説明

シャシーダイナモメータ

【課題】サスペンションの運動に伴って変化する車輪の状態を模擬する。
【解決手段】シミュレータ52は、ダイナモメータ2の測定値より求まるタイヤ駆動トルクを、車両モデルの入力値として、その応答を求めることにより、試験車両1の運動をシミュレーションし、試験車両1の前後方向の移動速度と、サスペンションの運動による各車輪の車体に対する前後方向への移動速度である車輪線速度とを算出する。ダイナモメータ制御部6は、各車輪について、各車輪の対地移動速度を、試験車両1の車体の前後方向の移動速度に、当該車輪の車輪線速度を加えた移動速度として求め、各車輪について、当該車輪の対地移動速度に相当する、回転速度となるようにダイナモメータ2のローラ21の回転速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータにおいて車両の運動を模擬する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の各種試験に用いられるシャシーダイナモメータとしては、車両の走行状態を再現するために車両に対して走行中の路面を模擬するローラと、前記ローラのトルクを制御するモータと、ローラと車輪間に作用する力を計測する測定装置とを備えたシャシーダイナモメータが知られている。
【0003】
また、このようなシャシーダイナモメータでは、自動車の車輪が正しくローラ上に位置し続けるように車体を拘束しつつ、その測定を行う必要があり、このような車両の拘束の技術としては、ワイヤロープで車両の前部と後部とを、それぞれ索引して固定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
また、所定の車両モデルを用いて、自動車の各種運動をシミュレーションすることにより、自動車の各種状態を算出する技術も知られている(たとえば、非特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-307082号公報
【非特許文献1】大川進、本田昭監修、「自動車のモーションコントロール技術入門」、山海堂2006年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャシーダイナモメータでは、自動車の各種状態をできるだけ実路走行時と同じ状態に模擬しつつ試験を行うことが、試験精度の向上等の上で好ましい。
しかしながら、車輪位置をローラ上に維持するために、ワイヤロープで車両の前部と後部とを、それぞれ索引して固定する技術によれば、車両のサスペンションの運動をも抑制してしまい、サスペンションの運動に伴って変化する車輪の状態を実路走行時と同じ状態として試験を行うことができなくなってしまう。
【0006】
また、平坦な実路面と、曲面となるローラの車輪の載置面とに対する、車輪の接地面積や摩擦係数の相違などにより、車輪の状態を、必ずしも実路走行時と同じ状態として試験を行うことができないという問題もある。
そこで、本発明は、サスペンションの運動に伴って変化する車輪の状態を含む車輪の状態について、実路走行を模擬しつつ試験を行うことのできるシャシーダイナモメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力と前記ローラの回転速度とを計測するダイナモメータと、前記ダイナモメータを制御するダイナモメータ制御手段と、車輪対地速度算出手段とを備えたシャシーダイナモメータを提供する。但し、当該車輪対地速度算出手段は、前記各ダイナモメータが測定した前記力と前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車のサスペンションの運動による前記自動車の各車輪の前記自動車の車体に対する移動速度と、前記走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車の車体の移動速度とより求まる、前記走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車の各車輪の対地速度を算出するものであり、前記ダイナモメータ制御手段は、各ローラについて、当該ローラの前記車輪の載置面の接線方向速度が、当該ローラに対応する車輪について前記車輪対地速度算出手段が算出した対地速度と同じ速度となるように、当該ローラの回転速度を制御するものである。
【0008】
このようなシャシーダイナモメータによれば、車輪の回転速度などの車輪の状態について、実路走行時においてサスペンションの運動に伴って変化する車輪の移動状態も含め、これを模擬しつつ試験を行うことができる。
ここで、このようなシャシーダイナモメータは、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する姿勢制御手段をさらに設けるようにしてもよい。
【0009】
このようにすることにより、車両の車体の姿勢についても実路走行を模擬しつつ試験を行うことができるようになる。
また、このようなシャシーダイナモメータは、前記対地速度算出手段を、車両の車輪の駆動力を入力とする車両の運動モデルを用いて、車両の運動をシミュレーションし、前記自動車の各車輪の前記自動車の車体に対する移動速度と、前記自動車の車体の移動速度とを算出するシミュレーション手段と、前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて、前記車両の車輪の駆動力を算出し、前記運動モデルの入力として前記シミュレーション手段に供給する駆動力算出手段とを含めて構成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係るシャシーダイナモメータによれば、サスペンションの運動に伴って変化する車輪の状態を含む車輪の状態について、実路走行を模擬しつつ試験を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1a、bに、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。ここで。図1aはシャシーダイナモメータを上方より見たようすを、図1bはシャシーダイナモメータを左右方向から見たようすを模式的に表したものである。
図示するように、このシャシーダイナモメータは、4輪駆動の自動車用のシャシーダイナモメータであり、試験車両1の車輪毎に一つずつ設けられたダイナモメータ2を備え、各ダイナモメータ2は、試験車両1の走行面となるピット3の上面に設けた開口に、ローラ21の天頂部が露出するようにピット3内に配置される。
【0012】
そして、このようなシャシーダイナモメータを用いた試験車両1の試験は、試験車両1の各車輪を各ダイナモメータ2のローラ21の天頂部に載置した状態で、4台の拘束装置4を用いて試験車両1の前端左右と後端左右の四ポイントの位置を拘束しつつ、ローラ21を回転しながら、試験車両1の車輪とローラ周面間で作用するトルクを、各ダイナモメータ2を用いて計測することにより行われる。
【0013】
また、シャシーダイナモメータには、4台の拘束装置4を用いて、試験車両1の車体の姿勢を制御する姿勢制御装置5と、ダイナモメータ2を制御するダイナモメータ制御部6も設けられている。
次に、図2に、各ダイナモメータ2の構成を示す。
ここで、図2aはダイナモメータ2を上面から見たようすを、図2bはダイナモメータ2を前面からみたようすを、図2cは図2aの断面線AAの断面によってダイナモメータ2の内部構造を模式的に表した図である。
図示するように、本実施形態に係るダイナメータは、軸受柱22によってベアリング221を介してシャフトが回動可能に支持されたローラ21と、軸受柱23によってベアリング231を介してシャフトが回動可能に支持されたステータ24とを有し、ステータ24はローラ21の内部に同軸入れ子状に配置されている。
【0014】
そして、ステータ24の外周側にはモータコイル241が巻き回されており、ローラ21の内壁側には永久磁石211が設置されており、このような構造によってステータとローラ21は、ローラ21をアウタロータとするモータとして機能し、モータコイルを駆動することにより、ローラ21に回転方向のトルクを作用させることができる。
【0015】
一方、ステータ24のシャフトは、固定柱25に軸トルク計26を介して連結されており、ローラ21に試験車両1の車輪によって加えられた力に応じた軸トルクが軸トルク計26で検出され外部に出力される。また、ローラ21に対してロータリエンコーダ27が設けられておりローラ21の回転速度が、ロータリエンコーダ27で検出され外部に出力される。
【0016】
なお、軸トルク計26は、たとえば歪みゲージであり、固定柱25とステータのシャフトとの間に働く軸トルクを、たとえば、シャフトのねじれ方向の歪み量より検出する。
次に、図3a1に、拘束装置4の構成を示す。
図示するように、拘束装置4は、ピット3の上面に固定されるベース41、ベース41に内蔵された駆動機構により図3a2に示すように上下に移動可能にベース41に支持されたZステージ42、Zステージ42に内蔵された駆動機構により図3a3に示すように前後方向(試験車両1の前後方向)に伸縮可能にZステージ42に支持されたXアーム43、Xアーム43の先端に設けられた試験車両1の四隅に設けたステーやフックなどの取り付け部と連結するジョイント44とを備えている。ここで、上述した駆動機構としては油圧シリンダやエアシリンダやボールネジ機構などを用いることができる。また、ジョイント44としては、ボールジョイントやユニバーサルジョイントなどの任意方向の軸回りの回転の自由度をもってXアーム43と取り付け部を連結するジョイント44を用いるようにする。
【0017】
さて、ここで、このような拘束装置4台を設け、その各々のジョイント44を試験車両1の四隅の取り付け部に各々連結し、姿勢制御装置5によって、各拘束装置4のZステージの高さやXアーム43の前後方向の伸縮量を制御することにより、図3bに示すように試験車両1のバウンジングを任意に制御したり、図3cに示すように試験車両1のピッチングを任意に制御したり、図3dに示すように試験車両1のローリングを任意に制御することができるようになる。
【0018】
次に、このような拘束装置4を用いて、試験車両1の車体の姿勢制御を行う姿勢制御装置5の構成について説明する。
図4に、姿勢制御装置5の構成を示す。
図示するように、姿勢制御装置5は、車両モデル入力値算出部51、シミュレータ52、拘束装置制御部53とを有している。
さて、ここで、試験の実施者は、次のように試験車両1の試験を開始する。すなわち、まず、試験車両1の各車輪が各ダイナモメータ2のローラ21の天頂部上に位置するように試験車両1を配置する。そして、そのままの状態で試験車両1の車体の位置、姿勢が拘束されるように、4台の拘束装置4を試験車両1に連結する。そして、試験車両1の試験を開始する。
【0019】
そして、このようにして開始される試験の実施中、シミュレータ52は、予め定めた車両モデルの入力値に対する応答を求めることにより、試験車両1の運動をシミュレーションし、当該シミュレーションによって各時点において得られる試験車両1の車体の移動速度とバウンジング量とピッチング量とローリング量、および、サスペンションの運動によりサスペンションのジオメトリに従って生じる各車輪の車体に対する前後方向への移動速度である車輪線速度とを算出する。そして、バウンジング量、ピッチング量、ローリング量を拘束装置制御部53に、試験車両1の車体の移動速度と各車輪の車輪線速度をダイナモメータ制御部6に出力する。
【0020】
次に、車両モデル入力値算出部51は、各ダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクと、各ダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度とより、前述したシミュレータ52における車両モデルへの入力値を算出する。
そして、拘束装置制御部53はバウンジング量、ピッチング量、ローリング量が、試験車両1のシミュレータ52によって算出されたバウンジング量、ピッチング量、ローリング量となるように4台の拘束装置4を制御することにより試験車両1の車体の姿勢を制御する。
【0021】
また、ダイナモメータ制御部6は、各車輪について、各車輪の対地移動速度を、試験車両1の車体の前後方向の移動速度に当該車輪の車輪線速度を加えた速度として求める。また、各車輪について、当該車輪の対地移動速度より、当該対地移動速度と車輪載置面の周面の接線方向の移動速度が等しくなるローラ21の回転速度を求め、当該車輪に対応するダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出しているローラ21の回転速度を参照しつつ、当該ダイナモメータ2のローラ21の回転速度が、当該ローラ21に対応する車輪について求めたローラ21の回転速度と等しくなるように、各ダイナモメータ2を制御する。
【0022】
なお、ダイナモメータ制御部6は、各ダイナモメータ2の発生トルクを、各ダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度より求まる試験車両1の車速に応じて算定される所定の目標値に制御する処理なども併せて行う。
ここで、シミュレータ52がシミュレーションに用いる車両モデルや、車両モデルに応じて定まる車両モデル入力値算出部51が算出する車両モデルへの入力値の算出法としては様々な手法が取り得るが、以下のその構成例の一つを、試験車両1を直進させる試験への適用を例にとり示す。
まず試験車両1を直進させる場合、車両のローリングは発生量が小さいものとして無視することができ、この場合には、試験車両1は、一つの前輪と一つの後輪よりなる二輪の車両モデルとして、簡易的には、上述した非特許文献1のPP.88-89に記載のようにモデル化することができる。そして、この場合、車両モデルは、図示するように、前輪及び後輪の回転運動をモデル化した回転運動モデル521と、車両の重心の運動をモデル化した重心運動モデル522と、前輪及び後輪のサスペンションの運動をモデル化したサスペンション運動モデル523とより構成することができる。
【0023】
そして、この場合、車両モデル入力値算出部51では、まず、Ffinを、試験車両1の前二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクTdymより求まる試験車両1の前二輪とローラ21との間で作用する力、Frinを試験車両1の後二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2の軸トルク計26が検出したトルクTdymより求まる試験車両1の後二輪とローラ21との間で作用する力、dwfin/dtを、試験車両1の前二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度wdymから求まる前二輪の回転角加速度、dwrin/dtを試験車両1の後二輪に対して設けられた二つのダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出したローラ21の回転速度wdymから求まる後二輪の回転角加速度とする。
【0024】
そして、車両モデルの前輪の駆動トルクTfと路面間との作用力Ffinの和が前輪を回転させる力として加えられて、前輪の回転角加速度dwfin/dtを生じるものとして前輪の駆動トルクTfを求め、車両モデルの後輪の駆動トルクTrと路面間との作用力Frinの和が後輪を回転させる力として加えられて、後輪の回転角加速度dwrin/dtを生じるものとして後輪の駆動トルクTrを求める。
【0025】
そして、シミュレータ52は、回転運動モデル521において、車両モデルの前輪の駆動トルクTfと路面間との作用力Ffの和が前輪を回転させる力として加えられて、前輪の回転角加速度が生じて、車体の前後方向(x方向)の加速度dv/dtが発生するものとして、車両モデルの入力値として算出された前輪の駆動トルクTfと、後述するように重心運動モデル522において算出される重心のx軸方向の加速度dv/dtより、前輪の路面間との作用力Ffを求める。また、同様に、回転運動モデル521において、車両モデルの入力値として算出された車両モデルの後輪の駆動トルクTrと重心運動モデル522において算出される重心のx軸方向の加速度dv/dtより、後輪と路面間との作用力Frを求める。
【0026】
但し、回転運動モデル521を省略し、車両モデル入力値算出部51で求めたFfin、Frinを、直接、回転運動モデル521で算出するFf、Frに代えて用いるようにしてもよい。
また、シミュレータ52は、重心運動モデル522において、前輪の路面間との作用力Ffと後輪と路面間との作用力Frの和が車体重心をx方向に進める力として加えられて、x方向の加速度dv/dtが生じるものとして、車体重心のx方向の加速度dv/dtと車体重心のx方向の移動速度vを算出する。
【0027】
また、シミュレータ52は、重心運動モデル522において、重力と、後述するようにサスペンション運動モデル523で算出される前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfと、後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrとの和が、車体重心を上下方向(z方向)に進める力として加えられて、z方向の加速度が生じるものとして、車体重心のz方向の速度dz/dtとz方向位置z(高さ)を算出する。
【0028】
また、シミュレータ52は、重心運動モデル522において、前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfと、後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrと、前輪の路面間との作用力Ffと、後輪と路面間との作用力Frとがx方向軸回りのモーメント力として加えられて、x方向軸回りθ方向の角加速度が生じるものとして、車体重心のθ回りの回転すなわちピッチングの回転速度dθ/dtと回転角θを算出する。
【0029】
そして、サスペンション運動モデル523において、重心運動モデル522で算出される重心のz方向位置zと回転角θとより求まる前輪サスペンションコイルの変位に応じたバネ力が前輪のサスペンションコイルにおいて生じ、重心運動モデル522で算出される重心のz方向の移動速度dz/dtと回転速度dθ/dtと回転角θと前輪サスペンションのジオメトリより求まる前輪サスペンションコイルの変位速度に応じた減衰力が、前輪のサスペンションのショックアブソーバにおいて生じ、両者の差分が前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfとなるものとして、前輪サスペンションから車体に加わる力Fsfを求める。また、同様に、重心運動モデル522で算出される重心のz方向位置zと回転角θと後輪サスペンションのジオメトリより求まる後輪サスペンションコイルの変位に応じたバネ力が後輪のサスペンションコイルにおいて生じ、重心運動モデル522で算出される重心のz方向の移動速度dz/dtと回転速度dθ/dtと回転角θとより求まる後輪サスペンションコイルの変位速度に応じた減衰力が、後輪のサスペンションのショックアブソーバにおいて生じ、両者の差分が後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrとなるものとして、後輪サスペンションから車体に加わる力Fsrを求める。
【0030】
また、サスペンション運動モデル523において、前輪サスペンションコイルの変位と、前輪サスペンションのジオメトリから、前輪サスペンションの動きによって生じる、前輪の前後方向への移動速度である車輪線速度dxwf/dtを算出し、後輪サスペンションコイルの変位と、後輪サスペンションのジオメトリから、後輪サスペンションの動きによって生じる、後輪の前後方向への移動速度である車輪線速度dxwr/dtを算出する。
【0031】
そして、拘束装置制御部53では、重心運動モデル522で算出される重心のz軸方向位置zとピッチングの回転角θに、試験車両1の車体の重心のz軸方向位置とピッチングの回転角とが一致するように、4台の拘束装置4を制御することにより試験車両1の車体の姿勢を制御する。
【0032】
また、ダイナモメータ制御部6は、重心運動モデル522で算出される車体の前後方向の移動速度vと、サスペンション運動モデル523で算出される前輪の車輪線速度dxwf/dtとを加算して、前輪の対地移動速度を求める。また、重心運動モデル522で算出される車体の前後方向の移動速度vと、サスペンション運動モデル523で算出される後輪の車輪線速度dxwr/dとを加算して、後輪の対地移動速度を求める。
【0033】
そして、ダイナモメータ制御部6は、各車輪について、当該車輪の対地移動速度より、当該対地移動速度と車輪載置面の周面の接線方向の移動速度が等しくなるローラ21の回転速度Trgrvを求め、当該車輪に対応するダイナモメータ2のロータリエンコーダ27が検出しているローラ21の回転速度dwdymが、当該ローラ21に対応する車輪について求めたローラ21の回転速度Trgrvと等しくなるように、各ダイナモメータ2を、制御信号CNTにより駆動制御する。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。
このように本実施形態によれば、車輪の回転速度などの車輪の状態について、実路走行時におけるサスペンションの運動に伴って変化する車輪の移動の影響を含め、これを模擬しつつ試験車両1の試験を行うことができる。
また、車両の車体の姿勢についても実路走行時の状態を模擬しつつ試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダイナモメータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る拘束装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る制御系統の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…試験車両、2…ダイナモメータ、3…ピット、4…拘束装置、5…姿勢制御装置、6…ダイナモメータ制御部、21…ローラ、26…軸トルク計、27…ロータリエンコーダ、41…ベース、42…Zステージ、43…Xアーム、44…ジョイント、51…車両モデル入力値算出部、52…シミュレータ、53…拘束装置制御部、521…回転運動モデル、522…重心運動モデル、523…サスペンション運動モデル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の各車輪に対応して設けられた、対応する車輪が載置されるローラと、
前記各ローラと当該ローラに対応する車輪との間に作用する力と前記ローラの回転速度とを計測するダイナモメータと、
前記ダイナモメータを制御するダイナモメータ制御手段と、
車輪対地速度算出手段とを有し、
当該車輪対地速度算出手段は、前記各ダイナモメータが測定した前記力と前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車のサスペンションの運動による前記自動車の各車輪の前記自動車の車体に対する移動速度と、前記走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車の車体の移動速度とより求まる、前記走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記自動車の各車輪の対地速度を算出し、
前記ダイナモメータ制御手段は、各ローラについて、当該ローラの前記車輪の載置面の接線方向速度が、当該ローラに対応する車輪について前記車輪対地速度算出手段が算出した対地速度と同じ速度となるように、当該ローラの回転速度を制御することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項2】
請求項1記載のシャシーダイナモメータであって、
前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とより推測される走行状態で前記車両が実路を走行した場合の前記車両の車体の姿勢を推定し、推定した姿勢と一致した姿勢となるように、前記車両の車体の姿勢を制御する姿勢制御手段を有することを特徴とするシャシーダイナモメータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のシャシーダイナモメータであって、
前記対地速度算出手段は、
車両の車輪の駆動力を入力とする車両の運動モデルを用いて、車両の運動をシミュレーションし、前記自動車の各車輪の前記自動車の車体に対する移動速度と、前記自動車の車体の移動速度とを算出するシミュレーション手段と、
前記各ダイナモメータが測定した前記力と、前記各ダイナモメータが測定した各ローラの回転速度とに基づいて、前記車両の車輪の駆動力を算出し、前記運動モデルの入力として前記シミュレーション手段に供給する駆動力算出手段とを有することを特徴とするシャシーダイナモメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−271026(P2009−271026A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124223(P2008−124223)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)