説明

シャッタ

【課題】部品点数を削減させ、組み立てを容易にし、且つスムーズな開閉を可能にするシャッタを提供する。
【解決手段】本シャッタでは、ヒンジ2は、断面略C字状の筒状受け部11と、その内部に回動自在に差し込まれる差込片12とから構成する。筒状受け部11及び差込片12は、スラット1の両長辺にそれぞれ一体的に設けられ、筒状受け部11の一方の開放端は、差込片12の一方の面に設けられるR状凹部13が回動自在に係合するR状凸部23とし、他方の開放端は、R状凸部23よりも外側に張り出してスラット1の回動を阻止する回動阻止部(延長端24)とし、筒状受け部11の両側方開放部には、ピン部材4の軸部41を圧入させた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ、特に、複数のスラットが相互にヒンジを介して屈曲自在に連結されているシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工室の開口部等を開閉するシャッタは、通常、複数のスラットが相互にヒンジを介して屈曲自在に連結されている。
図5に示す従来のシャッタでは、帯状板からなる複数のスラット1a,1b,1cの長辺相互を連結させるヒンジ2は、スラットと別体に設けられ、断面略C字状の外筒20と、外筒20内に入れ子状態に挿入させる断面略C字状の内筒21とから構成されている(特許文献1)。これによれば、内筒21を外筒20内にて相互に回動させることで隣接するスラット1a,1bが屈曲自在となるので、ガイドレール3の湾曲部30にも対応させることができ、不使用時には巻き取っておくことも可能である。
【0003】
図6に示す従来のシャッタでは、ヒンジ2をスラット1a,1bとは別体に構成すると共に、上記ヒンジ2の両側に設けた側溝22に、スラット1a,1bの長辺側の端縁をそれぞれ回動自在に嵌め込む構成とする(特許文献2)。側溝22内には、スラット1a,1bの回動支点となる断面円弧状の凸部23が形成されてあり、スラット1a,1bには、各長辺に沿って、上記凸部23に回動自在に係合する凹部13が形成されてあり、スラットを側溝22内に差し込んで、凹部13を凸部23に係合させることにより、スラット1a,1bは、凸部23と凹部13との係合部を回動支点として所定角度屈曲させることができる。これによれば、ヒンジ2を外筒20と内筒21との入れ子によって構成しているものに比べて、スラット1a,1bの、ヒンジ2に対する摺接面積が小さく設定されているため、スラット1a,1bとヒンジ2との間に生じる摩擦抵抗は小さい。よって、ガイドレール3の湾曲部30を通過させる際にも、小さな力でスムーズにシャッタを開閉することができる。
【特許文献1】特開2002−155680号公報
【特許文献2】特許第3960927号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシャッタでは、ヒンジ2はスラット1a,1bとは別体に構成されているため、部品点数を増加させてしまい、ヒンジ2の加工に手間がかかるため、その分、コストが高くなる上に、スラット1a,1bをヒンジ2の側溝22,22に差し込んでシャッタを組み立てる組み立て作業が面倒であるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減させると共に組み立てを容易にし、且つスムーズな開閉を可能にするシャッタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシャッタは、
帯板状の複数のスラットがヒンジを介して相互に屈曲自在に連結されているシャッタにおいて、
上記スラットには、先端辺全域に断面略C字状の筒状受け部が一体に設けられると共に、後端辺に上記筒状受け部内に回動自在に差し込まれる差込片が一体に設けられ、
上記筒状受け部の一方の開放端がR状凸部を構成し、上記差込片の一方の面にR状凹部が形成されてこのR状凹部が上記R状凸部と回動自在に係合されて隣接するスラットが相互に屈曲自在に連結され、
上記筒状受け部の他方の開放端は、上記R状凸部よりも外側に張り出して上記スラットを回動させたとき上記差込片の他方の面に当接してスラットの回動を阻止する回動阻止部とされ、
上記差込片は、両端部が切り欠かれた切欠部が設けられ、この切欠部に相当する上記筒状受け部の両端部に空間部が形成され、この筒状受け部の各空間部には、頭部がローラ等となったピン部材の軸部が圧入されてスラットの抜け止めとしたものである。
【0007】
上記構成より、スラットの先端辺と後端辺にヒンジを構成する筒状受け部と差込片を一体に設けるので、スラットとヒンジが別体に設けられているものに比べて部品点数を削減させることができ、また、製造が容易となるから製造コストを抑えることができる。
また、一つのスラットの差込片を他のスラットの筒状受け部内に差し込んで、筒状受け部の両端部の空間部にピン部材の軸部を圧入させるだけで、スラットの連結が可能となる。従って、シャッタの組み立ても容易となる。
さらに、ピン部材の頭部をガイドレール内に配置させることができ、これにより、ピン部材を、差込片の筒状受け部からの抜け止め手段と、ガイドレール間におけるスラットの保持手段との両方に機能させることができる。そして、ピン部材の頭部がローラの場合はガイドレール内に転動させることができる。従って、シャッタのスムーズな開閉が可能となる。
【0008】
上記ピン部材の軸部の断面形状は、上記筒状受け部の断面略C字状の内周形状に略一致する大きさ形状に形成してもよい。
これにより、軸部を筒状受け部の側方開放端に密に嵌入させることができる。従って、ピン部材が筒状受け部に強固に固定され、スラットの連結を良好に保持することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、部品点数を削減させると共に組み立てを容易にし、且つスムーズな開閉を可能にするシャッタが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、実施の形態によるシャッタは、例えば、工作機械や実験装置等の産業用又は家庭用の機械器具を収納する収納庫33の開口部を開閉自在にするために使用される。収納庫33の正面の外枠部31には、一対のガイドレール33がそれぞれ配設されている。そして、この一対のガイドレール33間には、ヒンジ22を介して屈曲自在に連結された複数のスラット1が摺動可能に架設保持されている。
【0011】
図2、図3に示すように、各スラット1は、長方形状に形成された帯状板の一方の長辺(先端辺)には、その長辺全域に沿って断面略C字状の筒状受け部11が一体的に設けられ、他方の長辺(後端辺)には、その両端を除く中央域に筒状受け部11内に側方から差し込み可能な差込片12が一体的に延長形成されている。すなわち、この差込片12の両端部が切り欠かれた切欠部16となっている(図2参照)。各スラット1は、一方の長辺から他方の長辺にかけて表側(このシャッタが巻き取りロールに巻き取られた状態での外側)に凸の緩やかなカーブRを描くように湾曲されている(図3参照)。
【0012】
筒状受け部11は、長手方向に沿って外方へ開放されている(図3参照)。この筒状受け部11の開放端は、スラット1の上記表側の面から連続して延長する延長片の延長端24と、スラット1の裏側へ突出する円弧状部の先端に設けられたR状凸部23とから構成されている。R状凸部23は、延長端24よりも内方に位置するように設定されており、これにより、筒状受け部11の断面形状は、変形C字状を呈する態様となっている。延長端24からR状凸部23に至る開放端側の幅L1は、筒状受け部11の奥側の幅L2よりも小さく設定されている。
【0013】
差込片12は、スラット1の他方の長辺からスラット1の上記裏側へ一段下がった位置から延長形成された板状片である。この差込片12の肉厚は、上記筒状受け部11の開放端側の幅L1よりも厚肉で且つ奥側の幅L2よりも薄肉に設定されている。また、差込片12の裏面には、その長手方向全域に沿って、上記R状凸部23に回動自在に係合されるR状凹部13が形成されている。
【0014】
そして、R状凹部13をR状凸部23に対応させて、差込片12を筒状受け部11の一側方からスライドさせて挿入すると、複数のスラット1が連結される。このとき、差込片12においてR状凹部13よりも先端側12aの肉厚は、上記筒状受け部11の開放端側の幅L1よりも厚肉に構成されているから、筒状受け部11内に差し込まれた状態の差込片12は、スラット1の長辺に対して直角方向に脱落することはない。また、R状凸部23に差込片12のR状凹部13を挿入した状態では、差込片12は、R状凹部13とR状凸部23との係合部を回動支点として回動自在に係止される。これにより、隣接するスラット1は、筒状受け部11と差込片12からなるヒンジ2となって、このヒンジ2で屈曲可能に連結される連結態様となる。
【0015】
一方、図3の左端に示すヒンジ2のように、差込片12の表面が筒状受け部11の延長端24に当接した時点で、上記差込片12に続くスラット1のそれ以上の回動は阻止される。すなわち、延長端24がスラット1の回動を阻止する回動阻止部として機能する。そして、一方のスラット1が他方のスラット1の延長端24に当接して回動が阻止された状態では、隣接する互いのスラット1は、略一直線上に位置するように設定されている。
【0016】
また、差込片12は、スラット1の長辺の両端を除いた中央域に突設されているから、差込片12を筒状受け部11内に差し込んで連結させた複数のスラット1の短辺相互を揃えると、筒状受け部11内における差込片12の両側方には、差込片12の両端部を切り欠いた切欠部16に相当する領域に空間部10が形成される(図2参照)。この空間部10には、ピン部材4の軸部41を圧入させる。
【0017】
ピン部材4は、図3中の吹出し内に示すように、軸部41の先端の頭部は、ビス42にて回転自在に取り付けられたローラ40となっている。また、軸部41の断面形状は、上記した筒状受け部11の内部形状に合致する大きさ形状に形成されている。従って、上記軸部41を筒状受け部11の空間部10に強制的に嵌め込むことにより、軸部41が空間部10内に圧入されて、ピン部材4が保持される。これにより、差込片12は、筒状受け部11から側方への脱落が防止できる。
【0018】
以上の実施の形態のシャッタによれば、一つのスラット1の両長辺(先端辺、後端辺)に沿ってそれぞれヒンジ2を構成する筒状受け部11及び差込片12を一体的に設けるから、ヒンジ2が別体に設けられているものに比べて部品点数が削減される。また、一つのスラット1の筒状受け部11に別のスラット1の差込片12を、R状凹部13がR状凸部23に対応するように挿入し、筒状受け部11の両側方にそれぞれ開放する空間部10にそれぞれピン部材4の軸部41を圧入させることで、複数のスラット1が連結するシャッタを完成させることができ、シャッタの組み立ても容易である。
【0019】
そして、この連結状態にある複数のスラット1の短辺側には、ピン部材4のローラ40が外方へ突出する態様となる(図2参照)。従って、このローラ40を、図3に示すように、ガイドレール3の内方開放の溝部32内に係止させることにより、スラット1は一対のガイドレール3間に架設される態様となる。このとき、上記ローラ40は、軸部41に対して回転可能となっているから、ローラ40は、溝部32内を転がりながら移動可能となる。従って、図1に示すシャッタの場合、支持部14を持って上方に引き上げると、各スラット1から両側方にそれぞれ突出しているローラ40がガイドレール3の溝部32内を転がって移動する。このことから、比較的大きく重量のあるシャッタであっても、収納庫33の開口部をスムーズに開閉させることができる。
【0020】
また、ガイドレール3に湾曲部30が形成されている場合(図3参照)には、差込片12を筒状受け部11内で回動させることにより、隣接するスラット1間の角度を湾曲部30の湾曲度合いに応じて屈曲させることができ、連結された複数のスラット1は、湾曲部30をスムーズに通過することができる。
【0021】
さらに、各スラット11は、表側に凸となる緩やかなカーブRを描くように湾曲されているから、湾曲部30に対応させ易く、しかも、図4に示すような巻取りロール15に巻き取る巻き上げ式シャッタの場合に巻き取り易くなる。
【0022】
また、隣接するスラット1を屈曲回動させるときに、筒状受け部11と差込片12とが摺接する面積は、係合凹部13のR状凸部23への係合部分のみであるから、両者間における摺接面積は小さい。従って、筒状受け部11と差込片12との間に生じる摩擦抵抗も小さくなり、連結状態にあるスラット1を、ガイドレール3の湾曲部30を通過させたり、巻取りロール15に巻き取ったりする際に、小さな力でスラット1をヒンジ2で所定の角度に屈曲させることができ、シャッタの開閉を一層スムーズに行うことができる。
【0023】
また、ヒンジ2としての筒状受け部11と差込片12を一体的に形成させたスラット1は、アルミニウム又は合成樹脂の押し出し成形で容易に製造及び加工可能であるから、製造コストも安価となる。
【0024】
また、スラット1の短辺方向の幅を小さく設定すれば、シャッタの巻径が小さくなり巻取りロール15の径を小さくでき、その結果、シャッタの小型化も可能となる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されず、本発明の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。例えば、上記実施の形態では、ガイドレール3の溝部32内を移動させ易くするために、ピン部材4の頭部は、軸部41に対して回転可能なローラ40としたが、スラット1の重量が軽い場合では、ピン部材4の頭部を回転可能に装着させる必要はなく、頭部を軸部41に一体的に設ける樹脂の一体成形品としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態によるシャッタを採用した収納庫を示す正面図である。
【図2】実施の形態によるシャッタのみを示す説明図である。
【図3】実施の形態によるシャッタをガイドレールに保持させた状態を示す部分拡大図である。
【図4】実施の形態によるシャッタを巻取りロールに巻き取る様子を示す部分拡大図である。
【図5】従来のシャッタをガイドレールに保持させた状態を示す部分拡大図である。
【図6】従来の他のシャッタのヒンジを示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
1 スラット
2 ヒンジ
4 ピン部材
10 空間部
11 筒状受け部
12 差込片
13 R状凹部
16 切欠部
23 R状凸部
24 延長端(回動阻止部)
41 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状の複数のスラットがヒンジを介して相互に屈曲自在に連結されているシャッタにおいて、
上記スラットには、先端辺全域に断面略C字状の筒状受け部が一体に設けられると共に、後端辺に上記筒状受け部内に回動自在に差し込まれる差込片が一体に設けられ、
上記筒状受け部の一方の開放端がR状凸部を構成し、上記差込片の一方の面にR状凹部が形成されてこのR状凹部が上記R状凸部と回動自在に係合されて隣接するスラットが相互に屈曲自在に連結され、
上記筒状受け部の他方の開放端は、上記R状凸部よりも外側に張り出して上記スラットを回動させたとき上記差込片の他方の面に当接してスラットの回動を阻止する回動阻止部とされ、
上記差込片は、両端部が切り欠かれた切欠部が設けられ、この切欠部に相当する上記筒状受け部の両端部に空間部が形成され、この筒状受け部の各空間部には、頭部がローラ等となったピン部材の軸部が圧入されてスラットの抜け止めとしたシャッタ。
【請求項2】
請求項1に記載のシャッタにおいて、
上記ピン部材の軸部の断面形状は、上記筒状受け部の断面略C字状の内周形状に略一致する大きさ形状に形成したシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−215760(P2009−215760A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59598(P2008−59598)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)