説明

シャワー用節水器具

【課題】 シャワーヘッドを交換せずに、シャワー使用時の節水化を計るためには、水栓金具とシャワーヘッドの間の通水路の径を絞ることが効果的である。しかし、通水路径を絞ると、流速は速くなるが、流水量が減るため、吐水圧が弱まり、快適なシャワー体感が得られなくなる。そのため、外部から空気を取り入れ、シャワー吐水に空気を混ぜることにより、体感を向上させることが行われているが、空気の取り入れ口が詰まったり、止水時にシャワーヘッドの中の滞留水が空気取り入れ口から逆流して漏れることがあった。
【解決手段】 外気から空気などを取り込まずに、シンプルな構造で、シャワー体感を下げずに節水化を図るため、先細りのテーパー状の通水路で管径を絞ることで流速を速めると同時に、さらにもっと流速を速めるため、流水に旋回流を発生させるための部材を組み込み、水栓金具とシャワーヘッドの間に単独部材として取り付け可能とした器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャワーの節水に関するものであり、シャワー施設のある場所で節水しながら、かつ快適なシャワー体感を確保するためのものであり、特にホテルや温浴施設、フィットネスクラブなどの水圧がある程度確保されている施設で、かつ周辺環境が暖かい浴室でのシャワー使用時や、夏場のプールなど温まることよりも汗を流すためのシャワー施設でのシャワー使用時などの節水化において極めて有効なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シャワーの節水化はシャワーヘッドの散水板の穴径を小さくして、吐水量を少なくするとともに、穴径を小さくすることで吐水の流速を早くして、シャワー体感を確保しようとしていた。その節水化の流れの中で、シャワーヘッドの散水板に特殊な加工をして、節水化とともに、かなりの程度のシャワー体感が確保できる製品も出てきている。(特許文献1)(特許文献2)(特許文献3)
【0003】
また、特許文献2のシャワーヘッドには、さらに流速を早くするため、シャワーヘッド本体の中に旋回流を起こすためのガイド羽根を組み込み、流速をさらに高める工夫を行っているものもある。(特許文献2)
【0004】
また、シャワーヘッドに空気を取り込む穴を設けて、節水化により量的に少なくなった吐水に空気を混ぜ込み、シャワー体感を向上させる製品も出ている。(特許文献4)(特許文献5)(特許文献6)
【0005】
しかし、上記の方法ではシャワーヘッドの交換が必要になっていた。
【0006】
シャワーヘッドの交換をしないで節水化と、シャワー体感を確保するための装置として、水栓金具とシャワーヘッドの間に取り付けるタイプで、流速を速めるための狭隘部を持ち、かつ特許文献4、特許文献5、特許文献6のように空気を取り込むための吸気口を持った構造の器具もあるが、空気を取り入れるための吸気口が詰まったり、止水時にその吸気口からシャワーヘッドの中の滞留水が漏れるなどの不都合も発生している。(特許文献7)(特許文献8)
【0007】
一方、節水化するとシャワーからの単位時間当たりのシャワー吐水量も当然減少するので、特に温水シャワーを利用する場合は、その利用場所の環境温度が低い時にはなかなか体が温まらないことになる。そのため、暖房設備の整っていない浴室環境が多い一般家庭の浴室では節水化すると、なかなか体が温まらないという問題が発生し、結果として長い時間シャワーを使うことになるので節水効果が減少する結果となっている。さらに、一般家庭では水圧や特に湯圧の低いところも多く、もともとシャワー体感が弱くなっているところも多い。そのため、一般家庭を対象にして商品開発をしようとすると克服すべき課題が多くなっていた。その中では、特許文献3のシャワーヘッドは散水板の穴の形状に工夫が凝らされてあり、シャワーヘッドを交換しなければならないという問題はあるが、低圧での節水化に成功としているといえる。
【0008】
その一方で、ホテルや温浴施設のように浴室内の暖房が完備している場所、温水プールやフィットネスクラブのように体が暖かくなっている場所、また体を温める必要が無く、体を洗い流すだけの夏場のプールでの利用などでは単位時間当たりの吐水量が落ちても、シャワー体感などが確保されていれば、シャワーとして問題となることは少なく、そのような施設を対象に限定すれば、この技術が効果的に活用できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−57535号公報
【特許文献2】特開2003−265351号公報
【特許文献3】特開2003−310468号公報
【特許文献4】特開2002−119435号公報
【特許文献5】特開2006−239106号公報
【特許文献6】特開2008−229516号公報
【特許文献7】特開2000−166797号公報
【特許文献8】特開2005−218681号公報
【特許文献9】実開平6−24067公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
節水化すると当然、単位時間当たりの温水の吐水量が減少する。そうなると、シャワーを使うスペースに暖房設備の無いことが多い一般家庭の浴室では、寒い季節には長時間使わないと、シャワーだけでは体がなかなか温まらないという課題がある。
【0011】
パブリックのシャワー施設では水栓金具本体とシャワーヘッドのデザインが統一されていることが多く、シャワーヘッドだけの交換はデザイン的に適さない施設もある。そのため、既設のシャワーヘッドを交換することなく、水栓金具とシャワーヘッドの間に取り付けることのできる構造で、節水化とシャワー体感維持のために吐水流速の早くなる構造の器具が必要とされる。
【0012】
ホテルなどでは浴室の清掃後にシャワーホースやシャワーヘッドに滞留した水滴などで清掃した部分が汚れる構造の器具は敬遠される。そのため、空気を取り入れる開口を設けると、使用後に器具から漏水する心配があり、空気を取り入れる穴が無くてもシャワーの使用体感が減損しにくい構造とする必要がある。
【0013】
不特定多数が利用する施設で使われるため、壊れにくく、シンプルな器具構造が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
節水化して、単位時間当たりの温水シャワーの吐水量が減少すると、シャワーを使うスペースに暖房設備の無いことが多い一般家庭の浴室では、冬場は長時間、シャワーを使わないとシャワーだけでは体がなかなか温まらないという課題がある。しかし、基本的には一般家庭での設置を対象外として企画することにより機能的な制約が解消され、吐水量は大幅に減少させながら、シャワー体感の減少をできるだけ抑えながら、節水化を実現して、かつ水栓金具とシャワーヘッドの間に取り付けられる構造の器具が企画できる。
【0015】
パブリックのシャワー施設では水栓金具本体とシャワーヘッドのデザインが統一されていることが多く、シャワーヘッドだけの交換はデザイン的に適さない施設もある。そのため、既設のシャワーヘッドを交換することなく、水栓金具とシャワーヘッドの間に取り付けられる器具をつくる。
【0016】
シャワー体感を上げるための空気などを取り込む開口などは設けずに、節水化とともに流速をあげるため、節水化に関しては流水路を入口側から出口側に向かって口径が小さくなるようにテーパー状に絞り込み、さらに流速をあげるため、円盤状のプレートで、そのプレートに複数のねじれた穴が開口されていて、水流にひねりを加えた旋回流を起こさせるための部材を組み込む。
【発明の効果】
【0017】
シャワーヘッドとシャワーホースの間に取り付けることにより、単独のシャワーヘッドのみと比較して、この部材を取り付けることで節水効果が現れ、かつシャワー体感の減少率が節水率よりも少なくなった。体感試験の結果では節水率が30%の時にシャワー体感の減少は5%から10%であった。この結果はシャワーヘッドの種類によっても変わったが、全般的に節水化がはかれ、さらに限定はされるが、市販の節水式シャワーヘッドに取り付けた場合でも更なる節水の効果が得られた。
【0018】
テーパー状の流水路だけでも流量が絞られ、節水化とともに流速を早めることができるが、旋回流を起こさせるための部材を組み込むことにより、さらに流速を速めることができ、節水化しても、シャワー体感の減少幅を少なくすることができる。
【0019】
入口側が大きく、出口側が小さいテーパー状の流水路の入口側と出口側の口径の比率とテーパーの角度を変えることにより、節水率と流速を変化させることができる。
【0020】
旋回流を起こさせるための円盤状のプレート部材に開口された、複数のねじれた穴の開口の口径の合計面積と穴のねじれ角度を変化させることにより、流速や水流のひねり角度を変化させることができる。試作品での実験では円盤状のプレートの形状を直径13.5ミリとしたが、これは給水・給湯管の管径が15Aの管径であったためであり、このサイズに限定はされない。また、円盤状のプレートに開口された、ねじれた流水路に入口側から出口側へ向けて口径が小さくなるようなテーパーを付けても良い。
【0021】
この器具を使用する施設の給水・給湯圧に合わせて、テーパー状の流水路の穴径やテーパーの長さ、及び旋回流を起こさせるプレートの穴径と穴のねじれ角度を変えることで、その施設のシャワーに最適な節水器具に調整加工することもできる。
【0022】
この器具は単体でシャワーヘッドに取り付けても良いが、シャワーヘッドの取っ手部分に内蔵して一体化したシャワーヘッドにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はシャワーヘッドとシャワーホース間に該器具を組み合わせた状態の部分断面斜視図である。
【図2】図2は該器具の側面断面図である。
【図3】図3は該器具の平面図である。
【図4】図4は該器具の底面図である。
【図5】図5は入口側から出口側へ、ねじれ角度15度の複数のねじれた穴開口を持った円盤状のプレートの斜視図である。
【図6】図6は入口側から出口側へ、ねじれ角度15度の複数のねじれた穴開口を持った円盤状のプレートの平面図である。
【図7】図7は入口側から出口側へ、ねじれ角度15度の複数のねじれた穴開口を持った円盤状のプレートの側面図である。
【図8】図8は入口側から出口側へ、ねじれ角度15度の複数のねじれた穴開口を持った円盤状のプレートの部分詳細図である。
【図9】図9は図1の部分断面斜視図を該器具の見る角度を変えて描いた部分断面斜視図である。
【図10】図10は図2に図示した該器具の両端にある接続用のネジのオスネジ・メスネジのネジ切り位置を逆転させることで、シャワーホースとシャワーヘッドの間に取り付ける形状の該器具を水栓金具とシャワーホースの間に取り付けられるように変更した器具の側面断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:テーパー状の流水路
2:複数のねじれた穴開口を持った円盤状のプレート
3a:メスネジ
3b:オスネジ
4:オーリングパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッドと水栓金具の途中に付ける器具で、内部に通水部を持ち、その通水部において水流の入口部から出口部に進むに従って、流速をあげるためにテーパー状に内径を絞った、いわゆる漏斗状の通水部を形成し、さらにその入口部に、流入する水流を旋回させるための複数のねじれた開口穴を持ったプレートを組み込んだことを特徴とするシャワー用の節水器具。
【請求項2】
「請求項1」の器具と一体となったシャワーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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