説明

シェル砂被包における臭気の除去

【課題】砂、セラミックおよびその他の基材(通例、工業用骨材)をノボラック樹脂およびその他類似の皮膜で被覆する改良された方法を提供すること。
【解決手段】シェル砂における臭気副産物を低減または除去するための処方物および使用法を開示する。この組成物は、シェル砂被包成形法の好適な段階で添加される、有機緩衝剤とマスキング剤との好ましい50:50併用物から成る。使用法および処方物について記載する。本発明は、ほぼすべての標準的樹脂被覆砂製造法に対して2つの追加化合物を添加することから成り、この2つの追加化合物とは、すなわち、遊離アンモニアと反応してアンモニウム塩を形成する緩衝溶液と、僅かに残留するアンモニア、フェノールおよびその他の反応副産物を覆うマスキング剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、広くは、砂、セラミックおよびその他の基材(通例、工業用骨材)をノボラック樹脂およびその他類似の皮膜で被覆する改良された方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、最小限の臭気を発生して硬化する樹脂被覆砂を製造するための化合物およびその化合物の適用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
鋳造および鋳物工業が利用するシェル法で使われる樹脂被覆砂に関する従来技術を説明する。シェル法は、第二次世界大戦中ドイツで開発され、臼砲、砲弾およびその他の発射体用の鋳型を製造するために使われた。ドイツは同大戦後その方法を秘密にしようとしたが、連合国の調査員達に発見され「戦利品」としてパブリックドメインとなり、その後鋳物工業に革新的方法がもたらされた。
【0003】
シェル法(クローニング法またはC法とも呼ばれる)は、エンジンのパイプハブ、コア、クランクシャフト、インテークマニホールドなどの軽量中空鋳型および中子を製造するのに使われる。実際、多くの鋳物工場が、樹脂砂中子および鋳型を製造するために他のどの方法よりもシェル法を利用している。シェル法は広く世界中で使われている。
【0004】
当初のクローニング法では、生砂を粉末状フェノール樹脂および粉末状ヘキサメチレンテトラミン(キュアリング剤または硬化剤)「ヘキサ」とブレンドし、予熱したパターンに重力供給した。この熱によって前記樹脂と硬化剤を溶融させ、砂をパターン(または金型)内で融着させた。好適な厚さの砂が得られると、活性化されなかった砂はパターンから落とし、中空砂型を残した。時間の経過とともに、この方法は、砂製造施設において必要な材料(樹脂−硬化剤−ワックス−充填剤等)で砂をプレコートすることによって改良された。「鋳物砂」は、自由流動性製品として鋳物工場に売られている(または鋳物工場が独自の自由流動性製品を製造している)。
【0005】
現況技術は、バッチミキサーを使って基材(鉱物、セラミックスなど、総称して工業用骨材と呼ばれることもある)を樹脂およびその他の材料で被覆する。すなわち、砂(骨材)を予め計量しておき、所望の温度にまで加熱してバッチミキサーに移す。次いで、樹脂および添加剤を順次添加し、材料が所与の硬化段階に達するかまたはより小さい砂(骨材)と樹脂の凝集塊に分解し始めるまでミキサー内に保持する。次いで、この混合物を落とし、このサイクルを繰り返す。現在、より新しいミキサーでは連続法が使われるが、製造工程および使われる化合物は基本的に類似している。
【0006】
さらに具体的に述べると、被覆鋳物砂を製造する現況技術においては、予め計量しておいた砂を280°Fから380°Fの範囲の温度まで加熱する。次いで砂をマラー式ミル(または連続ミキサー)に投入し、樹脂を砂の中に落としこむ。砂からの熱が樹脂を溶解し、溶解した樹脂は各砂粒を取り囲むように流動してその粒を被包する。マラー式ミルで十分混練した後、通常280°Fを下回る温度で、液状ヘキサを樹脂のついた砂に添加する。このヘキサ/樹脂混合物は、クエンチ用の水を加えて砂の温度が200°Fを下回る温度まで下がる前に、僅かに反応して皮膜を架橋し始める。このクエンチによってヘキサ/樹脂の反応は停止するが、このような樹脂被覆砂は「B」段階にあると言われる。混合物はマラー式ミルで混練を続けられ、完全に乾燥し、ばらばらにこわれて樹脂被覆砂になるが、これは本質的に個々の砂粒の被包成形である。樹脂被覆砂は、450〜600°Fに加熱されたツール(鋳造工場の金型)に置かれると「C」段階に進む。この熱によって、元のヘキサ溶液からホルムアルデヒドとアンモニアが遊離する(液状ヘキサはアンモニア(40%)とホルムアルデヒド(60%)の化合物)。遊離したホルムアルデヒドはさらに樹脂と反応して樹脂を架橋させ固体形成品または中子または鋳型を造り、遊離アンモニアは作業者や近隣の地域の人々にとっては不快な臭いを有する揮発性有機ガスとして放出される。
【0007】
アンモニアの放出を低減するために選択されるキュアリング剤の幾つかの例が、従来技術に見られる。Gardziellaらは、特許文献1に「Novel Heat−hardenable Binders Phenol−formaldehyde + HMT + Acid」を開示している。Gardziellaはやはりヘキサをキュアリング剤として使っているが、樹脂化合物および粘結剤が放出の低減に役立っていると述べている。「ホットベーク」(シェルまたはクローニング)鋳物砂用に使われる組成物の一例が挙げられている。
【0008】
Geoffreyらは、特許文献2に「Low Free Formaldehyde
Phenolic Polyol Formulation」を開示し、「コールドボックス」および「ノーベーク」中子鋳造用砂型法で使われるウレタン粘結剤中のホルムアルデヒドの臭気を軽減する必要性を認めている。
【0009】
Johnsonらは、特許文献3に「Benzoxazine Polymer Composition」を開示し、アンモニアを放出せずにノバラク樹脂を硬化する必要を認めている。Johnsonらは、鋳物砂中に自身の化合物を使うことを開示しているが、その実施例は、彼らの粉末状キュアリング剤を有する粉末状樹脂と鋳物砂を混合することを教示している。Johnsonらは、自身の硬化用ポリマーは室温で固形とすることができ、粉末の形状をとると述べている。しかしまた、製造工程で水分除去を制御すればこの硬化用ポリマーを液体の形状で製造することができると言い添えている。
【0010】
Waitkusらは、特許文献4に「Polymer Composition for Curing Novalac Resins」を開示し、アンモニアの放出を低減する必要性を認めている。Waitkusらは、Johnsonらと同様、鋳物砂中に自身の化合物を珪砂(プロッパント)とともに使うことを開示しているが、Johnsonらと異なり、Waitkusの実施例は、砂がノボラック樹脂で被覆されたかなり後に液体(メタノール懸濁液)である彼らのキュアリング剤を添加することを(厳密な研究室実験として)開示している。Waitkusの化合物が、硬化時に遊離するアンモニアを含む臭気生成成分を含んでいることは覚えておくべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,942,217号明細書
【特許文献2】米国特許第5,189,079号明細書
【特許文献3】米国特許第5,910,521号明細書
【特許文献4】米国特許第6,569,918号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、樹脂が金型中で活性化されるまで必要な自由流動性を保持しながら不快な臭気を低減または除去するような、樹脂被覆鋳造用砂または広くは樹脂被覆工業用骨材がいまだ必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ほぼすべての標準的樹脂被覆砂製造法に対して2つの追加化合物を添加することから成る。2つの追加化合物とは、すなわち、遊離アンモニアと反応してアンモニウム塩を形成する緩衝溶液と、僅かに残留するアンモニア、フェノールおよびその他の反応副産物を覆うマスキング剤である。この2つの追加成分は、50:50の割合で、また、標準的な被包処方物に存在するヘキサの量に正比例するように添加することが好ましい。こうして、新規方法および化合物によって、使い易く、環境およびユーザーに優しく、また樹脂被覆骨材として期待される品質を保持した被覆骨材が製造される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
工業用骨材を被覆するための樹脂系組成物であって、硬化時に最小限の揮発性ガスを放出し、かつ硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有する自由流動性製品を提供し、
樹脂と、
硬化剤と、
アンモニア緩衝剤と
を含む、樹脂系組成物。
(項目2)
硬化時に快い香りをさらに発し、
臭気マスキング剤
をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記アンモニア緩衝剤が第2のラジカルに結合した水素を有する化合物から得られ、ここで、該緩衝剤が遊離アンモニアと反応して該第2のラジカルを取り込むアンモニア性塩を形成する、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記アンモニア緩衝剤が、Odor Management Incorporatedにより製造されるECOSORB−303SGとして識別される、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記臭気マスキング剤が、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド;3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを含む化合物から選択される、項目2に記載の組成物。
(項目6)
前記臭気マスキング剤が、Univar USA,Inc.が流通させているVANILIANとして識別される、項目2に記載の組成物。
(項目7)
工業用骨材を被覆するための樹脂系組成物であって、硬化時に快い香りを発し、かつ硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有する自由流動性製品を提供し、
樹脂と、
硬化剤と、
臭気マスキング剤と
を含む、樹脂系組成物。
(項目8)
アンモニア緩衝剤をさらに含む、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記臭気マスキング剤が、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド;3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを含む化合物から選択される、項目7に記載の組成物。
(項目10)
前記臭気マスキング剤が、Univar USA,Inc.が流通させているVANILIANとして識別される、項目7に記載の組成物。
(項目11)
前記アンモニア緩衝剤が、第2のラジカルに結合した水素原子を有する化合物から得られ、ここで、該緩衝剤が遊離アンモニアと反応して該第2のラジカルを含むアンモニア性塩を形成する、項目8に記載の組成物。
(項目12)
前記アンモニア緩衝剤が、Odor Management Incorporatedにより製造されるECOSORB−303SGとして識別されるアンモニア緩衝剤である、項目8に記載の組成物。
(項目13)
工業用骨材を被覆するための組成物であって、硬化時に最小限の揮発性ガスを放出し、かつ快い香りを提供し、そして硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有する自由流動性製品を提供し、
樹脂と、
硬化剤と、
アンモニア緩衝剤と、
臭気マスキング剤と
を含む、組成物。
(項目14)
前記アンモニア緩衝剤と前記臭気マスキング剤が50:50の割合で存在し、硬化剤の量に正比例している、項目13に記載の組成物。
(項目15)
工業用骨材を被覆するための方法であって、硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有し、かつ該硬化点を上回って昇温された場合最小限の揮発性ガスを放出する自由流動性製品が得られ、
a)該骨材を、280°Fから390°Fの範囲の標準的な温度まで加熱すること、
b)該骨材に樹脂を添加すること、
c)必要とされる任意の充填剤およびワックスを添加すること、
d)適切な硬化剤を添加すること、
e)該混合物をクエンチすること、
f)アンモニア緩衝剤を添加すること、および
g)該混合物を乾燥して自由流動性製品を得ること
を含む方法。
(項目16)
前記製品が硬化時に快い香りをさらに発し、乾燥工程時にマスキング剤を添加することをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
アンモニア緩衝剤またはマスキング剤を添加する工程を前記方法の任意の工程で行ってもよい、項目16に記載の方法。
(項目18)
工業用骨材を被覆するための方法であって、硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有し、かつ該硬化点を上回って昇温されても最小限の揮発性ガスを放出する自由流動性製品が得られ、
a)該骨材を、280°Fから390°Fの範囲の標準的な温度まで加熱すること、
b)樹脂を添加すること、
c)該骨材に臭気マスキング剤を添加すること、
d)必要とされる任意の充填剤およびワックスを添加すること、
e)適切な硬化剤を添加すること、
f)該混合物をクエンチすること、および
g)該混合物を乾燥して自由流動性製品を得ること
を含む、方法。
(項目19)
工程cを前記方法の任意の工程で行ってもよい、項目18に記載の方法。
(項目20)
下記の工程:
アンモニア緩衝剤を添加すること
が、工程eと工程fの間に挿入される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記挿入される工程を前記方法の任意の工程で行ってもよい、項目19に記載の方法。(項目22)
工業用骨材を被覆するための方法であって、硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持する硬化点を有し、かつ該硬化点を上回って昇温された場合最小限の揮発性ガスを放出する自由流動性製品が得られ、
a)該骨材を、280°Fから390°Fの範囲の標準的な温度まで加熱すること、
b)樹脂を添加すること、
c)必要とされる任意の充填剤およびワックスを添加すること、
d)適切な硬化剤を添加すること、
e)該混合物をクエンチすること、
g)アンモニア緩衝剤と臭気マスキング剤の配合物を添加すること、および
f)該混合物を乾燥して自由流動性製品を得ること
を含む方法。
(項目23)
工程gが工程bの直後に続く、項目22に記載の方法。
(項目24)
工程gを前記方法の任意の工程で行ってもよい、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記アンモニア緩衝剤とマスキング剤の配合物が50:50混合物として配合され、該配合物の量が適切な硬化剤の量に正比例する、項目22に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、基本的に、本方法により製造される製品が「C」段階に入ると、沈殿によってあらゆる遊離アンモニアを除去しその他の硬化による臭気をマスキングするような新規組成物を提供すると同時に、鋳造工業で使われまた石油工業でプロッパントとして使われる標準的特性を有する被覆骨材を製造する業界標準的方法を使用して、骨材を被覆するユニークな方法を提案するものである。これにより生じる製品は、最小限の遊離アンモニアしか放出せずに標準的な温度および条件下で硬化する。
【0015】
本発明者らは、各種被覆骨材の中でも、ノボラック樹脂と、さらに通常のおよそ2分の1量のヘキサを(添加剤とともに)添加した液状レゾールとを使った低ヘキサ被覆骨材を提供する会社の被雇用者である。実際、この低ヘキサ製品は、一段法「液状レゾール」系を最大30%まで組み合わせた二段法ノボラック系(ノボラック70%/レゾール30%)を含む。しかし、過去の技術は、樹脂含有量に対して6〜10%のヘキサを添加せずには適当な架橋密度/または引張り強さを得ることはできなかった。ヘキサを使ったこの低ヘキサ製品は有効に働くとはいえ、骨材が最終硬化段階(C段階)に至るとなお比較的強い臭気、主としてヘキサが原因であるアンモニアの臭気を発する。その他の標準的なノボラック系の製品は、最終硬化段階に至るとさらに強い臭気を発する。現況技術の一部を説明する製品配合を表1の縦の行1に示す。例えば、硬化剤という用語は、共反応体またはキュアリング剤(ヘキサなど)を指し、添加される必要な促進剤(サリチル酸など)を意味することは、当業界では良く知られている。その他の例としては、促進剤として作用する固形レゾール(フェノール・ホルムアルデヒドポリマーなど)と組み合わせた、キュアリング剤として作用するヘキサが挙げられる。一例を表1の縦の行2に示す。
【0016】
本発明者らは、遊離アンモニアが問題となっている水、排水、およびパルプ・製紙工業(その他)において臭気制御に使われる緩衝溶液に気付いた。これらの緩衝溶液は臭気ガスと反応するように科学的に配合されており、希釈されて局部的または局所的に適用され、限られた空間の悪臭を除去し、また戸外で使用する時には悪臭が周囲の地域に移動するのを予防する。文献を再検討してみると、このような緩衝溶液は、これまで砂被覆工業(工業用被覆砂)において試用されていないことが分かった。恐らくは最終製品への影響が未知であったためであると思われる。
【0017】
【表1】

基本的に、緩衝溶液は、以下の化学式に基づいて作用する。
【0018】
【化1】

これらの緩衝溶液は通常水で希釈されて、噴霧剤として悪臭のする区域に吹き付けられる。水処理またはパルプ・製紙工業においては、この種の設備が問題となることはない。しかし、鋳物業においては、さらなる設備の追加は実際的ではない。必要なことは、緩衝溶液を被包成形工程の一部として組み込むことである。
【0019】
次いで、本発明者らは、種々の樹脂被覆骨材および関連する製造方法について実験をした。そして、製造のクエンチ水の段階の直後に緩衝溶液を添加すれば、緩衝溶液を被包成形工程の一部とすることができることを見出した。次いで、本発明者らは樹脂被覆砂のサンプルを採取し、それらサンプルを硬化(「C」)段階へと追いやってみた。すると、アンモニア臭がほぼ完全に除去されていることに気付いた。さらに実験すると、樹脂被覆砂の品質には影響がないことが分かった。つまり、緩衝溶液で処理された製品の溶融温度および引張り強さは、緩衝溶液で処理していない製品のそれに匹敵するものであった。
【0020】
また、引き続く実験において、アンモニア性窒素が原因の鋳造の問題が低減しているまたは除去されているのに気付いた。この低減の理由は、後から思うと分かり易いものであった。先に説明したように、遊離アンモニアは、被覆骨材が「C」段階に入った時に発生する。この遊離アンモニアは、被包された砂の中のヘキサが熱と水分の存在下でアンモニアとホルムアルデヒドに分解するという点で、硬化工程の一部である。下記式で示されるように、これらの硬化した被覆骨材で作られた成形型に金属を注入すると、遊離アンモニアの一部は遊離窒素(アンモニア性窒素として知られる)に転化することは知られている。
【0021】
【化2】

この遊離窒素は、成形型から、その成形型が生み出す鋳物の中へ進む。この遊離窒素のせいで得られる鋳物は欠陥鋳物となる。したがって、硬化工程時に放出されるアンモニアを低減することは、注型工程時に放出される遊離窒素を低減することになり、それによって最終鋳物製品の向上が得られることになる。
【0022】
本発明者らは、残留する多少のアンモニア、ならびにフェノールおよびホルムアルデヒドなどのその他の副産物のせいで、臭気が幾分残っていることに気付いた。そして、マスキング剤によってこれら残留する悪臭のすべてを除去できる(実際には快い香りでマスキングする)のではないかと考えた。文献を調査すると好適な薬剤が見つかった。しかし、このマスキング剤をいつ添加すべきかを決定するために、また、樹脂被覆製品の品質がこのマスキング剤の影響を受けるかどうかを確かめるために実験をする必要があった。好ましいマスキング剤は、乾燥粉末剤として販売されており、樹脂とともに添加することができ、水と混合してクエンチの段階の後に緩衝溶液とともに添加することもでき、あるいはまた乾燥段階で粉末として添加することもできる。実験によって、このマスキング剤が十分機能すること、また、樹脂被覆砂の最終品質にも影響がないことが分かった。
【0023】
本発明者らは、イリノイ州BarringtonにあるOdor Management, Inc.が商標名ECOSORB−303SGで販売している製品が好適な緩衝剤であると判断した。ECOSORBは、油を基剤とした(植物性の)製品であり、恐らくその成分はオーストラリアから輸入したものである。基本的に、ECOSORBは有機炭化水素植物エキスを基材としたものである。
【0024】
本発明者らは、ワシントン州、KirklandにあるUnivar USA, Inc.が商標名VANILLINで流通させている製品が好適なマスキング剤であるという判断を下した。VANILLINは、フェノール、ホルムアルデヒド、アンモニアなどの残留臭気用のマスキング剤として作用するが、その影響について完全に分かっているわけではない。VANILLINは、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドである。
【0025】
このようにして、本発明者らは、緩衝溶液とマスキング剤を樹脂被覆砂の処方物に含めることができることを発見し、その結果、新規組成物およびその適用方法を得るに至った。好ましい量の緩衝剤とマスキング剤は50:50の割合で使われ、標準的な処方物中に存在するヘキサの量に正比例して添加される。このヘキサの量は、研究所での実験と単純な化学的な配合均衡によって決められる。
【0026】
最後に、一連の製品試運転を実施して、処方物を構成する好ましい50:50処方物の範囲を決定した。この処方物は、緩衝剤を多めに(すなわちマスキング剤よりも緩衝剤を多くして)調整できること、またその逆も同様にできることが分かった。表1に、本発明の無臭の組成物となる処方物の構成成分の範囲を示す。
【0027】
このようにして、本発明者らは、新規かつ有用な低アンモニア発生ノボラック樹脂被覆工業用骨材の製造方法を発見し、さらに前記新規方法によって生成されるアンモニアを絶対最小値まで低減する新規組成物を発見した。また、本発明は、ノボラック系の樹脂中に生じるフェノールなどが発するいかなる悪臭をもマスキングする。
【0028】
このように、樹脂被覆砂用の標準的な処方物と、前記標準的な処方物中に存在するヘキサの量に正比例するように添加されるアンモニア緩衝剤とマスキング剤といったさらなる構成成分とを含む組成物が提供されたことは明らかである。また、樹脂とともにマスキング剤を添加すること、標準的な添加剤を添加すること、クエンチすること、緩衝剤を添加すること、および砂を被包するために連続してマラー式ミルで混練することを含む無臭ノボラック樹脂被覆砂の製造方法も提供された。代替案では、樹脂を添加すること、標準的な添加剤を添加すること、クエンチすること、緩衝溶液とマスキング剤溶液を添加すること、および砂を被包するために連続してマラー式ミルで混練することを含む無臭樹脂被覆砂の製造方法も提供された。本発明において種々の構成成分を添加する順序における変更は、本発明の精神の範囲内に収まることは理解されよう。
【0029】
本発明を特定の実施形態およびそれに必要な代替製造法に関して説明してきたが、当業者が前記説明(特に、本発明物をいかに製造するかを決定するため講じた手段)を考慮して多くの代替案、修正、変更があることを理解することは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱せずに説明されるようなすべての変形態様をも含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由流動性製品を生じる工業用骨材を被覆するための方法であって、該自由流動性製品が、該自由流動性製品中の樹脂の硬化点を上回って昇温されるまで自由流動性を保持し、かつ該硬化点を上回って昇温された場合最小限の揮発性ガスを放出し、該方法が、
a)該骨材を、280°Fから390°Fの範囲の標準的な温度まで加熱すること、
b)該樹脂を添加すること、
c)必要とされる任意の充填剤およびワックスを添加すること、
d)適切な硬化剤を添加すること、
e)該混合物をクエンチすること、
g)Odor Management Incorporatedからの購入により入手可能なECOSORB−303SGとバニリンである臭気マスキング剤を別々に添加して配合物を形成することであって、該ECOSORB−303SGおよび臭気マスキング剤が、50:50の割合で配合されること、および
f)該混合物を乾燥して自由流動性製品を得ること
を含む方法。
【請求項2】
工程gが工程bの直後に続く、請求項に記載の方法。
【請求項3】
工程gを前記方法の任意の工程で行ってもよい、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ECOSORB−303SGとマスキング剤の配合物が50:50混合物として配合され、該配合物の量が適切な硬化剤の量に正比例する、請求項に記載の方法。

【公開番号】特開2013−107135(P2013−107135A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−34254(P2013−34254)
【出願日】平成25年2月25日(2013.2.25)
【分割の表示】特願2009−510954(P2009−510954)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(509188713)フェアマウント ミネラルズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】