説明

シャシーダイナモメータの制御装置

【課題】車速に対して定めた所望の走行抵抗を精度よく車両に加える。
【解決手段】車速変換部31が現在の回転速度Rvを変換した車速Vに対する走行抵抗Nを抵抗マップ32から算出する。また、現在のタイヤ温度Teに対応する転がり抵抗TNと、所定の基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStdを、タイヤ抵抗テーブル33から算出し、両者の差である(基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStd)-(現在のタイヤ温度Teに対応する転がり抵抗TN)を減算部34で補正値ΔNとして算出する。加算部35で走行抵抗Nと補正値ΔNを加算して制御目標値TrgNとする。そして、制御値算出部36で、制御目標値TrgNを試験車両5に加えるためのモータ23の制御値を、現在の回転速度Rvや現在の検出トルクTrに応じて算出し、制御信号Cntとして、ダイナモメータ2のモータ23に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の各種試験に用いられるシャシーダイナモメータを制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の各種試験に用いられるシャシーダイナモメータとしては、車両の走行状態を再現するために車両に対して走行中の路面を模擬するローラと、前記ローラのトルクを制御するモータと、ローラと車輪間に作用する力を計測する測定装置とを備えたシャシーダイナモメータが知られている。
【0003】
また、このような自動車用のシャシーダイナモメータを制御する技術としては、ローラの回転速度より自動車の車速を検出し、検出した車速に対して定まる所望の走行抵抗が自動車に加わるように、予め定めた車速の関数に従って前記モータの発生トルクを制御する技術が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開平05-005676号公報
【特許文献2】特開2005-265417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、シャシーダイナモメータにおける自動車の試験中に、車両に対して加わる走行抵抗のうちの現実のタイヤの転がり抵抗(ヒステリシスロス)は、タイヤの温度変化によって変動するため、車速の関数に従って前記モータの発生トルクを制御するだけでは、車速に対して定めた所望の走行抵抗を車両に加えることができない。
【0005】
そこで、本発明は、シャシーダイナモメータにおいて、車速に対して定めた所望の走行抵抗をより精度よく車両に加えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、自動車のタイヤが載置されるローラと、前記ローラを介して前記タイヤに力を作用させるダイナモメータと、前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力を制御する制御装置とを備えた、シャシーダイナモメータに、前記自動車のタイヤの温度を測定する温度測定手段と、前記自動車の車速を計測する車速計測手段とを備えると共に、前記制御手段に、前記自動車の車速と、当該車速にある自動車の前記タイヤに作用させるべき力との対応を記述した制御マップと、前記制御マップを参照し、前記車速計測手段が計測した車速に対応する力を目標値として算出する目標値算出手段と、前記温度測定手段で測定したタイヤの温度に応じて、前記目標値算出手段が算出した目標値を補正し、補正後目標値とする補正手段と、前記ダイナモメータに、前記補正手段が補正した前記補正後目標値が示す力を前記タイヤに作用させる制御手段とを設けたものである。但し、前記補正手段は、前記目標値の補正を、タイヤの温度変化による前記タイヤの転がり抵抗の大きさの変化と、当該補正による前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力の大きさの変化とが相殺されるように行うものである。
【0007】
このようなシャシーダイナモメータによれば、シャシーダイナモメータにおける自動車の試験中に、自動車に対して加わる走行抵抗のうちの現実のタイヤの転がり抵抗のタイヤの温度変化による変動分を相殺するように、ダイナモメータから前記タイヤに作用させる力を制御することができるので、車速に対して定めた所望の走行抵抗を車両に加えることができるようになる。
【0008】
ここで、本発明は、併せて、以上のようなシャシーダイナモメータにおいて、前記制御マップを設定する制御マップ設定方法として、前記制御手段において、前記目標値算出手段が算出した目標値が示す力を前記タイヤに作用させながら、前記自動車を惰行させて、前記自動車の車速の挙動を取得し、取得した挙動と、予め求めておいた実路において前記自動車を惰行させたときの前記自動車の車速の挙動とのずれに応じて、前記制御マップを修正する第1のステップと、前記目標値算出手段が算出した目標値に所定の補正値を加えた値が示す力を前記タイヤに作用させながら、前記自動車を惰行させて、前記自動車の車速の挙動を取得し、取得した挙動と、予め求めておいた実路において前記自動車を惰行させたときの前記自動車の車速の挙動とのずれに応じて、前記制御マップを修正する第2のステップを、前記挙動のずれが許容範囲に収まるまで繰り返すステップとを有する方法を提供する。但し、前記所定の補正値は、前記第1のステップの実行開始時に、前記温度測定手段が測定した前記タイヤの温度と、前記第2のステップ実行開始時に前記温度測定手段が測定した前記タイヤの温度との差による、前記第2のステップの実行開始時の前記タイヤの転がり抵抗の大きさの前記第1のステップの実行開始時の前記タイヤの転がり抵抗の大きさに対する変化と、当該補正値による前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力の大きさの変化とが相殺されるように算出した値とする。
【0009】
このような制御マップ設定方法によれば、前記第2のステップ実行時のタイヤの転がり抵抗の大きさの、第1のステップ実行時のタイヤの転がり抵抗の大きさからの、タイヤ温度変化による変化分を補正値で相殺した形態で、第2のステップを実行できるので、タイヤ温度変化によるタイヤの転がり抵抗の大きさの変動による外乱を廃して、速やかに適正な制御マップを設定することができるようになる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、シャシーダイナモメータにおいて、車速に対して定めた所望の走行抵抗を、より精度よく車両に加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
ここで、図1aはシャシーダイナモメータの上面模式図を、図1bはシャシーダイナモメータの側面模式図を示している。
【0012】
図示するように、このシャシーダイナモメータは、自動車用のシャシーダイナモメータであり、ピット1と、ピット1内に配置されたダイナモメータ2と、制御装置3と、自動車の駆動輪のタイヤの温度を測定し、測定した温度をタイヤ温度Teとして制御装置3に出力する放射温度計4とを備えている。
【0013】
ここで、ダイナモメータ2は、図2に前面を示すようにベース21、左右一対の円筒形状のローラ22、ベース21に固定されたモータ23を有している。そして、各ローラ22の中心軸24は、ベース21に固定された二つの支柱25によって回動可能に支持されている。また、左側のローラ22の中心軸24の右端は、左軸トルク計26を介在して、モータ23のモータ軸27の左端に連結し、右側のローラ22の中心軸24の左端は、右軸トルク計28を介在して、モータ23のモータ軸27の右端に連結している。また、モータ23には、モータ軸27の回転速度を検出し、検出した回転速度を回転速度Rvとして制御装置3に出力する回転速度計29が設けられている。
【0014】
このような構成において、モータ23は、制御装置3から出力される制御信号CNTに従ったトルクを発生し各ローラ22の回転の動力を供給または吸収する。また、左軸トルク計26、右軸トルク計28は、たとえば歪みゲージであり、左軸トルク計26は、モータ23のモータ軸27と左側のローラ22の中心軸24との間に働く軸トルクをねじれ方向の歪み量より検出し、右軸トルク計28は、モータ23のモータ軸27と右側のローラ22の中心軸24との間に働く軸トルクを、たとえば、ねじれ方向の歪み量より検出する。そして、左軸トルク計26が検出した軸トルクと、右軸トルク計28が検出した軸トルクとを加算した値が、検出トルクTrとして制御装置3に出力される。
【0015】
さて、図1に戻り、ダイナモメータ2はローラ22の頂部がピット1上面に設けられた開口から露出するように配置されている。
そして、自動車の試験は、図示するように、ピット1に試験する自動車である試験車両5を進行させ、試験車両5が前輪駆動車である場合には左右の駆動輪である前輪のタイヤをダイナモメータ2の左右のローラ22の頂上にそれぞれ位置決めした上で、試験車両5をピット1に対して固定して行う。
次に、図3に制御装置3の構成を示す。
【0016】
図示するように、制御装置3は、ダイナモメータ2から出力される回転速度Rvを自動車の車速Vに変換する車速変換部31、車速Vと当該車速Vのときに試験車両5に加えるべき走行抵抗Nとの関係を記述した抵抗マップ32、予め実験的に求めたタイヤ温度Teと二つの駆動輪のタイヤの転がり抵抗TNとの関係を記述したタイヤ抵抗テーブル33、減算部34、加算部35、制御値算出部36、校正制御部37、実路惰行データ38とを備えている。
【0017】
このような構成において、試験車両5の試験の際に、制御装置3は以下のように、ダイナモメータ2を制御する。
すなわち、まず、車速変換部31が現在の回転速度Rvを変換した車速Vに対応する走行抵抗Nを抵抗マップ32から算出する。また、現在のタイヤ温度Teに対応する転がり抵抗TNと、所定の基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStdを、タイヤ抵抗テーブル33から算出し、両者の差である(基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStd)-(現在のタイヤ温度Teに対応する転がり抵抗TN)を減算部34で補正値ΔNとして算出する。
【0018】
そして、加算部35で走行抵抗Nと補正値ΔNを加算して制御目標値TrgNとする。この結果、制御目標値TrgNは、現在のタイヤ温度Teが上昇しタイヤの転がり抵抗が小さくなるとその分大きくなり、現在のタイヤ温度Teが下降しタイヤの転がり抵抗が大きくなるとその分小さくなる。
【0019】
そして、制御値算出部36で、制御目標値TrgN(=走行抵抗N+補正値ΔN)を試験車両5に加えるためのモータ23の制御値を、現在の回転速度Rvや現在の検出トルクTrに応じて算出し、制御信号Cntとして、ダイナモメータ2のモータ23に出力する。
このような制御装置3による制御によれば、抵抗マップ32を、試験車両5がタイヤ温度が基準温度TeStdのときの転がり抵抗を有する場合における、車速Vと当該車速Vのときに試験車両5に加えるべき走行抵抗Nとの関係を記述したものとしておくことにより、タイヤ抵抗テーブル33を用いて、試験車両5のタイヤの転がり抵抗のタイヤの温度変化による変動分を相殺するように、ダイナモメータ2のモータ23の制御目標値TrgNを補正することができる。よって、適正に、車速に対して定めた所望の走行抵抗を試験車両5に加えることができるようになる。
【0020】
次に、以上のような試験車両5の試験に先だって行う、前述した所定の基準温度TeStdと、抵抗マップ32の設定動作について説明する。
まず、制御装置3には、予め実路惰行データ38が登録されており、この実路惰行データ38は、図4aに示すように、試験車両5を平坦な実路上で所定車速Vrefからギヤをニュートラルとして惰行させたときの車速の時間変化を表したものである。
そして、抵抗マップ32は、試験車両5の走行抵抗のうちのシャシーダイナモメータで模擬する成分の値が、車速Vの関数a+b×(Vの2乗)として登録される。ここで、aは転がり抵抗のうちのダイナモメータ2で模擬する成分に相当し、b×(Vの2乗)はシャシーダイナモメータで模擬する風損の値に相当する。なお、転がり抵抗のうちのダイナモメータ2で模擬する成分とは、路面状況の相違等によって生じる、実路走行時に発生する転がり抵抗と、ローラ22上の走行によって発生する転がり抵抗との差分である。
【0021】
なお、自動車の走行抵抗としては、この他に慣性抵抗が存在するが、この慣性抵抗は、別途フライホイールなどの機械的手段を用いて模擬する。または、制御装置3において、車速変換部31が現在の回転速度Rvを変換した車速Vの加速度と試験車両重量mに応じた値を制御信号CNTに加算してモータ23に出力することにより、当該慣性抵抗分の抵抗分もダイナモメータ2によって模擬するようにしてもよい。
【0022】
さて、抵抗マップ32の設定動作は、次の手順によって行う。
すなわち、まず、制御装置3の校正制御部37において、実路惰行データ38から、計算によって適当と思われる抵抗マップ32を算定し設定する。
次に、試験車両5をシャシーダイナモメータにセットし、図3bに示すように、試験車両5を所定時間の暖気運転する(D)、次に、試験車両5の車速を所定車速Vrefとした後に、試験車両5のギヤをニュートラルとして惰行させ、第1回目の校正運転(C1)を行う。
【0023】
この第1回目の校正運転では、まず、校正制御部37において、第1回目の校正運転(C1)開始時点t1のタイヤ温度Te(t1)を基準温度TeStdとして設定すると共に、試験車両5の車速の時間変化の記録を開始する。
そして、以降は、制御装置3において、車速変換部31が現在の回転速度Rvを変換した車速Vに対応する走行抵抗Nを抵抗マップ32から算出し、算出した走行抵抗Nをそのまま制御目標値TrgNとし、制御値算出部36で、制御目標値TrgN(=走行抵抗N)を試験車両5に加えるためのモータ23の制御値を、現在の回転速度Rvや現在の検出トルクTrに応じて算出し、制御信号Cntとして、ダイナモメータ2のモータ23に出力する。すなわち、第1回目の校正運転(C1)では、校正運転中、加算部35を、走行抵抗Nに対する補正値ΔNの加算を行わず、走行抵抗Nをそのまま制御目標値TrgNとして出力するように制御する。
【0024】
そして、試験車両5が停止したならば、校正制御部37において、試験車両5の車速の時間変化の記録を終了し、記録された試験車両5の車速の時間変化と、実路走行データが示す試験車両5の車速の時間変化との差分が解消されるように抵抗マップ32を修正する。
【0025】
そして、再度、試験車両5の車速を所定車速Vrefとした後に、試験車両5のギヤをニュートラルとして惰行させ、第2回目の校正運転(C2)を行う。
第2回目の校正運転では、まず、校正制御部37において、第2回目の校正運転(C2)開始時点t2のタイヤ温度Te(t2)に対応する転がり抵抗TN(t2)と、先に設定した第1回目の校正運転(C2)開始時点のタイヤ温度Te(t1)である基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStdを、タイヤ抵抗テーブル33から算出し、両者の差である(基準温度TeStdに対応する転がり抵抗TNStd)-(現在のタイヤ温度Te(t2)に対応する転がり抵抗TN(t2))を減算部34で補正値ΔN(t2)として算出する。
【0026】
そして、以降は、制御装置3において、車速変換部31が現在の回転速度Rvを変換した車速Vに対応する走行抵抗Nを抵抗マップ32から算出し、算出した走行抵抗Nに、第2回目の校正(C2)開始時点の補正値ΔN(t2)を加算した値を制御目標値TrgNとし、制御値算出部36で、制御目標値TrgN(=走行抵抗N+補正値ΔN(t2))を試験車両5に加えるためのモータ23の制御値を、現在の回転速度Rvや現在の検出トルクTrに応じて算出し、制御信号Cntとして、ダイナモメータ2のモータ23に出力する。すなわち、第2回目の校正運転(C2)では、校正運転中、加算部35を、走行抵抗Nに対して、常に第2回目の校正運転(C2)開始時点t2の補正値ΔN(t2)を加算して、制御目標値TrgNとして出力するように制御する。
【0027】
そして、試験車両5が停止したならば、校正制御部37において、試験車両5の車速の時間変化の記録を終了し、記録された試験車両5の車速の時間変化と、実路走行データが示す試験車両5の車速の時間変化との差分が許容値以下となっていれば、校正作業を終了する。
【0028】
一方、差分が許容値を超えていれば、当該差分解消されるように抵抗マップ32を修正し、第3回目の校正運転を第2回目の校正運転と同様に行う。また、以下、同様に、記録された試験車両5の車速の時間変化と、実路走行データが示す試験車両5の車速の時間変化との差分が許容値以下となるまで、第2回目の校正運転と同様の校正運転を繰り返す。
このような抵抗マップ32の設定動作によれば、第1回目の校正運転時に対する、タイヤ温度変化によるタイヤの転がり抵抗の大きさの変動を相殺した形態で、第2回目以降の校正運転を行うことができるので、タイヤ温度変化によるタイヤの転がり抵抗の大きさの変動による外乱を廃して、速やかに適正な制御マップを設定することができるようになる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上で示したシャシーダイナモメータの制御技術は、四輪駆動車や自動二輪車用のシャシーダイナモメータにも同様に適用することができる。また、二輪駆動車の前輪を各々ローラ上に載せ置いて抵抗を与える場合にも、同様に適用することができる。
また、以上のシャシーダイナモメータでは、ダイナモメータ2として軸トルク計でトルクを測定するタイプのダイナモメータを用いたが、ダイナモメータ2としては、軸周りに揺動可能に設けたモータ23と、モータ23の揺動に伴いモータ23に固定したアームから加わる荷重をトルクとして計測するロードセルとを備えた、揺動式のダイナモメータ2を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダイナモメータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの抵抗マップと基準温度の設定法を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…ピット、2…ダイナモメータ、3…制御装置、4…放射温度計、5…試験車両、21…ベース、22…ローラ、23…モータ、25…支柱、26…左軸トルク計、28…右軸トルク計、29…回転速度計、31…車速変換部、32…抵抗マップ、33…タイヤ抵抗テーブル、34…減算部、35…加算部、36…制御値算出部、37…校正制御部、38…実路惰行データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のタイヤが載置されるローラと、前記ローラを介して前記タイヤに力を作用させるダイナモメータと、前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力を制御する制御装置とを備えた、シャシーダイナモメータであって、
前記自動車のタイヤの温度を測定する温度測定手段と、
前記自動車の車速を計測する車速計測手段とを有し、
前記制御手段は、
前記自動車の車速と、当該車速にある自動車の前記タイヤに作用させるべき力との対応を記述した制御マップと、
前記制御マップを参照し、前記車速計測手段が計測した車速に対応する力を目標値として算出する目標値算出手段と、
前記温度測定手段で測定したタイヤの温度に応じて、前記目標値算出手段が算出した目標値を補正し、補正後目標値とする補正手段と、
前記ダイナモメータに、前記補正手段が補正した前記補正後目標値が示す力を前記タイヤに作用させる制御手段とを有し、
前記補正手段は、前記目標値の補正を、タイヤの温度変化による前記タイヤの転がり抵抗の大きさの変化と、当該補正による前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力の大きさの変化とが相殺されるように行うことを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項2】
請求項1記載のシャシーダイナモメータにおいて、前記制御マップを設定する制御マップ設定方法であって、
前記制御手段において、前記目標値算出手段が算出した目標値が示す力を前記タイヤに作用させながら、前記自動車を惰行させて、前記自動車の車速の挙動を取得し、取得した挙動と、予め求めておいた実路において前記自動車を惰行させたときの前記自動車の車速の挙動とのずれに応じて、前記制御マップを修正する第1のステップと、
前記目標値算出手段が算出した目標値に所定の補正値を加えた値が示す力を前記タイヤに作用させながら、前記自動車を惰行させて、前記自動車の車速の挙動を取得し、取得した挙動と、予め求めておいた実路において前記自動車を惰行させたときの前記自動車の車速の挙動とのずれに応じて、前記制御マップを修正する第2のステップを、前記挙動のずれが許容範囲に収まるまで繰り返すステップとを有し、
前記所定の補正値は、前記第1のステップの実行開始時に、前記温度測定手段が測定した前記タイヤの温度と、前記第2のステップ実行開始時に前記温度測定手段が測定した前記タイヤの温度との差による、前記第2のステップの実行開始時の前記タイヤの転がり抵抗の大きさの前記第1のステップの実行開始時の前記タイヤの転がり抵抗の大きさに対する変化と、当該補正値による前記ダイナモメータが前記タイヤに作用させる力の大きさの変化とが相殺されるように算出した値であることを特徴とするシャシーダイナモメータにおける制御マップ設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−2294(P2010−2294A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161305(P2008−161305)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)