説明

シャリ保温装置を備えた寿司ロボット

【解決手段】 移動手段19を備えたシャリ保温装置Aと、保温装置A上に着脱自在に載置された寿司ロボットBとからなり、シャリ保温装置Aは、加熱手段13を備えた保温装置本体10と、同保温装置本体10に引き出し自在に内装され、周壁に保温用中空部を有する保温用コンテナ12とを備えている。
【効果】 間接熱によりシャリを保温できるため、水蒸気の発生しない寿司飯の保温が可能となり、かつシャリ保温装置上に寿司ロボットを載せた構造であるために、寿司ロボットのシャリが少なくなった場合、この保温装置に適温に保温されたシャリを直ちに補給することができ、寿司ロボットの効率的運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシャリ保温装置を備えた寿司ロボットに関する。
【0002】
【従来の技術】握り寿司に使用されるシャリは、上白米を普通の飯よりもやや堅めに炊き、米1升につき酢を0.7合、塩をさかずき1杯等の割合でとかしたものを合わせて作られる。作られた寿司飯は、あおいで冷まし、人肌温度として使用される。
【0003】寿司飯の温度は高すぎてもだめであり、また冷めてしまったもの、特に温度が8度以下に冷め澱粉質がベータ化したものは、廃棄処分にされるなど、温度管理が重要とされている。
【0004】従来、このような寿司飯の保存方法として、最も一般的には木製の寿司桶が使用されていたが、従来の寿司桶では保温効果が全くないため、近年、プラスチック製の保温容器が使用されるようになった。
【0005】この、保温用コンテナは加工が容易であり、上面を開口した保温容器本体と、開口部を閉塞する開閉蓋とを備え、保温容器本体の底盤及び側壁には、断熱用の中空部が形成されている。このような構造によって、保温容器本体に収容された人肌温度の寿司飯が容器との熱伝導によって冷めるのをある程度は防止することができ、この保温容器本体を作業台の上等において、この保温容器本体から必要な量のシャリを摘み出して握り寿司用のシャリ玉が作られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この保温用コンテナは、収容された寿司飯の熱を外部に逃がさないようにするものに過ぎず、保温可能な時間は室温で約3時間程度であり、長時間の保温効果は期待できない。したがって、この保温用コンテナを用いた場合にも、前日に炊いたシャリ等は廃棄処分しなければならないのが実情である。
【0007】この対策として、一般家庭において使用されている保温ジャーを使用することが考えられるが、この保温ジャーは、ご飯を収容する容器本体が加熱され、この容器の熱が直熱として直接ご飯に伝導する。このため、シャリの表面が乾燥して堅くなったり、また、熱で発生した蒸気が溜まり、シャリの品質が低下するという問題があり、湿度及び温度管理が難しい寿司飯の保温には不向きである。
【0008】また、上記した保温用コンテナの断熱用中空部に保温用のお湯を注入し、これによって保温効果を高めようとする試みがなされているが、これも直接保温容器の内壁の温度を高めるものであるため、上記した保温ジャーと同じような問題を生じる。
【0009】一方、近年の寿司職人不足や低コスト化の要求から、機械によって握り寿司や巻き寿司などを製造する、いわゆる寿司ロボットが開発され、特にファミリー向けの郊外レストラン等において使用されるようになった。寿司ロボットの基本構造は、握り寿司用の場合、寿司飯を収容する寿司飯収容部、この収容部内の寿司飯を一口大のシャリ玉に形成する形成部等からなり、ほぼ直方体状に形成されたシャリ玉の上に自動であるいは、従来と同じ方法によって寿司種を載せて握り寿司が作られる。
【0010】寿司ロボットでは、ベテランの職人と比べても早い速度でシャリ玉を製造するため、従来、寿司飯収容部の寿司飯がなくなると、機械の空回りを防止するために、一旦機械を止め、新しく作った寿司飯か、または予め作り保管しておいた寿司飯を空になった寿司飯収容部内に補給し、その後に再度作動させるという方法を採っている。
【0011】本発明は上記従来の問題点を解決するもので、収容されたシャリを乾燥させることなく長時間にわたって適温に保持可能とし、かつ寿司ロボットの効率的運転を可能にすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、従来保温用として使用されているプラスチック製の保温容器を加熱することにより、プラスチック製容器に収容されたシャリを乾燥させることなく、しかも温度を人肌に保つことができることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】すなわち本発明は、移動手段を備えたシャリ保温装置と、同保温装置上に着脱自在に載置された寿司ロボットとからなり、前記シャリ保温装置は、加熱手段を備えた保温装置本体と、同保温装置本体に引き出し自在に内装され、周壁に保温用中空部を有する保温用コンテナとを備えていることを特徴とする。
【0014】本発明においては、保温装置本体に備えられた加熱手段により、まず、保温装置本体内面と保温用コンテナの外面との間にある空気が加熱され、この加熱された空気によって、保温用コンテナの側面及び底面が暖められ、さらに暖められた保温用コンテナの外壁熱が中空部によって緩和され間接熱として内壁面へと伝わることとなる。この内壁面の熱が容器内に収納されたシャリへと徐々に伝達され、これによって、水蒸気の発生しない保温用の熱源とすることができる。
【0015】ここで、周壁に保温用中空部を有する保温用コンテナとしては、積水化学株式会社製の製品番号(SP20D)を好適に使用することができる。
【0016】また、シャリ保温装置上に寿司ロボットを載せた構造であるために、寿司ロボットのシャリが少なくなった場合、この保温装置に適温に保温されたシャリを直ちに補給することが可能となる。
【0017】また、ここで使用する寿司ロボットとしては、従来公知の握り寿司ロボットや巻き寿司用ロボット等を用いることができ、これをシャリ保温装置の上に着脱自在に載置することによって、一台のシャリ保温装置で使用目的に応じて各種寿司ロボットに交換して用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態であるシャリ保温装置を備えた寿司ロボットの斜視図、図2は図1に示す寿司ロボットを取り外しシャリ保温装置のみとした斜視図で、Aはシャリ保温装置、Bはシャリ保温装置Aの上部に着脱自在に載置された握り寿司用の寿司ロボットである。
【0019】シャリ保温装置Aは、保温装置本体を構成するステンレス鋼製のフレーム部材10、フレーム部材10に引き出し自在に収納される移動枠11を備え、この移動枠11内に、断熱用の中空部が形成された従来公知の保温用コンテナ12が着脱自在に収納される。なお、保温用コンテナ12は、保温用コンテナ12と同材質で形成された断熱蓋12aを有し、通常はこの断熱蓋12aを閉じた状態で収納されている。
【0020】図1に示すフレーム部材10を、移動枠11を引き出した状態で示す図3を参照して、フレーム部材10の内部底面、すなわち、保温用コンテナ12の下方位置には、加熱手段としてのヒータ13が設置されている。このヒータ13はベース板14上に取り付けられた凸状の仕切板15の上に配置され、ヒータ13の上面及び側面は多数の貫通孔16aを有するパンチングメタル16によって覆われている。
【0021】このような構造によって、ヒータ13の熱をパンチングメタル16の貫通孔16aから効率よく上昇させることができ、上方に収納される保温用コンテナ12に対して均一でムラのない加熱効果が得られる。また、凸状の仕切板15の上にヒータ13を配置することにより、ヒータ13の下方に仕切板15で区画された空間が形成されるため、ヒータ13で発生した熱の下方への拡散を防止することができる。
【0022】移動枠11の底部には、全面に貫通孔17aを有するステンレス鋼製の底板17が着脱自在に取り付けられており、保温用コンテナ12を移動枠11内に収納すると、保温用コンテナ12の底面が底板17上に載った状態となる。また、保温用コンテナ12と移動枠11側面との間には1ミリ程度の隙間が形成される。
【0023】図1に戻って、18はヒータ13の温度をコントロールするダイヤル式の温度コントローラ部で、保温用コンテナ12近傍に温度センサが設けられ、この検知温度によってヒータ13のオンオフをする温度調整機構が設けられている。
【0024】19はフレーム部材10の下端四隅に設けられたストッパ付きのウレタンキャスターで、これによって、移動枠11にシャリを入れた保温用コンテナ12を収納した場合にも、狭い空間へ容易に移動させることができる。
【0025】上記構成において、シャリ保温装置Aのフレーム部材10内に備えられたヒータ13によって、フレーム部材10内の空気は加熱されて熱気となり、パンチングメタル16の貫通孔16a及び底板17の貫通孔17aを通過して上昇し、移動枠11内壁と保温用コンテナ12外面との間にある空間内へと移動拡散する。この加熱された空気によって、保温用コンテナ12の側面及び底面が暖められ、さらに暖められた保温用コンテナ12の外壁熱が中空部によって緩和され間接熱として内壁面へと伝わることとなる。この内壁面の熱が容器内に収納されたシャリへと徐々に伝達され保温用の熱源となる。
【0026】このように本発明のシャリ保温装置Aによれば、ヒータ13の熱が容器内に収納されたシャリへと徐々に伝達されるため、これによって、従来の保温装置のような水蒸気の発生しない保温が可能となる。
【0027】実際に上記シャリ保温装置Aを用い、ヒータ13の温度を50°Cとした場合、保温用コンテナ12に収容されたシャリの温度を38°C前後、すなわち、乾燥や蒸気の発生しない人肌温度とすることができた。また、前日に炊いた冷めた寿司飯をこのシャリ保温装置によって加熱保温したところ、約5〜6時間で元のふっくらとした状態に戻すことができた。
【0028】次いで、図1に示す寿司ロボットBについて詳細に説明する。図1に示す寿司ロボットBの、30は寿司飯を収容する寿司飯収容部、31はこの収容部30内の寿司飯を一口大のシャリ玉に形成するシャリ玉形成部である。このシャリ玉形成部31で大まかな形に形成されたシャリ玉は、ターンテーブル32上に排出される。ターンテーブル32には複数の開口部が放射状に形成されており、この開口部に下型34が上下動可能に配置され、またターンテーブル32の回転方向下流側には、この下型34とで、排出されたシャリ玉を所定形状に成形する上型33が配設されている。この上型33は、ターンテーブル32の回転及び下型34の上下動と連動し、昇降装置35によって上下動する。36はシャリ玉上に載せた種を押さえるための種押さえ装置である。
【0029】図4は、図1に示す寿司ロボットBの上型33及び下型34からなる押型を示す斜視図であり、この上型33及び下型34で上下から寿司飯を挟み込むことによって、図8に示すシャリ玉10を形成する。
【0030】ここで、上型33の詳細を示す図5(a)、(b)、(c)、下型34の詳細を示す図6(a)、(b)、(c)、及び、上型33及び下型34を実際の使用状態に即して示す図7を参照して上型33及び下型34について説明する。
【0031】上型33は軟質の合成樹脂製で、下方両側長手方向に垂れ部33a,33bを有し、中心位置に下方に大きく突出する中割れ部形成用の突起部33cを有する。また、図5(a)に明瞭に示すように、上型33の長手方向には、シャリ玉の上面を上側に湾曲させるための湾曲面33dを形成している。
【0032】下型34は上型33と同様の軟質の合成樹脂製で、上型33の突起部33cに対応する位置に上方に突出する補助突起34aを形成し、さらに長手方向の前後には、第1の傾斜部34b、及び、この第1の傾斜部34bよりも急勾配で第1の傾斜部34bに連続する第2の傾斜部34cを形成している。
【0033】この上型33及び下型34で、上下から略直方体に形成された寿司飯を挟み込むことによって、図8R>8に示すように、上面40aを上側に向かって湾曲させ、長手方向には、上側に突起部33cで形成された上部中割れ部41aを、また底面長手方向に、補助突起34aにより形成された下部中割れ部41bが形成され、中央部でのみ繋がった状態のシャリ玉40となる。また、第1の傾斜部34b及び第2の傾斜部34c対応するように、湾曲した上面の40a前後端からそれぞれ下方内側に傾斜する第1の傾斜部42と、第1の傾斜部42よりも急勾配で第1の傾斜部42に連続する第2の傾斜部43が形成される。このシャリ玉40上に寿司種を載せることによって図9に示す握り寿司が完成する。
【0034】このようにシャリ玉40に中割れ部41を形成することにより、シャリ玉40を所定形状に保持しつつ、かつ握り寿司を食べるときにシャリ玉40がほぐれ易くなる。また、食べる際に中割れ部の空気も同時に口の中に入るため、作って時間を経過した場合にも、ふんわりとした状態で食べることができる。
【0035】さらに、シャリ玉40の底部前後に第1及び第2の傾斜部42,43を形成することにより、美観的に優れるばかりでなく、従来の寿司ロボットで形成されたシャリ玉のような角張りがなくなり、自動成形した場合の下型の抜けを良くし、また、成形されたシャリ玉底部の欠損を少なくすることができる。
【0036】
【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏することができる。
【0037】(a)本発明においては、間接熱によりシャリを保温できるため、水蒸気の発生しない寿司飯の保温が可能となり、かつシャリ保温装置上に寿司ロボットを載せた構造であるために、寿司ロボットのシャリが少なくなった場合、この保温装置に適温に保温されたシャリを直ちに補給することができ、寿司ロボットの効率的運転が可能となる。
【0038】(b)寿司ロボットをシャリ保温装置の上に着脱自在に載置することによって、一台のシャリ保温装置で使用目的に応じ、握り寿司用や巻き寿司用など各種寿司ロボットに交換して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるシャリ保温装置を備えた寿司ロボットの斜視図である。
【図2】図1に示すシャリ保温装置のみを示す斜視図である。
【図3】図1に示すシャリ保温装置の移動枠を引き出した状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示す寿司ロボットに使用した押型の斜視図である。
【図5】(a)は上型の正面図、(b)は同側面断面図、(c)は同底面図である。
【図6】(a)は下型の平面図、(b)は同正面図、(c)は同側面断面図である。
【図7】(a)は上型及び下型を実際の使用状態に即して示す正面断面図、(b)はシャリ玉の成形状態を示す一部切欠正面図である。
【図8】(a)は図4に示す押型で形成したシャリ玉の正面図、(b)は同平面図、(c)は同側面図、(d)は(b)のA−A線断面図である。
【図9】完成した握り寿司の斜視図である。
【符号の説明】
A シャリ保温装置
B 寿司ロボット
10 フレーム部材
11 移動枠
12 保温用コンテナ
12a 断熱蓋
13 ヒータ
14 ベース板
15 仕切板
16 パンチングメタル
16a 貫通孔
17 底板
17a 貫通孔
18 温度コントローラ部
19 キャスタ
30 寿司飯収容部
31 シャリ玉形成部
32 ターンテーブル
33 上型
33a,33b 垂れ部
33c 中割れ部形成用突起部
33d 湾曲面
34 下型
34a 補助突起
34b 第1の傾斜部
34c 第2の傾斜部
35 昇降装置
36 種押さえ装置
40 シャリ玉
40a 上面
41 中割れ部
41a 上部中割れ部
41b 下部中割れ部
42 第1の傾斜部
43 第2の傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動手段を備えたシャリ保温装置と、同保温装置上に着脱自在に載置された寿司ロボットとからなり、前記シャリ保温装置は、加熱手段を備えた保温装置本体と、同保温装置本体に引き出し自在に内装され、周壁に保温用中空部を有する保温用コンテナとを備えていることを特徴とするシャリ保温装置を備えた寿司ロボット。
【請求項2】 前記寿司ロボットが、握り寿司ロボットまたは巻き寿司用ロボットのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のシャリ保温装置を備えた寿司ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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