説明

シャープペンシル

【課題】 従来、軸筒と先部材を別体とし、その先部材を芯繰り出し機構を有する中軸セットに固定した構造が知られている。従来技術においては、中軸セットの中子の外周部に先部材を配置する構成となっている。このため、先部材の肉厚分は、軸筒内に配置するシャープペンシルユニットの外径が太くなり、ひいては、軸筒の外径も太くならざるをなかった。このため、デザイン上の制約が発生していた。
【解決手段】 軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニットが配置されたシャープペンシルであって、前記シャープペンシルユニットを先部材と、中子を有する中軸セットとから構成し、前記先部材と前記中軸セットの中子とを当接させたことを特徴とするシャープペンシル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニットが配置されたシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒と先部材を別体とし、その先部材を芯繰り出し機構を有する中軸セットに固定した構造が知られている。その構造の一例が、特開2001−270283号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
前記特許文献1の図2に記載のシャープペンシルは、軸筒の内部に芯繰り出し機構を有する中軸セットを配置している。この中軸セットは、芯タンク、芯タンクの前方に配置されたチャック体(繰り出しチャック)、そのチャック体を囲繞しているチャックリング、前記チャック体を軸筒の後方へ付勢する弾撥部材(チャックスプリング)、そして、中子(スリーブ)とから構成されている。そして、この中軸セットの中子の外周部には、内筒や戻り止め(摩擦部材)、先端スプリング、先端チャックを内側に配置した先端リングからなる先部材が設けられている。以下では、前記中軸セットと先部材とを合わせて、シャープペンシルユニットとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−270283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術では、上述のように、中軸セットの中子の外周部に先部材を配置する構成となっている。このため、先部材と中子との接続部分における前記先部材の外径は太くなり、それ故に、軸筒内に配置するシャープペンシルユニットの外径も太くなり、ひいては、軸筒の外径も太くならざるをえなかった。このため、デザイン上の制約が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニットが配置されたシャープペンシルであって、前記シャープペンシルユニットを先部材と、中子を有する中軸セットとから構成し、前記先部材と前記中軸セットの中子とを当接させたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニットが配置されたシャープペンシルであって、前記シャープペンシルユニットを先部材と、中子を有する中軸セットとから構成し、前記先部材と前記中軸セットの中子とを当接させたので、シャープペンシルの軸筒のデザインを豊富にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例の製品全体の斜視図である。
【図2】図1の縦切断側面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図2のA―A線断面図である。
【図5】図2のB―B線断面図である。
【図6】第1実施例の製品全体の分解斜視図である。
【図7】第1実施例のパイプ部材(筒状部材)12の斜視図である。
【図8】図7の断面図である。
【図9】図2におけるパイプ部材(筒状部材)12と後軸筒(筒状部材)2との圧接関係を示した模式図である。
【図10】パイプ部材(筒状部材)12と後軸筒(筒状部材)2との圧接関係の変形例を示す模式図である。
【図11】製品全体の縦切断側面図(変形例)である。
【図12】製品全体の縦切断側面図(変形例)である。
【図13】図11におけるC−C線断面図である。
【図14】スプリング11(20)の変形例である。
【図15】製品全体の縦切断側面図(変形例)である。
【図16】パイプ部材(筒状部材)12の断面図(変形例)である。
【図17】パイプ部材(筒状部材)12の断面図(変形例)である。
【図18】パイプ部材(筒状部材)12の断面図(変形例)である。
【図19】製品全体の縦切断側面図(変形例)である。
【図20】図17の一部拡大図である。
【図21】図17の一部拡大斜視図(中子8のみ外観図)である(中子8の第1変形例)。
【図22】中子8の第2変形例である。
【図23】中子8の第3変形例である。
【図24】中子8の第4変形例である。
【図25】中子8の第5変形例である。
【図26】中子8の第6変形例である。
【図27】第2実施例の製品全体の斜視図である。
【図28】図27の縦断面側面図である。
【図29】図28の一部拡大図である。
【図30】図27におけるD−D線断面図である。
【図31】第3実施例の先部材3と中子8の外観図である。
【図32】第3実施例のシャープペンシルユニット9の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニット(筆記体)が配置されたシャープペンシルであって、前記シャープペンシルユニットを先部材と、中子を有する中軸セットとから構成し、前記先部材と前記中軸セットの中子とを当接させたので、シャープペンシルユニットの外径が先部材の外径に左右されない。即ち、先部材の外径を、中軸セットの中子の外径より太くすることも細くすることも出来る。このように、先部材の外径を任意の大きさに設定することが出来るため、軸筒の内部におけるシャープペンシルユニットや軸筒の外径の調整が可能となり、従来よりもシャープペンシルのデザインの幅を広げることが出来る。
【0010】
本発明の実施の形態の第1実施例を図1〜7に示し、説明する。第1実施例は、筆記体を軸筒(筒状部材)の後端側から挿入することで組み立てを行うシャープペンシルの例である。第1実施例においては、軸筒は前軸筒(筒状部材)1と後軸筒(筒状部材)2から構成されている。前記前軸筒(筒状部材)1は、2色成形軸であって、硬質な材料の1次成形軸1aとその1次成形軸1aの外周に成形された軟質な材料(エラストマー樹脂やソフトアクリル樹脂など)の2次成形グリップ1bから構成されており、それらは成形される際に溶着することによって一体成形されている。また、その2次成形グリップ1bは、その一部が1次成形軸1aの後部に向けて延設(延設部1c)されている。即ち、その延設された部分は、人差し指と親指とによって形成される股の部分が接触し得るようになっている。筆記の際に滑り止め効果を呈し、その筆記を良好なものとしている。
【0011】
第1実施例における前軸筒(筒状部材)1と先部材3の構成について、詳述する。前記前軸筒(筒状部材)1の軸線方向に対して前方には、外周部にガイドリブ3a及び3bを有する先部材3が配置されている。この先部材3は、前記ガイドリブ3a及び3bによってガイドされ、前記前軸筒(筒状部材)1の先端内径部に配置されている。本例においては、前記前軸筒(筒状部材)1と前記先部材3とを別体として前記前軸筒(筒状部材)に配置しているが、このように別体とすることにより、前軸筒(筒状部材)1と先部材3の色を分けたり、材質を変えたりすることが出来る。即ち、前軸筒(筒状部材)1と先部材3を別体とすることにより、デザイン性が向上し、外観を良くすることが出来る。この他、前軸筒(筒状部材)1と先部材3とを別体とした場合には、軸筒をボールペンの軸筒と共通化することができるという利点や、以下に記す芯の戻り止め4を先部材3に圧入しやすくなるという利点を有する。
更に、前記先部材3の内径部には戻り止め4が軽い圧入で固定されており、その戻り止め4の圧入部よりも後方には、チャック体5及びチャックリング6が配置されている。図3の参照符号3cは、先部材3の内径部に形成された段部であり、この段部はチャックリングが当接する当接部となっている。チャックリングの当接部(段部)3cを先部材3の内径部に形成することにより、全長の長い前軸筒(筒状部材)1の内径部にチャックリングの当接部(段部)を形成する場合に比べ、段部を形成した位置の寸法確認が容易になっている。このため、品質確認が早く正確に行えるようになり安定した生産を実施することができる。
【0012】
ここで、前記先部材3の後方には前記中軸セット7が配置されていて、前記先部材3の後端面3dは前記中軸セット7の中子8の前端面8aと当接している。この時、前記先部材3の後方部の外径は、前記中軸セット7の中子8の前方部の外径よりも若干大径となっている。若干大径としている理由は、先部材3の後方部に、前述のガイドリブ3bを設けているためである。しかしながら、本例に限らず、前記先部材3のガイドリブ3bの高さを減らしたり、そのガイドリブ3bの位置をずらしたりするなどして、先部材3の後方部の外径を中軸セット7の中子8の前方部の外径と略同一としたり、若干小径としたりしても良い。
本例は、前記先部材3と中軸セット7の中子8とを当接させたので、それら先部材3と中軸セット7とからなるシャープペンシルユニット9の外径が先部材3の外径に左右されない。即ち、先部材3の外径を、中軸セット7の外径より太くすることも細くすることも出来る。このように、先部材3の外径を任意の大きさに設定することが出来るため、前軸筒(筒状部材)1の内部におけるシャープペンシルユニット9や前軸筒(筒状部材)1の外径の調整が可能となり、従来よりもシャープペンシルのデザインの幅を広げることができる。
【0013】
なお、本例のように、先部材3の後端部を前記中軸セット7の中子8で抑える場合には、芯出長さを規制するチャックリング6の当接部(段部)3cを先部材3の長手方向の寸法のみで決めることが出来るため、芯出長さのばらつきを最小限に抑えることが出来る。
また、前記先部材3と中子8とを本構成にすることで、従来技術のような中子の外周部に先部材が配置されている構成や、中子に対して先部材が螺合によって固定されている構成に比べて、先部材3の大きさが小さくなり、部品のコストダウンにもなる。
【0014】
次に、前記前軸筒(筒状部材)1に対する前記先部材3の配置の仕方について、詳述する。本例では、先部材3が配置される前軸筒(筒状部材)1の内径部に、長手方向に長いリブ部1dが設けられている(図3〜図5)。そして、前記先部材3の外周部には、全周リブからなるガイドリブ3a及び3bが、それぞれ先部材3の長手方向中間部と後方部に形成されている。このように、先部材3の外周面のうち、長手方向の異なる位置2箇所にガイドリブを設けて先部材3を固定することにより、先部材3が前軸筒(筒状部材)1に対してバランスよく固定される。このため、先部材3の前軸筒(筒状部材)1に対するズレが少なく、芯折れを軽減したり、良好な筆記を得たりすることが出来る。
また、本例においては、先部材3のガイドリブ3bを、チャックリング6が摺動する領域(チャックリング摺動領域)Xの外周部に設けている(図3)。このため、先部材3内部のチャックリング摺動領域の軸芯と前軸筒1の軸芯を容易に合わせることができる。また、筆記時に外力がかかった際にもガイドリブ3bにより先部材3のガタを防止することができチャックリング6及びチャック体5への影響を無くすことができる。即ち、先部材3が前軸筒(筒状部材)1の軸線方向からずれてしまい、即ち、先部材3が軸筒1の軸芯(センター)からずれてしまい、チャックリング6が先部材3の内部に接触し擦れて、チャック体5及びチャックリング6の摺動が規制されてしまうことによる、芯の出の悪さや芯折れを防ぐことが出来る。
そして、本例では、ガイドリブ3aを前軸筒(筒状部材)1に圧入し、ガイドリブ3bを前軸筒(筒状部材)1に軽く接触させる構成とした。即ち、ガイドリブ3aの圧入力よりもガイドリブ3bの圧入力を小さくすることによって、前記ガイドリブ3aで先部材3を前軸筒(筒状部材)1に確実に固定すると共に、前記ガイドリブ3bが圧入力を受けることによる先部材3への影響を極力少なくしているのである。このようにすることにより、ガイドリブ3bの内方に配置されているチャックリング6の摺動が良好に保たれる。
なお、本例においては、ガイドリブ3aとガイドリブ3bの圧入力を上述のように差をつけたが、これに限らず、ガイドリブ3a及びガイドリブ3bの圧入力を共に同程度としても良いし、また、本例とは逆にガイドリブ3aの圧入力をガイドリブ3bの圧入力よりも小さくしても良い。先部材3が硬質な材質からなる場合には、多少の圧入力を受けても、先部材3が変形しにくいため、ガイドリブ3bの圧入力を高くした場合にも、チャックリング6の摺動が良好に保たれる。
【0015】
この他、本例においては、前記先部材3のガイドリブ3bを、先部材3の後端部にまで形成した(図3)。このため、先部材3の後端面3dと中子8の前端面8aとの接触面積が増え、前軸筒(筒状部材)1の長手方向に対しても確実に先部材3を抑えることが出来る。
なお、本例においては、前軸筒(筒状部材)1の先端開口部とその内方に位置している先部材3とは、挿入状態となっており、非圧入状態となっている。即ち、先部材3は、中間部に形成したガイドリブ3aによって、前軸筒(筒状部材)1に圧入固定されている。前軸筒(筒状部材)1の先端開口部とその内方に位置している先部材3とを非圧入状態にすることによって、前軸筒(筒状部材)1の先端の割れを防いでいるのである。後述しているように、前軸筒(筒状部材)1の前方部は、一般的に軸筒先端から後方にかけてその外径が大きく形成されるため、前軸筒(筒状部材)1の先端外径は細く、また、肉厚が薄い。この様な状況下において、先部材3を前軸筒(筒状部材)1の先端開口部に圧入してしまうと前軸筒(筒状部材)1の先端開口部付近は割れてしまう可能性がある。本例においては、そのように前軸筒(筒状部材)1の先端開口部が割れてしまうことがない。
【0016】
本例においては、前軸筒(筒状部材)1を樹脂(ポリカーボネート樹脂)、先部材3を金属で形成したが、これに限らず、前軸筒(筒状部材)1及び先部材3の材質を共に樹脂としても良いし、金属としても良い。
本例では、前述したように先部材3のガイドリブ3a及び3bを、前記前軸筒(筒状部材)1のリブ部1dに対して、接触又は圧入している。このように構成することにより、先部材3を前軸筒(筒状部材)1に対して圧入する際に、先部材3のガイドリブ3a若しくは3b、又は前軸筒(筒状部材)1のリブ部1dが変形し、先部材3及び前軸筒(筒状部材)1にかかる負荷が小さくなる。
更に、先部材3を前軸筒(筒状部材)1に対して圧入する際には、先部材3のガイドリブ3a並びに3bと前軸筒(筒状部材)1のリブ部1dが接触し、一方の部材のリブが削れ、削りカスが発生してしまうことが考えられる。しかしながら、その場合においても、本例のような構成では、前軸筒(筒状部材)1の長手方向に長いリブ部1d同士の間に、前記削りカスが入り込むことで、圧入力が高くなることを抑えることが出来、良好に先部材3を前軸筒(筒状部材)1に固定することができる。
なお、前軸筒(筒状部材)1の前方部は、筆記部分が見やすいようにといった配慮や、外観(デザイン)上の理由などにより、一般的に軸筒先端から後方にかけてその外径が大きくなる。このため、軸筒の後方に行くに従い、軸筒の肉厚が厚くなり、軸筒が樹脂成形品の場合には、その成形時にヒケてしまう可能性がある。しかしながら、本例のように、軸筒内部の肉厚部をリブ部1dとすることにより、ヒケ防止にもなる。
【0017】
また、本例のシャープペンシルは、先部材3の内部で芯10が詰まった場合には、先部材3を取り外して、折れた芯を取り除くことが出来る。後軸筒(筒状部材)2を外し、中軸セット7を取り外すことで、先部材3を後方から抑えている中子8も外すことができるため、先部材3の先端を軽い力で押圧することで先部材3を前軸筒(筒状部材)1の後端開口部から取り外すことが出来るのである。このように、軽い力で先部材3を前軸筒(筒状部材)1から取り外せるようにした場合には、先部材3の内部の状態を確認しやすいという利点がある。
一方で、強い力をかけないと先部材3を前軸筒(筒状部材)1から取り外せないようにしても良い。その場合には、高い筆圧で筆記しても、先部材3が前軸筒(筒状部材)1に対して万が一にもガタつく恐れがなくなり、安定した書き易さを得られる。また、この場合には、先部材3を紛失する恐れもない。
なお、本例のシャープペンシルは、後述するように中軸セット7の一部である芯タンク13の後方に消しゴム受け16が嵌め込まれており、その消しゴム受け16に設けられている鍔部16aが後軸筒(筒状部材)2の内面段部2bと当接する構成となっている。このため、中軸セット7を取り外すために、後軸筒(筒状部材)2を前軸筒(筒状部材)1から外すと、その後軸筒(筒状部材)2と一体となって、中軸セット7も取り外すことが出来る。各部材がバラけないため、紛失の恐れが少ない構造となっているのである。
この他、本例のシャープペンシルを組み立てる際は、取り外す場合とは逆に、まず、先部材3を前軸筒(筒状部材)1の後端から挿入した後に、中軸セット7を同様に前軸筒(筒状部材)1に挿入する。そして、後述のスプリング11、パイプ部材(筒状部材)12を順に挿入した後、後軸筒(筒状部材)2を前軸筒(筒状部材)1に螺合する。この時、後軸筒(筒状部材)2を前軸筒(筒状部材)1に螺合する力で、パイプ部材(筒状部材)12、スプリング11、中軸セット7、そして、先部材3が前軸筒(筒状部材)1の前方へ押圧され、螺合の完了とともに、シャープペンシルの組み立てが完了する。
【0018】
次に、前記中軸セット7について、簡単に説明する。前記1次成形軸1a内には、芯10を複数収納する芯タンク13が前後動可能に配置されており、前記芯タンク13の前端には、中継ぎ部材14が前記芯タンク13に圧入固定されている。この中継ぎ部材14の圧入部(芯タンク13に圧入する部位)のうち、前記芯タンク13に最初に圧入する圧入導入部(前記中継ぎ部材14の後端の一定長手方向長さ)外径は、前記芯タンク13の内径より若干小径にすると挿入し易くなる(図示せず)。若干小径にする前記中継ぎ部材14の圧入導入部外径の長手方向の長さは、適宜設定すれば良く、中継ぎ部材14の圧入部全体の圧入力が十分得られるようになっていれば良い。即ち、芯タンク13と中継ぎ部材14が組み立て後は容易に抜けない圧入状態が保たれ、且つ、圧入時には本圧入までの導入部による案内(ガイド)ができて組立性が良いという品質を満足するようになっていれば良い。万が一、前記圧入力が不十分で芯タンク13と中継ぎ部材14との圧入状態が解除されてしまうと、本第1実施例の構造では、シャープペンシルの前方(先部材3側)を鉛直上向きにした際に、芯タンク13、その芯タンク13の後方に嵌め込まれた消しゴム受け16、その消しゴム受け16の後方内部に着脱自在に取り付けられた消しゴム17、そして、その消しゴム17を内包するように前記消しゴム受け16に着脱自在に嵌め込まれたノック18が一体となって、後軸筒(筒状部材)2から鉛直方向下向きに脱落してしまう。この他にも、芯10が散逸したり、芯タンク13内に付着していた芯カスが散乱したり、また、先部材3やチャック体5に芯が詰まってしまった際の対処も煩雑になってしまうということも考えられるため、上述したように、芯タンク13と中継ぎ部材14との圧入状態が保たれるようにしなければならないのである。
前記中継ぎ部材14の前方には中子8が配置され、前記中子8の前方には芯10の把時・開放を行うチャック体5が位置している。そして、前記チャック体5は前記中継ぎ部材14に圧入固定されており、前記チャック体5の前方外周には前記チャック体5の開閉を行うチャックリング6が囲繞している。符号15は、前記チャック体5や芯タンク10を後方に向けて付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である。
【0019】
前記前軸筒(筒状部材)1の後端部には前記後軸筒(筒状部材)2がネジ螺合されており、また、前記前軸筒(筒状部材)1の内部にはスプリング11及びパイプ部材(筒状部材)12が配置されている。前記スプリング11及びパイプ部材(筒状部材)12は前記芯タンク13を内包しており、前記中子8と前記パイプ部材(筒状部材)12との間に前記スプリング11が配置又は張設されている。前記パイプ部材(筒状部材)12は、その外周面にリブ部12aを有しており、このリブ部12aは、前記後軸筒(筒状部材)2の端面2aと当接している。このような構成をとることにより、前記スプリング11及び前記パイプ部材(筒状部材)12は、前記中軸セット7と前記後軸筒(筒状部材)2に固定されている。即ち、上述の構成をとることにより、前記中軸セット7を軸線方向に対して前後にガタが生じず、且つ、後方に抜けない構造としている。
また、前記芯タンク13の後方には、消しゴム受け16が嵌め込まれており、前記消しゴム受け16の後方内部には、消しゴム17が着脱自在に取り付けられている。更に後方にノック18が前記消しゴム17を内包するように前記消しゴム受け16と着脱自在に嵌め込まれている。前記ノック18を下方に向けて押圧する、繰り出し操作によって、芯10の繰り出しがなされるのである。なお、後軸筒(筒状部材)2には、クリップ19が一体に形成されている。
【0020】
前記パイプ部材(筒状部材)12について詳しく説明すると、前記パイプ部材(筒状部材)12はポリプロピレン(PP)樹脂で出来ており、前記芯タンク13を内包しているが、前記パイプ部材(筒状部材)12と芯タンク13との間には空間が形成されており、前記芯タンク13と接触しないようになっている。そして、筒状のパイプ部12bと、そのパイプ部12bの外周面上に形成された前記リブ部12aとが配置されている構成となっている。そのリブ部12aは、パイプ部12bに対して弱部として形成されており、パイプ部12bの外周面(径方向)の等間隔な位置に4箇所形成されている。
組み立て時には前記パイプ部材(筒状部材)12の前端面12cと前記スプリング11の後端面11aが当接・圧接し、且つ、前記パイプ部材(筒状部材)12の後端面12dのリブ部12aと前記後軸筒(筒状部材)2の端面2aが当接・圧接されている。
図9は、前記パイプ部材(筒状部材)12の後端面12dのリブ部12aに対して圧接する前記後軸筒(筒状部材)2の端面2aの当接の仕方を二点鎖線で表したものである。二点鎖線で囲まれた領域が前記後軸筒(筒状部材)2の端面2aに相当する。本例においては、後軸筒(筒状部材)2の端面2aに対して、リブ部12aの65%程度を接触させている。この接触割合は逆転していても良く、リブ部12aを本例よりも大きく形成し、リブ部12aに対して、後軸筒(筒状部材)2の端面2aの65%程度を接触させても良い(図10)。また、この接触割合は、65%に限定されるものではなく、圧接させる力の値や他に組み合わせる部品との兼ね合いにより、適宜選択することが出来る。
【0021】
ここで、前記パイプ部材(筒状部材)12の全長は、任意の値に設定することが出来る。例えば、図2や図11のように、前軸筒(筒状部材)1のリブ部1eの後端と後軸筒(筒状部材)2の端面2aとの間の長さより短くしてもよい。この場合には、前軸筒(筒状部材)1のリブ部1eの間にパイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aを入れる必要がないため、パイプ部材(筒状部材)12を前軸筒(筒状部材)1に対して挿入しやすいという利点がある。
一方で、前記パイプ部材(筒状部材)12の全長を、図12のように、軸筒のリブ部1eの中間付近から後軸筒(筒状部材)2の端面2aとの間の長さとしてもよい。この場合には、前記パイプ部材12のリブ部12aは、前記前軸筒(筒状部材)1に形成されたリブ部1eと前記リブ部1eの間に配置されている(図13)。これにより、前記パイプ部材12は前記前軸筒(筒状部材)1に対して回転しないようになっている。このため、後軸筒(筒状部材)2を前軸筒(筒状部材)1に対して螺合する際に、パイプ部材(筒状部材)12の前方に位置するスプリング11や、そのスプリングと当接している中子8、そして、中子8と当接している先部材3や弾撥部材15に対して回転方向の力がかかることがない。その結果、パイプ部材(筒状部材)12とスプリング11や、スプリング11と中子8、中子8と先部材3又は弾撥部材15の各当接箇所において擦れによる摩耗が発生することもない。
【0022】
ここで、前記パイプ部材(筒状部材)12の前方に配置されるスプリング11は、密着スプリング20であっても、弾性スプリング21などの弾撥部材であってもよい。密着スプリング20を使用した場合には、密着スプリング20の巻き数を調整することにより、前記パイプ部材(筒状部材)12の寸法上のばらつきを吸収することが出来る。一方、弾性スプリング(弾撥部材)21を使用した場合には、その弾性によって、パイプ部材(筒状部材)12の全長のばらつきを吸収することが出来る。いずれの場合においても、中軸セット7の前後のガタを抑えることが出来るようになっている。図2及び図12は、密着スプリングを用いた例であり、図11は、弾性スプリングを用いた例である。
なお、図14は、スプリング11、一例として密着スプリング20の中子8側端面に端面研削部20aを施した例である。端面研削は、主として、圧縮コイルばねの端面を研削する加工で、軸線方向に対する直角度合い(直角度)を良くすることにより荷重の偏心、座屈などを防ぐことを目的に行われる。スプリング11(20)には、図14のように端面研削部20aを設けても良い。この端面研削部20aを形成したスプリング11(20)を本実施例のシャープペンシルに用いた場合には、スプリング11(20)が、軸芯からズレなくなり、それにより中子8も軸芯に対するズレを防止でき、芯折れをより確実に防止することが出来る。
【0023】
以上では、パイプ部材(筒状部材)12とスプリング11を併用した例を示したが、スプリング11を用いず、パイプ部材(筒状部材)12のみを用いても良い(図15)。この場合には、前記中子8の後端面8bと後軸筒(筒状部材)2の端面2aとの間の長さより、若干長く設定することが好ましい。理由として、前記リブ部12aによって樹脂が持つ弾性変形を利用して、中軸セット7の前後のガタを抑え、且つ、筆記時や芯の繰り出し操作時の荷重を前記リブ部12aで受けるようにしている。なお、本例においては、前記パイプ部材(筒状部材)12の全長は前記中子8の後端面8bと後軸筒(筒状部材)2の端面2aとの間の長さより、0.05mm〜0.50mm長くした。
つまり、筆記時や芯の繰り出し操作時などにおいて、筆記体を軸筒本体の軸線方向へ押圧した場合、前記パイプ部12bはスリットや溝などないため、軸線方向に対する鉛直方向への変形が極力防止され、パイプ部12bがほぼ直線状態を維持し、前記リブ部12aに均等に荷重がかかる。
【0024】
ここで、前記パイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aを、前記パイプ部12bに対して弱部とする種々の手段について説明する。
第1に、前記パイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aの肉厚T1を、パイプ部12bの肉厚T2よりも薄くする手段がある。
第2に、前記パイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aの横断面積を、パイプ部12bの横断面積よりも少なくする手段がある。
第3に、前記パイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aの硬度を、パイプ部12bの硬度よりも低くし、それらを2色成形、或いは、多重成形などによって成形する手段がある。或いは、リブ部12aとパイプ部12bとを別部材で構成し、それらを接着などの手段によって固定する手段もある。
【0025】
仮に、本実施例のようなパイプ部12bの外周面上に前記リブ部12aが配置されている構成でない場合、即ち、パイプ部12bのみの場合を考える。この時、中軸セット7の前後ガタを抑えるために前記パイプ部12bの全長を若干長くしているので、パイプ部材(筒状部材)12の後端面12dに後軸筒(筒状部材)2の端面2aが強く当接・圧接されるため、前記パイプ部12bが軸筒本体の軸線方向に対して鉛直方向へ撓んでしまい、筆記体(繰り出し機構)の一部と接触し、作動や筆記時などに支障が出る恐れがある。
【0026】
本実施例では、前記パイプ部材(筒状部材)12のリブ部12aの断面形状は図9のような長方形であるが、これは、軸筒の内周面にリブ部が形成されている複雑な形状の軸などにも対応出来るので、どの様な筆記具にも適用出来る。また、パイプ部材(筒状部材)12の変形例を図16〜図18に種々挙げ説明する。図16、図17の三角形と半円形は、リブ部の断面積が小さくリブ部が変形しやすいので、筆記時や繰り出し操作時(ノック時)の押圧が低い手帳用筆記具等に適している。更に、図18の台形は、リブ部の断面積が大きくリブ部が変形しにくいので、筆記具の重量が重い、金属製軸など金属部品を多用した高級筆記具などに適しているが、これに限定されることはなく、リブ部の形状は適宜選択可能である。
また、第1実施例ではリブ部12aはパイプ部12bの外周面(径方向)の等間隔な位置に4箇所形成されているが、その数は適宜選択可能である。このようにパイプ部の径方向の等間隔な位置にリブ部を形成することにより、リブ部が圧接力を均等に受けることが出来る。
更に、第1実施例においては、前軸筒(筒状部材)1の1次成形軸1aと後軸筒(筒状部材)2及び、クリップ19は硬質な材料のポリカーボネート(PC)樹脂、パイプ部材(筒状部材)12はポリプロピレン(PP)樹脂で成形しているが、パイプ部材はポリエチレン(PE)樹脂などでも良く、軸筒とクリップの材料より硬度が低ければ良く、それらを組み合わせるなど適宜選択可能である。一方で、透明な樹脂を使用した軸を用いた場合、外観を向上させる目的としてパイプ部材(筒状部材)12を着色しても良く、また単色のものに限らず、部位によって色を変えたものであっても、模様をつけたものであっても良い。勿論、色を付けない通常のパイプ部材(筒状部材)12でも良い。
【0027】
また、第1実施例においては、パイプ部材(筒状部材)12の外周面に形成したリブ部12aをそのパイプ部材12の一方の端部から他方の端部まで連続的に形成したが、少なくとも一方の端部にリブ部を形成していれば良い。また、パイプ部材(筒状部材)12の外周面の端部でなくとも、リブ部が後軸筒(筒状部材)2と圧接出来る位置にあればよく、パイプ部材(筒状部材)12の外周面にリブ部12aが形成されていれば良い。
【0028】
第1実施例においては、以上のように種々の手段でシャープペンシルを構成することができるが、この他にも図19〜図26に示すように、前記中子8を各種形状とすることができる。以下では、この中子8の変形例を詳述する。いずれも、中子8の軸芯に対するズレを防止することにより、筆記時や芯の繰り出し時の芯折れをより確実に防止する例である。
なお、図21〜図26は、中子8付近の縦断面斜視図であるが、中子8のみ縦断面にせず外観図で図示している。また、各図とも、左斜め下側がシャープペンシルの前方(先部材3側)であり、右斜め上側がシャープペンシルの後方(ノック18側)である。
【0029】
まず、前述の本第1実施例に記載の中子8の後端面8b付近の外周部に、全周突部(膨出部)8cを形成した例を示す(図19〜21。中子8の第1変形例)。全周突部(膨出部)8cの外径は、前軸筒1のリブ部1eの内接円径よりも若干小径となっている。若干小径としている理由は、中子8を含む中軸セット7を前記前軸筒(筒状部材)1から取り外せる構成にする必要があるためである。上述したように、本例のシャープペンシルは、後軸筒(筒状部材)2を外し、中軸セット7を取り外すことで、先部材3を後方から抑えている中子8も外せるようになっている。中子8を本変形例の様な構成とすることで、中子8と、前軸筒1のリブ部1eの内接円径との隙間を極力狭くすることができ、よって、中子8の軸芯に対するズレを防止し、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。
また、特に図示は省略するが、中子8の先部材3側の外周にも、前軸筒1の内径より若干小径の全周リブ、或いは、複数個の突部が形成されていれば、更に軸芯に対するズレを防止することができ、芯折れを更に確実に防止することが出来る。
なお、本第1実施例においては、中子8とその内部に配置されている中継ぎ部材14との間にはクリアランスがあり、芯の繰り出し操作時に中軸セット7が摺動しやすいようになっている。このため、中子8を除く中軸セット7は、軸芯から僅かにズレ、中継ぎ部材14に圧入固定されているチャック体5も撓んでしまうことも有り得る。しかしながら、仮に中子8が軸芯からずれてしまった場合と比較し、中子8は軸芯からずれずに、中子8より軸芯に近い位置にある中継ぎ部材14やチャック体5等が撓んだ場合の撓み方は、芯タンク13、中継ぎ部材14、そして、チャック体5が一体となって撓むので緩やかである。このように撓み方が緩やかな場合には、芯折れする恐れがなく、良好に筆記を行うことができる。
【0030】
更に、他の変形例を図22〜図26に種々挙げ説明する。
図22は、全周突部8cの代わりに、複数個の突部(膨出部)8dを中子8に形成した例である(中子8の第2変形例)。突部(膨出部)8dの外接円径は、前軸筒1のリブ部1eの内接円径よりも若干小径となっているため、本変形例においても、中子8と、前軸筒1のリブ部1eの内接円径との隙間にスプリング11(20)が入り込まないようにすることが出来る。よって、中子8の軸芯に対するズレを防止することにより、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。本変形例のように、複数個の突部8dとした場合には、前軸筒(筒状部材)1のリブ部1eの内接円径との接触面積が、図21のような全周突部(膨出部)8cと比較して減るので、組立ての際、或いは、芯折れ時の分解の際、中子8と前軸筒(筒状部材)1のリブ部1eとが接してしまった場合の抵抗が減り、中軸セット7の出し入れがよりスムーズになる。
図23は、中子8の後端面8bにスプリング11(20)のガイド部8eを形成した例である(中子8の第3変形例)。ガイド部8eの外径は、スプリング11(20)の内径と略同一としている。スプリング11(20)が、軸芯からズレないようにガイド部8eがガイドすることにより、中子8も軸芯に対するズレを防止できる。よって、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。なお、本変形例は、図21、或いは、図22の変形例と併用しても良く、併用した場合には、更なる芯折れ防止の効果が得られる。
図24は、中子8の後端側に全周突部(膨出部)8gを形成し、切り欠き部8fを設けた例である(中子8の第4変形例)。図示では、切り欠き部8fは2箇所設けているが、その数は1箇所以上あれば良く、切り欠き幅や長手方向の長さは切り欠きによる弾力が得られるように適宜設定すれば良い。本変形例の突部(膨出部)8gの外径は、前軸筒1のリブ部1eの内接円径と比較し、略同一、或いは、若干大径となっている。しかし、切り欠き部8fにより弾力が得られるので、本第1実施例と同様、若干、抵抗はあるが取り外しが可能となっている。この様な構成により、中子8と、前軸筒1のリブ部1eの内接円径との間に隙間はなくなるので、スプリング11(20)が軸芯からズレて曲がっても、中子8の軸芯に対するズレは防止され、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。
【0031】
図25は、中子8の後方にリング部材(膨出部)22を配置した例である(中子8の第5変形例)。リング部材(膨出部)22の外径は、中子8の外径より大径であると共に、前軸筒1のリブ部1eの内接円径よりも若干小径となっている。中子8と、前軸筒1のリブ部1eの内接円径との隙間を、リング部材22により極力狭くしたので、スプリング11(20)が、軸芯からズレないようにガイドされる。よって、中子8の軸芯に対するズレを防止することにより、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。なお、本変形例は、図14のスプリング11の変形例と併用しても良く、更なる芯折れ防止の効果が得られる。
図26は、図25の変形例のリング部材(膨出部)22の後端にガイド部22aを形成した例である(中子8の第6変形例)。リング部材(膨出部)22の本体部の外径は、中子8の外径より大径であると共に、前軸筒1のリブ部1eの内接円径よりも若干小径となっている。ガイド部22aの外径は、スプリング11(20)の内径と略同一としている。中子8と、前軸筒1のリブ部1eの内接円径との隙間を、リング部材22により極力狭くしたので、スプリング11(20)が、軸芯からズレないようにガイドされる。よって、中子8の軸芯に対するズレを防止することにより、芯折れをより確実に防止することが出来る。そして、良好な筆記や芯の繰り出しが出来る。
中子8の第5変形例(図25)、及び、第6変形例(図26)のようにリング部材(膨出部)22と中子8とを別体で設けた構成は、中子8の後端面に識別標識を設けた場合に有用である。以下、詳述する。例えば、本実施例に記載のシャープペンシルなど、製品に用いる各部材は、良品・不良品の確認や抽出ができるように識別標識を形成することがある。この時、中子8が射出成形部品であった場合、金型の構造上、後端面8bに識別標識を形成する場合がある。一方で、金属製のスプリング11(20)を用いた場合、その加工精度により、スプリング線材の切断面にバリが発生する可能性がある。このようなスプリング11(20)と中子8とを直接当接させる構成とした場合には、前記中子8の後端面に設けた識別標識を傷つけてしまう恐れがある。しかしながら、リング部材22を中子8と別体で設け、スプリング11(20)と中子8との間にリング部材(膨出部)22を設けた場合には、万が一、スプリング線材の切断面にバリが発生していたとしても、その懸念は解消される。
なお、中子8の第2変形例から第6変形例までで示した中子8の変形例のいずれの場合にも、中子8の先部材3側の外周にも、前軸筒1の内径より若干小径の全周リブ、或いは、複数個の突部が形成されていれば、更に中子8の軸芯に対するズレを防止することができ、芯折れを更に確実に防止することが出来る(図示せず)。
【0032】
次に、第2実施例を図27〜図30に示す。先部材と中軸セットの中子の当接にかかる部材の形状が異なる例である。
本例のシャープペンシルにおいても、軸筒は前軸筒(筒状部材)1と後軸筒(筒状部材)2から構成されており、その内部には、前軸筒1に固定され、内部に戻り止め4が配置された先部材3と、中子8を有する中軸セット7とからなるシャープペンシルユニット9が配置されている。なお、前記前軸筒1と後軸筒2とは、ネジ螺合されており、そのネジ螺合部は、シャープペンシル全体の中間部に位置している。
【0033】
本例における前軸筒(筒状部材)1と先部材3の構成について、詳述する。前記前軸筒(筒状部材)1の軸線方向に対して前方には、外周部に全周リブからなるガイドリブ3e及び3fを有する先部材3が配置されている。この先部材3は、前記ガイドリブ3e及び3fによってガイドされ、前記前軸筒(筒状部材)1の先端内径部に配置されている。本例においては、前軸筒1の前方内部のリブ部1fに対して、前記先部材3のガイドリブ3eを圧入し、そして、そのガイドリブ3eより後方に位置するガイドリブ3fを軽く接触させている。本例においても、第1実施例と同様に、前記前軸筒(筒状部材)1と前記先部材3とを別体として前記前軸筒(筒状部材)1に配置しているが、このように別体とすることにより、前軸筒(筒状部材)1と先部材3の色を分けたり、材質を変えたりすることができる。即ち、前軸筒(筒状部材)1と先部材3を別体とすることにより、デザイン性が向上し、外観を良くすることが出来る。この他、前軸筒(筒状部材)1と先部材3とを別体とした場合には、軸筒をボールペンの軸筒と共通化することができるという利点や、後述する芯の戻り止め4を先部材3に圧入しやすくなるという利点を有する。
更に、前記先部材3の内径部には戻り止め4が軽い圧入で固定されており、その戻り止め4の圧入部よりも後方には、チャック体5及びチャックリング6が配置されている。図29の参照符号3gは、先部材3の内径部に形成された段部であり、この段部3gはチャックリング6の前端部が当接する当接部となっている。チャックリング6の当接部(段部)3gを先部材3の内径部に形成することにより、全長の長い前軸筒(筒状部材)1の内径部にチャックリングの当接部(段部)を形成する場合に比較し、段部を形成した位置の寸法確認が容易になっている。このため、品質確認が早く正確に行えるようになり安定した生産を実施することができる。
ここで、本例の先部材3においては、前記ガイドリブ3fの後方に大径部(外径大径部)3hが形成されており、その外径大径部3hの内径部も、その前方部より大径に形成されている(内径大径部3i)。この内径大径部3iの前端部に、前記チャックリングの当接部(段部)3gは形成されている。後述するが、チャックリング6はその前方部に前鍔部6aを有しており、この前鍔部6aが、前記先部材3の内径大径部3i内に位置している。
なお、先部材3の軸線方向での位置決めは、前記ガイドリブ3eの前方に形成されている先部材3の外段部3jが、前軸筒1の前方に形成された内段部1gに当接することにより、なされている。
【0034】
前記中軸セット7の構成について、説明する。中軸セット7の前方にはチャック5が配置されており、そのチャック体5の前方外周には、前記チャック体5の開閉を行うチャックリング6が囲繞されている。このチャックリング6には、前方に鍔部(前鍔部)6aが形成されている。前記チャック体5の後部には、芯10を複数収容し、軸筒内に前後動可能に配置されている芯タンク13が圧入固定されており、この芯タンク13の後部には、消しゴム受け部13aが一体に形成されている。そして、この消しゴム受け部13aの後方内部には、消しゴム17が着脱自在に取り付けられており、また、この消しゴム17を内包するように、前記芯タンク13の消しゴム受け部13aにノック18が着脱自在に嵌め込まれている。更に、前記芯タンク13の中間部より前方外周には、中子8が配置されている。この中子8の前方端部には、前記チャックリング6の前鍔部6aの後端面が当接しており、前記中子8には、前記チャック体5及びチャックリング6の一部が内包されている。符号15は、前記チャック体5や芯タンク10を後方に向けて付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である。その弾撥部材15は、前記中子8の前方内部に形成された内面段部8hと芯タンク13の前方外周に形成された外周段部13bとの間に張設されている。
【0035】
本例においても、前記先部材3の後方には中軸セット7が配置されており、前記先部材3の後端面3dは前記中軸セット7の中子8の前端面8aと当接している。この時、前記先部材3の後方部の外径は、前記中軸セット7の中子8の前方部の外径と同径となっている。
このように、本例においても、前記先部材3と中軸セット7の中子8とを当接させたので、それら先部材3と中軸セット7とからなるシャープペンシルユニット9の外径が先部材3の外径に左右されない。即ち、先部材3の外径を、中軸セット7の外径より太くすることも細くすることも出来る。このように、先部材3の外径を任意の大きさに設定することが出来るため、前軸筒(筒状部材)1の内部におけるシャープペンシルユニット9や前軸筒(筒状部材)1の外径の調整が可能となり、従来よりもシャープペンシルのデザインの幅を広げることが出来る。
【0036】
また、本例においては、前述の通り、チャックリング6はその後方部が前記中軸セット7の中子8内に位置し、前記チャックリング6の前鍔部6aが先部材3の内径大径部3iに位置する構成となっている。即ち、先部材3内におけるチャックリング6の摺動領域Yの長さ(図29)が、第1実施例の先部材3内におけるチャックリング6の摺動領域Xの長さ(図3)と比較して、短く構成される。
更には、本例においては、チャックリング6の後方部が前記中軸セット7の中子8内に位置しているため、中軸セット7の中子8からのチャック体5及びチャックリング6の突出割合が、第1実施例に比較して少なく、チャック体5及びチャックリング6の中軸セット7に対する安定感が増したものとなっている。このため、前記中軸セット7を前軸筒(筒状部材)1、ひいては、その前軸筒1の前方内部に固定された先部材3に挿入する際に、チャック体5やチャックリング6が、軸筒の内壁や先部材3の後端部に当接するなどして挿入の邪魔になることがなく、中軸セット7の無理な挿入防止や組み立て時間の短縮を図ることができる。また、同時に、万が一、中軸セット7を落下させてしまったとしても、チャック体5が曲がってしまったり、折れてしまったりする恐れがより低いものとなっている。
【0037】
なお、本例における他の部分の構成、即ち、中軸セット7の軸筒への固定方法や、シャープペンシル全体の構成などについても詳述する。
まず、前記中軸セット7の軸筒への固定方法について、説明する。本例においても、第1実施例同様に、中軸セット7を先部材3と後軸筒2とで狭持している。詳述すると、中軸セット7の前方部は、前述の先部材3と中子8との当接により、位置決めされている。そして、シャープペンシルユニットの後方部は、後軸筒2内に形成された内面段部2cにより、位置決めされている。中軸セット7の後方を後軸筒2内に挿入した状態で、前軸筒1を後軸筒2にネジ螺合させていくと、前記中子8が完全に狭持された時点で前記ネジ螺合が完了し、中子8が軸筒に対して固定される。結果として、中軸セット7が軸筒に対して固定される。
ここで、本例においては、前軸筒1のネジ部(雌ネジ部)1hの前方に形成された段部1iから、前軸筒1の前方に形成した環状凸部1jの後方の間にグリップ部1kを形成しており、このグリップ部1kの外周面にエラストマーからなるグリップ23を装着している。そして、そのグリップ23の全長を、前記グリップ部1kの長さよりも長くしている。これにより、中子8の全長にばらつきがあった場合に起こる軸筒の全長のばらつきを吸収し、シャープペンシルの外観を良好に保っている。仮に、中子8の全長に寸法誤差などのばらつきがあった場合には、ネジ螺合の完了位置が変化してしまい、軸筒の全長が変化しまう。しかしながら、グリップ23の全長をグリップ部1kよりも長く形成することにより、中子8が短い場合、即ち、軸筒の全長が短くなる場合は、グリップ23が潰れ、一方、中子8が長い場合、即ち、軸筒の全長が長くなる場合には、装着時のグリップ23の長さを保つこととなる。そして、いずれの場合にも、シャープペンシルの外観を良好に保つことができる。また、ばらつきをシャープペンシルの機能とは直接関係のないグリップ23で吸収するため、例えば、芯の繰り出し機能や、チャック体の芯把持力などのシャープペンシルとしての実機能への影響は全く無い。
なお、前記後軸筒2の内面段部2cは、その内面段部2cから後方に形成された4点のリブ部2dの前端面から形成されている(図29、図30)。一方、前記芯タンク13の消しゴム受け部13aも、4点のリブ部13cが形成されており、この芯タンク13のリブ部13cは、前記後軸筒2のリブ部2d間に収まるよう形成されている。このため、前述の組み立て時において後軸筒2内に中軸セット7を挿入した際に、後軸筒2のリブ部2d間に芯タンク13のリブ部13cを収めることで、芯タンク13の後軸筒2に対する回転が規制される。
【0038】
この他、本例においては、前記グリップ23には、縦断面が台形状の円周状ヒダ部23aが軸筒方向に連続して一定間隔で形成されている。これにより、把持した際に、前記円周状ヒダ部23が倒れ、凹凸のない筒体からなるグリップと比較し、柔らかい感触が得られる。さらに、把持した際に、握持部分のヒダ部が倒れることによるフィット感も得ることができる。また、前記グリップ23の材料の硬度を変えた場合には、前記ヒダ部の倒れやすさを変化させることができ、把持した際の感触に柔らかさの強弱や、指へのフィット具合などに変化を作る事ができる。
なお、本例においては、前記ノック18を2部品から構成しており、前記ノック18の押圧部にはエラストマーからなるノックカバー18aが装着されている。
また、後軸筒の後方外周部には、外径方向に突出したクリップ装着部2eが形成されており、このクリップ装着部2eには、横断面がコの字型の金属製のクリップ19が装着されている。
【0039】
更に、第3実施例を図31、図32に示す。第1実施例のシャープペンシルユニットにおいて、先部材3と中子8との当接の仕方を変えた例である。以下、第1実施例と同様の構成については、記述を割愛する。
本例においては、先部材3の後方外周部に略円形状の切り欠き部3kを対向する位置に形成する一方、中子8に先部材3の前記切り欠き部3kに対応する略円形状の突部8iを形成した。この先部材3の切り欠き部3kと中子8の突部8iとが当接・係合するように中軸セット7を前軸筒(筒状部材)1に組み立てる。このような構成とすることで、中軸セット7を外したときに、先部材3も共に外すことができるため、芯折れ時などの芯の除去がしやすくなっている。
そして、本例においても、前記先部材3と中軸セット7の中子8とを当接させたので、それら先部材3と中軸セット7とからなるシャープペンシルユニット9の外径が先部材3の外径に左右されない。即ち、先部材3の外径を、中軸セット7の外径より太くすることも細くすることも出来る。このように、先部材3の外径を任意の大きさに設定することが出来るため、前軸筒(筒状部材)1の内部におけるシャープペンシルユニット9や前軸筒(筒状部材)1の外径の調整が可能となり、従来よりもシャープペンシルのデザインの幅を広げることが出来る。
【符号の説明】
【0040】
1 前軸筒(筒状部材)
1a 1次成形軸
1b 2次成形グリップ
1c 延設部
1d リブ部
1e リブ部
1f リブ部
1g 内段部
1h ネジ部(雌ネジ部)
1i 段部
1j 環状凸部
1k グリップ部
2 後軸筒(筒状部材)
2a 端面
2b 内面段部
2c 内面段部
2d リブ部
2e クリップ装着部
3 先部材
3a ガイドリブ
3b ガイドリブ
3c 当接部(段部)
3d 後端面
3e ガイドリブ
3f ガイドリブ
3g 当接部(段部)
3h 外径大径部
3i 内径大径部
3j 外段部
3k 切り欠き部
4 戻り止め
5 チャック体
6 チャックリング
6a 前鍔部
7 中軸セット
8 中子
8a 前端面
8b 後端面
8c 全周突部(膨出部)
8d 突部(膨出部)
8e ガイド部
8f 切り欠き部
8g 突部(膨出部)
8h 内面段部
8i 突部
9 シャープペンシルユニット
10 芯
11 スプリング
11a 後端面
12 パイプ部材(筒状部材)
12a リブ部
12b パイプ部
12c 前端面
12d 後端面
13 芯タンク
13a 消しゴム受け部
13b 外周段部
13c リブ部
14 中継ぎ部材
15 弾撥部材
16 消しゴム受け
16a 鍔部
17 消しゴム
18 ノック
18a ノックカバー
19 クリップ
20 密着スプリング
20a 端面研削部
21 弾性スプリング(弾撥部材)
22 リング部材(膨出部)
22a ガイド部
23 グリップ
23a 円周状ヒダ部
T1 肉厚
T2 肉厚
X 摺動領域
Y 摺動領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、芯の把持・開放を行うチャック体を含むシャープペンシルユニットが配置されたシャープペンシルであって、前記シャープペンシルユニットを先部材と、中子を有する中軸セットとから構成し、前記先部材と前記中軸セットの中子とを当接させたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記先部材を前記軸筒に固定したことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記先部材の前記軸筒への固定を、前記先部材の中間部と後方部に形成したガイドリブによってなすと共に、中間部に形成したガイドリブによる固定力を後方部に形成したガイドリブによる固定力よりも大きくしたことを特徴とする請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記中軸セットの前方部に膨出部を形成し、その膨出部の外径を、その膨出部の外方に位置する前記軸筒の内径よりも若干小径としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−131215(P2012−131215A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185190(P2011−185190)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】