説明

シャシーダイナモメータ

【課題】より簡易に四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決め可能とする。
【解決手段】左右二つの前輪用ローラ2に対して設けられている各位置決ユニット6を制御して、各位置決ユニット6のアーム61を延ばし、自動車の左右の前輪を前輪用ローラ2の上に位置決めする。そして、後輪位置に設けられている左右2組のラインセンサ7から、光センサ装置71の各光電素子の光検出パターンを取得し、取得した光検出パターンから、各後輪の前後方向のセンタ位置を算出する。そして、モータ52を駆動してステージ5を、後輪の前後方向のセンタ位置と後輪ローラの前後方向のセンタ位置が一致するように移動し、各位置決ユニット6のアーム61を収縮収容し、センタリング処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータにおいて、車両車輪を適正に配置するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動輪を、回動可能に設けた円筒形状のローラ上で回転し自動車性能の試験を行うシャシーダイナモメータにおいては、自動車を、その駆動輪が正しくローラの頂上部に接した状態、すなわち、駆動輪の回転中心とローラの回転中心を結ぶ線が垂直となる状態に配置する必要がある。
【0003】
そして、このような自動車の駆動輪を適正にローラ上に配置する技術としては、ローラ頂上に対して前後に設けた二つのエアシリンダの先端部を、ローラ上に配置された駆動輪周面に斜め下方前後両側から押しつけることにより、駆動輪をローラ頂上に位置合わせするセンタリング装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
また、自動車の各種試験に用いられるシャシーダイナモメータとしては、4輪駆動車の前輪を載置する前輪用ローラと、4輪駆動車の後輪を載置する後輪用ローラとを備えると共に、後輪用ローラを、自動車のホイールベース方向に移動可能に設けたシャシーダイナモメータも知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平06-201525号公報
【特許文献2】特開平08-152380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、自動車は、車両によってホイールベースが異なる。このため、シャシーダイナモメータにおける四輪駆動車の試験の際には、自動車の前輪を載せ置く前輪用ローラと後輪を載せ置く後輪用ローラとの間隔を自動車のホイールベースに合わせて調整し、その後、前輪用ローラと後輪用ローラに対して各々設けたセンタリング装置で、自動車の前輪を前輪用ローラの真上に位置決めすると共に、自動車の後輪を後輪用ローラの真上にそれぞれ位置決めするという比較的煩雑な手順によって自動車の位置決めを行う必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、より簡易に、四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、4輪駆動車の自動車の前輪と後輪とのうちの一方の車輪を載置する第1ローラと、前記前輪と後輪とのうちの他方の車輪を載置する第2ローラとを備えたシャシーダイナモメータに、前記第2ローラを前記自動車の前後方向に移動する移動機構と、前記第1ローラ上に載置された車輪を、前記第1ローラ真上に位置決めする位置決機構と、前記第2ローラ上に載置される車輪の位置を検出する位置検出センサと、前記第1ローラ上に載置された車輪が前記第1ローラ真上に前記位置決機構によって位置決めされている状態において、前記位置検出センサが検出する車輪の位置に基づいて、前記移動機構を制御し、前記第2ローラ上に載置される車輪の真下に、前記第2ローラが位置するように、当該第2ローラを移動する移動制御手段とを備えたものである。
【0008】
ここで、このようなシャシーダイナモメータにおいて、前記位置決機構は、前記第1ローラ上に載置された車輪を、前斜め下方より押圧する第2車輪前部押圧部と、前記第1ローラ上に載置された車輪を、後斜め下方より押圧する第2車輪後部押圧部とを備えたものとしてもよい。
【0009】
このようなシャシーダイナモメータによれば、前記位置決機構によって、前記第1ローラ上に載置された車輪を、前記第1ローラ真上に位置決めし、前記位置検出センサが検出する車輪の位置に基づいて、前記移動機構を制御し、前記第2ローラ上に載置される車輪の真下に、前記第2ローラが位置するように、当該第2ローラを移動するだけの簡易な作業によって、四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めすることができる。また、車輪をローラの真上に位置決めするための位置決機構は、第1ローラ側にのみ設ければ足りるので、簡易な構成によって四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めすることができることとなる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、より簡易に、四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
ここで、図1aはシャシーダイナモメータの上面模式図を、図1bはシャシーダイナモメータの側面模式図を示している。
図示するように、このシャシーダイナモメータは、4輪駆動の自動車用のシャシーダイナモメータであり、ピット1上に自動車を進行させ、左右の前輪を左右2つの前輪用ローラ2上に位置決めし、左右の後輪を左右2つの後輪用ローラ3上に位置決めした上で、自動車をピット1に対して固定ベルト4で固定し、固定した自動車を走行させながら前輪用ローラ2に連結したダイナモメータや、後輪用ローラ3に連結したダイナモメータで自動車の各種特性を測定するものである。
【0012】
ここで、左右2つの後輪用ローラ3は、自動車の前後方向に移動可能にステージ5上に固定設置されている。
また、シャシーダイナモメータは、各前輪用ローラ2について一つずつ設けた前輪用ローラ2上に前輪を位置決するための位置決ユニット6と、後輪配置位置に設けた左右2つのラインセンサ7と、センタリング制御部8とを備えている。
ここで、図2aに、位置決ユニット構成を示す。
各前輪用ローラ2毎に設けた2つの位置決ユニット6は、同様の構成を有しており、各々図2aに示すように、二つのアーム61と、各アーム毎に設けられたアーム61を伸縮させる二つのジャッキ装置62とを有している。
また、二つのアーム61は、それぞれ間に、前輪100を位置決する前輪用ローラ2を挟むように配置され、アーム61を縮めた状態において、アーム61の先端は、前輪用ローラ2の頂上よりも下方となる。したがって、この状態では、アーム61は、自動車のピット1上への進行や、自動車の試験を妨げることはない。また、この状態から、アーム61を伸ばすと、アーム61は、前輪用ローラ2とピット1との間の開口を通って、斜め上方に移動する。すると、やがて、二つのアーム61が前輪100の下部に接して前後斜め下方から前輪100を挟みこむように力を加え、前輪100を前輪用ローラ2上に位置決めする。
【0013】
次に、左右2つの後輪用ローラ3が設置されたステージ5は、図2bに上面から見たようすを示すように、キャスタとボールネジ用のナットを下面に備えており、図1bに示すようにピット1の底面に敷設された軌道レール51上を、ピット1の底面上に設置したモータ52によるボールネジ53の回転に伴って自動車の前後方向に移動する。なお、図2b中31は、後輪用ローラ3に連結したダイナモメータを表している。
【0014】
次に、各後輪の配置位置に各々設けた左右2つのラインセンサ7は、各々同様の構成を有している。そして、各ラインセンサ7は、図3aに示すように、後輪が配置される位置の左右に対向して配置した、光電素子を前後方向に一列に並べた光センサ装置71と、光センサ装置71に向かって、前後方向に延びる帯状にレーザ光を発する発光装置72とより構成される。
【0015】
そして、このようなラインセンサ7は、図3bに示すように、光センサ装置71と発光装置72との間に物体が存在すると、その物体によって光が遮断されるため、光センサ装置71を構成する光電素子のうちの、物体の前後方向の領域と重なる前後方向領域内の光電素子で光を検出できなくなる。
【0016】
従って、図3cに示すように、光センサ装置71と発光装置72間に後輪200が配置されると、後輪200によって、光センサ装置71の一部の光電素子で光を検出できなくなり、光センサ装置71の各光電素子の光検出パターンより求まる、光を検出できなくなった領域の中心位置Cを後輪200の前後方向中心位置として算定することができる。
【0017】
さて、このようなシャシーダイナモメータにおける車両の位置決めは、たとえば、次に示すような手順によって行われる。
すなわち、まず、作業者は、各位置決ユニット6のアーム61を引き込んだ状態で、自動車を、ピット1上に進行させ、4つの車輪をおおよそ各ローラ上に移動させた上で、センタリング制御装置にセンタリング制御処理を実行させる。
図4aに、このセンタリング制御処理の手順を示す。
図示するようにセンタリング制御処理は、この処理において、まず、左右二つの前輪用ローラ2に対して設けられている各位置決ユニット6を制御して、各位置決ユニット6のアーム61を延ばし、自動車の左右の前輪を前輪用ローラ2の上に位置決めする(ステップ402)。
【0018】
そして、後輪位置に設けられている左右2組のラインセンサ7から、光センサ装置71の各光電素子の光検出パターンを取得し、取得した光検出パターンから、各後輪の前後方向のセンタ位置を算出する(ステップ404)。
そして、モータ52を駆動してステージ5を、算出した後輪の前後方向のセンタ位置と後輪用ローラ3の前後方向のセンタ位置との差分に等しい距離、差分が小さくなる方向に移動し、後輪用ローラ3の前後方向のセンタ位置を後輪の前後方向のセンタ位置に一致させる(ステップ406)。ここで、このステージ5の移動の制御としては、算出した後輪の前後方向のセンタ位置と後輪用ローラ3の前後方向のセンタ位置との差分に等しい距離に相当する回転量、差分が小さくなる回転方向にモータ52を回転する方法と、後輪用ローラ3の前後方向のセンタ位置を測定する測定装置を設け、当該測定装置が測定する後輪用ローラ3の前後方向のセンタ位置が、算出した後輪の前後方向のセンタ位置となるまでモータ52を駆動する方法とがある。なお、このステージ5の移動の際には、各後輪用ローラ3は自由に回転できる状態としておく。
【0019】
そして、各位置決ユニット6のアーム61を収縮収容し(ステップ408)、センタリング処理を終了する。
そして、作業者は、このようなセンタリング制御処理を利用しつつ、各車輪の位置決めが完了したならば、固定ベルト4で自動車を固定して、自動車の位置決めを完了する。
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、位置決ユニット6によって、前輪用ローラ2上に載置された前輪を、前輪用ローラ真上に位置決めし、ラインセンサ7が検出する後輪のセンタ位置に基づいて、モータ52を制御し、後輪の真下に、後輪用ローラ3が位置するように、ステージ5を後輪用ローラ共々移動するだけの簡易な作業によって、四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めすることができる。また、位置決ユニット6は、前輪用ローラ2側にのみ設ければ足りるので、簡易な構成によって四輪駆動車の各車輪をローラ上に位置決めすることができることとなる。
【0020】
なお、以上の実施形態では、ラインセンサ7を用いて後輪の前後方向センタ位置を検出するようにしたが、後輪の前後方向センタ位置の検出は、その他の手法、たとえば、自動車後部側面を撮影するカメラを設け、カメラで撮影した画像に対する車輪の画像認識処理によって、後輪のセンタ位置を検出するなどの手法によって行うようにしてもよい。
【0021】
また、以上の実施形態は、前輪と後輪との関係を交代して、これを適用するようにしてもよい。すなわち、図1に示した前輪用ローラ2を後輪を載せ置く後輪用のローラとして用い、図1に示した後輪用ローラ3を前輪を載せ置く前輪用のローラとして用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る位置決ユニット、ステージの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るラインセンサの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセンタリング制御処理を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1…ピット、2…前輪用ローラ、3…後輪用ローラ、4…固定ベルト、5…ステージ、6…位置決ユニット、7…ラインセンサ、8…センタリング制御部、51…軌道レール、52…モータ、53…ボールネジ、61…アーム、62…ジャッキ装置、71…光センサ装置、72…発光装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4輪駆動車の自動車の前輪と後輪とのうちの一方の車輪を載置する第1ローラと、前記前輪と後輪とのうちの他方の車輪を載置する第2ローラとを備えたシャシーダイナモメータであって、
前記第2ローラを前記自動車の前後方向に移動する移動機構と、
前記第1ローラ上に載置された車輪を、前記第1ローラ真上に位置決めする位置決機構と、
前記第2ローラ上に載置される車輪の位置を検出する位置検出センサと、
前記第1ローラ上に載置された車輪が前記第1ローラ真上に前記位置決機構によって位置決めされている状態において、前記位置検出センサが検出する車輪の位置に基づいて、前記移動機構を制御し、前記第2ローラ上に載置される車輪の真下に、前記第2ローラが位置するように、当該第2ローラを移動する移動制御手段とを有することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項2】
請求項1記載のシャシーダイナモメータであって、
前記位置決機構は、
前記第1ローラ上に載置された車輪を、前斜め下方より押圧する第2車輪前部押圧部と、
前記第1ローラ上に載置された車輪を、後斜め下方より押圧する第2車輪後部押圧部とを備えていることを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項3】
4輪駆動車の自動車の前輪と後輪とのうちの一方の車輪を載置する第1ローラと、前記前輪と後輪とのうちの他方の車輪を載置する第2ローラと、前記第2ローラを前記自動車の前後方向に移動する移動機構と、前記第1ローラ上に載置された車輪を、前記第1ローラ真上に位置決めする位置決機構と、前記第2ローラ上に載置される車輪の位置を検出する位置検出センサとを備えたシャシーダイナモメータにおいて、前記自動車を位置決めする位置決め方法であって、
前記位置決機構によって、前記第1ローラ上に載置された車輪を、前記第1ローラ真上に位置決めするステップと、
前記第1ローラ上に載置された車輪が前記第1ローラ真上に前記位置決機構によって位置決めされている状態において、前記位置検出センサが検出する車輪の位置に基づいて、前記移動機構を制御し、前記第2ローラ上に載置される車輪の真下に、前記第2ローラが位置するように、当該第2ローラを移動するステップとを有することを特徴とする位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−222582(P2009−222582A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67948(P2008−67948)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)