
4、24 熱転写リボンテープ巻取り用駆動軸
5、25 操作パネル
6、26 熱転写リボンテープ原反
7、27 使用された後の熱転写リボンテープ
8、28 熱転写リボンテープ
9〜14、29〜34 ガイドロール
15、35ヒータ部
P プラテンローラ
S 印字対象シート
O プラテンローラの軸
A、B ヘッドのヒータ部が臨まされるプラテンローラ上の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラ上で熱転写リボンテープを介して印字対象シートにサーマル印字機のサーマルヘッドを押し当てて、その印字対象シートに印字するように構成したサーマル印字装置において、1つのプラテンローラの円筒面における同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりの互いに異なる角度位置にそれぞれのサーマルヘッドのヒータ部を臨ませて複数個のサーマル印字機を配置し、その複数個のサーマル印字機の1つを選択して作動させ印字するように構成したことを特徴とするサーマル印字装置。
【請求項2】
前記複数個の印字機を、前記プラテンローラの円筒面上に同プラテンローラの軸に垂直な断面で見て前記プラテンローラの軸まわりに自転することなく公転された状態で前記プラテンローラの軸に対して同じ姿勢で配置したことを特徴とする請求項1に記載のサーマル印字装置。
【請求項3】
前記複数個のサーマル印字機の1つを使って印字を行い、そのサーマル印字機がリボンテープの使用済み信号および異常信号のいずれか一方を発するとそのサーマル印字機による印字を停止させ、他のサーマル印字機による印字を始動させる構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載のサーマル印字装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−66828(P2009−66828A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236132(P2007−236132)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000149273)株式会社大生機械 (35)
【Fターム(参考)】