説明

シグナルペプチドを担体として有する細菌毒素とのハプテン‐担体抱合体及び免疫原性組成物としてのその使用

本発明は、関心対象の抗原に対する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。特に、本発明は、抗原‐担体抱合体を含む免疫原性組成物を提供し、この中で、該担体は、シグナルペプチドを含む細菌毒素である。また、本発明は、シグナルペプチドを、ハプテン‐担体抱合体などの抗原‐担体抱合体における細菌担体に付加することを含む、増強された免疫原性を有する免疫原性組成物を生じる方法も提供する。また、本発明は、これらの免疫原性組成物を用いて対象におけるハプテンに対する免疫応答を誘導する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、関心対象の抗原に対する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。特に、本発明は、抗原‐担体抱合体を含む免疫原性組成物を提供し、この中で、該担体は、シグナルペプチドを含む細菌毒素である。また、本発明は、増強された免疫原性を有する免疫原性組成物を生じる方法であって、シグナルペプチドを、ハプテン‐担体抱合体などの抗原‐担体抱合体における細菌担体に付加することを含む前記方法も提供する。また、本発明は、これらの免疫原性組成物を用いて、対象におけるハプテンに対する免疫応答を誘導する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
細菌毒素‐ハプテン抱合体は、薬物耽溺のための治療薬として臨床治験において現に存在する。これらの進行中の治験において、ハプテン/薬物、例えばコカイン‐細菌毒素抱合体を又はニコチン‐細菌毒素抱合体を含む免疫原性組成物が、耽溺した個体に投与される場合、薬物に特異的な抗体が誘発される。例えば、治療用組成物がコカイン‐担体抱合体である場合、治療は、対象の血流又は粘膜組織におけるコカインを減少させる抗コカイン抗体応答を誘導し、それにより、薬物の心理学的耽溺特性を減少させる。ニコチン‐担体抱合体による治療は、抗ニコチン抗体を誘導し、かつニコチンの使用に由来する満足感を低下させる。
【発明の概要】
【0003】
(3.発明の概要)
担体が細菌毒素である薬物‐担体抱合体の初期の臨床的成功は、さらにより高い免疫原性を有する薬物‐細菌毒素抱合体についての需要を促した。増強された免疫原性を有する薬物‐細菌毒素抱合体の発生は、より少数の用量において、より少量の用量で、及び/又は用量間のより大きな時間間隔で投与されるという臨床的利点を有する。また、より増強された効力を有する抱合体の有効性は、このようなワクチンの大規模製造を容易にするであろう。本発明は、シグナルペプチドを含むコレラ毒素Bサブユニット(CTB)と抱合したニコチンを含むハプテン‐担体抱合体が、シグナルペプチドを欠失するニコチン‐CTB抱合体と比較して増強された免疫原性を有するという発見に一部基づいている。
【0004】
免疫原性がシグナルペプチドを含むことによって高まっている細菌毒素を含む免疫原性組成物が本明細書に提供される。一実施態様において、シグナルペプチドは、細菌毒素の内在性シグナルペプチド又はその断片である。一実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化1】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化2】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化3】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列Ala-His-Glyを含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列His-Glyを含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、単一のGly残基を含む。本発明のいくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、これらのペプチドの1つ以上からなる混合物を含む。
【0005】
本発明の別の実施態様において、免疫原性組成物は、細菌性ADPリボシル化外毒素サブユニットペプチド、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)、ジフテリア毒素、破傷風トキソイド、百日咳毒素及び糸状赤血球凝集素、志賀毒素、並びにシュードモナス外毒素を含む群から選択されるシグナルペプチド含有細菌毒素を含む。他の有用な細菌毒素担体には、粘膜応答を高める能力を有する任意の細菌毒素、例えば、細菌毒素のLTBファミリーにおける任意の毒素を含む。
【0006】
いくつかの実施態様において、細菌毒素担体は、その内在性シグナルペプチドを含む。いくつかの実施態様において、CTB又は上記の任意の細菌毒素など、本発明の細菌毒素担体は、異種性のシグナルペプチドを含む。
【0007】
本発明は、抗原と担体とを含む免疫原性組成物を提供し、この中で、該担体は、シグナルペプチド含有細菌毒素であり、該抗原は、免疫応答を生じることが望ましい任意の分子である。本発明の一実施態様において、抗原は担体に対して抱合されている。いくつかの実施態様において、抗原はハプテンである。本発明は、シグナルペプチド含有細菌毒素担体が、シグナルペプチドを欠失している細菌毒素担体よりも、抱合型ハプテンに対して大きな免疫応答を与えるという発見に一部基づいている。いくつかの実施態様において、ハプテンは、シグナルペプチドを欠失している細菌毒素、又はシグナルペプチドが不安定であり、かつ免疫の増強が望まれる細菌毒素との抱合体において存在する場合、免疫原性であるとして公知のハプテンである。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様において、シグナルペプチドを含む細菌毒素に抱合したハプテンは、ニコチン又はニコチンの誘導体である。いくつかの実施態様において、ハプテンは、コカイン又は、耽溺に関する別の薬物である。いくつかの実施態様において、ハプテンは病原体の抗原である。いくつかの実施態様において、抗原‐細菌毒素抱合体における抗原は、ハプテンではない。
【0009】
また、本発明は、上記の免疫原性組成物を用いて、対象におけるハプテンに対する免疫を誘導する方法も提供する。
【0010】
また、本発明は、シグナルペプチドを含む細菌毒素担体を含む免疫原性組成物を生じる方法も提供する。いくつかの実施態様において、該方法は、細菌毒素がシグナルペプチドを含む細胞において、細菌毒素を発現させることを包含する。いくつかの実施態様において、細菌毒素はCTBであり、かつCTBが産生される細胞は、コレラ菌213株である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
(4.図面の簡単な説明)
【図1】rCTB(組換えコレラ毒素Bサブユニット)のアミノ酸配列。
【0012】
【図2】コレラ菌213及び401における2つのrCTB発現系の比較。213株において産生される場合、長さ最大7のアミノ酸のシグナル配列を含むrCTBの形態が検出される。rCTBが401株において産生される場合、安定したシグナル配列は検出されない。
【0013】
【図3A】本発明の実施における使用に好適な化合物及び抱合体を理解するのを容易にするために同定された、多くの考えられ得る、任意に標識した、ハプテン‐担体抱合体の「分岐」の提示。
【図3B】本発明の実施における使用に好適な化合物及び抱合体を理解するのを容易にするために同定された、考えられ得る、任意に標識した、ハプテン‐担体抱合体の「分岐」の提示であり、式中、Q'は、修飾されたタンパク質担体など、修飾されたT細胞エピトープ含有担体である。
【0014】
【図4】本発明の免疫原性組成物の調製において有用なニコチン及びその誘導体のいくつか並びに代謝産物の提示。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(5.発明の詳細な説明)
本発明の方法及び組成物、並びにより特定には、本明細書に記載される技術を用いて、当業者は、任意の選択されたシグナルペプチド含有細菌毒素担体を、任意の選択された抗原、例えば、ハプテンと連結させて、本発明の抗原‐担体抱合体を作ることができる。任意の数の担体並びに抗原及び/又はハプテンは、本発明の単一の抱合体分子に存在し得る。
【0016】
(5.1 本発明の免疫原性組成物における使用のための担体)
本発明は、担体がシグナルペプチドを含む細菌毒素である、ハプテン‐担体抱合体などの抗原‐担体抱合体を含む免疫原性組成物を提供する。いくつかの実施態様において、細菌毒素は、その内在性シグナルペプチドを含む。いくつかの実施態様において、細菌毒素は、シグナルペプチドを含むよう操作されている。いくつかの実施態様において、細菌毒素は、そのシグナルペプチドを保有し、例えば、該シグナルペプチドは、細菌毒素から除去されない。
【0017】
本発明において、免疫原性組成物は、ハプテンなどの抗原と、シグナルペプチド含有細菌毒素である担体とを含む。本発明の一実施態様において、抗原は、担体に抱合している。いくつかの実施態様において、細菌毒素は、グラム陰性細菌に由来する。いくつかの実施態様において、毒素はグラム陽性細菌に由来する。いくつかの実施態様において、グラム陰性細菌は大腸菌である。いくつかの実施態様において、細菌は、グラム陽性桿菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、ストレプトミセス、又はモリキュート(マイコプラズマ)である。いくつかの実施態様において、担体は細菌性外毒素である。いくつかの実施態様において、担体は、その毒性を低下させるよう修飾された細菌毒素である。本発明に従って使用するための細菌毒素には、コレラ毒素、好ましくはCTB(組換えCTB(rCTB)を含む。)熱不安定性エンテロトキシン(LT)、熱安定性外毒素(ST)、細胞傷害性壊死性因子(CNF)、細胞致死性膨張性毒素(CLDT)、若しくは腸管凝集性大腸菌熱安定性毒素(EAST)などの大腸菌性毒素、ジフテリア毒素(Dtx)、破傷風毒素、志賀毒素、ボツリヌス毒素、黄色ブドウ球菌アルファ毒素、エクスフォリアチンB若しくはロイコシジン、ブドウ球菌性毒素ショック症候群(TSST‐1)、ブドウ球菌性エンテロトキシン若しくは表皮剥脱毒素などのブドウ球菌性毒素、肺炎球菌のニューモリシン、ストレプトリシンO、発赤毒素(連鎖球菌性発熱性外毒素(SPE))、及び化膿性連鎖球菌の他の発熱性毒素などの連鎖球菌性毒素、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の毒素A/毒素B、イオタ(Iota)ファミリー、C2ファミリー(毒素C及びD)、若しくはC3毒素、又はクロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)の神経毒素A〜G、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)のアルファ毒素、ベータ‐2毒素、若しくはパーフリンゴリジンO(パーフリンジェンスエンテロトキシン)などのクロストリジウム毒素、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)のエンテロトキシン、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)/アエロリジン、百日咳菌(Bordetella pertussis)の糸状赤血球凝集素(FHA)、クロストリジウム若しくは桿菌二成分毒素、ストレプトキナーゼ、百日咳菌のアデニル酸シクラーゼ毒素(百日咳アデニル酸シクラーゼ;「百日咳毒素」)若しくはその皮膚壊死性毒素、炭疽菌浮腫因子(EF)、炭疽毒素(致死因子(LF))、大腸菌の溶血素、リステリア菌(Listeria monocytogenes)のリステリオリシン、及びシュードモナス外毒素(外毒素A)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、例えば、コレラ毒素、ジフテリア毒素、百日咳毒素、シュードモナス外毒素A、又は大腸菌LTなどの細菌ADPリボシル化外毒素が、好ましく使用される。いくつかの実施態様において、細菌ADPリボシル化外毒素の触媒サブユニット(通常、「A」サブユニット)を担体として用いる。他の実施態様において、細菌ADPリボシル化外毒素の受容体結合サブユニット(通常、「B」サブユニット)が好ましい。さらに他の実施態様において、両サブユニット、又はその断片(単数)若しくはその断片(複数)が、担体として用いられる。いくつかの実施態様において、パーフリンゴリジンO、溶血素、リステリオリシン、炭疽EF、アルファ毒素、ニューモリシン、ストレプトリシンO、又はロイコシジンなどの細菌孔形成性毒素を用いる。いくつかの実施態様において、担体は、ブドウ球菌エンテロトキシン血清型A〜E、G、及びH、A群ブドウ球菌発熱性外毒素A〜C、ブドウ球菌エクスフォリアチン毒素、並びにブドウ球菌TSST‐1などの発熱性外毒素又はその修飾された形態である。特に有用な細菌毒素担体には、粘膜の免疫応答を高める能力を有する任意の細菌毒素、例えば、コレラ毒素Bサブユニット又は、細菌毒素の大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LTB)ファミリーにおける任意の毒素を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施態様において、細菌毒素担体は、その内在性シグナルペプチド、すなわちタンパク質が翻訳される場合に細菌毒素に存在するシグナルペプチド、又はその断片を含む。他の実施態様において、細菌毒素担体は、毒素が由来する同じ細菌に存在するシグナルペプチドを含むが、シグナルペプチドは通常、該細菌における異なるタンパク質に存在する。いくつかの実施態様において、シグナルペプチドを通常有さずかつシグナルペプチドが付加される毒素又はその免疫原性断片が用いられる。このような一実施態様において、破傷風毒素は、シグナルペプチドを含むよう操作される。
【0019】
いくつかの実施態様において、コレラ毒素Bサブユニット又は上記の任意の細菌毒素などの、本発明の細菌毒素担体は、異種性シグナルペプチドを含む。いくつかの実施態様において、異種性シグナルペプチドは、当業者に公知のものなどの分泌リーダー配列であり、例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tpa)リーダー配列、タバコ病変形成関連1b(PR1b)シグナルペプチド、若しくは当技術分野で公知の任意の別のシグナルペプチド、又はそれらの断片である。いくつかの実施態様において、シグナルペプチドは、細菌シグナルペプチドである。本発明の実施における使用のための細菌シグナルペプチドはとりわけ、コレラ毒素Bサブユニットシグナルペプチド(本明細書に説明されている断片、又は例えば受入番号P01556)、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットシグナルペプチド(例えば、受入番号P13811)、ジフテリア毒素シグナルペプチド(例えば、受入番号P00588)、百日咳毒素シグナルペプチド(例えば、米国特許第4,883,761号又は受入番号P04977及びP04978参照)、志賀毒素シグナルペプチド(例えば、受入番号Q9FBI2及びQ7BQ98参照)、シュードモナス外毒素A(例えば、受入番号P11439)、糸状状赤血球凝集素毒素の長いシグナルペプチド、TSST‐1シグナルペプチド、a群連鎖球菌毒素シグナルペプチド(Streptococcal a toxin signal peptide)、ブドウ球菌プロテインA シグナルペプチド、クロストリジウム・パーフリンジェンスのアルファ毒素シグナルペプチド、クロストリジウム・パーフリンジェンスのベータ‐2毒素シグナルペプチド(例えば、米国特許第7,144,998号参照)、クロストリジウム及び桿菌二成分毒素のA及びBサブユニットのシグナルペプチドを含む群から選択することができる。本発明における使用のための典型的な細菌毒素シグナルペプチドに関する非制限的なリストについては、下記の表1を参照されたい。全長のシグナルペプチド配列が示されている;しかしながら、10以下のアミノ酸、又は5以下のアミノ酸などの断片、例えば、C末端断片を本発明の実施に用いてよい。シグナルペプチド又はその断片は、長さ1〜3のアミノ酸、長さ3〜5のアミノ酸、長さ5〜10の、好ましくは7のアミノ酸、長さ10〜15のアミノ酸、長さ15〜20のアミノ酸、長さ20〜25のアミノ酸、長さ25〜30のアミノ酸、長さ30〜35のアミノ酸、長さ35〜40のアミノ酸、又は長さ40〜50の、又はそれより多くのアミノ酸であり得る。他の実施態様において、本発明において用いられるシグナルペプチド又はその断片は、天然のシグナルペプチドと90%以上の、85%以上の、80%以上の、75%以上の、70%以上の、65%以上の、又は60%以上の配列同一性を有する。
【0020】
いくつかの実施態様において、下記の第5.1.1節において説明されるなどのCTBシグナルペプチド又はその断片は、CTB以外の細菌毒素担体における異種性シグナルペプチドである。
【0021】
この適用の目的のため、シグナルペプチドは、タンパク質の翻訳後又は翻訳と同時の輸送を配向する短鎖ペプチドである(通常長さ3〜60アミノ酸だが、断片を使用する場合、より短くあることができ、例えばFHAなどにおいてはより長くあることができる。)。また、シグナルペプチドは、ターゲティングシグナル、シグナル配列、輸送ペプチド、又は局在化シグナルとしても公知であり得る。一般的に、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、タンパク質を真核生物における小胞体へと、及び原核生物における細胞膜へと配向させる。例えば、多くの細菌外毒素は、数個の(1〜3の)帯電したアミノ酸及び(14〜20の)疎水性アミノ酸のひと続きからなるアミノ末端シグナルペプチドを用いて合成される。シグナルペプチドは、翻訳の間に細胞膜へと結合及び挿入し得、それにより毒素はその合成の間に分泌される。通常、シグナルペプチドは、毒素が周辺質へと放出される場合に切断される。あるいは、毒素は、細胞質内で合成された後、膜を横切る通過のためのリーダー配列に結合し得る。このような様式で機能するシグナルペプチド、又は他の機序を通じて機能するシグナルペプチドは、本発明における使用のために熟慮される。
【表1】

【0022】
当技術分野で公知の任意の細菌毒素担体は、本発明に従った使用のためのシグナルペプチドを含むよう修飾することができる。シグナルペプチド配列を細菌毒素に付加するための標準的な技術には、組換えDNA技術又は、DNA、RNA、若しくはタンパク質のいずれかのレベルでタンパク質を操作することのできる任意の他の技術を含む。シグナルペプチドの増強された安定性を保証するために、シグナルペプチドが担体に対して内在性であろうと、組換えDNA技術によって付加されようと、当業者は、哺乳類細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる。)細菌細胞、好ましくはコレラ毒素Bサブユニットシグナルペプチド用のコレラ菌213株、又は例えばタバコ植物におけるトランスジェニック発現による植物細胞などの代替系において、最適な細菌毒素担体を産生することができ、シグナルペプチド保有細菌毒素を単離するための最適な系を選択することができる。シグナルペプチドを保有する細菌毒素の産生及び単離を高めるための他の方法には、プロテアーゼ阻害薬、例えばシグナルペプチドペプチダーゼ阻害薬が、タンパク質の発現、又は転位置若しくは転位置後プロセシングのための装置が欠損しているシステムにおける発現の間及び/又は後のいずれかで付加されるシステムにおける発現を含む。シグナルペプチドを保有する細菌毒素が蓄積するよう及び/又は増強された安定性を有するよう最適化される任意の他のシステムは、本発明に従って使用され得る。
【0023】
いくつかの実施態様において、本発明の細菌毒素担体は、対象のT細胞を刺激することのできる少なくとも1つのT細胞エピトープを含み、該エピトープは順に、B細胞がハプテン部分を含む抱合体全体の部分に対する持続した抗体産生を開始及び維持するのを助ける。このように、担体が免疫原性である理由から選択されるので、多様な患者集団におけるワクチンに対する強い免疫応答が期待される。好ましい実施態様において、ハプテンのような担体は、ワクチンに対する強く免疫応答を誘発するために十分外来性でなければならない。保存的だが必須ではないアプローチは、ほとんどの患者が、担体誘発性エピトープ抑制の現象を回避するために曝露されなかった担体を使用することである。しかしながら、担体誘発性エピトープ抑制が生じる場合でさえ、用量の変更(DjJohnらの文献((1989)Lancet 1415-1418))及び、CTBの使用(Stokらの文献((1994)Vaccine 12:521-526))を含む他のプロトコールの変更(Etlingerらの文献((1990)Science 249:423-425))によって克服されたので、管理可能である。患者が既に免疫性である担体タンパク質を利用するワクチンは市販されている。なおもさらに、多数のリシンを含む担体は、本発明の方法に従った抱合に特に適している。それゆえ、特定の実施態様において、本発明の細菌毒素担体は、その免疫原性特性が高くなるよう修飾される。
【0024】
(5.1.1 担体としてのCTB)
コレラ毒素は、コレラ菌によって産生されるエンテロトキシンであり、各サブユニットが11.6KDa(103アミノ酸)の分子量を有する5つの同一のBサブユニットと、27.2KDa(230アミノ酸)の1つのAサブユニットからなる(Finkelsteinの文献((1988) Immunochem. Mol. Gen. Anal. Bac. Path. 85-102))。結合サブユニットCTBは、細胞表面においてガングリオシドGM1に結合する(Sixmaらの文献((1991) Nature 351 :371-375);Orlandiらの文献((1993) J. Biol. Chem. 268: 17038-17044))。CTAは、細胞に入る酵素的サブユニットであり、Gタンパク質のADPリボシル化を触媒し、アデニル酸シクラーゼを構成的に活性化する(Finkelsteinの文献((1988) Immunochem. Mol. Gen. Anal. Bac. Path. pp. 85-102))。Aサブユニットの不在下で、コレラ毒素は毒性ではない。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、CTBは、細菌毒素担体である。CTBは、全身での及び粘膜での強い抗体応答を刺激することのできる高度に免疫原性のタンパク質サブユニットである(Lyckeの文献((1992) J. Immunol. 150:4810-4821);Holmgrenらの文献((1994) Am. J. Trop. Med. Hyg. 50:42-54);Silbartらの文献((1988) J. Immun. Meth. 109:103-112);Katzらの文献((1993) Infection Immun. 61 :1964-1971))。この組み合わさったIgA及びIgG抗ハプテン応答は、例えば、免疫性であることが望ましく鼻内で又は吸入によって投与されるコカイン又は他の物質を遮断する上で、並びに、口及び肺において吸収されるニコチン又は他の物質を遮断する上で非常に望ましい。加えて、CTBは、コレラワクチンについての臨床治験におけるヒトでの使用について安全であることがすでに示されている(Holmgrenらの文献(上述);Jertbornらの文献((1994) Vaccine 12:1078-1082);「ヨルダン報告書、ワクチンの加速した開発("The Jordan Report, Accelerated Development of Vaccines")」(1993., NIAID, 1993))。CTBがシグナルペプチドを含む場合、CTBを含むハプテン‐担体抱合体が、さらにより高い免疫原性を有することが、本発明の発見である。
【0026】
本発明の一実施態様において、細菌毒素担体はCTBであり、そのシグナルペプチドはその内在性シグナルペプチド又はその断片である。一実施態様において、CTBシグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化4】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化5】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列
【化6】

を含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列Ala-His-Glyを含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、アミノ酸配列His-Glyを含む。他の実施態様において、シグナルペプチドは、単一のGly残基を含む。本発明のいくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、これらのペプチドの1つ以上からなる混合物を含む。
【0027】
ある実施態様において、CTBは、異種性のシグナルペプチドを保有する。
【0028】
(5.1.1.1 CTB調製)
CTBを、毒素‐担体抱合体への組み込みのための担体として作製及び使用する方法は公知である。例えば、2005年6月9日に刊行された米国特許出願公報第2005‐0124061号;1999年3月2日に発行された米国特許第5,876,727号;及び米国特許第5,760,184号を参照されたく;これらの各々は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。これらの方法に従って生じたCTB、及び本明細書に呈示される方法は、該CTBが、本明細書に説明されるシグナルペプチドを含むよう改変されてよい。
【0029】
好ましい実施態様において、CTBは、コレラ菌213株において産生される。例えば、2005年5月12日に刊行された国際特許出願公報第WO2005/042749号を参照されたく、そのすべての内容は全体として引用により組み込まれている。
【0030】
他の実施態様において、CTBは、大腸菌において産生される(例えば、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている米国特許出願公報第2005‐0124061号参照)。シグナルペプチド又はその断片を含むCTBの形態の単離を高める方法が好ましい。CTB五量体の高レベルの組換え体発現の産生が説明されている(L'hoirらの文献((1990) Gene 89:47-52);Slosらの文献((1994) Protein Exp. Purif. 5:518-526))。
【0031】
未変性のCTBは市販されており、当業者に公知のタンパク質操作の標準的な技術を用いてシグナルペプチドを有するよう修飾することができる。組換えCTBは、説明されるとおり、ガングリオシドGM1カラムアフィニティクロマトグラフィーによって精製することができる(Tayotらの文献((1981) Eur. J. Biochem. 113:249-258))。組換えCTB五量体は、ELISAにおいてガングリオシドGM1に結合し、ウェスタンブロット及びELISAにおいて五量体特異的抗体と反応する。また、組換えCTBも、SBL Vaccin ABなど他の提供元から入手可能である。
【0032】
CTBの五量体構造は、ガングリオシドGM1に対する結合にとって好ましくあり得る。五量体は、試料が煮沸されない限り、SDSに対して安定であり、五量体化はSDS‐PAGEによって評価することができる。未変性のCTBは五量体であり、SDS‐PAGEにおける変性した単量体CTBと容易に識別することができる。五量体構造は、4〜9のpH範囲にわたって維持され、種々の抱合化学を容易にする。初期に発現した組換えCTBは単量体である。五量体CTBを得るための1つの方法は、適切に折りたたまれた五量体CTBを発現するよう調整することによる。細胞質での発現が、非常により高レベルの単量体CTBを提供することは発見されている。当業者は、単量体CTBを五量体CTBに折りたたむ方法を認識している(例えば、L'hoirらの文献((1990) Gene 89:47-52)参照)。単量体CTBを再折りたたみして五量体CTBを得る代替案は、ELISAによってGM1‐ガングリオシドを結合することのできる五量体組換えCTBを結果的に生じる周辺質での発現である。当業者は、リーダーによる周辺質での発現(Slosらの文献, 上述;Sandezらの文献((1989) Proc. Nat'l. Acad. Sci. 86:481-485);Lebensらの文献((1993) BioTechnol. 11:1574-1578))又は翻訳後の再折りたたみ(L'hoirらの文献, 上述;Joblingらの文献((1991) Mol. Microbiol. 5:1755-1767))など、五量体組換えCTBを得るためのいくつかのアプローチを見出し得る。
【0033】
組換えCTBの量は、一旦最適化されると大きな発酵バッチにおいて産生される量を発現及び精製される。組換えタンパク質を発現及び精製する過程は、当技術分野、例えば米国特許出願シリアル番号第07/807,529号で公知である。例えば、CTBは、コカイン又はニコチン誘導体に抱合したアフィニティクロマトグラフィーによって精製され得(Tayotらの文献(1981) Eur. J. Biochem. 113:249-258)、次に該抱合体はさらに精製され得る。精製されたCTB及び結果として生じる抱合体は、純度について及びCTBの五量体構造の維持について分析される。技術には、SDS‐PAGE、未変性PAGE、ゲル濾過クロマトグラフィー、ウェスタンブロッティング、直接的及びGM1捕捉ELISA、並びにビオチン化CTBとの競合ELISAを含む。ハプテン化のレベルは、質量分析、逆相HPLCによって、及びハプテンの存在から結果的に生じる紫外線吸収の増大の分析によって測定される。抱合体の溶解度及び安定性の両方は、大規模の製剤のための製造において最適化される。これらの分析のいくつかに関する詳細は、実施例において与えられる。
【0034】
CTBの五量体構造は、本発明の実施のための好ましい担体であるが、GM1結合は、五量体形態のCTBが存在することを決定する有効なアッセイであり、本発明は、五量体形態のCTBの使用に限定されない。本発明における使用のために操作され得る他の形態のCTBが企図される(例えば、単量体、二量体、など)。五量体形態のCTB以外の担体が利用される場合、当業者は、必要とされる担体の存在および活性を決定する適切なアッセイを用いるであろう(例えば、五量体形態のCTBの存在を決定するためのGM1結合の使用)。
【0035】
担体としての使用のための別の有用なCTBは、コレラ毒素であり、CTBを上回る改良された粘膜応答を提供する。酵素的に活性のあるAサブユニットアジュバントが活性を高めることは報告されている(Liangらの文献((1988) J. Immunol. 141 :1495-1501);Wilsonらの文献((1993) Vaccine 11 : 113-118;Sniderらの文献((1994) J. Immunol. 153:647))。
【0036】
(5.2 本発明の抱合体における使用のための抗原)
本明細書で説明された組成物及び方法は、幅広い種類の抗原に対する、例えば患部の細胞若しくは組織から、又はヒト若しくは動物の病原体から、又は乱用の薬物から得られるか、若しくは由来する抗原に対する免疫応答を誘導する上で有用である。本明細書で使用する場合、抗原はそれだけで、免疫原性であってもなくてもよい。また、それだけで免疫原性であり、及び/又は大きさが典型的なハプテンよりも大きな抗原は、担体に対するシグナルペプチドの付加が、抗原に対する免疫応答を増大させるであろうために本発明の抱合体における使用が企図される。
【0037】
本明細書で使用する場合、抗原にはまた、本発明の抱合体が標的に対して免疫応答を高めるであろう該標的も含む。例えば、抗原‐担体抱合体における抗原は、肝炎ウイルスエピトープであり得、抱合体が抗原に対して免疫応答を高めるであろう該抗原は、それ自体肝炎ウイルスである。
【0038】
本発明の目的のために、用語「病原体」は、疾患又は容態の特異的原因である作用因を指すよう幅広い意味で用いられ、免疫応答を誘発する分子の源を提供する任意の作用因を含む。従って、病原体には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生虫、癌細胞、及びこれらに類するものを含むが、これらに限定されない。典型的には、免疫応答は、病原体によって産生される1つ以上のペプチド又は炭水化物抗原によって誘発される。適切な抗原を同定し、このような分子を得て及び調製し、次に適切な薬用量を決定し、適切な免疫原性についてアッセイし、並びにこのような抗原を用いて処理する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Plotkinらの文献(「ワクチン第2版(Vaccines, 2nd Edition)」((1994) W. B. Saunders, Philadelphia, Pa))を参照されたい。従って、脊椎動物対象、特にヒト及び非ヒト哺乳類に予防接種するために用いることのできる抗原のための源に関する非制限的な例には、ウイルス、細菌、真菌、及び他の病原性生物を含む。
【0039】
ウイルス性抗原には、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、及びG型肝炎ウイルス(HGV)を含む肝炎ファミリーのウイルスから得られたもの又は由来するものを含むが、これらに限定されない。例えば、国際公報第WO89/04669号;第WO90/11089号;及び第WO90/14436号を参照されたい。HCVゲノムは、E1及びE2を含むいくつかのウイルスタンパク質をコードする。例えば、Houghtonらの文献((1991) Hepatology 14:381-388)を参照されたい。これらのタンパク質及びその抗原性断片をコードする配列を含むゲノム断片は、本方法において使用を認めるであろう。同様に、HDV由来のデルタ抗原をコードする配列は公知である(例えば、米国特許第5,378,814号参照)。
【0040】
同様の様式で、ヘルペスウイルスファミリー由来の幅広い種類のタンパク質は、単純ヘルペスウイルス(HSV)‐1及びHSV‐2糖タンパク質gB、gD、及びgHなど、HSVの1型及び2型に由来するタンパク質;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、並びにCMV gB及びgHを含むサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原;並びにHHV6及びHHV7などの他のヒトヘルペスウイルスに由来する抗原を含む、本発明における抗原として用いることができる(例えば、Cheeらの文献「サイトメガロウイルス(Cytomegaloviruses)」((1990) J. K. McDougall編, Springer- Verlag, pp. 125-169);McGeochらの文献((1988) J. Gen. Virol. 69: 1531-1574);米国特許第5,171,568号;Baerらの文献((1984) Nature 310:207-211);及びDavisonらの文献((1986) J. Gen. Virol. 67:1759-1816)参照)。
【0041】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の種々の遺伝的サブタイプのメンバーを含む、HIV‐1及びHIV‐2の多数の単離物についてのgp120分子など、HIV抗原は公知であり、報告されており(例えば、Myersらの文献「ロスアラモスデータベース(Los Alamos Database)」(Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, N. Mex. (1992));及びModrowらの文献((1987) J. Virol. 61 :570-578)参照)、これらの任意の単離物に由来する又は該単離物から得られる抗原を含むゲノム断片は、本発明における使用を認めるであろう。さらに、任意の種々のHIV単離物に由来する又は該単離物から得られる他の免疫原性タンパク質は、本明細書における使用を認めるであろうし、これには、gp160及びgp41などの種々のエンベロープタンパク質、p24gag及びp55gagなどのgag抗原、及びHIVのpol、env、tat、vif、rev、nef、vpr、vpu、及びLTRの領域に由来するタンパク質のうちの1つ以上を含む断片を含む。
【0042】
また、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科(例えば、ロタウイルスなど);ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、A、B、及びC型インフルエンザウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)のファミリーのメンバーから;ブニヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えば、HTLV‐I;HTLV‐II;限定はされないが、単離体HIV IIIHb、HIV SF2、HIV LAV、HIV LAI、HIV MN、HIV‐1 CM235、HIV‐1 US4由来の抗原を含むHIV‐I(HTLV‐III、LAV、ARV、hTLRなどとしても公知);とりわけHIV‐2;サル免疫不全ウイルス(SIV));パピローマウイルス;ダニ媒介性脳炎ウイルスなどまでの抗原などだがこれらに限定されない他のウイルスに由来する又は該ウイルスから得られる抗原も、本明細書における使用を認めるであろう。これら及び他のウイルスに関する説明については、例えば、W. K. Joklik編「ウイルス学第3版(Virology, 3rd Edition)(1988);B. N. Fields 及び D. M. Knipe編「基礎ウイルス学第2版(Fundamental Virology, 2nd Edition)」(1991)を参照されたい。
【0043】
いくつかの文脈において、選択されたウイルス抗原は、典型的に粘膜表面を介して身体に入り、かつHIV(エイズ)、インフルエンザウイルス(Flu)、単純ヘルペスウイルス(性器感染症、口唇ヘルペス、性行為感染症)、ロタウイルス(下痢症)、パラインフルエンザウイルス(呼吸器感染)、ポリオウイルス(灰白髄炎)、呼吸器多核体ウイルス(呼吸器感染)、麻疹及び流行性耳下腺炎ウイルス(麻疹、流行性耳下腺炎)、風疹ウイルス(風疹)、並びにライノウイルス(感冒)などだがこれらに限定されないヒト疾患を発症することが公知である又は該疾患と関連するウイルス病原体から得られるか、又は該病原体に由来することが好ましくあり得る。
【0044】
細菌性の及び寄生虫性の抗原を含むゲノム断片は、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核、細菌性若しくは真菌性肺炎、中耳炎、淋病、コレラ、腸チフス、髄膜炎、単核球症、ペスト、細菌性赤痢若しくはサルモネラ症、レジオネラ症、ライム病、らい病、マラリア、鉤虫、オンコセルカ症、住血吸虫症、トリパマソーマ症(Trypamasomialsis)、リーシュマニア症、ジアルジア症、アメーバ症、フィラリア症、ボレリア、及び旋毛虫症を含むがこれらに限定されない疾患の原因である公知の原因となる作用因から得ることができるか、又はこれらに由来することができる。さらなる抗原は、クールー、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、スクレイピー、感染性ミンク脳症、及び慢性消耗性疾患の原因となる作用因などの非通常性のウイルスから、又は狂牛病と関連するプリオンなどのタンパク質性感染粒子から得ることができるか、又はこれらに由来することができる。
【0045】
具体的な病原体には、結核菌、クラミジア、淋菌、赤痢菌、サルモネラ、コレラ菌、トレパネーマ・パリデュア(Trepanema pallidua)、シュードモナス、百日咳菌、ブルセラ、野兎病菌、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レプトスピラ・インテロガウス(Leptospria interrogaus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ペスト菌、連鎖球菌(A型及びB型)、肺炎球菌、髄膜炎菌、ヘモフィルス・インフルエンザ(Hemophilus influenza)(b型)、トキソプラズマ原虫、カンピロバクター、カタル球菌、鼡径リンパ肉芽腫症、及び放線菌症;カンジダ症及びアスペルギルス症を含む真菌性病原体;条虫類、吸虫類、回虫類、アメーバ症、ジアルジア症、クリプトスポリジウム、住血吸虫、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症、及び旋毛虫症を含む寄生虫性病原体を含むことができる。従って、また、本発明は、口蹄疫、コロナウイルス、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ヘリコバクター、普通円虫、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pheuropneumonia)、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、肺炎桿菌、大腸菌、百日咳菌、パラ百日咳菌、及びブロンキセプチカなどの数多くの獣医学的疾患に対する適切な免疫応答を提供するためにも用いることができる。
【0046】
いくつかの実施態様において、関心対象の抗原は、アレルゲンであることができる。「アレルゲン」とは、過敏症の状態を発症することのできる、又はアレルゲンですでに感作した固体における即時型過敏症反応を誘発することのできる抗原である。アレルゲンは一般に、アレルゲン性である特性を有するタンパク質に結合するタンパク質又は化学物質である。しかしながら、また、アレルゲンには、植物材料、金属、化粧若しくは洗剤における成分、ラテックス、又はそれらに類するものなど、種々の人工の又は自然の源に由来する有機又は無機材料を含むことができる。本発明の方法における使用に好適なアレルゲンのクラスには、花粉、動物のフケ、草、カビ、粉塵、抗生物質、刺傷昆虫の毒液を含むことができるがこれらに限定されず、種々の環境アレルゲン(化学物質及び金属を含む。)、薬剤アレルゲン、及び食物アレルゲンを認める。通常の樹木アレルゲンには、コットンウッド、一般的な樹木、トネリコ、カバノキ、カエデ、オーク、ニレ、ヒッコリー、及びペカンからの花粉を含み;通常の植物アレルゲンには、ライムギ、ブタクサ、ヘラオオバコ、ソレルドック(sorrel-dock)、及びヒユ(pigweed)に由来するものを含み;植物接触アレルゲンには、ウルシ、ツタウルシ、及びイラクサに由来するものを含み;通常の草アレルゲンには、オオアワガエリ、マリファナ(Johnson)、ギョウギシバ、ウシノケグサ、及びブルーグラスのアレルゲンを含み;また、通常のアレルゲンは、アルテルナリア属、フザリウム属、ホルモデンドラム属、アスペルギルス属、ミクロポリスポラ属、ケカビ属、及び好熱性放線菌類などのカビ又は真菌からも得ることができ;ペニシリン及びテトラサイクリンは通常の抗生物質性アレルゲンであり;表皮性アレルゲンは、ハウスダスト又は有機粉塵から(典型的には起源における真菌性)、イエダニ(デルマトファゴイデス・プテロシニッシス(dermatphagoides pterosinyssis))などの昆虫から、又は羽毛、並びにネコ及びイヌのフケなどの動物源から得ることができ;通常の食物アレルゲンは、乳及びチーズ(ダイアリー(diary))、卵、コムギ、ナッツ(例えば、ピーナッツ)、海産物(例えば、甲殻類)、エンドウマメ、マメ、及びグルテンのアレルゲンを含み;通常の環境アレルゲンには、金属(ニッケル及び金)、化学物質(ホルムアルデヒド、トリニトロフェノール、及びテレピン)、ラテックス、ゴム、繊維(綿又は毛)、バーラップ、染毛剤、化粧品、洗剤、及び芳香剤のアレルゲンを含み;通常の薬剤アレルゲンには、局所麻酔薬及びサリチラートのアレルゲンを含み;抗生物質アレルゲンには、ペニシリン及びスルホンアミドのアレルゲンを含み;並びに通常の昆虫アレルゲンには、ミツバチ、スズメバチ、及びアリの毒液、並びにゴキブリ腎杯のアレルゲンを含む。特に十分に特徴付けられたアレルゲンには、Der pIアレルゲンの主要エピトープ及び潜在性エピトープ(Hoyneらの文献((1994) Immunology 83190-195))、ミツバチ毒ホスホリパーゼA2(PLA)(Akdisらの文献((1996) J. Clin. Invest. 98:1676-1683))、カバノキ花粉アレルゲンBet v 1(Bauerらの文献((1997) Clin. Exp. Immunol. 107:536-541))、及び多重エピトープ性組換え草アレルゲンrKBG8.3(Caoらの文献((1997) Immunology 90:46-51))を含むが、これらに限定されない。これら及び他の適切なアレルゲンは、市販されており及び/又は公知の技術に従って抽出物として容易に調製することができる。
【0047】
ある他の実施態様において、関心対象の抗原は、腫瘍特異的抗原であることができる。本発明の目的のために、腫瘍特異的抗原には、MAGE 1、MAGE 2、MAGE 3(HLA‐A1ペプチド)、MAGE 4などを含む種々の任意のMAGE(メラノーマ関連抗原E);種々の任意のチロシナーゼ(HLA‐A2ペプチド);Ras突然変異体;p53突然変異体;及びp97メラノーマ抗原を含むが、これらに限定されない。他の腫瘍特異的抗原には、進行癌と関連したRasペプチド及びp53ペプチド、子宮頚癌と関連したHPV 16/18及びE6/E7抗原、乳癌と関連したMUC1‐KLH抗原、結腸直腸癌と関連したCEA(癌胎児抗原)、メラノーマと関連したgp100又はMART1、及び前立腺がんと関連したPSA抗原を含む。P53遺伝子配列は公知であり(例えば、Harrisらの文献((1986) Mol. Cell. Biol. 6:4650-4656)参照)、受入番号M14694の下でGenBankに寄託されている。従って、本発明のアジュバント組成物を用いて、子宮頚癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肺癌、及びメラノーマを治療する免疫治療法を実施することができる。
【0048】
本発明とともに使用するための抗原は、当業者に公知の種々の方法を用いて得ることができ又は産生することができる。特に、抗原は、標準的な精製技術を用いて、天然源から直接単離することができる。あるいは、抗原は、公知の技術を用いて組換えで産生することができる。例えば、Sambrook、Fritsch、及びManiatisの文献「分子クローニング:実験室マニュアル第I、II、及びIII巻、第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition)」(1989);D. N. Glover編「DNAクローニング第I及びII巻(DNA Cloning, Vols. I and II)」(1985)を参照されたい。また、本明細書における使用のための抗原は、固相ペプチド合成などの化学ポリマー合成を介して、説明されたアミノ酸配列に基づいて合成してよい。このような方法は当業者に公知である。例えば、固相ペプチド合成技術については、J. M. Stewart及びJ. D. Youngの文献「固相ペプチド合成第2版(Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed.)」(Pierce Chemical Co., Rockford, 111. (1984))、並びにG. Barany及びR. B. Merrifieldの文献「ペプチド:分析、合成、生物学(The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology,)」(E. Gross及びJ. Meienhofer編, 第2巻, Academic Press, New York, (1980), pp. 3-254)を;古典的な溶液合成についてはM. Bodanskyの文献「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)」(Springer‐Verlag, Berlin (3984))、並びにE. Gross及びJ. Meienhofer編「ペプチド:分析、合成、生物学(The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology)」(上記,第1巻)を参照されたい。
【0049】
所望の場合、上記の抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子を発現する細胞由来のcDNA及びゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、又はそれを含むことが公知のベクターから遺伝子を誘導することによってなど、組換え方法を用いて得ることができる。さらに、所望の遺伝子は、それを含む細胞及び組織から、cDNA又はゲノムDNAのフェノール抽出及びPCRなどの標準的な技術を用いて、直接単離することができる。例えば、DNAを得て単離するために用いられる技術に関する説明については、上述のSambrookらの文献を参照されたい。また、ポリヌクレオチド配列は、クローニングされるよりもむしろ合成で製造することができる。
【0050】
(5.2.1 本発明の免疫原性組成物における使用のためのハプテン)
本発明の抗原は、ハプテンであり得る。一実施態様において、本発明において用いられる「ハプテン」とは、抗体と特異的に反応し、かつ、それ自体免疫応答を刺激することができないが、ハプテン‐担体抱合体を形成するT細胞エピトープ含有担体と複合体形成する場合、免疫原性である低分子量有機化合物である。他の実施態様において、ハプテンはそれ自体、ほとんど免疫原性がない。さらに、ハプテンは、ハプテン‐担体抱合体の特異性決定部分を特徴とし、すなわち、遊離状態においてハプテンに特異的な抗体と反応することができる。いくつかの実施態様において、免疫化されていない対象において、ハプテンに対する抗体の形成はない。いくつかの実施態様において、免疫化されていない対象において、ハプテンに対する低レベルの抗体、又はハプテンに対する免疫応答の増大が望まれるハプテンに対するあるレベルの抗体があり得る。本発明において、ある実施態様において、用語ハプテンには、薬剤、薬剤の一部の類似体、又は薬剤誘導体である、より特異的な薬剤/ハプテンの概念を含むことになっている。免疫原性組成物、又はいくつかの実施態様において、ワクチンは、初期的に投与される場合、「所望の測定可能な結果」を生じるであろう。初期的に、望ましい測定可能な結果は、高い力価の抗ハプテン抗体の産生である(およそ0.1mg/mL〜1mg/mL以上の特異的抗体含有血清)。しかしながら、個体に好適な薬用量投与計画の操作は、持続した望ましい治療効果を与えかつ維持する。「所望の治療効果」とは、ハプテンへのその後の曝露の際にハプテンに特異的な抗ハプテン抗体によって治療として許容できる時間枠内でハプテン(例えば、ニコチン又はコカイン)の薬理学的効果を低下又は除去するのに十分な画分の遊離ハプテンの中和である。与えられたハプテンに対する十分な抗体応答を得るのにどのくらい長くかかるか、及び抗体応答がどのくらい長く維持されるかについての治療として許容し得る時間枠を決定することは、免疫化されるべき対象の特徴、中和されるべきハプテン(例えば、乱用の薬物)、及び投与の様式を評価することによって当業者により達成される。このこと及び他の免疫化プロトコールをモデルとして用いることによって、当業者は、数ヶ月間、最大で1年超持続する免疫又は保護期間を期待するであろう。
【0051】
本発明の抱合体を達成する一態様は、遊離状態のハプテンとして(例えば、遊離のコカイン又はニコチンとして)認識されるのに十分な構造を維持しながら、担体に抱合又は接合することができるようにするのに十分にハプテンを修飾することを包含する。予防接種された個体が、遊離ハプテン(例えば、コカイン又はニコチン)を認識する抗体を有することは必須である。ラジオイムノアッセイ実験及び競合ELISAアッセイ実験は、遊離ハプテンに対する抗体力価を測定することができる。関心対象の抗体は、ハプテン特異的抗体であり、いくつかの実施態様において、コカイン特異的抗体又はニコチン特異的抗体である。好ましい実施態様を説明するために用いられる原理及び方法が、本開示から、種々の疾患、容態、又は薬物耽溺及び毒性応答の治療に有用な幅広い範囲のハプテン‐担体抱合体にまで及び得ることは認識されるべきである。
【0052】
種々のハプテンは、本発明の実施において用いられ得る。いくつかの実施態様において、ハプテンは、先の第5.2節における抗原から選択された抗原である。いくつかの実施態様において、ハプテンは、例えば下記などの薬剤である。
【0053】
幻覚薬、例えば、メスカリン及びリゼルグ酸ジエチルアミド;
【0054】
カンナビノイド、例えば、テトラヒドロカンナビノール;
【0055】
刺激薬、例えば、アンフェタミン、コカイン、フェンメトラジン、メチルフェニデート;
【0056】
ニコチン;
【0057】
抑制薬、例えば、非バルビタール酸系薬剤(例えば、臭化物、包水クロラールなど)、メタカロン、バルビツール酸系薬剤、ジアゼパム、フルラゼパム、フェンシクリジン、及びフルオキセチン;
【0058】
アヘン及びその誘導体、例えば、ヘロイン、メサドン、モルヒネ、メペリジン、コデイン、ペンタゾシン、及びプロポキシフェン;並びに
【0059】
「エクスタシー」などの「デザイナードラッグ」。
【0060】
(5.3 抗原‐担体抱合体及びハプテン‐担体抱合体を調製する方法)
本発明の抱合体の調製は、コカイン及びコカイン代謝産物から誘導されたハプテン、主としてノルコカイン、ベンゾイルエクゴニン、及びエクゴニンメチルエステルの誘導体、並びに組換えCTB(rCTB)を含む種々の担体を用いて、本節において具現化される。これらの方法は、ニコチンを用いる次節において具現化されるように、任意の他のハプテンとの使用に適応させることができる。
【0061】
ハプテン‐担体連結の長さ及び性質は、ハプテンが、それに対して初期的に生じる抗体によってその最適な認識を可能にするのに十分な距離を担体ドメインから置かれるようになっている。リンカーの長さは、下記からなる群から選択される「分岐」内に戦略的に配置された-CH2基の数を変動させることによって最適化される:
【化7】

【0062】
(また、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている米国特許出願公報第2005‐0124061号も参照されたい。)先の分岐に関して、nは整数であり、好ましくは約1〜約20、より特定には約3〜約6から選択され;Yは好ましくは、S、O、及びNHからなる群から選択され;並びにQは好ましくは、下記からなる群から選択される
【0063】
(i)-H;
【0064】
(ii)-OH;
【0065】
(iii)-CH2
【0066】
(iv)-CH;
【0067】
(iv a)-OCH3
【0068】
(v)-COOH;
【0069】
(vi)ハロゲン;
【0070】
(vii)2-ニトロ-4-スルホフェニルエステル及びN-オキシスクシンイミジルエステルなどの活性化したエステル又はエステル類;
【0071】
(viii)混合型無水物、ハロゲン化アシル、アジ化アシル、ハロゲン化アルキル、N-マレイミド、イミノエステル、イソシアナート、及びイソチオシアナートなど、担体に対して反応性のある基(group)又は基(groups);
【0072】
(ix)担体;並びに
【0073】
(x)その「CJ」参照番号によって同定される別の「分岐」。
【0074】
T細胞エピトープ含有担体は、当業者に公知の方法によって修飾され、ハプテンに対する抱合を容易にし得る(例えば、チオール化による。)。例えば、2-イミノチオラン(トラウト試薬(Traut's reagent))を用いて、又はスクシニル化によってなどである。簡素化のために、Q=Hである(CH2)Qは、(CH3)、メチル、又はMeと呼ばれ得るが、図3A及び図3Bにおいて示される「分岐」において同定されるようなモチーフに適合すべきであることは理解される。本明細書で用いられる市販の化合物に関するさらなる略記には下記を含む:
【0075】
BSA=ウシ血清アルブミン
【0076】
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0077】
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
【0078】
EDC(又はEDAC)=N-エチル-N'-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド
【0079】
EDTA=エチレンジアミン四酢酸、二ナトリウム塩
【0080】
HATU=ヘキサフルオロリン酸O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム
【0081】
NMM=N-メチルモルフォリン
【0082】
HBTU=ヘキサフルオロリン酸2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム
【0083】
TNTU=テトラフルオロホウ酸2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム
【0084】
PyBroP(登録商標)=ヘキサフルオロリン酸ブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム
【0085】
HOBt=N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0086】
さらに、いくつかの命名された化合物についての国際純正及び応用化学連合の命名法は、下記である:
【0087】
ノルコカイン:
【0088】
3β-(ベンゾイルオキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2β-カルボン酸メチルエステル
【0089】
ベンゾイルエクゴニン:
【0090】
3β-(ベンゾイルオキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2β-カルボン酸
【0091】
コカイン:
【0092】
3β-(ベンゾイルオキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2β-カルボン酸メチルエステル
【0093】
エクゴニンメチルエステル:
【0094】
3β-(ヒドロキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2β-カルボン酸メチルエステル
【0095】
ニコチン
【0096】
1-メチル-2-(3-ピリジル)ピロリジン
【0097】
コチニン
【0098】
N-メチル-2-(3-ピリジル)-5-ピロリドン。
【0099】
(5.4 ニコチン抱合体の調製)
本発明の新規のニコチン‐担体抱合体は、ニコチン及びニコチン代謝産物から誘導される。図4は、ニコチン並びにその誘導体及び代謝産物のいくつかの提示を示す。
【0100】
ニコチン‐担体抱合体の調製について先に説明した方法を適応させることに加えて、ニコチン‐担体抱合体の前駆体は、ピリジン窒素含有(S)-(-)ニコチン含有無水メタノールを、3-ブロモ酪酸エチル、5-ブロモ吉草酸、6-ブロモヘキサン酸、又は8-ブロモオクタン酸をそれぞれ用いて選択的にアルキル化することによって合成することができる。これらの反応の生成物は、HATUを用いて担体タンパク質に抱合される。
【0101】
別の実施態様において、ノルニコチン(50mmol)含有塩化メチレンの溶液にトリエチルアミン(75mmol)を添加した後、無水コハク酸(100mmol)を添加する。溶液を18時間還流加熱する。反応混合物を10%水性塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液、鹹水、及び水で連続して洗浄する。乾燥(MgSO4)、及び溶媒の減圧下での除去の後、残渣を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して、所望の生成物をもたらす。
【0102】
さらなる実施態様において、スクシニル化したノルニコチンを用いて、ニコチン抱合体を合成する。スクシニル化ノルニコチン(5μmol)含有DMF(0.1mL)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(10mmol)を添加した後、HATU(5.5μmol)を添加する。10分後、淡黄色の溶液を、pH8.8のHEL又はBSA(500μg)のいずれかを含有する0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(0.9mL)の溶液に滴下して添加し、混合物を大気温で18時間撹拌する。抱合体溶液のpHをpH7.0に、0.1M水性塩酸の注意深い添加によって調整した後、PBSに対する透析によって精製する。透析液を0.2μmフィルターでろ過し、ハプテン化のレベルを質量スペクトル分析又は紫外線吸光度によって測定する。ニコチン‐担体抱合体を製造するこれらの方法及び他の方法を下記に説明する。
【0103】
(5.4.1 方法A:(S)-ニコチンのN'-酪酸付加物)
氷水温におけるアルゴン下での(S)-ニコチン(0.031モル)含有無水メタノール(50mL)の溶液に、エチル-4-ブロモブチラート(0.0341モル)を10分間かけて滴下して添加する。結果として生じる橙色の溶液を大気温に加温し、18時間撹拌しておく。溶媒を減圧下で除去して、褐色の残渣を残し、該残渣をヘキサンで沈殿させて、所望のエステルの分析的に純粋な試料を与える。
【0104】
エステル(36mg)をメタノール(3mL)及び1M水酸化ナトリウム溶液(5mL)に溶解し、大気温で18時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を10%塩酸に溶解し、酢酸エチルで抽出する。乾燥(MgSO4)後、溶媒を減圧下で除去して、所望の化合物を生じる。
【0105】
(5.4.2 方法B:(S)-ニコチンのN'-吉草酸付加物)
氷水温でのアルゴン下における(S)-ニコチン(0.031モル)含有無水メタノール(50mL)の溶液に、1-ブロモ吉草酸(0.0341モル)を10分間かけて滴下して添加する。結果として生じる橙色の溶液を大気温に加温し、18時間撹拌しておく。溶媒を減圧下で除去して褐色の残渣を残し、該残渣をヘキサンで沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋な試料を与える。
【0106】
(5.4.3 方法C:(S)-ニコチンのN'-ヘキサン酸付加物)
氷水温でのアルゴン下における(S)-ニコチン(0.031モル)含有無水メタノール(50mL)の溶液に、1-ブロモへキサン酸(0.0341モル)を10分間かけて滴下して添加する。結果として生じる橙色の溶液を大気温に加温し、18時間撹拌しておく。溶媒を減圧下で除去して、褐色の残渣を残し、該残渣をヘキサンで沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋な試料を与える。
【0107】
(5.4.4 方法D:(S)-ニコチンのN'-オクタン酸付加物)
氷水温でのアルゴン下における(S)-ニコチン(0.031モル)含有無水メタノール(50mL)の溶液に、適切な1-ブロモオクタン酸(0.0341モル)を10分間かけて滴下して添加する。結果として生じる橙色の溶液を大気温に加温し、18時間撹拌しておく。溶媒を減圧下で除去して褐色の残渣を残し、該残渣をヘキサンで沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋な試料を与える。
【0108】
(5.4.5 他の方法)
ある実施態様において、ニコチンの適切なN'-アルカン酸類似体(6.27×10-5モル)含有DMF(1.6mL)の溶液に、DIEA(1.25×10-4モル)及びHATU(7.53×10-5モル)を添加する。大気温で10分後、淡黄色の溶液をHEL又はBSAのいずれか(16.5mg)を含有する0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.3(14.4mL)に添加し、18時間撹拌する。抱合体溶液をPBSに対する4℃で一晩の透析によって精製する。抱合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析して、ハプテン数を決定する。
【0109】
CTBが担体である好ましい実施態様において、ニコチンの適切なN'-アルカン酸類似体(6.27×10-5モル)含有DMF(1.6mL)の溶液に、DIEA(1.25×10-4モル)及びHATU(7.53×10-5モル)を添加する。大気温で10分後、淡黄色の溶液をrCTB(16.6mg)含有0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.3(14.4mL)に添加し、18時間撹拌する。抱合体溶液をPBSに対する4℃での一晩の透析によって精製する。抱合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析して、ハプテン数を決定する。
【0110】
(5.5 免疫原性組成物及びそれらの使用のための方法)
本発明は、担体がシグナルペプチドを有する細菌毒素であるハプテン‐担体抱合体を含む免疫原性組成物を提供する。一実施態様において、ハプテンは、ニコチン又はニコチン誘導体である。別の実施態様において、ハプテンは、コカイン又はコカイン誘導体である。一実施態様において、細菌毒素担体は、その内在性シグナルペプチド又はその断片(fragment)若しくは断片(fragments)を有するCTBである。本発明の免疫原性組成物は、このような毒素‐担体抱合体と、任意に生理学的担体若しくは賦形剤とを含む。本発明は、このような免疫原性組成物を製造する方法を提供し、シグナルペプチド又はその断片を有する担体の単離を可能にする系において細菌毒素担体を製造すること、又は担体の単離後にシグナルペプチドを付加することの後に、ハプテンに抱合することを含む。いくつかの実施態様において、ハプテンは、タンパク質性物質であり、この場合において、抱合体は、基質における増殖(propagation)によって組換えで製造することができる。本発明は、対象に有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、免疫応答を誘導する方法を提供する。本発明は、有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、薬物耽溺を含む疾患若しくは容態を予防、管理、及び/又は治療する方法を提供する。いくつかの実施態様において、予防、管理、及び/又は治療されるべき薬物耽溺は、コカイン耽溺である。他の実施態様において、予防、管理、及び/又は治療されるべき薬物耽溺は、ニコチン耽溺である。
【0111】
本明細書で定義する場合、本発明の免疫原性組成物は、細胞、組織、臓器、及び/又は対象若しくは患者における免疫応答を誘導することができる。本明細書で使用する場合、用語「対象」又は「患者」は、互換的に用いられる。本明細書で使用する場合、用語「対象(subject)」及び「対象(subjects)」は、動物(例えば、鳥類、爬虫類、及び哺乳類)、好ましくは非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)及び霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含む哺乳類、及び最も好ましくはヒトを指す。ある実施態様において、対象又は患者は、薬物耽溺を有する。ある実施態様において、対象又は患者は、薬物耽溺を発症させる又は再発させる危険にある。
【0112】
本発明のいくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、「ワクチン」であり、すなわち、対象又は患者への投与用である。
【0113】
本発明のいくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、B細胞応答及び/又はT細胞応答などの適応免疫系に由来する免疫応答を誘導する。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物によって誘導される免疫応答は、抗体応答である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、インターフェロン応答及び/又はインターロイキン応答、例えば、インターロイキン‐4応答などの体液性免疫応答を誘導する。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、1つ以上の種類の免疫応答を誘導するが、別の免疫応答を誘導しない。ある実施態様において、免疫原性組成物は、免疫応答の組み合わせを誘導する。さらに、いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、インビボで他の生物学的結果を有する強いIFN応答を誘導して、その後の疾患若しくは容態又は同時発生的な疾患若しくは容態に対する保護を生じることができる。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、インビボで他の生物学的結果を有する強いTNFα又はインターロイキン応答を誘導して、その後の疾患若しくは容態又は同時発生的な疾患若しくは容態に対する保護を生じることができる。
【0114】
ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される免疫応答は、プラセボ又は他のネガティブコントロールを投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜100%以上増大される。ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される免疫応答は、プラセボ又は他のネガティブコントロールを投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して、およそ1〜およそ100倍、およそ5〜およそ80倍、およそ20〜およそ80倍、およそ1〜およそ10倍、若しくはおよそ1〜およそ5倍、若しくはおよそ40〜およそ80倍、又は1、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100倍増大される。
【0115】
ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される免疫応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜100%以上増大される。ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される免疫応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して、およそ1〜およそ100倍、およそ5〜およそ80倍、およそ20〜およそ80倍、およそ1〜およそ10倍、若しくはおよそ1〜およそ5倍、若しくはおよそ40〜およそ80倍、又は1、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100倍増大される。
【0116】
ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される抗体応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜100%以上増大される。ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導される抗体応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して、およそ1〜およそ100倍、およそ5〜およそ80倍、およそ20〜およそ80倍、およそ1〜およそ10倍、若しくはおよそ1〜およそ5倍、若しくはおよそ40〜およそ80倍、又は1、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100倍増大される。
【0117】
ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導されるインターフェロン応答又はインターロイキン応答、好ましくはIL‐4応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して5〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜100%以上増大される。ある実施態様において、担体が細菌毒素を含むシグナルペプチドである抱合体を含む本発明の免疫原性組成物によって誘導されるインターフェロン応答又はインターロイキン応答、好ましくはIL‐4応答は、シグナルペプチドを欠失する抱合体を投与された対象(宿主)又は宿主細胞と比較して、およそ1〜およそ100倍、およそ5〜およそ80倍、およそ20〜およそ80倍、およそ1〜およそ10倍、若しくはおよそ1〜およそ5倍、若しくはおよそ40〜およそ80倍、又は1、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100倍増大される。
【0118】
いくつかの実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、本発明の有効量の抱合体と、医薬として許容し得る担体とを含む。用語「医薬として許容し得る」は、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって認可されたことを、又は米国薬局方において若しくは動物における、より特定にはヒトにおける使用のための他の一般に認識された薬局方において列挙されたことを意味する。用語「担体」は、医薬製剤がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。また、塩類溶液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射可能な溶液のための液体担体として採用することができる。適切な賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール1-ステアラート、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、及びこれらに類するものを含む。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinにより「Remingtonの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に説明されている。製剤は、投与の様式に適しているべきである。また、特定の組成物は、突然変異ウイルスが生きているか又は不活性化されているかどうかにも依存し得る。
【0119】
本発明の免疫原性組成物は、未処置の対象、すなわち、疾患、容態、薬物耽溺を有しない対象に、又は感染性作用因で感染したことがなくかつ現に感染されていない対象に投与され得る。本発明の免疫原性組成物は、未処置の対象、すなわち疾患、容態、薬物耽溺を有しない対象に、又は感染性作用因で感染したことがなくかつ現に感染されていないが、このような疾患、容態、薬物耽溺、若しくは感染を獲得しやすい対象に投与され得る。また、本発明の免疫原性組成物は、疾患、容態、薬物耽溺、若しくは感染を有する、及び/又は有していたことのある対象にも投与され得る。
【0120】
多くの方法を用いて、免疫原性組成物、例えば、本明細書に説明されるワクチン製剤を導入し得る。これらには、鼻内、気管内、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、結膜性、及び皮下の経路を含むが、これらに限定されない。非経口投与に対する代替として、本発明はまた、飲用水を介して若しくはスプレーにおいてなど、農業目的のための大量投与の経路も包含する。免疫原性組成物が標的とされる作用因の投与又は感染の天然の経路を介して本発明の突然変異ウイルスを導入することは好ましくあり得る。
【0121】
ある実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、(すなわち、薬物耽溺からの)完全な保護又は治癒を結果として生じないが、未処理の対象と比較してより低レベルの耽溺を結果として生じる。利点には、疾患又は容態の症状の低い重症度、及び疾患又は容態の期間の短縮を含むが、これらに限定されない。
【0122】
ある実施態様において、本発明の免疫原性組成物を用いて、未処置の対象における疾患又は容態(例えば、感染又は薬物耽溺)に対して保護する。
【0123】
本発明の免疫原性組成物の予防及び/又は治療効果は、免疫応答(例えば、体液性免疫応答又は適応免疫応答)を達成又は誘導することに一部基づいている。一態様において、免疫原性組成物は、対象又はその動物モデル(例えば、マウス、ラット、ブタ、ヤギ、ヒツジ、又はイヌモデル)のいずれかにおける抗原又はハプテンに対する抗体の検出可能な血清力価を誘導する。抗体の血清力価は、当業者に公知の技術、例えば、ELISAなどのイムノアッセイを用いて決定することができる。具体的な実施態様において、本発明の免疫原性組成物を投与することによって生じた抗体は、中和抗体である。
【0124】
一実施態様において、本発明の免疫原性組成物の対象又はその動物モデルへの投与は、ハプテン又は抗原に特異的に結合する約1μg/mL、約2μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約10μg/mL、約15μg/mL、約20μg/mL、約25μg/mL、約50μg/mL、約75μg/mL、約100μg/mL、約125μg/mL、約150μg/mL、約175μg/mL、約200μg/mL、約225μg/mL、約250μg/mL、約275μg/mL、約300μg/mL、約325μg/mL、約350μg/mL、約375μg/mL以上の抗体の血清力価を結果的に生じる。ある好ましい実施態様において、血清力価は100μg/mL以上である。いくつかの実施態様において、本発明の免疫原性組成物の投与は、100μg/mL〜1mg/mL以上、好ましくは約500μg/mL超の血漿力価を結果として生じる。免疫応答は、対象において又は動物モデルにおいて決定され得、該応答は次に、対象、例えばヒト又はブタ、ヒツジ、ヤギ、若しくはウシなどの家畜における予測された応答と相関し又は推定される。
【0125】
一実施態様において、本発明は、対象における少なくとも1つの疾患又は容態(例えば、薬物耽溺又はウイルス感染)を予防、治療、管理、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、該対象に、本発明の抱合体を含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含む。いくつかの実施態様において、対象又は動物モデルに投与される免疫原性組成物の用量は約10〜20μgである。いくつかの実施態様において、対象又は動物モデルに投与される免疫原性組成物の用量は、約75〜100μgである。いくつかの実施態様において、対象又は動物モデルに投与された免疫原性組成物の用量は、約500〜1000μgである。
【0126】
本発明は、対象における少なくとも1つの疾患又は容態(例えば、薬物耽溺又はウイルス感染)を予防、治療、管理、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、該対象に、本発明の抱合体を含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、この中で、有効量とは、本発明の免疫原性組成物を投与されていない対象又は細菌毒素がシグナルペプチドを欠失しているハプテン‐細菌毒素抱合体を投与された対象と比較して、死亡率の低下、入院の減少、疾患若しくは容態の重症度の低下及び/又は疾患若しくは容態の臨床的症状の低下を結果として生じる量である。ある好ましい実施態様において、対象はヒトである。ある実施態様において、対象はマウス又はラットである。
【0127】
特定の疾患又は容態の治療、予防、及び/又は寛解に有効であろう本発明の免疫原性組成物の量は、疾患の性質に依存するであろうし、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、インビトロアッセイは、最適な薬用量範囲を同定するのを助けるよう任意に採用してよい。また、組成物に採用されるべき精確な用量は、投与の経路、及び疾患又は障害の重篤度にも依存するであろうし、実務者の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。しかしながら、投与に好適な薬用量範囲は一般に、約10〜20μg、20〜50μg、50〜75μg、75〜100μg、100〜200μg、200〜300μg、300〜400μg、400〜500μg、500〜600μg、600〜700μg、700〜800μg、800〜900μg、若しくは900〜1000 μg以上である。有効な用量は、インビトロでの又は動物モデルでの試験系から導きだされる用量反応曲線から推定され得る。
【0128】
種々の実施態様において、本発明の免疫原性組成物又はそれによって生じる抗体は、少なくとも1つの疾患又は容態の予防又は治療のための1つ以上の他の治療法と併用して対象に投与される。ある実施態様において、治療法(例えば、予防薬又は治療薬)は、5分未満離れて、30分未満、1時間未満離れて、約1時間離れて、約1〜約2時間離れて、約2時間〜約3時間離れて、約3時間〜約4時間離れて、約4時間〜約5時間離れて、約5時間〜約6時間離れて、約6時間〜約7時間離れて、約7時間〜約8時間離れて、約8時間〜約9時間離れて、約9時間〜約10時間離れて、約10時間〜約11時間離れて、約11時間〜約12時間離れて、約12時間〜18時間離れて、18時間〜24時間離れて、24時間〜36時間離れて、36時間〜48時間離れて、48時間〜52時間離れて、52時間〜60時間離れて、60時間〜72時間離れて、72時間〜84時間離れて、84時間〜96時間離れて、又は96時間〜120時間離れて投与される。好ましい実施態様において、2つ以上の治療法が、同じ患者又は対象の来診内で投与される。本発明の免疫原性組成物又は本発明の組成物によって生じた抗体との併用で投与することのできる作用因に関する非制限的例は、下記に見出される。
【0129】
(5.5.1 本発明の免疫原性組成物の使用)
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、疾患、容態、又は感染の治療又は予防において有用である。ある実施態様において、容態は、薬物耽溺又は薬物アレルギーである。ある具体的な実施態様において、薬物はニコチンである。他の実施態様において、薬物はコカインである。好ましい実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、細胞成分と比較した、及び/又は担体と比較したハプテンに対する特異性を呈する。別の実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞における低い細胞毒性を呈する。
【0130】
一実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、薬物耽溺、依存、又はアレルギーを低下又は阻害する。具体的な実施態様において、免疫原性組成物は、本明細書に説明される又は当業者に公知のアッセイによって決定されるように、対象において薬物耽溺又は薬物依存を75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、75〜99.5%、85〜99.5%、又は90〜99.8%排除又は低下させる。従って、本発明の免疫原性組成物は、薬物耽溺又は薬物依存を予防、治療、及び/又は管理する方法において有用である。特定の実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、他の治療に対して抵抗性を呈する疾患又は容態を予防、治療、及び/又は管理する上で有用である。
【0131】
ある実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、当業者に公知の標準的なアッセイ又は本明細書に説明されるアッセイによって測定されるように、標的とされる薬物又は抗原の血流における循環を、少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。
【0132】
いくつかの実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、当業者に公知の標準的なアッセイ又は本明細書に説明されるアッセイを用いて測定されるように、1つの臓器、組織、又は細胞から別の臓器、組織、又は細胞まで標的とされる薬物又は抗原の通過を阻害又は低下させる。いくつかの実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、コカイン又はニコチンなどの薬物が脳に入る能力を、当業者に公知の標準的なアッセイ又は本明細書に説明されるアッセイを用いて測定されるように、少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。
【0133】
(5.5.2 予防方法及び治療方法)
本発明は、薬物耽溺などの疾患又は容態を予防、治療、及び/又は管理する方法を提供し、該方法は、該疾患又は容態を治療、予防、及び/又は管理する必要のある対象に、本発明の1つ以上の免疫原性組成物を投与することを含む。一実施態様において、本発明は、コカイン耽溺又はニコチン耽溺を予防、治療、及び/又は管理する方法を提供する。
【0134】
また、本発明は、疾患又は容態を予防、治療、及び/又は管理する方法も提供し、該方法は、該疾患又は容態を予防、治療、及び/又は管理する必要のある対象に、本発明の免疫原性組成物の1つ以上、及び1つ以上の他の治療法(例えば、予防薬又は治療薬)を投与することを含む。具体的な実施態様において、他の治療法は、現に使用されており、使用されたことがあり、又は該疾患若しくは容態の予防、治療、及び/若しくは管理において有用であることが公知である。
【0135】
本発明の併用療法は、連続して又は同時に投与することができる。一実施態様において、本発明の併用療法は、本発明の化合物と、同じ作用機序を有する少なくとも1つの他の治療法とを含む。別の実施態様において、本発明の併用療法は、本発明の化合物と、該化合物とは異なる作用機序を有する少なくとも1つの他の治療法とを含む。
【0136】
具体的な実施態様において、本発明の併用療法は、相加効果又は相乗効果を有するよう免疫原性組成物と機能することによって、本発明の免疫原性組成物の予防効果及び/又は治療効果を改良する。別の実施態様において、本発明の併用療法は、単独で用いられる各治療法と関連した副作用を低下させる。
【0137】
併用療法の予防薬又は治療薬は、同じ免疫原性組成物において対象に投与することができる。あるいは、併用療法の予防薬又は治療薬は、別個の免疫原性組成物において同時に対象に投与することができる。予防薬又は治療薬は、同じか又は異なる投与経路によって対象に投与され得る。
【0138】
具体的な実施態様において、本発明の1つ以上の抱合体と、医薬として許容し得る担体又は賦形剤とを含む免疫原性組成物を、対象、好ましくはヒトに投与して、薬物耽溺を予防、治療、及び/又は管理する。また、本発明に従って、免疫原性組成物は、1つ以上の他の予防薬又は治療薬を含んでよい。具体的な実施態様において、他の予防薬又は治療薬は、現に使用されており、使用されたことがあり、あるいは薬物耽溺又はそれと関連した症状若しくは容態、例えば、精神医学的又は心理学的容態の予防、治療、及び/又は管理において有用であることが公知である。
【0139】
本発明の免疫原性組成物は、任意の系統の治療法、例えば、疾患又は容態のための第一、第二、第三、第四、又は第五の治療法として用いられ得る。いくつかの実施態様において、本発明に従った本発明の免疫原性組成物を投与された対象は、本発明の免疫原性組成物の投与の前に治療法を受けたことがない。他の実施態様において、本発明に従った本発明の免疫原性組成物を投与された対象は、本発明の免疫原性組成物の投与の前に治療法を受けたことがある。いくつかの実施態様において、本発明に従った本発明の免疫原性組成物を投与された対象は、先行治療法に対して不応性であったか若しくは有害な副作用を経験したか、又は先行治療法は、対象に対する許容し得ないレベルの毒性により中断された。
【0140】
本発明は、疾患又は容態、例えば、薬物耽溺を、このような容態のための従来の治療法に対して不応性の対象において治療及び/又は管理する方法を提供し、該方法は、該対象に、本発明の予防有効量又は治療有効量の免疫原性組成物の用量を投与することを含む。
【0141】
(5.5.2.1 本発明の抱合体又は免疫原性組成物との併用に有用な薬剤)
疾患又は容態の予防、治療、及び/又は管理のための本発明の免疫原性組成物との併用で用いることのできる治療薬又は予防薬には、小分子、合成薬、ペプチド(環状ペプチドを含む。)ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせん、RNAi、及び生物学的に活性のあるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されないDNA及びRNAヌクレオチド)、抗体、合成又は天然無機分子、模倣薬、及び合成又は天然有機分子を含むがこれらに限定されない。このような薬剤の具体的な例には、免疫調節薬(例えば、インターフェロン)、抗炎症薬(例えば、アデノコルチコイド、コルチコイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン)、グルココルチコイド、ステロイド、及び非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、及びCOX‐2阻害薬)、疼痛緩和薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルカスト、メチルキサンチン、ザフィルルカスト、及びジロートン)、ベータ2‐アゴニスト(例えば、アルブテロール、ビテロール(biterol)、フェノテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、テルブタリンホルモテロール、サルメテロール、及びサルブタモールテルブタリン)、抗コリン薬(例えば、臭化イプラトロピウム及び臭化オキシトロピウム)、スルファサラジン、ペニシラミン、ダプソン、抗ヒスタミン薬、抗マラリア薬(例えば、ヒドロキシクロロキン)、抗ウイルス薬(例えば、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリン)、ホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、及びアジドチミジン)及び抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))を含むが、これらに限定されない。
【0142】
疾患若しくは容態、又は該疾患若しくは容態と関連した疾患若しくは容態の予防、管理、及び/又は治療に有用であることが公知であるか又は使用されたことがあるか又は現に使用されている任意の治療法は、本明細書に説明される本発明に従った本発明の免疫原性組成物と併用して用いることができる。例えば、種々の疾患又は容態の予防、治療、及び/又は管理に用いられたことのある又は現に用いられている治療法(例えば、予防薬又は治療薬)に関する情報については、Gilmanらの文献「Goodman及びGilmanの治療薬の薬理学的基礎第10版(Goodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed.)」(McGraw-Hill, New York, 2001);「診断及び治療法に関するメルクマニュアル(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy)」(Berkow, M.D. ら編, 第17版, Merck Sharp & Dohme Research Laboratories, Rahway, NJ, 1999);「セシル医学の教科書第20版(Cecil Textbook of Medicine, 20th Ed.)」(Bennett及びPlum編, W.B. Saunders, Philadelphia, 1996)を参照されたい。
【0143】
本発明の免疫原性組成物との併用で用いることのできる抗生物質を含む抗菌薬には、アミノグリコシド抗生物質、糖ペプチド、アンフェニコール(amphenicol)抗生物質、アンサマイシン抗生物質、セファロスポリン、セファマイシンオキサゾリジノン、ペニシリン、キノロン、ストレプトグラミン、テトラサイクリン、及びそれらに類似体を含むが、これらに限定されない。
【0144】
具体的な実施態様において、本発明の免疫原性組成物は、ストレプトマイシン、ネオマイシン、エリスロマイシン、カルボマイシン、及びスピラマイシンを含むがこれらに限定されない他のタンパク質合成阻害薬との併用で用いられる。
【0145】
一実施態様において、抗菌薬は、アンピシリン、アモキシシリン、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリンG、ストレプトマイシン、スルファニルアミド、及びバンコマイシンからなる群から選択される。別の実施態様において、抗菌薬は、アジスロマイシン、セフォニシド、セフォテタン、セファロチン、セファマイシン、クロルテトラサイクリン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、サイクロセリン、ダルホプリスチン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、リネゾリド、ムピロシン、オキシテトラサイクリン、キヌプリスチン、リファンピン、スペクチノマイシン、及びトリメトプリムからなる群から選択される。
【0146】
本発明の免疫原性組成物との併用での使用のための抗菌薬に関する非制限的な例には、以下を含む:アミノグリコシド抗生物質系薬(例えば、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸塩、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、及びスペクチノマイシン)、アンフェニコール抗生物質系薬(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、及びチアンフェニコール)、アンサマイシン抗生物質系薬(例えば、リファミド及びリファンピン)、カルバセフェム系薬(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム系薬(例えば、ビアペネム及びイミペネム)、セファロスポリン系薬(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、及びセフピロム)、セファマイシン系薬(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、及びセフミノクス)、葉酸類似体系薬(例えば、トリメトプリム)、糖ペプチド系薬(例えば、バンコマイシン)、リンコサミド系薬(例えば、クリンダマイシン、及びリンコマイシン)、マクロライド系薬(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、及びエリスロマイシンアシストラート)、モノバクタム系薬(例えば、アズトレオナム、カルモナム、及びチゲモナム)、ニトロフラン系薬(例えば、フラルタドン、及びフラゾリウムクロリド)、オキサセフェム系薬(例えば、フロモキセフ、及びモキサラクタム)、オキサゾリジノン系薬(例えば、リネゾリド)、ペニシリン系薬(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナメシリン、ペネタマートヒドリオダイド(penethamate hydriodide)、ペニシリンoベネタミン(penicillin o benethamine)、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン(hydrabamine)、ペニメピサイクリン、及びフェンシヒシリンカリウム(phencihicillin potassium)、キノロン系薬及びその類似体(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、及びモキシフロキサシン)、ストレプトグラミン系薬(例えば、キヌプリスチン及びダルホプリスチン)、スルホンアミド系薬(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン(acetyl sulfamethoxypyrazine)、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド、フタリルスルフアセトアミド、スルファクリソイジン(sulfachrysoidine)、及びスルファシチン)、スルホン系薬(例えば、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、及びソラスルホン)、及びテトラサイクリン系薬(例えば、アピシクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、及びデメクロサイクリン)。追加的な例には、シクロセリン、ムピロシン、ツベリンアンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、及び2,4 ジアミノピリミジン系薬(例えば、ブロジモプリム)を含む。
【0147】
本発明の免疫原性組成物との併用で用いることのできる抗ウイルス薬には、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、及び融合阻害薬を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、抗ウイルス薬は、アマンタジン、リン酸オセルタミビル、リマンタジン、及びザナミビルからなる群から選択される。別の実施態様において、抗ウイルス薬は、デラビルジン、エファビレンツ、及びネビラピンからなる群から選択される非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬である。別の実施態様において、抗ウイルス薬は、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、テノホビルDF、ザルシタビン、及びジドブジンからなる群から選択されるヌクレオシド逆転写酵素阻害薬である。別の実施態様において、抗ウイルス薬は、アンプレナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、及びサキナビルからなる群から選択されるプロテアーゼ阻害薬である。別の実施態様において、抗ウイルス薬は、エンフビルチドなどの融合阻害薬である。本発明の免疫原性組成物との併用における使用のための抗ウイルス薬に関する追加的な非限定的な例には、以下を含む:リファンピシン、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(例えば、AZT、ddT、ddC、3TC、d4T)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(例えば、デラビルジンエファビレンツ、ネビラピン)、プロテアーゼ阻害薬(例えば、アプレナビル(aprenavir)、インジナビル、リトナビル、及びサキナビル)、イドクスウリジン、シドホビル、アシクロビル、ガンシクロビル、ザナミビル、アマンタジン、及びパリビズマブ。抗ウイルス薬の他の例には、アセマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデホビル;アロブジン;アルビルセプトサドトックス(alvircept sudotox);塩酸アマンタジン(シンメトレル(商標));アラノチン;アリルドン;アテビルジンメシラート;アブリジン;シドホビル;シパムフィリン;シタラビン塩酸塩;デラビルジンメシラート;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;ファモチン塩酸塩;フィアシタビン;フィアルリジン;ホサリラート;ホスカルネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;メモチン塩酸塩;メチサゾン;ネビラピン;オセルタミビルリン酸塩(タミフル(商標));ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;リマンタジン塩酸塩(フルマジン(FLUMADINE)(商標));メシル酸サキナビル;ソマンタジン塩酸塩(somantadine hydrochloride);ソリブジン;スタトロン;スタブジン;チロロン塩酸塩;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;ビダラビンホスファート;ビダラビンナトリウムホスファート;ビロキシム(viroxime);ザルシタビン;ザナミビル(リレンザ(商標));ジドブジン;及びジンビロキシムを含むが、これらに限定されない。
【0148】
(5.5.3 本発明の抱合体又は免疫原性組成物を投与する方法)
本発明の免疫原性組成物は、免疫治療法に対して改善され得る疾患又は容態に罹患している患者、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与することができる。具体的な実施態様において、本明細書に説明されるような抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、疾患又は容態、例えば薬物耽溺に対する予防的処置として、患者、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与される。別の実施態様において、本明細書に説明されるような抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、患者、好ましくはヒトに投与され、疾患又は容態をまだ有していない対象における疾患を予防する。
【0149】
本発明の免疫原性組成物は、免疫原性組成物によって標的とされる疾患又は容態に罹患している対象、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与することができる。具体的な実施態様において、本明細書に説明される抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、このような疾患又は容態に対する予防的処置として、対象、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与される。
【0150】
患者に投与する場合、本明細書に説明される抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は好ましくは、医薬として許容し得るビヒクルを任意に含む組成物の成分として投与される。組成物は、経口で、鼻内で、吸入によって、又は任意の他の簡便な経路によって、例えば、注入若しくは急速注射によって、上皮裏打ち若しくは粘膜皮膚裏打ち(口腔粘膜、直腸、及び腸粘膜)を通じての吸収によって投与することができ、別の生物学的に活性のある薬剤とともに投与してよい。投与は、全身又は局所であることができる。種々の送達系が、例えば、エアロゾルとして又はリポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルにおける封入によって公知であり、該送達系を用いて、本明細書に説明される抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物を投与することができる。
【0151】
投与方法には、非経口的、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、鼻内、脳内、膣内、経皮、直腸的、吸入によって、又は局所的に、特に耳、鼻、眼、若しくは皮膚に対してを含むがこれらに限定されない。投与の様式は、実務者の裁量に一任されている。ほとんどの場合、投与は、本発明の化合物又はその医薬として許容し得る塩の血流への放出を結果として生じるであろう。
【0152】
具体的な実施態様において、本明細書に説明される抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物を局所的に投与することが望ましくあり得る。このことは、例えば、限定のつもりではないが、局所注入、局所適用、例えば、創傷被覆材と関連して、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、又はインプラントによって達成され得、該インプラントは、サイラスティックメンブレンなどのメンブレン、又はファイバーを含む、多孔性の、非多孔性の、又はゼラチン質の材料である。
【0153】
ある実施態様において、本明細書に説明される抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物を、脳室内、くも膜下腔内、及び硬膜外注射を含む任意の好適な経路によって中枢神経系に導入することが望ましくあり得る。脳室内注射は、例えば、Ommaya貯蔵器などの貯蔵器に装着された脳室内カテーテルによって容易となり得る。
【0154】
また、肺への投与も、例えば、吸入器又は噴霧器の使用によって、エアロゾル化薬との製剤によって、又はフルオロカーボン若しくは合成肺界面活性剤における灌流を介して採用することができる。ある実施態様において、本明細書に説明された抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、伝統的な結合剤又はトリグリセリドなどのビヒクルとともに坐剤として製剤される。
【0155】
別の実施態様において、本明細書に説明された抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、小胞、特にリポソームにおいて送達される(Langerの文献(1990, Science 249:1527 1533);Treatらの文献「感染性疾患及び細菌性感染の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Bacterial infection)」(Lopez-Berestein及びFidler編, Liss, New York, pp. 353 365 (1989));Lopez Beresteinの文献(同書, pp. 317 327)参照;一般的には同書参照)。
【0156】
別の実施態様において、本明細書に説明された抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物は、徐放系で送達される(例えば、Goodsonの文献「徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」(上記, 第2巻, pp. 115 138 (1984))参照)。徐放系の例は、Langerの文献(1990, Science 249: 1527 1533)による総説において論議されており、用いられ得る。一実施態様において、ポンプを用いてよい(Langerの文献(上述);Seftonの文献(1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201);Buchwaldらの文献(1980, Surgery 88:507);Saudekらの文献(1989, N. Engl. J. Med. 321:574)参照)。別の実施態様において、ポリマー材料を用いることができる(「徐法の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御された薬剤バイオアベイラビリティ、薬剤の製造及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen及びBall (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger及びPeppasの文献, 1983, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 ;またLevyらの文献, 1985, Science 228:190; Duringらの文献, 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howardらの文献, 1989, J. Neurosurg. 71 :105も参照されたい。)。具体的な実施態様において、本明細書に説明された抱合体又はその医薬として許容し得る塩を含む本発明の免疫原性組成物を含む徐放系は、予防、治療、及び/又は管理されるべきウイルス感染に極めて近接して配置される。本実施態様によると、感染に対して徐放系が極めて近接していることは、全身投与される場合に組成物のほんの少量の用量しか必要とされないことを結果として生じ得る。
【0157】
(5.5.4 薬用量及び頻度)
疾患又は容態の予防、治療、及び/又は管理において有効であろう本発明の抱合体の量、又は該抱合体を含む免疫原性組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。インビトロ又はインビボでのアッセイは任意に、最適な薬用量範囲を同定するのを助けるために採用してよい。また、採用されるべき精確な用量は、例えば、投与の経路、治療されるべき疾患又は容態の種類、及び疾患又は容態の重症度によるであろうし、実務者の判断及び各患者又は対象の状況に従って決定されるべきである。
【0158】
抱合体、抱合体に応答して産生する抗体、又は本発明の免疫原性組成物の典型的な用量には、対象又は試料の重量キログラムあたりのミリグラム又はマイクログラムの量を含む(例えば、約1マイクログラム/キログラム〜約500ミリグラム/キログラム、約5マイクログラム/キログラム〜約100ミリグラム/キログラム、又は約1マイクログラム/キログラム〜約50マイクログラム/キログラム)。具体的な実施態様において、日用量は、少なくとも50mg、75mg、100mg、150mg、250mg、500mg、750mg、又は少なくとも1gである。
【0159】
一実施態様において、薬用量は、0.01〜5000mM、1〜300mM、10〜100mM、及び10mM〜1Mの濃度である。別の実施態様において、薬用量は、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも50mM、少なくとも100mM、又は少なくとも500mMの濃度である。
【0160】
一実施態様において、薬用量は、0.01〜5000mM、1〜300mM、10〜100mM、及び10mM〜1Mの濃度である。別の実施態様において、薬用量は、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも50mM、少なくとも100mM、又は少なくとも500mMの濃度である。具体的な実施態様において、薬用量は、患者の体重の0.25μg/kg以上、好ましくは0.5μg/kg以上、1μg/kg以上、2μg/kg以上、3μg/kg以上、4μg/kg以上、5μg/kg以上、6μg/kg以上、7μg/kg以上、8μg/kg以上、9μg/kg以上、又は10μg/kg以上、25μg/kg以上、好ましくは50μg/kg以上、100μg/kg以上、250μg/kg以上、500μg/kg以上、1mg/kg以上、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、又は10mg/kg 以上である。
【0161】
別の実施態様において、薬用量は、10〜20μg、20〜50μg、50〜75μg、75〜100μg、100〜200μg、200〜300μg、300〜400μg、400〜500μg、500〜600μg、600〜700μg、700〜800μg、800〜900μg、若しくは900〜1000μg、又はそれより多い単位用量である。いくつかの実施態様において、薬用量は、5mg、好ましくは10mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、又はそれより多い単位用量である。別の実施態様において、薬用量は、約5mg〜約100mg、好ましくは約100mg〜約200μg、約150mg〜約300mg、約150mg〜約400mg、250μg〜約500mg、約500mg〜約800mg、約500mg〜約1000mg、又は約5mg〜約1000mgに及ぶ単位用量である。
【0162】
ある実施態様において、経口投与に好適な薬用量範囲は、1日あたり体重キログラムあたり、約0.001ミリグラム〜約500ミリグラムの抱合体、抗体、又は本発明の免疫原性組成物である。本発明の具体的な実施態様において、経口用量は、1日あたり体重キログラムあたり約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、1日あたり体重キログラムあたり約0.1ミリグラム〜約75ミリグラム、又は1日あたり体重キログラムあたり約0.5ミリグラム〜5ミリグラムである。本明細書に説明される薬用量とは、投与される総量を指し;すなわち、2つ以上の化合物を投与する場合、いくつかの実施態様において、薬用量は、投与される総量に相応する。具体的な実施態様において、経口組成物は、約10重量%〜約95重量%の本発明の化合物を含む。
【0163】
静脈内(i.v.)投与に好適な薬用量範囲は、1日あたり体重キログラムあたり約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、1日あたり体重キログラムあたり約0.1ミリグラム〜約35ミリグラム、及び1日あたり体重キログラムあたり約1ミリグラム〜約10ミリグラムである。いくつかの実施態様において、鼻内投与に好適な薬用量範囲は、1日あたり約0.01pg/体重kg〜1日あたり約1mg/体重kgである。坐剤は、1日あたり体重キログラムあたり約0.01ミリグラム〜約50ミリグラムの本発明の化合物を一般に含み、約0.5重量%〜約10重量%の範囲の活性成分を含む。
【0164】
皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下、脳内、膣内、経皮投与、又は吸入による投与のために推奨される薬用量は、1日あたり体重キログラムあたり約0.001ミリグラム〜約500ミリグラムの範囲である。局所投与に好適な用量には、投与の面積に応じて約0.001ミリグラム〜約50ミリグラムの範囲である用量を含む。有効用量は、インビトロ又は動物モデルでの試験系から演繹される用量反応曲線から推定され得る。このような動物モデル及び系は、当技術分野で周知である。
【0165】
別の実施態様において、対象は、予防有効量又は治療有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、予防有効量又は治療有効量は、各用量について同じではない。別の実施態様において、対象は、本発明の予防有効量又は治療有効量の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、該対象に投与される予防有効量又は治療有効量は、治療が進行するにつれて例えば0.01μg/kg、0.02μg/kg、0.04μg/kg、0.05μg/kg、0.06μg/kg、0.08μg/kg、0.1μg/kg、0.2μg/kg、0.25μg/kg、0.5μg/kg、0.75μg/kg、1μg/kg、1.5μg/kg、2μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、又は50μg/kg増加する。別の実施態様において、対象は、予防有効量又は治療有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、用量は、治療が進行するにつれて例えば、0.01μg/kg、0.02μg/kg、0.04μg/kg、0.05μg/kg、0.06μg/kg、0.08μg/kg、0.1μg/kg、0.2μg/kg、0.25μg/kg、0.5μg/kg、0.75μg/kg、1μg/kg、1.5μg/kg、2μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、又は50μg/kg減少する。
【0166】
ある実施態様において、対象は、有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、有効量の用量は、レベル又は身体若しくは循環している抗原におけるハプテンを少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。他の実施態様において、対象は、有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、有効量の用量は、疾患又は容態、例えば薬物耽溺の重症度を、少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。
【0167】
他の実施態様において、対象は、有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、有効量の用量は、ニコチン又はコカイン耽溺を少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。他の実施態様において、対象は、有効量の本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の1つ以上の用量を投与され、この中で、有効量の用量は、抗原が抱合体によって対象における他の細胞、組織、又は臓器を標的とする能力を少なくとも20%〜25%、好ましくは少なくとも25%〜30%、少なくとも30%〜35%、少なくとも35%〜40%、少なくとも40%〜45%、少なくとも45%〜50%、少なくとも50%〜55%、少なくとも55%〜60%、少なくとも60%〜65%、少なくとも65%〜70%、少なくとも70%〜75%、少なくとも75%〜80%、又は最大で少なくとも85%阻害又は低下させる。
【0168】
疾患若しくは容態、又はそれと関連した疾患若しくは容態の予防、治療、及び/又は管理に用いられたことのある、又は現に用いられている本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物以外の予防薬又は治療薬の薬用量は、例えば、「医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)」(第55版, 2001)など、臨床医に入手可能な参考文献を用いて決定することができる。好ましくは、疾患又は容態を予防、治療、及び/又は管理するのに用いられたことのある又は現に用いられているものよりも低い薬用量は、本発明の1つ以上の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物との併用で利用される。
【0169】
上記の投与計画は、説明目的のみのために提供され、制限と考えられるべきではない。当業者は、すべての用量が本発明の範囲内であることを容易に理解するであろう。
【0170】
(5.5.5 キット)
本発明は、本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物を充填された1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。キットは、上記の方法において用いることができる。特に、キットは、疾患又は容態、例えば(例えば、コカイン又はニコチンに対する)薬物耽溺の予防、治療、及び/又は管理に用いることができる。
【0171】
一実施態様において、キットは、本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物を1つ以上の容器に含む。別の実施態様において、キットは、本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物を1つ以上の容器において、かつ1つ以上の他の予防薬又は治療薬を1つ以上の他の容器において含む。特定の実施態様において、キットはさらに、本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物を用いるための説明書、並びに本発明の抱合体、抱合体に応答して産生される抗体、又は本発明の免疫原性組成物の副作用に関する説明、及び特定の投与経路のための薬用量情報を含む。任意に、医薬製剤又は生物製剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって指示された形式における注意書きを、このような容器(類)に添付することができ、該注意書きは、ヒトへの投与のための製造、使用、又は販売の該機関による認可を反映している。
【0172】
(5.5.6 耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導するための免疫原性組成物)
本発明の免疫原性組成物は、本節において、薬物(コカイン又はニコチン)ハプテン‐担体抱合体を用いる実験からの例を用いて具現化される。これらの教示は、上記の任意の抗原若しくはハプテン、又は免疫応答、特に改良された免疫応答が望ましい任意の他の抗原に対する免疫応答を生じるための、任意の抗原又はハプテンをそれぞれ含む抗原‐担体抱合体及びハプテン‐担体抱合体との使用に適し得る。
【0173】
また、本発明の薬物‐抱合体、及び本発明の組成物は、薬物耽溺若しくは薬物依存を治療するための治療薬として、又は予防薬としても使用され得る。予防的使用において、薬物‐抱合体、又は薬物抱合体を含む免疫原性組成物は、哺乳類に投与された後に、薬物に対して任意に曝露され、抗薬物抗体が産生され得る。産生された抗薬物抗体は、免疫原性組成物の投与後に導入される任意の薬物に結合するために、及びそれゆえ、薬物に対して耽溺となる機会を最小化又は予防するために哺乳類に存在するであろう。
【0174】
本発明の免疫原性組成物は、対象においてワクチンとして使用され得る。少なくとも1つの薬物/ハプテン‐担体抱合体を含むこれらの組成物は、薬物/ハプテンに特異的な十分に高い力価の抗体の産生を誘発することができ、それにより薬物/ハプテンを用いたその後の曝露の際に、該抗体は、薬物の耽溺特性を低下させることができる。ハプテン‐担体抱合体に対する期待される免疫応答は、抗ハプテン抗体及び抗担体抗体の両方の形成である。治療レベルは、十分量の抗薬物特異的抗体が誘発され、予防接種後に導入された薬物に及ぼす中和攻撃を開始するために維持される場合に到達する。本発明の治療計画は、最初の予防接種及び任意の追加免疫後の抗体の産生に十分な時間を許容する。さらに、最適な抗薬物ワクチンは、ハプテンとしての薬物と担体の最適な組み合わせを含む少なくとも1つの薬物/ハプテン担体抱合体を含み、それにより抗薬物抗体の産生は、最適な治療レベルに到達することができ、すなわち、選択された薬物による数ヶ月以内のその後の曝露に耐えるのに十分に高い力価をインビボで残存させることができる。より特定には、抗体力価は、薬物へのその後の曝露の際の有効な応答を個体に応じて約2ヶ月間〜約1年以上、より通常には少なくとも3ヶ月間提供するのに十分に高いままである。この最適な組成物は、ハプテン‐担体抱合体、賦形剤、及び任意にアジュバントからなる。
【0175】
ニコチンの治療において使用する場合、本発明は、ハプテン‐担体抱合体を規定し、この中で、ハプテンは、ニコチン又はニコチン誘導体であり、哺乳類、特にヒトを免疫化するのに用いて、遊離薬物を結合でき、かつ脳における報酬系への薬物の移行を予防することができる抗ニコチン抗体を誘発させることができ、それにより耽溺性薬物接種行動(例えば、喫煙)を抑止することができる。ニコチンは、脳におけるニコチン性アセチルコリン受容体のアルファ‐サブユニットに結合して、ドーパミンの放出の増大を結果として生じると考えられている。脳における多数のニコチン性アセチルコリン受容体は、ニコチンの生理学的依存を高めると考えられる。コカインと関連して先に論議されたように、抗ニコチン抗体は、血液脳関門を通過して脳に至るニコチンの分布をおそらく制限し、従って、その薬理学的効果を低下させるであろう。しかしながら、ニコチンの場合の抗体介入は、コカインを上回るいくつかの利点を有し得る。例えば、ニコチン送達による何らかのレベルの標準化があり;すなわち、各タバコは、平均9mgのニコチンを含み、そのうち1〜3mgは、喫煙の間に効果的に分配される。加えて、ニコチンのピーク血漿濃度は、25〜50ng/mLであり、コカインのピーク血漿濃度(0.3〜1μg/mL)よりも有意に低い。このことは、中程度に高い親和性の抗体による介入のための理想的な機会を提供すべきである。
【0176】
本発明の免疫原性ハプテン‐担体抱合体組成物による初回予防接種は、インビボで高い力価のハプテン特異的抗体を作出する。予防接種された対象の血漿に関する周期的な試験は、個々の有効な用量を決定するのに有用である。力価レベルは、周期的な追加免疫を通じて増大され、かつ維持される。この治療薬は、カウンセリングを含めた現行の薬物リハビリテーションプログラムと併用して用いられるであろう。さらに、本発明の治療用組成物は、単一の薬物又は数個の薬物を同時に又は連続して目的とし得、他の治療法との併用で用いてよい。例えば、本発明の治療用ハプテン‐担体抱合体組成物及び方法は、従来の薬理学的アプローチ及び治療法の全体的な効果を高めるためのすでに論議された「短期」受動免疫との併用で有害な相互作用なく用いられる。
【0177】
本発明の免疫原性ハプテン‐担体抱合体組成物は、T細胞の増殖と、関連B細胞を活性化させ特異的抗体産生を刺激するメディエーターの特徴的放出とをもたらす、T細胞を刺激することのできるハプテン‐担体抱合体(免疫原性)を得るために1つ以上のハプテン分子をT細胞エピトープ含有担体に連結することによって調製される。
【0178】
関心対象の抗体は、ハプテン‐担体抱合体(ハプテン‐担体複合体とも呼ばれる。)のハプテン部分に特異的な抗体である。同じ薬物(交差免疫化)又は複数の薬物(同時免疫化)のいずれかに対する抱合体の組み合わせを含む治療用組成物が開示される。このような複数の薬物の抱合体の相互混合物は、多種薬物の乱用の治療に特に有用である。
【0179】
本発明に従った抱合に好適な薬物を選択する上で、当業者は、高い抗体力価を誘発しそうな特性を有する薬物を選択するであろう。しかしながら、選択された分子が、個体に内在性である分子と類似している場合、このような分子に対して産生された抗体は、望ましくない効果を与える体内の多くの異なる分子と交差反応し得る。従って、ハプテンとして選択されるべき薬物(薬物/ハプテン)は、ヒトの体内に通常見出される分子に対して抗体を誘発するのを回避するのに十分に外来性でかつ十分な大きさでなければならない。これらの理由のために、例えば、アルコールは、本発明の治療薬に適していないであろう。治療用組成物に対して産生される抗体は、血流におけるか若しくは粘膜におけるかのいずれかであるか又はその両方における薬物を中和するのに非常に特異的でありかつ十分量である。本発明を制限することなく、治療用組成物に好適な薬物(重要な順序ではない。)は下記である:
【0180】
幻覚薬、例えば、メスカリン及びリゼルグ酸ジエチルアミド;
【0181】
カンナビノイド、例えばテトラヒドロカンナビノール;
【0182】
刺激薬、例えばアンフェタミン、コカイン、フェンメトラジン、メチルフェニダート;
【0183】
ニコチン;
【0184】
抑制薬、例えば、非バルビタール酸系薬(例えば、臭化物、包水クロラールなど)、メタカロン、バルビタール酸系薬、ジアゼパム、フルラゼパム、フェンシクリジン、及びフルオキセチン;
【0185】
アヘン及びその誘導体、例えば、ヘロイン、メサドン、モルヒネ、メペリジン、コデイン、ペンタゾシン、及びプロポキシフェン;並びに
【0186】
「エクスタシー」などの「デザイナードラッグ」。
【0187】
(5.5.6.1 アジュバントとの使用)
本発明の目的のために、アジュバントを用いて、特異的な抗原又はハプテンに対する免疫応答を高め、例えば、アジュバントを免疫原性組成物と同時投与する場合、免疫応答は、アジュバントなしで投与される等量の免疫原性組成物によって誘発される免疫応答よりも高く、又はアジュバントを用いて、同時投与された抗原に対する特定の種類若しくはクラスの免疫応答に向かわせる。「有効量」の本発明のアジュバントの同時投与は、同時投与された免疫原性組成物に対する免疫学的応答を高める量であろうし、それにより例えば、より低い又は少ない用量の免疫原性組成物が、効率的な免疫応答を生じるのに必要とされる。
【0188】
本明細書で使用する場合、用語「同時投与された」は、例えば、アジュバント及び免疫原性組成物の2つが同じ組成物に存在するか、又は別個の組成物でほぼ同時だが異なる部位で投与される場合の、アジュバント及び免疫原性組成物の同時投与又は並行投与のいずれか、並びに、異なる部位への送達を含む、異なる回数での別個の組成物におけるアジュバント及び免疫原性組成物の送達を意図する。例えば、アジュバントは、同じか又は異なる部位で免疫原性組成物の送達の前又は後に送達され得る。アジュバント及び免疫原性組成物の送達間のタイミングは、約数分間離れてから数時間離れて、数日離れてまでに及ぶことができる。
【0189】
担体の効果をマスクしない任意のアジュバントは、本発明の免疫原性組成物において有用であると考えられる(Edelmanの文献((1980) Rev. Infect. Dis. 2:370-373)参照)。コカイン耽溺に対する治療用ワクチンの可能性を示すことを目的とした初期の実験は、強力なアジュバントであるCFAを用いた。しかしながら、CFAはヒトにおいては好ましくない。ヒトにおける使用のために現に認可されている有用なアジュバントは、水酸化アルミニウム(Spectrum Chem. Mtg. Corp., New Brunswick, N.J.)又はリン酸アルミニウム(Spectrrum)を含むミョウバンである。典型的には、ワクチンは、非常に限定された溶解度を有するミョウバンへ吸着される。マウスモデルにおける予備的データは、ミョウバンが、強い抗コカイン抗体応答を誘導することができることを示唆しており、かつMF59(Chiron, Emeryville, Calif.)又はRIBIアジュバントも適していることも示唆している。
【0190】
担体タンパク質としてのCTBによる有効な免疫化が強力なアジュバントを必要としないことは注目に値する。高い力価の抗コカイン抗体応答は、ミョウバンをアジュバントとして用いて又は任意の追加されたアジュバントの不在下でのいずれかで、CTB‐コカイン抱合体による免疫化によって誘導された。CTB以外の担体については、当業者は、必要な場合、適切なアジュバントを決定することができるであろう。
【0191】
アジュバントの使用は、免疫化プロトコールにおいてしばしば有益である。免疫応答に対するミョウバンの寄与を評価するために、マウスを10μgコカイン‐CTB PS‐5.53で腹腔内で塩類溶液において又はミョウバンへ吸着させて免疫化した。27日後に同じプロコールを用いてマウスを追加免疫した。両群の動物について、高レベルのコカイン特異的抗体を43日後までに検出した(ミョウバンなしで14687及びミョウバンありで16775の力価)。また、ミョウバンに吸着されたコカイン‐CTBによる免疫化も、皮下又は筋肉内の投与経路で有効であることが示されている。それゆえ、ミョウバンの使用はこの抗原の存在下で許容し得る。
【0192】
ミョウバンアジュバントの添加は、十分な抗体力価を得ることが、薬物‐担体抱合体の注射後の抗体応答に対するミョウバンの寄与を試験することを必要とする注射されたタンパク質に対する免疫応答を増大させることができる。ミョウバンの寄与を評価するために、マウスを10μgのコカイン‐rCTB PS‐5.189で免疫化し、ここで、CTBは細菌において組換え発現した。マウスに塩類溶液において又はミョウバンへ吸着させて筋肉内注射し、14日後に再度注射した。これらのロットのコカイン‐CTB抱合体について、ミョウバンの添加は、ELISAによって検出されるように抗コカイン抗体を生じるために必要とされる。
【0193】
(5.5.6.2 賦形剤及び補助剤)
本発明の免疫原性組成物は任意に、滅菌水、生理食塩水などの塩溶液、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、マンニトール、炭水化物類、ステアリン酸マグネシウム、粘稠性パラフィン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、及び緩衝液を含むがこれらに限定されない1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤を含んでよい。他の適切な賦形剤は、当業者によって用いられ得る。治療用組成物は任意に、少なくとも1つの補助剤、例えば分散媒体、脂質及びリポソームなどのコーティング、湿潤剤及び乳化剤などの界面活性剤、潤滑剤、抗菌薬及び抗真菌薬などの保存料、安定化剤、並びに当業者に周知の他の薬剤を含んでよい。また、本発明の組成物は、薬物の治療特性を高め又は代替的な投与様式を可能にするために添加され得るさらなるアジュバント及び/又は薬理学的に許容し得る不活性賦形剤も含んでよい。
【0194】
先に論議したように製造される高度に精製されたハプテン‐担体抱合体は、ヒトの治療法に好適な本発明の免疫原性組成物へと製剤され得る。本発明の治療用組成物が注射(すなわち、皮下注射)によって投与されるべきである場合、高度に精製されたハプテン‐担体抱合体は、組成物が流体であり容易な投与が存在するよう、医薬として許容し得るpH(すなわち約4〜9の範囲)で水溶液中で可溶性であるべきであることが好ましい。しかしながら、高度に精製されたハプテン‐担体抱合体が懸濁液含有水溶液中にある組成物を投与することは可能であり、このような懸濁液は、本発明の範囲内である。また、組成物には任意に、医薬として許容し得る賦形剤、アジュバント、及び補助剤又は補助活性化合物も含む。投与様式に応じて、任意の成分は、治療用組成物の望ましい特性、例えば適切な流動性、望ましくない微生物の作用の防止、高い生物学的利用率、又は長期吸収を確実にするであろう。
【0195】
本発明の免疫原性組成物は、滅菌済みであり、製造、保管、分配、及び使用の条件下で安定であり、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保存されているべきである。組成物の完全性を維持するために本発明の治療用組成物を製造する好ましい手段は、組成物が、使用直前に賦形剤又は補助剤、例えば滅菌水中で再構成される凍結乾燥した粉末の形態にあり得るよう、抱合体及び医薬として賦形剤の製剤を調製することである。滅菌済み注射可能溶液の調製のための滅菌済み粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末に加え、あらかじめ濾過滅菌しておいたその溶液から任意の追加的な所望の成分を生じる真空乾燥、凍結乾燥、又はスピン乾燥である。
【0196】
本発明の活性化合物は、生薬学の従来法に従って加工して、患者、例えばヒトを含む哺乳類への投与のための治療用組成物を製造することができる。好ましい投与様式は、鼻内、気管内、経口、経皮、及び/又は注射である。投与様式の1つの特に好適な組み合わせは、鼻内追加免疫をともなう初期注射を含む。
【0197】
非経口適用のために、注射可能な滅菌済みの溶液、好ましくは油性又は水性の溶液、及び懸濁液、エマルション、又は坐剤を含めたインプラントが特に好適である。アンプルは簡便な単位薬用量である。経腸適用のために、腸溶性コーティングを含み得る錠剤、糖衣錠、液剤、懸濁剤、ドロップ剤、坐剤、又はカプセル剤が特に好適である。シロップ剤、エリキシル剤、又はそれらに類するものを用いることができ、この中で、甘味ビヒクルが採用される。
【0198】
持効性又は定方向性(directed)放出の組成物、例えば、リポソーム、又は活性化合物(抱合体)が差次的に分解可能なコーティングで、例えばマイクロカプセル化、多重コーティング等によって保護されるものを製剤することができる。また、新たな化合物を凍結乾燥させ、得られた凍結乾燥物を例えば、注射用製剤の調製のために用いることも可能である。
【0199】
局所適用のために、噴霧不可能な形態として、局所適用と適合性のある担体を含みかつ好ましくは水よりも大きな動的粘度を有する粘稠性のある、ないし半固体の又は固体の形態として採用される。好適な製剤には、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、軟膏等を含むがこれらに限定されず、これらは所望の場合、滅菌され又は補助剤と混合される。局所適用には、噴霧可能なエアロゾル調製物が好適であり、この中で、活性化合物は、好ましくは好適な賦形剤又は補助剤との併用で、プラスチックボトルにおいて又は加圧された揮発性の、通常気体の噴霧剤との混合物でパッケージされる。
【0200】
本発明の組成物及び方法を通じて産生される抗体は、150 KDa〜1,000 KDaに及ぶ分子量を有し得る。対象が、治療用組成物における最適化された抱合体を用いた予防接種後に遊離のコカイン又はニコチンに曝露される場合、遊離のコカイン又はニコチンは、コカイン特異的又はニコチン特異的抗体(antibody)又は抗体(antibodies)によって標的とされる。薬物の形態又は構造における変化は、抗体がインビボで薬物を認識するために必要ではない。本発明を制限するよう意図するものではないが、コカイン又はニコチンに対する予防接種された個体の曝露の際に、抗薬物抗体が、コカイン及びニコチンの効果を遮断するであろうと考えられている。少なくとも3つの機序が、遮断活性に寄与すると考えられている。第一に、抗体は、血液脳関門を通過することができない。それゆえ、コカイン又はニコチンは、抗コカイン又は抗ニコチン抗体に結合すると、血液脳関門を通過しないであろうし、ドーパミン輸送体に及ぼすその効果を発揮することができないであろう。第二に、抗体は、薬物が単純な立体的遮断によってその受容体に結合するのを防止する。
【0201】
本機序は、薬物の非中枢神経系効果のいくつか(例えば、心臓毒性)を遮断する上で、及び非中枢神経系標的を有する他の薬物に対する抗体の活性において作用可能であると期待される。第三に、コカイン及びニコチンの両方は、不活性代謝産物を合成する酵素的及び非酵素的分解の両方により、インビボで比較的短い半減期を有する。コカイン及びニコチンは特に、十分に小さい薬物であるので、抗体と架橋し得ることは非常に見込みがなく、従って、生理学的に有意な免疫複合体形成が、前記薬物のいずれかについて生じるであろうことは大いに見込みがない。
【0202】
粘膜適用のなおもさらなる実施態様は、本発明の実施において用いられる。例えば、コポリマーミクロスフェアを用いて、粘膜免疫応答を誘導又は亢進する。これらの小さな生分解性ミクロスフェアは、抱合体を封入及び保護し、粘膜の免疫系による取り込みを容易にする。前記ミクロスフェアは、経口免疫化に最も広く用いられているが、また、鼻内免疫化で有効であることも報告されている(Walkerの文献((1994) Vaccine 12:387-399))。直径1〜10μmのポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)などの不活性ポリマーは、この点において特に有用である(Holmgrenらの文献((1994) Am. J. Trop. Med. Hyg. 50:42-54);Servaの文献((1994) Science 265:1522- 1524))。
【0203】
好ましい抱合体に加えて、異なる抱合体との交差免疫化は、抗体の交差反応性を最小化するために実施される。マウスを抱合体、より特定には細菌毒素担体抱合体で刺激した後、14日後に、異なる担体であるBSAと連結した相反性抱合体を用いて追加免疫する。コカイン抱合体の両方を認識する抗体分泌B細胞のサブセットのみが、最大に刺激され、発展する。2つの抱合体が、コカイン分子に対する結合点において異なるので、認識の特異性が増大すると考えられている。誘導された抗血清の特異性は次に、競合ELISAによって確認される。
【0204】
さらに、2つ以上の抱合体を含む免疫原性組成物は、ポリクローナル抗体を刺激し、それによりその後の曝露の際に抗体応答を亢進させる。
【実施例】
【0205】
(6.実施例)
本実施例は、ハプテン‐担体抱合体におけるハプテンとしてのニコチンと、担体としてのrCTBとを含む免疫原性組成物が、rCTBがシグナルペプチドを含む場合、増強された免疫原性を有することを示している。rCTBは、アミノ酸配列
【化8】

を有するシグナルペプチドで翻訳される(図1)。このシグナル配列は、成熟CTBにおいては存在しない。rCTBは、2つの発現系であるコレラ菌213株及び401株において生成された。213株において生成される場合、長さ最大7のアミノ酸からなるシグナル配列を含むrCTBの形態が検出される。rCTBが401株において発現する場合、安定したシグナル配列は検出されないが、むしろ、アミノ末端は、未変性の成熟CTBに通常存在するトレオニンの替わりにアラニン残基である(図2)。213株由来のrCTBを含むニコチン‐CTB抱合体は、401株由来のrCTBを用いて作製される抱合体と比較して2倍増強された免疫原性を有し、ニコチン‐担体抱合体における担体として用いる場合、シグナルペプチド含有細菌毒素が、増強された免疫原性を有することを示している。
【0206】
(7.等価物)
当業者は、慣例の実験のみを用いて、本明細書に説明された本発明の具体的な実施態様に対する多くの等価物を認識するであろうし又は確認することができるであろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるよう意図される。
【0207】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、各個々の刊行物又は特許又は特許出願が、すべての目的のために前記刊行物又は特許又は特許出願のすべての内容が全体として引用により組み込まれるよう具体的かつ個々に示されている場合と同じ程度まで、すべての目的のために前記参考文献のすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。
【0208】
本発明は、本明細書に説明された具体的な実施態様による範囲に限定されるべきではない。実際、本明細書に説明されたものに加えて、本発明の種々の改変は、上記の説明及び添付の図から当業者に明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まるよう意図される。
【0209】
(8.実例となる実施態様)
本発明は、以下のパラグラフにおいて示される非制限的な実施態様によって説明することができる。
1.シグナルペプチドを含む細菌毒素と抗原とを含む免疫原性組成物。
2.抗原に対する免疫応答を誘導することができる、シグナルペプチドを含む細菌毒素と抗原とを含む免疫原性組成物。
3.シグナルペプチドを含む細菌毒素とハプテンとを含む免疫原性組成物。
4.耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導することができる、シグナルペプチドを含む細菌毒素とハプテンとを含む免疫原性組成物。
5.ニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、シグナルペプチドを含む細菌毒素とニコチン又はその誘導体とを含む免疫原性組成物。
6.(i)アミノ酸配列
【化9】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と(ii)ニコチン又はその誘導体とを含み、ニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、免疫原性組成物。
7.ニコチンに対する免疫応答が、第6パラグラフのものと同一の免疫原性組成物によって誘導されるニコチンに対する免疫応答よりも大きいが、該シグナルペプチドを欠失している、第6パラグラフに記載の免疫原性組成物。
8.シグナルペプチドを含む細菌毒素が、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)である、第1〜3パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
9.CTBシグナルペプチドが、アミノ酸配列
【化10】

又はそのC末端断片を含む、第8パラグラフに記載の免疫原性組成物。
10.シグナルペプチドを含む細菌毒素が、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)である、第4パラグラフに記載の免疫原性組成物。
11.CTBシグナルペプチドが、アミノ酸配列
【化11】

又はそのC末端断片を含む、第10パラグラフに記載の免疫原性組成物。
12.細菌毒素が、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットである、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
13.細菌毒素がジフテリア毒素である、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
14.細菌毒素が百日咳毒素である、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
15.細菌毒素が志賀毒素である、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
16.細菌毒素がシュードモナス外毒素Aである、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
17.該免疫原性組成物がアジュバントを含む、第1〜5パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
18.該アジュバントが水酸化アルミニウムである、第17パラグラフに記載の免疫原性組成物。
19.該免疫原性組成物がアジュバントを含む、第6パラグラフに記載の免疫原性組成物。
20.該アジュバントが水酸化アルミニウムである、第19パラグラフに記載の免疫原性組成物。
21.細菌毒素が、その内在性シグナルペプチド又はその断片を含む、第8、10、又は12〜16パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
22.対象に、有効量の第1〜21パラグラフのいずれか一つに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、対象における免疫応答を誘導する方法。
23.対象に、有効量の第4、10、又は11パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、対象における耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導する方法。
24.耽溺の薬物がニコチンである、第23パラグラフに記載の方法。
25.耽溺の薬物がコカインである、第23パラグラフに記載の方法。
26.対象に、有効量の第5パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、対象におけるニコチンに対する免疫応答を誘導する方法。
27.対象に、有効量の第6又は7パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、対象におけるニコチンに対する免疫応答を誘導する方法。
28.薬物耽溺又は薬物依存を治療する必要のある対象に、有効量の第4、10、又は11パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、前記対象における薬物耽溺又は薬物依存を治療する方法。
29.薬物耽溺又は依存がニコチン耽溺又は依存である、第28パラグラフに記載の方法。
30.薬物耽溺又は依存がコカイン耽溺又は依存である、第28パラグラフに記載の方法。
31.ニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する必要のある対象に、有効量の第5パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、前記対象におけるニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する方法。
32.ニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する必要のある対象に、有効量の第6又は7パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、前記対象におけるニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する方法。
33.対象に、有効量の第4、10、又は11パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、耽溺の薬物に対して対象を予防接種する方法。
34.耽溺の薬物がニコチン耽溺である、第33パラグラフに記載の方法。
35.耽溺の薬物がコカインである、第33パラグラフに記載の方法。
36.対象に有効量の第5パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、ニコチンに対して対象を予防接種する方法。
37.対象に有効量の第6又は7パラグラフに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、ニコチンに対して対象を予防接種する方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミノ酸配列
【化1】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ハプテン;とを含み、耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導することができる、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記耽溺の薬物に対する免疫応答が、請求項1に記載のものと同一の免疫原性組成物によって誘導される耽溺の薬物に対する免疫応答よりも大きいが、前記シグナルペプチドを欠失している、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記耽溺の薬物がコカインである、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記耽溺の薬物がニコチンである、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
アジュバントを含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項5記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
(i)アミノ酸配列
【化2】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するCTB;と、(ii)ニコチン又はその誘導体;とを含み、ニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、免疫原性組成物。
【請求項8】
ニコチンに対する前記免疫応答が、請求項7記載のものと同一の免疫原性組成物によって誘導されるニコチンに対する免疫応答よりも大きいが、前記シグナルペプチドを欠失している、請求項7記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
アジュバントを含む、請求項7又は8記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項9記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
対象における耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化3】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ハプテン;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物が、耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項12】
前記耽溺の薬物がニコチンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記耽溺の薬物がコカインである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
対象におけるニコチンに対する免疫応答を誘導する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化4】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ニコチン又はその誘導体;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物がニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項15】
前記免疫原性組成物が、アジュバントとともに投与される、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
耽溺の薬物に対して対象を予防接種する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化5】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ハプテン;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物が耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項18】
前記耽溺の薬物がニコチンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記耽溺の薬物がコカインである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ニコチンに対して対象を予防接種する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化6】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ニコチン又はその誘導体;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物がニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項21】
前記免疫原性組成物がアジュバントとともに投与される、請求項17〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
薬物耽溺又は薬物依存を治療する必要のある対象において、薬物耽溺又は薬物依存を治療する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化7】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ハプテン;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物が、耽溺の薬物に対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項24】
前記薬物耽溺又は依存が、ニコチン耽溺又は依存である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記薬物耽溺又は依存が、コカイン耽溺又は依存である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
ニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する必要のある対象において、ニコチン耽溺又はニコチン依存を治療する方法であって、前記対象に、(i)アミノ酸配列
【化8】

又はそのC末端断片を含むシグナルペプチドを有するコレラ毒素Bサブユニット(CTB);と、(ii)ニコチン又はその誘導体;とを含む有効量の免疫原性組成物を投与することを含み、該組成物がニコチンに対する免疫応答を誘導することができる、前記方法。
【請求項27】
前記免疫原性組成物がアジュバントとともに投与される、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519724(P2012−519724A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553432(P2011−553432)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052997
【国際公開番号】WO2010/103017
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511219319)
【Fターム(参考)】