説明

シャシーダイナモメータ

【課題】自動車を拘束しつつ、その実路走行時の姿勢を模擬する。
【解決手段】シミュレータ52は、所定の車両モデルの入力値に対する応答を求めることにより、試験車両1の運動をシミュレーションし、当該シミュレーションによって各時点において得られる試験車両1のバウンシング量、ピッチング量、ローリング量を、拘束装置制御部53に出力する。車両モデル入力値算出部51は、各ダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクと、各ダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度とより、前述したシミュレータ52における車両モデルへの入力値を算出する。そして、拘束装置制御部53はバウンシング量、ピッチング量、ローリング量が、試験車両1のシミュレータ52によって算出されたバウンシング量、ピッチング量、ローリング量となるように試験車両1の車体の姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータにおいて自動車の車体の姿勢を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の各種試験に用いられるシャシーダイナモメータとしては、車両の走行状態を再現するために車両に対して走行中の路面を模擬するローラと、前記ローラのトルクを制御するモータと、ローラと車輪間に作用する力を計測する測定装置とを備えたシャシーダイナモメータが知られている。
【0003】
ここで、このようなシャシーダイナモメータでは、自動車の車輪が正しくローラ上に位置し続けるように車体を拘束しつつ、その測定を行う必要があり、このような車両の拘束の技術としては、ワイヤロープで車両の前部と後部とを、それぞれ索引して固定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
なお、自動車の姿勢を算出する技術としては、所定の車両モデルを用いて、自動車の各種運動をシミュレーションすることにより、自動車の姿勢を算出する技術も知られている(たとえば、非特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-307082号公報
【非特許文献1】大川進、本田昭監修、「自動車のモーションコントロール技術入門」、山海堂2006年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャシーダイナモメータでは、自動車の各種状態をできるだけ実路走行時と同じ状態に模擬しつつ試験を行うことが、試験精度の向上等の上で好ましい。
しかしながら、車輪位置をローラ上に維持するために、ワイヤロープで車両の前部と後部とを索引して固定する技術によれば、車両のバウンシングやピッチングやローリングなどの姿勢変化をも抑制してしまい、これら車両の車体の姿勢や当該姿勢変化に伴う軸重変化に関して、自動車を実路走行時と同じ状態として試験を行うことができなくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、自動車の車輪をローラ上に拘束しつつ、車両の車体の姿勢についても実路走行を模擬しつつ試験を行うことのできるシャシーダイナモメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力を計測するダイナモメータと、前記各ローラ上に各車輪が載置された前記車両の車体の異なる複数の位置にそれぞれ連結する複数台の拘束装置と、姿勢制御装置とを備えたシャシーダイナモメータを提供する。ただし、前記各拘束装置は、前記車両の車体に連結する連結部と、前記連結部を、前記車両の前後方向及び上下方向に移動する移動機構とを備えるものであり、前記姿勢制御装置は、前記複数台の拘束装置各々の移動機構を駆動して、前記車両の車体の姿勢を制御するものである。
【0008】
このようなシャシーダイナモメータによれば、上述のような移動機構や回転機構を備えた拘束装置を用いて、車両の車体のバウンシングやピッチングやローリングなどの姿勢を任意に制御することができるので、これら車両の車体の姿勢についても実路走行を模擬しつつ試験を行うことができるようになる。
【0009】
ここで、このようなシャシーダイナモメータは、前記各拘束装置に、前記連結部を前記車両の前後方向の軸回りに回転する回転機構を設け、前記姿勢制御装置において、前記複数台の拘束装置各々の移動機構と回転機構とを駆動して、前記車両の車体の姿勢を制御するように構成してもよい。
【0010】
また、以上のようなシャシーダイナモメータは、前記各ダイナモメータを前記ローラの回転速度を測定するものとし、前記姿勢制御装置において、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御するように構成してもよい。
【0011】
または、以上のようなシャシーダイナモメータは、前記各ダイナモメータを前記ローラの回転速度を測定するものとし、前記姿勢制御装置を、車両の各車輪の駆動力を入力とする車両の運動モデルを用いて、車両の運動をシミュレーションするシミュレーション手段と、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて、前記車両の各車輪の駆動力を算出し、前記運動モデルの入力として前記シミュレーション手段に供給する駆動力算出手段と、前記シミュレーション手段が運動をシミュレーションしている車両の車体の姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する制御手段とより構成するようにしてもよい。
【0012】
これらのようにすることにより、前記各ダイナモメータが測定した各ローラと車輪との間に作用する力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて実路走行時の前記車両の車体の姿勢を適正に算出し、車両の車体の姿勢を的確に実路走行時の姿勢に制御することができるようになる。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力と前記各ローラの回転速度を計測するダイナモメータと、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する姿勢制御手段とを備えたシャシーダイナモメータも提供する。ここで、このようなシャシーダイナモメータによっても、前記各ダイナモメータが測定した各ローラと車輪との間に作用する力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて実路走行時の前記車両の車体の姿勢を適正に算出し、車両の車体の姿勢を的確に実路走行時の姿勢に制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、自動車の車輪をローラ上に拘束しつつ、車両の車体の姿勢についても実路走行を模擬しつつ試験を行うことのできるシャシーダイナモメータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1a、bに、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。ここで。図1aはシャシーダイナモメータを上方より見たようすを、図1bはシャシーダイナモメータを左右方向から見たようすを模式的に表したものである。
図示するように、このシャシーダイナモメータは、4輪駆動の自動車用のシャシーダイナモメータであり、試験車両1の車輪毎に一つずつ設けられたダイナモメータ2を備え、各ダイナモメータ2は、試験車両1の走行面となるピット3の上面に設けた開口に、ローラ21の天頂部が露出するようにピット3内に配置される。
【0016】
そして、このようなシャシーダイナモメータを用いた試験車両1の試験は、試験車両1の各車輪を各ダイナモメータ2のローラ21の天頂部に載置した状態で、4台の拘束装置4を用いて試験車両1の前端左右と後端左右の四ポイントの位置を拘束しつつ、ローラ21を回転しながら、試験車両1の車輪とローラ周面間で作用するトルクを、各ダイナモメータ2を用いて計測することにより行われる。
【0017】
また、シャシーダイナモメータには、4台の拘束装置4を用いて、試験車両1の車体の姿勢を制御する姿勢制御装置5も設けられている。
次に、図2に、各ダイナモメータ2の構成を示す。
ここで、図2aはダイナモメータ2を上面から見たようすを、図2bはダイナモメータ2を前面からみたようすを、図2cは図2aの断面線AAの断面によってダイナモメータ2の内部構造を模式的に表した図である。
図示するように、本実施形態に係るダイナメータは、軸受柱22によってベアリング221を介してシャフトが回動可能に支持されたローラ21と、軸受柱23によってベアリング231を介してシャフトが回動可能に支持されたステータ24とを有し、ステータ24はローラ21の内部に同軸入れ子状に配置されている。
【0018】
そして、ステータ24の外周側にはモータコイル241が巻き回されており、ローラ21の内壁側には永久磁石211が設置されており、このような構造によってステータとローラ21は、ローラ21をアウタロータとするモータとして機能し、モータコイルを駆動することにより、ローラ21に回転方向のトルクを作用させることができる。
【0019】
一方、ステータ24のシャフトは、固定柱25に軸トルク計26を介して連結されており、ローラ21に試験車両1の車輪によって加えられた力に応じた軸トルクが軸トルク計26で検出され外部に出力される。また、ローラ21に対してロータリエンコーダ27が設けられておりローラ21の回転速度が、ロータリエンコーダ27で検出され外部に出力される。
【0020】
なお、軸トルク計26は、たとえば歪みゲージであり、固定柱25とステータのシャフトとの間に働く軸トルクを、たとえば、シャフトのねじれ方向の歪み量より検出する。
次に、図3a1に、拘束装置4の構成を示す。
図示するように、拘束装置4は、ピット3の上面に固定されるベース41、ベース41に内蔵された駆動機構により図3a2に示すように上下に移動可能にベース41に支持されたZステージ42、Zステージ42に内蔵された駆動機構により図3a3に示すように前後方向(試験車両1の前後方向)に伸縮可能にZステージ42に支持されたXアーム43、Xアーム43の先端に設けられた試験車両1の四隅に設けたステーやフックなどの取り付け部と連結するジョイント44とを備えている。ここで、上述した駆動機構としては油圧シリンダやエアシリンダやボールネジ機構などを用いることができる。また、ジョイント44としては、ボールジョイントやユニバーサルジョイントなどの任意回転軸回りの回転についての自由度をもってXアーム43と取り付け部を連結するジョイント44を用いるようにする。
【0021】
さて、ここで、このような拘束装置4台を設け、その各々のジョイント44を試験車両1の四隅の取り付け部に各々連結し、姿勢制御装置5によって、各拘束装置4のZステージ高さやXアーム43の前後方向の伸縮量を制御することにより、図3bに示すように試験車両1のバウンシングを任意に制御したり、図3cに示すように試験車両1のピッチングを任意に制御したり、図3dに示すように試験車両1のローリングを任意に制御することができるようになる。
【0022】
次に、このような拘束装置4を用いて、試験車両1の車体の姿勢制御を行う姿勢制御装置5の構成について説明する。
図4に、姿勢制御装置5の構成を示す。
図示するように、姿勢制御装置5は、車両モデル入力値算出部51、シミュレータ52、拘束装置制御部53とを有している。
さて、ここで、試験の実施者は、次のように試験車両1の試験を開始する。すなわち、まず、試験車両1の各車輪が各ダイナモメータ2のローラ21の天頂部上に位置するように試験車両1を配置する。そして、そのままの状態で試験車両1の車体の位置、姿勢が拘束されるように、4台の拘束装置4を試験車両1に連結する。そして、試験車両1の試験を開始する。
【0023】
そして、このようにして開始される試験の実施中、シミュレータ52は、予め定めた車両モデルの入力値に対する応答を求めることにより、試験車両1の運動をシミュレーションし、当該シミュレーションによって各時点において得られる試験車両1のバウンシング量、ピッチング量、ローリング量を、拘束装置制御部53に出力する。
【0024】
車両モデル入力値算出部51は、各ダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクと、各ダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度とより、前述したシミュレータ52における車両モデルへの入力値を算出する。
そして、拘束装置制御部53は試験車両1の車体のバウンシング量、ピッチング量、ローリング量が、試験車両1のシミュレータ52によって算出されたバウンシング量、ピッチング量、ローリング量となるように、各拘束装置4を駆動制御することにより、試験車両1の車体の姿勢を制御する。
【0025】
ここで、シミュレータ52がシミュレーションに用いる車両モデルや、車両モデルに応じて定まる車両モデル入力値算出部51が算出する車両モデルへの入力値の算出法としては様々な手法が取り得るが、以下のその構成例の一つを、試験車両1を直進させる試験への適用を例にとり示す。
まず試験車両1を直進させる場合、車両のローリングは発生量が小さいものとして無視することができ、この場合には、試験車両1は、一つの前輪と一つの後輪よりなる二輪の車両モデルとして、簡易的には、上述した非特許文献1のPP.88-89に記載のようにモデル化することができる。そして、この場合、車両モデルは、図示するように、前輪及び後輪の回転運動をモデル化した回転運動モデル521と、車両の重心のx軸方向(前後方向)の運動をモデル化した重心x軸運動モデル522と、車両の重心のθ軸回り方向(左右方向軸回り)の運動(ピッチング)をモデル化した重心θ回り運動モデル523と、車両の重心のz軸方向(上下方向)の運動をモデル化した重心z軸運動モデル524と、前輪及び後輪のサスペンションの運動をモデル化したサスペンション運動モデル525より構成することができる。
【0026】
そして、この場合、車両モデル入力値算出部51では、式1を用いて、車両モデルの前輪の駆動トルクTfと、後輪の駆動トルクTrを算出し、車両モデルの入力段となる回転運動モデル521の入力値とする。
【0027】
【数1】

【0028】
但し、Ffinは試験車両1の前二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクTdymより求まる試験車両1の前二輪とローラ21との間で作用する力、Frinは試験車両1の後二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクTdymより求まる試験車両1の後二輪とローラ21との間で作用する力、dwfin/dtは、試験車両1の前二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度Wdymから求まる前二輪の回転角加速度、dwrin/dtは試験車両1の後二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度Wymから求まる後二輪の回転角加速度である。また、Jfは、試験車両1の前二輪の回転モーメントの計、Jrは、試験車両1の後二輪の回転モーメントの計である。
【0029】
そして、シミュレータ52は、回転運動モデル521において、式2を用いて、前輪の駆動トルクTfと後輪の駆動トルクTrと、後述するように重心x軸運動モデル522において算出される重心のx軸方向の加速度dv/dtより、前輪と路面との間で作用する力Ffと後輪と路面との間で作用する力Frを算出する。
【0030】
【数2】

【0031】
但し、回転運動モデル521を省略し、車両モデル入力値算出部51で求めたFfin、Frinを、直接、回転運動モデル521で算出するFf、Frに代えて用いるようにしてもよい。
次に、シミュレータ52は、重心x軸運動モデル522において、前輪と路面との間で作用する力Ffと後輪と路面との間で作用する力Frより、x軸方向の加速度dv/dtを式3を用いて算出する。但し、Mは試験車両1の車体総重量である。また、Raは試験車両1に対する空気抵抗であり、ここでは固定値を用いてもよいし、試験車両1の空気抗力係数(Cd値)×前面投影面積×重心のx軸方向の速度vの2乗として求めるようにしてもよい。
【0032】
【数3】

【0033】
また、シミュレータ52は、重心θ回り運動モデル523において、前輪の駆動トルクTfと後輪の駆動トルクTrと、サスペンション運動モデル525において後述するように算出される前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfと後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrとより、式4を用いて、重心のθ回りの回転すなわちピッチングの回転速度dθ/dtと回転角θを算出し、ピッチングの回転角θを拘束装置制御部53に出力する。但し、Iyは、試験車両1の車体のピッチング慣性モーメントであり、hは試験車両1の重心の高さ、aは前輪中心から重心までの前後方向距離、bは後輪中心から重心までの前後方向距離である。
【0034】
【数4】

【0035】
また、シミュレータ52は、重心z軸運動モデル524において、サスペンション運動モデル525において後述するように算出される前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfと後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrとより、式5を用いて、重心のz軸方向の移動速度dz/dtとz軸方向位置(高さ)zを算出し、z軸方向位置(高さ)zを拘束装置制御部53に出力する。
【0036】
【数5】

【0037】
そして、サスペンション運動モデル525において、重心z軸運動モデル524で算出される重心のz軸方向の移動速度dz/dtとz軸方向位置zと、重心θ回り運動モデル523で算出されるピッチングの回転速度dθ/dtと回転角θをとより、式6を用いて、前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfと後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrを算出する。但し、Kfは前輪サスペンションのバネ定数、Cfは前輪サスペンションのアブソーバ減衰定数であり、Krは後輪サスペンションのバネ定数、Crは後輪サスペンションのアブソーバ減衰定数である。
【0038】
【数6】

【0039】
そして、拘束装置制御部53では、重心z軸運動モデル524で算出される重心のz軸方向位置zと、重心θ回り運動モデル523で算出されるピッチングの回転角θに、試験車両1の重心のz軸方向位置とピッチングの回転角とが一致するように、4台の拘束装置4を駆動制御することにより試験車両1の車体の姿勢を制御する。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、本発明の実施形態では、拘束装置4を4台設けて試験車両1の4隅の取り付け部に各々連結したが、試験車両1のバウンシングとピッチングのみを模擬し、ローリングについてはこれを模擬しない場合には、図5aに示すように、2台の拘束装置4のみを設け、その各々のジョイント44を、試験車両1の前端中央に設けた取り付け部と、後端中央に設けた取り付け部とにそれぞれ連結するようにしてもよい。なお、この場合には、ジョイント44は、自由度なくXアーム43と取り付け部とを連結するものとする。
【0041】
または、図5aに示すように、2台の拘束装置4を設けて試験車両1の前後に連結しつつ、各拘束装置4を、図5bに示すように、Xアーム43を、前後上下方向の移動に加え、前後方向軸を回転軸として所望回転角度回転駆動できるように構成することにより、2台の拘束装置4のみを用いて図5cに示すように、試験車両1のバウンシングとピッチングとローリングを制御するようにしてもよい。なお、この場合にも、ジョイント44は、自由度なくXアーム43と取り付け部とを連結するものとする。
【0042】
また、以上の実施形態は、図5dに示すように各ダイナモメータ2を、上下方向軸を回転軸として、試験車両1の操舵角分回転するターンテーブル20上に設置して、試験車両1の旋回運動をシャシーダイナモメータにおいて模擬する場合にも適用することができる。すなわち、この場合には、シミュレータ52において、4輪の車両モデルを用いて、ターンテーブル20の回転速度より求まる操舵角や、各車輪の駆動トルクに基づいて、試験車両1の運動をシミュレーションし、当該シミュレーションによって各時点において得られる試験車両1のバウンシング量、ピッチング量、ローリング量を、拘束装置制御部53に出力し、拘束装置制御部53において試験車両1の車体のバウンシング量、ピッチング量、ローリング量が、試験車両1のシミュレータ52によって算出されたバウンシング量、ピッチング量、ローリング量となるように4台の拘束装置4を制御することにより試験車両1の車体の姿勢を制御するようにする。
【0043】
以上のように本実施形態によれば、試験車両1の車体の取り付け部を移動、回転する拘束装置4を用いて、車両の車体のバウンシングやピッチングやローリングなどの姿勢を任意に制御することができるので、試験車両1の車体の姿勢についても実路走行を模擬しつつ試験を行うことができるようになる。
【0044】
また、前記各ダイナモメータ2が測定した各ローラ21と車輪との間に作用する力と、前記各ダイナモメータ2が測定した各ローラ21の回転速度とに基づいて実路走行時の前記車両の車体の姿勢を適正に算出し、車両の車体の姿勢を的確に実路走行時の姿勢に制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダイナモメータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る拘束装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…試験車両、2…ダイナモメータ、3…ピット、4…拘束装置、5…姿勢制御装置、21…ローラ、26…軸トルク計、27…ロータリエンコーダ、41…ベース、42…Zステージ、43…Xアーム、44…ジョイント、51…車両モデル入力値算出部、52…シミュレータ、53…拘束装置制御部、521…回転運動モデル、522…重心x軸運動モデル、523…重心θ回り運動モデル、524…重心z軸運動モデル、525…サスペンション運動モデル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、
前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力を計測するダイナモメータと、
前記各ローラ上に各車輪が載置された車両の車体の異なる複数の位置にそれぞれ連結する複数台の拘束装置と、
姿勢制御装置とを備え、
前記各拘束装置は、前記車両の車体に連結する連結部と、前記連結部を、前記車両の前後方向及び上下方向に移動する移動機構とを備え、
前記姿勢制御装置は、前記複数台の拘束装置各々の移動機構を駆動して、車両の車体の姿勢を制御することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項2】
請求項1記載のシャシーダイナモメータであって、
前記各拘束装置は、前記連結部を前記車両の前後方向の軸回りに回転する回転機構を備え、
前記姿勢制御装置は、前記複数台の拘束装置各々の移動機構と回転機構とを駆動して、前記車両の車体の姿勢を制御することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のシャシーダイナモメータであって、
前記各ダイナモメータは前記ローラの回転速度を測定し、
前記姿勢制御装置は、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項4】
請求項1または2記載のシャシーダイナモメータであって、
前記各ダイナモメータは前記ローラの回転速度を測定し、
前記姿勢制御装置は、
車両の各車輪の駆動力を入力とする車両の運動モデルを用いて、車両の運動をシミュレーションするシミュレーション手段と、
前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて、前記車両の各車輪の駆動力を算出し、前記運動モデルの入力として前記シミュレーション手段に供給する駆動力算出手段と、
前記シミュレーション手段が運動をシミュレーションしている車両の車体の姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する制御手段とを有することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項5】
自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、
前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力と前記各ローラの回転速度を計測するダイナモメータと、
前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する姿勢制御手段とを有することを特徴とするシャシーダイナモメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−271025(P2009−271025A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124222(P2008−124222)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)