説明

シュリンク包装方法

【課題】熱伝達効率に優れ、シュリンクフィルム等のシュリンク包材の所定の部位を部分的に収縮させて容器等の被包装物品を簡単にシュリンク包装することができる、シュリンク包装方法を提供する。
【解決手段】シュリンクフィルム20を加熱して、容器等の被包装物品Wをシュリンク包装するシュリンク包装方法であって、光エネルギーを吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層22が所定の部位に配設されたシュリンクフィルム20を準備する工程と、被包装物品Wを1個または複数個をまとめてシュリンクフィルム20で被せるか巻き付けて被包した後、光を照射して、シュリンク包材の熱エネルギー変換層を熱収縮させる工程とを含むことを特徴とする、シュリンク包装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シュリンク包装方法に関し、PETボトル等のプラスチックボトル、ガラス瓶、缶等の容器、コンビニエンスストア等の店頭で陳列・販売されるインスタント食品、弁当、各種食品の容器、その他、各種被包装物品のシュリンク包装に適用される、シュリンク包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の背景となる従来のシュリンク包装には、熱収縮性を有する包装フィルム(シュリンクフィルム)をオーバーラップさせた製品をコンベヤにより収縮トンネル内に通過させることによって、収縮トンネル内で包装フィルムが加熱され、収縮し、製品を緊密に包装する方法があった(例えば、特許文献1参照)。収縮トンネルは、断熱構造の角筒状に形成され、ヒータおよびブロワを有する。ブロワに吸入された空気は、ヒータに送られて加熱され、その熱風が包装フィルムに吹き付けられた後、熱風はブロワに吸入されて、収縮トンネル内を循環する。この場合、包装フィルムは、その上方、側方および下方から加熱され、これによって包装フィルムが収縮し、製品が緊密に包装される。
ところが、このシュリンク包装では、シュリンクフィルムに伝熱して収縮するのに時間が掛かるために、目的以外の容器や中身(内容物)を加熱することになって熱効率が悪いものとなっている。しかも、当該容器の中身(内容物)が耐熱性の無い物の場合、当該中身(内容物)が変質ないし変性する恐れを有するものとなっている。
【0003】
そこで、省エネルギーの状態でシュリンク処理ができるシュリンクトンネルが提案されている。このシュリンクトンネルは、移送用コンベヤ部と発熱炉部と排風管部とから構成され、移送用コンベヤ部のコンベヤは、進行速度が異なる左右のコンベヤ用ベルトでなり、発熱炉部はコンベヤを覆うよう断熱構造のケースと、このケースの側面に取付けられた遠赤外線パネルヒータとから構成され、排風管部は、発熱炉部に設けた耐熱形送風機と、発熱炉部に開口された耐熱形送風機の吸込口と、耐熱形送風機の排風口と、排風口に連結されたコンベヤに沿って配設された左の配風管群と、右の配風管群とから構成されている(例えば、特許文献2参照)。
このシュリンクトンネルを用いたシュリンク包装では、発熱された高温の空気が発熱炉部内に充満され、上部の高温の空気が耐熱用ファンにて吸気すると同時に、急速に発熱炉部内に排出すると云う状態で循環がなされ、配風管からは90〜95℃の一定温の熱風がシュリンクフィルムに強制送風されて、シュリンクフィルムを収縮させるため、特許文献1に開示されたシュリンク包装に比べて、時間の短縮と発熱炉の小型化が図れるものとなっている。
【0004】
また、本願発明の背景となる従来のシュリンク包装には、熱収縮性の保護フィルムを被せた被加工物をベルトコンベア上に所定間隔で並べて搬送し、加熱用筒を同じ間隔を配して複数個連接して形成した筒群を初期位置から搬送方向と等方向等速度で移動させ、被加工物に向けて降下させて被せつつ、加熱用筒内のノズルから高温水蒸気を被加工物に向けて噴射させて保護フィルムへの熱収縮加工を行い、次いで筒群を搬送方向と等方向等速度で移動させつつ熱収縮加工が終了した被加工物から上昇させて抜き、筒群を初期位置まで戻し、以下同様の手順を繰り返す包装方法があった(例えば、特許文献3参照)。
この方法では、群移送機構の1行程で複数個の被加工物に同時に熱収縮加工を施すことができるので、単位時間当りの熱加工能率は、被加工物の長さや搬送手段の搬送速度に依存することなく、1つの筒群を構成する加熱用筒の数または列を増せば増すほど熱加工能率を高くすることができるものとなっている。
【0005】
【特許文献1】実開平5−94110号公報
【特許文献2】特開平8−183518号公報
【特許文献3】特開平6−298227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献2に示すようなシュリンク包装では、特許文献1に示すシュリンク包装に比べて熱効率を上げて、熱収縮にかかる時間の短縮と発熱炉の小型化が図れるものの、熱の媒体が空気であり、伝達経路を所定の大きさ(容積)を有するシュリンクトンネル内の空間とするものなので、未だ、シュリンフィルムに対する熱伝導率が小さいものであった。そして、この特許文献2のシュリンク包装の場合も、シュリンクフィルムと同時にボトル等の容器および当該容器内の中身(内容物)が加熱されるため、耐熱温度および熱変形温度が低く、熱容量が小さい被包装物品では熱影響によって当該被包装物品が変形したり、当該被包装物品の中身(内容物)が変質ないし変性する恐れが否めないものであった。
【0007】
一方、特許文献3に示すようなシュリンク包装は、空気よりも比熱が大きい高温水蒸気を熱媒体とする、所謂、湿式法、特に、蒸気式によるシュリンク包装であるため、上記した特許文献1および特許文献2に示すような乾式法によるシュリンク包装よりも、熱損失が少なく、熱収縮にかかる時間をより短縮することができるという利点を有しているものの、熱媒体である高温水蒸気が約100℃であるため、被包装物品に密着されるシュリンクフィルムの端部が湾曲したり、歪んだりする状態となり、商品価値が損なわれる恐れがあった。その上、蒸気発生装置、蒸気配管、自動制御弁、筒群上下移送機構および筒群水平移送機構等の装置が必要となって、装置自体が複雑化・大型化しメンテナンスに手間がかかりランニングコストも高くつくものであった。
【0008】
なお、湿式法のシュリンク包装には、特許文献3に示すような蒸気式以外にも、たとえば温水シャワー式または温水浴式なども見受けられる。これらの方法では、温水を熱媒体としているため、蒸気式と同様、乾式法によるシュリンク包装に比べて、熱損失が少なく、熱収縮にかかる時間を短縮することができる。また、熱媒体である温水の温度を装置外の環境条件に影響されずに安定的に設定・制御することで、安定した品質管理を行うことができる。しかし、温水シャワー式または温水浴式によるシュリンク包装では、水の浸入・付着があってはならない被包装物品には勿論適用することはできず、適用可能な被包装物品であっても、シュリンク包装後には、被包装物品に付着した水を除去・乾燥する装置と時間が必要となり手間のかかるものであった。
【0009】
さらに、上記した従来の乾式法および湿式法によるいずれのシュリンク包装においても、容器等の被包装物品に包装される包装フィルム(シュリンクフィルム)を部分的または選択的に熱収縮させてシュリンク処理することは、極めて困難なものであった。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、熱伝達効率に優れ、シュリンクフィルム等のシュリンク包材の所定の部位を部分的に収縮させて容器等の被包装物品を簡単にシュリンク包装することができる、シュリンク包装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1にかかる本願発明は、シュリンクフィルム等の熱収縮性を有するシュリンク包材を加熱して、容器等の被包装物品をシュリンク包装する包装方法であって、光エネルギーを吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層が所定の部位に配設されたシュリンク包材を準備する工程と、被包装物品を1個または複数個をまとめてシュリンク包材で被せるか巻き付けて被包した後、光を照射して、前記シュリンク包材の前記熱エネルギー変換層を熱収縮させる工程とを含むことを特徴とする、シュリンク包装方法である。
請求項1にかかる本願発明では、シュリンク包材の所定の部位に配設された熱エネルギー変換層は、光エネルギーを吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する作用を有するので、被包装物品を1個または複数個をまとめてシュリンク包材で被包した後、被包装物品に被包されたシュリンク包材に光を照射することによって、当該熱エネルギー変換層の部位だけに光エネルギーが集中的に吸収され、当該熱エネルギー変換層は効率的に加熱(発熱)される。そのため、当該熱エネルギー変換層の部位は、熱収縮して被包装物品に密着する。したがって、シュリンク包材は、被包装物品を1個または複数個をまとめて固定・保持することが可能となる。熱エネルギー変換層は、シュリンク包材の所定の部位に形成されているため、当該所定の部位が部分的・選択的に加熱(発熱)されることによって、熱収縮するものとなる。つまり、熱収縮させたい部位だけが光エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換されて、効率的に加熱(発熱)させることが可能なものとなっている。一方、当該シュリンク包材において、熱エネルギー変換層が形成されていない部位は、光エネルギーが殆ど吸収されないために加熱(発熱)されることがない。
それゆえ、請求項1にかかる本願発明では、従来の乾式法および湿式法のシュリンク包装に比べて、熱伝達効率が非常に優れたものとなっている。また、シュリンク包装される被包装物品の中身(内容物)が熱影響により変質ないし変性する恐れもない。
請求項2にかかる本願発明は、請求項1にかかる発明に従属する発明であって、熱エネルギー変換層は、赤外線を吸収して発熱する物質を含み、光エネルギーは、赤外線を含むことを特徴とする、シュリンク包装方法である。
請求項2にかかる本願発明では、赤外線を含む光エネルギーが被包装物品に被包されたシュリンク包材に照射されると、赤外線を吸収して発熱する物質によって、光エネルギーが、当該熱エネルギー変換層に集中的に吸収される。すなわち、当該熱エネルギー変換層の部位が効率よく加熱(発熱)されるため、シュリンク包材は、当該熱エネルギー変換層の部位が熱収縮して被包装物品に密着し、被包装物品を1個または複数個をまとめて固定・保持することが可能となっている。
請求項3にかかる本願発明は、請求項1または請求項2にかかる発明に従属する発明であって、熱エネルギー変換層は、赤外線を吸収する着色層を含むことを特徴とする、シュリンク包装方法である。
請求項3にかかる本願発明では、熱エネルギー変換層が赤外線を吸収する着色層を含むので、赤外線が集中的に吸収される。そのため、当該熱エネルギー変換層の部位を効率よく加熱(発熱)させることが可能となっている。
請求項4にかかる本願発明は、請求項3にかかる発明に従属する発明であって、着色層は、黒色または紺色であることを特徴とする、シュリンク包装方法である。
請求項4にかかる本願発明では、着色層は、黒色または紺色であるため、赤外線が集中的に吸収されるため、当該熱エネルギー変換層の部位をより一層効率よく加熱(発熱)させることが可能となっている。
請求項5にかかる本願発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシュリンク包装方法に用いられるシュリンク包装機であって、被包装物品を1個または複数個をまとめてシュリンク包材で被せるか巻き付けて被包する被包装置と、被包装置で被包されたシュリンク包材に光を照射する光源とを含み、シュリンク包材の熱エネルギー変換層が熱収縮される、シュリンク包装機である。
請求項5にかかる本願発明では、被包装置により、被包装物品が1個または複数個がまとめてシュリンク包材で被せるか巻き付けて被包される。その後、光源からの光は、被包装置で被包されたシュリンク包材に照射される。このとき、当該熱エネルギー変換層の部位だけに光エネルギーが集中的に吸収され、当該熱エネルギー変換層は効率的に加熱(発熱)される。そのため、当該熱エネルギー変換層の部位は、熱収縮して被包装物品に密着される。したがって、当該シュリンク包装機によって、シュリンク包材が被包装物品を1個または複数個をまとめて固定・保持することが可能となっている。
請求項6にかかる本願発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシュリンク包装方法、または、請求項5に記載のシュリンク包装機によりシュリンク包装されたことを特徴とする、シュリンク包装体である。
請求項6にかかる本願発明では、当該シュリンク包装体が、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシュリンク包装方法、または、請求項5に記載のシュリンク包装機によりシュリンク包装されるため、従来の乾式法および湿式法のシュリンク包装に比べて、熱伝達効率が非常に優れたものとなっていて、また、シュリンク包装される被包装物品の中身(内容物)も、従来のシュリンク包装に比べて、熱影響による変質ないし変性を防止することが可能となっている。すなわち、請求項6にかかるシュリンク包装体では、被包装物品に被包されたシュリンク包材の熱エネルギー変換層の部位に光エネルギーが集中的に吸収されて加熱(発熱)されるため、当該熱エネルギー変換層の部位は、効率よく短時間で熱収縮して被包装物品に密着する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明よれば、熱伝達効率に優れ、シュリンクフィルム等のシュリンク包材の所定の部位を部分的に収縮させて容器等の被包装物品を簡単にシュリンク包装することができる、シュリンク包装方法が得られる。
【0013】
本願発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明にかかるシュリンク包装方法は、シュリンクフィルム等の熱収縮性を有するシュリンク包材を加熱して、容器等の被包装物品をシュリンク包装する方法であって、特に、シュリンクフィルム等のシュリンク包材の所定の部位に、光エネルギーを吸収して当該光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層を配設するか、あるいは、所定の部位に当該熱エネルギー変換層が配設されたシュリンク包材を準備し、さらに、被包装物品を1個または複数個をまとめて当該シュリンク包材で被せるか巻き付けて被包した後、シュリンク包材の熱エネルギー変換層に光を照射して、当該熱エネルギー変換層を加熱(発熱)させ、シュリンク包材を熱収縮させることによって、当該シュリンク包材を容器等の被包装物品に密着させるシュリンク包装方法である。
【0015】
図1は、本願発明にかかるシュリンク包装方法の基本的考えを示す図解図であって、本願発明にかかるシュリンク包装方法によりシュリンク包材の一例が熱収縮される状態を示す平面図解図である。
本願発明の発明者は、たとえば図1および図2に示すように、シュリンクフィルム等の熱収縮性を有するシュリンク包材10に、白熱灯等の光源100からの光エネルギーを集中的に吸収して当該光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層12を配設し、当該熱エネルギー変換層12に、光源100からの光を照射することによって、当該熱エネルギー変換層12が加熱(発熱)されて熱収縮することを見出した。
【0016】
図1に示すシュリンク包材10は、横方向に収縮可能のシュリンクフィルムで形成されているため、その熱エネルギー変換層12に光源100からの光が照射されると、当該シュリンク包材10は、図1に示すように、横方向に収縮する態様となっている。また、図2に示すシュリンク包材10は、縦方向に収縮可能のシュリンクフィルムで形成されているため、その熱エネルギー変換層12に光源100からの光が照射されると、当該シュリンク包材10は、図2に示すように、縦方向に収縮する態様となっている。
【0017】
さらに、本願発明者の実験によれば、熱エネルギー変換層12が赤外線を吸収する着色層を含むことにより、当該熱エネルギー変換層12により一層集中的に光エネルギーが吸収されて、当該熱エネルギー変換層12の発熱作用を高められることが妥当性を有する程度に推測された。
図3は、着色層の色の違い、光の明るさ〔光エネルギー量:W(ワット)〕の違い、および、光源から熱エネルギー変換層表面までの距離の違いによる熱エネルギー変換層の発熱温度の違いを推測するための実験方法の一例を示す図解図である。
この実験方法では、先ず、試料300として、耐熱性を有するたとえば平面視矩形のプラスチックフィルムが準備される。この実験方法では、融点がたとえば250℃で厚みがたとえば12μmの非熱収縮性のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられた。この場合、試料300の一方主面の全面に、たとえば黒色のインキを約1μm塗布することにより、図3に示すように、黒色の着色層を形成した試料300が準備される。同様にして、紺色、青色、緑色、赤色および白色の着色層を形成した試料300(図3では黒色の着色層を形成した試料だけを図示しており、その他の色の着色層を形成した試料は図示していない。)が、それぞれ、準備された。
次に、黒色の着色層を形成した試料300の中心部に対して、白熱灯等の光源100からの光が照射された。この実験方法では、光源として、100Wの白熱灯Wおよび40Wの白熱灯(それぞれ、例えば、松下電工株式会社製)が用いられた。また、試料300の表面から光源100までの距離は、たとえば5cm,10cmおよび15cmに設定された。光の照射時間は、それぞれの距離において、たとえば10秒間に設定された。
そして、光が照射された試料300の照射中心部表面の温度が、赤外線放射温度形(例えば、株式会社佐藤計量器製作所製)等の非接触温度形200によって測定された。なお、試料300の表面の初期温度は、25℃であった。
【0018】
[表1]は、上記した実験結果を示す表であり、図4の(A),(B)は、[表1]に示した実験結果を示す折れ線グラフである。
【0019】
【表1】

【0020】
さらに、本願発明者は、上記した実験方法において、光源として、100Wの白熱灯のみを使用し、光の照射時間をたとえば5秒後および10秒後に達したときの黒色、紺色、青色、緑色、赤色および白色の着色層を形成した試料300の照射中心部表面の温度を測定した。[表2]は、その温度測定結果を示す表であり、図5の(A),(B)は、[表2]に示した実験結果を示す折れ線グラフである。また、図6は、[表2]に示した実験結果に基づき、光源からの試料表面までの距離を一定にしたときの着色層の色の違いおよび照射時間の違いによる試料表面の発熱温度の違いを示す棒グラフである。
【0021】
【表2】

【0022】
本願発明者の実験結果によれば、[表1]、[表2]、図4の(A),(B)および図5の(A),(B)からも明らかなように、試料300の表面から光源100までの距離および光の明るさ〔光エネルギー量:W(ワット)〕が同じ条件に設定されていれば、黒色の着色層が形成された試料300は、他の色の着色層が形成された試料300よりも、光が照射された試料300の照射中心部表面の温度が高くなっており、また、黒色以外では、紺色が高くなっており、それ以外の青色、緑色、赤色および白色はあまり温度差のないものであった。
さらに、本願発明者の実験結果によれば、特に、[表2]、図5の(A),(B)および図6から明らかなように、黒色と紺色とは、他の色と比べて、5秒後から10秒後にかけての温度上昇率が高いものとなっている。
【0023】
この実験結果を考察すると、光源100が白熱灯(白熱電球)やハロゲンランプからの光である場合、それらの発光原理からみると、フィラメントからは可視光よりも赤外線域の波長の光エネルギーが多く放出されるので、光源100で消費された大部分は、赤外線放射(熱線)として放出され、残りの部分が可視光として放出される。したがって、赤外線を多く含んだ光源100からの光エネルギーは、黒色の着色層に集中的に吸収されるため、当該光エネルギーは、極めて効率よく熱エネルギーに変換されて、加熱(発熱)される。このことは、黒色の着色層には、黒色のインキの顔料に含まれるカーボンブラック等の赤外線を効率よく吸収して発熱する物質に起因するものと考えられる。
【0024】
図7は、本願発明にかかるシュリンク包装方法の一例を示す図であって、シュリンク包材を被包装物品で被包する状態の一例を示す要部分解斜視図である。また、図8は、本願発明にかかるシュリンク包装方法の一例を示す図であって、図7に示した被包装物品に被包されたシュリンク包材に光を照射して、シュリンク包装させる状態の一例を示す要部分解斜視図である。
本実施形態例にかかるシュリンク包装方法は、シュリンク包材として、ポリエステル、ポリスチレン等の熱収縮性を有するシュリンクフィルム20を加熱して、PETボトル等のプラスチックボトル容器W(以下、「被包装物品W」という。)をシュリンク包装するシュリンク包装方法であって、先ず、光エネルギーを吸収して当該光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層22が所定の部位に配設された平面視矩形状のシュリンクフィルム20(図示せず)が準備される工程を含む。シュリンクフィルム20は、その一方主面にたとえば碁盤格子縞状に形成された熱エネルギー変換層22を有する。熱エネルギー変換層22は、カーボンブラック等の赤外線を効率よく吸収して発熱する物質を有する顔料を含む黒色インキによって印刷された黒色の印刷層で形成されている。
【0025】
次に、熱エネルギー変換層22を有する平面視矩形状のシュリンクフィルム20(図示せず)は、図7に示すように、適宜、丸められて、たとえば円筒状の態様に配置される。 さらに、当該円筒状の態様のシュリンクフィルム20は、図8に示すように、たとえば1つの被包装物品Wの胴部に被せるか巻き付けて被包される。その後、被包装物品Wの胴部に被包されたシュリンクフィルム20は、白熱灯ないしハロゲンランプ等の光源100からの光が照射される。光源100からの光エネルギーに含まれる赤外線は、熱エネルギー変換層22に集中的に吸収されるので、当該熱エネルギー変換層22の部位が部分的・選択的に極めて効率よく加熱(発熱)される。このとき、シュリンクフィルム20は、当該熱エネルギー変換層22の部位で瞬時に熱収縮されるため、被包装物品Wに密着されて固定・保持される。
【0026】
この場合、本実施形態例にかかるシュリンク包装方法では、上記した平面視矩形状のシュリンクフィルム20(図示せず)が、たとえばシュリンク包装機(図示せず)によって、円筒状の態様に配置され、被包装物品Wの胴部に被せられて被包される。シュリンク包装機(図示せず)は、被包装物品Wを1個または複数個をまとめてシュリンクフィルム20で被せるか巻き付けて被包する被包装置(図示せず)と、熱エネルギー変換層22に光を照射する光源100とを含むものである。
【0027】
本実施形態例にかかるシュリンク包装方法では、シュリンクフィルム22の所定の部位に形成された熱エネルギー変換層22が光エネルギーに含まれる赤外線を集中的に吸収して加熱(発熱)されることによって、シュリンクフィルム22の所定の部位を部分的・選択的に熱収縮させることができる。一方で、熱エネルギー変換層22が形成されていない部位は、光エネルギーが殆ど吸収されないために加熱(発熱)されることを極力抑制することができる。つまり、このシュリンク包装方法は、従来の乾式法および湿式法のシュリンク包装に比べて、熱伝達効率が非常に優れたものとなっていると共に、シュリンク包装される被包装物品Wの中身(内容物)が熱影響により変質ないし変性する恐れも防止することができる。
【0028】
また、本実施形態例にかかるシュリンク包装方法では、熱エネルギー変換層22が碁盤格子縞状に形成され、熱エネルギー変換層22の部位だけが熱収縮されるため、シュリンクフィルム22が被包装物品Wにシュリンク包装されて形成されるシュリンク包装体30には、たとえば図8の下図に示すように、その中に空気層(図示せず)を備えた碁盤格子縞状の複数の断熱部24が配設されることとなる。この場合、断熱部24は、碁盤格子縞状の熱エネルギー変換層22間に配設され、断熱効果を奏するものとなり、且つ、緩衝部としての機能をも併せ持つものとなっている。
【0029】
図9は、本願発明にかかるシュリンク包装方法の他の例を示す要部分解斜視図である。このシュリンク包装方法では、上述のシュリンク包装方法と比べて、特に、シュリンクフィルムの所定の部位に配設される熱エネルギー変換層の配置(配列)が相違している。すなわち、図8に示すシュリンクフィルム20の熱エネルギー変換層が碁盤格子縞状に形成されているのに対して、図9に示すシュリンクフィルム40では、熱エネルギー変換層42が、平面視矩形状のシュリンクフィルム(図示せず)の幅方向に所定の間隔を隔てて且つ長手方向に延び設けられる複数の縞状に形成されている。このシュリンクフィルム40は、シュリンク包装機(図示せず)によって円筒状の態様に配置された場合、円筒状のシュリンクフィルム40の軸方向に所定の間隔を隔てて且つ胴部の円周方向に周回するストライプとなっている。
【0030】
図9に示すシュリンク包装方法では、当該円筒状のシュリンクフィルム40が被包装物品Wの胴部にシュリンク包装されてシュリンク包装体50が形成された場合、当該シュリンク包装体50は、縞状の熱エネルギー変換層42間に、図7,図8に示した断熱部24と同様の作用・効果を奏する断熱部44が配設されるものとなっている。
【0031】
図9に示すシュリンクフィルム40では、熱エネルギー変換層42が、平面視矩形状のシュリンクフィルム(図示せず)の幅方向に所定の間隔を隔てて且つ長手方向に延び設けられる複数の縞状の態様に形成されたが、当該熱エネルギー変換層42は、たとえば図10に示すように、平面視矩形状のシュリンクフィルム(図示せず)の長手方向に所定の間隔を隔てて且つ幅方向に延び設けられる複数の縞状の態様に形成されてもよい。この場合、シュリンクフィルム40が、シュリンク包装機(図示せず)によって円筒状の態様に配置された場合、円筒状のシュリンクフィルム40の胴部の円周方向に所定の間隔を隔てて且つ軸方向に延びるストライプとなっている。
【0032】
なお、熱エネルギー変換層は、図7,図8,図9および図10に示した態様の配置(配列)に限定されるものではなく、たとえば図1,図2に示したシュリンク包材10に配置(配列)された熱エネルギー変換層12の態様に形成されても良く、当該熱エネルギー変換層の態様は、シュリンクフィルムがシュリンク包装される被包装物品Wの用途,種類、被包装物品Wの中身(内容物)およびシュリンク包装の目的等に応じて、種々の配置(配列)パターンに形成され得るものである。
【0033】
上述の各実施形態例にかかるシュリンク包装方法では、1個の被包装物品にシュリンクフィルムが被包されたが、そのような態様に限定されるものではなく、単体の被包装物品を複数個まとめて固定・保持するためのシュリンク包装の態様にも適宜用いられ得るものである。また、上述の各実施形態例にかかるシュリンク包装方法では、被包装物品Wをシュリンクフィルム20,40等でシュリンク包装することによりシュリンク包装体30,50等が形成されたが、本願発明にかかるシュリンク包装方法は、たとえばガラス瓶やペットボトルのような有底円筒状容器(被包装物品)の胴部外周面に嵌め込んで使用するシュリンクラベルにも適宜採用され得るものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明にかかるシュリンク包装方法の基本的考えを示す図解図であって、本願発明にかかる包装方法によりシュリンク包材の一例が熱収縮される状態を示す平面図解図である。
【図2】本願発明にかかるシュリンク包装方法の基本的考えを示す図解図であって、本願発明にかかる包装方法によりシュリンク包材の他の例が熱収縮される状態を示す平面図解図である。
【図3】着色層の色の違い、光の明るさ〔光エネルギー量:W(ワット)〕の違い、および、光源から熱エネルギー変換層表面までの距離の違いによる熱エネルギー変換層の発熱温度の違いを推測するための実験方法の一例を示す図解図である。
【図4】(A),(B)は、[表1]に示した実験結果を示す折れ線グラフである。
【図5】(A),(B)は、[表2]に示した実験結果を示す折れ線グラフである。
【図6】[表2]に示した実験結果に基づき、光源からの試料表面までの距離を一定にしたときの着色層の色の違いおよび照射時間の違いによる試料表面の発熱温度の違いを示す棒グラフである。
【図7】本願発明にかかるシュリンク包装方法の一例を示す図であって、シュリンク包材を被包装物品の被包する状態の一例を示す要部分解斜視図である。
【図8】本願発明にかかるシュリンク包装方法の一例を示す図であって、図7に示した被包装物品に被包されたシュリンク包材に光を照射して、シュリンク包装させる状態の一例を示す要部分解斜視図である。
【図9】本願発明にかかるシュリンク包装方法の他の例を示す要部分解斜視図である。
【図10】本願発明にかかるシュリンク包装方法のさらに他の例を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
10 シュリンク包材
12,22,42 熱エネルギー変換層
20,40 シュリンクフィルム
24,44 断熱部
30,50 シュリンク包装体
100 光源
200 非接触温度形
300 試料
W 被包装物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュリンクフィルム等の熱収縮性を有するシュリンク包材を加熱して、容器等の被包装物品をシュリンク包装するシュリンク包装方法であって、
光エネルギーを吸収して前記光エネルギーを熱エネルギーに変換する熱エネルギー変換層が所定の部位に配設されたシュリンク包材を準備する工程、および
前記被包装物品を1個または複数個をまとめて前記シュリンク包材で被せるか巻き付けて被包した後、光を照射して、前記シュリンク包材の前記熱エネルギー変換層を熱収縮させる工程を含むことを特徴とする、シュリンク包装方法。
【請求項2】
前記熱エネルギー変換層は、赤外線を吸収して発熱する物質を含み、前記光エネルギーは、赤外線を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシュリンク包装方法。
【請求項3】
前記熱エネルギー変換層は、赤外線を吸収する着色層を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシュリンク包装方法。
【請求項4】
前記着色層は、黒色または紺色であることを特徴とする、請求項3に記載のシュリンク包装方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシュリンク包装方法に用いられるシュリンク包装機であって、
前記被包装物品を1個または複数個をまとめて前記シュリンク包材で被せるか巻き付けて被包する被包装置、および
前記被包装置で被包された前記シュリンク包材に光を照射する光源を含み、
前記シュリンク包材の前記熱エネルギー変換層が熱収縮される、シュリンク包装機。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシュリンク包装方法、または、請求項5に記載のシュリンク包装機によりシュリンク包装されたことを特徴とする、シュリンク包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−161191(P2009−161191A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339572(P2007−339572)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(300032949)日新シール工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】