説明

シェーディング補正機能付非冷却赤外線2次元センサカメラ

【課題】 赤外線カメラにおいて、操作者が手作業で均一平面熱源をセットする必要がなく、短時間でレンズによる影響も含めたシェーディング補正を自動的に行わせる。
【解決手段】 組合わせレンズ1の光学瞳の位置に、シャッタコントローラ3によって容易且つ瞬時に開閉が行えるシャッタ2を設け、シャッタ2を閉にしたときの熱画像データをシェーディングメモリ8に記憶させておき、シャッタ開で外界の赤外線像を撮影したときの熱画像データから、前記記憶させておいたシェーディングデータを対応する画素毎に減算器7で減算してフレームメモリ9へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線2次元センサを用いた赤外線カメラにおけるシェーディングを補正する技術の分野に関する。
【0002】
【従来の技術】赤外線カメラにおいては測定対象物とは無関係にカメラ筐体内における迷光に起因して、2次元センサ上に入射される赤外線エネルギー量が、環境温度が高い場合には中心部から周辺にいくにつれてエネルギー量が多くなり、逆に環境温度が低い場合には中心部から周辺にいくにつれてエネルギー量が少なくなるといういわゆるシェーディングと呼ばれる現象(温度勾配)を生ずる。これは特に非冷却の赤外線カメラにおいて顕著に現れる。本来温度勾配があってはならないところにこのような温度勾配があっては赤外線像から正確な温度測定ができなくなるので、このシェーディングによる影響を補正するための操作が行われていた。
【0003】その第1の方法は、手作業でレンズの前に温度の均一な面熱源を置いたり或いはレンズにキャップを被せたうえで赤外線2次元センサの各画素の出力が均一になるように補正していた。第2の方法は、レンズと赤外線2次元センサとの間に、メカ駆動により均一な面熱源であるプレートを挿入して補正する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の方法では、手作業で面熱源をセットするため補正に要する時間が長くかかるという問題があるし、第2の方法では、レンズの存在により生ずるシェーディングの影響を補正することができないという問題がある。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、カメラの操作者がわざわざ手作業で均一平面熱源をセットする必要がなく、短時間で、レンズによるシェーディングの影響をも補正し得るシェーディング補正機能付非冷却赤外線2次元センサカメラを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明のシェーディング補正機能付非冷却赤外線2次元センサカメラは次の各構成を具備することを特徴とする。
(イ)光学瞳位置にシャッタを内蔵する赤外線像形成用の組合わせレンズ(ロ)前記シャッタの開閉を制御するシャッタコントローラ(ハ)前記組合わせレンズによる赤外線像が結像される2次元センサ(ニ)前記2次元センサに対する画素走査により出力されるアナログ電気信号を画素毎にディジタル信号に変換するA/D変換器(ホ)前記A/D変換器の出力信号を一方入力端の入力信号とし、他方入力端へ入力された信号との間で減算を行う減算器(ヘ)前記シャッタを閉じたときのA/D変換器の出力を1フレーム分格納し、その後シャッタが開となった後は、その格納された信号が、前記減算器の一方入力端に入力されている信号の画素位置と一致させて読み出され、前記減算器の他方入力端へ入力されるシェーディングメモリ(ト)前記減算器の出力を1画面単位で格納するフレームメモリ
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態は、光学瞳位置に外部から開閉制御が容易なシャッタを内蔵した組合わせレンズを用い、シャッタを閉にしレンズを通しての赤外線を遮断した状態で、迷光によるシェーディングの影響を受けた状態の赤外線2次元センサの画素走査を行って、得られた信号を画素毎にシェーディングメモリに記憶させ、次いでシャッタを開にして外界からの赤外線による画像を赤外線2次元センサ上に結像させ、これに画素走査を行って画素毎の信号をとり出し、この信号から画素毎に、シェーディングメモリに記憶させてあった対応する画素の信号を読み出して、減算器にて減算することによりシェーディングの影響を除去するというものである。
【0008】このように、シャッタを閉にしてシェーディングメモリに記憶させるようにすること即ちシェーディングメモリの更新は、予め定めた一定の周期毎に自動的に行わせてもよいし、時間の経過に対する温度変化が予め定めた値を越えたときに行わせるようにしてもよい。これはまた、操作者の観測によって行わせてもよいし、自動的に行わせてもよい。
【0009】
【実施例】以下、本発明の赤外線カメラの実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の赤外線カメラの実施例の構成を示すブロック図である。外界からの赤外線を集光する組合わせレンズ1の光学瞳の位置にシャッタ2が設けられており、その開閉はシャッタコントローラ3によって行われるようになっている。シャッタ2が開の場合、集光された赤外線は赤外線2次元センサ4の面上に結像する。この赤外線2次元センサからは一定の走査(例えばラスタスキャン)によって画素毎に赤外線強度に応じた電気信号が取り出される。取り出された赤外線画像信号は増幅器5で後の処理に必要なレベルまで増幅される。増幅された信号はA/D変換器6で、要求される階調度を満足するビット数のディジタル信号に変換される。得られたディジタル信号は、これからシェーディングによる影響分を減ずるための減算器7の一方入力端へ入力され、シェーディングによる影響が除去された形でフレームメモリ9へ出力される。
【0010】一方シェーディングメモリ8が、減算器7の出力を格納可能なように接続されており、また、その格納された信号を読み出して減算器7の他方入力端へ入力できるように接続されている。その作用は、シャッタ2を閉にしたときのA/D変換器6の出力が1画面分減算器7を経由してシェーディングメモリ8に格納される。このときシェーディングメモリ8からの読み出しは行われず減算器7の他方入力端へは信号は入力されないから、減算器7では減算が行われずA/D変換器6からの入力がそのまま出力されてシェーディングメモリ8に画素毎に格納される。こうして、格納されたデータはシャッタ2以降のレンズおよび筐体における迷光に起因するシェーディング熱画像のデータということになる。
【0011】一方、シャッタ2が開となって外界からの赤外線を集光したとき赤外線2次元センサ4上に形成される熱画像は、外界からの赤外線によるものとシェーディングによるものとが加算された状態のものである。従って、外界からの赤外線のみによる熱画像を得るには、赤外線2次元センサ上に形成された熱画像からシェーディング熱画像分を減ずればよいことになる。
【0012】そこで、シャッタ2を閉にしたときに格納してあったシェーディングメモリ8のデータを読み出して減算器7の他方入力端へ入力し、A/D変換器6からの入力信号から対応する画素毎に減ずることにより、シェーディングの影響を除去した外界からの赤外線のみによる熱画像データが得られることになる。
【0013】こうして得られた熱画像データをフレームメモリ9へ格納し、後の処理段階へ備えることになる。なお、シャッタコントローラ3の動作とシェーディングメモリ8への格納および読出し動作の連動はCPUを利用して行っている。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のシェーディング補正機能付赤外線2次元センサカメラは、赤外線集光用の組合わせレンズの光学瞳の位置に、シャッタコントローラによる外部からのコントロールによって開閉が瞬時に容易に行えるシャッタを設け、シャッタを閉にしたときの熱画像データをシェーディングメモリに格納しておき、シャッタを開にして外界の赤外線像を撮影したときに形成された熱画像データから格納しておいたシェーディングデータを画素毎に減ずるようにしたので、カメラの操作者が手作業で均一平面熱源をセットしたり或いはレンズにキャップを被せたりする必要がなく、短時間で、シャッタの後方にあるレンズによるシェーディングの影響も含めてシェーディングの影響を自動的に補正することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシェーディング補正機能付非冷却赤外線2次元センサカメラの実施例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 組合わせレンズ
2 シャッタ
3 シャッタコントローラ
4 赤外線2次元センサ
5 増幅器
6 A/D変換器
7 減算器
8 シェーディングメモリ
9 フレームメモリ
10 CPUバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の各構成を具備することを特徴とするシェーディング補正機能付非冷却赤外線2次元センサカメラ。
(イ)光学瞳位置にシャッタを内蔵する赤外線像形成用の組合わせレンズ(ロ)前記シャッタの開閉を制御するシャッタコントローラ(ハ)前記組合わせレンズによる赤外線像が結像される2次元センサ(ニ)前記2次元センサに対する画素走査により出力されるアナログ電気信号を画素毎にディジタル信号に変換するA/D変換器(ホ)前記A/D変換器の出力信号を一方入力端の入力信号とし、他方入力端へ入力された信号との間で減算を行う減算器(ヘ)前記シャッタを閉じたときのA/D変換器の出力を1フレーム分格納し、その後シャッタが開となった後は、その格納された信号が、前記減算器の一方入力端に入力されている信号の画素位置と一致させて読み出され、前記減算器の他方入力端へ入力されるシェーディングメモリ(ト)前記減算器の出力を1画面単位で格納するフレームメモリ

【図1】
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【公開番号】特開平10−274564
【公開日】平成10年(1998)10月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−95060
【出願日】平成9年(1997)3月28日
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)