説明

シャッタ装置

【課題】動作に影響を及ぼさない独立した遮光膜の停止機能を備えながら、薄型の特徴を損なうことのないシャッタ装置を提供すること。
【解決手段】駆動電極116を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位114が光透過性に構成された下部基板101と、該下部基板101の上記駆動電極116を備えた面上に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜121とを具備するシャッタ装置において、上記下部基板101上に保持電極として用いられる共通センシング電極117と全開センシング電極119とを設け、上記遮光膜121を静止保持する際には、それら共通センシング電極117と全開センシング電極119との間に遮光膜保持回路133により電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型の静電アクチュエータで遮光膜を走行させるシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラの小型化に伴い、シャッタ装置の薄型化や低消費電力化が求められている。しかしながら、従来の電磁アクチュエータを用いたシャッタ機構では、これらの点で限界があり、走査型の静電アクチュエータで遮光膜を走行させる静電シャッタ装置が提案されている。
【0003】
このような静電シャッタ装置としては、例えば、特許文献1に開示された方法が知られている。
【0004】
以下、図9を用いてこれを簡単に説明する。
【0005】
即ち、上記特許文献1に開示のカメラのシャッタ機構では、ステータ11に帯状電極15と開口13を設け、このステータ11に対向して高抵抗コーティング層19を有するスライダ12を移動自在に設けている。そして、帯状電極15に制御装置を接続して電圧を印加し、誘導電荷形アクチュエータの動作原理を用いてスライダ12を駆動し、スライダ12をシャッタ羽根として機能させるものである。
【特許文献1】特開平8−220592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示の方法で薄型のシャッタ装置を得ることができる。しかしながら、上記特許文献1には、遮光膜(スライダ12)の停止手段については言及がない。帯状電極15に定電圧を印加することでスライダ12を停止させることはできるが、スライダ12に長時間DC電圧を印加すると、スライダ12に不要な帯電が生じて、動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
また、独立した機械的停止機構を付加すると、シャッタ装置が大型化して、薄型の特徴を損なう。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、動作に影響を及ぼさない独立した遮光膜の停止機能を備えながら、薄型の特徴を損なうことのないシャッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシャッタ装置の一態様は、駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された基板と、上記基板の上記走査電極を備えた面上に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、上記基板上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシャッタ装置の別の態様は、駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第1の基板と、上記第1の基板の上記走査電極を形成した面に対向配置され、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第2の基板と、上記第1の基板と上記第2の基板との間隙に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、上記第2の基板の、上記第1の基板に対向する面上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動作に影響を及ぼさない独立した遮光膜の停止機能を備えながら、薄型の特徴を損なうことのないシャッタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の第1実施形態について図1(A)乃至図7(D)を用いて説明する。
【0014】
図1(A)は、本実施形態に係るシャッタ装置の全体構成を示す外観斜視図である。即ち、このシャッタ装置においては、下部基板101と上部基板102とがスペーサ120(図2(A)参照)を介して一定の間隔で対向しており、その間隙には遮光膜121(図1(C)参照)が配置されている。ここで、下部基板101及び上部基板102は光透過性を有している。そして、上部基板102の表面には、シャッタ開口となる開口103以外の領域において黒色塗料104が形成されている。また、下部基板101には、共通センシング電極端子105、全閉センシング端子106、全開センシング端子107、A相駆動電極端子108、B相駆動電極端子109、C相駆動電極端子110、D相駆動電極端子111、及びエレクトロクロミック素子制御端子112,113が形成されている。
【0015】
ここで、下部基板101の詳細について、図1(B)を用いて説明する。即ち、下部基板101には、シャッタ開口となる開口103に対応する部位114(破線で示した領域)よりも若干大きな領域でエレクトロクロミック素子115が形成されている。そして、上記開口に対応する部位114の遮光膜が走行する方向(図1(B)に示した矢印の方向)に平行な2辺の両側には、所定ピッチで配置された帯状の駆動電極116が形成され、上記開口に対応する部位114の他の2辺の両側には、共通センシング電極117及び全閉センシング電極118が形成され、更に全閉センシング電極118の共通センシング電極117に対して対称な部位に、全開センシング電極119が形成されている。
【0016】
また、それらの共通センシング電極117,全閉センシング電極118,及び全開センシング電極119は、下部基板101に形成された多層配線(図示せず)によって上記の共通センシング電極端子105,全閉センシング端子106,及び全開センシング端子107にそれぞれ接続され、上記駆動電極116は、4本おきに下部基板101に形成された多層配線(図示せず)によって上記A相駆動電極端子108,B相駆動電極端子109,C相駆動電極端子110,及びD相駆動電極端子111にそれぞれ接続されている。
【0017】
次に、遮光膜121について、図1(C)を用いて説明する。即ち、遮光膜121は、遮光部位に対応する光を透過しない遮光部122と、その両側に延在するエレクトレット部123よりなる。遮光部122は遮光性と導電性を有し、エレクトレット部123には所定ピッチでエレクトレット領域124が形成されていて、この領域で高密度の負の固定電荷を有する。
【0018】
図2(A)は、図1(A)におけるA−A’線断面図である。この図に示すように、エレクトロクロミック素子115は、下層電極115−1,エレクトロクロミック材料薄膜115−2,及び上層電極115−3の3層を積層した構成となっている。また、エレクトロクロミック素子115,駆動電極116,共通センシング電極117,全閉センシング電極118,及び全開センシング電極119は、図示したように透明な絶縁膜125で覆われている。なお、上記スペーサ120は、この絶縁膜125上に形成されており、上部基板102と下部基板101の間隙を規定して、遮光膜121はその間に配置される。また、下層電極115−1及び上層電極115−3は、下部基板101の内部配線を介して上記エレクトロクロミック素子制御端子112,113にそれぞれ接続されている。
【0019】
次に、本実施形態における遮光膜121の動作について、図2(B)乃至図4を用いて説明する。なお、図3は、図1(A)におけるB−B’線断面の一部を電極の結線も含めて模式的に表したものである。
【0020】
下部基板101の駆動電極116は、図3に示すように、内部配線126(図1(B)においては図示せず)とA相駆動電極端子108,B相駆動電極端子109,C相駆動電極端子110,及びD相駆動電極端子111とを介して、A,B,C,及びDの各相の配線127に接続され、これら配線127は、4相パルス電圧を出力するドライバ128に接続される。
【0021】
図2(B)は、移動子である遮光膜121を変位させるための駆動パルスを示す図である。ドライバ128によりA,B,C,及びDの各相に順次正電圧パルスを印加するもので、ある相に正電圧パルスが印加されている時には、他の相には負電圧が印加されている。
【0022】
ここで、図2(B)に示した時刻t1,t2,t3,t4,t5における遮光膜121の動作について、図4を用いて説明する。
【0023】
即ち、時刻t1においては、駆動電極106におけるA相に対応する電極106−Aのみに正電圧が印加されて、他の電極106−B,106−C,及び106−Dには負電圧が印加される。このため、遮光膜121の負に帯電したエレクトレット部123は、駆動電極106のA相に対応する電極106−Aに引き込まれる。次に、時刻t2においては、B相に対応する電極のみに正電圧が印加されるので、エレクトレット部123は、駆動電極106のB相に対応する電極106−Bに引き込まれる。同様に時刻t3,t4においては、エレクトレット部123は、駆動電極106のC相に対応する電極106−C,駆動電極106のD相に対応する電極106−Dにそれぞれ引き込まれ、時刻t5では、エレクトレット部123は、再び、駆動電極106のA相に対応する電極106−Aに引き込まれる。これを繰り返すことによって遮光膜121を連続的に変位させることができる。
【0024】
このように、A相→B相→C相→D相の順に正電圧パルスを印加すると、図2(B)において左から右に遮光膜121が変位する。逆に、D相→C相→B相→A相の順に正電圧パルスを印加すると、図2(B)において右から左に遮光膜121を変位させることができる。
【0025】
ここで、図3におけるドライバ128の機能について図5を用いて説明する。このドライバ128に入力される制御信号としては、方向規定信号と基準パルスとの2つがある。この方向規定信号は、「ハイ(Hi)」と「ロー(Lo)」の2値の何れかが入力される。そして、方向規定信号がLoレベルの時は、図2(B)における左から右に遮光膜121を駆動し、方向規定信号がHiレベルの時は、図2(B)における右から左に遮光膜121を駆動するものである。
【0026】
時刻t1において上記基準パルスが入力されると、この時点での方向規定信号のレベルはLoであるので、基準パルスの立ち上がりをトリガとしてA相の出力が正電圧となり、B,C,及びD相の出力が負電圧となる。その後、順次正電圧となる相がB,C,D相の順に切り替わり、遮光膜121は、図2(B)の右方向に変位する。基準パルスを規定の間隔で出力することで、この過程を繰り返して、遮光膜121を更に右方向に変位させることができる。図5の例では3周期分の図2(B)における右方向への変位を繰り返した後、方向判別信号がHiレベルとなる。これ以降(即ち時刻t2以降)は、正電圧が出力される相はD,C,B,Aの順に切り替わり、遮光膜121は図2(B)における左方向に変位する。
【0027】
このように、ドライバ128は、基準パルスと方向規定信号の2つの制御信号によって、遮光膜121を任意の方向に駆動できるものである。
【0028】
次に、本実施形態に係るシャッタ装置の制御方法について、図6を用いて説明する。同図に示すように、A相駆動電極端子108,B相駆動電極端子109,C相駆動電極端子110,及びD相駆動電極端子111は、前述したドライバ128に接続されている。また、エレクトロクロミック素子制御端子112,113は、可変電圧源129を有する調光回路130に接続される。なお、エレクトロクロミック素子115は、下層電極115−1と上層電極115−3との間の電圧によって、エレクトロクロミック材料薄膜115−2の透過率を制御する調光素子であり、測光素子(図示せず)の測定値に応じるなどして、該調光回路130によって、開口103に対応する部位114を透過する光の強度を制御することができる。
【0029】
また、共通センシング電極117,全閉センシング電極118,及び全開センシング電極119に接続された共通センシング電極端子105,全閉センシング端子106,及び全開センシング端子107は、切り替えスイッチ131によって、遮光膜位置検知回路132もしくは遮光膜保持回路133に接続される。ここで、遮光膜位置検知回路132は、共通センシング電極端子105に接続される高周波交流電源134、全閉センシング端子106に接続される全閉検出用交流電流計135、及び全開センシング端子107に接続される全開検出用交流電流計136よりなる。また、遮光膜保持回路133は、直流電源137よりなる。
【0030】
次に、上記の遮光膜位置検知回路132及び遮光膜保持回路133の動作について、図7(A)乃至(D)を用いて説明する。
【0031】
図7(A)は、シャッタ全開での待機状態を示している。この時、切り替えスイッチ131は、遮光膜保持回路133に接続された状態である。ここで、遮光膜121の共通センシング電極117,全閉センシング電極118,及び全開センシング電極119に対向する部位は導電性を有する遮光部122である。従って、図7(A)の状態では、共通センシング電極117と全開センシング電極119の上部は導電性を有する遮光部122で覆われているので、電気的には共通センシング電極117と導電性を有する遮光部122の間に絶縁膜125が配置されたキャパシタと、全開センシング電極119と導電性を有する遮光部122の間に絶縁膜125が配置されたキャパシタとが直列に接続され、それが更に直流電源137に接続された状態となり、各々のキャパシタに作用する静電気力によって遮光膜121が下部基板101に吸着される。ここで、このような保持状態では、直流電源137にはほとんど電流を流す必要がなく、低容量の電源で十分であり、消費電力は非常に小さい。
【0032】
次に、シャッタを閉じる動作について説明する。上記の全開での待機状態から、まず、切り替えスイッチ131を切り替えて、遮光膜位置検知回路132に接続する。この時点では、共通センシング電極107と全開センシング電極119と導電性を有する遮光部122との間には高周波交流電源134によって静電気力が作用するが、その電圧は直流電源137の電圧と比較すると十分に小さく、その静電吸引力が遮光膜121の動作を妨げることはない。更に、切り替えスイッチ131の切り替えと同時に、ドライバ128に入力する方向規定信号をLo状態として基準パルスを出力する。これによって、遮光膜121は右方向に動き出す。図7(B)は、その動作途中の状態を示している。
【0033】
遮光膜位置検知回路132は、全閉検出用交流電流計135及び全開検出用交流電流計136の計測値を常時モニタしている。しかしながら、図7(A)の状態から図7(B)の状態では、全閉検出用交流電流計135に電流が流れる経路は存在しないため、全閉検出用交流電流計135では電流は検出されない。
【0034】
次に、遮光膜121が更に右方向に変位して、図7(C)に示した全閉状態になると、共通センシング電極117と全閉センシング電極118の上部は、導電性を有する遮光部122で覆われているので、電気的には共通センシング電極117と導電性を有する遮光部122との間に絶縁膜125が配置されたキャパシタと、全閉センシング電極118と導電性を有する遮光部122との間に絶縁膜125が配置されたキャパシタとが直列に接続され、それが更に高周波交流電源134に接続された状態となり、この回路で交流電流が流れるので、全閉検出用交流電流計135で電流が検出される。ここで、全閉検出用交流電流計135で検出される電流が所定の閾値に達した時点で、ドライバ128への基準パルスの出力を停止して、更に切り替えスイッチ131を遮光膜保持回路133に切り替える。
【0035】
この状態では、図7(D)に示すように、共通センシング電極117と全閉センシング電極118との上部は導電性を有する遮光部122で覆われているので、電気的には共通センシング電極117と導電性を有する遮光部122との間に絶縁膜125が配置されたキャパシタと、全閉センシング電極118と導電性を有する遮光部122との間に絶縁膜125が配置されたキャパシタとが直列に接続され、それが更に直流電源137に接続された状態となり、各々のキャパシタに作用する静電気力によって遮光膜121が下部基板101に吸着される。
【0036】
以上は、シャッタが全開状態から全閉状態に移行する手順を示したが、全閉状態から全開状態に移行する際も、ドライバ128に入力される方向規定信号をHi状態にして、全開検出用交流電流計136を用いることで、同様の手順に従って駆動することができる。
【0037】
また、本実施形態のような静電駆動式のシャッタ装置は、電源切断時の遮光膜121の位置が不定となるので、電源投入時の初期化動作が必要となる。どのような状態に初期化するかについては、シャッタ装置の用途によって異なるが、例えば全開状態に初期化するのであれば、ドライバ128に入力される方向規定信号をHi状態、切り替えスイッチ131を遮光膜位置検知回路132に接続する。ここで、全開検出用交流電流計136の計測値が閾値を超えていれば、既に遮光膜121が全開状態にあるので、直ちに切り替えスイッチ131を遮光膜保持回路133に切り替えて、遮光膜121を下部基板101に吸着して初期化を完了する。これに対して、電源投入時に全開検出用交流電流計136の計測値が閾値を超えていなければ、ドライバ128に基準パルスを入力して遮光膜121を図7(A)における左方向に変位させて、全開検出用交流電流計136の計測値が閾値を超えた時点で、基準パルスの出力を停止して直ちに切り替えスイッチ131を遮光膜保持回路133に切り替えて、遮光膜121を下部基板101に吸着して初期化を完了する。
【0038】
このように、共通センシング電極117、全閉センシング電極118、及び全開センシング電極119とそれに接続された切り替えスイッチ131、遮光膜位置検知回路132、及び遮光膜保持回路133によって、シャッタ装置の初期化、所定位置での確実な停止、非常に小さな消費電力での遮光膜121の保持を行なうことができる。ここで、共通センシング電極117、全閉センシング電極118、及び全開センシング電極119は、下部基板101に一体形成されているので、付加的な遮光膜保持機構、遮光膜の位置検知センサを外部に取り付ける必要はない。このため、薄型であるという静電アクチュエータを用いたシャッタ装置の特徴を損なうことなく高機能化できる。
【0039】
また、遮光膜121の保持に関しては、駆動電極116に定電圧を印加することによっても可能であるが、この方法で駆動電極116に長時間の高電界が生じると、エレクトレット部123に不要な帯電が生じて、動作に悪影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、本実施形態の方法のように、遮光膜121の導電性を有する部位(エレクトレット領域124)で静電吸着するので、エレクトレット部123に不要な帯電が生じることはない。
【0040】
更に、本実施形態にあっては、調光機能を有するエレクトロクロミック素子115が下部基板101に一体形成されているので、薄型であるという静電アクチュエータを用いたシャッタ装置の特徴を損なうことなく、調光機能を備えたシャッタ装置を得ることができる。
【0041】
なお、本実施形態にあっては、エレクトロクロミック素子115と駆動電極116、共通センシング電極117、全閉センシング電極118、全開センシング電極119及びこれらを外部回路と接続するための電極端子が全て下部基板101の一主面上に形成されているので、基板の片面のみの加工で済むため、コスト低減の意味で特に好適である。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。なお、この図8は第1実施形態における図2(A)に対応する図である。
【0043】
即ち、本実施形態に係るシャッタ装置は、上記第1実施形態と同様の機能を有するものであるが、エレクトロクロミック素子115、共通センシング電極117、全閉センシング電極118、及び全開センシング電極119が、上部基板102の遮光膜121に対向する面に形成されている点が、上記第1実施形態に係るシャッタ装置と異なる。特に図示しないが、エレクトロクロミック素子115に接続された内部配線とエレクトロクロミック素子制御端子112,113及びエレクトロクロミック素子115、共通センシング電極117、全閉センシング電極118に接続された内部配線と共通センシング電極端子105,全閉センシング端子106,及び全開センシング端子107も、上部基板102に形成されている。なお、図8においては、第1実施形態に係るシャッタ装置の各部と同じ機能を有する構成要素については同じ参照番号を用いている。
【0044】
ここで、図8は、図1(A)のA−A’線断面に対応するので、ここでは図示されないが、駆動電極116とそれらに接続された内部配線とA相駆動電極端子108,B相駆動電極端子109,C相駆動電極端子110,及びD相駆動電極端子111は、第1実施形態と同様に、下部基板101に接続されているものとする。
【0045】
このような本実施形態に係るシャッタ装置では、上部基板102と下部基板101の両方に配線パターンの形成が必要であるため、コストの面では上記第1実施形態より不利である。しかしながら、上記第1実施形態にあっては、比較的厚みのあるエレクトロクロミック素子115を下部基板101上に形成するため、駆動電極106と遮光膜121の距離をやや大きくする必要があったのに対して、本実施形態の構成にあっては、そのような制限がなく、遮光膜121と駆動電極106の距離を小さくすることができるので、エレクトレット領域124により強い静電気力を作用させることができる点で、上記第1実施形態よりも有利である。
【0046】
また、共通センシング電極117、全閉センシング電極118、及び全開センシング電極119は、導電性を有する遮光部122と対向するので、遮光膜保持回路133や遮光膜位置検知回路132に貫通電流が流れるのを防ぐために、表層に絶縁膜125を設ける必要があるが、駆動電極106については、遮光膜121の対向する部位が導電性を有さないエレクトレット部123であるため、必ずしも表層が絶縁膜で覆われている必要はない。このため、本実施形態のように共通センシング電極117、全閉センシング電極118、及び全開センシング電極119を上部基板102に設けることで、表層絶縁膜を省略する、あるいは非常に薄くして、駆動電極116とエレクトレット領域124の距離を小さくして、より強い静電駆動力を作用させることができる点で有利である。
【0047】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0048】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0049】
(1) 駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された基板と、
上記基板の上記走査電極を備えた面上に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、
上記基板上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、
上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、
を具備することを特徴とするシャッタ装置。
【0050】
(対応する実施形態)
この(1)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。それらの実施形態において、上記駆動用の走査電極は駆動電極116が対応し、上記シャッタ開口に対応する部位は開口に対応する部位114が対応し、上記基板は下部基板101が対応し、上記導電性を備える部分は遮光部122が対応し、上記遮光膜は遮光膜121が対応し、上記一対の保持電極は共通センシング電極117と全開センシング電極119が対応し、上記電圧を印加する手段は遮光膜保持回路133が対応する。
【0051】
(作用効果)
この(1)に記載のシャッタ装置によれば、動作に影響を及ぼさない独立した遮光膜の停止機能を備えながら、薄型の特徴を損なうことのないシャッタ装置を提供することができる。
【0052】
(2) 駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第1の基板と、
上記第1の基板の上記走査電極を形成した面に対向配置され、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第2の基板と、
上記第1の基板と上記第2の基板との間隙に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、
上記第2の基板の、上記第1の基板に対向する面上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、
上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、
を具備することを特徴とするシャッタ装置。
【0053】
(対応する実施形態)
この(2)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第2実施形態が対応する。その実施形態において、上記駆動用の走査電極は駆動電極116が対応し、上記第1の基板におけるシャッタ開口に対応する部位は開口に対応する部位114が対応し、上記第1の基板は下部基板101が対応し、上記第2の基板におけるシャッタ開口に対応する部位は開口103が対応し、上記第2の基板は上部基板102が対応し、上記導電性を備える部分は遮光部122が対応し、上記遮光膜は遮光膜121が対応し、上記一対の保持電極は共通センシング電極117と全開センシング電極119が対応し、上記電圧を印加する手段は遮光膜保持回路133が対応する。
【0054】
(作用効果)
この(2)に記載のシャッタ装置によれば、動作に影響を及ぼさない独立した遮光膜の停止機能を備えながら、薄型の特徴を損なうことのないシャッタ装置を提供することができる。
【0055】
(3) 上記保持電極を二対備え、
その内の一対が、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全開位置にある状態を保持し、
他の一対が、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全閉位置にある状態を保持する、
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載のシャッタ装置。
【0056】
(対応する実施形態)
この(3)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。それらの実施形態において、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全開位置にある状態を保持する一対の保持電極は共通センシング電極117と全開センシング電極119が対応し、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全閉位置にある状態を保持する一対の保持電極は共通センシング電極117と全閉センシング電極118が対応する。
【0057】
(作用効果)
この(3)に記載のシャッタ装置によれば、全開と全閉の両方の状態を保持できる。
【0058】
(4) 前記二対の保持電極が、第1の電極と第2の電極とよりなる一対と、上記第1の電極と第3の電極とよりなる一対と、からなることを特徴とする(3)に記載のシャッタ装置。
【0059】
(対応する実施形態)
この(4)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。それらの実施形態において、上記第1の電極は共通センシング電極117が対応し、上記第2の電極は全開センシング電極119が対応し、上記第3の電極は全閉センシング電極118が対応する。
【0060】
(作用効果)
この(4)に記載のシャッタ装置によれば、全開状態保持に用いる電極と全閉状態保持に用いる電極とを一部共通とすることで、電極の数を少なくできる。
【0061】
(5) 上記保持電極は、交流電圧が印加されることで位置検知電極として機能し、
上記位置検知電極に流れる電流を検知する手段を更に具備する、
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載のシャッタ装置。
【0062】
(対応する実施形態)
この(5)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。それらの実施形態において、上記交流電圧は高周波交流源134が対応し、上記電流を検知する手段は全開検出用交流電流計136が対応する。
【0063】
(作用効果)
この(5)に記載のシャッタ装置によれば、電極の数を増やすことなく、遮光膜の位置検知機能を更に備えることができる。
【0064】
(6) 上記遮光膜がシャッタ開口に対して全開位置又は全閉位置にあることを検知としたとき、上記遮光膜を静止保持することを特徴とする(5)に記載のシャッタ装置。
【0065】
(対応する実施形態)
この(6)に記載のシャッタ装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0066】
(作用効果)
この(6)に記載のシャッタ装置によれば、確実に全開又は全閉となった状態で保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係るシャッタ装置の全体構成を示す外観斜視図、(B)は下部基板の構成を説明するための平面図であり、(C)は遮光膜の構成を説明するための平面図である。
【図2】(A)は図1(A)におけるA−A’線断面図であり、(B)は遮光膜を変位させるための駆動パルスを示す図である。
【図3】図1(A)におけるB−B’線断面の一部を電極の結線も含めて模式的に表した図である。
【図4】図2(B)に示した時刻t1,t2,t3,t4,t5における遮光膜の動作を説明するための図である。
【図5】ドライバの機能を説明するための入力信号と出力信号の波形図である。
【図6】第1実施形態に係るシャッタ装置を制御するための構成を示す回路図である。
【図7】(A)はシャッタ全開での待機状態を示す断面図、(B)は遮光膜移動中の状態を示す断面図、(C)はシャッタ全閉状態を示す断面図であり、(D)はシャッタ全閉での遮光膜保持状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るシャッタ装置の断面図である。
【図9】特許文献1に開示されたカメラのシャッタ機構の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
101…下部基板、 102…上部基板、 103…開口、 104…黒色塗料、 105…共通センシング電極端子、 106,106−A,106−B,106−C,106−D…駆動電極、 107…共通センシング電極、 108…A相駆動電極端子、 109…B相駆動電極端子、 110…C相駆動電極端子、 111…D相駆動電極端子、 112,113…エレクトロクロミック素子制御端子、 114…開口に対応する部位、 115…エレクトロクロミック素子、 115−1…下層電極、 115−2…エレクトロクロミック材料薄膜、 115−3…上層電極、 116…駆動電極、 117…共通センシング電極、 118…全閉センシング電極、 119…全開センシング電極、 120…スペーサ、 121…遮光膜、 122…遮光部、 123…エレクトレット部、 124…エレクトレット領域、 125…絶縁膜、 126…内部配線、 127…配線、 128…ドライバ、 129…可変電圧源、 130…調光回路、 131…切り替えスイッチ、 132…遮光膜位置検知回路、 133…遮光膜保持回路、 134…高周波交流電源、 135…全閉検出用交流電流計、 136…全開検出用交流電流計、 137…直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された基板と、
上記基板の上記走査電極を備えた面上に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、
上記基板上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、
上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、
を具備することを特徴とするシャッタ装置。
【請求項2】
駆動用の走査電極を備えると共に、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第1の基板と、
上記第1の基板の上記走査電極を形成した面に対向配置され、少なくともシャッタ開口に対応する部位が光透過性に構成された第2の基板と、
上記第1の基板と上記第2の基板との間隙に配置され、その一部が導電性を備える、静電駆動で走行する遮光膜と、
上記第2の基板の、上記第1の基板に対向する面上に設けられた少なくとも一対の保持電極と、
上記遮光膜を静止保持する際に、上記保持電極間に電圧を印加する手段と、
を具備することを特徴とするシャッタ装置。
【請求項3】
上記保持電極を二対備え、
その内の一対が、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全開位置にある状態を保持し、
他の一対が、上記遮光膜がシャッタ開口に対して全閉位置にある状態を保持する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシャッタ装置。
【請求項4】
前記二対の保持電極が、第1の電極と第2の電極とよりなる一対と、上記第1の電極と第3の電極とよりなる一対と、からなることを特徴とする請求項3に記載のシャッタ装置。
【請求項5】
上記保持電極は、交流電圧が印加されることで位置検知電極として機能し、
上記位置検知電極に流れる電流を検知する手段を更に具備する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシャッタ装置。
【請求項6】
上記遮光膜がシャッタ開口に対して全開位置又は全閉位置にあることを検知としたとき、上記遮光膜を静止保持することを特徴とする請求項5に記載のシャッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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