説明

シューズのアッパー構造

【課題】 着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時にアッパーの屈曲性を向上させる。
【解決手段】 シューズのアッパー構造において、シューズ内甲側の前足部領域Fに配設された第1のアッパー部材30と、シューズ内甲側の後足部領域Rに配設され、その前端縁部31aが第1のアッパー部材30の後端縁部30aの上にオーバラップする第2のアッパー部材31とを設ける。足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aが第1のアッパー部材30の上を前後方向にスライドすると同時に、第1のアッパー部材30の後端縁部30aが第2のアッパー部材31の下を前後方向にスライドする。第2のアッパー部材31の前端縁部31aの最下点Aの位置は、足の中足趾節関節MJの位置に対応している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのアッパー構造に関し、詳細には、アッパーの屈曲性を向上させるための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シューズは、ソールと、その上に固着されたアッパー(甲被)とを備えている。アッパーは、典型的には、着用者の足の爪先部、両側面部および踵部を含む足外周部を覆う一体形成型のアッパー本体と、アッパー本体の足甲部分に形成された前後方向の開口に配置された舌革部とを有している。また、アッパー本体を複数の部材から構成したものも種々提案されている。
【0003】
たとえば、特表昭61−501612号公報に記載されたアッパーは、舌片(16)と一体形成された前方つま先部分(14)と、側方部分(20)と、下方つま革区分(30)と、上方つま革区分(32)等とから構成されている。また、特開平2−277405号公報に記載されたアッパーは、上側爪革部分(22)と、下側爪革区分(18)と、対向爪革部分(20)、(24)と、踵区分(26)と、爪先区分(27)とから構成されており、当該公報には、上側爪革部分(22)と下側爪革区分(18)を互いに分離する点が記載されている。
【0004】
さらに、国際公開第2004/093587号パンフレットに記載されたアッパーは、シューズの前方に配置され、足の爪先部を覆う前部(3)と、前部(3)から分離されてシューズの後方に配置され、足の後足部を覆う後部(4)と、前部(3)および後部(4)間に設けられた伸縮領域(50)、(51)とをから構成されている。内甲側の伸縮領域(51)は、足の内側のリスフラン関節の一部およびその近傍部位を覆っており、外甲側の伸縮領域(50)は、第5中足骨遠位骨頭およびその近傍部位を覆っている。
【0005】
上記パンフレットに記載のアッパーは、走行の際の足の屈曲時に伸縮領域(50)、(51)を境にして前部(3)および後部(4)のそれぞれの挙動が大きく異なる点に着目し、前部(3)および後部(4)間の挙動(つまり変形)の違いを伸縮領域(50)、(51)で吸収することによって、アッパーのフィット性を改良しようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記各公報およびパンフレットのいずれにも、着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時にアッパーの屈曲性を向上させる観点からの記載はなく、アッパーの屈曲性を向上させるようにアッパーを分割または分離する点は記載も示唆もされていない。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時にアッパーの屈曲性を向上できるシューズ用アッパー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るシューズのアッパー構造は、シューズの内甲側の前足部領域に配設された第1のアッパー部材と、シューズの内甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第2のアッパー部材とを備えている。
【0009】
請求項1の発明によれば、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時には、シューズの内甲側後足部領域における第2のアッパー部材の前端縁部が、シューズの内甲側前足部領域における第1のアッパー部材の上を(つまり表面に沿って)スライドすると同時に、第1のアッパー部材の後端縁部が第2のアッパー部材の下を(つまり裏面に沿って)スライドする。
【0010】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって吸収でき、その結果、アッパーの屈曲をスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を向上できる。
【0011】
なお、上述した特表昭61−501612号公報に記載のアッパーでは、下方つま革区分(30)の上に上方つま革区分(32)が配設されているが、FIG.1〜3には、下方つま革区分(30)の後端縁部の位置が明確に記載されておらず、上方つま革区分(32)とのオーバラップの仕方も不明瞭である。たとえば、下方つま革区分(30)がアッパーの足甲上部まで延設されている場合には、従来の一体形成型のアッパーと同様の屈曲性を有するだけである。また、上記公報では、FIG.1〜3に明確に示されているように、上方つま革区分(32)の前端縁部がシューズの中足部に配置されているため、当該前端縁部の位置は、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲変形の吸収に対して実質的な影響はほとんどないといえる。
【0012】
また、特開平2−277405号公報に記載のアッパーは、上側爪革区分(22)と下側爪革部分(18)とを分離したことにより、各区分を通る靴紐によって、各区分を他の区分から独立して調整できるようにしてアッパーのフィット性の向上を図ったものであり、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲変形を吸収できるようにアッパーの各部材を分割したものではない。
【0013】
さらに、上述した国際公開第2004/093587号パンフレットに記載のアッパーでは、伸縮領域(51)の伸縮によってアッパー内甲側の屈曲性をある程度上げることは可能であるが、当該パンフレットに記載の伸縮領域(51)の上端は、アッパーの前部(3)および後部(4)が互いに接近して配置されているために、その前後方向長さが短く、収縮量(したがって屈曲性)にも限界がある。その一方、伸縮領域(51)を大きくしようとすると、着用者の足を保護するというアッパー本来の機能を果たし得なくなるため、伸縮領域(51)の前後方向長さをあまり長くすることはできない。したがって、上記パンフレットに記載のアッパー構造では、アッパーの収縮量(したがって屈曲性)に限界がある。
【0014】
これに対して、本願の請求項1の発明では、シューズの前足部領域の側の第1のアッパー部材と、後足部領域の側の第2のアッパー部材とが相互にスライドし得るように互いにオーバラップして設けられているため、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、アッパー内甲側の屈曲部分に生じる皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって確実に吸収でき、これにより、アッパーの屈曲性を向上できる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1において、第2のアッパー部材の前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0016】
この場合、足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足が中足趾節関節で屈曲することになるため、第2のアッパー部材の前端縁部の最下点を足の内甲側の中足趾節関節位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパーがスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパーの屈曲性を効果的に向上できる。
【0017】
なお、上記パンフレットに記載のアッパーでは、内甲側の伸縮領域(51)は、足の内側のリスフラン関節の一部およびその近傍部位を覆っており、これは、中足趾節関節の後方の領域である。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2において、第2のアッパー部材の前端縁部における最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置に配置されている。
【0019】
この場合、当該最下点の位置は、足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0020】
請求項4の発明では、請求項1において、第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分に、摩擦係数の低い素材が設けられている。
【0021】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第1および第2のアッパー部材の相互のスライド移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパーの屈曲性をさらに向上できる。なお、摩擦係数の低い素材としては、たとえばポリエステルやナイロン等の合成繊維またはフィルムが挙げられる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項1において、第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分には、一端が第1のアッパー部材に連結されかつ他端が第2のアッパー部材に連結されるとともに、第1および第2のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第1の袋布部材が設けられている。
【0023】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時において、第2のアッパー部材の前端縁部が第1のアッパー部材の上をスライドするとともに、第1のアッパー部材の後端縁部が第2のアッパー部材の下をスライドするとき、第1の袋布部材の両端がそれぞれ第1、第2のアッパー部材に連結されていることにより、第1、第2のアッパー部材のオーバラップ部分における第1、第2のアッパー部材間の間隙が第1の袋布部材により遮蔽されているので、競技中に砂や小石等の異物が第1、第2のアッパー部材間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第1の袋布部材により防止できる。
【0024】
また、第1の袋布部材が第1、第2のアッパー部材間で袋状に配設されており、第1の袋布部材に弛みが設けられているので、アッパーの屈曲動作の際には、第1の袋布部材が第1、第2のアッパー部材の動きに追随し、これにより、第1、第2のアッパー部材のスライド移動を第1の袋布部材が阻害することはなく、アッパーの屈曲性を維持できる。
【0025】
請求項6の発明では、第2のアッパー部材の前端部に耐摩耗材が設けられている。
【0026】
この場合には、たとえばテニスシューズやバドミントンシューズなどのように、競技中にアッパー内甲側表面がコート面と接触して摩耗するシューズにおいて、アッパー内甲側の耐摩耗性および屈曲性の双方を両立できる。一般に、耐摩耗材は硬い素材で構成されており、また耐摩耗材をアッパー表面に貼着することで当該アッパー部位の厚みが増すため、従来のアッパー一体型のシューズにおいて、アッパーに耐摩耗材を設けた場合には、アッパーの屈曲性が阻害されていた。これに対して、本願の請求項5の発明では、アッパーの屈曲性は、第2のアッパー部材が第1のアッパー部材の上をスライド移動することにより実現されるので、第2のアッパー部材に耐摩耗材を設けることで、アッパーの屈曲性が阻害されることはない。
【0027】
請求項7の発明に係るシューズのアッパー構造は、シューズの外甲側の前足部領域に配設された第3のアッパー部材と、シューズの外甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第4のアッパー部材とを備えている。
【0028】
請求項7の発明によれば、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時には、シューズの外甲側後足部領域における第4のアッパー部材の前端縁部が、シューズの外甲側前足部領域における第3のアッパー部材の上を(つまり表面に沿って)スライドすると同時に、第3のアッパー部材の後端縁部が第4のアッパー部材の下を(つまり裏面に沿って)スライドする。
【0029】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって吸収でき、その結果、アッパーの屈曲をスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を向上できる。
【0030】
なお、上述した国際公開第2004/093587号パンフレットに記載のアッパーでは、伸縮領域(50)の伸縮によってアッパー外甲側の屈曲性をある程度上げることは可能であるが、当該パンフレットに記載の伸縮領域(50)の上端は、アッパーの前部(3)および後部(4)が互いに接近して配置されているために、その前後方向長さが短く、収縮量(したがって屈曲性)にも限界がある。その一方、伸縮領域(50)を大きくしようとすると、着用者の足を保護するというアッパー本来の機能を果たし得なくなるため、伸縮領域(50)の前後方向長さをあまり長くすることはできない。したがって、上記パンフレットに記載のアッパー構造では、アッパーの収縮量(したがって屈曲性)に限界がある。
【0031】
これに対して、本願の請求項7の発明では、シューズの前足部領域の側の第3のアッパー部材と、後足部領域の側の第4のアッパー部材とが相互にスライドし得るように互いにオーバラップして設けられているため、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、アッパー外甲側の屈曲部分に生じる皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって確実に吸収でき、これにより、アッパーの屈曲性を向上できる。
【0032】
請求項8の発明では、請求項7において、第4のアッパー部材の前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0033】
この場合、足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足が中足趾節関節で屈曲することになるため、第4のアッパー部材の前端縁部の最下点を足の外甲側の中足趾節関節位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパーがスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパーの屈曲性を効果的に向上できる。
【0034】
なお、上記パンフレットに記載のアッパーでは、外甲側の伸縮領域(50)は、第5中足骨遠位骨頭およびその近傍部位を覆っており、これは、中足趾節関節を含む領域であるが、上述したように、上記パンフレットに記載のアッパーでは、アッパーの前部(3)および後部(4)が互いにオーバラップして設けられてはいない。
【0035】
請求項9の発明では、請求項8において、第4のアッパー部材の前端縁部における最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている。
【0036】
この場合、当該最下点の位置は、足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0037】
請求項10の発明では、請求項7において、第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分に、摩擦係数の低い素材が設けられている。
【0038】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第3および第4のアッパー部材の相互のスライド移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパーの屈曲性をさらに向上できる。
【0039】
請求項11の発明では、請求項7において、第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分には、一端が第3のアッパー部材に連結されかつ他端が第4のアッパー部材に連結されるとともに、第3および第4のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第2の袋布部材が設けられている。
【0040】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時において、第4のアッパー部材の前端縁部が第3のアッパー部材の上をスライドするとともに、第3のアッパー部材の後端縁部が第4のアッパー部材の下をスライドするとき、第2の袋布部材の両端がそれぞれ第3、第4のアッパー部材に連結されていることにより、第3、第4のアッパー部材のオーバラップ部分における第3、第4のアッパー部材間の間隙が第2の袋布部材により遮蔽されているので、競技中に砂や小石等の異物が第3、第4のアッパー部材間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第2の袋布部材により防止できる。
【0041】
また、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材間で袋状に配設されており、第2の袋布部材に弛みが設けられているので、アッパーの屈曲動作の際には、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材の動きに追随し、これにより、第3、第4のアッパー部材のスライド移動を第2の袋布部材が阻害することはなく、アッパーの屈曲性を維持できる。
【0042】
請求項の12の発明に係るシューズのアッパー構造は、シューズの内甲側の前足部領域に配設された第1のアッパー部材と、シューズの内甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第2のアッパー部材と、シューズの外甲側の前足部領域に配設された第3のアッパー部材と、シューズの外甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第4のアッパー部材とを備えている。
【0043】
請求項12の発明によれば、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時には、シューズの内甲側後足部領域における第2のアッパー部材の前端縁部が、シューズの内甲側前足部領域における第1のアッパー部材の上を(つまり表面に沿って)スライドすると同時に、第1のアッパー部材の後端縁部が第2のアッパー部材の下を(つまり裏面に沿って)スライドし、さらに、シューズの外甲側後足部領域における第4のアッパー部材の前端縁部が、シューズの外甲側前足部領域における第3のアッパー部材の上を(つまり表面に沿って)スライドすると同時に、第3のアッパー部材の後端縁部が第4のアッパー部材の下を(つまり裏面に沿って)スライドする。
【0044】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第1、第2のアッパー部材のスライド移動によって吸収できるとともに、アッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第3、第4のアッパー部材のスライド移動によって吸収できる。その結果、アッパーの屈曲をよりスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を一層向上できる。
【0045】
請求項13の発明では、請求項12において、第2のアッパー部材の前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応するとともに、第4のアッパー部材の前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0046】
この場合、足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足が中足趾節関節で屈曲することになるため、第2のアッパー部材の前端縁部の最下点を足の内甲側の中足趾節関節位置に配置するとともに、第4のアッパー部材の前端縁部の最下点を足の外甲側の中足趾節関節位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパーがよりスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパーの屈曲性を一層効果的に向上できる。
【0047】
請求項14の発明では、請求項13において、第2のアッパー部材の前端縁部における最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置に配置されるとともに、第4のアッパー部材の前端縁部における最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている。
【0048】
この場合、第2のアッパー部材の最下点の位置は、足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応しており、第4のアッパー部材の最下点の位置は、足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0049】
請求項15の発明では、請求項12において、第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分、ならびに第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分に、摩擦係数の低い素材が設けられている。
【0050】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第1および第2のアッパー部材の相互のスライド移動、ならびに第3および第4のアッパー部材の相互のスライド移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパーの屈曲性をさらに向上できる。
【0051】
請求項16の発明では、請求項12において、第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分には、一端が第1のアッパー部材に連結されかつ他端が第2のアッパー部材に連結されるとともに、第1および第2のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第1の袋布部材が設けられ、さらに、第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分には、一端が第3のアッパー部材に連結されかつ他端が第4のアッパー部材に連結されるとともに、第3および第4のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第2の袋布部材が設けられている。
【0052】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時において、第2のアッパー部材の前端縁部が第1のアッパー部材の上をスライドするとともに、第1のアッパー部材の後端縁部が第2のアッパー部材の下をスライドするとき、第1の袋布部材の両端がそれぞれ第1、第2のアッパー部材に連結されていることにより、第1、第2のアッパー部材のオーバラップ部分における第1、第2のアッパー部材間の間隙が第1の袋布部材により遮蔽されているので、競技中に砂や小石等の異物が第1、第2のアッパー部材間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第1の袋布部材により防止できる。
【0053】
また、第1の袋布部材が第1、第2のアッパー部材間で袋状に配設されており、第1の袋布部材に弛みが設けられているので、アッパーの屈曲動作の際には、第1の袋布部材が第1、第2のアッパー部材の動きに追随し、これにより、第1、第2のアッパー部材のスライド移動を第1の袋布部材が阻害することはなく、アッパーの屈曲性を維持できる。
【0054】
さらに、この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時において、第4のアッパー部材の前端縁部が第3のアッパー部材の上をスライドするとともに、第3のアッパー部材の後端縁部が第4のアッパー部材の下をスライドするとき、第2の袋布部材の両端がそれぞれ第3、第4のアッパー部材に連結されていることにより、第3、第4のアッパー部材のオーバラップ部分における第3、第4のアッパー部材間の間隙が第2の袋布部材により遮蔽されているので、競技中に砂や小石等の異物が第3、第4のアッパー部材間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第2の袋布部材により防止できる。
【0055】
また、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材間で袋状に配設されており、第2の袋布部材に弛みが設けられているので、アッパーの屈曲動作の際には、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材の動きに追随し、これにより、第3、第4のアッパー部材のスライド移動を第2の袋布部材が阻害することはなく、アッパーの屈曲性を維持できる。
【0056】
請求項17の発明では、請求項12において、第2のアッパー部材の前端部に耐摩耗材が設けられている。
【0057】
この場合には、たとえばテニスシューズやバドミントンシューズなどのように、競技中にアッパーの内甲側表面がコート面と接触して摩耗するシューズにおいて、アッパー内甲側の耐摩耗性および屈曲性の双方を両立できる。また、この場合、第2のアッパー部材が第1のアッパー部材の上をスライド移動するとともに、第4のアッパー部材が第3のアッパー部材の上をスライド移動することによりアッパーの屈曲性が実現されているので、第2のアッパー部材に耐摩耗材を設けることで、アッパーの屈曲性が阻害されることはない。
【発明の効果】
【0058】
以上のように、本発明の第1の発明に係るシューズ用アッパー構造によれば、シューズの内甲側の前足部および後足部領域にそれぞれ第1、第2のアッパー部材を配設し、第2のアッパー部材の前端縁部を第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップさせるとともに、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第2のアッパー部材の前端縁部を第1のアッパー部材の上でスライドさせると同時に、第1のアッパー部材の後端縁部を第2のアッパー部材の下でスライドさせるようにしたので、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって吸収でき、これにより、アッパーの屈曲をスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を向上できる効果がある。
【0059】
本発明の第2の発明に係るシューズ用アッパー構造によれば、シューズの外甲側の前足部および後足部領域にそれぞれ第3、第4のアッパー部材を配設し、第4のアッパー部材の前端縁部を第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップさせるとともに、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第4のアッパー部材の前端縁部を第3のアッパー部材の上でスライドさせると同時に、第3のアッパー部材の後端縁部を第4のアッパー部材の下でスライドさせるようにしたので、足の蹴り出し動作時にアッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを両アッパー部材のスライド移動によって吸収でき、これにより、アッパーの屈曲をスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を向上できる効果がある。
【0060】
本発明の第3の発明に係るシューズ用アッパー構造によれば、シューズの内甲側の前足部および後足部領域にそれぞれ第1、第2のアッパー部材を配設し、第2のアッパー部材の前端縁部を第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップさせ、シューズの外甲側の前足部および後足部領域にそれぞれ第3、第4のアッパー部材を配設し、第4のアッパー部材の前端縁部を第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップさせるとともに、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第2のアッパー部材の前端縁部を第1のアッパー部材の上でスライドさせると同時に、第1のアッパー部材の後端縁部を第2のアッパー部材の下でスライドさせ、第4のアッパー部材の前端縁部を第3のアッパー部材の上でスライドさせると同時に、第3のアッパー部材の後端縁部を第4のアッパー部材の下でスライドさせるようにしたので、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第1、第2のアッパー部材のスライド移動によって吸収できるとともに、アッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第3、第4のアッパー部材のスライド移動によって吸収でき、これにより、アッパーの屈曲をよりスムーズに行うことができ、アッパーの屈曲性を一層向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施例によるアッパー構造を採用したテニスシューズの内甲側側面図である。
【図2】図1において第2のアッパー部材を開いた状態を示す内甲側側面図である。
【図3】第2および第4のアッパー部材の前端縁部の位置を示すための平面概略図である。
【図4】着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲状態の変化を説明するための図である。
【図5】着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲状態の変化を説明するための図である。
【図6】本発明の別の実施例によるアッパー構造を採用したテニスシューズの前面側斜視図である。
【図7】摩擦感テスターの正面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施例によるアッパー構造を採用したテニスシューズの内甲側側面部分図であって、第2のアッパー部材の一部を開いた状態を示している。
【図9】本発明のさらに別の実施例によるアッパー構造を採用したテニスシューズの内甲側側面部分図であって、第2のアッパー部材を閉じた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図5は、本発明の一実施例によるアッパー構造を説明するための図であって、これらの図において、同一符号は同一または相当部分を示している。
【0063】
図1および図2に示すように、シューズ1は、ソール2と、ソール2の上に設けられるとともに、その下部がソール2に固着される、着用者の足Pを覆うアッパー3とを備えている。
【0064】
アッパー3は、シューズ1の内甲側の前足部領域Fに配設された第1のアッパー部材30と、シューズ1の内甲側の後足部領域Rから前足部領域Fの後部にかけて配設された第2のアッパー部材31とを有している。第2のアッパー部材31の前端縁部31aは、第1のアッパー部材30の後端縁部30aの上にオーバラップして配置されている(図2参照)。
【0065】
着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー3の屈曲時には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aが第1のアッパー部材30の上を(つまり表面に沿って)前後方向にスライドすると同時に、第1のアッパー部材30の後端縁部30aが第2のアッパー部材31の下を(つまり裏面に沿って)前後方向にスライドするようになっている。
【0066】
第2のアッパー部材31の前端縁部31aにおける最下点Aの位置は、図3におけるシューズ内甲側部分に示すように、着用者の足の内甲側における中足趾節関節MJの位置に対応している。ここで、中足趾節関節MJとは、足の第1〜第5趾にかけて各足指の基節骨PPの骨底および中足骨MTの骨頭間の関節を指している(図3参照)。より詳細には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aの最下点Aの位置は、シューズサイズ長をLとするとき、踵後端からL=(0.74±0.05)×Lの位置に配置されている。ここで、起点となる踵後端の位置とは、アッパー内壁面3iにおける踵後端の位置を指している。なお、この値は、500人を超える競技者について足の屈曲位置を実測した集計結果に基づいて算出されている。
【0067】
好ましくは、第1および第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分(図2斜線領域参照)には、摩擦係数の低い素材が設けられている。このような低μ素材としては、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂やポリエチレン樹脂、シリコン、窒化ホウ素などをコーティングや接着、含浸によりアッパー面に設けることが考えられる。あるいは、これらPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の低μ素材をシート状にしたものをアッパー面に縫い付けるようにしてもよい。
【0068】
図2に示す例では、第1、第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分のうち、第1のアッパー部材30の表面に低μ領域を設けた例を示したが、このような低μ領域は第2のアッパー部材31の裏面に設けるようにしてもよい。あるいは、第1のアッパー部材30の表面および第2のアッパー部材31の裏面の双方に低μ領域を設けるようにしてもよい。この場合には、アッパー3の屈曲時に第1、第2のアッパー部材30、31が前後方向に相互にスライド移動する際に、各アッパー部材30、31の他のアッパー部材31、30に沿った移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0069】
第2のアッパー部材31の前端部には、耐摩耗材32が設けられている。この耐摩耗材32は、第2のアッパー部材31よりも硬度の高い、または第2のアッパー部材31と同等硬度の人工皮革やナイロン、ラバー、ウレタン等からシート状に成形された小片パーツを第2のアッパー部材31の前端部の上に接着または縫合等することによって設けられている。あるいは、ナイロン、ラバー、ウレタン等の素材で第2のアッパー部材31の前端部をコーティングするようにしてもよい。
【0070】
シューズ1の足甲部に沿って形成された前後方向の開口には、舌革部33が設けられている。舌革部33の前端は、第1のアッパー部材30の爪先部分に固着されている。また、第2のアッパー部材31の上端縁部には、複数の鳩目31bが形成されており、これらの鳩目31bには、靴紐38が挿入されている。
【0071】
次に、本実施例の作用効果について、図1、図4および図5を用いて説明する。
図1に示すようなソール全面接地の状態から、図4に示すような足の蹴り出し動作への移行にともなって、アッパー3が屈曲するにつれて、第2のアッパー部材31の前端縁部31aがつま先側に向かって前方に移動して、第1のアッパー部材30とのオーバラップ量が増える。図5に示すように、アッパー3がさらに屈曲すると、第2のアッパー部材31の前端縁部31aがつま先側に向かってさらに前方に移動して、第1のアッパー部材30とのオーバラップ量がさらに増える。
【0072】
アッパー3の屈曲時には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aは、第1のアッパー部材30の上を、つまり第1のアッパー部材30の表面に沿って、スライドすると同時に、第1のアッパー部材30の後端縁部30aは、第2のアッパー部材31の下を、つまり第2のアッパー部材31の裏面に沿って、スライドする。
【0073】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパー3の皺や弛みを、両アッパー部材30、31が相互にスライド移動することによって吸収でき、その結果、アッパー3の屈曲をスムーズに行うことができ、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0074】
しかも、この場合には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aにおける最下点Aの位置が、着用者の足の内甲側における中足趾節関節MJの位置に対応している。足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足は中足趾節関節MJで屈曲することになるため、第2のアッパー部材31の前端縁部31aの最下点Aを足の内甲側の中足趾節関節MJ位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパー3がスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパーの屈曲性を効果的に向上できる。なお、足の内甲側の中足趾節関節MJの位置は、シューズサイズ長をLとするとき、踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置と表すことが可能である。
【0075】
また、この場合には、第1、第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分に、低μ素材が設けられているので、アッパー屈曲時に第1、第2のアッパー部材30、31が前後方向に相互にスライド移動する際に、各アッパー部材30、31の他のアッパー部材31、30に沿った移動をスムーズに行えるようになって、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0076】
さらに、この場合には、第2のアッパー部材31の前端部31aに耐摩耗材32が設けられているので、アッパー内甲側の耐摩耗性を向上できる。テニスシューズの場合、競技中にアッパー内甲側表面がコート面と接触して摩耗するが、従来のアッパー一体型シューズのアッパーに耐摩耗材を設けた場合には、耐摩耗材が一般に硬い素材で構成されまた耐摩耗材を設けることでアッパーの厚みが増すため、アッパーの屈曲性が阻害される。これに対して、本実施例によるアッパー構造では、アッパー3の屈曲性は、第2のアッパー部材31が第1のアッパー部材30の上をスライド移動することにより実現されるので、第2のアッパー部材31に耐摩耗材を設けることで、アッパー3の屈曲性が阻害されることはない。これにより、本実施例のアッパー構造では、耐摩耗性および屈曲性の双方を両立させることが可能である。
【0077】
前記実施例では、シューズの内甲側において、相互にスライド移動可能な2つのアッパー部材を互いにオーバラップして設けた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0078】
図3の概略図においてシューズ外甲側部分に示すように、シューズ1の外甲側の前足部領域Fに配設された第3のアッパー部材34と、シューズ1の外甲側の後足部領域Rから前足部領域Fの後部にかけて配設された第4のアッパー部材35とからシューズ外甲側のアッパー3を構成するようにしてもよい。第4のアッパー部材35の前端縁部35aは、第3のアッパー部材34の後端縁部(図示せず)の上にオーバラップして配置されている。
【0079】
この場合、着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時には、第4のアッパー部材35の前端縁部35aが第3のアッパー部材34の上を(つまり表面に沿って)前後方向にスライドすると同時に、第3のアッパー部材34の後端縁部が第4のアッパー部材35の下を(つまり裏面に沿って)前後方向にスライドするようになっている。
【0080】
第4のアッパー部材35の前端縁部35aにおける最下点Bの位置は、着用者の足の外甲側における中足趾節関節MJの位置に対応している。より詳細には、第4のアッパー部材35の前端縁部35aの最下点Bの位置は、シューズサイズ長をLとするとき、踵後端からL=(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている。ここで、起点となる踵後端の位置とは、アッパー内壁面3iにおける踵後端の位置を指している。なお、この値は、500人を超える競技者について足の屈曲位置を実測した集計結果に基づいて算出されている。
【0081】
図示していないが、前記実施例と同様に、第3および第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分には、摩擦係数の低い素材が設けられている。また、この低μ領域は、第3、第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分のうち、第3のアッパー部材34の表面、または第4のアッパー部材35の裏面、あるいはこれらの双方に設けられる。この場合には、アッパー屈曲時に第3、第4のアッパー部材34、35が前後方向に相互にスライド移動する際に、各アッパー部材34、35の他のアッパー部材35、34に沿った移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0082】
この場合においても、前記実施例と同様に、ソール全面接地の状態(図1参照)から、足の蹴り出し動作への移行(図4および図5参照)にともなって、アッパー3が屈曲するにつれて、第4のアッパー部材35の前端縁部35aがつま先側に向かって前方に移動して、第3のアッパー部材34とのオーバラップ量が増える。
【0083】
アッパー3の屈曲時には、第4のアッパー部材35の前端縁部35aは、第3のアッパー部材34の上を、つまり第3のアッパー部材34の表面に沿って、スライドすると同時に、第3のアッパー部材34の後端縁部は、第4のアッパー部材35の下を、つまり第4のアッパー部材35の裏面に沿って、スライドする。
【0084】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパー3の皺や弛みを、両アッパー部材34、35が相互にスライド移動することによって吸収でき、その結果、アッパー3の屈曲をスムーズに行うことができ、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0085】
しかも、この場合には、第4のアッパー部材35の前端縁部35aにおける最下点Bの位置が、着用者の足の外甲側における中足趾節関節MJの位置に対応している。足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足は中足趾節関節MJで屈曲することになるため、第4のアッパー部材35の前端縁部35aの最下点Bを足の外甲側の中足趾節関節MJ位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパー3がスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパーの屈曲性を効果的に向上できる。なお、足の外甲側の中足趾節関節MJの位置は、シューズサイズ長をLとするとき、踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置と表すことが可能である。
【0086】
また、この場合には、第3、第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分に、低μ素材が設けられているので、アッパー屈曲時に第3、第4のアッパー部材34、35が前後方向に相互にスライド移動する際に、各アッパー部材34、35の他のアッパー部材35、34に沿った移動をスムーズに行えるようになって、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0087】
前記各実施例では、シューズ1の内甲側または外甲側のいずれか一方に、相互スライド移動可能な2つのアッパー部材をオーバラップして設けた例を示したが、本発明の適用はこれらには限定されない。本発明は、シューズ1の内甲側および外甲側の双方に、相互スライド移動可能な2つのアッパー部材をそれぞれオーバラップして設けた場合にも適用できる(図3参照)。
【0088】
なお、図3に示す例では、第3のアッパー部材34は、つま先部を介して第1のアッパー部材30と一体に形成されており、第4のアッパー部材35は、踵部を介して第2のアッパー部材31と一体に形成されている。
【0089】
この場合、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時には、シューズ内甲側の第2のアッパー部材31の前端縁部31aが第1のアッパー部材30の上を(つまり表面に沿って)スライドしかつ第1のアッパー部材30の後端縁部30aが第2のアッパー部材31の下を(つまり裏面に沿って)スライドするとともに、シューズ外甲側の第4のアッパー部材35の前端縁部35aが第3のアッパー部材34の上を(つまり表面に沿って)スライドしかつ第3のアッパー部材34の後端縁部が第4のアッパー部材35の下を(つまり裏面に沿って)スライドする。
【0090】
これにより、足の蹴り出し動作時にアッパー内甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第1、第2のアッパー部材30、31のスライド移動によって吸収できるとともに、アッパー外甲側の屈曲部分に生じるアッパーの皺や弛みを第3、第4のアッパー部材34、35のスライド移動によって吸収できる。その結果、アッパー3の屈曲をよりスムーズに行うことができ、アッパー3の屈曲性を一層向上できる。
【0091】
また、第2のアッパー部材31の前端縁部31aにおける最下点Aの位置は、着用者の足の内甲側における中足趾節関節MJの位置に対応しており、第4のアッパー部材35の前端縁部35aにおける最下点Bの位置は、着用者の足の外甲側における中足趾節関節MJの位置に対応している。
【0092】
これにより、足の蹴り出し動作の際の足の屈曲時には、足が中足趾節関節MJで屈曲することになるため、第2のアッパー部材31の前端縁部31aの最下点Aを足の内甲側の中足趾節関節MJの位置に配置しかつ第4のアッパー部材35の前端縁部35aの最下点Bを足の外甲側の中足趾節関節MJの位置に配置することで、足の屈曲に応じてアッパー3がよりスムーズに屈曲できるようになり、これにより、アッパー3の屈曲性を一層効果的に向上できる。
【0093】
第2のアッパー部材31の前端縁部31aにおける最下点Aは、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置に配置されるとともに、第4のアッパー部材35の前端縁部35aにおける最下点Bは、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている。第2のアッパー部材31の最下点Aの位置は、足の内甲側における中足趾節関節MJの位置に対応しており、第4のアッパー部材35の最下点Bの位置は、足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している。
【0094】
第1および第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分、ならびに第3および第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分には、摩擦係数の低い素材が設けられている。
【0095】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパーの屈曲時に、第1および第2のアッパー部材30、31の相互のスライド移動、ならびに第3および第4のアッパー部材34、35の相互のスライド移動をよりスムーズに行えるようになって、アッパーの屈曲性をさらに向上できる。
【0096】
さらに、第2のアッパー部材33の前端部31aに耐摩耗材が設けられている。
【0097】
この場合には、たとえばテニスシューズやバドミントンシューズなどのように、競技中にアッパーの内甲側表面がコート面と接触して摩耗するシューズにおいて、アッパー内甲側の耐摩耗性および屈曲性の双方を両立できる。また、この場合、第2のアッパー部材31が第1のアッパー部材30の上をスライド移動するとともに、第4のアッパー部材35が第3のアッパー部材34の上をスライド移動することによりアッパーの屈曲性が実現されているので、第2のアッパー部材31に耐摩耗材を設けることで、アッパーの屈曲性が阻害されることはない。
【0098】
なお、前記各実施例では、第2のアッパー部材31の前端縁部31aおよび第4のアッパー部材35の前端縁部35aをいずれも平坦状に形成してその最下点A、Bをそのままソール2に固着した例を示したが、これら前側縁部31a、35aは、最下点A、Bにおいて、第1、第3のアッパー部材30、34の側に曲率中心を有する小円弧形状を有してもよい。この場合、アッパー3の屈曲時に第2のアッパー部材31の最下点Aおよび第4のアッパー部材35の最下点Bに生じる応力集中を緩和でき、これら最下点A、Bで第2、第4のアッパー部材31、35に亀裂が生じるのを防止できる。
【0099】
次に、図6は、本発明の別の実施例によるシューズの前面側斜視図である。この例では、シューズ1の内甲側において第1、第2のアッパー部材30、31間のオーバラップ部分に第1の袋布部材4が設けられている。第1の袋布部材4は、たとえば扇状の布地、織物、人工皮革またはフィルム等であって、その一端40が第1のアッパー部材30の表面に固着され、他端41が第2のアッパー部材31の裏面側の前端縁部31aまたはその近傍に固着されるとともに、袋状に折り畳まれた状態で第1、第2のアッパー部材30、31間のオーバラップ部分に収容されている。また、第1の袋布部材4には、靴紐38を通すための開孔42が形成されている。なお、図6では、第2のアッパー部材31を開いて内部を見せた状態を示しており、通常の状態では、図1に示すように、第1の袋布部材4は、第2のアッパー部材31で覆われていて、外部からは見えないようになっている。
【0100】
第1の袋布部材4は、摩擦抵抗が小さい素材から構成されているのが好ましい。これは、アッパーの屈曲時に第1の袋布部材4同士が擦れ合う際の摩擦抵抗を低減させるためである。具体的には、カトーテック株式会社製の摩擦感テスター(KES-SE)を用いた肌摩擦試験において、摩擦抵抗が0.6未満の素材が好ましい。その根拠は後述する。
【0101】
摩擦感テスターは、図7に示すような装置であって、試料台の上に取り付けられた試験片の上を摩擦子が接触しつつ移動する(つまりドラッグする)際の摩擦力をロードセル(力計)により測定して平均摩擦抵抗を算出する試験機である。なお、摩擦子には、分銅により荷重が加えられようになっている。
【0102】
表1は、摩擦感テスターを用いて種々の試験片の摩擦抵抗を求めた結果を示している。
【表1】

【0103】
ここでは、4種類の素材を用意して、これらの素材から6種類の試験片I〜VIを作成した。各試験片I〜VIの組成は以下のとおりである。
I …ポリエステル織物(素材本体)+ポリウレタンコーティグ(表面)
II …天然皮革(素材本体)+ラバーコーティング(表面)
III …ポリエステル織物(表面)
IV …ポリエステル織物(裏面)
V …ポリエステル編物(表面)
VI …ポリエステル編物(裏面)
表1中において、試験片I、IIについてはいずれもコーティング面(つまり表面)の摩擦抵抗を、試験片III、Vについてはポリエステル織物またはポリエステル編物のいずれも表面の摩擦抵抗を、試験片IV、VIについてはポリエステル織物またはポリエステル編物のいずれも裏面の摩擦抵抗をそれぞれ示している。また、摩擦子に25(g)の荷重を作用させた場合と、50(g)の荷重を作用させた場合とのそれぞれについて各試験片I〜VIの摩擦抵抗を求めた。
【0104】
次に、第1の袋布部材4として、上記試験片I〜VIと同様の組成からなる6種類のものを用意して、これらをそれぞれシューズに取り付けることにより、6種類のシューズを用意した。そして、5人の被験者に各シューズを着用させて、停止状態から走り出す動作をそれぞれのシューズについて5回ずつ行なってもらい、そのとき、アッパーの屈曲部分に違和感を感じるか否かの官能評価試験を行なった。その結果、過半数の被験者が、試験片IIの組成のものに関して違和感を感じると回答した。
【0105】
表1より、試験片IIの摩擦係数は0.6を超えており、その他の試験片の摩擦係数は0.6より小さいことから、上記官能評価試験の結果を踏まえると、第1の袋布部材4の摩擦抵抗の値としては、0.6未満が好ましいと判断される。
【0106】
この実施例によれば、足の蹴り出し動作にともなうアッパー3の屈曲時において、第2のアッパー部材31の前端縁部31aが前方に移動する際には、第1、第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分に配設された第1の袋布部材4同士が擦れ合う。このとき、第1の袋布部材4が摩擦抵抗の小さい素材から構成されているので、第1の袋布部材4同士は円滑に摺動し、これにより、第2のアッパー部材31の前端縁部31aの前方への移動をスムーズに行なえ、その結果、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0107】
しかも、この場合には、第1、第2のアッパー部材30、31のオーバラップ部分に第1の袋布部材4が配設されていることで、当該オーバラップ部分において第1、第2のアッパー部材30、31間の間隙が第1の袋布部材4により遮蔽されているので、当該間隙を通って砂や小石等の異物がシューズ内部に侵入するのをこの第1の袋布部材4により防止できる。さらに、アッパー3が屈曲する際にも、第1の袋布部材4の端部41が第2のアッパー部材31の前端縁部31aに連結されていることで、第1の袋布部材4が第2のアッパー部材31の前端縁部31aの動きに追随するので、競技中においてアッパー3の屈曲時に砂や小石等の異物が第1、第2のアッパー部材30、31間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第1の袋布部材4により防止できる。
【0108】
また、第1の袋布部材4が第1、第2のアッパー部材30、31間で袋状に配設されており、第1の袋布部材4に弛みが設けられていることで、アッパー3の屈曲動作の際には、第1の袋布部材が第1、第2のアッパー部材30、31の動きに追随し、これにより、第1、第2のアッパー部材30、31のスライド移動を第1の袋布部材4が阻害することはなく、アッパー3の屈曲性を維持できる。
【0109】
なお、図6では、シューズの内甲側にのみ第1の袋布部材4を設けた例を示したが、本発明は、シューズの外甲側にのみ第2の袋布部材を設けるようにしてもよい。この場合、第2の袋布部材の一端は、第3のアッパー部材34に固着され、他端は、第4のアッパー部材35の前端縁部35aに固着されている(図3参照)。
【0110】
この場合には、足の蹴り出し動作にともなうアッパー3の屈曲時において、第4のアッパー部材35の前端縁部35aが前方に移動する際には、第3、第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分に配設された第2の袋布部材同士が擦れ合う。このとき、第2の袋布部材を第1の袋布部材4と同様に摩擦抵抗の小さい素材から構成することにより、第2の袋布部材同士は円滑に摺動し、これにより、第4のアッパー部材35の前端縁部35aの前方への移動をスムーズに行なえ、その結果、アッパー3の屈曲性を向上できる。
【0111】
しかも、この場合、第3、第4のアッパー部材34、35のオーバラップ部分に第2の袋布部材が配設されていることで、当該オーバラップ部分において第3、第4のアッパー部材34、35間の間隙が第2の袋布部材により遮蔽されているので、当該間隙を通って砂や小石等の異物がシューズ内部に侵入するのをこの第2の袋布部材により防止できる。さらに、アッパー3が屈曲する際にも、第2の袋布部材の端部が第4のアッパー部材35の前端縁部35aに連結されていることで、第2の袋布部材が第4のアッパー部材35の前端縁部35aの動きに追随するので、競技中においてアッパー3の屈曲時に砂や小石等の異物が第3、第4のアッパー部材34、35間の間隙を通ってシューズ内部に侵入するのをこの第2の袋布部材により防止できる。
【0112】
また、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材34、35間で袋状に配設されており、第2の袋布部材に弛みが設けられていることで、アッパー3の屈曲動作の際には、第2の袋布部材が第3、第4のアッパー部材34、35の動きに追随し、これにより、第3、第4のアッパー部材34、35のスライド移動を第2の袋布部材が阻害することはなく、アッパー3の屈曲性を維持できる。
【0113】
なお、シューズの内甲側および外甲側双方にそれぞれ第1、第2の袋布部材を設けるようにしてもよい。
【0114】
次に、図8および図9は、本発明のさらに別の実施例によるシューズの内甲側側面部分図である。この例では、第2のアッパー部材31のハトメ孔31bのうちの最前端のハトメ孔31bに対応する第1のアッパー部材30のハトメ孔30b’が、実質的に足長方向に延びる長孔になっている。各ハトメ孔31bおよび30b’には靴紐38(図1参照)が挿通している。
【0115】
この場合には、ハトメ孔30b’が長孔であることによって、靴紐38の締結後に第1、第2のアッパー部材30、31間で靴紐38が前後方向に若干量動き得るようになっている。このため、着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー3の屈曲時に、第2のアッパー部材31の前端縁部31aが前方にスライド移動するとき(図9一点鎖線参照)、靴紐38が第2のアッパー部材31の前端縁部31aのスライド移動をある程度許容しており、これにより、靴紐38が第2のアッパー部材31の前端縁部31aのスライド移動を規制するのを防止できる。
【0116】
なお、第2のアッパー部材31の前端縁部31aが前方にスライド移動する際には、第2のアッパー部材31の前端縁部31aは、その最下点Aの位置を中心として前方に回動すると考えて実質的に差し支えない(図9一点鎖線参照)。したがって、ハトメ孔30b’の形成方向としては、上述した足長方向ではなく、点Aを中心とする円弧mに沿う方向にするようにしてもよい。
【0117】
また、前記各実施例では、テニスシューズを例にとって説明したが、本発明は、バドミントンシューズ、バレーボールシューズ、バスケットボールシューズ、ハンドボールシューズ等のその他のスポーツシューズにも適用可能である。また、ランニングシューズやマラソンシューズの他、サッカーシューズ、野球シューズにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、シューズのアッパー構造に好適であり、とくにシューズのアッパーの屈曲性を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0119】
1: シューズ

3: アッパー
30: 第1のアッパー部材
30a: 後端縁部
31: 第2のアッパー部材
31a: 前端縁部
32: 耐摩耗材
34: 第3のアッパー部材
35: 第4のアッパー部材
35a: 前端縁部

A: 最下点の位置
L: シューズの表示サイズ長
R: 後足部
F: 前足部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特表昭61−501612号公報(FIG.1参照)
【特許文献2】特開平2−277405号公報(FIG.1参照)
【特許文献3】国際公開第2004/093587号パンフレット(図5および図6参照)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのアッパー構造であって、
シューズの内甲側の前足部領域に配設された第1のアッパー部材と、
シューズの内甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が前記第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第2のアッパー部材とを備え、
着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時には、前記第2のアッパー部材の前記前端縁部が前記第1のアッパー部材の上を前後方向にスライドすると同時に、前記第1のアッパー部材の前記後端縁部が前記第2のアッパー部材の下を前後方向にスライドするようになっている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のアッパー部材の前記前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応している、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置に配置されている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分には、摩擦係数の低い素材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1および第2のアッパー部材の前記オーバラップ部分には、一端が第1のアッパー部材に連結されかつ他端が第2のアッパー部材に連結されるとともに、前記第1および第2のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第1の袋布部材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記第2のアッパー部材の前端部には、耐摩耗材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項7】
シューズのアッパー構造であって、
シューズの外甲側の前足部領域に配設された第3のアッパー部材と、
シューズの外甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が前記第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第4のアッパー部材とを備え、
着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時には、前記第4のアッパー部材の前記前端縁部が前記第3のアッパー部材の上を前後方向にスライドすると同時に、前記第3のアッパー部材の前記後端縁部が前記第4のアッパー部材の下を前後方向にスライドするようになっている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記第4のアッパー部材の前記前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項9】
請求項8において、
前記最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項10】
請求項7において、
前記第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分には、摩擦係数の低い素材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項11】
請求項7において、
前記第3および第4のアッパー部材の前記オーバラップ部分には、一端が第3のアッパー部材に連結されかつ他端が第4のアッパー部材に連結されるとともに、前記第3および第4のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第2の袋布部材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項12】
シューズのアッパー構造であって、
シューズの内甲側の前足部領域に配設された第1のアッパー部材と、
シューズの内甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が前記第1のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第2のアッパー部材と、
シューズの外甲側の前足部領域に配設された第3のアッパー部材と、
シューズの外甲側の後足部領域から前足部後部領域にかけて配設され、その前端縁部が前記第3のアッパー部材の後端縁部の上にオーバラップして配置された第4のアッパー部材とを備え、
着用者の足の蹴り出し動作にともなうアッパー屈曲時には、前記第2のアッパー部材の前記前端縁部が前記第1のアッパー部材の上を前後方向にスライドし、前記第1のアッパー部材の前記後端縁部が前記第2のアッパー部材の下を前後方向にスライドするとともに、
前記第4のアッパー部材の前記前端縁部が前記第3のアッパー部材の上を前後方向にスライドし、前記第3のアッパー部材の前記後端縁部が前記第4のアッパー部材の下を前後方向にスライドするようになっている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項13】
請求項12において、
前記第2のアッパー部材の前記前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の内甲側における中足趾節関節の位置に対応するとともに、前記第4のアッパー部材の前記前端縁部における最下点の位置が、着用者の足の外甲側における中足趾節関節の位置に対応している、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2のアッパー部材の前記前端縁部の前記最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.74±0.05)×Lの位置に配置されるとともに、前記第4のアッパー部材の前記前端縁部の前記最下点が、シューズサイズ長Lに対して踵後端から(0.64±0.05)×Lの位置に配置されている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項15】
請求項12において、
前記第1および第2のアッパー部材のオーバラップ部分、ならびに前記第3および第4のアッパー部材のオーバラップ部分には、摩擦係数の低い素材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項16】
請求項12において、
前記第1および第2のアッパー部材の前記オーバラップ部分には、一端が第1のアッパー部材に連結されかつ他端が第2のアッパー部材に連結されるとともに、第1および第2のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第1の袋布部材が設けられ、さらに、前記第3および第4のアッパー部材の前記オーバラップ部分には、一端が第3のアッパー部材に連結されかつ他端が第4のアッパー部材に連結されるとともに、第3および第4のアッパー部材のスライド移動を許容するように袋状に配設された第2の袋布部材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。
【請求項17】
請求項12において、
前記第2のアッパー部材の前端部には、耐摩耗材が設けられている、
ことを特徴とするシューズのアッパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−254807(P2009−254807A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63786(P2009−63786)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】